JP2010244738A - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって。導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成し、その大きさは凝集体の大きさは、第一の導電性部材と第二の導電性部材に電圧を印加した場合に、絶縁破壊が起こらないような大きさに形成されている。
【選択図】 図9
Description
本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって、第一及び第二の導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成したことを特徴としている。
(電子放出素子の構成)
本発明の電子放出素子の構成について説明する。
(第一の導電性部材)
第一の導電性部材となる基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子加速層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、第一の導電性部材となる基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた貴金属系材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わない。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
(第二の導電性部材)
第二の導電性部材3は、電子加速層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また第二の導電性部材3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。第二の導電性部材3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は100nm程度であり、これを超える膜厚では第二の導電性部材3で電子の吸収あるいは反射による電子加速層4への再捕獲が多く発生することになり、低消費電力で素子駆動ができなくなる。
(金属微粒子)
金属微粒子6の金属種としては、電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、抗酸化力が高い金属である必要があり、貴金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられる。このような金属微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀金属微粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。
(絶縁体)
絶縁体の微粒子5に関しては、その材料は絶縁性を持つものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、後述の実験結果の通り微粒子層4を構成する微粒子全体における絶縁体の微粒子5の重量割合は80〜95%、すなわち金属微粒子との割合は4:1〜19:1が好ましい。またその大きさは、金属微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、金属微粒子6の直径よりも大きいことが好ましく、絶縁体の微粒子5の直径(平均径)は10〜1000nmであることが好ましく、12〜110nmがより好ましい。従って、絶縁体の微粒子5の材料はSiO2、Al2O3、TiO2といったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、微粒子層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体の微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体の微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
(電子加速層)
電子加速層4は、上記絶縁体5および金属微粒子6を含んでいる。薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、電子加速層の層厚を均一化できること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となることなどから、微粒子層4の層厚は、100〜1000nm、より好ましくは300〜6000nmであるとよい。100nm未満では、電極間の接触あるいは高電圧印加による絶縁破壊が生じることがあり、6000nm以上では、電子放出に必要な高電界を印加することができなくなり、高電界を印加すれば消費電力が高くなる。
(電子放出原理)
電子放出の原理について、電子加速層4をモデル化した状態の図2により説明する。コロイド結晶化した絶縁皮膜された金属微粒子群6は自己組織化によって形成される。その原理を以下に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に、溶媒にはトルエンを用い、絶縁被膜された金属微粒子6として銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)と、絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)とを、粒子全体(銀金属微粒子およびシリカ粒子)に対するシリカ粒子の比率90w%で混合して分散させ、溶液Aを作成した。また、溶媒にはトルエンを用い、絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)を溶液Aと同様の重量を投入し、溶液Bを作成した。これらの溶液を用い、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで溶液Aを1層堆積させ、その後、同様の回転数で溶液Bを2層堆積させた。自己組織化作用を発現させるために、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は実施例1と同様約500nmであった。実施例1と同様の方法で電子放出実験を行なったが、電子放出は10Vの電圧印加で10−11程度と実施例1に比べて相当低かった。
(比較例2)
さらに、溶媒にはトルエンを用い、絶縁被膜された金属微粒子6として銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を溶液Aと同様の重量を投入し、溶液Cを作成した。溶液A、溶液B、溶液Cを用い、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで溶液Aを1層堆積させ、同様の回転数で溶液Cを2層、最後に溶液Bを2層堆積させた。自己組織化作用を発現させるために、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は同様約550nmであった。実施例1と同様の方法で電子放出実験を行なったが、絶縁破壊を起こし、測定できなかった。
2 第一の導電性部材(電極基板)
3 第二の導電性部材(薄膜電極)
4 微粒子層(電子加速層)
5 絶縁体の微粒子(絶縁性部材)
6 金属微粒子(絶縁皮膜ナノ微粒子)
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ
Claims (15)
- 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子において、
前記導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成したことを特徴とする電子放出素子。 - 前記凝集体の大きさは、第一の導電性部材と第二の導電性部材に電圧を印加した場合に、絶縁破壊が起こらないような大きさに形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
- 上記絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体は、絶縁体に付着していることを特徴とする請求項1,2記載の電子放出素子。
- 上記絶縁皮膜金属微粒子を成す導電体部分は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つの物質を含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記絶縁皮膜金属微粒子を成す導電体部分の平均径は、3〜20nmであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記絶縁性部材は、SiO2、Al2O3、及びTiO2の少なくとも1つを含んでいる、または有機ポリマーを含んでいることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記絶縁性部材が微粒子であり、その平均径は、10〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記電子放出素子における上記絶縁性部材と絶縁皮膜金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記第一の導電性部材と第二の導電性部材の間隔は、100〜6000nmであることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記第二の導電性部材は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、電子をトンネルさせることが可能な厚みであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の電子放出素子。
- 上記絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいること特徴とする、請求項11に記載の電子放出素子。
- 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子の製造方法であって、
第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程を有する電子放出素子の製造方法。 - 上記第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程は、ともに自己組織化作用による工程であることを特徴とする請求項13記載の電子放出素子の製造方法。
- 前記、絶縁皮膜された金属微粒子を凝集させる工程は、溶媒に絶縁皮膜金属微粒子を超音波により分散させる工程と、室温で放置するあるいは溶媒の沸点以下の温度で加熱後に放置する工程とを含むことを特徴とする請求項13あるいは14の何れかに記載の電子放出素子の製造方法。
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