JP2010244738A - 電子放出素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 弾道電子を効率的に発生させることができ、その結果、電子放出素子の効率を向上させることができる電子放出素子を提供すること。
【解決手段】 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって。導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成し、その大きさは凝集体の大きさは、第一の導電性部材と第二の導電性部材に電圧を印加した場合に、絶縁破壊が起こらないような大きさに形成されている。
【選択図】 図9

Description

本発明は、電圧を印加することにより電子を放出させることができる電子放出素子に関するものである。
電界放出表示素子としては、従来から、先端を鋭く尖らせたシリコンあるいはモリブデンといったマイクロエミッタが知られている。しかし、導電性ファイバであるカーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube: CNT)は、ナノレベルの径を有し、高アスペクト比、高電流密度、高靱性、発達した黒鉛構造に起因する高耐熱性および高化学的安定性を持つことから、前述の金属性のマイクロエミッタよりも優れた電界放出表示素子として期待されている。
特開2001−35424号公報では、基板101の一方の面に多数の突起102が形成された剣山状部材を作製する。基板101はAl2O3単結晶板であり、突起102は酸化亜鉛である。この剣山状部材の突起102側の表面全体に金属薄膜103を形成することにより、多数の突起状の電子放出体104を得る。突起102の先端部は凸状になっていて、その尖鋭度(頂点部分を所定範囲で2次曲線に近似することにより算出される値)を示す曲率半径は10μm以下であり、冷陰極素子の製造方法がスピント型素子よりも簡単であって、発光効率の高い発光装置を得ている(図10参照)。
また、特開2001−236879号公報では、陰極105上にベース層を形成したり、またはしない状態で触媒層106を形成し、スピント法で触媒層上にカーボンナノチューブ107を成長させる方法であって、マイクロキャビティーの外部の触媒層上には非反応層を形成してマイクロキャビティーの内部の触媒層106上にだけカーボンナノチューブ107を成長させることによって、分離層を蝕刻して除去する場合にも外部のカーボンナノチューブ107が存在しないことによりカーボンナノチューブ107がマイクロキャビティー内に流れ込むことはない。これにより、生産収率が高まると同時に生産コストが低くなることが開示されている(図11参照)。
これらの電子放出原理について説明する。固体表面に強い電界がかかると,電子を固体内に閉じ込めている表面のポテンシャル障壁が低くかつ薄くなり,電子がトンネル効果により,真空中に放出される.電子を放出させるには,107V/cmオーダーの強い電界を表面にかけなければならない。このような強電界を実現するために,通常は先端を鋭く尖らせた金属針が用いられる。その針に負の電圧を掛けると,尖った先端に電界が集中し,必要とされる強電界が得られる。スピント型のエミッタは、この針をエッチングなどの半導体加工技術を応用して、作成される。また、カーボンナノチューブ型エミッタは、CNT素子を樹脂などに混練、塗布により製造され、 (1) 鋭い先端と大きなアスペクト比を持ち,(2) 化学的に安定で,(3) 機械的にも強靭で,さらに (4) 原子の拡散がなく高温での安定性に優れており、(5) 導電性をもつなど,電界放出のエミッタ材料として有利な物理化学的性質を備えているとされている。

特開2001−35424号公報 特開2001−236879号公報
特開2001−35424号公報に示されているスピント型電子放出素子や特開2001−236879号公報に示されているCNT(カーボンナノチューブ)型電子放出素子も製造方法が複雑であった。すなわち、スピント型電極は基板にAlなどの金属を用い、高度なエッチング技術を用いて、先鋭な曲率を有しなければならず、複雑で、高精度の製造技術が必要であった。また、カーボンナノチューブ型の電子放出素子では、カーボンナノチューブを成長させるか、あるいは、成長したカーボンナノチューブをペースト状に塗付し、先鋭な曲率を有するカーボンナノチューブの先端から、電子を放出させていた。しかしながら、カーボンナノチューブを基板上で均一に成長させることが難しく、製造装置も複雑であった。また、カーボンナノチューブをペースト状に塗付する方式では、製造工程は簡単であるが、電子放出位置がばらつくとともに、均一な電子放出電流が得られず、電子放出効率も悪かった。
これらの電子放出素子は、何れも平面的に形成しているため、有効に3次元空間を活用しているとはいえず、投入電力に対する電子放出の効率が悪かった。
上記に記載した課題を鋭意検討した結果、われわれは、常温で金属微粒子を含む溶液を塗布し、乾燥する簡単な工程で、自己組織化作用により電子放出素子を作成し、検討を行なったところ、新しい電子放出原理で電子が放出していることを見出した。その結果、高温で焼成する必要がなく、低消費電力で、大面積のフィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用できる電子放出素子を提供することにある。

本発明の電子放出素子は、上記課題を解決するために、第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子であって、第一及び第二の導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成したことを特徴としている。
ここで、金属微粒子の周囲に、薄膜の絶縁部材を被覆することで、金属微粒子の酸化生成反応をより起こし難くした状態にでき、大気圧状態での素子の使用を可能にする。また、絶縁性部材の周囲に絶縁皮膜金属微粒子を自己組織化作用により凝集させることが可能となり、それによって、弾道電子を効率的に発生させることができ、その結果、電子放出素子の効率を向上させることができる。
また、ナノ粒子として抗酸化力が高い導電体を用いることから、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難いため、大気圧中でも安定して動作させることができる。
また、上記絶縁性部材および絶縁皮膜ナノ粒子は、電子加速層における抵抗値および電子の生成量を調整することができるため、電子加速層を流れる電流値と電子放出量の制御を可能とする。さらに、上記絶縁性部材は、電子加速層を流れる電流により生じるジュール熱を効率良く逃がす役割も有することができるため、電子放出素子が熱で破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子は、上記構成を有するため、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、形成されている絶縁皮膜ナノ粒子の一部が、絶縁破壊が起こらないような大きさに、凝集し凝集体を複数形成していることを特徴としている。すなわち、絶縁性部材に絶縁皮膜ナノ粒子が形成されているのが好ましいが、第一の導電性部材と第二の導電性部材に電圧を印加した場合に絶縁破壊が起こらないような大きさに絶縁皮膜ナノ粒子が凝集していてもよい。
上記構成によると、上記効果に加え、凝集している絶縁皮膜ナノ粒子間では、より多くのエネルギーを持った電子が放出されることもあり、絶縁破壊が起こらない程度の凝集度合いであればよい。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記ナノ粒子を成す導電体は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいてもよい。このように、上記ナノ粒子を成す導電体が、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つを含んでいることで、ナノ粒子の、大気中の酸素による酸化などをはじめとする素子劣化を、より効果的に防ぐことができる。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記ナノ粒子の平均径は、導電性を制御する必要から、上記絶縁性部材の大きさよりも小さくなければならず、3〜20nmであるのが好ましい。このように、上記ナノ粒子の平均径を、上記絶縁性部材の微粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、電子加速層内で、ナノ粒子による導電パスが形成されず、電子加速層内での絶縁破壊が起こり難くなる。また原理的には不明確な点が多いが、粒子径が上記範囲内のナノ粒子を用いることで、電子が効率よく生成される。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記絶縁性部材は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいてもよい。または有機ポリマーを含んでいてもよい。上記絶縁性部材が、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、あるいは、有機ポリマーを含んでいると、これら物質の絶縁性が高いことにより、上記電子加速層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。特に、絶縁性部材として酸化物(SiO、Al、及びTiO)を用い、ナノ粒子として抗酸化力が高い導電体を用いる場合には、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化をより一層発生し難くなるため、大気圧中でも安定して動作させる効果をより顕著に発現させることができる。
ここで、上記絶縁性部材は微粒子であってもよく、その平均径が10〜1000nmであるのが好ましく、12〜110nmであるのがより好ましい。この場合、粒子径の分散状態は平均粒径に対してブロードであっても良く、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒子径分布を有していても問題ない。上記微粒子である絶縁性部材の平均径を好ましくは10〜1000nm、より好ましくは12〜110nmとすることにより、上記絶縁性部材の大きさよりも小さい上記ナノ粒子の内部から外部へと効率よく熱伝導させて、素子内を電流が流れる際に発生するジュール熱を効率よく逃がすことができ、電子放出素子が熱で破壊されることを防ぐことができる。さらに、上記電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層における上記絶縁性部材と絶縁皮膜金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であるのが好ましい。上記重量比率の範囲内であると、上記電子加速層内の抵抗値を適度に上げることができ、大量の電子が一度に流れることで電子放出素子が破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記電子加速層の層厚は、12〜6000nmであるのが好ましく、300〜6000nmであるのがより好ましい。上記電子加速層の層厚を、好ましくは12〜6000nm、より好ましくは300〜6000nmとすることにより、電子加速層の層厚を均一化すること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となる。この結果、電子放出素子表面の全面から一様に電子を放出させることが可能となり、かつ素子外へ効率よく電子を放出させることができる。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、上記薄膜電極は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいてもよい。上記薄膜電極に、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子加速層で発生させた電子を効率よくトンネルさせ、電子放出素子外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
本発明の電子放出素子の絶縁皮膜ナノ粒子の絶縁被膜は、上記構成に加え、電子をトンネルさせることが可能な厚みであることを特徴としている。電子がトンネル可能な厚みでなければ、電子を導体から外部に放出させることはできず、電子放出素子としての基本的機能が実現できないためである。
本発明の電子放出素子では、上記構成に加え、絶縁皮膜ナノ粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいてもよい。このような有機材料で、絶縁皮膜されていることで、素子作成時のナノ粒子の分散液中での分散性向上に貢献するため、ナノ粒子の凝集体が元と成る電流の異常パス形成を生じ難くする他、絶縁性部材の周囲に存在するナノ粒子自身の酸化に伴う粒子の組成変化を生じないため、電子放出特性に影響を与えることがない。よって、電子放出素子の長寿命化をより効果的に図ることができる。
本発明の電子放出素子の製造方法によれば、第一の導電性部材上に絶縁体部材と絶縁皮膜ナノ粒子を形成する工程と、第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程を有することを特徴としている。このような製造方法にすることにより、自己組織的に絶縁性部材上に形成することができ、高温の焼成工程を経ることなく、最小の使用エネルギーで効率よく電子放出素子を作成できる。
また、第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程は自己組織的作用による工程である。絶縁体部材と絶縁皮膜ナノ粒子を溶媒中で混合して溶液とし、前記分散溶液中の粒子を分散させる工程を含み、室温で放置するあるいは溶媒の沸点以下の温度で加熱後に放置することで、自己組織化を有効に発現させることができる。
以上説明したように、本発明の電子放出素子によれば、電極間に電子加速層を塗布・常温で乾燥させるだけで簡単に電子放出素子が作成でき、また電子放出効率も格段に高く、大面積化の容易なデバイスを提供できる。
本発明の電子放出素子は、上記のように、第一の導電性部材と第二の導電性部材との間には、導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成した構成となっている。この絶縁皮膜ナノ粒子は、自己組織化作用により絶縁性部材上に凝集されて形成されている。したがって、第一の導電性部材と第二の導電性部材との間の3次元空間にほぼ均一に形成されている構成になっている。これは薄膜の層であり、この電子加速層に電圧を印加すると、電子加速層内に電流が流れ、その一部は印加電圧の形成する強電界により電子がナノ金属粒子内から放出され、絶縁皮膜されたナノ粒子が凝集していることから、絶縁皮膜を電子がトンネルし繰り返され、弾道電子となって放出される。このように構成された電子放出素子は、投入電力に対する電子放出量の効率がよく、ディスプレイや光源に用いた場合に、低電力化が図れる。また、金属微粒子として抗酸化力が高い導電体を用いることから、大気中の酸素による酸化に伴う素子劣化を発生し難いため、大気圧中でも安定して動作させることができる。
また、上記絶縁性部材および絶縁皮膜ナノ微粒子は、電子加速層における抵抗値および電子の生成量を調整することができるため、電子加速層を流れる電流値と電子放出量の制御を可能とする。さらに、上記絶縁性部材は、電子加速層を流れる電流により生じるジュール熱を効率良く逃がす役割も有することができるため、電子放出素子が熱で破壊されるのを防ぐことができる。
本発明の電子放出素子は、上記構成を有するため、真空中だけでなく大気圧中で動作させても放電を伴わないためオゾンやNOx等の有害物質をほぼ生成せず、電子放出素子が酸化劣化しない。そのため、本発明の電子放出素子は、寿命が長く大気中でも長時間連続動作をさせることができる。よって、本発明により、真空中だけでなく大気圧中でも安定して電子を放出でき、オゾンやNOx等の有害物質の発生を抑制した電子放出素子を提供することができる。
本発明の一実施形態の電子放出素子の構成を示す模式図である。 図1の電子放出素子における微粒子層付近の断面の拡大図である。 絶縁性部材に絶縁皮膜ナノ粒子を形成させる工程を説明した説明図である。 電子放出実験の測定系を示す図である。 真空中における電子放出電流を示すグラフを表す図である。 真空中における電子放出時の素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流を示すグラフを表す図である。 大気中における電子放出電流及び素子内電流の経時変化を示す図である。 電子放出性能が最も良好であった電子加速層の断面TEM写真である。 従来技術を示す説明図である。 従来技術を示す説明図である。
以下、本発明の電子放出素子の実施形態について、図1〜9を参照しながら具体的に説明する。なお、以下に記述する実施の形態および実施例は本発明の具体的な一例に過ぎず、本発明はこれらよって限定されるものではない。
(電子放出素子の構成)
本発明の電子放出素子の構成について説明する。
図1に示すように、電子放出素子1は、第一の導電性部材2上に絶縁体とコロイド結晶化した絶縁皮膜金属微粒子群(以下電子加速層4という)と、第一の導電性部材2に対向するように第二の導電性部材3を備えるとともに、電源7と、対向電極3とが配置されている。
電子加速層4は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3とにより挟持されている。また、電源7は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧を印加する。電子加速層4は、後述するように少なくとも絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体が複数個所に形成されている。電子放出素子4は、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間に電圧が印加されることで、第一の導電性部材2と第二の導電性部材3との間(すなわち、電子加速層4)で電子を加速し、対向電極3に向かって第二の導電性部材3から電子を放出させる。
以上のような基本構成を基に、それぞれの部材および電子放出原理について、図1の電子加速層4の内部をモデル化した状態を図2に示して詳細に説明を行なう。
(第一の導電性部材)
第一の導電性部材となる基板2は、電子放出素子の支持体の役割を担う。そのため、ある程度の強度を有し、直に接する物質との接着性が良好で、適度な導電性を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。例えばSUSやTi、Cu等の金属基板、SiやGe、GaAs等の半導体基板、ガラス基板のような絶縁体基板、プラスティック基板等が挙げられる。例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子加速層4との界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、第一の導電性部材となる基板2として用いることができる。上記導電性物質としては、導電性に優れた貴金属系材料を、マグネトロンスパッタ等を用いて薄膜形成できれば、その構成材料は特に問わない。また、酸化物導電材料として、透明電極に広く利用されているITO薄膜も有用である。また、強靭な薄膜を形成できるという点で、例えば、ガラス基板表面にTiを200nm成膜し、さらに重ねてCuを1000nm成膜した金属薄膜を用いてもよいが、これら材料および数値に限定されることはない。
(第二の導電性部材)
第二の導電性部材3は、電子加速層4内に電圧を印加させるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層4内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。また第二の導電性部材3の膜厚は、電子放出素子1から外部へ電子を効率良く放出させる条件として重要であり、10〜55nmの範囲とすることが好ましい。第二の導電性部材3を平面電極として機能させるための最低膜厚は10nmであり、これ未満の膜厚では、電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子1から外部へ電子を放出させるための最大膜厚は100nm程度であり、これを超える膜厚では第二の導電性部材3で電子の吸収あるいは反射による電子加速層4への再捕獲が多く発生することになり、低消費電力で素子駆動ができなくなる。
(金属微粒子)
金属微粒子6の金属種としては、電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、抗酸化力が高い金属である必要があり、貴金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルといった材料が挙げられる。このような金属微粒子6は、公知の微粒子製造技術であるスパッタ法や噴霧加熱法を用いて作成可能であり、応用ナノ研究所が製造販売する銀金属微粒子等の市販の金属微粒子粉体も利用可能である。
また、金属微粒子6の平均径は、導電性を制御する必要から、以下で説明する絶縁体の微粒子5の大きさよりも小さくなければならず、3〜10nmであるのがより好ましい。このように、金属微粒子6の平均径を、絶縁体の微粒子5の粒子径よりも小さく、好ましくは3〜20nmとすることにより、微粒子層4内で、金属微粒子6による導電パスが形成されず、微粒子層4内での絶縁破壊が起こり難く、電子が効率よく生成される。
(絶縁体)
絶縁体の微粒子5に関しては、その材料は絶縁性を持つものであれば特に制限なく用いることができる。ただし、後述の実験結果の通り微粒子層4を構成する微粒子全体における絶縁体の微粒子5の重量割合は80〜95%、すなわち金属微粒子との割合は4:1〜19:1が好ましい。またその大きさは、金属微粒子6に対して優位な放熱効果を得るため、金属微粒子6の直径よりも大きいことが好ましく、絶縁体の微粒子5の直径(平均径)は10〜1000nmであることが好ましく、12〜110nmがより好ましい。従って、絶縁体の微粒子5の材料はSiO、Al、TiOといったものが実用的となる。ただし、表面処理が施された小粒径シリカ粒子を用いると、それよりも粒子径の大きな球状シリカ粒子を用いるときと比べて、溶媒中に占めるシリカ粒子の表面積が増加し、溶液粘度が上昇するため、微粒子層4の膜厚が若干増加する傾向にある。また、絶縁体の微粒子5の材料には、有機ポリマーから成る微粒子を用いてもよく、例えば、JSR株式会社の製造販売するスチレン/ジビニルベンゼンから成る高架橋微粒子(SX8743)、または日本ペイント株式会社の製造販売するスチレン・アクリル微粒子のファインスフェアシリーズが利用可能である。ここで、絶縁体の微粒子5は、2種類以上の異なる粒子を用いてもよく、また、粒径のピークが異なる粒子を用いてもよく、あるいは、単一粒子で粒径がブロードな分布のものを用いてもよい。
また絶縁体の成す役割は微粒子形状に依存しないため、上記絶縁性部材に有機ポリマーから成るシート基板や、何らかの方法で絶縁性部材を塗布して形成した絶縁体層を用いてもよい。但しこのシート状基板や絶縁体層には厚さ方向を貫通する複数の微細孔を有する必要がある。このような用件を満たすシート状基板材料として、例えば、ワットマンジャパン株式会社の製造販売するメンブレンフィルターニュークリポア(ポリカーボネート製)が有用である。
(電子加速層)
電子加速層4は、上記絶縁体5および金属微粒子6を含んでいる。薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることができるが、電子加速層の層厚を均一化できること、また層厚方向における電子加速層の抵抗調整が可能となることなどから、微粒子層4の層厚は、100〜1000nm、より好ましくは300〜6000nmであるとよい。100nm未満では、電極間の接触あるいは高電圧印加による絶縁破壊が生じることがあり、6000nm以上では、電子放出に必要な高電界を印加することができなくなり、高電界を印加すれば消費電力が高くなる。
(電子放出原理)
電子放出の原理について、電子加速層4をモデル化した状態の図2により説明する。コロイド結晶化した絶縁皮膜された金属微粒子群6は自己組織化によって形成される。その原理を以下に示す。
図3に電子加速層の作成プロセスを示す。絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒を蒸発させると、溶媒の蒸発時に自己組織化作用により、絶縁皮膜された金属微粒子が絶縁体上にコロイド状に形成される。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子加速層が形成できる。
絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かした直後は、絶縁皮膜された金属微粒子同士が間隔を保って雑然と配置したアモルファス状態となっており、粒子間の静電斥力によって粒子同士が反発し、互いに距離を置くよう分布している。
そして、ブラウン揺動力と静電斥力によって粒子の再配置がおこなわれ、系の内部エネルギーを最小化するようコロイド結晶化が進行し、一群の絶縁皮膜された金属微粒子が形成される。このような順序で自己組織化による絶縁皮膜金属微粒子のコロイド結晶ができる。このようなプロセスを経て、第一の導電性部材と第二の導電性部材の間に、複数のコロイド結晶化した絶縁皮膜された金属微粒子群が形成される。
具体的には、まず、基板2上に、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散させた分散溶液をスピンコート法を用いて塗布することで、微粒子層4を形成する。ここで、分散溶液に用いる溶媒としては、絶縁体の微粒子5と、金属微粒子6とを分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
特に、絶縁皮膜金属微粒子を分散するためには、無極性溶媒(比誘電率の小さな溶媒。ヘキサンなど)の方が好ましい。ただし、水などは極性溶媒の代表格であるが、コストメリットがあるので、使用することができる。無極性溶媒を使用する理由としては、溶媒中で、金属微粒子がもつ電荷等で引き合わないようにするためには、金属微粒子がもつ電荷を遮蔽するような状態の方がよいからである。また、溶媒の粘度も金属微粒子の動きやすさに影響してくるので、分散性に影響する。特に、比誘電率が5以下の溶媒(ヘキサン 1.9、トルエン 2.3、キシレン 2.3)が好ましい。
また、金属微粒子6の分散性を向上させる目的で、事前処理としてアルコラート処理を施すとよい。スピンコート法による成膜、乾燥、を複数回繰り返すことで所定の膜厚にすることができる。微粒子層4は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも成膜することができる。そして、電子加速層4上に薄膜電極3を成膜する。薄膜電極3の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。
すなわち、絶縁体及び絶縁皮膜金属微粒子を溶媒に溶かし、超音波洗浄器により金属微粒子を分散させ、第一の導電性部材上に塗布を行なう。その後、室温で放置し、ゆっくりと溶媒の除去を行なう。以上のような簡単なプロセスで、高温処理が必要なく電子加速層が形成できる。
また、第一の導電性部材付近では電界集中を起こりやすくするため、基板を適度に荒らすほうが良い。電界集中が起こるため、低電圧の素子の作成が可能となるからである。
第一の導電性部材付近で凝集した絶縁皮膜金属微粒子群は空間内でランダムに形成されているが、その絶縁皮膜金属微粒子が任意の直列に連なる1次元構造の集合体によって、絶縁皮膜された金属微粒子内の電子は閉じ込められ、ランダムな運動を禁止されるが、電圧が外部より印加されると絶縁皮膜金属微粒子どうしの接触部分に強電界が発生し、電子は高い確率で隣接する絶縁皮膜された金属微粒子にトンネルすることになる。トンネルは絶縁皮膜された金属微粒子が接する部分に限られるため、連続して層内を伝導できるのは、直進する高いエネルギーをもった電子だけになる。この高エネルギー電子が、外部に電子放出されることになる。
以上のように、模式的に図2に示すように基板付近の絶縁皮膜された金属微粒子凝集体(A凝集体)に高エネルギーを持った電子が蓄えられる。この高エネルギーを持った電子は、絶縁皮膜金属微粒子の先端部分から電子放出される。大気中の場合、電子の平均自由工程は68nmであるので、絶縁皮膜金属微粒子の凝集体の間隔(A凝集体とB凝集体の距離)は、68nmよりも小さく、さらにエネルギーを損失しないためにはより小さいほうが好ましい。しかしながら小さすぎると、高電界がかかるため、絶縁破壊が発生する場合があり、適度に高エネルギー状態に保持できる凝集体とするのが好ましい。ここでは、A凝集体で金属微粒子群のトンネルを繰り返して高エネルギー状態となった電子は、A凝集体の先端部分から空間に電子が放出される。その後、B凝集体の一部の絶縁皮膜金属微粒子に到達し、その金属微粒子群をトンネルし、さらに電界集中が起こっているB凝集体で高エネルギーを与えられ、B凝集体でもトンネル現象が発生すると考えられる。これらの動作をB凝集体からC凝集体・・・と繰り返すことにより、最終的に高エネルギーを持った電子が得られる。
ここで、A凝集体での電界強度はマクロ的には、E=V(印加電圧)/d(素子間距離)で与えられ、ミクロ的には電界集中が起こっているため、電界集中が起こっている部分では高電界状態となっている。またB凝集体が第一の導電性部材と第二の導電性部材の中央に位置していると仮定すると、B凝集体にかかっている電界強度は、A凝集体とB凝集体が同形状であれば、A凝集体の1/2となる。したがって、A凝集体からB凝集体へ突入する高エネルギーを持った電子は、B凝集体で、さらに前記電界集中によるエネルギーを得て、B凝集体を弾道電子としてB凝集体の各絶縁皮膜金属微粒子をトンネルしていくことになる。ここで低電圧の印加で高エネルギーの凝集体を形成するには、切り欠きや突起をもったいわゆる電界集中の発生する形状が好ましい。この電界集中を発生させる突起形状を絶縁皮膜された金属微粒子で形成することができるため、低電圧での電子放出が可能となっている。
以上の原理により、各々の凝集体で弾道電子が形成され、最終的にはこの第一及び第二の導電性部材間に形成される電子放出素子から電子が放出されることになる。
ここで、第一の導電性部材と、第二の導電性部材の間隔は絶縁破壊が起こらない程度に短いほうがより効率よく、電子放出が可能となるため好ましい。高電圧を印加でき、電界集中が発生しやすくなり、低消費電力の素子を作成できるからである。
以下、上記に説明した電子放出の原理に基づいて、本発明の実施例について説明を行なっていく。
実施例として、本発明に係る電子放出素子を用いた電子放出実験について図4〜図9を用いて説明する。なお、この実験は実施の一例であって、本発明の内容を制限するものではない。
本実施例では、微粒子層4における絶縁体の微粒子5と絶縁性部材(付着物質)を表面に付着させた金属微粒子6との配合を変えた5種類の電子放出素子1を作製した。
基板2には30mm角のSUSの基板を使用し、この基板2上にスピンコート法を用いて微粒子層4を堆積させた。スピンコート法に用いた絶縁体の微粒子5及び絶縁性部材を表面に付着させた金属微粒子6を含んだ溶液は、トルエンを溶媒として各粒子を分散したものである。トルエン溶媒中に分散させた絶縁体の微粒子5と絶縁性部材を表面に付着させた金属微粒子6の配合割合は、絶縁体の微粒子5および金属微粒子6の投入総量に対する絶縁体の微粒子5の重量比率を70、80、90、95%と、それぞれ成るようにした。
絶縁性部材を表面に付着させた金属微粒子6として、銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を用い、絶縁体の微粒子5として、球状シリカ粒子(平均径110nm)を用いた。
各微粒子を分散させた溶液の作成方法を、図3を用いて説明する。10mLの試薬瓶にトルエン溶媒を3mL入れ、その中に0.5gのシリカ粒子を投入する。ここで試薬瓶を超音波分散器にかけ、シリカ粒子の分散を行う。この後0.055gの銀金属微粒子を追加投入し、同様に超音波分散処理を行う。こうして絶縁体の微粒子(シリカ粒子)の配合割合が90%となる分散溶液が得られる。
スピンコート法による成膜条件は、分散溶液の基板への滴下後に、500RPMにて5sec続いて3000RPMにて10sec、基板の回転を行う事とした。この成膜条件を3度繰り返し、基板上に3層堆積させた後、室温で自然乾燥させた。膜厚は約1500nmであった。
基板2の表面に微粒子層4を形成後、マグネトロンスパッタ装置を用いて薄膜電極3を成膜する。成膜材料として金を使用し、薄膜電極3の層厚は12nm、同面積は0.28cmとした。
上記のように作製した電子放出素子について、図4に示すような測定系を用いて電子放出実験を行った。図4の実験系では、電子放出素子1の薄膜電極3側に、絶縁体スペーサ9を挟んで対向電極8を配置させる。そして、電子放出素子1および対向電極8は、それぞれ、電源7に接続されており、電子放出素子1にはV1の電圧、対向電極8にはV2の電圧がかかるようになっている。このような実験系を1×10−8ATMの真空中に配置して電子放出実験を行い、さらに、このような実験系を大気中に配置して電子放出実験を行った。これらの実験結果を図5〜7に示す。
図5は、真空中にて電子放出実験した際の電子放出電流を測定した結果を示すグラフである。ここで、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図5に示すように、1×10−8ATMの真空中において、シリカ粒子の重量比率が、70%では電子放出が見られないのに対し、80、90、95%では電子放出による電流が観測された。その値は、10Vの電圧印加で10−7A程度であった。
図6は、上記と同様、真空中において電子放出実験した際の素子内電流を測定した結果を示すグラフである。ここでも、上記と同様、V1=1〜10V、V2=50Vとした。図6から、シリカ粒子の割合が70%では抵抗値が足りずに絶縁破壊を起こしている(電流値が振り切れ、グラフ上部に張り付いている)ことがわかる。金属微粒子の配合比が多くなると、金属微粒子による導電パスが形成され易くなり、微粒子層4に低電圧で大電流が流れてしまう。このため、弾道電子発生の条件が成立しないと考えられる。
図7は、シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、V1=1〜15V,V2=200Vとして、大気中で電子放出実験した際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。
図7に示すように、大気中で、V1=15Vの電圧印加で10−10A程度の電流が観測された。
さらに、図8は、図7と同様シリカ粒子の割合が90%の電子放出素子を用いて、ここでは、V1=15V,V2=200Vの電圧印加で大気中にて連続駆動させた際の、電子放出電流および素子内電流を測定した結果を示すグラフである。図8に示す通り、6時間経っても安定的に電流を放出し続けた。
図9に電子放出性能が良好であったシリカ90%の割合で混合した粒子について、電子加速層のTEM写真を示す。原理説明したように、アルコラート皮膜ナノ金属粒子が自己組織化により、シリカに多数付着し、塊(アルコラート皮膜金属微粒子の凝集体)を形成していることがわかる(黒く見えている部分)。シリカの平均径は110nmであり、30nm〜100nm程度のアルコラート皮膜ナノ金属粒子の配列構造は平面状あるいは高さにも積層された3次元的な配列構造であると推定される。この規則正しく整列した構造、すなわち平面状あるいは3次元的に塊を持った配列構造によって弾道電子が放出されているといえる。図4では、点在しているアルコラート皮膜金属微粒子の凝集体と凝集体との間、すなわち矢印の方向に弾道電子が放出されると推定される。
本実施例では、自己組織化膜の形成時に、室温で放置して凝集体を形成したが、溶媒の沸点以下の温度で加熱後に放置することで形成しても良い。用いる溶媒の蒸気圧によって異なるが、できるだけゆっくりと蒸発させるのが自己組織化膜を形成するのに必要な条件であることがわかった。
(比較例1)
実施例1と同様に、溶媒にはトルエンを用い、絶縁被膜された金属微粒子6として銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)と、絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)とを、粒子全体(銀金属微粒子およびシリカ粒子)に対するシリカ粒子の比率90w%で混合して分散させ、溶液Aを作成した。また、溶媒にはトルエンを用い、絶縁体の微粒子5としてシリカ粒子(平均径100nm)を溶液Aと同様の重量を投入し、溶液Bを作成した。これらの溶液を用い、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで溶液Aを1層堆積させ、その後、同様の回転数で溶液Bを2層堆積させた。自己組織化作用を発現させるために、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は実施例1と同様約500nmであった。実施例1と同様の方法で電子放出実験を行なったが、電子放出は10Vの電圧印加で10−11程度と実施例1に比べて相当低かった。
(比較例2)
さらに、溶媒にはトルエンを用い、絶縁被膜された金属微粒子6として銀金属微粒子(平均径10nm、うち絶縁被膜アルコラート1nm厚)を溶液Aと同様の重量を投入し、溶液Cを作成した。溶液A、溶液B、溶液Cを用い、スピンコートは500RPM・5sec+3000RPM・10secで溶液Aを1層堆積させ、同様の回転数で溶液Cを2層、最後に溶液Bを2層堆積させた。自己組織化作用を発現させるために、焼成は行わずに室温で自然乾燥させた。膜厚は同様約550nmであった。実施例1と同様の方法で電子放出実験を行なったが、絶縁破壊を起こし、測定できなかった。
実施例と比較例1、2の結果から、上記電子放出原理が正しいことが推定される。
本発明は、電子放出素子に関するものである。適用例として、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイや、電子線照射装置、光源、電子部品製造装置、電子回路部品のような電子線源として適用できる。
1 電子放出素子
2 第一の導電性部材(電極基板)
3 第二の導電性部材(薄膜電極)
4 微粒子層(電子加速層)
5 絶縁体の微粒子(絶縁性部材)
6 金属微粒子(絶縁皮膜ナノ微粒子)
7 電源(電源部)
8 対向電極
9 絶縁体スペーサ

Claims (15)

  1. 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子において、
    前記導電性部材間に絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体を複数形成したことを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記凝集体の大きさは、第一の導電性部材と第二の導電性部材に電圧を印加した場合に、絶縁破壊が起こらないような大きさに形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. 上記絶縁皮膜された金属微粒子の凝集体は、絶縁体に付着していることを特徴とする請求項1,2記載の電子放出素子。
  4. 上記絶縁皮膜金属微粒子を成す導電体部分は、金、銀、白金、パラジウム、及びニッケルの少なくとも1つの物質を含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子放出素子。
  5. 上記絶縁皮膜金属微粒子を成す導電体部分の平均径は、3〜20nmであることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の電子放出素子。
  6. 上記絶縁性部材は、SiO、Al、及びTiOの少なくとも1つを含んでいる、または有機ポリマーを含んでいることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電子放出素子。
  7. 上記絶縁性部材が微粒子であり、その平均径は、10〜1000nmであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の電子放出素子。
  8. 上記電子放出素子における上記絶縁性部材と絶縁皮膜金属微粒子の割合が、重量比で4:1〜19:1であることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の電子放出素子。
  9. 上記第一の導電性部材と第二の導電性部材の間隔は、100〜6000nmであることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の電子放出素子。
  10. 上記第二の導電性部材は、金、銀、炭素、タングステン、チタン、アルミ、及びパラジウムの少なくとも1つを含んでいることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の電子放出素子。
  11. 上記絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、電子をトンネルさせることが可能な厚みであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の電子放出素子。
  12. 上記絶縁皮膜金属微粒子の絶縁被膜は、アルカン、アルコール、脂肪酸、アルカンチオール、炭化水素系シラン化合物、有機系界面活性剤の少なくとも1つを含んでいること特徴とする、請求項11に記載の電子放出素子。
  13. 第一の導電性部材と、第二の導電性部材が互いに向かい合うように形成され、該導電性部材間に電圧を印加することにより、電子を放出する電子放出素子の製造方法であって、
    第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程を有する電子放出素子の製造方法。
  14. 上記第一の導電性部材に絶縁体と絶縁皮膜金属微粒子を形成する工程と、一部の絶縁皮膜金属微粒子を凝集させる工程は、ともに自己組織化作用による工程であることを特徴とする請求項13記載の電子放出素子の製造方法。
  15. 前記、絶縁皮膜された金属微粒子を凝集させる工程は、溶媒に絶縁皮膜金属微粒子を超音波により分散させる工程と、室温で放置するあるいは溶媒の沸点以下の温度で加熱後に放置する工程とを含むことを特徴とする請求項13あるいは14の何れかに記載の電子放出素子の製造方法。
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