JP2010196107A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外輪3と内輪5と各玉6、6との何れかの部材を、水素の侵入を遅延できるCrを2.5〜5.0質量%含有し、芯部での硬さを抑え、破壊靱性値を高く確保するべく、Cを0.15〜0.30質量%含有し、Si、Mn、Mo、Ni、Cu、S、P、Al、N、Ti、Oを適正量含有する合金鋼製とする。そして、浸炭窒化処理或いは浸炭処理及び焼入れ焼戻し処理により、各玉6の直径の1%及び15%に相当する長さをX及びYとした場合に、転がり接触面から深さX位置でのC+N濃度を0.9〜1.5質量%とし、同じく硬さをHv674〜800とし、同じく残留γ量を20〜50容量%とする。又、深さY位置での硬さをHv513以下とする。これにより、上記課題を解決できる。
【選択図】図1
Description
尚、特許文献5には、大型の転がり軸受の構成各部材の靱性を確保する事を目的とした発明が記載されているが、上記特許文献5に記載された発明の場合には、組織変化型剥離の発生を抑える事に就いては全く意図していない。
このうちの第一の軌道輪は、何れかの面に第一の軌道面を有する。
又、上記第二の軌道輪は、この第一の軌道面と対向する面に第二の軌道面を有する。
又、上記各転動体は、これら第一、第二の両軌道面同士の間に転動自在に設けられている。
そして、この様な合金鋼製の部材に、浸炭窒化処理或いは浸炭処理、及び、焼入れ・焼戻し処理を施している。
これにより、上記各転動体の直径の1%に相当する長さをXとした場合に、転がり接触面(第一の軌道面、第二の軌道面、各転動体の転動面)の表面からの深さX位置でのC+N濃度を0.9〜1.5質量%とし、同じく硬さをHv674〜800(HRC59〜64)とし、同じく残留オーステナイト量を20〜50容量%(vol%)としている。
更に、上記各転動体の直径の15%に相当する長さをYとした場合に、上記転がり接触面の表面からの深さY位置での硬さをHv513(HRC50)以下としている。
尚、転動体の直径とは、転がり軸受が玉軸受の場合には玉の直径を、円筒ころ軸受の場合にはころの直径を、円すいころ軸受及び自動調心ころ軸受の場合には、ころの直径のうちの最大径を言う(本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ)。
或いは、請求項3に記載した発明の様に、本発明の転がり軸受を、風力発電装置或いは変速機の回転支持部に組み込む。
この様な効果を得られる理由、並びに、各数値等を上述の様に規制した理由に就いて、以下に説明する。
先ず、組織変化の抑制は、鋼中にCr及びMoを適正量含有すると共に、深さX位置でのC+N濃度を0.9〜1.5質量%とし、同じく残留オーステナイト量を20〜50容量%とする事により図れる。
即ち、Cr及びMoは、水素が鋼中に侵入する速度を低下させて、耐水素脆性を向上させると共に、鋼中に水素が侵入した場合にも基地組織を安定化させて、水素による組織変化を遅延させる。又、熱処理により表層部に形成される硬化層中のC及びNは、細かく分散した炭化物及び炭窒化物を形成し、鋼中に侵入した水素をトラップする。又、残留オーステナイトも同様に、鋼中に侵入した水素をトラップする。従って、上記表層部(硬化層)での水素濃度が局所的に高くなる事を防止できる。この結果、本発明の場合には、組織変化の発生を効果的に抑制できる。
即ち、本発明の場合には、鋼中のC含有量を低く抑えると共に熱処理条件を適正にする事により、熱処理後の深さX位置での硬さの上限値をHv800(HRC64)とし、深さY位置での硬さの上限値をHv513(HRC50)として、表層部に比べて芯部(内部)の硬さを抑えている。これにより、この芯部の破壊靱性値を高く確保している。又、鋼中のAl、N、Ti、Oの含有量を最適化する事で結晶粒径の成長を制御すると共に、S、Pの含有量を最適化する(上限値を規定する)事により結晶粒界の不純物偏析を制御して、破壊靱性値を高く確保している。この結果、本発明の場合には、芯部の破壊靭性値を高く確保できて、亀裂が深さ方向に進展する事を効果的に抑制できる。この為、比較的大型の転がり軸受の場合にも、割損等の損傷が発生する事を有効に防止できる。
次に、本発明で転がり軸受の構成各部材を構成する合金鋼中の合金元素の含有量(添加量)を規制した理由、及び、転動体の直径を基準として、直径の1%に相当するX位置でのC+N濃度、硬さ、残留オーステナイト量を規制した理由、同じく直径の15%に相当するY位置での硬さを規制した理由に就いて、それぞれ説明する。
C(炭素)は、焼入れ処理によって基地に固溶し、硬さを向上させる元素であり、芯部の破壊靱性値に大きな影響を及ぼす元素である。鋼中のC含有量が0.15質量%未満になると、焼入れ後の芯部の硬さが不足して変形を生じ易くなる。又、浸炭窒化処理或いは浸炭処理を施す事によって表層部のC濃度を好適にする為には、浸炭時間が長くなり、生産性の低下を招く。これに対して、C含有量が0.30質量%を超えると、焼入れ後の芯部の硬さが高くなり過ぎて、この芯部の破壊靭性値が低下する。この為、本発明の場合には、C含有量を0.15〜0.30質量%の範囲に規制している。
Si(ケイ素)は、製鋼時に脱酸剤として作用する。又、基地に固溶して焼入れ性を向上させると共に、マルテンサイトの強度を向上させる効果がある。更に、焼戻し軟化抵抗性を向上させる事もできる為、高温になっても転がり疲労寿命が低下する事を抑制できる。Si含有量が0.1質量%未満になると、これらの効果を十分に得る事はできない。但し、1.0質量%を超えると、冷間加工性及び被削性が低下する。この為、本発明の場合には、Si含有量を0.1〜1.0質量%の範囲に規制している。尚、好ましくは品質の安定性を考慮して、Si含有量を0.3〜1.0質量%とする。
Mn(マンガン)は、基地に固溶して、焼入れ性を向上させる効果がある。又、オーステナイトを安定化する働きがある為、熱処理後の残留オーステナイト量を十分に確保し易くする効果がある。Mn含有量が0.5質量%未満になると、これらの効果を十分に得る事ができない。但し、1.2質量%を超えると、残留オーステナイト量が必要以上に増加し、寸法安定性及び形状安定性を確保する面から不利になる。この為、本発明の場合には、Mn含有量を0.3〜1.2質量%の範囲に規制している。尚、好ましくは、品質の安定性を考慮して、Mn含有量を0.8〜1.2質量%とする。
Cr(クロム)は、基地に固溶して、焼入れ性を向上させると共に、Cと結合して炭化物を形成する炭化物形成元素であり、耐摩耗性を向上させる効果がある。特に、Cと結合して形成される炭化物{(Fe,Cr)3 C、(Fe,Cr)7 C3 等}は、鋼中の非金属介在物に代わって、水素をトラップする。しかも、鋼中に存在する炭化物は、非金属介在物の様に同時に多数の水素をトラップする事なく、一つの炭化物で少数の水素をトラップする。この為、鋼中に侵入した水素は、炭化物にトラップされる事により、鋼中に均等に分散される。又、Crは、CやN等の侵入型固溶元素を動きにくくして、基地組織を安定化する。この為、水素の侵入を抑制する事ができて、組織変化を遅延させる事ができる。Cr含有量が2.5質量%未満であると、これらの効果を十分に得る事ができない。但し、Cr含有量が5.0質量%を超えると、熱処理特性、冷間加工性、被削性が低下して、生産コストの上昇等を招く恐れがある。この為、本発明の場合には、Cr含有量を2.5〜5.0質量%の範囲に規制している。尚、好ましくは品質の安定性を考慮して、Cr含有量を3.1〜5.0質量%とする。
Mo(モリブデン)は、焼入れによる表面硬さの向上を図ると共に、耐摩耗性及び転がり疲れ寿命を向上させ、更に、耐水素脆性を確保する為に添加する。即ち、Moは、基地に固溶して、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上させ、必要な硬さを得る事ができる。又、鋼中に硬い炭化物を形成し、耐摩耗性及び転がり疲れ寿命を向上させる。更に、上述したCrと同様に、水素が鋼中に侵入する速度を低下させるだけでなく、鋼中に水素が侵入した場合にも、基地組織を安定化させて、水素による転がり疲れ寿命の低下を抑制する。即ち、水素による組織変化を遅延させる。但し、含有量が1.0質量%を超えると、冷間加工性、被削性が低下する。この為、本発明の場合には、Mo含有量を1.0質量%以下に規制している。尚、好ましくは品質の安定性を考慮して、Mo含有量を0.3〜1.0質量%とする。
Ni(ニッケル)は、焼入れ性を向上させる効果がある。又、多量に添加すると靱性の向上も図れる。但し、ニッケルは、非常に高価な元素であり、多量に添加すると材料コストが嵩む。この為、本発明の場合には、Ni含有量を0.3質量%以下としている。
Cu(銅)は、焼入れ性を向上させる効果と、粒界強度を向上させる効果がある。但し、含有量が多くなると熱間鍛造性を低下させる。この為、本発明の場合には、Cu含有量を0.3質量%以下としている。
S(イオウ)は、Mnと結合して、内部起点型剥離の起点となる非金属介在物であるMnSを形成する。この為、鋼中のS含有量は少ない(可及的に0に近づける)方が好ましい。又、結晶粒界に偏析して、芯部の破壊靱性値に大きな影響を及ぼす。即ち、含有量が0.02質量%を超えると、破壊靭性値が低下する。この為、本発明の場合には、S含有量を0.02質量%以下としている。
P(リン)は、結晶粒界に偏析して、芯部の破壊靱性値に大きな影響を及ぼす。即ち、P含有量が0.02質量%を超えると、破壊靭性値が低下する。この為、本発明の場合には、P含有量を0.02質量%以下としている(可及的に0に近づける)。
Al(アルミニウム)は、製鋼時に脱酸剤として作用する。又、Nと結合してAlNを形成し、熱処理時の加熱による芯部の結晶粒成長を抑制する。芯部の結晶粒経は、芯部の破壊靭性値に大きな影響を及ぼし、この芯部の結晶粒径は、平均20μm以下とする事が好ましい。特に、比較的大型の転がり軸受では、浸炭窒化処理或いは浸炭処理を施す際の保持時間が長くなり、結晶粒が成長し易い為、Alによる結晶粒成長抑制効果は重要になる。Alが0.02質量%未満であると、これらの効果を十分に得る事ができない。但し、0.05質量%を超えると、非金属介在物であるAl2 O3 が形成され易くなり、転がり疲労寿命の低下を招く恐れがある。この為、本発明の場合には、Al含有量を0.02〜0.05質量%としている。
N(窒素)は、Alと結合してAlNを形成して、熱処理時の加熱による芯部の結晶粒成長を抑制する。芯部の結晶粒径は、芯部の破壊靱性値に大きな影響を及ぼす(結晶粒径は小さい程良い)。上述したAlと同様に、比較的大型の転がり軸受に於いては、Nによる結晶粒成長抑制効果は重要になる。Nが0.01質量%未満であると、これらの効果を十分に得る事ができなくなる。但し、0.03質量%を超えると、非金属介在物であるTiNが形成され易くなり、転がり疲労寿命の低下を招く恐れがある。この為、本発明の場合には、N含有量を0.01〜0.03質量%としている。
Ti(チタン)は、非金属介在物であるTiNを形成して、転がり疲労寿命に悪影響を及ぼす。この為、鋼中へのTi含有量は少ない方が好ましい。又、TiNが形成されると、結晶粒径の粒成長を抑制する効果のあるAlNの形成が阻害される。特に、Ti含有量が50質量ppm を超えると、転がり疲労寿命に低下が生じ、AlNによる結晶粒成長抑制の効果が阻害される。この為、本発明の場合には、Ti含有量を50質量ppm 以下としている。
O(酸素)は、非金属介在物であるAl2 O3 等の酸化物を形成して、転がり疲労寿命に悪影響を及ぼす。この為、鋼中へのO含有量は少ない方が好ましい。又、Al2 O3 が形成されると、上述したTiの場合と同様に、結晶粒径の粒成長を抑制する効果のあるAlNの形成が阻害される。特に、O含有量が12質量ppm を超えると、転がり疲労寿命に低下が生じ、AlNによる結晶粒成長抑制の効果が阻害される。この為、本発明の場合には、Oの含有量を12質量ppm 以下としている。
軌道輪と転動体との転がり接触部には接触面圧が作用し、この接触面圧によって、これら軌道輪及び転動体を構成する材料内部には剪断応力が作用する。ここで、この剪断応力の深さ方向への分布と、転動体の直径の大きさとの間には密接な関係があり、転がり軸受の使用条件によって絶対値は変化するものの、転動体の直径の1%に相当する長さをXとした場合に、転がり接触面の表面から深さX位置には、相対的に高い剪断応力が作用する。従って、水素による組織変化が発生する場合には、この深さX位置付近に発生する可能性が高くなる。この様な事情に鑑みて、本発明の場合には、組織変化が発生する可能性の高い、深さX位置のC+N濃度、硬さ、残留オーステナイト量を規定して、組織変化の発生を抑制する事を意図している。
浸炭窒化処理を施す事によって、表層部のC濃度及びN濃度が高くなる為、この表層部には、焼入れ・焼戻し処理後に硬化層が形成される。ここで、転がり疲労に対する強度は硬さが高い程向上する為、深さX位置の様に、高い剪断応力が作用する部分では、硬さは高い方が好ましい。深さX位置での硬さがHv674未満であると、硬さが不足する事により転がり疲労寿命が低下する。但し、Hv800を超えると、破壊靭性値の低下を招く。この為、本発明の場合には、深さX位置での硬さを、Hv674〜Hv800(HRC59〜64)の範囲に規制している。
C及びNは、細かく分散した炭化物及び炭窒化物を形成する。これら炭化物及び炭窒化物は、転がり接触面の表面から水素が侵入した場合に、この水素をトラップする効果がある。この為、水素が局所的に濃化する(水素濃度が局所的に上昇する)事を抑制して、組織変化の発生を遅延させる事ができる。深さX位置でのC+N濃度が0.9質量%未満であると、組織変化を遅延させる効果が不足する。但し、1.5質量%を超えると、表層部(硬化層)の破壊靱性値の低下が無視できなくなる。この為、本発明の場合には、深さX位置でのC+N濃度を、0.9〜1.5質量%の範囲に規制している。
残留オーステナイトは、マルテンサイト中に細かく分散して、転がり接触面の表面から水素が侵入した場合に、水素をトラップする効果がある。この為、水素が局所的に濃化する事を抑制して、組織変化の発生を遅延させる事ができる。深さX位置での残留オーステナイト量が20容量%未満であると、組織変化を遅延させる効果が不足する。但し、50容量%を超えると、硬さの低下を招き、転がり疲労寿命の低下が無視できなくなる。この為、本発明の場合には、深さX位置での残留オーステナイト量を、20〜50容量%としている。
軌道輪と転動体との転がり接触部での接触面圧によって、これら軌道輪及び転動体を構成する材料内部には剪断応力が作用するが、この剪断応力の大きさは、転がり接触面の表面では小さく、転動体の直径の1〜2%に相当する深さで最大となり、それ以上深くなるに従って小さくなる。剪断応力が高い領域では、転がり疲労に耐えるべく、高強度である必要があるが、剪断応力の低い領域では、亀裂が深さ方向に進展して割損が発生しない様に、或る程度大きな破壊靱性値を確保する事が重要となる。転動体の直径の15%に相当する長さをYとした場合に、転がり接触面の表面から深さY位置は、剪断応力が十分に低くなる領域であり、転がり疲労に耐える事を考慮するよりも、亀裂がそれ以上深さ方向に進展しない様にする事の方が重要となる。この様に、本発明の場合には、亀裂の進展の抑制を優先し、破壊靱性値を十分に高く確保する必要がある領域として、深さY位置を規定している。
一般的に知られている様に、硬さが低い方が破壊靱性値は高くなる。この為、深さY位置での硬さは、低い方が好ましい事になる。硬さがHv513を超えると、破壊靱性値が不足し、亀裂の深さ方向への進展を抑制する効果が小さくなる。この為、本発明の場合には、深さY位置での硬さを、Hv513以下(HRC50以下)としている。
尚、深さY位置での硬さをHv513以下に規制する為には、鋼中の合金成分、及び、焼入れ・焼戻し条件(温度、保持時間等)を適正に規制すると共に、浸炭窒化処理或いは浸炭処理の条件(温度、保持時間等)を制御して、浸炭窒化或いは浸炭による硬化層が深さY位置まで達しない様に規制する事が必要である。
上述の説明からも明らかな様に、転動体の直径が大きくなる程、剪断応力が作用する深さは深くなる。従って、転動体の直径が大きくなる程、組織変化に基づき発生する亀裂も、転がり接触面の表面から深い位置に発生する事になる。亀裂が進展して割損(破壊)に至るか否かを検討する場合、物理的なパラメータとして応力拡大係数Kを用いる事が考えられる。この応力拡大係数Kは、一般的に下記のパラメータで表される。
K=Fσ√(πa) (F:定数、σ:応力、a:亀裂長さ)
軌道輪が割損に至るか否かを検討する場合、亀裂長さaは、転がり接触面の表面から亀裂が存在する最大深さまでの長さに相当する。ここで、上述した様に、転動体の直径が大きくなる程、転がり接触面の表面から深い位置で亀裂が発生し易くなる為、上記亀裂長さaは大きくなる。この結果、上記応力拡大係数Kが大きくなり、割損が生じ易くなる事が分かる。特に、請求項2に記載した様に、転動体の直径が30mm以上になると、組織変化に伴い亀裂が発生した場合に割損が生じ易くなる。この為、転動体の直径を30mm以上とした場合に、芯部での破壊靱性値を高く確保できる、本発明の効果が特に顕著になる。
図面に表れる構造に就いては、前述の図1及び図2に示した構造を含め、従来から知られている各種転がり軸受と同様である為、具体的構造に就いての図示並びに説明は省略する。
ラジアル荷重 : 66.2kN
回転速度 : 2000min -1
潤滑油 : 鉱油系潤滑油(酸化防止剤、摩耗防止剤入り)
この様な条件により行った実験の結果を、各試料の性状と共に、次の表2に示す。尚、この試験条件は、潤滑油の分解によって発生する水素量が多く、この水素が内輪軌道4に侵入し易い厳しい条件である。
反対に、比較例2は、合金鋼中のC含有量が高すぎる事に起因して、深さY位置での硬さが高く、更に、P含有量が高い為、内部の破壊靱性値が低くなる。この為、剥離発生部分に深さ方向に進展した亀裂が発生している。
又、比較例3は、合金鋼中のSi及びMo含有量が高すぎる事に起因して、深さX位置及び深さY位置での硬さが高くなっている。この為、破壊靱性値が低くなり、剥離発生部分に深さ方向に進展した亀裂が発生している。
又、比較例4は、合金鋼中のCr含有量が低い事に起因して、水素による組織変化を遅延する効果が小さい。この為、組織変化型剥離が早期に発生し、転がり疲労寿命が短くなっている。又、合金鋼中のAl及びN含有量が低い為、破壊靱性値が低くなり、剥離発生部分に深さ方向に進展した亀裂が発生している。
又、比較例5は、合金鋼中のCr含有量が高すぎると共に、浸炭窒化処理(処理条件)が不適正であった事に起因して、深さX位置での残留オーステナイト量が多すぎる。更に、合金鋼中のAl及びO含有量が高すぎる為、非金属介在物であるAl2 O3 が生成され易くなっている。従って、転がり疲労寿命が短くなっている。
又、比較例6は、浸炭窒化処理と、焼入れ・焼戻し処理との少なくとも一つの処理が不適正であった為、深さX位置での残留オーステナイト量が低くなっている。この為、残留オーステナイトが、鋼中に侵入した水素をトラップする効果が小さく、本実施例の場合に比べて、転がり疲労寿命が短くなっている。
又、比較例7は、浸炭窒化処理と、焼入れ・焼戻し処理との少なくとも一つの処理が不適正であった為、深さX位置での硬さが低くなっている。この為、転がり疲労に対する材料強度が低く、本実施例の場合に比べて、転がり疲労寿命が短くなっている。
又、比較例8は、浸炭窒化処理条件が不適正であった為、深さX位置でのC+N濃度が低くなっている。この為、炭化物及び炭窒化物が、鋼中に侵入した水素をトラップする効果が小さく、本実施例の場合に比べて、転がり疲労寿命が短くなっている。
更に、比較例9は、水素の侵入を抑制する為の対策、及び、亀裂の深さ方向への進展を抑制する対策の何れもなされていない為、早期に組織変化型剥離が発生すると共に、亀裂も深さ方向に進展している。
2、2a 外輪軌道
3、3a 外輪
4、4a 内輪軌道
5、5a 内輪
6 玉
7、7a 保持器
8 ラジアル円すいころ軸受
9 円すいころ
10 大径側鍔部
11 小径側鍔部
Claims (3)
- 何れかの面に第一の軌道面を有する第一の軌道輪と、この第一の軌道面と対向する面に第二の軌道面を有する第二の軌道輪と、これら第一、第二の両軌道面同士の間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えた転がり軸受に於いて、
上記第一の軌道輪と上記第二の軌道輪と上記複数個の転動体との少なくとも1種の部材が、Cを0.15〜0.30質量%、Siを0.1〜1.0質量%、Mnを0.3〜1.2質量%、Crを2.5〜5.0質量%、Moを1.0質量%以下、Niを0.30質量%以下、Cuを0.30質量%以下、Sを0.02質量%以下、Pを0.02質量%以下、Alを0.02〜0.05質量%、Nを0.01〜0.03質量%、Tiを50質量ppm 以下、Oを12質量ppm 以下含有し、残りをFeと不可避不純物とした合金鋼製で、
浸炭窒化処理或いは浸炭処理、及び、焼入れ・焼戻し処理を行う事により、
上記各転動体の直径の1%に相当する長さをXとした場合に、運転時に相手面と転がり接触する面の表面からの深さX位置でのC+N濃度が0.9〜1.5質量%であり、同じく硬さがHv674〜800であり、同じく残留オーステナイト量が20〜50容量%であり、
上記各転動体の直径の15%に相当する長さをYとした場合に、上記転がり接触する面の表面からの深さY位置での硬さがHv513以下である事を特徴とする転がり軸受。 - 転動体の直径が30mm以上である、請求項1に記載した転がり軸受。
- 風力発電装置或いは変速機の回転支持部に組み込まれる、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受。
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