JP2010189204A - チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法、ならびにチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法 - Google Patents
チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法、ならびにチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】押出方向と径方向との熱膨張率、収縮率の差が低減されたチタン酸アルミニウム系焼結体を製造できる方法を提供する。
【解決手段】チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法、ならびに、当該製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法、ならびに、当該製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法、ならびに、当該製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を用いたチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法に関する。
チタン酸アルミニウム系セラミックスは、構成元素としてチタンおよびアルミニウムを含み、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムの結晶パターンを有するセラミックスであって、耐熱性に優れたセラミックスとして知られている。チタン酸アルミニウム系セラミックスは、従来からルツボのような焼結用の冶具などとして用いられてきたが、近年では、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれる微細なカーボン粒子を捕集するためのセラミックスフィルターを構成する材料として、産業上の利用価値が高まっている。
チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法としては、チタニアなどのチタニウム源粉末およびアルミナなどのアルミニウム源粉末に、造孔剤、バインダー、水などを混合したペースト状の原料混合物を押出成形し、焼結する方法が知られている。
上述したチタン酸アルミニウム系焼結体を製造する際、原料混合物の押出成形には、通常、供給孔と、当該供給孔と連通する交差スリットを有するダイが用いられる。原料混合物は、供給孔から交差スリットへ供給され、交差スリットから押し出されることで、ハニカム状など所望の形状に成形される。通常用いられるダイでは、供給孔の中心は交差スリットの交差部の中心と一致し、交差部から押し出される部分では、チタニウム源粉末とアルミニウム源粉末は供給孔から供給されたままの状態であり配向していない。しかしながら、供給孔の隔壁に対向する交差スリットでは、隣接する供給孔からの流れどうしが衝突し合流して流れるため、アルミニウム源粉末として好適に用いられる柱状や板状のアルミナ粒子はその部分で押出方向に沿って配向しようとする。
そのため、押出成形の際、柱状や板状のアルミナ粒子は押出方向に沿って配向し易くなるため、焼結時においては押出方向の熱膨張率は大きいものの径方向(押出方向に直交する方向)の熱膨張率、収縮率が小さくなり、熱膨張率、収縮率に異方性が生じて熱応力によるクラックの原因となるという問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、押出方向と径方向との熱膨張率、収縮率の差が低減されたチタン酸アルミニウム系焼結体を製造できる方法を提供することである。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法は、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含むことを特徴とする。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法における粉粒体は、平均粒径5〜100μmの造粒品であることが好ましく、10〜45μmの造粒品であることがより好ましい。
本発明はまた、上述した本発明の方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法についても提供する。
本発明によれば、押出方向と径方向との熱膨張率、収縮率の差が低減されたチタン酸アルミニウム系焼結体を製造することができる。
<チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法>
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法は、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含むことを特徴とする。このようにセラミックススラリーから粉粒体を造粒することで、加熱により造粒体中に含まれるチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末をランダムに凝集させ、この凝集したチタン源粉末およびアルミニウム源粉末どうしを融合させた状態で保持させることができる。このような粉粒体中においてはチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末が配向することなく、さらに、当該粉粒体を焼結して得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体に結合剤、溶媒などを添加した原料混合物を押出成形したとしてもチタン酸アルミニウム系粒状焼結体は変形しないため、チタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の配向は生じない。これによって、押出成形によって得られた成形体中ではチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の配向が生じず、これを焼結することで、熱膨張率、収縮率の異方性のないチタン酸アルミニウム系焼結体を得ることができる。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法は、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含むことを特徴とする。このようにセラミックススラリーから粉粒体を造粒することで、加熱により造粒体中に含まれるチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末をランダムに凝集させ、この凝集したチタン源粉末およびアルミニウム源粉末どうしを融合させた状態で保持させることができる。このような粉粒体中においてはチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末が配向することなく、さらに、当該粉粒体を焼結して得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体に結合剤、溶媒などを添加した原料混合物を押出成形したとしてもチタン酸アルミニウム系粒状焼結体は変形しないため、チタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の配向は生じない。これによって、押出成形によって得られた成形体中ではチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の配向が生じず、これを焼結することで、熱膨張率、収縮率の異方性のないチタン酸アルミニウム系焼結体を得ることができる。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法において、セラミックススラリーから粉粒体を造粒する方法としては、たとえばスプレードライ法、転動造粒法など公知の方法を利用できる。セラミックススラリーに含まれるチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末は、仮焼または火炎溶融によって、粉粒体中において融合させた状態とすることができる。この融合は、当該粉粒体を焼結して得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を用いた後述するチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法における押出成形の際の応力で破壊されない程度の力であればよい。
なお、融合時には、粉粒体同士の融着を防止するために、ロータリーキルンなどで流動させながら仮焼することが好ましい。仮に粉粒体同士の融着が生じた場合には、得られた粉粒体を解砕・分級する工程が必要となる。この場合には、粉粒体が一次粒子にまで解砕されるのを防止するため、時間や解砕条件を調節して行うことが望ましい。
粉粒体は、押出成形時にダイの交差スリットを通過できる大きさであればよく、その粒径は特に制限されるものではないが、平均粒径5〜100μmの造粒品であることが好ましく、平均粒径10〜45μmの造粒品であることがより好ましい。粉粒体の平均粒径が5μm未満である場合には、粒子は凝集しやすくなるため、押出成形時の圧力が大きくなり押出しにくい傾向にあるためであり、また、粉粒体の平均粒径が100μmを超える場合には、交差スリットでつまりが生じ、圧力損失が増大し、均一な押出ができなくなる傾向にあるためである。なお、上記粉粒体の平均粒径は、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)を指す。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法において、セラミックススラリーに含有されるチタニウム源粉末は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体およびチタン酸アルミニウム系焼結体(後述)を構成するチタン成分となる化合物の粉末であり、かかる化合物としては、たとえば酸化チタンの粉末が挙げられる。酸化チタンとしては、たとえば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
本発明で用いられるチタニウム源粉末は、空気中で焼結することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
上述した中でも、チタニウム源粉末としては、酸化チタン粉末が好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)粉末である。なお、チタニウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
チタニウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜30μmの範囲内であるものを用いる。チタニウム源粉末同士の隙間に、粒径の小さい水酸化アルミニウム粉末が充填され、より緻密な原料混合物の成形体を得るためには、チタニウム源粉末のD50は、好ましくは0.5〜20μmの範囲内である。
また、本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法において、セラミックススラリーに含有されるアルミニウム源粉末とは、チタン酸アルミニウムを構成するアルミニウム成分となる化合物の粉末であり、たとえばアルミナ(酸化アルミニウム)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、アモルファスであってもよい。アルミナとしては、焼結時の結晶変態がなく、収縮が小さいため、α型のアルミナが好ましい。
アルミニウム源粉末として、空気中で焼結することによりアルミナに導かれる化合物の粉末も挙げられる。かかる化合物としては、たとえばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩として具体的には、たとえば硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩、炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩が挙げられる。アルミニウム有機酸としては、たとえばシュウ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
アルミニウムアルコキシドとして具体的には、たとえばアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
水酸化アルミニウムの結晶型としては、たとえばギブサイト型、バイヤライト型、ノルストランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、たとえばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水酸化アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
アルミニウム源粉末として、好ましくはアルミナ源である。なお、アルミナ源は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
アルミニウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、アルミニウム源粉末が、石垣効果、すなわち、粒径の大きい粉末同士の隙間に、粒径の小さい粉末が充填され、より緻密な原料混合物の成形体を得るためには、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜60μmの範囲内であるものを用いることが好ましく、2〜40μmの範囲内であるものを用いることがより好ましい。
チタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の使用量は、チタニア〔TiO2〕換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ〔Al2O3〕換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100重量部中、通常、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量が30〜70重量部、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量が70〜30重量部であり、好ましくはチタニア換算のチタニウム源粉末の使用量が40〜60重量部、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量が60〜40重量部である。また、得られる多孔質焼結体の耐熱性を向上させるために、アルミニウム源粉末の使用量は、得られる多孔質焼結体中のアルミニウム成分の含有率が、アルミナ〔Al2O3〕換算で35重量%以上となるように調整されることが好ましく、40重量%以上となるように調整されることがより好ましい。
セラミックススラリーは、マグネシウム源粉末を含有していてもよく、この場合、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体およびチタン酸アルミニウム系焼結体として、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶からなる焼結体を得ることができる。マグネシウム源粉末としては、たとえば、マグネシア(酸化マグネシウム)の粉末が挙げられる。
マグネシウム源粉末は、空気中で焼結することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることもできる。このような化合物としては、たとえば、マグネシアスピネル(MgAl2O4)が挙げられる。なお、マグネシウム源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
マグネシウム源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜30μmの範囲内であるものが用いられ、原料混合物の成形体の充填率をより向上させるためには、D50が0.5〜15μmの範囲内であるマグネシウム源粉末を用いることが好ましい。
原料混合物がマグネシウム源粉末を含む場合、マグネシウム源粉末の含有量は、チタニア〔TiO2〕換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ〔Al2O3〕換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100重量部に対して、マグネシア〔MgO〕換算のマグネシウム源粉末の使用量で、通常0.1〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。
また、セラミックススラリーは、ケイ素源粉末をさらに含有していてもよい。ケイ素源粉末は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム系粒状焼結体およびチタン酸アルミニウム系焼結体に含まれる化合物の粉末であり、ケイ素源粉末の併用により、耐熱性がより向上されたチタン酸アルミニウム系焼結体を得ることが可能となる。ケイ素源粉末としては、たとえば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)の粉末が挙げられる。
また、ケイ素源粉末は、空気中で焼結することによりシリカに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ガラスフリットなどが挙げられる。中でも、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。
ガラスフリットを用いる場合、得られるチタン酸アルミニウム系焼結体の耐熱分解性を向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。本発明において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
上記ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50重量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al2O3〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していることが好ましい。ZrO2の含有量は、10重量%以下程度とすることができる。
ケイ素源粉末の粒径は、特に限定されないが、通常、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜30μmの範囲内であるものが用いられ、原料混合物の成形体の充填率をより向上させるためには、D50が1〜20μmの範囲内であるケイ素源粉末を用いることが好ましい。
原料混合物がケイ素源粉末を含む場合、ケイ素源粉末の含有量は、チタニア〔TiO2〕換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ〔Al2O3〕換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100重量部に対して、シリカ〔SiO2〕換算のケイ素源粉末の使用量で、通常0.1〜20重量部であり、好ましくは1〜10重量部である。なお、ケイ素源粉末は、その原料由来あるいは製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
なお、本発明では、上記マグネシアスピネル(MgAl2O4)などの複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、ケイ素およびマグネシウムのうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を用いることもでき、この場合、そのような化合物は、それぞれの金属源化合物を混合したものと同じであると考えることができる。
また、セラミックススラリーにはチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウム自体が含まれていてもよく、たとえばチタン酸アルミニウムマグネシウムを使用する場合、該チタン酸アルミニウムマグネシウムは、チタニウム源、アルミニウム源およびマグネシウム源を兼ね備えた原料に相当する。
セラミックススラリーは、上述したチタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末(場合によっては、さらにマグネシウム源粉末およびケイ素源粉末)を溶解させない分散媒(非溶媒)と混合し、分散させることで調製される。このような分散媒としては、たとえば水、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられ、中でも、汎用的で表面張力が大きく造粒が容易であるため、水が好ましい。分散媒の使用量についても特に制限されないが、好ましくは1〜100重量部の範囲内、より好ましくは20〜50重量部の範囲内である。
本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法においては、上述したセラミックススラリーから粉粒体を造粒した後、当該粉粒体を焼結する。粉粒体の焼結における焼結温度は、1350℃以上であることが好ましく、1400℃以上であることがより好ましい。粉粒体の焼結温度が1350℃未満である場合には、均一なチタン酸アルミニウム系粒状焼結体が得られにくくなる虞があるためである。また、焼結温度が高すぎると、焼結時の収縮が大きく、寸法精度を確保するのが難しいだけでなく、焼結炉の価格や焼結コストが高価になってしまうという観点から、粉粒体の焼結温度は1650℃以下であることが好ましく、1550℃以下であることがより好ましい。焼結に要する時間は、粉粒体がチタン酸アルミニウム系結晶に遷移するのに十分な時間であればよく、用いるチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、ケイ素源粉末およびマグネシウム源粉末の量、焼結炉の形式、焼結温度、焼結雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。なお、長石やガラスフリットなどのケイ素源粉末を含む場合には、ケイ素源を溶融させ、液相焼結を促進させる目的で、1100〜1350℃の温度範囲内で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。
粉粒体の焼結は通常、大気中で行なわれるが、用いるチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、ケイ素源粉末およびマグネシウム源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼結してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼結してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼結を行なってもよい。
粉粒体の焼結は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼結炉を用いて行なわれる。焼結は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
<チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法>
本発明はまた、上述した本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法についても提供する。本発明のチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法に用いられる原料混合物は、上述したチタン酸アルミニウム系粒状焼結体に、たとえば、造孔剤、バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒などの添加剤を添加して調製される。
本発明はまた、上述した本発明のチタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法についても提供する。本発明のチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法に用いられる原料混合物は、上述したチタン酸アルミニウム系粒状焼結体に、たとえば、造孔剤、バインダ、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒などの添加剤を添加して調製される。
原料混合物に用いられる造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物系材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体100重量部に対して、通常、0.1〜30重量部であり、好ましくは1〜20重量部である。
原料混合物に用いられるバインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス;EVA、ポリエチレン、ポリスチレン、液晶ポリマー、エンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。バインダの添加量は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。
原料混合物に用いられる潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤および可塑剤の添加量は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部であり、好ましくは0.1〜1重量部である。
原料混合物に用いられる分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.05〜2重量部である。
また、原料混合物に用いられる溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体100重量部に対して、通常、0.1〜50重量部、好ましくは10〜40重量部である。
本発明のチタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法においては、上述した原料混合物を押出成形して成形体を得た後、当該成形体を焼結することにより、チタン酸アルミニウム系焼結体を得る。成形体の形状は特に制限されないが、たとえば、ハニカム形状、棒状、チューブ状、板状、るつぼ形状等を挙げることができる。押出成形には、従来公知の適宜の押出成形機を特に制限なく用いることができる。
成形体の焼結における焼結温度は、通常、1350℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、焼結温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1550℃以下である。焼結温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。原料混合物がバインダ等の添加燃焼性有機物を含む場合、焼結工程には、これを除去するための仮焼(脱脂)工程が含まれる。脱脂は、典型的には、焼結温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜800℃の温度範囲)になされる。脱脂工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
成形体の焼結は通常、大気中で行なわれるが、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼結してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼結してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼結を行なってもよい。
成形体の焼結は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼結炉を用いて行なわれる。焼結は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
成形体の焼結に要する時間は、原料混合物の量、焼結炉の形式、焼結温度、焼結雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜24時間である。
以上のようにして、目的のチタン酸アルミニウム系焼結体を得ることができる。このようなチタン酸アルミニウム系焼結体は、成形直後の成形体の形状をほぼ維持した形状を有する。得られたチタン酸アルミニウム系焼結体は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
本発明により得られるチタン酸アルミニウム系焼結体は、たとえば、ルツボ、セッター、コウ鉢、炉材などの焼結炉用冶具;ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルター;基板、コンデンサーなどの電子部品などに好適に適用することができる。中でも、セラミックスフィルターなどとして用いる場合、本発明のチタン酸アルミニウム系焼結体は、従来と比較してより大きな細孔容積および開気孔率を有することから、フィルター性能(排ガス処理能力、高すす堆積能力、圧力損失等)に優れる。
本発明により得られるチタン酸アルミニウム系焼結体は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウム(または、チタン酸アルミニウムマグネシウム)の結晶パターンのほか、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。チタン酸アルミニウム系セラミックスが、チタン酸アルミニウムマグネシウム(Al2(1−x)MgxTi(1+x)O5)である場合、xの値は0.01以上であり、好ましくは0.01以上0.7以下、より好ましくは0.02以上0.5以下である。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
(造粒工程)
アルミニウム源としてアルミナ、チタニウム源としてチタニア、マグネシウム源としてマグネシアスピネル、ケイ素源としてガラスフリットの各粉末をスプレードライ法にて粒径を5〜100μmに造粒する。得られた造粒体を、1450℃で4時間焼結し、造粒体どうしが融着して100μm以上を超えるものは、分級して用いる。
(造粒工程)
アルミニウム源としてアルミナ、チタニウム源としてチタニア、マグネシウム源としてマグネシアスピネル、ケイ素源としてガラスフリットの各粉末をスプレードライ法にて粒径を5〜100μmに造粒する。得られた造粒体を、1450℃で4時間焼結し、造粒体どうしが融着して100μm以上を超えるものは、分級して用いる。
(成形工程)
得られた造粒物100重量部に対して、メトローズSM−4000 5.3重量部および60SH−4000 4.48重量部、ユニルーブ50MB−72 5.8重量部、グリセリン0.5重量部、水25.7重量部を混合し、混練機で混練する。この混練物を押出成形し、成形体を得る。
得られた造粒物100重量部に対して、メトローズSM−4000 5.3重量部および60SH−4000 4.48重量部、ユニルーブ50MB−72 5.8重量部、グリセリン0.5重量部、水25.7重量部を混合し、混練機で混練する。この混練物を押出成形し、成形体を得る。
(焼結工程)
得られた成形体を、1450℃で4時間焼結し、焼結体を得る。得られた焼結体の熱膨張係数、収縮率を押出方向と径方向の2方向で測定する。
得られた成形体を、1450℃で4時間焼結し、焼結体を得る。得られた焼結体の熱膨張係数、収縮率を押出方向と径方向の2方向で測定する。
<比較例1>
(成形工程)
アルミニウム源としてアルミナ、チタニウム源としてチタニア、マグネシウム源としてマグネシアスピネル、ケイ素源としてガラスフリットの各粉末100重量部に対して、メトローズSM−4000 5.3重量部および60SH−4000 4.48重量部、ユニルーブ50MB−72 5.8重量部、グリセリン0.5重量部、水25.7重量部を混合し、混練機で混練する。この混練物を押出成形し、成形体を得る。
(成形工程)
アルミニウム源としてアルミナ、チタニウム源としてチタニア、マグネシウム源としてマグネシアスピネル、ケイ素源としてガラスフリットの各粉末100重量部に対して、メトローズSM−4000 5.3重量部および60SH−4000 4.48重量部、ユニルーブ50MB−72 5.8重量部、グリセリン0.5重量部、水25.7重量部を混合し、混練機で混練する。この混練物を押出成形し、成形体を得る。
(焼結工程)
得られた成形体を、1450℃で4時間焼結し焼結体を得る。得られた焼結体の熱膨張係数、収縮率を押出方向と径方向の2方向で測定する。
得られた成形体を、1450℃で4時間焼結し焼結体を得る。得られた焼結体の熱膨張係数、収縮率を押出方向と径方向の2方向で測定する。
結果を表1に示す。
表1から、比較例1に比べ、実施例1の押出方向と径方向の熱膨張係数や収縮率の差は、ほとんどないことが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
Claims (3)
- チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末を含むセラミックススラリーから粉粒体を造粒する工程と、粉粒体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系粒状焼結体の製造方法。
- 粉粒体が平均粒径5〜100μmの造粒品である、請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られたチタン酸アルミニウム系粒状焼結体を含む原料混合物を押出成形する工程と、押出成形で得られた成形体を焼結する工程とを含む、チタン酸アルミニウム系焼結体の製造方法。
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