JP2010188830A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受41が組み付けられる軸部10と、この軸部10の一端側に形成されかつ車輪の中心孔が嵌込まれる嵌合軸部30と、軸部10と嵌合軸部30との間に位置する中間軸部20の外周面に放射状に延出された複数のフランジ部21とを有するフランジ付き軸部材1を備える。フランジ部21は、冷間鍛造によって嵌合軸部30の中心部端面に鍛造凹部33が形成される際の側方押出加工によって形成される。鍛造凹部33は、開口側から底部に向けて複数の湾曲面35、36、38が形成されて深底状に形成されている。
【選択図】図2
Description
このような構造の車輪用軸受装置においては、例えば、特許文献1に開示されている。
これにおいては、フランジ付き軸部材(ハブホイール)が円筒管を母材として冷間鍛造により整形されると共に、この冷間鍛造した母材の一方の軸端部の円周方向複数箇所が径方向外向きに切り起こされることにより、複数のフランジ部(切り起こし片)が形成される。さらに、母材の一方の軸端部には、複数のフランジ部の間に軸方向に沿った形状で残存する複数の舌片よりなる嵌合軸部(車輪が嵌込まれて位置決めされる)が設けられる。
これによって、車輪用軸受装置(主にフランジ付き軸部材)の重量軽減を図ることが可能となる。
しかしながら、前記従来の車輪用軸受装置においては、冷間鍛造により鍛造品を製作した後、鍛造品の一方の軸端部に切り起こし片よりなる複数のフランジ部を形成しなければならず、製造コストが高くなる。
前記フランジ部は、冷間鍛造によって前記嵌合軸部の中心部端面に鍛造凹部が形成される際の側方押出加工によって形成され、
前記鍛造凹部は、開口側から底部に向けて複数の湾曲面が形成されて深底状に形成されていることを特徴とする。
さらに、鍛造凹部は、開口側から底部に向けて複数の湾曲面(円弧面も含む)が形成されて深底状に形成されるため、軽量化に効果が大きい。
鍛造凹部は、浅底部と、この浅底部の中心部に凹設された深底部を有する段差状に形成されていることを特徴とする。
例えば、フランジ付き軸部材の軸部のフランジ部寄り部分の外周面に転がり軸受の軌道面が形成される場合、軌道面と鍛造凹部との間の最小肉厚寸法を必要とする大きさに容易に確保することができる。
図1に示すように、車輪用軸受装置としての車輪用ハブユニットは、フランジ付き軸部材(ハブホイール)1と、転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41とを一体状に有してユニット化されている。
フランジ付き軸部材1は、外周面に転がり軸受としての複列のアンギュラ玉軸受41が組み付けられる軸部10と、この軸部10の一端側に形成されかつ軸部10よりも大径で車輪(図示しない)の中心孔が嵌込まれる嵌合軸部30と、軸部10と嵌合軸部30との間に位置するフランジ基部20aと、このフランジ基部20aの外周面に外径方向へ放射状に延出されかつ車輪を締め付けるハブボルト27が圧入によって配置されるボルト孔24が先端寄り部分に貫設された複数のフランジ部21とを一体に有する。
また、嵌合軸部30には、フランジ部21側にブレーキロータ用嵌合部31が形成され、先端側にブレーキロータ用嵌合部31よりも若干小径の車輪用嵌合部32が形成されている。
また、この実施例1においては、フランジ付き軸部材1の軸部10は、フランジ部21側が大径で先端側が小径に形成された段軸状に形成され、軸部10の大径部11の外周面に一方の軌道面43が形成されている。
また、軸部10の小径部12の外周面には内輪体42が嵌め込まれ、この内輪体42の外周面に他方の軌道面44が形成されている。
さらに、軸部10の先端部には、小径部12と同径の端軸部15が延出されている。この端軸部15の端面中心部には軸端凹部16が形成され、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
さらに、厚肉部23はフランジ部21の根元部(基部)側から同フランジ部21のボルト孔24側に向かって漸次減少する傾斜状に形成されている。この厚肉部23の傾斜面23aの傾斜角度(フランジ付き軸部材1の回転中心軸線Sと直交する円環状平坦面23cに対する角度)θ1は、冷間鍛造時の材料流れや成形後の脱型を考慮すると、「20°≦θ1≦45°」の関係に設定されることが望ましい。
また、図3に示すように、各フランジ部21の先端面は、中間軸部20の直径寸法の約半分の半径をもつ円弧面21aに形成されている。すなわち、中間軸部20の直径寸法をφPとし、フランジ部21の先端の円弧面21aの半径寸法をrQとしたときに、φP/2≒rQとなるように形成されている。
なお、フランジ基部20aの体積Vjは、フランジ基部20aの直径寸法をφYとし、軸長さをH2としたときに、「Vj=(φY/2)2×π×H2」となる。円板部(仮想円板部)の体積Vkは、「Vk=(φZ/2)2×π×H1)」となる。
この場合、図5と図6に示すように、成形型としての第1、第2成形型71、72の型合わせ面71a、72aの面積が充分に確保される。このため、第1、第2成形型71、72の型閉じ状態において、第1、第2成形型71、72の型合わせ面71a、72aに過大な圧力が作用することを回避することができ、成形型の型寿命が向上する。
なお、円板部(仮想円板部)の平面投影面積M1は、「M1=(φZ/2)2×π」となる。複数のフランジ部21及び中間軸部20の平面投影面積をM2は、フランジ部21の個数をNとし、フランジ部21の幅寸法をLとしたときに、「M2=N×L×1/2(φZ−φY)+(φY/2)2×π」となる。
この実施例1において、鍛造凹部33は、嵌合軸部30の車輪用嵌合部32の先端面からフランジ部21のローター支持面22までの距離と略同じ深さで湾曲面(凹湾曲面)35をなす浅底部34と、この浅底部34の中心部に凹設されたかつ浅底部34と中間湾曲面(凸湾曲面)36をもって連続する深底部37とを有する段差状に形成されている。
さらに、鍛造凹部33の深底部37は、中心側に向かって漸次深くなる湾曲面(凹湾曲面)38をなしている。
なお、湾曲面(凹湾曲面)35、中間湾曲面(凸湾曲面)36及び湾曲面(凹湾曲面)38は、円弧面も含む。
さらに、嵌合軸部30の端面の鍛造凹部33が開口側から底部に向けて複数の湾曲面(円弧面も含む)が形成されて深底状に形成されるため、軽量化に効果が大きい。
この実施例1において、鍛造凹部33は、浅底部34と、深底部37とを有する段差状に形成されるため、強度、剛性を確保しながら軽量化を効率よく図ることができる。
例えば、フランジ付き軸部材1の軸部10のフランジ部21寄り部分の外周面にアンギュラ玉軸受41の一方の軌道面43が形成される場合、軌道面43と鍛造凹部33との間の最小肉厚寸法H4を必要とする大きさに容易に確保することができる。例えば、嵌合軸部30の鍛造凹部33の開口部から底部にわたって同一径の円筒状に形成されると、嵌合軸部30の肉厚が必要以上に厚くなったり、あるいは、フランジ付き軸部材1の各部の肉厚が必要以下に薄くなる不具合が生じやすいが、鍛造凹部33を、浅底部34と、深底部37とを有する段差状に形成することによってこのような不具合が生じない。
これによって、ランジ付き軸部材1の各部の強度、剛性を充分に確保しながら軽量化を効率よく図ることができる。
図4に示すように、構造用炭素鋼(例えば、S45C、S50C、S55C等の炭素量0.5%前後の炭素鋼が望ましい)の丸棒材を所要長さに切断して軸状素材60を形成する。
次ぎに、軸状素材60を、例えば800℃前後に加熱した後、冷却し焼鈍する。
その後、冷間鍛造の前方押出加工の鍛造型装置(図示しない)を用いて軸状素材60を前方押出加工し、これによって、軸部(大径部11、小径部12及び端軸部(この状態では軸端凹部16が形成されていない)15を含む)10と、中間軸部20と、嵌合軸部(この状態では鍛造凹部33やブレーキロータ用嵌合部31が形成されていない)30を形成し、冷間鍛造の前方押出加工による一次成形品61を製作する。
このフランジ成形部78は、第1、第2の両成形型71、72にそれぞれ形成された成型溝部76、77によって構成されている。
すなわち、第1、第2の両成形型71、72の成型溝部76、77の上下両壁面の案内面80、81の対向間隔がフランジ部21の板厚寸法と同等の大きさに設定され、両側壁面の案内面(図示しない)の対向間隔がフランジ部21の幅寸法と同等の大きさに設定されている。そして、フランジ成形部78の横断面形状は、フランジ部21の横断面形状と同じ形状に形成されている。
一方、この実施例1において、フランジ部21の根元部近傍の厚肉部23側を形成する第1成形型71の成型溝部76の案内面80は、逃がし部がない型構造に形成されている。
また、厚肉部成形用溝部82底面の傾斜面82aの傾斜角度θ2は、「35°≦θ2≦45°」の関係に設定されることが望ましい。
また、成型溝部76、77によって構成されるフランジ成形部78の径方向の長さ寸法は、フランジ部21の先端の円弧面21aが当たらない長さ寸法をもって設定されている(図6及び図7参照)。
その後、図6と図7に示すように、パンチ73を一次成形品61の嵌合軸部30の中心部端面に向けて下降し、パンチ73の先端部74によって嵌合軸部30の中心部端面に鍛造凹部33を形成しながら一次成形品61の軸部10と嵌合軸部30との間に位置する中間軸部20の外周面を、第1、第2の両成形型71、72に形成されたキャビティ75のフランジ成形部78に側方押出することによって複数のフランジ部21を形成すると共に、フランジ部21の根元部近傍の一側に厚肉部23を形成し、これによって側方押出加工による二次成形品62を製作する。なお、中間軸部20は冷間鍛造の変形によってフランジ基部20a及び嵌合軸部30の一部をなす。
その後、二次成形品62を焼き入れした後、軸部10の大径部11の軌道面43やフランジ部21のローター支持面22等を旋削加工または研磨加工することで完成品となるフランジ付き軸部材1を製作する。
また、軸状素材60の重量をN1とし、二次成形品62の重量をN2とし、フランジ付き軸部材1の重量をN3としたときに、「N1≒N2」、「0.93×N1≧N3≧0.86×N1」の関係となるように設定されることが望ましい。この場合には、軸状素材60から材料歩留まりよくフランジ付き軸部材1を製造することができる。
すなわち、フランジ部21のボルト孔24に、ハブボルト27のセレーション軸部(軸部29の根元部に形成される)29aを圧入した後の状態において、面取り部の深さ寸法が大きい側にフランジ部21が微量ではあるがそり変形する特性をもつ。
このため、仮に、側方押出加工によってフランジ部21の厚肉部23側へ向かって「そり」が発生したとしも、フランジ部21のボルト孔24にハブボルト27が圧入されることで、前記したフランジ部21の厚肉部23側への「そり」が軽減される。
さらに、ボルト座面21cの領域を越えかつフランジ部21の厚肉部23の傾斜面23aの境界R面23b又は、境界R面23b及び傾斜面23aにわたる範囲(図2のコイニング加工範囲W)にわたってコイニング加工によって表面仕上げすることでフランジ部21の強度をより一層高めことが望ましい。
また、コイニング加工による表面硬さはHRC25以上、表面粗さがRa6.3以下に仕上げられることが望ましい。
そして、軸部10の小径部12の外周面に内輪体42が嵌め込まれた後、端軸部15の先端部が径方向外方へかしめられてかしめ部17が形成されることによって小径部12の外周面に内輪体42が固定される。
また、フランジ付き軸部材1の軸部10の外周面にアンギュラ玉軸受41が組み付けられる前、又は後において、フランジ部21のボルト孔24の第1面取り部25側からハブボルト27の軸部29が挿入され、軸部29のセレーション軸部29aがボルト孔24に圧入されることによってフランジ部21にハブボルト27が固定される。
これをもって車輪用軸受装置が製造される。
例えば、前記実施例1においては、フランジ付き軸部材1の鍛造凹部33が、浅底部34と、深底部37を有する二段の段差状に形成される場合を例示したが、三段、四段等の段差状に形成されてもよい。
さらに、鍛造凹部が開口側から底部に向けて複数の湾曲面が形成されて深底状に形成される場合においてもこの発明を実施可能である。
10 軸部
20 中間軸部
20a フランジ基部
21 フランジ部
23 厚肉部
24 ボルト孔
27 ハブボルト
30 嵌合軸部
33 鍛造凹部
34 浅底部
35 湾曲面
36 中間湾曲面
37 深底部
38 湾曲面
41 アンギュラ玉軸受(転がり軸受)
45 外輪部材
Claims (3)
- 転がり軸受が組み付けられる軸部と、この軸部の一端側に形成されかつ車輪の中心孔が嵌込まれる嵌合軸部と、前記軸部と前記嵌合軸部との間に位置する外周面に外径方向へ放射状に延出されかつ前記車輪を締め付けるハブボルトが配置されるボルト孔が貫設された複数のフランジ部とを有するフランジ付き軸部材を備えた車輪用軸受装置であって、
前記フランジ部は、冷間鍛造によって前記嵌合軸部の中心部端面に鍛造凹部が形成される際の側方押出加工によって形成され、
前記鍛造凹部は、開口側から底部に向けて複数の湾曲面が形成されて深底状に形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 請求項1に記載の車輪用軸受装置であって、
鍛造凹部は、浅底部と、この浅底部の中心部に凹設された深底部を有する段差状に形成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 請求項2に記載の車輪用軸受装置であって、
鍛造凹部の深底部は、浅底部に中間湾曲面を介して連続すると共に、中心側に向かって漸次深くなる湾曲面をなしていることを特徴とする車輪用軸受装置。
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