図1は本発明に係るリフト装置1の構成を示す図である。
図1において、リフト装置1は、空気圧シリンダ11、基台12、ウインチ装置13、張力検出器14、ロータリエンコーダ15、電気制御装置16、および空気圧制御回路17を有する。
空気圧シリンダ11は、圧縮空気によって伸長駆動する多段式(テレスコピック式)の単動型の空気圧シリンダである。つまり、空気圧シリンダ11は、圧縮空気によって伸長作動しまたは収縮作動する。空気圧シリンダ11は、シリンダチューブ111が基台12に取り付けられることによって固定されている。
空気圧シリンダ11の各ロッドは、それぞれの受圧面積が異なり、下段になるほど受圧面積が大きい。そのため、供給される圧縮空気の流量が同じである場合には、各ロッドの伸長状態によって速度が異なるが、後述のようにウインチ装置13の制御によってロッドの伸長状態に係わらず速度が一定となるように、つまり等速となるように制御されている。
また、供給される圧力が同じである場合には、各ロッドの伸長状態によって出力が異なるが、後述のように空気圧シリンダ11への給排量を調整することによって、ロッドの伸長状態に係わらず出力がほぼ一定となるように制御されている。
基台12は、地面または建物の床面に設置され、または車両のフレーム上に設置される。基台12の下部にキャスターを取り付けた場合には、リフト装置1の移動を容易なものとすることができる。
空気圧シリンダ11のロッドの先端には天板21が取り付けられている。天板21の上には、リフト装置1によって持ち上げたい物体を載せることが可能であり、また作業者が載ることも可能である。但し、作業者が乗る場合には、安全のために、周囲に手すりの設けられたケージとしておけばよい。
天板21の下面には、そのほぼ中央に滑車22が取り付けられている。ワイヤWRは、その一端がシリンダチューブ111に設けられたフック112に固定され、上方に延びて滑車22に掛け渡され、さらに下方に延びて、張力検出器14の滑車141に掛け渡された後、ウインチ装置13によって巻き取られている。
ワイヤWRの走行速度および位置は、ロータリエンコーダ15によって検出され、ワイヤWRの張力は張力検出器14によって検出される。張力検出器14として、ロードセル、プレッシャセル、または歪みゲージや半導体センサなどを用いた種々の構成の装置が用いられる。ワイヤWRの張力は、無負荷時の空気圧シリンダ11の推力の2分の1である。
ウインチ装置13は、回転ドラム133、および回転ドラム133を回転駆動するモータM1を有する。モータM1は、インバータ161によって駆動制御される。モータM1は、例えば、正転および逆転が可能な減速機付きの三相誘導モータである。操作パネル162は、ユーザによって操作可能であり、インバータ161に対し、動作のオンオフ指令、モータM1の回転方向の指令、回転速度の指令などを与えることができる。例えば、ユーザによって設定された速度で回転するようにモータM1を制御する。
モータM1の速度を制御する場合に、モータM1の回転速度が一定になるように、またはワイヤWRの走行速度が一定になるように制御することが可能である。その場合に、モータM1の回転速度またはワイヤWRの走行速度が、設定速度に基づいて制御される。したがって、空気圧シリンダ11の伸長速度または収縮速度が、設定された速度となり、等速度駆動が可能である。空気圧シリンダ11の速度を、例えば1〜5m/min程度の範囲において等速度となるように調整することができる。
また、設定速度を一定とするのではなく、プログラムにしたがって変化するように設定することも可能である。その場合に、空気圧シリンダ11は設定された速度曲線にしたがって可変速駆動される。
また、ロータリエンコーダ15の出力パルスをカウンタによってカウントすることにより、ワイヤWRの位置を検出することができる。ワイヤWRの位置を検出することにより、空気圧シリンダ11のストローク位置を検出することができるので、空気圧シリンダ11の停止位置を正確に制御することができる。その際に、停止位置の直前に減速が行われるように制御することにより、停止が円滑にかつ正確となる。例えば、空気圧シリンダ11の停止位置を1mm単位で制御することが可能である。
インバータ161、操作パネル162、および図示しない演算装置および制御機器などによって、電気制御装置16が構成されている。電気制御装置16には、張力検出器14およびロータリエンコーダ15の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算が行われ、モータM1の制御が行われる。
回転ドラム133は、モータM1の回転に応じて、ワイヤWRの一端を巻き取りまたは巻き戻す。モータM1の回転方向を切り換えることによって、空気圧シリンダ11の伸長作動と収縮作動とが切り換えられる。つまり、空気圧シリンダ11の内部が適当な圧力となっている状態において、ワイヤWRを巻き取る方向に回転すると、空気圧シリンダ11は収縮作動を行い、巻き戻す方向に回転すると、空気圧シリンダ11は伸長作動を行う。その間において、ワイヤWRには常に張力が加わっており、ワイヤWRの張力が張力検出器14によって検出される。張力検出器14により検出された張力の約2分の1が空気圧シリンダ11の出力(荷重)である。
図2に示すように、ウインチ装置13は、基台12に取り付けられたベアリングガイド51によって、回転ドラム133の軸JKに沿う方向(矢印A)に往復移動可能に支持されている。そして、基台12に取り付けられた支持部材52,53により、ネジ軸54が回転可能に支持されている。ウインチ装置13には、ネジ軸54に螺合するナット部材55が取り付けられている。
ネジ軸54は、支持部材53に取り付けられたモータM2によって、正逆方向に回転駆動され、これによって、ナット部材55つまりウインチ装置13が図2の矢印A1方向に移動駆動される。
基台12には、回転ドラム133によって巻き取られるワイヤWRの左右の振れの状態を検出するためのリミットスイッチ56R,56Lが設けられている。ワイヤWRが回転ドラム133の軸JKに対してほぼ直角である場合には、リミットスイッチ56R,56Lは動作しないが、ワイヤWRが回転ドラム133に巻き取られまたは巻き戻されることによって移動すると、その移動した側のリミットスイッチ56R,56Lが動作し、検出信号が出力される。
リミットスイッチ56R,56Lからの検出信号に基づいて、モータM2が回転し、ウインチ装置13つまり回転ドラム133を軸JKに移動させ、ワイヤWRが回転ドラム133の軸JKに対してほぼ直角となるように戻す。
このように、ウインチ装置13の全体を軸JKに沿った方向に移動させることにより、ワイヤWRは回転ドラム133の軸に対して常にほぼ直角方向に巻き取られることとなり、滑車141とウインチ装置13との間の距離を開ける必要がなくなる。そのため、リフト装置1の全体の形状、特に基台12の設置面積を小さくして小型化することができる。
なお、ベアリングガイド51に代えて滑りのよいボールスルース機構を用いることにより、リミットスイッチ56R,56Lを用いた電気的な制御によることなく、ウインチ装置13の往復移動を行うことも可能である。
また、回転ドラム133に巻き取られるワイヤWRの層を1層または2層程度としておくことにより、ワイヤWRを巻き取る回転ドラム133の直径に変化がなくなるので、モータM1の回転速度とワイヤWRの走行速度つまり空気圧シリンダ11の駆動速度が対応することとなり、正確な制御が行い易い。
図1に戻って、空気圧制御回路17は、エアー源AR、切換え弁V1〜V4、流量絞り弁SV1〜4、および圧力計(圧力センサ)PG1などから構成されている。切換え弁V1またはV2がオンすると、空気圧シリンダ11に圧縮空気を供給し、切換え弁V3またはV4がオンすると、空気圧シリンダ11から圧縮空気を排気する。
なお、流量絞り弁SV1〜4の絞り量は、適当に調整しておく。切換え弁V1またはV3がオンしたときと切換え弁V2またはV4がオンしたときとでは圧縮空気の流量が異なる。また、切換え弁V1、V2、または切換え弁V3、V4がそれぞれ同時にオンしたときには、圧縮空気の流量は大きくなる。
つまり、切換え弁V1〜V4が選択的にオンオフすることによって、空気圧シリンダ11の作動方向、作動速度、作動出力などが制御される。
また、空気圧シリンダ11は多段式であるため、各段におけるストローク端、つまり各段の切り替わり部分において、受圧面積が変化する。そのため、各段の切り替わり部分において空気圧シリンダ11の内部にサージ圧が発生する。サージ圧が発生すると、空気圧シリンダ11の出力も変動し、これがワイヤWRの張力に現れる。
これを防ぎまたは緩和するために、各段の切り替わり時に切換え弁V3またはV4をオンし、サージ圧を排出する。そのタイミングを得るために、張力検出器14の検出信号が用いられる。また、ロータリエンコーダ15の検出信号またはカウンタのカウント値、または空気圧シリンダ11の内部の圧力を検出する圧力センサ(PG1)の検出信号などを用い、またはこれらを併用することが可能である。
上に述べたように構成されているので、切換え弁V1またはV2をオンすると、エアー源ARから圧縮空気が空気圧シリンダ11に供給され、空気圧シリンダ11は伸長作動する。このときに、モータM1によって回転ドラム133を回転駆動し、ワイヤWRを巻き戻す。この場合には、モータM1によってブレーキが掛けられている状態となる。このときのワイヤWRの走行速度および位置がロータリエンコーダ15によって検出され、ワイヤWRの張力が張力検出器14によって検出される。これらの検出信号によって、電気制御装置16にフィードバックが掛けられる。
空気圧シリンダ11の各段の切り替わり部分で、切換え弁V3およびV4をオンしてサージ圧を排出する。
また、モータM1によって回転ドラム133を回転駆動し、ワイヤWRを巻き取ることによって、空気圧シリンダ11はワイヤWRによって強制的に収縮作動する。そのときに、空気圧シリンダ11の内部の圧力が適当な値となるように、切換え弁V3またはV4をオンして空気圧シリンダ11内の圧縮空気を排出する。その場合に、空気圧シリンダ11の各段の切り替わり部分において、切換え弁V4およびV3をオンしてサージ圧を排出する。
このように、モータM1および切換え弁V1〜V4を制御することにより、空気圧シリンダ11に伸長作動および収縮作動を行わせることができる。しかも、その作動速度が一定または可変となるように制御し、また、空気圧シリンダ11の出力(負荷)が一定となるように制御することができる。
なお、ロータリエンコーダ15に代えて、またはそれとともに、モータM1の回転軸にロータリエンコーダを取り付けておき、そのロータリエンコーダの検出信号を用いて、モータM1の回転速度を制御してもよい。
上に述べたように、空気圧シリンダ11は、各段の受圧面積が異なるため、圧縮空気の供給量に変化がない場合にはその伸長状態によって速度が変化する。しかし、本実施形態においては、モータM1の速度制御によって、等速度で伸長作動または収縮作動させることができる。また、操作パネル162における設定により、種々の速度曲線となるように、空気圧シリンダ11を伸長作動または収縮作動させることができる。
例えば、空気圧シリンダ11を、50mm/sの一定の速度で伸長移動かつ収縮移動させることができる。10mm/s、20mm/s、100mm/sなど、他の一定の速度とすることも可能である。
また、伸長移動と収縮移動とが異なる速度となるようにすることも可能である。例えば、空気圧シリンダ11を、50mm/sの一定の速度で伸長移動させ、10mm/sの一定の速度で収縮移動させることができる。これ以外の速度でも可能である。
また、張力検出器14の検出信号によるフィードバックを利用することにより、空気圧シリンダ11の推力(負荷力)が一定となるように制御することができる。
ロータリエンコーダ15の検出信号、モータM1の回転数などを利用することにより、上に述べたように空気圧シリンダ11のストロークの位置決め(ポジション制御)などを行うことができる。この場合に、空気圧シリンダ11の停止位置を、操作パネル162により予め設定しておくこともできる。
また、これら速度、推力、位置の設定値および検出値を、数値またはグラフィックとして表示面上に表示することも可能である。これにより、ユーザは、空気圧シリンダ11の動作状態を視覚的に容易に認識することができる。
次に、切換え弁V1〜V4の制御方法の例を説明する。
図3において、圧縮空気を供給する切換え弁V1、V2は、それぞれ、空気圧シリンダ11の荷重(出力)Fが所定値F2またはF1以下である場合は常にオンであり、所定値F3以上である場合は常にオフである。所定値F2またはF1と所定値F3との間では、切換え弁V1、V2のオンオフの履歴に応じて異なる。
つまり、切換え弁V1またはV2がオンの状態においては、荷重Fが増大して所定値F3に達するまでオンであり、所定値F3にまで増大するとオフする。切換え弁V1またはV2がオフの状態においては、荷重Fが低下して所定値F2またはF1に達するまでオフであり、所定値F2またはF1にまで低下するとオンする。
また、圧縮空気を排気する切換え弁V3、V4は、それぞれ、空気圧シリンダ11の荷重(出力)Fが所定値F3またはF4以上である場合は常にオンであり、所定値F2以下である場合は常にオフである。所定値F3またはF4と所定値F2との間では、その履歴に応じて異なる。つまり、切換え弁V3またはV4がオンの状態においては、荷重Fが低下して所定値F2に達するまでオンであり、所定値F2にまで低下するとオフする。切換え弁V3またはV4がオフの状態においては、荷重Fが増大して所定値F3またはF4に達するまでオフであり、所定値F3またはF4にまで増大するとオンする。
なお、F2はF1よりも大きい。例えば、荷重F2は625kgであり、荷重F1は500kgである。F3はF4よりも小さい。例えば、荷重F3は675kgであり、荷重F4は800kgである。荷重Fの値は、張力検出器14によって検出される荷重の2倍の値である。
また、荷重Fが下限値F0または上限値F5に達すると、安全のためにモータM1が停止してリフト装置1が停止する。つまり、リフト装置1は、荷重Fが下限値F0と上限値F5との間において運転される。例えば、荷重F0は350kgであり、荷重F5は950kgである。
また、空気圧シリンダ11は、伸長し切らないようかつ収縮し切らないように、伸長端または収縮端の手前までしか作動しないように制御されている。これによって、ワイヤWRが撓むことのないようにし、ワイヤWRの張力つまり空気圧シリンダ11の出力が張力検出器14によって正しく検出されるようにし、空気圧シリンダ11の出力が制御されるようになっている。
切換え弁V1〜V4のオンオフが上に述べたように制御されているので、空気圧シリンダ11の出力は、値F2からF3までの間となるように自動調整される。典型的には、空気圧シリンダ11の出力は、値F2とF3との中央値(設定値)Fsとなるように自動調整される。値F2とF3との間が動作範囲であり、下限値F0と上限値F5との間が可動範囲である。
図4には、空気圧シリンダ11の全段が伸長した後に、ワイヤWRを巻き取ることによって1段目、2段目、3段目…というように各段が順次収縮作動するときの出力Fの変化の状態が示されている。
図4において、出力(荷重)Fの変化に応じて、図3において説明したように切換え弁V1〜V4がオンオフ制御されている。その結果、リフト装置1は、その出力Fが設定値Fsである650kgを中心として維持されるよう、運転される。
図4に示すように、空気圧シリンダ11の収縮作動にともなう各段の切り替わり部分においてサージ圧が発生し、これがサージ出力(サージ荷重)として現れる。これによって、図3において説明したように、切換え弁V3およびV4がオンし、空気圧シリンダ11の内部の圧縮空気が急速に排出され、短時間で定常運転状態に復帰する。その結果、図4に示すように、空気圧シリンダ11の収縮作動時においてほぼ一定の荷重Fを支持できる状態が維持されることとなる。
また、図には示されていないが、空気圧シリンダ11の伸長作動時においても、図3において説明したように切換え弁V1〜V4がオンオフ制御される。その結果、リフト装置1は、その出力Fが設定値Fsである650kgを中心として維持されるよう、運転される。
このように、本実施形態のリフト装置1は、多段式の単動型の空気圧シリンダ11およびワイヤWRを巻き取りまたは巻き戻すウインチ装置13を設置し、張力検出器14およびロータリエンコーダ15によって検出された信号に基づいて4つの切換え弁V1〜V4をオンオフ制御するという簡単な構成にも係わらず、空気圧シリンダ11の速度制御、位置制御、および出力制御を確実に容易に行うことができる。
なお、上に述べた荷重Fの値F0〜F5、Fsは一例であり、その他の種々の値とすることが可能である。
上の実施形態においては、1本の空気圧シリンダ11を用いた例について説明したが、複数本の空気圧シリンダ11を並列的に配置して用いることも可能である。
〔他の実施形態〕
次に、他の実施形態について説明する。
図5〜図10において、リフト装置1Bは、3つの空気圧シリンダ11A,11B,11C、基台12B、ウインチ装置13B、張力検出装置14、電気制御装置16、および空気圧制御回路17Bからなる。なお、3つの空気圧シリンダ11A,11B,11Cの全部または一部を、単に「空気圧シリンダ11」と記載することがある。
各空気圧シリンダ11は、圧縮空気によって伸長作動する7段式の単動型の空気圧シリンダである。各空気圧シリンダ11は、それぞれのシリンダチューブ111の軸心の位置が正三角形の頂点に位置するように、且つ軸心の方向が互いに平行になるように、基台12Bに固定されている。空気圧シリンダ11の各ロッドは、それぞれの受圧面積が異なり、下段になるほど受圧面積が大きい。そのため、供給される圧力が同じである場合には、各ロッドの伸長状態によって出力が異なるが、後述のように空気圧シリンダ11への給排量を調整することによって、ロッドの伸長状態に係わらず出力がほぼ一定となるように制御されている。
基台12Bは、下架台121,上架台122、フレーム部材123、補強部材124などからなる。下架台121及び上架台122には、パイプ材、アングル材、チャネル材、または板材などが用いられる。上架台122に板材を張って平面状に形成した場合には、作業者(ユーザ)が上架台122の上に載って作業を行うことが可能である。下架台121と上架台122との間に、ウインチ装置13Bおよび張力検出装置14Bが設置されている。
各空気圧シリンダ11のロッドの先端には天板21が取り付けられ、各段のロッドには、それぞれの段を互いに連結する連結部材22a,22b,22c…、22fが取り付けられている。これらの連結部材22a〜fによって、各空気圧シリンダ11の各ロッドが同期して伸長駆動しまたは収縮移動する。また、各連結部材22a〜fの1つの辺には、ワイヤWRを案内するためのワイヤガイド23a〜fが取り付けられている。
天板21の下面には、そのほぼ中央にフック部材24が、少し離れた位置に収縮端検出ロッド25が、それぞれ取り付けられている。フック部材24には、ウインチ装置13BのワイヤWRの一端が連結されている。なお、図示は省略したが、フック部材24の内部にはバネが設けられており、ワイヤWRの一端がそのバネを介して天板21と連結されるようになっている。これによって、ワイヤWRの弛みの防止と起動時などに発生する衝撃の緩和が図られている。収縮端検出ロッド25は、空気圧シリンダ11が収縮して天板21が収縮端(下降端)に達したときに、後述するリミットスイッチLS2をオンさせ、これによって収縮動作(下降動作)を停止させるためのものである。
図8において、ウインチ装置13Bは、ワイヤ181、滑車132、ドラム133、モータM1、支持バー134、および支持ブラケット135などからなる。
ドラム133は、モータM1によって回転駆動され、ワイヤWRの一端を巻き取りまたは巻き戻す。モータM1は、正転及び逆転が可能な減速機付きの誘導モータである。モータM1の回転方向を切り換えることによって、空気圧シリンダ11の伸長及び収縮が切り換えられる。つまり、ワイヤWRを巻き取る方向に回転すると、空気圧シリンダ11は収縮動作を行い、巻き戻す方向に回転すると、空気圧シリンダ11は伸長動作を行う。
モータM1がワイヤWRを巻き戻す方向に回転し、空気圧シリンダ11が最大の伸長位置に達する手前で、その位置を検出するための図示しないセンサが設けられている。空気圧シリンダ11が最大の伸長位置に達してしまうとワイヤWRが弛むので、センサの検出に基づいてその直前でワイヤWRの巻き戻しを停止するように制御されている。滑車132は、支持バー134に回転可能に取り付けられて支持されている。支持バー134は、支持ブラケット135により回動可能に支持されている。
図9によく示されるように、滑車132は、その軸132aが支持バー134に設けられた長穴l34b内を上下方向に移動可能となっており、ワイヤWRが弛んだとき、つまりワイヤWRの張力が無くなったときには、下方へ移動する。リミットスイッチLS1は、滑車132が下方へ移動したときに、ドッグ132Bによってオンされ、これによってワイヤWRの弛みが検出される。リミットスイッチLS1がワイヤWRの弛みを検出すると、モータM1を回転させてワイヤWRを巻き取るように制御される。これによってワイヤWRの弛みが解消される。
なお、長穴134b内において軸132aを下方へ付勢するバネを設けておき、ワイヤWRの張力が所定以下になったときにリミットスイッチLS1がそれを検知するようにしてもよい。
張力検出装置14Bは、ガイドハウジング141、および調整バネ142などからなる。支持バー134は、調整バネ142によって図8の左回転方向に付勢されており、ワイヤWRの張力の大きさに応じて、調整バネ142に抗して右回転方向に回転する。したがって、支持バー134の回転角度位置は、ワイヤWRの張力の大きさによって決まる。支持バー134の回転角度位置つまりワイヤWRの張力は、その後端部に設けられたドッグ134aによりオンオフするリミットスイッチLS3,4,5によって検出される。
リミットスイッチLS3は張力の上限を検出する。リミットスイッチLS3がオンすると、空気圧シリンダ11に供給する圧縮空気の量を低下させるか、または空気圧シリンダ11内の圧縮空気を排気させるように制御される。
リミットスイッチLS4は張力の限界を検出する。リミットスイッチLS4がオンすると、空気圧シリンダ11に供給されている圧縮空気を排気させ、モータM1,M2を停止するように制御される。
リミットスイッチLS5は張力の下限を検出する。リミットスイッチLS5がオンすると、空気圧シリンダ11に圧縮空気を供給するか、または供給している場合にその量を増大させるように制御される。
ウインチ装置13Bの定格出力が例えば300kgである場合に、リミットスイッチLS3,4,5は、それぞれ、例えば250Kg以上、375Kg以上、100Kg以下であることを検出するように設定される。
なお、調整バネ142は、その圧縮力の調整が可能に設けられている。
図10において、空気圧制御回路17Bは、コンプレッサCPQ、モータM2、空気タンクTK1、圧力計PG1,2、圧力検出スイッチPS1、切換え弁V1,V2、チェック弁CV1、流量絞り弁SV1,2、などから構成されている。
コンプレッサCPQによって圧縮された空気は空気タンクTK1に蓄えられ、カプラCL1を介して切換え弁V1に向かって供給される。圧力検出スイッチPS1は、圧力が所定値に達したことを検出し、これによって、電気制御装置16による空気圧シリンダ11の制御が可能となる。
切換え弁V1がオンした場合には、チェック弁CV1及び流量絞り弁SV1を介して圧縮空気が各空気圧シリンダ11のポートPTA〜C(図示せず)に供給される。したがって、ワイヤWRが巻き戻されている場合には空気圧シリンダ11は伸長動作を行い、ワイヤWRが停止しまたは巻き取られている場合には空気圧シリンダ11内の圧力は増大する。
切換え弁V2がオンした場合には、空気圧シリンダ11内の圧縮空気が流量絞り弁SV1を介して排出される。したがって、ワイヤWRが巻き戻されまたは停止している場合には空気圧シリンダ11内の圧力は低下する。
電気制御装置16Bは、空気圧制御回路17Bの切換え弁V1,V2,モータM1,M2などを制御し、リフト装置1Bの全体を制御する。
次に、リフト装置1Bの動作について説明する。
図10〜12において、それらの図は動作のパターンの一例を示すものであり、リフト装置1Bの動作はこれらのパターンに限られない。
リフト装置1Bの伸長動作及び収縮動作は、基本的にはモータM1の回転方向を制御することによって行われる。つまり、モータM1を回転させ、ワイヤWRの巻戻しを行った場合に伸長動作をし、ワイヤWRの巻取りを行った場合に収縮動作をする。モータM1を停止させた場合には、リフト装置1Bはその高さ位置で停止する。
まず、リフト装置1Bの伸長動作について説明する。
図11に示すように、モータM1を回転させてワイヤWRの巻戻しを行うと、これと同時に切換え弁V1がオンし、空気圧シリンダ11に圧縮空気が供給され、空気圧シリンダ11のロッドが伸長する。このときの伸長速度は、ワイヤWRの巻戻しの速度に等しい。空気圧シリンダ11の出力は、ワイヤWRの張力に負荷(天板21の上に載せられた物体の荷重)を加えた大きさである。ロッドが伸長するにしたがい、ロッドの受圧面積が減少する。そのため、圧縮空気の供給量を増大させて供給圧力を高くする必要があるが、単位時間当たりに供給すべき圧縮空気の量は減少する。
したがって、例えば図11に示すように、ワイヤWRの張力が大きくなってリミットスイッチLS3がオンした場合には、切換え弁V1をオフし且つ切換え弁V2をオンして、圧縮空気の供給を一旦停止する。これによって、空気圧シリンダ11は、ワイヤWRの張力を上限と下限との間に維持しながら、一定の速度で伸長する。なお、ワイヤWRの巻戻しの速度は、空気圧シリンダ11の自由状態における最も遅い伸長速度よりも小さくしておく必要がある。
次に、リフト装置1Bの収縮動作について説明する。
図12に示すように、モータM1を回転させてワイヤWRの巻取りを行うと、空気圧シリンダ11は収縮する。空気圧シリンダ1 1 が収縮すると、空気圧シリンダ11内の圧力が上昇するので、その結果リミットスイッチLS3がオンする。リミットスイッチLS3がオンすると、切換え弁V2がオンし、空気圧シリンダ11内の圧縮空気が排出され、圧力の上昇が抑えられる。圧力が下がり過ぎてリミットスイッチLS5がオンした場合には、切換え弁V2はオフし、圧縮空気の排出は停止される。
次に、空気圧シリンダ11が停止している状態の動作について説明する。
図13に示すように、空気圧シリンダ11内の圧力が下がってリミットスイッチLS5がオンした場合には、切換え弁V1がオンし、空気圧シリンダ11に圧縮空気が供給される。圧縮空気の供給によって圧力が上昇するが、圧力が上がり過ぎてリミットスイッチLS3がオンした場合には、切換え弁V1がオフし、圧縮空気の供給が停止される。これによって、空気圧シリンダ11内の圧力が所定の範囲内に維持され、ワイヤWRの張力が調整される。
このように、ワイヤWRの巻取りまたは巻戻しに応じて空気圧シリンダ11が動作し、且つ、ワイヤWRの張力が所定の範囲内となるように、空気圧シリンダ11に給排する圧縮空気の量が調整される。
例えば、負荷として80Kgの物体が天板21上に載せられ、ワイヤWRの張力が250Kg程度となるように調整された場合には、空気圧シリンダ11は330Kg程度を出力するように調整されることとなる。
上述の実施形態のリフト装置1Bでは、伸長及び収縮の速度がワイヤWRの速度に等しく、モータM1の回転速度によって制御が行われるので、一定の速度を得ることが極めて容易である。空気圧シリンダ11を中間位置において精度よく停止させることができ、負荷が変動した場合であっても同一の停止位置が維持される。また、空気圧シリンダ11の出力に対して常にワイヤWRによる張力を与えているので、空気圧シリンダ11を含む全体の剛性が高くなり、動作が円滑で安定性に優れる。
上述の実施形態においては、ワイヤ弛み検出機構31として、滑車132の移動を検知するリミットスイッチLS1を用いたが、これに代えて、図14に示すワイヤ弛み検出機構31aを用いることもできる。
すなわち、図14において、ワイヤ弛み検出機構31aは、3つのローラ41,42,43及びリミットスイッチLS11からなる。3つのローラ41,42,43は、ワイヤWRの左右に交互に配置され、中央のローラ43はバネ44によってワイヤWRに押し付けられている。ワイヤWRに所定以上の張力がある場合には、バネ44に抗してローラ43が図の右方へ移動され、リミットスイッチLS11はオンしない。ワイヤWRの張力が所定以下になると、バネ44によってローラ43は図の左方へ移動され、リミットスイッチLS11がオンする。これによってワイヤWRの張力の低下または弛みが検出される。
また、いずれかのローラ41,42,43にロータリエンコーダを取り付け、ローラ41,42,43の回転にしたがってロータリエンコーダからパルス信号を得るようにしてもよい。これによって、ワイヤWRの移動距離に応じた信号をロータリエンコーダから取り出すことができる。ロータリエンコーダからの信号は、空気圧シリンダ11の伸長速度または収縮速度の制御、中間の停止位置の制御、伸長端または収縮端における制御、その他の種々の制御に利用することができる。
上述の実施形態においては、張力検出装置14Bとして、調整バネ142及びリミットスイッチLS3〜5を用いたが、これに代えて、荷重の大きさを電気信号に変換するロードセルを用いることが可能である。その場合には、例えば、支持バー134の一端部と下架台121との間にロードセルを取り付け、ワイヤWRの張力を計測する。ロードセルを用いた場合には、ワイヤWRの張力が連続的に計測できるので、空気圧シリンダ11に給排する圧縮空気の量及び圧力をきめ細かく連続的に制御することが可能となる。
上述の実施形態において、空気圧シリンダ11として7段のものを使用したが、他の種々の多段シリンダを用いてよい。天板21の水平角度を調整可能としてもよい。ワイヤWRとして、チェーン、ロープなどを用いてもよい。
上述の実施形態において、3つの空気圧シリンダ11を用いたが、2つ以下または4つ以上の空気圧シリンダを用いてもよい。なお、1つ、2つ、または3つの空気圧シリンダ11を用いたそれぞれの形態を、シングルマスト、ツインマスト、トリプルマストということができる。
上述の実施形態のリフト装置1Bにおいては、1本のワイヤWRを天板21とウインチ装置13Bとの間に直接に掛け渡したが、実質的に2本以上のワイヤを用いることができる。例えば、図1に示すように天板21の下面に滑車22を設け、ワイヤWRの一端を基台12Bに固定して滑車22により折り返すように掛け渡してもよい。
また、例えば、2つの空気圧シリンダを平行に設置してツインマストとした場合に、その中間に1本または2本のワイヤWRを取り付ける。1つの空気圧シリンダを設置し、その両側に2本のワイヤを取り付ける。この場合に、2本のワイヤは、1本のワイヤを空気圧シリンダの頂部において折り返して用い、下端の一方を基台12に固定し、他の一方をウインチ装置13Bのドラム133で巻き取るようにする。また、ワイヤを、空気圧シリンダ11と同様に伸長または収縮するガイドシリンダの中を通過させ、ワイヤがガイドシリンダによって保護されるように構成してもよい。
上述の実施形態においては、切換え弁V1,2によって空気圧シリンダ11に給排する圧縮空気の量を制御したが、流量を連続的に制御可能な弁、圧力を連続的にまたは段階的に制御可能な弁、その他の種々の弁を用いて制御を行うことができる。また、圧縮空気を供給するためのポンプを制御することも可能である。空気圧シリンダ11に代えて、水圧シリンダまたは油圧シリンダを用いることも可能である。
本発明に係るリフト装置には、例えばその天板21に無線の送受信アンテナを取り付け、アンテナ用のタワーとして用いることができる。また、天板21にカメラなどを取り付け、景色または競技などを高所から撮影するために用いることができる。その他、高所作業用のリフト、照明塔、スプリンクラー用、ミストスプレー用などにも用いることが可能である。
その他、空気圧シリンダ11、基台12,12B、ウインチ装置13,13B、張力検出装置14,14B、電気制御装置16、空気圧制御回路17,17B、またはリフト装置1,1Bの全体または各部の構造、形状、個数、材質、動作の内容または順序などは、本発明の趣旨に沿って上述した以外の種々のものとすることができる。