JP2010167769A - 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】寸法安定性が良好で、熱加工時においてシワなどが発生せず、平面性が良好なセラミックコンデンサ用のグリーンシートや、転写用フィルム、光学用途のプロテクトフィルムなどに好適に使用できるフィルム基材の提供。
【解決手段】フィルムの長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向との2方向の熱収縮応力値の差が160℃において0.5MPa以下であり、平均HS150が0.40%以上0.70%未満であり、長手方向の厚み変動率が0.5%以上4%以下である二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関するものであり、詳しくは、熱による寸法変化の少なく、優れた加工特性を有し、加熱処理下でも優れた平面性が要求されるセラミックコンデンサ用グリーンシート製造用途や転写箔、その他の塗工を実施し使用される基材フィルムに関するものである。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる二軸配向フィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から、各種加工用基材フィルムとして多く利用されている。特に、優れた強度、寸法安定性が要求されるセラミックコンデンサ用のグリーンシート製造用離形用途や転写箔などの基材フィルム等の用途に好適に用いられる。特に、近年のコンデンサーの高容量化、小型化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みは2〜5μmと薄くなりつつあり、本用途に使用されるフィルム基材は従来以上に厚み精度、平面性が要求されている。さらに、セラミックコンデンサ用のグリーンシート製造用離形用途や転写箔用途として使用する場合、基材フィルムは高温下(80〜180℃)で長手方向に張力を掛けた状態で各種目的に応じた後加工処理がなされる。この加工工程においても、フィルムの平面性を保つのが重要となる。
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、まず回転速度に差を設けたロール間で長手方向に延伸された後に、さらにテンター内でフィルムの端部を把持された状態で幅方向に延伸され、次いでテンター内で熱固定されることによって製造される。幅方向の延伸工程では、テンター内においてフィルムの両側端は把持手段により把持されているので、横延伸に伴う縦方向の収縮応力は把持手段によって拘束されている。これに対し、フィルム中央部分は把持手段による拘束力が比較的弱い状態にある。それゆえ、特に中央部と端部では長手方向の配向および緩和の等方性に差が生じ、フィルムの幅方向の位置によって配向性が異なるという事態が生じてしまう。このようにフィルムに著しい物性の歪みがある場合は、縦方向や横方向、或いは部分的な斑点状のシワが発生する場合がある。後加工工程の平面性の乱れが生じた基材フィルムを使用した場合、セラミックコンデンサの成型不良や転写箔用途では画像の歪みが生じるため、多大な歩留まり低下を引起す事態が発生してしまう。
さらに、離型加工や転写箔などの高温加工時における平面性は長手方向に掛かる張力によりフィルムの歪みが生じるので、その厚みは可能な限り変動が少ないものが良い。また、厚み変動率が5%を超えるとロールで巻かれた状態で長期の経時で厚みの厚薄によりタルミが生じるため、後加工での加工性が低下する場合がある。
フィルムの平面性に関しては、これまで特許文献1〜4が開示されている。また、特許文献1〜4以外にも二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの厚み斑を低減するための方法としては、特許文献5の如く、比較的に低倍率の倍率の延伸を多段で繰り返す延伸方法や、特許文献6の如く、高温度下で高倍率の延伸を行った後に低倍率の延伸を行う延伸方法が知られている。
また、特許文献7の如く、キャストフィルムの中央部の平均厚みが10μm〜800μmの範囲にある熱可塑性樹脂フィルムを低速ロールと高速ロールとの間で延伸する延伸工程において、少なくとも、非接触式で且つ30kW/m以上200kW/m以下の熱源を使用してフィルムを加熱する方法や、特許文献8の如く、フィルムと延伸ロールの接点から5mm〜100mm手前に設けた加熱手段により未延伸フィルムを縦幅3mm〜30mmに渡って加熱し、延伸ロールでフィルムの流れ方向に延伸する方法や、さらには特許文献9の如く、特許文献8の方法に加え、延伸ロールによりフィルムの流れ方向に複数段階に延伸を行う方法が知られている(なお、これらの延伸方法については後で詳細に説明する)。
さらに、特許文献10の如く、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、球状粒子を含有する易滑層を備えて、ポリエステルフィルム中には触媒に起因する微細粒子が存在させたフィルムが知られている。
また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムをベースフルムとして使用する場合、後工程において熱処理が施される場合がある。このような熱処理によりフィルムの寸法が変化するが、精密加工においては熱処理工程による熱収縮が少ないことが望まれる。寸法変化を特に嫌う用途では、加工前に再度、アニール処理を実施してから使用することも行われている。
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの熱収縮率を低減する方法としては、長手方向の緩和処理をオフラインの熱処理工程で実施する方法(特許文献12)、テンターの内で端部に剃刀を入れ切断しクリップの影響を避けて長手方向の緩和処理を行う方法(特許文献13)提案されている。
特開平6−254959号公報 特開2001−93771号公報 特開2002−331575号公報 特開2005−186555号公報 特開昭48−43772号公報 特開昭54−56674号公報 特開平11−170357号公報 特開2000−181015号公報 特開2000−181016号公報 国際公開第03/093008号パンフレット 特開2002−254565号公報 特開2001−138466号公報 特公昭57−054290号公報
フィルムの加工処理、特にセラミックコンデンサ用の離型シートの加工処理では、今後、更に精密化することが予測される。これにより、従来は問題なく使用されたフィルムであっても、基材フィルムの平面性がコンデンサの薄膜化の上で歩留まり低下の問題を引き起こす恐れが懸念される。
また、二軸延伸フィルムを得るために、縦延伸を施したフィルムについて横延伸を行う場合に、横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の熱特性に違いが生じる。このため、縦方向の熱収縮率が幅方向で異なり、張力下での熱加工時においてフィルムに掛かる実質的な張力が幅方向で異なるためにフィルムに歪みが生じることとなる。さらに、斜め方向の熱収縮応力差によるシワの発生に影響を及ぼすこととなる。この為に後加工で熱的に厳しい環境下でも平面性が要求される加工フィルム、特に薄物とよばれる厚さ60μm未満のフィルムでは、生産性向上のために、かかる状況を改善する必要があった。
これに対して、特許文献1では、フィルム両端の熱収縮応力差が0〜100MPaである二軸延伸ポリエステルフィルムがたるみには良いと記載されている。シワについては結晶サイズが56〜70オングストロームが良いとされているが、これは一般的な指標とはいえない。
特許文献2には、平面なセラミックコンデンサ製造用キャリヤーシートが開示されている。これらの方法はキャリヤーフィルムの平面度合い、およびポリエステルフィルムの厚み斑度合いを規定しているが、特に薄膜化を前提とした加工フィルムの特性を最適化した指標を提案しているものではない。
特許文献3には、フィルム厚みの薄膜化とともに離型加工適性を向上する離型用二軸延伸ポリエステルフィルムに関して、最適なフィルムの複屈折率△nを規定して離型加工時のタルミなどの抑制を提案しているが、加工時の耐熱性に関する記述がなく、複屈折率を最適化するだけでは加工時の平面性を良好に維持することは困難である。
特許文献4には熱収縮応力差の小さいフィルムが開示されている。このことにより大幅な効果が認められたものの、最近ではセラミックコンデンサのサイズが益々極小化し従来の平面性レベルでは満足できるものではなくなってきた。
また、特許文献5、特許文献6、特許文献8、特許文献9の延伸方法とも、多段延伸する際の各延伸が、加熱したロール間の周速差を利用して単純に引き伸ばすだけのものであるため、厚み斑の低減は図れるものの、幅方向の物性の差を改善するものではなかった。一方、特許文献7及び特許文献11の方法では、厚み斑を高度に低減させることはできず、近年の平面性に対する高レベルな要求を満たす二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを到底得ることができない。また、特許文献10では触媒に起因する微細粒子の粒径が1〜10μmの微細粒子が200〜20,000個/mm2とする方法が記載されており、200個/mm2以下では延伸の均一性が不良となる傾向にあり、厚み、配向の斑が発生しやすいとある。ところが、触媒による粒子では、重合時の僅かな温度圧力などの変動で粒子形成のバラツキが生じ、粒子量および粒子径のコントロールが困難である(例えば、特開平5−154
969号公報参照)。
一方、熱収縮率を小さくする場合についても、特許文献12の方法ではオフライン処理を行うのは経済的でない。また、特許文献13の方法では、クリップの把持の影響は受けないが、緩和処理中のフィルムの自重で弛み、テンター内のプレナムダクトに接触してフィルムに傷が生じるという問題があった。これを避ける為に上下のエアバランスを微妙に調整し傷防止を行うと、エアバランスの崩れによりオーブン内の温度の均一性が損なわれて、フィルムの平面性が悪化したり均一性が損なわれるという問題があった。
すなわち、従来は、熱による寸法安定性に優れ、厚み斑が高度に低減されており平面性が良好である上、幅方向での物性差が少ない、離型シートなどの後加工に好適な二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは存在しなかったのである。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、厚み斑が少なく、フィルムの斜め方向(ab方向)の熱収縮応力差によるシワの発生のきわめて少ないフィルムを作ることが出来るか鋭意検討した。その結果、後述のように、縦延伸工程および横延伸工程の延伸条件を従来とは全く異なる条件で行うことにより、フィルムの厚み斑が少なく、熱加工時のシワのきわめて少なく、次工程での加工適正のきわめて優れたフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の内、第一の発明は、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸フィルムを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸フィルムを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程を経ることにより製造される二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムであって、縦延伸工程において加熱の幅を長手方向に狭小化することにより得られる、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムである。
(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向との2方向の熱収縮応力値の差が160℃において0.5MPa以下であること
(2)下記切り出し方法Aにより設けたフィルム切り出し部から二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの長手方向に沿って長さ250mm×幅20mmのフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の150℃で30分間加熱したときのフィルムの長手方向の熱収縮率の平均値である平均HS150が、0.40%以上0.70%未満であること
(切り出し方法A)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからフィルムを幅方向において、端から50mmの部分、およびその間を4等分し、5つの切り出し部を設ける。前記幅方向の切り出し部をロールの巻き始めと中間と巻き終りに設ける(合計15個)。ここで、ロールの「巻き始め」、「巻き終り」は、全フィルムロールの長さを巻き始めと巻き終りの端部から50mm以上2m以内の領域であり、「中間」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域である。
(3)下記切り出し方法Bにより設けたフィルム切り出し部から二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの長手方向に沿って長さ30m×幅3cmのフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の長手方向の厚み斑を測定したときに、長手方向の厚み変動率が0.5%以上4.0%以下であること
(切り出し方法B)
フィルム幅方向の両端部分(端縁から50mm以内の部分)で、フィルムの長手方向の始め部と中間部と終り部にフィルム切り出し部を設ける。ここで、「始め部」、「終り部」とは、長手方向におけるフィルムの長さを端部から2m以内を含む領域をいう。また、「中間部」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域をいう
本願の内、第2の発明は、フィルムの厚みが10μm以上60μm未満であることを特徴とする前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムである。
本願の内、第3の発明は、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロールである。
本発明の内、第四の発明は、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸フィルムを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸フィルムを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程と、長手方向の緩和処理をする工程とを含んでおり、その縦延伸工程が、下記要件(4)を満たし、その横延伸工程が、下記要件(5)〜(9)を満たすことを特徴とする二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法である。
(4)周速差を設けたロール間において加熱の幅を狭小化しながら加熱装置を用いて、105±20℃に加熱して、長手方向に2.0倍以上3.2倍以下の倍率となるように延伸した後に、その縦延伸後のフィルムを、冷却したニップロール間を通過させ、周速差を設けたロール間において加熱の幅を狭小化しながら加熱装置を用いて100±20℃に加熱して、長手方向に1.05倍以上1.5倍以下の倍率となるように延伸するものであること
(5)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上30℃以下であること
(6)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
(7)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
(8)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
(9)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
本願の内、第5の発明は、前記長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮させることで当該長手方向の緩和処理を行うことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法である。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、寸法安定性が良好であり、厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)が極めて小さく平面性が良好である上、80〜180℃での高温加工時において張力調整によるシワの発生が極めて少ない。それゆえ、本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、セラミックコンデンサ用のグリーンシートや、転写用フィルム、光学用途のプロテクトフィルムなどのフィルムに好適に用いることができる。
変形速度30,000%/分でのポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの応力歪み曲線(S−S曲線)を示す説明図である。 切り出し方法Aの説明図である。 切り出し方法Bの説明図である。 本発明における長手方向の緩和を実施するクリップチェンの拡大部分を示す平面図である。 (a)本発明における長手方向の弛緩を実施するクリップチェンの拡大部分を示す縦の断面図である。(b)はガイドレールが半分程変位した状態を示す。 本発明における横延伸機全体を示す説明図である
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するフィルムは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有する。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス−(4−カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸等が挙げられる。上記の他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。この他、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分も利用され得る。
このようなポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、原料であるPETの極限粘度(IV)は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましく、0.50〜0.65dl/gの範囲がより好ましい。PET原料の極限粘度が0.45以下であると、例えば回収により再度押出機を通過した場合にPETの重合度が低くなりすぎて、フィルムの延伸性が悪化したり、耐引き裂き性が低下したりするため好ましくない。反対に、極限粘度が0.70dl/gを上回ると、濾圧が大きくなりすぎて高精度濾過が困難となるので好ましくない。なお、樹脂原料のIVは、たとえば、以下のような方法で求められる。
[極限粘度(IV)]
PETの粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して算出する。なお、極限粘度は[η]とも表される。
また、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、原料であるPETの酸価(AV)は、3〜30eq/tの範囲が好ましく、5〜25eq/tであるとより好ましい。酸価が3eq/t以下であると、重合速度が遅くなってしまい、製造効率が低下するので好ましくない。反対に、酸値が30eq/t以上であると、加水分解が進行し易く、重合度の低下を引き起こし易いので好ましくない。なお、樹脂原料の酸価は、たとえば、以下のような方法で求められる。
[酸価]
原料を粉砕した後、ベンジルアルコールに溶解し、クロロホルムを加えてから水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、PET1t当たりの水酸化ナトリウムの当量を算出する。
さらに、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、押出機に投入する前の原料(再生原料を含む)に異物が含まれていないことが望ましい。特に、異物による欠点を低減するため、溶融押出しする際に高精度濾過を行い、製膜後のフィルム1m2あたりに存在する直径20μm以上の異物が10個以下となるように調整するのが好ましい。上記の高精度濾過を行う場合、初期濾過効率が90%以上、好ましくは95%以上で、濾過粒子サイズが15μm以下の濾材を用いることが好ましい。ここで、初期濾過効率とはANSI/B93.36−1973により測定される数値をいう。なお、原料中の異物の個数は、たとえば、以下のような方法で求められる。
[異物の個数]
位相差顕微鏡およびCCDカメラを用いて、溶融させた原料チップの拡大画像を撮影し、画像処理装置を用いて異物数を計数する。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するフィルムの厚みは、特に限定はされない。しかしながら、セラミックコンデンサ用のグリーンシート製造用離形用途や転写箔などの基材フィルム等の用途、オフセット印刷などの精密印刷を行う際の基材としては、10μm以上60μm未満が好ましい。
また、効率良く後加工を施すために、ロール体とすることも本発明の好ましい実施態様である。本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロールの幅は、特に制限されるものではないが、取扱い易さの点から、フィルムロールの幅の下限は、700mm以上であると好ましく、1000mm以上であるとより好ましい。一方、フィルムロールの幅の上限は、後加工する装置の大きさによって定まるが、現状では2.2mが最大幅と考えられており、2.0m以下であるとより好ましく、1.5m以下であるとさらに好ましい。加えて、フィルムロールの巻長も、特に制限されないが、巻き易さや取扱い易さの点から、フィルムが10μm程度の厚みである場合には、25,000m以下であると好ましく、4,000m以上であるとより好ましい。また、フィルムが60μm程度の厚みである場合には、7,000m以下であると好ましく、1,100m以上であるとより好ましい。なお、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等の紙、プラスチックコアや金属製コアを使用することができる。
[熱収縮応力]
フィルムは加温により寸法変化が生じる。後加工の流れ作業でフィルムを高温(80〜180℃)で処理する場合、長手方向に張力が掛かった状態でフィルムには熱収縮応力が発生する。この熱収縮応力の大きさに異方性がある場合は、フィルムにシワやタルミが生じる要因となる。本発明のフィルムは、フィルムの長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向との2方向の熱収縮応力値の差が160℃において0.5MPa以下、好ましくは0.4MPa以下であることを特徴とする。上記熱収縮応力差が0.5MPa以下である場合は、後加工での昇温過程でもフィルムの平面性が保持され、シワやタルミが生じにくく、良好な加工性が得られる。
ここで、熱収縮応力値の測定は以下のように行う。
(1)フィルムからフィルム製膜の長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の2方向にそってフィルム試料(例えば、サンプル幅4mm、サンプル長15mm)を切り出す。
(2)熱機械分析装置(例えば、セイコー電子工業製、TMA/SS100)を用い、初期加重初期荷重19.6mNの条件下でセットする。初期荷重をゼロ補正し、30℃から230℃までの範囲を5℃/分で昇温していき、一連の昇温過程においてチャック間距離を一定に保った状態でフィルム収縮に伴って発生する応力を計測する。
(3)上記、昇温過程における160℃点での熱収縮応力値を測定し、フィルム製膜の長手方向と45度方向での熱収縮応力値と、フィルム製膜の長手方向と130度方向での熱収縮応力値との差の絶対値を算出した。
[熱収縮率]
本発明のフィルムは、熱処理による寸法安定性が高いことを特徴とする。すなわち、フィルムを下記切り出し部から採取したフィルム試料を150℃で30分間加熱したときのフィルムの製膜の長手方向の熱収縮率の平均値である、平均HS150を求めたときに、それらのHS150が、0.40%以上0.70%未満である。
上記平均HS150が、0.70%未満であると、後加工における熱処理においても寸法安定性が良好となりこのましい。例えば、フィルムをテンター内で加熱乾燥する場合にも、通過性が良好となり好ましい。上記平均HS150は、0.65%以下であるとより好ましく、0.60%以下であるとさらに好ましくい。なお、上記平均HS150は、低いほど好ましいが、本発明では設計上、0.40%が下限であると考えられる。
熱収縮率の測定に使用するフィルム試料は、下記切り出し方法Aにより設けた切り出し部から切り出し部より採取する。
(切り出し方法A)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからフィルムを幅方向において、端から50mmの部分、およびその間を4等分し、5つの切り出し部を設ける。前記幅方向の切り出し部をロールの巻き始めと中間と巻き終りに設ける(合計15個)。ここで、ロールの「巻き始め」、「巻き終り」は、全フィルムロールの長さを巻き始めと巻き終りの端部から50mm以上2m以内の領域であり、「中間」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域である。
前記のように設けた15個の切り出し部より切り出した試料フィルムについて熱収縮率を測定する。本発明における熱収縮率の測定は、試料フィルムに200mm間隔で標線を印し、150℃に調節した加熱オーブンに入れ、JIS/C−2318に準拠して測定する。15個の試料フィルムについて測定した結果の平均値を求めることにより本発明の熱収縮率の平均値(平均HS150)とした。
[厚み変動率]
本発明のフィルムは、長手方向に沿って長さ30m×幅3cmの帯状のフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の長手方向の厚み変動率(厚み斑)を測定したときに、フィルム試料の長手方向の厚み斑が、いずれも0.5%以上4.0%以下の範囲内にあることが必要である。従来の特許文献では厚み精度を評価する際に、厚みの測定長さが短いもの(10m以下)が用いられてきた。これに対し、本願発明は高度の厚み斑が低減されているため、上記のように長尺のフィルム試料を厚み斑評価の対象とする。本発明の方法によれば、このように長尺のフィルムで評価しても厚み、配向の斑が発生しないことを特徴とする。
さらに、本発明の態様として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロールの場合であっても、長手方向に沿って長さ30m×幅3cmの帯状のフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の長手方向の厚み斑を測定したときに、フィルム試料の長手方向の厚み斑が、いずれも0.5%以上4.0%以下の範囲内にあることが必要である。さらに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロールにおいて、上記で測定した厚み斑(厚み変動率)の変動(最大値と最小値の差)が0.5%以下であることが好ましい。厚み斑の変動が上記範囲内であれば、後加工での連続的な精密加工を安定的に行う上で好ましい。なお、厚み斑の変動の下限は、低い方が好ましいが、生産上、0.05%が下限となる。
ここで、厚み斑の測定に用いるフィルム試料は、下記切り出し方法Bにより設けたフィルム切り出し部より採取する。
(切り出し方法B)
フィルム幅方向の両端部分(端縁から50mm以内の部分)で、フィルムの長手方向の始め部と中間部と終り部にフィルム切り出し部を設ける。ここで、「始め部」、「終り部」とは、長手方向におけるフィルムの長さを端部から2m以内を含む領域をいう。また、「中間部」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域をいう
本発明のフィルムは、上記したポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により二軸延伸して得ることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、得られた未延伸フィルムを、長手方向(縦方向)に延伸し、その縦延伸後のフィルムを幅方向(横方向)に以下に示す方法で横延伸し、以下に示す方法で熱固定処理することによって本発明のフィルムを得ることが可能となる。以下、本発明のフィルムを得るための好ましい製膜方法について、従来のフィルムの製膜方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
[本発明のフィルムの製造方法]
<従来の延伸方法の問題点>
未延伸フィルムは、上記の如くシート状の溶融樹脂を金属冷却ロールに巻き付けることによって形成される。その際に、金属冷却ロール形状の不均一性、溶融樹脂の吐出量の変動等の要因によって、未延伸フィルムには少なからず厚み斑が形成されてしまう。かかる厚み斑を低減するために従来から様々な試みがなされているが、未延伸フィルムの厚み斑を完全になくすことは、現状では不可能である。したがって、最終的に厚み斑の良好なフィルムを得るためには、未延伸フィルムにおける厚み斑を延伸工程において如何にして増幅させないか、が大きなポイントとなる。
未延伸フィルムの厚み斑を増幅させないような延伸をフィルムに施すためには、フィルムの引張特性を正確に把握して、その引張特性を勘案した延伸をフィルムに施す必要があると考えられる。一般的に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムの引張試験を行うと、図1の如き応力−歪み曲線(所謂S−S曲線)に示されるように、所定の歪み量に達するまで、応力が略一定の割合で増加し、所定の歪み量に達すると、歪み量が増加しても応力が増加しないプラトーな領域が出現する(なお、かかる引張初期における応力が飽和する点を降伏点という)。そして、そのようなプラトーな領域が出現した後に、再度、歪み量の増加に伴って応力が増加する領域が出現し(かかる降伏点後に応力が再度立ち上がり始める点を立ち上がり点という)し、応力が二次的に増加した後に破断する、という傾向を示す。
かかるフィルムの引張特性から、従来は、上記したS−S曲線におけるプラトーな領域を除いた領域、すなわち、歪み量の増加に伴って応力が増加する領域で延伸を施した方がフィルムの厚み斑が小さくなると考えられていた。そして、そのような考え方に基づいて、上記の如き特許文献5の延伸方法や特許文献6の延伸方法が提案されている。
特許文献5の延伸方法は、S−S曲線における降伏点以下の倍率の延伸を多段で繰り返すことを意図した延伸方法である。しかしながら、特許文献5の延伸方法は、各延伸が、加熱したロール間の周速差を利用して単純に引き伸ばすだけのものであるため、加熱した低速ロールの離れ際でフィルムがロールに粘着して、いわゆるスティック現象の微小な斑が発生してしまい、低速ロール上でフィルムが僅かに延伸されてしまい、厚み斑に影響しなくても熱加工工程での熱斑による平面性の悪化が発生する。
一方、特許文献6の延伸方法は、S−S曲線における立ち上がり点以上の倍率の延伸を高温度下で行った後に、降伏点以下の倍率の延伸を行うことを意図した延伸方法である。しかしながら、特許文献6の延伸方法も、特許文献5の方法と同様に、各延伸が、加熱したロール間の周速差を利用して単純に引き伸ばすだけのものであるため、加熱した低速ロールの離れ際でフィルムがロールに粘着して、いわゆるスティック現象の微小な斑が発生してしまい、低速ロール上でフィルムが僅かに延伸されてしまい、厚み斑に影響しなくても熱加工工程での熱斑による平面性の悪化が発生する。
特許文献7の延伸方法は低速ロールと高速ロールとの間で延伸する延伸方法で、非接触式で且つ30kW/m以上200kW/m以下の熱源を使用してフィルムを加熱しているのでロールの粘着による微小な斑の発生は抑えられるが、厚み斑を高度に低減させることはできず、近年の平面性に対する高レベルな要求を満たすことができない。
特許文献8の方法はフィルムと延伸ロールの接点から5mm〜100mm手前に設けた加熱手段により未延伸フィルムを縦幅3mm〜30mmに渡って加熱し、延伸ロールでフィルムの流れ方向に延伸する方法であるが、加熱手段により、加熱されたフィルムの高速側の把持部分が延伸ロールの後ろの高速ニップロールにあるため、延伸ロールとフィルムと速度をずれの無い様にして、微小な斑を防ぐということが必要となる。ところが、この速度を合わせることは困難で延伸の僅かな変動があると速度のズレとなり、フィルムに微小な斑が入ってしまうと言う欠点があった。
特許文献9の方法は延伸ロールの複数段階で延伸する方法であるが、ロールの離れ際での延伸が起こり、やはり、微小な斑が入ってしまうと言う欠点があった。
特許文献10の方法では球状粒子のコントロールが困難であり、安定して厚み斑を低減させることが出来なかった。
厚み斑は短い距離(10m未満)では良好に見える場合がある。しかし、長尺(10m以上)になると厚み斑が悪化し、実用上は長尺の100m程度以上での厚み斑の良いものが必要であった。従って、特許文献6による微細粒子の粒径が例えコントロールが出来たとしても、フィルムの後加工性を考慮すると厚みが20μm〜70μmでは1,000m程度の長さの安定性が必要で、それ以上の厚みでは100m程度の長さの厚みの安定性が必要であり、延伸工程での工夫がなければ、厚み精度が極めて高い長尺の二軸延伸フィルムを得るのは困難である。
<本発明のフィルムの製造方法の特徴>
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすれば厚み斑を良好なものとすることができるかについて鋭意検討した。その結果、以下のような縦延伸工程において加熱の幅を狭小化させるという特殊な延伸方法を採用することにより、従来とは全く異なる延伸方法で、厚み斑の小さなフィルムを得ることができることを見出し、本発明を案出するに至った。
(1)加熱装置による加熱の幅の狭小化
本発明のフィルムを得るためには、二軸延伸する方法として、縦延伸を二段以上で行うことが好ましい。横延伸は、縦延伸前、縦延伸後、もしくは二段以上の縦延伸の中間で行うことができるが、縦延伸を二段以上で行った後に横延伸する方法(以下、縦−縦−(縦)−横延伸方法)が好ましい。また、本発明のフィルムを得るためには、上記した二段以上の縦延伸を行う際に、各縦延伸において、後述する加熱装置を利用することにより、長手方向の加熱の幅の長さを2mm以上25mm以下に狭小化し、延伸点前後の温度差を急激なものとする。加熱装置による長手方向の加熱の幅の長さの上限は、より好ましくは25mm以下、最も好ましいのは10mm以下が好ましい。二段目以降の場合も同様である。加熱の幅の下限は、より好ましくは3mm以上である。なお、ここで加熱の幅とは、具体的には、加熱装置によりフィルムに照射されるエネルギー分布をフィルムの流れ方向に測定した際に、エネルギーピークの半分の強度の間隔である半値全幅をいう。これにより、延伸点前後のフィルムの温度差を後述のように制御することが好ましい。また、延伸の加熱の幅を狭小化した場合、外部環境の変動による影響が受け難くなるため、フィルムロールにおける厚み斑の変動を抑制することができる。
上記のように延伸点が狭く、温度差異のきわめて大きい縦延伸を施すことにより、厚み斑が解消される理由は明らかではないが、発明者らは、次のように考えている。すなわち、周速差を設けたロール(通常、ニップロール)間でフィルムを延伸する際には、当該ロール間でフィルムの幅方向に等しい張力が作用するため、温度差異が小さいとSSカーブの温度依存性による応力差が小さく、厚みの小さい部分の方が厚みの大きい部分よりも先に延伸されてしまう。それゆえ、厚みの小さい部分の抗張力を早く増大させて、延伸部位を厚みの小さい部分から厚みの大きな部分へ移行させなければ、未延伸フィルムの厚み斑が増大されて、厚み斑の良好なフィルムを得ることができない。ここで、上記したような狭小化した部分で温度差異のきわめて大きい縦延伸を施すと、延伸が始まると直ちに、厚みの小さな部分の実質的な延伸温度が降下し(所謂、温度−時間則)、厚みの小さな部分の抗張力が増加し、厚みの小さな部分が延伸されにくくなるとともに厚みの大きな部分が延伸され易くなり、温度差異効果と温度−時間則効果で結果的に、厚み斑が解消されるものと考えられる。しかも、温度が低い所では抗張力が高いので延伸部分から延伸時の張力の影響を受け難いので、厚みの小さい部分と厚みの大きい部分の延伸の差が出難く、厚み斑が悪化することなく延伸が可能であると考えられる。
つまり、延伸が行われるフィルムは前後のニップロール間では同一の張力が掛かっているのでフィルムの実質の温度が一定ならば、厚みが薄い部分は先に伸び、厚みの厚い部分は伸び難いが、延伸が狭小な範囲で行われる場合には薄い部分が急激に延伸され実質の延伸温度が低下し、張力が大きくなり、厚みの厚い部分の温度が薄い部分より高いので張力が低下し全体の張力がバランス化して厚い部分が延伸される。延伸が起こると再び厚い部分の実質の温度が低下した状態となり、全体として張力がバランスして延伸されていくので厚みが均一化すると考えている。
本発明のフィルムの縦延伸工程で用いられる加熱装置は、上記のように狭小的な加熱の幅をもって加熱できるものであれば特に限定されないが、レーザ加熱装置、プラズマビーム加熱装置、高温エアジェット加熱装置、赤外線加熱装置(特に、波長2.5μm以下の赤外線加熱装置)などが好適に使用可能である。
加熱装置として用いることができるレーザとは、CO2レーザやYAGレーザなどがあげられる。特に、これらのレーザは高いエネルギー密度をフィルムに与えることが可能であるので、狭小な幅に集中してフィルムを加熱するのに適しているので好ましい。
レーザ光源をフィルム幅方向に走査して用いる場合には、フィルム幅方向へのレーザ光源の走査速度と、フィルムの長手方向への進行速度との関係から厳密に言うとフィルム幅方向に対して斜めにレーザ光線が走行することとなる。レーザ光線の走行線がフィルム幅方向軸に対して過度に斜めになると、延伸領域が固定化されず、厚み斑が生じやすくなる場合がある。そのため、レーザのスポット径(フィルム表面での照射径)と、フィルム幅方向でのレーザの走査速度と、フィルムの長手方向の進行速度とを制御することが望ましい。具体的には、レーザの走査速度をレーザのスポット径の1/3以下となるようにし、かつレーザ光源がフィルム幅方向を1往復するまでにフィルムの長手方向の移動距離が0.2mm以下となるようにレーザの走査速度等を制御することが好ましい。例えば、0.3mmのスポット径のレーザ光線が往復する間に、フィルムの長手方向の進行が0.2mm以下であると、スポット径の1/3程度がレーザの一往復の走査で二度さらされることとなる。フィルム幅の大きさにもよるが、生産性の点から、レーザのスポット径は0.3mmより大きい3mm程度がより好ましい。スポット径が大きくなりすぎると、スポット径周辺のフィルム強度の差が小さくなり、延伸点前後におけるフィルム温度の差が付き難く、厚みの斑を引き起こし易いので、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
(2)延伸条件の適正化
本発明のフィルムを得るためには、上記した縦−縦−(縦)−延伸を行う際に、一段目の縦延伸倍率を2.0倍以上3.2倍以下に調整し、一段目の縦延伸温度を105±20℃に調整するとともに、二段目以降の縦延伸倍率を1.05倍以上1.5倍以下に調整し、二段目以降の縦延伸温度を100±20℃に調整するのが好ましい。さらに、一段目における延伸点前後のフィルムの温度差を15℃以上にするのが好ましく、20℃以上にすることがより好もしい。温度差を設けた方が厚みは良くなると考えるが温度差が50℃以下が限界と考えている。また、二段目以降における延伸点前後の温度差を2℃以上にするのが好ましく、5℃以上がより好ましい。二段目以降における延伸点前後の温度差の上限は20℃以下が好ましい。なお、延伸点前および延伸点後におけるフィルムにおいて温度分布の局在(例えば、フィルム表面、内部、裏面で温度の差がある場合など)がある場合はその平均をもってフィルムの温度とする。また、延伸点前のフィルム温度は、具体的には加熱装置による加熱直前におけるフィルムの温度を測定し、延伸点後のフィルム温度は、具体的には加熱装置による加熱後のフィルムの温度を測定する。後述の実施例では、例えば、レーザを用いる場合は、長手方向でレーザの照射光が当たっていない所のフィルムの温度を非接触式の赤外温度計で測定し、レーザを通過した時点でフィルムの温度を測定し、その差を延伸点前後のフィルム温度差とした。また、他の加熱装置においてもこれと同様に測定することができる。
一段目の延伸倍率が3.2倍を上回って大きくなると、延伸張力が高くなりすぎてしまうため、延伸点が固定せずに拡がってしまい、結果的にフィルムの厚み斑が悪くなり易い。反対に、一段目の延伸倍率が2.0倍を下回って小さくなると、延伸張力が極端に低下してしまうため、厚みの小さい部分と厚みの大きい部分との引っ張り合いが起こらないため、結果的にフィルムの厚み斑が悪くなり易い。また、二段目の延伸倍率が1.5倍を上回って大きくなると、延伸張力が高くなりすぎてしまうため、延伸点が固定せずに拡がってしまい、結果的にフィルムの厚み斑が悪くなり易い。
また、一段目における延伸点前後のフィルムの平均温度差が15℃未満の場合は、延伸応力が高く延伸点前のフィルムの変形が大きくなり、低速ロール上に変形が及び、低速ロールとフィルムとの速度差が大きくなり微小な斑が生じやすい。逆に、延伸点での温度が高くなりすぎると、温度差が15℃以上有っても、延伸応力の差が付かず、延伸が低速ロール上に変形が生じたり、低速ロールの上で微小なスティックが発生し、微小な斑となる。よって、延伸温度と延伸点前後のフィルムの温度差が上記範囲となるように予熱温度を制御することが望ましい。
本発明のフィルムの製造方法における一段目の縦延伸条件(すなわち、105℃前後での比較的に高い倍率の延伸)は、従来、厚み斑に悪影響を及ぼすと考えられていた「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当すると考えられる。それにも拘わらず、上記の如く105℃前後で高倍率(2.0〜3.2倍)の一段目の縦延伸を行うとともに、100℃前後で低倍率(1.05〜1.5倍)の二段目の縦延伸を施すことにより、厚み斑が解消される理由は明らかではないが、上記の如く、レーザにより加熱して、延伸点を固定(狭小化)して温度変化を極端に増加させることによって、温度時間則の効果で極小の中での力の均衡により歪みと応力の作用が厚み斑への影響を少なくするものと考えられる。
(3)ロール間の中央位置での延伸
本発明のフィルムを得るためには、上記の如く一段目、二段目の各縦延伸工程においてレーザ以外にも、プラズマビーム、高温エアジェット、赤外線(特に波長2.5μm以下の赤外線)なども本発明の概念を満たす延伸点前後の温度差を急激なものとすることが可能である。その際に、ロール間ギャップを大きくすると、フィルムのばたつき等の外乱によって厚み斑が悪くなる傾向にある。したがって、本発明のフィルムを得るためには、ロール間ギャップをできる限り小さくする必要がある。また、前側ロールの離れ際および後側ロールの接触際においては、フィルムの走行速度をロールの表面速度とほぼ等しくして速度差がないようにするとともに、延伸に伴う変形部分が空中にあるようにすることにより、ロール間ギャップをできる限り小さくする必要がある。そのため、ロールに出来るだけ近くすることが出来る中央位置に加熱装置による加熱位置を設けることが好ましい。
(4)ロールの低温化
本発明のフィルムを得るためには、上記の如く一段目、二段目以降の各縦延伸工程において、周速差を設けたロール間の中央位置に加熱部位を設けることが好ましいが、その際に、一段目の縦延伸後の後側ロール(二段目の縦延伸における前側ロール)の温度を通常のロール延伸時よりも低温に調整することが好ましい。そのように一段目の縦延伸後の後側ロール(二段目の縦延伸における前側ロール)の表面温度を通常より下げることにより、フィルム表面のみの温度を低下させ、フィルムの表面を硬くして、その後側ロールの凹凸(目視できないようなロール表面のキズや、ロール表面へのゴミ等の付着)がフィルムに転写される事態を防止することができ、より厚み斑の少ないフィルムを得ることが可能となる。
この一段目の縦延伸後の後ろ側ロールはニップするのが好ましく、そのニップロールの温度としては縦延伸を実施したフィルム表面温度より5℃以上低く設定することが表面に意図しない微小な凹凸を防ぐのに有効である。より好ましい温度としてはガラス転移点以下、更に好ましい温度としてはガラス転移点より5℃以上低い温度である。下限は次の延伸を考慮してガラス転移点以下20℃以上低いと厚みが悪化しやすい。
なお、フィルムの縦延伸工程において、上記した(1)〜(4)の手段を用いることにより、フィルムの厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)を低減することが可能となる。なお、上記した(1)〜(4)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムロールの厚み斑低減および微小な斑の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(4)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムの厚み斑低減が可能になるものと考えられる。
また、本発明のフィルムを得るためには、上記の如く特定の縦延伸を施したフィルムに横延伸、熱固定処理を施す必要がある。幅方向に延伸する場合には、延伸温度は80〜210℃であることが必要であり、好ましくは130〜200℃である。幅方向の延伸温度が80℃未満では、フィルムが破断し易くなるため、好ましくない。また、210℃を超えると、得られたフィルムの平面性が悪くなるため、好ましくない。幅方向の延伸倍率は、3.0〜5.0倍、好ましくは3.6〜4.8倍である。幅方向の延伸倍率が3.0倍未満では得られたフィルムの厚み斑が悪くなり好ましくない。幅方向の延伸倍率が5.0倍を超えると延伸において破断の頻度が多くなり好ましくない。
<従来の横延伸方法の問題点>
本発明のフィルムを得るためには、縦延伸を施したフィルムに横延伸を行う必要がある。ところが幅方向に延伸する場合には、幅方向での力の伝達が横延伸機内の端部と中央部で異なる。即ち、端部は横延伸を実施するために把持部で掴まれていて、動きが制限されているが、中央部は長手方向に動くことが可能な状態である。この状態で、丁度、1本のロープを左右に引っ張った状態と同じ様に懸垂線の曲線を描く。横延伸の場合は、長手方向でその懸垂線の形状は、延伸初期から延伸後期で刻々と変化をしていく。この変化は、例えば横延伸の始まる前のフィルムシートに長手方向に垂直に(幅方向に平行に)フィルムシートの表面に速乾性のインクで線を入れることで可視化することが出来る。横延伸初期はその線は流れ方向の後側に凸に見え、延伸が進むとある所で一直線になり、その後に流
れ方向に凹となって見える。
この横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムの長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の熱特性に違いが生じる。このため、縦方向の熱収縮率が幅方向で異なり、張力下での熱加工時においてフィルムに掛かる実質的な張力が幅方向で異なるためにフィルムに歪みが生じることとなる。さらに、斜め方向の熱収縮応力差によるシワの発生に影響を及ぼすこととなる。この為に後加工で熱的に厳しい環境下でも平面性が要求される加工フィルム、特に薄物とよばれる厚さ60μm未満のフィルムでは、生産性向上のために、かかる状況を改善する必要があった。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすればフィルムに幅方向の熱収縮率差に起因する熱加工工程での張力による歪が発生することなく、また、フィルムの斜め方向(ab方向)の熱収縮応力差によるシワの発生のきわめて少ないフィルムを作ることが出来るか鋭意検討した。その結果、上記の縦延伸方法に加え、以下のように横延伸工程の延伸条件を従来とは全く異なる条件で行うことにより、フィルムに熱斑がなく、熱加工時のシワのきわめて少なく、熱収縮率差による加工張力による歪を内在させることなく、次工程での加工適正のきわめて優れたフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
<本発明のフィルムの製造方法の横延伸工程の特徴>
縦延伸工程を経たフィルムは次いでテンター内で横延伸処理がなされる。テンター内は(イ)縦延伸を施されたフィルムを横方向に延伸する為にフィルムを延伸に適した温度まで昇温する予熱部分と、(ロ)昇温されたフィルムを横方向に延伸する延伸部分、(ハ)引き続き縦及び横延伸による歪を低減する熱処理を施す熱固定処理部分、(ニ)横方向の歪を更に低減する緩和処理部分、(ホ)最後に熱の掛かったフィルムをガラス転移点(Tg)以下に冷却する冷却部分、に区分できる。テンター側部には、チェーンにつながれたクリップを走行させるレールが設置されており、フィルムはクリップに保持された状態でテンター内を走行する。
(イ)の予熱部分では、フィルムの上部および/もくしは下部に設置されたプロナムダクトから噴出す熱風によりフィルム温度が昇温する。フィルムは昇温により膨張するが、かかる膨張相当分による弛みが生じないように、フィルム端部を保持するクリップの走行レールは僅かな幅方向の拡がりが施されている。こうして、プレナムダクトから噴出する風の風圧によりフィルムのバタツキを抑え、熱風が均一にフィルム表面に当たる様に工夫している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムを横方向に延伸する為に、フィルム全体の長手方向の進行に対してクリップチェーンは斜め方向に向かってフィルム幅方向に拡がるように設置される。端部をクリップで保持されたフィルムは進行に伴い、幅方向に引っ張られて横方向の延伸が施される。フィルムの延伸倍率はクリップチェーンの走行レールの拡がりの程度(角度と距離)に応じて決定される。
(ハ)の熱固定部分ではフィルムが縦方向及び、横方向に延伸された際に生じた歪を低減する為に、フィルムに高温の熱を掛け、歪を除去している。この部分の温度により主として縦方向の熱収縮率の大きさが決定される。
(ニ)の緩和処理部分は横方向の歪を更に低減する為に、クリップチェーンの走行レール幅を幅方向に縮めるなどの処理により、幅方向の歪を除去している。この処理の程度(温度及び緩和率)に応じて主として横方向の熱収縮率は決まる。
(ホ)の冷却部分ではフィルムをTg以下に冷却し、(ハ)、(ニ)の歪を低減した状態でフィルムを室温付近で取り出す様に冷却している。
それぞれの部分は上記の様な役割を担っているが、本発明では(ロ)の延伸部分では、二軸延伸フィルムが持つ幅方向の全方位の物性の均一化と厚み斑の低減の両立を意図し、(ハ)の熱固定処理部分では縦方向の熱収縮率が均一になるように意図している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムは、進行方向に対して斜め方向に設置されたクリップチェーンの走行レールに従い、横方向に延伸される。延伸過程でフィルムの両端はクリップによって把持され、固定される。しかし、クリップから離れた領域、特にフィルムの中央領域では両端部分に比べて自由度が高い。このように力学的自由度に局所的な差がある中で、フィルム全体としては力の作用が均衡した状態で、延伸が施される。また、フィルムは幅方向以外にも、長手方向の力のバランスも均衡した状態にあり、熱固定部分からの影響も受けている。これらの力作用の関係は、幅方向において端部が固定された懸垂線様の状態で均衡している。この力の作用をフィルム中央部で観察すると、延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。この様な力の作用によって、いわゆるボウイング現象が観察される。
この力の作用の結果、フィルム端部の物性はフィルム製膜の長手方向と45度の方向の特性と、それと直角の方向の特性とで差が生じることとなる。この特性の中でも、熱収縮応力の異方性が熱加工におけるシワの発生に影響すると考えられる。熱収縮応力差を小さくする為に、横方向の延伸温度を単純に高温に設定すると、延伸が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当し、フィルムに厚み斑が生じる恐れがあった。さらに、横方向の延伸温度を高くすると、予熱領域との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度状態に乱れが生じることによる厚み斑も生じる恐れがあった。フィルムにこのよう厚み斑が生じると、近年ますます精密化する後加工工程では使用に耐えない。ところが、驚くべきことに、以下の様に横延伸倍率と温度の関係を適性化す
る事により、厚み斑が良好で熱特性の良好なものが得ることが可能になることを見出した。
(1)横延伸工程の温度区分域の温度の制御
横延伸工程において、テンター内は通常、複数の温度区分域が設けられているが、本発明のフィルムを得るためには、連続する各温度区分域の設定温度差を延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)までは5℃以上30℃以下とし、後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)は5℃以上30℃以下とする必要がある。一方、1.8倍を含む温度区分領域と次の温度区分領域での温度差は5℃以上40℃以下とするのが好ましい。
上記温度範囲で制御することが好ましい理由としては以下のように考えている。すなわち、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれるため、温度斑による影響が生じやすい。そのため、上記のように延伸前半での隣接する温度区分域の温度差は低く抑えることが望ましい。また、横延伸工程の延伸後半では、延伸温度を比較的高温に設定するため、フィルムの延伸応力が低下する。よって、延伸後半での隣接する温度区分域の温度差は前半よりも大きくすることができる。さらに、横延伸工程の中間ではS−S曲線のプラトーな領域に相当するため、他の温度区分域に比べ温度変化に対して影響が受けがたく、他の温度区分域よりも大きな温度差が許容される。このように、本発明ではS−S曲線に応じて上記のごとく温度区分域間の温度差を制御する。
また、これらの温度設定はフィルムの進行方向に向かって段階的に設定温度を上げることが好ましい。テンター内では、フィルムの進行に伴って随伴流が発生するので、フィルム進行方向にそって上流から下流への空気の流れが生じる。そのため、連続する2つの温度区分域で設定温度に差がある場合、温度区分域の境界で温度の乱れが生じる。設定温度の差が大きい場合は、テンター内の温度の分布の乱れが大きくなり、フィルムの延伸状態に乱れが生じ、厚み斑の要因となる。そこで、連続する各温度区分域の設定温度を一定範囲に設定し、幅方向、長手方向のフィルム温度が安定化することとした。これにより、テンター内の横延伸部分の温度の乱れに起因するフィルムの厚み斑が低減することができる。本発明のフィルムを得るための前記設定温度差の下限は5℃以上、好ましくは10℃以上とすることが望ましい。設定温度差が5℃未満の場合は、最終温度区域の設定温度を後述の設定温度にすることが難しくなる。また、前記設定温度差の上限は1.8倍を含む温度区分領域までは30℃以下が必要である。一方、延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率までは30℃以下が必要である。一方、1.8倍を含む温度区分領域とその次の温度区分領域間は40℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。設定温度差が40℃超の場合は、フィルムの厚みの乱れとなり、上記効果が得られない。
予熱部分(イ)から延伸部分(ロ)の最初の温度区分との連続する2つの温度区分域においても、設定温度差を5℃以上40℃以下にすることが好ましい。予熱部分では、延伸が可能な温度程度になるようにフィルムを温める必要がある。そのため延伸部分の温度を高温に設定する場合は、フィルムの温度は縦延伸の延伸温度〜縦延伸の延伸温度+15℃程度が好ましい。なお、予熱部分の設定温度は予熱部分の長手方向の長さとフィルムを走行させる速度とフィルムの厚みに応じて制御することが望ましい。
(2)横延伸工程の延伸前半での温度の制御
横延伸工程の初期の部分ではフィルムの温度は予熱部分で昇温された後、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれる。本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の前半部分の温度域を100℃以上160℃未満とし、比較的低温で横延伸を行うことが好ましい。設定温度を100℃未満とすると、フィルムが破断し易くなり、好ましくない。また、設定温度を160℃以上とすると、延伸条件が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当するだけでなく、予熱部分との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度バランスが不安定となり、厚み斑が生じ易くなり好ましくない。なお、後述のごとく、延伸前半から後半に掛けて温度は高める方向で設定することが望ましい。しかしながら、延伸前半で複数の温度区分域による段階的な温度設定を設けることが困難な場合には、延伸前半と後述する延伸後半の領域間で、目的の効果を得る為に温度差を調整しても良い。
ここで延伸前半の意味する所は、横延伸工程の前半領域でなされる延伸であり、S−Sカーブの延伸応力増大域で行われる延伸である。具体的には、横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域をいう。延伸前半の延伸倍率はその全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍となり、全区分領域数が4の時は2.5倍となる。本発明では、1.8倍を含む区分領域における設定温度を100℃
以上160℃未満として比較的低温での延伸を行う。
(3)横延伸工程の最終到達部での温度の制御
本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の最終到達部をの温度域を160℃以上220℃未満とし、比較的高温に設定することが好ましい。高温に設定することで前述の熱収縮応力値の差異が小さくなり、高温加工におけるシワの発生を抑えることができる。
ここで延伸後半の意味する所は、横延伸工程の後半領域でなされる延伸であり、具体的には横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域の次の区分領域から最終到達倍率までである。延伸後半の延伸倍率は、その全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍から、全区分領域数が4の時は2.5倍からとなる。そして、前半の倍率を含めた最終倍率は、3倍以上5倍未満、好ましくは4.8倍
未満、より好ましくは4.4倍と設定することができる。例えば、最終の横延伸倍率が4倍で、横延伸ゾーンを3段とする場合のプロセス条件は以下のようになる。1段目の倍率は1.0〜2.0倍、2段目の倍率は2.0〜3.0倍、3段目の倍率は3.0倍〜4.0倍となり、1段目のゾーンが延伸の前半部となる。温度の設定は予熱ゾーンの最終温度を105℃とし、最終倍率到達区間の温度を165℃とすると、1ゾーン目は110〜1
45℃、2ゾーン目は145〜160℃とするのが好ましい。但し、製膜速度など設定によっては2ゾーンの温度設定であっても可能である。
本発明のフィルムは、上記の様な高度に制御された横延伸を実施することにより得ることができる。上記横延伸工程により、フィルム製膜の長手方向と45度の方向とそれに90度をなす方向との熱収縮応力値の差が小さくなったのは、以下のようなメカニズムによると考えている。横延伸工程では前述のように横方向および長手方向のフィルム全体にお
いて力作用が均衡した状態にあり、長手方向では延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。ここで、横延伸の最終到達部の延伸温度を高温に設定すると、横延伸工程の最終の延伸張力が下がる。これにより、フィルムの長手方向にそって熱固定部分から伝播する力の作用の影響が緩和され、長手方向で作用する力の歪が緩和されたと考えられる。
一方、横方向の力作用については以下のように考えられる。フィルム中央部では進行方向での力しか作用しないため、フィルムに掛かる力作用は長手方向に対して左右対称になる。これに対して、フィルム端部ではクリップに保持された状態で斜め方向に進行し、進行方向だけでなく、斜め方向の力が加わる。そのため、フィルム端部の力作用は進行方向に対して左右対称にならない。熱収縮応力値の差を小さくするためには、この力作用を左右対称に近づける必要がある。これには、横延伸工程を高温行い、フィルムにかかる延伸張力を小さくすることが有効である。ただし、単に延伸工程を高温で行うと、厚み斑が生じる恐れがある。そこで、横延伸工程の前半では、延伸温度を比較的低くすることで、厚み斑の生じにくい「S−Sカーブの延伸応力の増加する領域」で延伸を行い、厚みが均一化されてきた状態で、今度は延伸温度を高くし、横方向の延伸応力を低くして全体の力の作用のバランスにより、延伸を行うこととした。これにより、厚みの斑を増加させずに、フィルム製膜の長手方向の45度及びそれと90度をなす方向の熱特性の差異を小さくすることが可能となったと考えられる。
なお、フィルムの横延伸工程において、上記した(1)〜(3)の手段を用いることにより、フィルムに熱シワ欠点となり得る微小な斑を発生させることなく、フィルムの厚み斑(特に、幅方向の厚み斑)を極度に悪化させることなく、フィルム製膜の長手方向の45度及びそれと90度をなす方向の熱特性の差異の低減の両立を図ることが可能となったと考えられる。なお、上記した(1)〜(3)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムの厚み斑を悪化させることなく、熱斑の低減および熱特性差異の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(3)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムの厚み斑を悪化させないで、熱斑の低減、および熱特性の差異の低減が可能になるものと考えられる。
[熱固定工程]
本発明のフィルムの製造方法では、延伸工程に引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃未満では、熱収縮率の絶対値が大きくなってしまうので好ましくない。反対に、熱固定処理の温度が240℃を超えると、フィルムが不透明になり易く、また破断の頻度が多くなり好ましくない。
熱固定処理で把持具のガイドレールを先狭めにして、弛緩処理することは熱収縮率、特に幅方向の熱収縮率の制御に有効である。弛緩処理する温度は熱固定処理温度からポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのガラス移転温度Tgまでの範囲で選べるが、好ましくは(熱固定処理温度)−10℃〜Tg+10℃である。この幅弛緩率は1〜6%が好ましい。1%未満では効果が少なく、6%を超えるとフィルムの平面性が悪化して好ましくない。
ただ、上記の熱固定方法であっては、クリップ近傍のフィルムはクリップにより動きを制限されているために、長手方向の緩和が十分に実施されず、フィルム端縁部については熱収縮率が十分改善されない場合がある。長手方向の熱収縮率を小さくしようとしても、単に熱固定での温度を上げるだけでは、フィルムが着色したり、結晶化が進みフィルムが白化して透明性が悪化するという問題があり、熱収縮率を低下させることが困難であった。
[縦緩和処理]
そこで、本発明では、上記熱固定処理方法に加え、さらに以下の方法により長手方向の緩和を行うことでフィルムの熱収縮率を小さくすることができた。すなわち、本発明における長手方向の緩和処理は、図4、5、6に記載のように、クリップ間に屈曲可能な構造を持たせ、縦方向のクリップ間隔を調整することでフィルム端部を保持するクリップ(1)と隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンク(4)で連結するジョイント部(5)を有し,当該ジョイント部(5)に連結したベアリング(8)がガイドレールを走行することで、チェンリンク(5)の屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで長手方向の緩和を実施することが可能となる(図4、5、6参照)。本発明の長手方向の緩和処理は、フィルムの製造工程で連続的に行うことができ(インライン工程)、後工程で追加の工程を加えることなく加工が可能となる。本発明における緩和率は1%以上4%以下が好ましく、1.5%以上2.0%以下が更に好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは単層でも、2層以上の積層構造を有するフィルムでも良いし、透明性を重視して微粒子を入れない二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面、又は両面に後加工工程時の接着性を改良する目的や滑り性を改良する目的で種々のコーティングを製膜時に付与したものでもなんら差し支えがない。
また、本発明のフィルムを構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム中には、必要に応じて微粒子を添加することができる。その際に添加する微粒子としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。さらに、フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明における二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂には、微粒子を添加して二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては任意のものを選択できるが、たとえば、無機系微粒子として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子として、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜2.0μmの範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する任意の段階において添加する方法を挙げることができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進める方法を採用しても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
さらに、本発明のフィルムを構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
上記した方法により製造される本発明のフィルムは、寸法安定性、透明性、厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)、加工時の平面性が良好である上、80〜180℃での高温加工時のシワの発生が極めて少ない。それ故、本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、セラミックコンデンサ用のグリーンシートや、転写用フィルム、光学用途のプロテクトフィルムなどのフィルムに好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルム特性の評価方法は以下の通りである。
(1)フィルムの熱収縮応力値
まず、測定用試料として、フィルムの幅方向の端部から50mm内側に入った所から中央部に向かって100mm毎に試料の切り出し部位を設ける。この際、中央部から見て両端までの切り出し部が同数になる様に設定する。中央部の切り出し部の間は200mmを超えない様にする。各切り出し部で、フィルム製膜の長手方向に対し45度とそれに90度のなす直角2方向にそってサンプル幅4mm、サンプル長15mmのフィルム試料を準備した。次いで、TMA(セイコー電子工業製、TMA/SS100)に、サンプル幅4mm、サンプル長15mmのフィルム試料片を初期荷重19.6mNの条件下でセットした。初期荷重をゼロ補正し、30℃から230℃までの範囲を5℃/分で昇温していき、チャック間距離を一定に保った状態でフィルム収縮に伴って発生する応力を計測し、160℃における熱収縮応力における熱収縮応力値(MPa)を測定した。フィルム製膜の長手方向と45度方向での熱収縮応力をσa、それに90度をなす方向での熱収縮応力をσbとし、その2方向の熱収縮応力の差の絶対値をΔσとした。表には測定したΔσの最高値を示した。
(2)フィルムの熱収縮率
フィルムを幅方向において、端から50mmの部分、およびその間を4等分し、5つの切り出し部を設ける。前記幅方向の切り出し部をロールの巻き始めと中間と巻き終りに設け、各切り出し部からフィルムを長さ30m×幅30mmの長尺な帯状のフィルム試料をサンプリングする。ここで、ロールの「巻き始め」、「巻き終り」は、全フィルムロールの長さを巻き始めと巻き終りの端部から50mm以上2m以内の領域であり、「中間」は、全フィルムロールの長さの中央を含む領域である。各切り出し部からフィルムの製膜の長手方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出す(合計15個)。切り出した幅20mm、長手方向の長さ250mmの前記試料に200mm間隔で標線を印し、150℃に調節した加熱オーブンに入れ、JIS/C−2318に準拠して、熱収縮率を測定する。得られた熱収縮率の平均値を算出し、熱収縮率の平均値とした。
(3)長手方向厚み変動率(厚み斑)
フィルム幅方向の両端部分(端縁から50mm以内の部分)で、フィルムの長手方向の始め部と中間部と終り部にフィルム切り出し部を設ける(切り出し方法B)。ここで、「始め部」、「終り部」とは、長手方向におけるフィルムの長さを端部から2m以内を含む領域であって、表2に示す位置に切り出し部を設けた。また、「中間部」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域であって、表2に示す位置に切り出し部を設けた。サンプリングしたフィルム試料について、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、5m/分の速度でフィルム試料の長手方向に沿って連続的に厚みを測定する(測定長さは30m)。そして、測定時の各々のフィルム試料の最大厚みをTmax.、最小厚みをTmin.、平均厚みをTave.とし、下記式からフィルムの長手方向の厚み変動率を算出する。
厚み変動率={(Tmax.−Tmin.)/Tave.}×100 (%)
表4にそれらの最大値及び最小値及び平均値を示す。
(4)加工フィルムの平面性
ロール状フィルムを用い、コータで下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔が38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力4000kPa、温度170℃で13秒間通過させ、後加工処理のモデルフィルムを得た。後加工処理後に50℃の冷却ロールを用いてフィルムを20℃/秒の速度で冷却した後、ロール状に巻き取った。モデルフィルムの平面性は、以下に示す方法により、走行方向に連続した波板状のシワの数を観察することで評価した。すなわち、温度25℃、湿度65%の室内に、100cm幅の加工モデルフィルムをフィルムフィルム製膜の長手方向が鉛直になるようにつるし、10N/mの荷重をかけ、30分間静置した。後加工処理後の工程中において、光源(蛍光灯、松下電工社製)をフィルム製膜の長手方向に連続した波板状のシワの数を計数する面から1m離して45度上方からフィルム表面に投影させ、シワを計数する面から0.5m離れて45度下方からシワの数を目視によって計数して評価した。シワは、観察する面に対して凸状となるシワを1本のシワとし、フィルム幅方向のシワの数を計数した。
(判定)
○;シワの評価でシワの本数が10本/m以下でタルミの無いもの
×;シワの評価でシワの本数が11本/m以上かタルミの有るもの
(5)縦延伸時の延伸点前後におけるフィルムの温度差
長手方向でレーザの照射光が当たっていない所のフィルムの温度を非接触式の赤外温度計で測定し、レーザを通過した時点でフィルムの温度を測定し、その差を延伸点前後のフィルム温度差とする。
なお、ヒータによる延伸を行う場合は、ヒータによる延伸点前後のフィルム温度差を計測した。
また、実施例および比較例におけるフィルムの縦延伸条件を表1に、横延伸条件を表2に、厚み斑の評価に使用したフィルムサンプルの切り出し部位の位置を表3に、得られたフィルムの評価結果を表4に示す。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート[A]を以下のように作製した。ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを700部、および酢酸マンガン4水塩を0.16部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.13部、正リン酸を0.017部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップを得た。得られたポリエチレンテレフタレート[A]の極限粘度[η]は0.63dl/gであった。
添加剤としてシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア310)を0.03質量%含有したポリエチレンテレフタレート[A]([η]=0.63)を水分率が50ppm以下となる様に乾燥した後、押出機直上のホッパ内に仕込み押出機内で285℃の温度で樹脂を溶融し、溶融した樹脂をステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)により濾過した。次いで、T型ダイスから樹脂シートを押し出し、静電印加キャスト法を用い、表面温度が30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化さることによって、厚さ420μmの未延伸フィルムを得た。
そして、得られた未延伸フィルムを、加熱されたロール群で昇温した後、前後に配置した第一ニップロールと第二ニップロールとの間で、それらのニップロールの間に設けたCO2レーザ(第一レーザ)によって102℃に加熱しながら、長手方向(縦方向)に2.77倍延伸した(一段目の縦延伸)。
なお、CO2レーザのスポット径は直径3mmに調整し、幅方向への走査幅は、シート全幅となるように調整した。また、走査速度は未延伸フィルムが長手方向に0.2mm進む間に一往復する様に走査速度を調整した。前側の第一ニップロールはフィルム温度維持及び、後側の第二ニップロールは冷却側に調整した。なお、第一番目のCO2レーザは、第一ニップロールと第二ニップロールとの間の中央位置で幅方向に走査する様に配置した。一段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルムの温度差は33℃であった。
しかる後、その縦延伸後のフィルムを、第二ニップロールとその第二ニップロールの直後に配置した第三ニップロールとの間で、それらのニップロールの間に設けたCO2レーザ(第二レーザ)によって100℃に加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.17倍延伸した(二段目の縦延伸)。なお、第二レーザのスポット径は第一と同様に直径3mmとし、幅方向への走査幅は、シート全幅となるように調整した。また、第三ニップロールは冷却側に調整した。なお、第二レーザの走査位置は、第二ニップロールと第三ニップロールとの間の中央位置に配置した。また、上記した二段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルムの温度差は11℃であった。
更に、その縦延伸後のフィルムを、第三ニップロールとその第三ニップロールの直後に配置した第四ニップロールとの間で、それらのニップロールの間に設けたCO2レーザ(第三レーザ)によって100℃に加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.08倍延伸した(三段目の縦延伸)。なお、第三レーザのスポット径は第一と同様に直径3mmとし、幅方向への走査幅は、シート全幅となるように調整した。また、第四ニップロールは冷却側に調整した。なお、第三レーザの走査位置は、第三ニップロールと第四ニップロールとの間の中央位置に配置した。また、上記した三段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルムの温度差は、10℃であった。
その縦延伸フィルムをテンターに導き、1ゾーン目を125℃の雰囲気下で幅方向へ2.0倍延伸し、2ゾーン目を140℃の雰囲気下で3.0倍まで延伸し、3ゾーン目を170℃で4.0倍まで延伸し、その後、後述する方法で熱固定処理を施し、225℃で2.0%の横緩和処理を行った。また、ベアリングをガイドレールに沿わせることで、チェンリンクの屈曲角度を変位させ、長手方向のクリップ間隔を狭めることにより1.5%の縦緩和処理を行った。この縦緩和処理を行う間にフィルム温度は220℃から150℃に下がった。このフィルムの両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、厚さ約31μmの二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結価結果を表4に示す。
[実施例2]
キャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、未延伸フィルムの厚みを約330μmとし、表1に示した様にして縦延伸を実施した。そして、横延伸の予熱・延伸温度、熱処理条件を表2の様に変更して、厚みが約25μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[実施例3]
キャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、未延伸フィルムの厚みを160μmとするとともに縦延伸倍率の倍率を表1の様に変更した以外は実施例2と同様に縦延伸を実施した。そして、横延伸の予熱・延伸温度、熱処理条件を表2の様に変更し、12μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[実施例4]
キャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、未延伸フィルムの厚みを660μmとし、表1の様にして縦延伸を実施した。そして、横延伸の予熱・延伸温度、熱処理条件を表2の様に変更した。そして、厚みが50μmの二軸延伸フィルフィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[実施例5]
実施例1で得た未延伸フィルムを表1の様に縦延伸条件を変更し、表2の様に横延伸、熱処理条件を変更して、厚みが31μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[実施例6:国際公開第03/093008号パンフレットの比較例2に準じた製膜]
ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)ジメチルテレフタレート49モル%、ジメチルイソフタレート49モル%、および5−スルホナトイソフタル酸2モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%を用いて、常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って、水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。
次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n−ブチルセルソルブ5質量部、およびノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。
さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部にホモジナイザーにより1000rpmで1時間分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、塗布液Aを得た。
ポリエチレンテレフタレート[B]を以下のように作製した。ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを650部、および酢酸マンガン4水塩を0.4部、をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.1部、正リン酸を0.6部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップを得た。得られたポリエチレンテレフタレート[B]の極限粘度[η]は0.63dl/gであった。
この様にして得られたポリエチレンテレフタレート[B]を水分率が50ppm以下となる様に乾燥した後、仕込み、286℃で溶融した。実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを実施例1と同様に縦延伸を行い、このフィルムの片面に上記塗布液Aをウェットコート量が6.5g/m2となる様に塗工し、温度120℃で乾燥させた後、テンターに導き、延伸、熱固定することによって、厚さ31μmの二軸延伸フィルムを約1700mの長さに亘って巻き取ったフィルムロールを得た。フィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評した。評価結果を表4に示す。国際公開第03/093008号パンフレットでは比較例に相当するが本発明の方法によれば厚み斑が改善された。
[実施例7]
上記実施例1と同様に得た未延伸シートを、加熱されたロール群でフィルムを昇温した後、前後に配置した第一ニップロールと第二ニップロールとの間で、高温加熱ジェット気流を噴射して長手方向(縦方向)に2.8倍延伸した(一段目の縦延伸)。
なお、高温加熱ジェット気流の照射幅は、18mmとなるように調整した。また、前側の第一ニップロールはフィルム温度維持及び、後側の第二ニップロールは冷却側に調整した。なお、第一高温加熱ジット気流は、第一ニップロールと第二ニップロールとの間の中央位置に配置した。また、上記した一段目のシートの温度差は13℃であった。
しかる後、その縦延伸後のフィルムを、第二ニップロールとその第二ニップロールの直後に配置した第三ニップロールとの間で、それらのニップロールの間に設けた第一高温加熱ジェット気流と同様な第二高温加熱ジェット気流によって、長手方向(縦方向)に1.25倍延伸した(二段目の縦延伸)。なお、加熱気流の照射幅は、18mmとなるように調整した。また、第三ニップロールは30℃に調整した。なお、第二高温加熱ジェット気流は、第二ニップロールと第三ニップロールとの間の中央位置に配置した。また、上記した二段目の縦延伸におけるシートの温度差は8℃であった。
上記の如く、未延伸フィルムを縦方向に二段で延伸した後に、その縦延伸フィルムをテンターに導き、実施例1と同様に延伸、熱固定、縦緩和処理をすることによって、厚さ約31μmで1000mm幅の二軸延伸フィルムを3,000mの長さに亘って巻き取ったフィルムロール(ミルロール)を得た。フィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例1]
実施例1で得られた縦延伸フィルムを表2に示す横延伸条件に変更した以外は実施例1と同様に31μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例2]
実施例2で得られた縦延伸フィルムを表2に示す横延伸条件に変更した以外は実施例1と同様に25μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例3]
実施例2で得られた縦延伸フィルムを表2に示す横延伸条件に変更した以外は実施例1と同様に25μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例4]
実施例2で得られた縦延伸フィルムを表2に示す横延伸条件に変更した以外は実施例1と同様に25μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例5]
実施例2で得られた縦延伸フィルムを表2に示す横延伸条件に変更した以外は実施例1と同様に25μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例6]
実施例3と同様に得た縦延伸フィルムを熱処理条件を表2の様に変更し、縦の緩和処理をしなかった以外は実施例3と同様に厚みが12μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例7]
キャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、未延伸フィルムの厚みを680μmとし実施例4と同様に得た縦延伸フィルムを表2の様に変更し、縦の緩和処理をしなかった以外は実施例4と同様にして50μmの二軸延伸フィルムを得た。評価結果を表4に示す。
[比較例8:国際公開第03/093008号パンフレットの実施例2に準じた製膜]
ポリエチレンテレフタレート[C]を以下のように作製した。ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを650部、および酢酸マグネシウム4水塩を0.4部をエステル交換反応缶に仕込み、120〜210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.2部、正リン酸を0.2部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出、カッターによって、直径約3mm、長さ約5mmの円柱状チップを得た。得られたポリエチレンテレフタレート[C]の極限粘度[η]は0.63dl/gであった。
添加剤としてシリカ粒子(富士シリシア化学(株)社製、サイリシア310)を0.03質量%含有したポリエチレンテレフタレート[C]([η]=0.63)を水分率が50ppm以下となる様に乾燥した後、仕込み、285℃の温度で溶融した。押出機で溶融中にステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)で濾過した。次いで、T型ダイスから樹脂シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度が30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化させ、厚みが415μmの未延伸フィルムを得た。そして、得られた未延伸フィルムを、加熱したロール群で85℃に加熱した後、遠赤外線ヒータにより100℃に加熱して3.50倍延伸した。その後、実施例1と同様にテンターを通し、31μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。再公表WO2003/093008号パンフレットでは長さ方向に2mを測定しているが、本発明の評価では厚み斑が悪くなってしまう。
[比較例9:特開昭54−56674号における実施例1に準じた製膜]
未延伸フィルムの引取速度を調整して未延伸フィルムの厚みを400μmに変更した以外は、実施例2と同様に未延伸フィルムを得た。しかる後、その未延伸フィルムを、加熱したロール群で85℃に加熱した後、遠赤外線ヒータにより100℃に加熱して1.30倍延伸し、冷却ロールで冷却した後、さらに、85℃に加熱して3.3倍延伸した。なお、上記縦延伸においては遠赤外線ヒータを用いたため、実施例2と比べて加熱の幅が非常に広かった(約200mm幅)。また、一段目および二段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルムの温度差は、それぞれ14℃、1℃であった。そして、上記した縦延伸のフィルムを実施例2と同様に横延伸、熱固定することによって、厚さ25μmで1,000mm幅の二軸延伸フィルムを約2,000mの長さに亘って巻き取ったフィルムロールを作製した。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例10]
実施例4と同様にして得られた未延伸フィルムを、加熱したロール群で80℃に加熱した後、遠赤外線ヒータにより90℃に加熱して2.80倍延伸し、冷却ロールで冷却した後、さらに、遠赤外線ヒータにより90℃に加熱して1.25倍延伸した。なお、上記縦延伸においては遠赤外線ヒータを用いたため、実施例4と比べて加熱の幅が非常に広かった(約200mm幅)。また、上記した一段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルム温度差は13℃であり、上記した二段目の縦延伸の延伸点前後におけるフィルム温度差は1℃であった。実施例4と同様にして得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。
各実施例、比較例の製造条件を表1、表2に、評価に使用したフィルムサンプルの切り出し部位の位置を表3に、評価結果を表4に示す。
[実施例のフィルムの効果]
表4から、実施例のフィルムは、いずれも、寸法安定性が良好で、長手方向の厚み変動率(厚み斑)がきわめて小さく、加工フィルムの平面性が良好である。これに対して、比較例のフィルムは、長手方向の厚み変動率(厚み斑)が大きく、平面性が不良であったり、シワや経時後のタルミが生じてしまう。なお、表4において、実施例1−6は縦延伸における加熱手段としてレーザを用い、実施例7においては高温ジェット加熱装置を用いた。比較例1は加熱装置を用いていない。又、比較例2〜4は縦延伸における加熱手段として、遠赤外線ヒータを用いた。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記の如く優れた加工特性を有しているため、各種の加工フィルム基材、特に良好な平面性が要求されるセラミックコンデンサ用のグリーンシートや、転写用フィルム、光学用途のプロテクトフィルムなどのフィルム基材に好適に用いることができる。
A・・降伏点、
B・・立ち上がり点、
F:フィルム
X:フィルムの巻き取り方向
N1,N2:中間ゾーン
1:クリップ
2,3:クリップに連結したベアリング
4:チェンリンク
5:ジョイント部
6:クリップが取り付けられる台
7:クリップに連結したベアリング
8:ジョイント部に連結したベアリング
9:クリップ走行レール
10:ガイドレール


Claims (5)

  1. 押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸フィルムを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸フィルムを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程を経ることにより製造される二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムであって、縦延伸工程において加熱の幅を狭小化することにより得られる、
    下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とする二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
    (1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向との2方向の熱収縮応力値の差が160℃において0.5MPa以下であること
    (2)下記切り出し方法Aにより設けたフィルム切り出し部から二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの長手方向に沿って長さ250mm×幅20mmのフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の150℃で30分間加熱したときのフィルムの長手方向の熱収縮率の平均値である平均HS150が、0.40%以上0.70%未満であること
    (切り出し方法A)
    二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからフィルムを幅方向において、端から50mmの部分、およびその間を4等分し、5つの切り出し部を設ける。前記幅方向の切り出し部をロールの巻き始めと中間と巻き終りに設ける(合計15個)。ここで、ロールの「巻き始め」、「巻き終り」は、全フィルムロールの長さを巻き始めと巻き終りの端部から50mm以上2m以内の領域であり、「中間」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域である。
    (3)下記切り出し方法Bにより設けたフィルム切り出し部から二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの長手方向に沿って長さ30m×幅3cmのフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の長手方向の厚み斑を測定したときに、長手方向の厚み変動率が0.5%以上4.0%以下であること
    (切り出し方法B)
    フィルム幅方向の両端部分(端縁から50mm以内の部分)で、フィルムの長手方向の始め部と中間部と終り部にフィルム切り出し部を設ける。ここで、「始め部」、「終り部」とは、長手方向におけるフィルムの長さを端部から2m以内を含む領域をいう。また、「中間部」は、フィルム長手方向の50%位置を含む領域をいう
  2. フィルムの厚みが10μm以上60μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムからなる二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロール。
  4. 請求項1および2に記載された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸フィルムを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸フィルムを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定定する熱固定工程と、長手方向の緩和処理をする工程とを含んでおり、その縦延伸工程が、下記要件(4)を満たし、その横延伸工程が、下記要件(5)〜(9)を満たすことを特徴とする二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法である。
    (4)周速差を設けたロール間において加熱の幅を狭小化しながら加熱装置を用いて、105±20℃に加熱して、長手方向に2.0倍以上3.2倍以下の倍率となるように延伸した後に、その縦延伸後のフィルムを、冷却したニップロール間を通過させ、周速差を設けたロール間において加熱の幅を狭小化しながら加熱装置を用いて100±20℃に加熱して、長手方向に1.05倍以上1.5倍以下の倍率となるように延伸するものであること
    (5)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上30℃以下であること
    (6)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
    (7)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
    (8)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
    (9)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
  5. 請求項4に記載の長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮させることで当該長手方向の緩和処理を行うことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
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