JP2010147439A - 多層膜、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置 - Google Patents

多層膜、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置 Download PDF

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Abstract

【課題】再生素子のセンシング能力を向上し、高記録密度で記録された情報の再生精度を向上する。
【解決手段】再生素子が有する多層膜が、非磁性層400と、この非磁性層400を間に挟む第1強磁性層401及び第2強磁性層402と、を有し、これらのうち、第1、第2強磁性層の少なくとも一方は、原子組成比がCo:Fe:B=2:1:1であり、かつL2規則化された結晶構造とされている。これにより、高い分極率を実現できるので、非磁性層の膜厚を一定以上に薄くするなどして素子抵抗を小さくしたとしても、高い磁気抵抗変化率が得られ、高いセンシング能力を得ることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)などの磁気記憶装置のヘッドに用いられる多層膜、ハードディスクドライブなどに搭載される磁気ヘッド、及び当該磁気ヘッドを具備する磁気記憶装置に関する。
近年、HDD(Hard Disk Drive)の磁気ヘッドに用いられる磁気再生素子には、高記憶密度の記憶媒体が有する微細な記録パターン(記録ビット)を再生可能なセンシング能力が求められている。高いセンシング能力を持つ磁気再生素子としては、GMR(Giant Magneto Resistive)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などの巨大磁気抵抗効果素子が挙げられる。これらTMR素子やGMR素子は、非磁性層及び強磁性層が積層された多層膜構造となっており、このような多層膜構造によって、微細な記録パターン(記録ビット)が発生する微小な磁場変化を電気信号に変換する。
TMR素子の場合、非磁性層として絶縁体が用いられるため、抵抗がGMR素子より大きい。最近では、TMR素子の絶縁体としてMgOを用い、強磁性層としてアモルファス構造のCoFeBを用いることにより、高い磁気抵抗変化率(MR比ともいう)を得る技術も出現してきている(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。また、特許文献1には、アモルファス構造のCoFeBを用いることで、CoFeを用いた場合と比べて強磁性層の均質性を高くすることができる点、及びこれにより製造性の向上が図られる点についても開示されている。
一方、高い磁気抵抗変化率が得られる強磁性層の材料の一つとして、分極率が大きいホイスラー合金(heusler alloy)も知られている。このホイスラー合金の組成としては、例えば、CoFeAlが提案されている(特許文献2参照)。このホイスラー合金の結晶構造は、例えばB2規則構造や、L2規則構造である。また、上記CoFeAlの「Al」に代えて、Si、Ge、As、Sb、Bi等を添加することができることも知られている(特許文献3参照)。
K. Tsunekawa, et al:App. Phys. Lett. 87, 072503(2005) 特開2007−142424号公報 特開2004−221526号公報 特開2007−250977号公報
しかしながら、非特許文献1のように、TMR素子の絶縁体としてMgOを用い、強磁性層としてアモルファス構造のCoFeBを用いた場合、室温で100%以上の高い磁気抵抗変化率を得るためには、絶縁体の膜厚を制限する必要がある。具体的には、高記憶密度の記憶媒体再生用のTMR素子を用いた実験結果から、絶縁層の膜厚は0.7nm以上とする必要があり、これよりも膜厚を薄くすると、高い磁気抵抗変化率を得ることが難しくなる。ここで、絶縁層の膜厚が0.7nmのときの抵抗面積積RA(素子の抵抗値と素子の面積との積)値は数Ω・μm以上である。したがって、この場合、RA値が小さいほど大きい値となる特性を有する磁気抵抗変化率を、ある一定以上大きくすることができないおそれがある。
一方、記憶媒体上の記録パターン(記録ビット)が微細化するにつれ、記録パターンに記録された情報の読み取りを可能とする再生素子(TMR素子)のサイズは小さくなり、素子の抵抗は必然的に増加する。このように素子の抵抗が増加すると、素子における抵抗変化を電気信号として取り出す回路とのインピーダンスマッチングがとれないため、高周波帯域の信号特性が悪化してしまう。したがって、再生素子においては、抵抗値を小さくすることも重要な課題である。
なお、GMR素子においては、非磁性層が導電体であり素子抵抗が小さいものの、TMR素子よりも磁気抵抗変化率が小さい。
以上より、高記憶密度の記憶媒体に対するセンシング能力を確保するためには、素子抵抗が小さく、かつ磁気抵抗変化率が大きいことが必要である。
本発明は、かかる事情の下になされたものであり、素子抵抗を小さくしても高い磁気抵抗変化率を得ることができる多層膜を提供することを目的とする。また、本発明は、情報記録媒体に高記録密度で記録された情報の高精度な読み取りが可能な磁気ヘッドを提供することを目的とする。更に、本発明は、高精度な情報再生能力を長期にわたって維持することができる磁気記憶装置を提供することを目的とする。
本明細書記載の多層膜は、非磁性層と、前記非磁性層の表裏両側にそれぞれ設けられた強磁性層と、を有し、前記強磁性層の少なくとも一方は、原子組成比がCo:Fe:B=2:1:1であり、かつL2規則化された結晶構造を有する。
本願発明者は、上記課題を解決すべく、素子抵抗を小さくしても磁気抵抗変化率を向上し得る新規な材料の探求、及び新規材料の特性等についての分析等を行った。その結果、多層膜に含まれる強磁性層を上述の組成比とし、かつその結晶構造をL2規則化構造とした場合には、電流に寄与するフェルミレベル近傍において、ダウンスピン側のs電子状態密度がほぼゼロとなり、電気伝導を担うアップスピン側のs電子の分極率(スピン)がほぼ100%となるという、新たな知見を得ることができた。また、この結晶構造を有する強磁性層では、d電子の状態密度に基づくd電子の分極の向きがs電子の分極の向きと同様であり、s電子の高い分極率がd電子の分極状態によって減殺されることがないので、上記結晶構造の強磁性層は、s電子及びd電子を含めた電子全体としても高い分極率を得ることができることが判明した。
このように、強磁性層を、CoFeBのL2規則化された結晶構造とし、その組成比をCo:Fe:B=2:1:1とすることで、その強磁性層の構成特有の作用を通じて、高い分極率を実現することができる。これにより、非磁性層の素子抵抗を小さくしても、高い磁気抵抗変化率を得ることができる。
これに加えて、強磁性層CoFeBは、B(ホウ素)を用いていることから、CoFeAlなどと比べて酸化しにくいため、酸化による特性劣化を抑制することができる。さらに、強磁性層CoFeBは、ホイスラー合金で知られている他の材料(例えば、CoFeSiやCoFeAl)よりも、格子サイズを小さくすることができるため、非磁性層と強磁性層とを接合する場合の接合面における接合性を向上させることができる。また、上述の組成比から、強磁性層は、Co及びFeを75%含み、キュリー温度を室温以上とすることができるので、実用上も問題はない。
本明細書記載の磁気ヘッドは、本明細書に記載の多層膜を備え、前記多層膜が発揮する磁気抵抗効果を利用して磁気記憶媒体に記録された情報を再生する磁気ヘッドである。
これによれば、素子抵抗が小さくかつ高い抵抗変化率を有する多層膜を備えており、高いセンシング能力を確保できることから、磁気記憶媒体に高記録密度で情報が記録された場合でも、当該情報を精度良く再生することが可能となる。また、酸化しにくく、キュリー温度が室温以上である多層膜を用いているので、長期にわたって、再生性能を確保することが可能となる。
本明細書記載の磁気記憶装置は、本明細書に記載の磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドにより読み取り可能な情報を記憶する磁気記憶媒体と、を備える磁気記憶装置である。
これによれば、磁気記憶媒体に高記録密度で情報が記録された場合でも、情報を精度良く再生することができ、かつその再生性能が長期にわたって確保される磁気ヘッドを具備するので、高記録密度で記録された情報の再生性能を、長期にわたって高く維持することが可能である。
本明細書記載の多層膜は、素子抵抗を小さくしても高い磁気抵抗変化率を得ることができるという効果を奏する。また、本明細書記載の磁気ヘッドは、情報記録媒体に高記録密度で記録された情報の高精度な読み取りができるという効果を奏する。更に、本明細書記載の磁気記憶装置は、高精度な情報再生能力を長期にわたって維持することができるという効果を奏する。
以下、本発明に係る多層膜、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置の一実施形態について、図1〜図10に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る磁気記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)100の内部構成を示している。この図1に示すように、HDD100は、箱型の筺体11と、筺体11内部の空間(収容空間)に収容された磁気記憶媒体としての磁気ディスク20、スピンドルモータ15、ヘッド・スタック・アッセンブリ(HSA)16、及びLSI等が実装された制御基板(図示せず)等を備える。なお、図1では、筐体11の内部を示すため、筐体11の上蓋の図示を省略している。ヘッド・スタック・アッセンブリ16は、磁気ヘッド30を有する。
磁気ディスク20は、スピンドルモータ15によって高速度で回転駆動される。なお、磁気ディスク20は、回転軸に沿って(図1の紙面直交方向に沿って)複数枚設けられていても良い。
図2は、磁気ヘッド30及び磁気ディスク20の模式図である。磁気ディスク20のガラス製の基板20A上には、軟磁性層21、非磁性の中間層22、硬磁性層23、保護層24、及び潤滑層25が順に積層されている。
磁気ヘッド30は、記録ヘッド31と、上部磁気シールド32と、下部磁気シールド33と、これら磁気シールド32,33の間に設けられた多層膜としてのTMR素子40とを備える。記録ヘッド31は、主磁極311と、補助磁極312と、情報記録用のコイル313とを有する。
図3は、TMR素子40の断面模式図である。TMR素子40は、絶縁性の薄膜である非磁性層400と、この非磁性層400の表裏両側にそれぞれ設けられて非磁性層400を間に挟む第1強磁性層401及び第2強磁性層402と、反強磁性層403と、を有する。TMR素子40の基板40A上には、反強磁性層403、第2強磁性層402、非磁性層400、及び第1強磁性層401の順に積層されている。ここで、非磁性層400の材料としては、例えば、MgOが採用されている。
第1、第2強磁性層401,402は、CoFeBにより形成されている。すなわちCo、Fe、及びBの原子組成比が、Co:Fe:B=2:1:1とされている。また、第1、第2強磁性層401,402は、図4に示す結晶構造を有している。すなわち、第1、第2強磁性層401,402はそれぞれL2規則化構造を有する。このL2規則化構造は、CoFeの有するbcc構造(体心立方構造)に対して置換型でB(ホウ素)が配置されることによって規則化されている。また、このL2規則化結晶の格子サイズは、GGA(Generalized gradient approximation)近似を用いた密度汎関数法による電子状態計算から見積もると、5.37Åである。
図5は、TMR素子40によるトンネル磁気抵抗効果に基づく特性についての概念図である。ここで、第1強磁性層401の磁化の方向は、磁気ディスク20の記録ビットから発せられた磁界に応じて変化する。一方、第2強磁性層402のスピンは、反強磁性層403との交換相互作用によって一方向に揃うため、第2強磁性層402の磁化の方向は固定されている。この場合、第1強磁性層401の磁化方向の変化に応じて、第1、第2強磁性層401,402の磁化の方向が平行(図5に示す(a)の状態)、または反平行(図5に示す(b)の状態)に切り替わる。
このように、記録ビットから発せられた磁界に応じて第1、第2強磁性層401,402の磁化の相対的な向きが変化すると、TMR素子40の電気抵抗が変わる。この電気抵抗が変化する割合を磁気抵抗変化率という。TMR素子40では、第1強磁性層401の磁化方向が、再生される記録ビットの磁界に応じて図5の(a)の状態になったときには、TMR素子40の各層に直交する方向に大きな電流が流れ、図5の(b)の状態になったときには小さな電流しか流れなくなる。この電流が示す抵抗変化が、第1、第2強磁性層401,402から制御基板上の回路(ハードディスクコントローラ(HDC)等)に電気信号として出力され、HDC等では当該抵抗変化に基づいて磁気ディスク20上に記録された情報を読み出す。すなわち、磁気ディスク20に記憶された情報は、TMR素子40が発揮する磁気抵抗効果を利用して再生されることになる。
ここで、磁気抵抗変化率は、第1、第2強磁性層401,402の磁化の方向が平行のときのTMR素子40の電気抵抗(素子抵抗)をR、反平行のときのTMR素子40の電気抵抗をRとすると、次式(1)で表される。
磁気抵抗変化率=(R−R)/R …(1)
また、これらR及びRの単位は、通常は、1μm当たりに換算した抵抗値(Ω・μm)で示される。なお、TMR素子40は絶縁性の非磁性膜400を含むため、素子面積が同一のGMR素子よりも抵抗が大きくなる。
本実施形態の場合、磁気ディスク20の微細な記録ビットに対応するTMR素子40の面積は、非常に小さい。一方、非磁性層400の膜厚は従来のTMR素子よりも薄くできる。例えば、非磁性層400の膜厚は、約0.7nm未満とすることができる。また、TMR素子40の素子抵抗Rは、約2Ω・μm以下と小さい。このため、素子における抵抗変化を電気信号として取り出す際の、素子と回路との間のインピーダンスマッチングをとることができるので、高周波での信号特性を良好に維持することができる。
図6は、第1、第2強磁性層401,402の結晶構造における全電子の状態密度(DOS:density of states)の分布を示す。ここで、電流に寄与するフェルミレベルE近傍の伝導電子は、そのほとんどが実線で示す多数派スピン電子(ここではアップスピン電子)で占められている。一方、フェルミレベルE近傍において、破線で示す少数派スピン電子(ここではダウンスピン電子)の状態密度はほぼゼロである。GGA近似を用いた第一原理電子状態解析の分析によると、フェルミレベルE近傍における伝導電子の分極率は、ハーフメタルに迫る98%である。ここで、分極率Pは、フェルミエネルギでの電子状態密度をNUP(アップスピン側)、NDOWN(ダウンスピン側)とすれば次式(2)のように表すことができる。
P=(NUP−NDOWN)/(NUP+NDOWN) …(2)
図7は、図6の電子状態密度分布を電子毎に示したものである。このうち、図7(a)はCoのd電子状態密度分布を示し、図7(b)はFeのd電子状態密度分布を示し、図7(c)はL2規則化構造のCoFeBのs電子状態密度分布を示している。ここで、TMR素子において電流に寄与するのは主にs電子である。したがって、図7(c)のs電子状態密度分布を参照すれば、フェルミレベルEにおけるダウンスピン側(縦軸負側)の状態密度がほぼゼロであり、伝導電子はアップスピン側電子のみである。よって、s電子の分極率は上式(2)より、ほぼ100%である。
一方、アモルファス(非晶質)構造のCoFeBの電子状態密度分布を示す図がP. Paluskarらの論文(P. Paluskar et al: Phys. Rev. Let. No.100, 057205(2008))に示されているので、これを図8(a)〜図8(c)に引用する。図8(a)はCoのd電子状態密度分布を示し、図8(b)はFeのd電子状態密度分布を示し、図8(c)はCoFeBのs電子状態密度分布を示している。この場合も、s電子状態密度分布を示す図8(c)を参照すると、フェルミレベルE近傍において、縦軸正側で示されるアップスピン側の状態密度の方がダウンスピン側の状態密度よりも大きい。上記論文によると、この図8(c)におけるs電子の分極率は40〜50%である。
以上のように、TMR素子において電流に寄与するs電子で見た場合、上述の組成比(Co:Fe:B=2:1:1)及びL2規則化結晶構造であるCoFeBの分極率は、アモルファス構造のCoFeBの分極率よりも格段に高い。
ここで、非磁性層400の膜厚は非常に薄く、一般的には、このように膜厚を薄くすることは、電子を透過させる性質を失うことに繋がる。しかし、MgOにより形成された非磁性層400はs電子のみを通し易く、かつ、強磁性層401,402におけるs電子の分極率が格段に高いことから、非磁性層400の膜厚を薄くしたとしても、高い磁気抵抗変化率を得ることが可能となる。具体的には、本実施形態の強磁性層401,402の磁気抵抗変化率は、1000%以上である。
また、アモルファス構造のCoFeBでは、図8(a)及び図8(b)のようにd電子の分極方向が図8(c)に示すs電子の分極方向とは逆転するのに対し、本実施形態の強磁性層401,402では、図7(a)及び図7(b)のように、d電子の分極方向が図7(c)に示すs電子の分極方向と同様である。すなわち、s電子の高い分極率がd電子の分極状態によって減殺されることがないので、本実施形態の強磁性層401,402は、s電子及びd電子を含めた電子全体としても分極率が高い。
図9は、アモルファス構造のCoFeBと、本実施形態に係るL2規則化CoFeBとを比較した表を示す。アモルファスCoFeBの構造は、結晶化していたとしても部分部分が結晶化した多結晶に過ぎないから、明らかな結晶構造ではない。このアモルファスCoFeBの分極率は、上述したように小さいため、高い磁気抵抗変化率を得ることができない。これに対し、L2規則化結晶であるCoFeBは、上述したようにフェルミレベルEでのダウンスピン状態密度がほぼ0であるため、高い磁気抵抗変化率が得られる。
ここで、上述のような作用及び効果は、単に組成を限定したのではなく当該組成に関連した結晶構造を与えたことで達成されている。この点に本明細書に記載の多層膜の意義がある。上述したように、ホイスラー合金としては、CoFeAlなどが知られているが、Al以外の材料としては何を採用しても良いというわけではない。実際、例えば、独立行政法人理化学研究所のウェブサイト(http://www.riken.jp/lab-www/nanomag/research/heusler_j.html)には、Alと置換可能な原子として、Si、Ga,Ge,As,In,Sn,Sb,Tl,Pd,Biが挙げられている。
このため、上記以外の原子をAlと置換した場合、上記ホイスラー合金と同様の特性が得られるとは限らない。例えば、PをAlと置換した場合には、図10に示すように、フェルミレベルEにおける分極率は大きくならない(ダウンスピン電子が非常に多くなる)。これはCoやFeの組み合わせだけで特性が決まるのではなく、Bのs電子及びp電子の軌道と、CoやFeのs電子、p電子及びd電子の軌道との混合による状態密度の形成のされ方が重要となるからである。
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、強磁性層401,402として、原子組成比がCo:Fe:B=2:1:1であり、かつL2規則化された結晶構造を有する材料を用いたので、強磁性層401,402の分極率が高いことにより、素子抵抗を低くしつつ、高い磁気抵抗変化率を実現することができる。これにより、磁気ディスク20の記録ビットに対する磁気ヘッド30の高いセンシング能力を確保できるので、磁気ディスク20に高記憶密度で情報を記録しても、その情報を高精度に再生することが可能である。また、素子抵抗が低抵抗であることから、高周波、低周波に関わらずインピーダンスマッチングをとることができ、出力信号のSNを良好に維持することができる。これにより、高周波信号を用いたデータ再生ができ、再生速度の高速化を量ることが可能である。
また、本実施形態では、強磁性層401,402がMnやAlやSiなどの酸化し易い材料を含まないので、酸化による特性劣化を抑制することができ、磁気ヘッド30やHDD100の信頼性を長期にわたって維持することが可能である。
また、本実施形態では、強磁性層401,402に用いるCoFeBのL2規則化結晶の格子サイズが小さいことから、格子サイズの小さい非磁性層400と強磁性層401,402との接合性を良好にできる。
さらに、強磁性層401,402に用いるCoFeBは、CoFeを75%含み、キュリー温度が室温以上となることから、実用上も問題は無い。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、多層膜としては、GMR素子を採用することもできる。図11には、GMR素子50の断面模式図が示されている。この図11に示すように、GMR素子50の基板50A上には、反強磁性層403、第2強磁性層402、導電性の薄膜である非磁性層500、及び第1強磁性層401が順に積層されている。ここで、第1、第2強磁性層401,402は上述の組成比およびL2規格化構造のCoFeB結晶とされている。一方、非磁性層500は、例えばCuにより形成されている。本実施形態のGMR素子50は、CPP−GMR(CPP:Current Perpendicular to the Plane)素子とされており、磁気ディスク20の記録ビットの磁界変化に応じてGMR素子50の各層の直交方向に電流が流れる。
ここで、GMR素子50の非磁性層500は、TMR素子40の非磁性層400とは異なり、s電子のみを通しやすいわけではない。このため、s電子及びd電子を含めた全電子の状態密度が重要となるが、図6に示したようにフェルミレベルE近傍の伝導電子がアップスピンの電子のみであって、強磁性層401,402の分極率が高いので、GMR素子50においても、高い磁気抵抗変化が得られる。
なお、多層膜としては、上述したTMR素子やGMR素子以外にも、MRAM(磁気抵抗メモリ、Magnetoresistive Random Access Memory)に適用することもできる。MRAMでは、多層膜としてのMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子がマトリックス状に配置される。それぞれのMTJ素子は、非磁性層とこれを挟む強磁性層とを有している。したがって、強磁性層として上述の組成比及びL2規則化構造のCoFeBを用いることで、MRAMにおいても、強磁性層の分極率が高いことにより、高記憶密度化を促進することが可能となる。
また、多層膜の構成は上述した例に限られない。上述した例では、多層膜における第1、第2強磁性層はそれぞれ単層であったが、これに限らず、各層がそれぞれ、非磁性膜を含む複数の膜から形成されていても良い。また、第1強磁性層、非磁性層、第2強磁性層、及び反強磁性層のそれぞれの間に任意の機能を有する中間層が介装されていてもよい。さらに、第1、第2強磁性層のいずれか一方のみが、上述の組成比及びL2規則化構造のCoFeBで形成されていてもよい。この場合も、分極率を高くできるので、高い磁気抵抗変化率が得られる。
本発明の実施形態に係るハードディスクドライブの構成を示す図である。 磁気ヘッド及び磁気ディスクの模式図である。 TMR素子の断面模式図である。 第1、第2強磁性層のL2規則化CoFeB結晶を示す図である。 磁気抵抗効果に基づく特性について示す概念図である。 第1、第2強磁性層の結晶構造における全電子の状態密度の分布図である。 図6の電子状態密度分布を成分毎にそれぞれ示した図。 P. Paluskarらの論文からの引用図であり、アモルファス構造のCoFeBの電子状態密度分布を示す図である。 アモルファス構造のCoFeBと、本実施形態に係るL2規則化Co2FeBとを比較した表を示す。 L2規則化CoFeP結晶の特性を示す図である。 GMR素子の断面模式図である。
符号の説明
20 磁気ディスク(磁気記憶媒体)
30 磁気ヘッド
40 TMR素子(多層膜)
400 非磁性層(絶縁性の非磁性層)
401 第1強磁性層(強磁性層)
402 第2強磁性層(強磁性層)
50 GMR素子(多層膜)
500 非磁性層(導電性の非磁性層)

Claims (5)

  1. 非磁性層と、
    前記非磁性層の表裏両側にそれぞれ設けられた強磁性層と、を有し、
    前記強磁性層の少なくとも一方は、原子組成比がCo:Fe:B=2:1:1であり、かつL2規則化された結晶構造を有することを特徴とする多層膜。
  2. 前記非磁性層は、絶縁性を有することを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
  3. 前記非磁性層は、導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層膜を備え、
    前記多層膜が発揮する磁気抵抗効果を利用して磁気記憶媒体に記録された情報を再生することを特徴とする磁気ヘッド。
  5. 請求項4に記載の磁気ヘッドと、
    前記磁気ヘッドにより読み取り可能な情報を記憶する磁気記憶媒体と、を備える磁気記憶装置。
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