JP2010141095A - 線状熱電複合材料の製造方法 - Google Patents

線状熱電複合材料の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010141095A
JP2010141095A JP2008315502A JP2008315502A JP2010141095A JP 2010141095 A JP2010141095 A JP 2010141095A JP 2008315502 A JP2008315502 A JP 2008315502A JP 2008315502 A JP2008315502 A JP 2008315502A JP 2010141095 A JP2010141095 A JP 2010141095A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
composite material
diameter
metal
core
zinc
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2008315502A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Hase
隆司 長谷
Takashi Zaitsu
享司 財津
Hiroyuki Kato
弘之 加藤
Takashi Miki
孝史 三木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2008315502A priority Critical patent/JP2010141095A/ja
Publication of JP2010141095A publication Critical patent/JP2010141095A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】充分に長い線状の熱電複合材料を、現実的な生産速度で効率よく製造できる方法を提供すること。
【解決手段】金属マトリックスに複数の柱状穴を形成し、それぞれの柱状穴に金属マトリックスとは異なる種類の金属または半金属の芯を埋設してスタック材を形成する工程、前記スタック材を縮径加工する工程、及び少なくとも前記金属マトリックスを酸化する工程を含む線状熱電複合材料の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、マトリックス中に熱電材料の芯が複数埋設されている線状熱電複合材料の製造方法に関するものである。
熱電材料は、ゼーベック効果を利用して温度差から発電を行う発電装置や、ペルチェ効果を利用して冷却または加熱を行う装置に用いられている。
熱電材料の熱電変換効率を示す指標として、下記式(1)で表される無次元熱電性能指数ZTがある:
ZT=S2σT/κ ・・・ (1)
〔式(1)中、Sはゼーベック係数(S=−ΔV/ΔT、ΔV=熱起電力、ΔT=温度差)であり、σは電気伝導率であり、κは熱伝導率であり、Tは温度である。〕
現在の熱電材料のZTは、最も高いものでも1程度であり、さらに高いZTを示す(即ち熱電変換効率が高い)熱電材料が求められている。これに関して、キャリアのド・ブロイ波長と同程度以下(ナノサイズ)にまで熱電材料のサイズを低減することで、量子効果が発現し、ZTが飛躍的に向上することが知られている。
例えば特許文献1は、スパッタリング法などの非平衡状態で材料を形成する成膜方法で基板上にアルミニウムの膜を形成する際に、シリコンまたはゲルマニウムを添加すればシリコンまたはゲルマニウム膜中に柱状構造のアルミニウムが形成されることを利用して、マトリックス中に熱電材料が複数埋設されている熱電複合材料の製造方法を開示している。詳しくは、特許文献1には、(1)スパッタリング法などの成膜方法で柱状構造のアルミニウムが含まれるシリコンまたはゲルマニウム膜を形成する、(2)前記柱状構造のアルミニウムを優先的に溶かしてシリコンまたはゲルマニウム多孔体を形成する、(3)場合によりシリコンまたはゲルマニウム多孔体を酸化して酸化シリコンまたは酸化ゲルマニウム多孔体を形成する、(4)前記多孔体の細孔にビスマス等の熱電材料を充填することで、熱電複合材料を製造することが開示されている。
また特許文献2は、カーボンナノチューブを利用してマトリックス中に熱電材料の芯が複数埋設されている熱電複合材料の製造方法を開示している。詳しくは特許文献2には、(1)基板表面に垂直に配向した複数のカーボンナノチューブを形成する、(2)前記カーボンナノチューブを樹脂で固定する、(3)樹脂で固定されたカーボンナノチューブにビスマス等の熱電材料を充填することで、樹脂マトリックス中に熱電材料の芯が複数埋設されている熱電複合材料を製造することが開示されている。
特開2004−193526号公報 特開2007−59647号公報
熱電材料のゼーベック効果を利用して有効に発電するためには、高温側と低温側との間に充分な温度差があることが必要である。しかし熱電材料の長さが不充分であると、熱電材料を挟んだ高温側から低温側に熱移動が起こり、温度差が減少してしまう。そこで温度差を有効利用して効率的に発電するためには、充分な長さの熱電材料が必要である。
しかし特許文献1の方法では、アルミニウム−シリコンまたはゲルマニウム膜を成膜することでマトリックス前駆体を製造するため、充分な厚さの多孔体および充分な長さの熱電材料の芯を製造できない。特許文献1の実施例では、200nmの厚さの混合膜しか製造しておらず、その結果、熱電材料の芯の長さは200nmでしかない。なお特許文献1の方法でも成膜時間を長くすれば、充分な厚さの多孔体および充分な長さの熱電材料芯を製造できると理論上考えられるが、そのような工業生産は実際上困難である。
また特許文献2でも、熱電材料の芯が充分な長さである熱電複合材料を製造する方法は具体的に開示されていない。特許文献2には「配向したカーボンナノチューブを形成できるため、mmオーダー厚の実用的なナノワイヤを備えた熱電変換素子を得ることができる。」と記載されている。しかし特許文献2には一般的なカーボンナノチューブの製造方法が記載されているだけで、mmオーダーのカーボンナノチューブを製造するための具体的方法は記載されていない。さらに特許文献2には「ナノワイヤ10の量子効果を充分に発現させるため、CNT40(注:CNT=カーボンナノチューブ)の一本一本が電気的に孤立している、すなわち隣接するCNT40がそれぞれ接触しない程度に離れていることが望ましい。したがって、隣接するCNT40がそれぞれ接触しないように分離して形成するためには金属触媒を分散させて形成する必要がある。」と記載されているが、それを実現するための具体的方法は記載されていない。なお特許文献2には発明の実施形態が記載されているが、実際に熱電複合材料を製造し、その特性を調べた実施例は記載されていない。
本発明は上記のような事情に鑑みなされたものであって、その目的は充分に長い線状の熱電複合材料を、現実的な生産速度で効率よく製造できる方法を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の熱電複合材料の製造方法は、金属マトリックスに複数の柱状穴を形成し、それぞれの柱状穴に金属マトリックスとは異なる種類の金属または半金属の芯を埋設してスタック材を形成する工程、前記スタック材を縮径加工する工程、及び、少なくとも前記金属マトリックスを酸化する工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法は、前記縮径加工したスタック材を複数本組み合わせて複合スタック材を形成する工程、及び前記複合スタック材を縮径加工する工程をさらに含んでいても良い。本発明の製造方法において、前記金属または半金属の芯の平均直径が5nm以上60nm以下となるまで縮径加工を行うことが好ましい。
本発明の1つの実施態様では、前記酸化工程において金属マトリックス及び金属の芯を酸化させる。この実施態様において、前記酸化工程で磁場を印加しながら前記金属芯を金属酸化物に変換することが好ましい。またこの実施態様において、前記金属芯が亜鉛または亜鉛合金であり、前記酸化工程で、亜鉛または亜鉛合金の酸化物である熱電複合材料の芯を形成することが好ましい。
金属芯を酸化する本発明の実施態様では、前記の金属マトリックスと金属芯との間に、前記金属マトリックスと金属間化合物を形成させず、且つ金属マトリックスとは異なる金属層を配置することが推奨される。前記金属層が鉛または鉛合金であり、前記金属マトリックスが鉛と金属間化合物を形成しない金属(例えば銅または銅合金)であることが好ましい。
本発明の別の実施態様では、前記の金属マトリックスと半金属芯との間に、前記半金属芯の酸化を防止し、且つ金属マトリックスとは異なる金属層を配置し、前記酸化工程で半金属の芯を酸化させずに、金属酸化物マトリックス中に半金属である熱電材料の芯が複数埋設されている線状熱電複合材料を製造する。この実施態様において、前記金属層が、亜鉛または亜鉛合金であることが好ましい。またこの実施態様において、前記半金属芯が、ビスマスまたはビスマス合金であることが好ましく、前記金属マトリックスの穴に、亜鉛粉末とビスマスまたはビスマス合金の粉末とを埋設し、前記粉末の合計を100質量部としたとき、亜鉛粉末量が5質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、前記金属マトリックスが銅または銅合金であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、充分に長い線状の熱電複合材料を効率よく製造できる。このような線状の熱電複合材料を利用すれば、充分な厚さの熱電素子を製造でき、自動車、ゴミ焼却炉、工場プラントなどから出る廃熱を有効利用して、効率よく発電することができる。
〈スタック材の形成および縮径加工〉
本発明の製造方法では、金属マトリックス中に熱電材料となる金属または半金属の芯を複数埋設したスタック材を形成し、これを縮径加工することで、線状である熱電複合材料前駆体を製造することを特徴の1つとする。このようなスタック材の形成および縮径加工によって、充分に長く、且つ平均直径が小さい熱電材料の芯を効率よく形成できる。なお、本発明において「前駆体」という場合は、酸化工程前の状態のスタック材を指すものとする。また、金属マトリックス中に熱電材料となる金属または半金属の芯を複数埋設したものは、縮径加工の前であっても後であっても「スタック材」と記載する。
縮径加工の種類には特に限定はなく、押出し(例えば静水圧押出し)、引抜き、圧延、スウェッジ加工等の手段を利用すればよい。また熱電複合材料前駆体の加工性を向上させるために、縮径加工の途中で、例えば200℃以下の温度で焼鈍を行ってもよい。
本発明の製造方法では、縮径加工したスタック材を組み合わせて、複合スタック材を形成し、この複合スタック材を縮径加工しても良い。さらに、この複合スタック材の形成および縮径加工を繰り返しても良い。1パスのみの縮径加工で、平均直径がナノサイズである芯を形成することは可能であるが、断線等の問題が発生し得る。そこで複合スタック材の形成およびその縮径加工を繰り返すことによって、断線等の問題を回避して、充分に小さな平均直径の芯を歩留まり良く形成できる。
上記複合スタック材の形成手段としては、例えば下記実験例で示すように、縮径加工したスタック材を、マトリックスと同じ金属製のケースに挿入することなどが挙げられるが、本発明はこの手段に限定されるものではない。また複合スタック材の縮径加工は、上述の手段が利用できる。
縮径加工によって(好ましくは複合スタック材の形成および縮径加工を1度以上追加して行うことによって)、金属(例えば亜鉛等の熱電材料)または半金属(例えばビスマス等の熱電材料)の芯を5nm以上(好ましくは10nm以上)、60nm以下(好ましくは30nm以下)の平均直径にまで加工することが望ましい。熱電材料芯の平均直径が60nm以下であれば、量子効果によるZTの飛躍的向上が期待できる。但しこの平均直径は小さいほど量子効果が期待できるが、断線させずに芯の平均直径を5nm未満にまで縮径加工することは困難である。
金属または半金属芯の直径は縮径加工率から計算できる。本発明の製造方法では、この計算値を金属または半金属芯の平均直径として用いることができる。
上記芯の平均直径が1μm程度以下になると、その芯を構成する金属または半金属結晶の粒径よりも芯の直径のほうが一桁程度以上小さくなる。そうなると特定の結晶面がすべり面となって原子が動く際に、断層のようなくい違いが生じ、長手方向に均一な加工が困難となる。このようなくい違いは、引抜き加工の速度を20m/min程度以下(好ましくは10m/min程度以下)、静水押出し加工の速度を1.2m/min程度以下(好ましくは0.6m/min程度以下)にすることによって抑制できる。
〈熱電複合材料前駆体の酸化〉
本発明の製造方法では、縮径加工後の線状熱電複合材料の前駆体に酸化処理を施して、金属マトリックスを金属酸化物に変換することも特徴の1つとする。熱電複合材料のマトリックスが金属のままであると、複合材料全体の熱伝導率が高いままとなるため、熱電素子の高温側と低温側との間の熱伝導を充分に防ぐことができない。しかし熱伝導率が低い酸化物をマトリックスとするスタック材では、押出しまたは引抜き等による縮径加工を施すことができない。そこで本発明では、スタック材のマトリックスに縮径加工が可能である金属を使用し、縮径加工後に、マトリックスを酸化して複合材料全体の熱伝導率を低下させることを特徴の1つとする。
本発明の製造方法では、この酸化工程で、前記金属芯(例えば亜鉛またはその合金)を酸化させて金属酸化物に変換する実施態様と、前記半金属芯(例えばビスマスまたはその合金)を酸化させない実施態様を包含する。即ち本発明では、熱電材料が金属酸化物である熱電複合材料、及び熱電材料が半金属である熱電複合材料の両方を製造できる。以下ではこれらを分けて説明する。
〈熱電材料が金属酸化物である場合〉
この実施態様では、縮径加工で細径の金属芯を形成し、これを酸化して細径の金属酸化物(例えば酸化亜鉛)である熱電材料の芯を形成して、熱電複合材料を製造する。このような熱電複合材料は、上述の特許文献1や特許文献2のような従来技術では製造できない。特許文献1等では、細孔を有するマトリックスを形成し、この細孔内にビスマス等の半金属熱電材料の溶融物を充填する技術が開示されている。しかし酸化亜鉛等の金属酸化物はそもそも溶融させることができない。このように細くて長い金属酸化物である熱電材料の芯を形成できる点が、本発明の大きな利点の1つである。
この実施態様では、酸化工程で線状前駆体に磁場を印加しながら、金属芯を酸化させることが好ましい。磁場を印加することで、金属酸化物芯の結晶配向を揃えることができ、より高いZTを実現することができる。例えば亜鉛または亜鉛合金の芯を磁場印加しながら酸化させることで、熱伝導率が低い結晶面(結晶のc面)が線状熱電複合材料の長手方向に配向した酸化亜鉛または亜鉛合金酸化物を形成できる。
また線状の熱電複合材料前駆体の長手方向を軸として前駆体を回転させながら磁場印加して酸化処理を行うと、金属酸化物(特に酸化亜鉛または亜鉛合金酸化物)の結晶配向性がさらに向上し、さらに高いZTが実現できる。
この実施態様では、金属芯として亜鉛または亜鉛合金を用い、これを酸化して酸化亜鉛または亜鉛合金酸化物である熱電材料に変換することが好ましい。酸化亜鉛または亜鉛合金酸化物は、優れた熱電材料として知られている。また亜鉛合金の酸化物が、合金元素として、Al、Mg、Ti、Ga、Ge、In、Sn、As、SbおよびNbよりなる群から選ばれる少なくとも1種(特にAl)を0.01質量%以上5質量%以下の合計量で含有するものが好ましい。このような亜鉛合金の酸化物は、より高いZTを示す。
この実施形態では金属マトリックスおよび金属芯の両方とも酸化させるので、充分な時間および温度で熱電複合材料前駆体を酸化させればよい。また酸化力を高めるために湿度が高い雰囲気中で前駆体を酸化させても良い。また前記雰囲気中に微量のSO2ガスを添加しても良い。SO2はH2Oと反応してH2SO3(亜硫酸ガス)となる。このH2SO3によって金属マトリックスおよび金属芯の酸化が促進される。
例えば金属マトリックスとして銅または銅合金を使用し、金属芯として亜鉛または亜鉛合金を使用した場合、縮径加工途中の焼鈍や酸化処理による加熱で、銅−亜鉛金属間化合物が形成され、前駆体の加工性が低下したり、熱電複合材料のZTが低下するおそれがある。このような金属間化合物の形成を防止するために、金属マトリックスと金属芯との間に、金属間化合物を形成しない金属層(例えば鉛または鉛合金層)を形成することが好ましい。
〈熱電材料が半金属である場合〉
電子のエネルギー準位について価電子帯と伝導帯が一部重なっている物質は一般的に半金属と呼ばれている。半金属系の熱電材料として、ビスマスまたはビスマス合金が代表的である。ビスマス合金としては、Bi2Te3、Be2(Te,Se)3、Bi88Sb12などが知られている。また、ビスマスまたはビスマス合金のほか、PbTe、Si、Ge、SiGeなども使用することができる。
半金属である熱電材料を使用する場合、金属マトリックスの酸化工程でこれらが酸化されると、ZTが劣化する。そこで半金属熱電材料を使用する場合は、これらの酸化を防止する必要がある。そこでこの実施態様の本発明では、半金属芯の酸化を防止するために、金属マトリックスと半金属芯との間に、酸化を防止する金属層を配置することが好ましい。酸化防止用の金属層としては、例えば安定な酸化物を形成する金属が挙げられ、好ましくは亜鉛または亜鉛合金である。
この実施形態で、相対湿度が60〜100%(好ましくは80〜90%)である大気圧程度の空気雰囲気下で、熱電複合材料の前駆体を、200〜350℃(好ましくは250〜300℃)で15〜70時間(好ましくは20〜50時間)加熱することによって、マトリックスの金属のみを金属酸化物に変換させる。また前記雰囲気中に微量のSO2ガスを添加しても良い。
ビスマスまたはビスマス合金を熱伝導材料として使用する場合、これらは冷間加工性が乏しいという欠点を有する。そのためナノサイズの平均直径までこれらの芯を縮径加工することは難しい。しかし金属マトリックスの穴に、ビスマスまたはビスマス合金の粉末と共に、潤滑剤として亜鉛粉末を添加してスタック材を形成してから、その他の工程を行えば、ビスマスまたはビスマス合金の芯を極細径まで縮径加工することができる。
亜鉛粉末は潤滑剤として作用する。そのため亜鉛粉末は純亜鉛であることが望ましいが、潤滑剤としての作用を損なわない範囲で他の元素成分を微量に含む亜鉛合金であってもよい。潤滑剤としての亜鉛粉末量は、前記粉末の合計を100質量部としたとき、好ましくは5質量部以上(より好ましくは10質量部以上)、好ましくは25質量部以下(より好ましくは20質量部以下)である。亜鉛粉末量が5質量部未満であると、潤滑剤の作用が充分に発揮されない。一方、亜鉛量が25質量部を超えると、熱電材料としてのビスマスの働きが阻害される。
〈金属マトリックス〉
本発明の製造方法で用いる金属マトリックスは、(1)ある程度厚い金属酸化物層が形成でき、(2)200℃程度以下の温度で中間焼鈍が可能であるため縮径加工を続けて行うことができる、という理由から、好ましくはニッケル若しくは銅、またはこれらの合金であり、より好ましくは銅または銅合金である。銅合金としては、Sn及び/又はZnなどの微量成分を含有するものなどが挙げられる。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実験例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例1
直径67mmの銅インゴットに、端から端までを貫通する直径16.0mmの円筒状を7個開け、その穴に亜鉛棒を挿入して、一次スタック材用のビレット(なお、先に定義したように縮径加工の前であっても後であっても「スタック材」と、以下では記載する)を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した一次スタック材を形成した。
縮径加工した一次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、二次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、直径が0.80mmである丸棒状の熱電複合材料前駆体を形成した。このときの亜鉛芯の直径は3.2μmであった。なお本実験例および下記実験例における芯の直径の値は、縮径加工率から計算した値である。
上述した二次スタック材の縮径加工の途中で、200℃以下の温度で焼鈍を行ったが、この焼鈍中に銅マトリックスと亜鉛芯とが反応して、銅−亜鉛金属間化合物が形成されていた。これは、二次スタック材断面の組成分析により確認した。また断線が生じるために、さらなる縮径加工を施すことはできなかった。
この前駆体を、相対湿度が90%であり、濃度10ppmのSO2ガスを含む大気圧程度の空気雰囲気下、300℃で50時間加熱する酸化処理を行い、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料が酸化亜鉛(ZnO)である線状熱電複合材料を形成した。
酸化処理後の線状熱電複合材料から、長さ5mmの材料を切り出し、低温端25℃(298K)及び高温端500℃(773K)の条件で(中間温度T=538K)、ゼーベック係数S、電気伝導率σ及び熱伝導率κを測定して、この材料の無次元熱電性能指数ZTを求めた。
実験例1の線状熱電複合材料のZTは0.62であった(熱電複合材料の直径0.80mm及び長さ5mm、酸化亜鉛芯の直径3.2μm、T=538K)。
実験例2
直径67mmの銅インゴットに、端から端までを貫通する直径16.0mmの円筒状を7個開け、その穴の内側に沿わせて厚さ0.05mmの鉛シートを円筒状に巻き、その中に亜鉛棒を挿入し、その両端を電子ビーム溶接して、一次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した一次スタック材を形成した。
縮径加工した一次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、二次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した二次スタック材を形成した。なお二次スタック材の縮径加工の途中で、200℃以下の温度で焼鈍を行った。
縮径加工した二次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、三次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、直径が0.40mmである丸棒状の熱電複合材料前駆体を形成した(図1)。このときの亜鉛芯の直径は20nmであった。なお三次スタック材の縮径加工の途中でも、200℃以下の温度で焼鈍を行ったが、銅−亜鉛金属間化合物は形成されなかった。これは、三次スタック材断面の組成分析により確認した。これは、鉛層が銅−亜鉛金属間化合物の形成を防止したためである。
この前駆体を、相対湿度が90%であり、濃度10ppmのSO2ガスを含む大気圧程度の空気雰囲気下、300℃で25時間加熱する酸化処理を行い、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料が酸化亜鉛(ZnO)であり、その間に酸化鉛層が存在する線状熱電複合材料を形成した(図2)。なお、300℃で50時間加熱してもほぼ同様の結果であった。
実験例1と同様にして求めた実験例2の線状熱電複合材料のZTは、6.1であった(熱電複合材料の直径0.40mm及び長さ5mm、酸化亜鉛芯の直径20nm、T=538K)。
実験例3
亜鉛棒の代わりにZn−1質量%Al合金棒を使用して、一次スタック材を形成したこと以外は、実験例1と同様にして、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がZn−1質量%Al合金の酸化物である線状熱電複合材料を形成した。この実験例3でも、実験例1と同様に、二次スタック材の縮径加工途中の焼鈍で銅−亜鉛金属間化合物が形成されていた。また断線が生じるために、さらなる縮径加工を施すことはできなかった。
実験例1と同様にして求めた実験例3の線状熱電複合材料のZTは、0.15であった(熱電複合材料の直径0.80mm及び長さ5mm、Zn−1質量%Al合金酸化物の芯の直径3.2μm、T=538K)。
実験例4
亜鉛棒の代わりにZn−1質量%Al合金棒を使用して、一次スタック材を形成したこと以外は、実験例2と同様にして、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がZn−1質量%Al合金の酸化物であり、その間に酸化鉛層が存在する線状熱電複合材料を形成した。この実験例4でも、実験例2と同様に、二次スタック材および三次スタック材の縮径加工途中の焼鈍を行ったが、銅−亜鉛金属間化合物は形成されなかった。
実験例1と同様にして求めた実験例4の線状熱電複合材料のZTは、6.8であった(熱電複合材料の直径0.40mm及び長さ5mm、Zn−1質量%Al合金酸化物の芯の直径20nm、T=538K)。
実験例5
線状前駆体の長手方向に垂直に10Tの磁場を印加しながら酸化処理を行った(図3)こと以外は、実験例4と同様にして、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がZn−1質量%Al合金の酸化物であり、その間に酸化鉛層が存在する線状熱電複合材料を形成した。磁場印加によって、熱電材料であるZn−1質量%Al合金酸化物の結晶のc面が、線状熱電複合材料の長手方向に配向した。このことをX線回折によって確認した。
実験例1と同様にして求めた実験例5の線状熱電複合材料のZTは、7.4であった(熱電複合材料の直径0.40mm及び長さ5mm、Zn−1質量%Al合金酸化物の芯の直径20nm、T=538K)。
実験例6
直径67mmの銅インゴットに、端から端までを貫通する直径16.0mmの円筒状を7個開け、その穴の内側に沿わせて厚さ0.02mmの亜鉛シートを円筒状に巻き、その中にビスマス粉末および亜鉛粉末の混合物(粉末合計100質量部中、亜鉛粉末2質量部)を充填し、この両端を電子ビーム溶接して、一次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した一次スタック材を形成した。
縮径加工した一次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、二次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、直径が0.80mmである丸棒状の熱電複合材料前駆体を形成した。このときのビスマス−亜鉛芯の直径は3.2μmであった。なお潤滑剤として作用する亜鉛量が少なく、断線が生じるために、さらなる縮径加工を施すことはできなかった。
この前駆体を、相対湿度が90%であり、濃度10ppmのSO2ガスを含む大気圧程度の空気雰囲気下、300℃で50時間加熱する酸化処理を行い、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がビスマス(Bi)である熱電複合材料を形成した。
酸化処理後の線状熱電複合材料から、長さ5mmの材料を切り出し、低温端25℃(298K)及び高温端150℃(423K)の条件で(中間温度T=361K)、ゼーベック係数S、電気伝導率σ及び熱伝導率κを測定して、この材料の無次元熱電性能指数ZTを求めた。なお、実験例1〜5の場合に比べて高温端の温度を低くしたのは、Biの融点が約271度と低いためである。
実験例6の線状熱電複合材料のZTは、0.53であった(熱電複合材料の直径0.80mm及び長さ5mm、ビスマス−亜鉛芯の直径3.2μm、T=361K)。
実験例7
厚さ0.02mmの亜鉛シートを使用せず、銅インゴットの穴にビスマス粉末および亜鉛粉末の混合物(粉末合計100質量部中、亜鉛粉末20質量部)を充填したこと以外は、実験例6と同様にして、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がビスマス(Bi)である線状熱電複合材料を形成した。実験例7の線状熱電複合材料では、酸化工程でビスマスが部分的に酸化していた。このことは線状熱電複合材料の断面の組成分析で確認した。
実験例6と同様にして求めた実験例7の線状熱電複合材料のZTは、0.02であった(熱電複合材料の直径0.80mm及び長さ5mm、ビスマス−亜鉛芯の直径3.2μm、T=361K)。
実験例8
直径67mmの銅インゴットに、端から端までを貫通する直径16.0mmの円筒状を7個開け、その穴の内側に沿わせて厚さ0.02mmの亜鉛シートを円筒状に巻き、その中にビスマス粉末および亜鉛粉末の混合物(粉末合計100質量部中、亜鉛粉末20質量部)を充填し、この両端を電子ビーム溶接して、これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した一次スタック材を形成した。
縮径加工した一次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、二次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、断面が六角形(対辺間距離2.3mm)である縮径加工した二次スタック材を形成した。
縮径加工した二次スタック材433本を束ね、これらを一体化して、銅製の外層パイプケース(外径67mm、内径47mm)に挿入し、この両端を電子ビーム溶接して、三次スタック材を形成した。これに静水圧押出しによる縮径加工(速度1.2m/min)を施して、直径が0.40mmである丸棒状の熱電複合材料前駆体を形成した(図4)。このときのビスマス−亜鉛芯の直径は20nmであった。
この前駆体を、相対湿度が90%であり、濃度10ppmのSO2ガスを含む大気圧程度の空気雰囲気下、300℃で25時間加熱する酸化処理を行い、マトリックスが酸化銅(Cu2O)であり、熱電材料がビスマス(Bi)であり、これらの間に酸化亜鉛層が存在する熱電複合材料を形成した(図5)。なお、300℃で50時間加熱してもほぼ同様の結果であった。
実験例6と同様にして求めた実験例8の線状熱電複合材料のZTは、5.4であった(熱電複合材料の直径0.40mm及び長さ5mm、ビスマス−亜鉛芯の直径3.2μm、T=361K)。
実験例2で作製した熱電複合材料前駆体の断面を示す模式図である。 実験例2で作製した熱電複合材料の断面を示す模式図である。 実験例5で用いた磁場を印加しながら酸化処理を行う装置を示す模式図である。 実験例8で作製した熱電複合材料前駆体の断面を示す模式図である。 実験例8で作製した熱電複合材料の断面を示す模式図である。

Claims (13)

  1. 金属マトリックスに複数の柱状穴を形成し、それぞれの柱状穴に金属マトリックスとは異なる種類の金属または半金属の芯を埋設してスタック材を形成する工程、
    前記スタック材を縮径加工する工程、及び
    少なくとも前記金属マトリックスを酸化する工程を含む線状熱電複合材料の製造方法。
  2. 前記酸化工程の前に、前記縮径加工したスタック材を複数本組み合わせて複合スタック材を形成する工程、及び前記複合スタック材を縮径加工する工程をさらに含む請求項1に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  3. 前記金属または半金属の芯の平均直径が5nm以上60nm以下となるまで縮径加工を行う請求項1または2に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  4. 前記酸化工程において前記金属マトリックス及び金属の芯を酸化させる請求項1〜3のいずれかに記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  5. 前記酸化工程で前記芯に磁場を印加しながら前記芯を酸化する請求項4に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  6. 前記芯が亜鉛または亜鉛合金である請求項4または5に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  7. 前記金属マトリックスと金属の芯との間に、金属層を配置する請求項4〜6のいずれかに記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  8. 前記金属層が鉛または鉛合金である請求項7に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  9. 前記の金属マトリックスと半金属の芯との間に、金属層を配置する請求項1〜3のいずれかに記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  10. 前記金属層が、亜鉛または亜鉛合金である請求項9に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  11. 前記半金属の芯が、ビスマスまたはビスマス合金である請求項9または10に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  12. 前記金属マトリックスの穴に、亜鉛粉末とビスマスまたはビスマス合金の粉末とを埋設し、粉末合計量を100質量部としたとき、亜鉛粉末量が5質量部以上25質量部以下である請求項11に記載の線状熱電複合材料の製造方法。
  13. 前記金属マトリックスが銅または銅合金である請求項1〜12のいずれかに記載の線状熱電複合材料の製造方法。
JP2008315502A 2008-12-11 2008-12-11 線状熱電複合材料の製造方法 Withdrawn JP2010141095A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008315502A JP2010141095A (ja) 2008-12-11 2008-12-11 線状熱電複合材料の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008315502A JP2010141095A (ja) 2008-12-11 2008-12-11 線状熱電複合材料の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010141095A true JP2010141095A (ja) 2010-06-24

Family

ID=42350977

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008315502A Withdrawn JP2010141095A (ja) 2008-12-11 2008-12-11 線状熱電複合材料の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010141095A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Wei et al. Review of current high-ZT thermoelectric materials
JP5456964B2 (ja) コア−シェルナノ粒子を用いる均一熱電ナノ複合材料
Mun et al. Boundary engineering for the thermoelectric performance of bulk alloys based on bismuth telluride
KR101680764B1 (ko) 이방성 신장 열전 나노복합물, 그의 제조방법 및 이를 포함한 열전소자
Zhang et al. A general in situ hydrothermal rolling‐up formation of one‐dimensional, single‐crystalline lead telluride nanostructures
US8748726B2 (en) Synthesis of silver, antimony, and tin doped bismuth telluride nanoparticles and bulk bismuth telluride to form bismuth telluride composites
KR101482598B1 (ko) 열전재료, 그 제조방법, 및 그것을 사용한 열전 변환 모듈
JP4812279B2 (ja) 超伝導線材、その製造方法、及びこれを用いた物品
US20130221290A1 (en) Nanocomposite thermoelectric conversion material, method of producing same, and thermoelectric conversion element
US8828277B2 (en) Nanocomposite thermoelectric conversion material and method of producing the same
KR102138527B1 (ko) 상분리를 이용한 열전소재, 상기 열전소재를 이용한 열전소자 및 그 제조방법
EP3640361B1 (en) Method for producing a thermoelectric alloy
JP2010027895A (ja) 熱電変換素子
CN102714269A (zh) 纳米复合热电转换材料及其制造方法
US20200287116A1 (en) Thermoelectric composite, and thermoelectric element and device including the same
Kurosaki et al. Enhanced thermoelectric properties of silicon via nanostructuring
WO2017170914A1 (ja) 化合物、熱電変換材料及び化合物の製造方法
WO2017002514A1 (ja) 熱電材料、熱電素子、光センサおよび熱電材料の製造方法
KR101451302B1 (ko) 비스무트 텔루라이드 나노튜브의 제조방법 및 이에 따라 제조되는 큰 종횡비를 가지는 비스무트 텔루라이드 나노튜브
JP2010093024A (ja) BiTe/セラミックス・ナノコンポジット熱電材料の製造方法
JP2013008722A (ja) ナノコンポジット熱電変換材料およびその製造方法
KR101094458B1 (ko) 열전효율이 향상된 나노복합체의 제조방법 및 이에 따라 제조되는 나노복합체
WO2010010783A1 (ja) 熱電変換素子
Chai et al. Thermoelectric metal tellurides with nanotubular structures synthesized by the Kirkendall effect and their reduced thermal conductivities
JP2010141096A (ja) 熱電複合材料

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20120306