以下、本発明の実施例を説明する。
以下に説明する実施例では、本発明を、大型のハイブリッド自動車用駆動システムの駆動電源に適用した場合を例に挙げて説明する。
大型のハイブリッド自動車としては、ハイブリッドバスなどの乗合自動車、ハイブリッドトラックなどの貨物自動車などがある。以下の実施例では、ハイブリッドバスを例に挙げて説明する。
また、以下に説明する実施例の構成は、ハイブリッド電車などの鉄道車両などにも適用できる。
以下、図面を用いて具体的に説明する。
<大型のハイブリッド自動車用駆動システムの概略構成>
まず、図1を用いて、大型のハイブリッド自動車用駆動システムについて説明する。
本例のハイブリッド自動車1の駆動システムは、内燃機関であるエンジン2の回転動力を用いて発電機3を駆動し、この駆動によって発生した電力を用いて電動発電機4を駆動し、この駆動によって発生した回転動力を用いて駆動輪5(例えば後輪)を駆動する、いわゆるエンジン2から駆動輪5までのエネルギーの流れがシリーズであるシリーズハイブリッド方式により構成されている。このようなシリーズハイブリッド方式の駆動システムによれば、駆動輪5の駆動に関係なく、燃費及び排ガスの良好な領域においてエンジン2を定常運転できるので、通常のエンジン駆動車両に比べて燃費を向上できると共に、排ガス中に含まれる窒素酸化物なども半分以上低減できる。
ハイブリッド車両の駆動システムとしては、駆動輪に対してエンジンと電動発電機とをエネルギーの流れ的に並列に配置(構造的にはエンジンと電動発電機とをクラッチを介して直列に接続)し、エンジンの回転動力による駆動輪の駆動、電動発電機の回転動力による駆動輪の駆動、及びエンジンと電動発電機の両方の回転動力による駆動輪の駆動ができる、いわゆるパラレルハイブリッド方式、或いはシリーズハイブリッド方式とパラレルハイブリッド方式とを組み合わせたシリーズ・パラレルハイブリッド方式(エンジンの回転動力の一部を発電用電動発電機に分配して発電させ、これにより得られた電力により駆動用電動発電機を駆動できるようにした方式)を採用してもよい。
エンジン2及び発電機3は、電動発電機4の駆動に必要な電力を発生させる発電専用電力設備として搭載されている。エンジン2及び発電機3は、互いの回転軸が直結されることにより機械的に接続されている。エンジン2及び発電機3の機械的な接続としては、エンジン2及び発電機3のそれぞれの回転軸にプーリを取り付け、それらの間をベルトで連結する方式を採用してもよい。
エンジン2は、発電機3の駆動に必要な回転動力を発生する原動機であり、軽油と空気との混合気を燃焼させて得られる熱エネルギーを機械エネルギー(回転動力)に変換するディーゼルエンジンである。エンジン2としては、ガソリンエンジン、ガスエンジン、バイオ燃料エンジン、水素エンジンなどを用いてもよい。また、エンジン2の代わりにガスタービンなど、他の原動機を採用してもよい。エンジン2の駆動は、図示省略されたエンジン制御装置によって複数の空気弁(スロットル弁、給排気弁)の駆動及び燃料弁の駆動が制御され、筒内に対する燃料の供給量及び空気の給排気が制御されることにより制御される。
発電機3は、エンジン2から出力された回転動力を受けて駆動され、電動発電機4の駆動に必要な電力を発生する回転電機であり、永久磁石の磁束を用いて三相交流電力を発生する永久磁石界磁式三相交流同期回転電機である。発電機3としては、巻線の励磁による磁束を用いて三相交流電力を発生する巻線界磁式三相交流同期回転電機、三相交流誘導回転電機などを採用してもよい。発電機3の発電は、エンジン2から出力される回転動力が制御され、発電機3の回転数が制御されることにより制御される。また、巻線界磁式三相交流同期回転電機による発電の場合には、発電機の回転数と同時に界磁巻線に流れる界磁電流が制御されることにより制御される。
尚、発電機3は、エンジン2の始動時、エンジン2の始動用回転動力を発生させるエンジン始動用電動機として用いてもよい。
発電機3には第1電力変換装置6を介して、電源装置である蓄電装置1000が電気的に接続されている。蓄電装置1000には第2電力変換装置7を介して電動発電機4が電気的に接続されている。
第1及び第2電力変換装置6,7は、発電機3と蓄電装置1000と電動発電機4との間の電力の授受を制御する制御装置であり、複数のスイッチング半導体素子(例えばMOSFET:金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ,IGBT:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)から構成された電力変換回路を備えている。第1電力変換装置6の電力変換回路は、二つ(上アーム及び下アーム)のスイッチング半導体素子を電気的に直列に接続した直列回路(一相分のアーム)を三相分、電気的に並列に接続した三相ブリッジ回路により構成されており、六つのスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)が制御されることによって、発電機3と蓄電装置1000との間の電力を変換する。また、第2電力変換装置7の電力変換回路も第1電力変換装置6と同様に構成されており、六つのスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)が制御されることによって、蓄電装置1000と電動発電機4との間の電力を変換する。
各上アームの下アーム接続側とは反対側は蓄電装置1000の直流正極側に、各下アームの上アーム接続側とは反対側は蓄電装置1000の直流負極側にそれぞれ電気的に接続されている。第1電力変換装置6の電力変換回路における各アームの中点、すなわち上アームと下アームとの接続側は発電機3に電気的に接続されている。第2電力変換装置7の電力変換回路における各アームの中点、すなわち上アームと下アームとの接続側は電動発電機4に電気的に接続されている。
各電力変換回路の直流正極側と直流負極側との間には平滑コンデンサが電気的に並列に接続されている。平滑コンデンサは、電力変換回路を構成するスイッチング半導体素子の高速スイッチング(オン・オフ)動作及び変換回路に寄生するインダクタンスにより生じる電圧変動を抑制するために設けられている。平滑コンデンサには電解コンデンサ或いはフィルムコンデンサを用いている。
発電機3と蓄電装置1000との間に電気的に設けられた第1電力変換装置6は、発電機3の発電時には、発電機4から出力された三相交流電力を直流電力に変換する交流−直流変換回路(整流回路)として機能し、発電機3をエンジン始動用電動機として作動させる時には、蓄電装置1000から出力された直流電力を三相交流電力に変換する直流−交流変換回路(インバータ)として機能する。第1電力変換装置6の直流側には、蓄電装置1000のモジュール電池の正負極端子が電気的に接続されている。第1電力変換装置6の電力変換回路を構成する三つの直列回路の中間(2つのスイッチング半導体素子の間)には、一つの直列回路の中間に発電機3の電機子巻線の一つの相の巻線が電気的に接続されるように、発電機3の電機子巻線が電気的に接続されている。
電動発電機4と蓄電装置1000との間に電気的に設けられた第2電力変換装置7は、電動発電機4を電動機として作動させる時には、蓄電装置1000から出力された直流電力を三相交流電力に変換する直流−交流変換回路として機能し、回生制動の際に電動発電機4を発電機として作動させる時には、電動発電機4から出力された三相交流電力を直流電力に変換する交流−直流変換回路として機能する。第2電力変換装置7の直流側には、蓄電装置1000のモジュール電池の正負極端子が電気的に接続されている。第2電力変換装置7の電力変換回路を構成する三つの直列回路の中間(2つのスイッチング半導体素子の間)には、一つの直列回路の中間に電動発電機4の電機子巻線の一つの相の巻線が電気的に接続されるように、電動発電機4の電機子巻線が電気的に接続されている。
尚、ここでは、第1及び第2電力変換装置6,7を別々のユニットとして構成した場合を例に挙げて説明したが、1つのユニットとして構成してもよい。
電動発電機4は、駆動輪5を駆動するための原動機であり、電機子(固定子)と、電機子に対向配置され、回転可能に保持された界磁(回転子)とを備え、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、永久磁石の磁束との磁気的な作用に基づいて、駆動輪5の駆動に必要な回転動力を発生する永久磁石界磁式三相交流同期回転電機である。
電機子は、電動発電機4を電動機として駆動する時には、第2電力変換装置7によって制御された三相交流電力の供給を受けて回転磁界を発生させ、電動発電機4を発電機として駆動する時には、磁束の鎖交により三相交流電力を発生させる部位であり、磁性体である電機子鉄心(固定子鉄心)と、電機子鉄心に装着された三相の電機子巻線(固定子巻線)とを備えている。界磁は、電動発電機4を電動機或いは発電機として駆動する時、界磁磁束を発生させる部位であり、磁性体である界磁鉄心(回転子鉄心)と、界磁鉄心に装着された永久磁石とを備えている。
電動発電機4としては、電機子巻線に供給された三相交流電力により形成されて同期速度で回転する回転磁界と、巻線の励磁による磁束との磁気的な作用に基づいて、回転動力を発生する巻線界磁式三相交流同期回転電機、或いは三相交流誘導回転電機などを採用してもよい。巻線界磁式三相交流同期回転電機の場合、電機子の構成は永久磁石界磁式三相交流同期回転電機と基本的に同じである。一方、界磁の構成は異なっており、磁性体である界磁鉄心に界磁巻線(回転子巻線)を巻く構成になっている。尚、巻線界磁式三相交流同期回転電機では、界磁巻線が巻かれた界磁鉄心に永久磁石を装着し、巻線による磁束の漏れを抑える場合もある。界磁巻線は外部電源から界磁電流の供給を受けて励磁されることにより磁束を発生する。
電動発電機4には変速機8,デファレンシャルギア9を介して駆動輪5の車軸10が機械的に接続されている。変速機8は、電動発電機4から出力された回転動力を変速してデファレンシャルギア9に伝達する。デファレンシャルギア9は、変速機8から出力された回転動力を左右の車軸10に伝達する。電動発電機4及び変速機8は一体のユニットで構成されていてもよい。変速機8とデファレンシャルギア9との間はプロペラシャフトにより機械的に接続されている。
蓄電装置1000は、電動発電機4が回生時に発生した電力及び発電機3が発生した電力を電動発電機4の駆動用電力として充電し、電動発電機4の駆動時、この駆動に必要な電力を放電する駆動用車載電源であり、高電圧、例えば600v以上の定格電圧を有するように、数百本のリチウムイオン電池により構成されたバッテリシステムである。
尚、蓄電装置1000の詳細な構成については後述する。
蓄電装置1000には、電動発電機4および発電機3の他に、車載補機(たとえばパワーステアリング装置,エアーブレーキ)に動力を供給する電動アクチュエータ、蓄電装置1000よりも定格電圧が低く、車内電装品(たとえばライト,オーディオ、車載電子制御装置)に駆動電力を供給する電装用電源である低圧バッテリなどがDC/DCコンバータを介して電気的に接続されている。DC/DCコンバータは、蓄電装置1000の出力電圧を降圧して電動アクチュエータや低圧バッテリなどに供給したり、低圧バッテリの出力電圧を昇圧して蓄電装置1000などに供給したりする昇降圧装置であり、蓄電装置1000と同じ筐体内に収納されている場合もある。低圧バッテリには定格電圧24vの鉛バッテリを用いている。低圧バッテリとしては、同じ定格電圧を有するリチウムイオンバッテリ或いはニッケル水素バッテリを用いてもよい。
電動発電機4,第1及び第2電力変換装置6,7,発電機3,エンジン2及び変速機8は、車両の床下のデファレンシャルギア9の近傍に配置されている。蓄電装置1000は、ノンステップ式或いは低床式のハイブリッドバス、ハイブリッド電車の場合には、車両の屋根に設けられた収納部に配置される。この場合、収納部は、屋根から上方に突起するように形成される。また、蓄電装置1000は、ステップ付きの高床式のハイブリッドバス、ハイブリッドトラックの場合には、車両の床下かつ第1及び第2電力変換装置6,7の近傍に配置される。第1及び第2電力変換装置6,7の近傍に蓄電装置1000を設けることにより、第1及び第2電力変換装置6,7と蓄電装置1000との間の電気配線長を短くでき、インダクタンスを低減できる。
ハイブリッド自動車1の力行時(発進、加速、通常走行など)、モータ制御装置11に正のトルク指令が与えられて第2電力変換装置7の作動が制御されると、蓄電装置1000に蓄電された直流電力は第2電力変換装置7により三相交流電力に変換されて電動発電機4に供給される。これにより、電動発電機4が駆動されて回転動力が発生する。発生した回転動力は変速機8及びデファレンシャルギア9を介して車軸10に伝達され、駆動輪5を駆動する。この駆動により、蓄電装置1000の蓄電量が減少した場合にはエンジン2の作動によって発電機3を駆動し、三相交流電力を発生させる。発生した三相交流電力は第1電力変換装置6によって直流電力に変換され、蓄電装置1000に充電される。
ハイブリッド自動車1の回生時(減速、制動など)、モータ制御装置11に負のトルク指令が与えられて第2電力変換装置7の作動が制御されると、駆動輪5の回転動力により駆動される電動発電機2から発生した三相交流電力は直流電力に変換されて蓄電装置1000に供給される。これにより、変換された直流電力は蓄電装置1000に充電される。
モータ制御装置11は、上位制御装置から出力されたトルク指令値から電流指令値を演算すると共に、電流指令値と、電動発電機3と第2電力変換装置7との間を流れる実電流との差分に基づいて電圧指令値を演算し、この演算された電圧指令値に基づいてPWM(パルス幅変調)信号を発生させ、そのPWM信号を第1及び第2電力変換装置6,7に出力する。
<蓄電装置1000の全体構成>
次に、図2を用いて、蓄電装置1000の全体構成について説明する。
蓄電装置1000は、前述したように、電動発電機4を駆動するための車載電源であり、第2電力変換装置7を介して電動発電機4(電機子12)に電気的に接続され、第2電力変換装置7によって充放電が制御される。蓄電装置1000は、大別すると、統括バッテリ制御装置(上位バッテリ制御装置)100、4個のモジュール電池セット200,300,400,500の直並列接続体から構成された電池モジュール部、及び電池モジュール部と正負極端子600.610との間の電気的な接続を制御するための第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部から構成されている。符号13は複数の永久磁石を備えた界磁を示す。
第2電力変換装置7は、前述した電力変換(直流電力を三相交流電力に変換或いは三相交流電力を直流電力に変換)をスイッチング半導体素子の作動(オン・オフ)によって制御する電子機器であり、パワーモジュール14と、ドライバー装置15とを備えている。
パワーモジュール14は、前述した電力変換回路を構成する部位であり、蓄電装置1000の筐体に設けられた正負極端子600.610に第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部を介して直流正負極側が電気的に接続され、ドライバー装置15から出力された6アーム分(6つのスイッチング半導体素子分)の駆動信号によりスイッチング(オン・オフ)動作し、電池モジュール部から出力された直流電力を三相交流電力に変換して電動発電機4に出力する、或いは電動発電機4から出力された三相交流電力を直流電力に変換して蓄電装置1000に出力する。
ドライバー装置15は、モータ制御装置11から出力された指令信号(PWM信号)に基づいて、パワーモジュール14を作動させるための駆動信号を生成し、この生成された駆動信号を六つのスイッチング半導体素子のゲート電極に出力する。六つのスイッチング半導体素子は、ドライバー装置15から出力された駆動信号に基づいてオン・オフする。
電池モジュール部は、4個のモジュール電池セット200,300,400,500が電気的に直並列に接続されて構成された蓄電部であり、第1電池モジュールブロックと第2電池モジュールブロックとを備えている。第1電池モジュールブロックは、2個のモジュール電池セット200,300が電気的に直列に接続されて構成されている。第2電池モジュールブロックも同様に、2個のモジュール電池セット400,500が電気的に直列に接続されて構成されている。第1電池モジュールブロックと第2電池モジュールブロックの両者は電気的に並列に接続されている。
第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部は、第1電池モジュールブロックの正極側と正極端子600との設けられてそれらに電気的に接続された第1正極側メインコンタクタ800、第1電池モジュールブロックの負極側と負極端子610との設けられてそれらに電気的に接続された第1負極側メインコンタクタ810、第2電池モジュールブロックの正極側と正極端子600との設けられてそれらに電気的に接続された第2正極側メインコンタクタ801、及び第2電池モジュールブロックの負極側と負極端子610との設けられてそれらに電気的に接続された第2負極側メインコンタクタ811を備えている。それらのコンタクタの開閉は、上位制御装置から出力された開閉指令信号に基づいて統括バッテリ制御装置100が制御する。
モジュール電池セット200は、単位電池モジュール210、及び単位電池モジュール210の状態を管理及び制御するためのモジュール電池セット制御装置を備えている。
尚、モジュール電池セット300,400,500はモジュール電池セット200と同じ構成である。これ以降のモジュール電池セットの個々の構成の説明においては、代表して、モジュール電池セット200の構成についてのみ説明する。このため、モジュール電池セット300,400,500のモジュール電池セット200と同じ構成には、モジュール電池セット200に付した3桁或いは4桁の符号のうち、下2桁或いは下3桁を同じ符号としている。先頭の桁の符号は、どのモジュール電池セットかを示す識別符号になっている。
単位電池モジュール210は二つの単位電池ブロック(或いは単位電池パック)、すなわち高電位側単位電池ブロック211及び低電位側単位電池ブロック212を電気的に直列に接続したものから構成されている。各単位電池ブロックには組電池が収納されている。各組電池は、複数のリチウム単電池(リチウムセル)を電気的に直列に接続したものから構成されている。
モジュール電池セット制御装置は、統括バッテリ制御装置100に対して下位に相当する下位バッテリ制御装置220、及び下位バッテリ制御装置220に対して下位に相当するセル制御装置230から構成されている。
下位バッテリ制御装置220は、単位電池モジュール210の状態を管理及び制御すると共に、統括バッテリ制御装置100に単位電池モジュール210の状態などを通知するためのものである。単位電池モジュール210の状態の管理及び制御には、単位電池モジュール210の総電圧、総電流、温度などの計測、単位電池モジュール210の蓄電状態(SOC)、劣化状態(SOH)などの演算、セル制御装置230に対する指令の出力などがある。
単位電池モジュール210の充放電電流は、高電位側単位電池ブロック211と低電位側単位電池ブロック212との間に電気的に直列に接続された電流センサ250からの出力信号に基づいて下位バッテリ制御装置220が検出する。単位電池モジュール210の総電圧は、単位電池モジュール210の正負極間に電気的に並列に接続された電圧センサ260の出力信号に基づいて下位バッテリ制御装置220が検出する。単位電池モジュール210の温度は、高電位側単位電池ブロック211及び低電位側単位電池ブロック212のそれぞれに設けられた複数の温度センサ270の出力信号に基づいて下位バッテリ制御装置220が検出する。各下位バッテリコントローラによって検出された総電圧、充放電電流、温度は統括バッテリ制御装置100に情報伝達される。
セル制御装置230は、下位バッテリ制御装置220からの指令によって複数のリチウム単電池の状態を管理及び制御するためのものであり、複数の集積回路(IC)によって構成されている。複数のリチウム単電池の状態の管理及び制御には、各リチウム単電池の電圧の計測、各リチウム単電池の蓄電量の調整などがある。各集積回路は、対応する複数のリチウム単電池が決められており、対応する複数のリチウム単電池に対して状態の管理及び制御を行う。
下位バッテリ制御装置220の電源には、車載補機、例えばライトやオーディオ機器などの電源として搭載された補機用バッテリ(大型の自動車の場合、公称出力電圧12vのバッテリを2個直列に接続した24vのバッテリ)を用いている。このため、下位バッテリ制御装置220には補機用バッテリからの電圧(例えば24v)が印加されている。下位バッテリ制御装置220は、印加された電圧をDC/DCコンバータ(直流−直流電力変換器)から構成された電源回路によって降圧(例えば5vに降圧)し、この降圧された電圧を、下位バッテリ制御装置220を構成する電子部品に駆動電圧として印加する。これにより、下位バッテリ制御装置220を構成する電子部品は作動する。
セル制御装置230を構成する集積回路の電源には、対応する複数のリチウム単電池を用いている。このため、セル制御装置230と単位電池モジュール210の両者は接続線(電圧検出線ともいい、図示省略)を介して電気的に接続されている。各集積回路には、対応する複数のリチウム単電池の最高電位の電圧が接続線を介して印加されている。各集積回路は、印加された電圧を電源回路によって降圧(例えば5vに降圧)し、これを動作電源として用いる。
統括バッテリ制御装置100は、電池モジュール部を構成する4個のモジュール電池セット200,300,400,500のそれぞれと並列に通信を実施して4個のモジュール電池セット200,300,400,500のそれぞれの充電状態や動作状態などを監視すると共に、4個のモジュール電池セット200,300,400,500のそれぞれの充電状態の調整や異常検出などを行う電子回路装置であり、マイクロコンピュータを含む複数の電子回路部品が回路基板に実装されることにより構成されている。また、統括バッテリ制御装置100は、上位制御装置からの指令信号に基づいて第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部の開閉を制御する。さらに、統括バッテリ制御装置100は、上位制御装置と通信を実施し、電池モジュール部から供給できる或いは電池モジュール部で受け入れられる許容充放電電力或いは許容充放電電流の情報や異常検知結果、電池モジュール部の充電状態の情報などを上位制御装置に出力すると共に、イグニションキースイッチの作動に基づく起動信号や第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部を開閉するための指令信号などを入力する。上位制御装置は、モータ制御装置11、さらにはその上位の車両制御装置などを示す。
また、統括バッテリ制御装置100はリーク検出器110を備えている。リーク検出器110は第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部とパワーモジュール14との間に設けられ、電池モジュール部と車体アースとの間におけるリークの有無を検出するための電気回路であり、直流正負極と車体アースとの間に半導体スイッチを介して電気的に接続された抵抗分圧回路を備えている。統括バッテリ制御装置100は、半導体スイッチを制御して抵抗分圧回路を直流正負極と車体アースとの間に電気的に接続すると共に、その接続によって抵抗分圧回路から得られる電圧情報を読み込み、電池モジュール部と車体アースとの間におけるリークの有無を判断する。リークが有る場合、統括バッテリ制御装置100は、その旨を上位制御装置に通知すると共に、運転席の警告灯の点灯や音声通知によって運転者に警告を発する。これにより、必要な安全措置を講じた状態で車両を安全に駆動させることができるとともに、サービスセンタにおける早期点検・修理を運転者に促すことができる。
さらに、統括バッテリ制御装置100は、電池モジュール部の正極側に電気的に直列に接続された電流センサ120の出力信号、及び電池モジュール部の正負極間に電気的に並列に接続された電圧センサ130の出力信号に基づいて、電池モジュール部全体の電圧及び電流を検出する。
統括バッテリ制御装置100には、前述したように、イグニションキースイッチから出力された信号が入力されている。イグニションキースイッチから出力された信号は蓄電装置1000の起動及び停止の合図になる。
イグニションキースイッチがオンになると、統括バッテリ制御装置100では、イグニションキースイッチからの出力信号に基づいて電源回路が動作し、複数の電子回路部品に対して電源回路から駆動電圧が印加される。これにより、複数の電子回路部品が動作し、統括バッテリ制御装置100が起動する。統括バッテリ制御装置100が起動すると、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520に対してパラレルに統括バッテリ制御装置100から起動信号が出力される。各下位バッテリ制御装置220、320,420,520では、起動信号に基づいて電源回路が動作し、複数の電子回路部品に対して電源回路から駆動電圧が印加される。これにより、複数の電子回路部品が動作し、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520が起動する。
各下位バッテリ制御装置220、320,420,520が起動すると、対応するセル制御装置230、330,430,530に対して下位バッテリ制御装置220、320,420,520から起動信号が出力される。セル制御装置230、330,430,530では、起動指令に基づいて複数の集積回路の電源回路が順次動作する。これにより、複数の集積回路が順次起動し、セル制御装置230、330,430,530が起動する。セル制御装置230、330,430,530の起動後、各モジュール電池セット200,300,400,500では、所定の初期処理が実行され、蓄電装置1000の起動が完了する。上位制御装置への完了報告は統括バッテリ制御装置100から出力される。
所定の初期処理としては、例えば各リチウム単電池の電圧の測定、異常診断、単位電池モジュール210、310,410,510全体の電圧、電流、温度の測定、単位電池モジュール210、310,410,510の蓄電状態、劣化状態の演算などがある。
イグニションキースイッチがオフになると、統括バッテリ制御装置100から各下位バッテリ制御装置220、320,420,520に対してパラレルに停止信号が出力される。各下位バッテリ制御装置220、320,420,520は、停止信号を受けると、対応するセル制御装置230、330,430,530に対して停止信号を出力する。これにより、各モジュール電池セット200,300,400,500では、所定の終了処理が実行される。所定の終了処理が終了すると、まず、セル制御装置230、330,430,530の各集積回路の電源回路がオフする。これにより、セル制御装置230、330,430,530が停止する。対応するセル制御装置230、330,430,530が停止し、セル制御装置230、330,430,530との間において通信ができなくなると、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520の電源回路の動作が停止し、複数の電子回路部品の動作が停止する。これにより、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520が停止する。各下位バッテリ制御装置220、320,420,520が停止し、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520との間において通信ができなくなると、統括バッテリ制御装置100の電源回路の動作が停止し、複数の電子回路部品の動作が停止する。これにより、統括バッテリ制御装置100が停止し、蓄電装置1000が停止する。
所定の終了処理としては、例えば各リチウム単電池の電圧の測定、各リチウム単電池の蓄電量の調整などがある。
統括バッテリ制御装置100とモータ制御装置11などの上位制御装置との間の情報伝達、及び統括バッテリ制御装置100と各下位バッテリ制御装置220、320,420,520との間の情報伝達には、車載ローカルエリアネットワークによる通信を用いている。下位バッテリ制御装置220、320,420,520と、対応するセル制御装置230、330,430,530との間の情報伝達にはLIN通信を用いている。
第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部による電気的な導通及び遮断は、モータ制御装置11から出力された指令信号を受けて統括バッテリ制御装置100が制御する。モータ制御装置11は、車載電機システムの起動時には、蓄電装置1000の起動完了の通知を統括バッテリ制御装置100から受けることにより、統括バッテリ制御装置100に対して第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部の導通の指令信号を出力する。統括バッテリ制御装置100は指令信号に基づいて第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部の動作電源に対して駆動信号を出力し、第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部が導通するように制御する。また、モータ制御装置11は、車載電機システムの停止時及び車載電機システムの異常時には、イグニションキースイッチからオフの出力信号或いは異常信号を受けることにより、統括バッテリ制御装置100に対して第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部の遮断の指令信号を出力する。統括バッテリ制御装置100は指令信号に基づいて第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部の動作電源に対して駆動信号出力し、第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部が導通するように制御する。第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部に対して遮断の指令信号を出力し、第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811部が遮断するように制御する。
車載電機システムの起動時にあたっては、まず、第1及び第2負極側メインコンタクタ810、811が投入される。次に、正極側メインコンタクタ800、801が投入される。これにより、電池モジュール部から正極側メインコンタクタ800、801を介してパワーモジュール14に主電流が供給される。
尚、統括バッテリ制御装置100、下位バッテリ制御装置220、320,420,520、セル制御装置230、330,430,530の各制御装置で扱う情報をまとめておくことにする。
セル制御装置230、330,430,530は、各リチウム単電池の電圧を検出し、この検出された電圧を、対応する下位バッテリ制御装置220、320,420,520に情報伝達する。また、セル制御装置230、330,430,530は、リチウム単電池或いは自己の内部回路に異常がある時には、異常フラグ及び異常内容を、対応する下位バッテリ制御装置220、320,420,520に情報伝達する。
下位バッテリ制御装置220、320,420,520は、対応するセル制御装置230、330,430,530から情報伝達された各リチウム単電池の電圧、電圧センサ260、360,460,560から伝達された電圧検出値、電流センサ250、350,450,550から伝達された電流検出値、単位電池モジュール210、310,410,510の内部に設けられた複数の温度センサ270,370,470,570(例えばサーミスタ)から伝達された温度検出値を入力情報とすると共に、予め記憶されているリチウム単電池の初期情報及び入力情報に基づいて、対応する単位電池モジュール210、310,410,510の蓄電量(SOC)、劣化状態(SOH)、充放電許容電流、総電圧、充放電電流、温度の最大最小値、セル電圧の最大最小値を演算或いは検出し、それらを統括バッテリ制御装置100に情報伝達する。
統括バッテリ制御装置100は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された蓄電量(SOC)、劣化状態(SOH)、充放電許容電流、総電圧、充放電電流、温度の最大最小値、セル電圧の最大最小値を入力情報とすると共に、入力情報に基づいて、電池モジュール部の蓄電量(SOC)、充放電電流抑制率或いは許容充放電電力若しくは許容充放電電流、温度、リチウム単電池電圧、劣化状態(SOH)を演算し、それらを上位制御装置に情報伝達する。
ここで、電池モジュール部の蓄電量(SOC)は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された各単位電池モジュール210、310,410,510の蓄電量(SOC)の平均値である。電池モジュール部の充放電電流抑制率或いは許容充放電電力若しくは許容充放電電流は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された充放電許容電流、セル電圧の最大最小値、演算された電池モジュール部の蓄電量(SOC)などの情報に基づいて演算される。電池モジュール部の温度は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された各単位電池モジュール210、310,410,510の最高値及び最低値である。電池モジュール部のセル電圧は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された各単位電池モジュール210、310,410,510のセル電圧のうちの最高値及び最低値である。電池モジュール部の劣化状態(SOH)は、各下位バッテリ制御装置220、320,420,520から情報伝達された各単位電池モジュール210、310,410,510の劣化状態(SOH)のうちの最高値及び最低値である。
また、統括バッテリ制御装置100は、モジュール電池セット300〜500のいずれかのセンサに異常が生じ場合、直ちに蓄電装置1000を停止させることなく、異常なモジュール電池セットのセンサの情報として、その異常なモジュール電池セットと電気的に相関関係にある他の健全なモジュール電池セットのセンサの情報を代用して、前述した制御を継続し、電源としての機能が直ちに損なわれないようにしている。この詳細な制御方法については、蓄電装置1000のハード的構成を説明した後に説明することとする。
<モジュール電池セット制御装置の構成>
次に、図3を用いて、モジュール電池セット制御装置について説明する。
モジュール電池セット制御装置のうち、下位バッテリ制御装置220は、マイクロコンピュータ221(以下、「マイコン221」と略称する)を含む複数の電子回路部品により構成されている。それらの電子回路部品は回路基板222に実装され、対応する単位電池モジュール210とは別体の筐体に収納されている。下位バッテリ制御装置220を収納した筐体は、制御用電子回路として、対応する単位電池モジュール210の近傍に配置されている。
セル制御装置230は、リチウム単電池213に電気的に接続された24個の集積回路(IC)231A〜231Xを含む複数の電子回路部品により構成されている。それらの電子回路部品は、高電位側単位電池ブロック211及び低電位側単位電池ブロック212に応じて、対応する回路基板232,233に分けられて実装されている。回路基板232,233は、対応する高電位側単位電池ブロック211及び低電位側単位電池ブロック212の筐体に収納されていると共に、筐体の長手方向一方側端部に配置されている。
また、セル制御装置230は複数の抵抗234及び複数のフォトカプラ240などの複数の回路素子を備えている。抵抗234は、リチウム単電池213の充電量を調整する際に用いられ、リチウム単電池213から放出された電流を熱に変換して消費する消費用回路素子であり、各集積回路231A〜231Xに対して四つ(R1〜R4)ずつ設けられている。フォトカプラ240は、集積回路231A〜231Xのうちの最始端にあたる集積回路231Aとマイコン221との間、及び集積回路231A〜231Xのうちの最終端にあたる集積回路231Xとマイコン221との間の信号伝送路に設けられたインターフェース回路素子であり、集積回路231A,231Xとマイコン221との間において、電位レベルの異なる信号を送受信するための光学的絶縁素子である。
複数のリチウム単電池213は各集積回路231A〜231Xに対応させて複数のグループに割り振られている。本実施例では、高電位側単位電池ブロック211の組電池を構成する48本のリチウム単電池213と、及び低電位側単位電池ブロック212の組電池を構成する48本のリチウム単電池213とを合わせた96本のリチウム単電池213を24グループに割り振っている。具体的には、電気的に直列に接続された96本のリチウム単電池213をその接続順にしたがって電位的に上位から順番に4つずつに区切り、24グループを構成している。すなわち電位的に1番目のリチウム単電池213から電位的に4番目のリチウム単電池213までの電気的に直列に接続されたリチウム単電池群を第1グループ、電位的に5番目のリチウム単電池213から電位的に8番目のリチウム単電池213までの電気的に直列に接続されたリチウム単電池群を第2グループ、・・・、電位的に89番目のリチウム単電池213から電位的に92番目のリチウム単電池213までの電気的に直列に接続されたリチウム単電池群を第23グループ、電位的に93番目のリチウム単電池213から電位的に96番目のリチウム単電池213までの電気的に直列に接続されたリチウム単電池群を第24グループというように、96本のリチウム単電池213をグループ分けしている。
尚、本実施例では、各電池ブロック毎に複数のリチウム単電池213を12グループに分けた場合を例に挙げて説明するが、グループの分け方としては、96本のリチウム単電池213を6本ずつ、16グループに分けてもよい。
集積回路231Aには、接続線235及び基板配線236を介して、第1グループを構成する4つのリチウム単電池213(BC1〜BC4)のそれぞれの正極側及び負極側が電気的に接続されている。これにより、集積回路231Aには、接続線235及び基板配線236を介して、第1グループを構成する4つのリチウム単電池213のそれぞれの端子電圧に基づくアナログ信号が取り込まれる。集積回路231Aは、アナログデジタル変換器を備えており、取り込まれたアナログ信号を順次、デジタル信号に変換し、第1グループを構成する4つのリチウム単電池213の端子電圧を検出する。集積回路231B〜231Xも集積回路231Aの場合と同様に、接続線235及び基板配線236を介して、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213のそれぞれの正極側及び負極側に電気的に接続され、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213のそれぞれの端子電圧を取り込んで検出する。
第1グループを構成する4つのリチウム単電池213のそれぞれの正極側と負極側との間(端子間)には、抵抗234(R1〜R4)と、集積回路231Aに内蔵されたスイッチング半導体素子とを電気的に直列に接続したバイパス直列回路が、接続線235及び基板配線236を介して、電気的に並列に接続されている。他のグループも、第1グループの場合と同様に、リチウム単電池213の正極側と負極側との間にバイパス直列回路が電気的に並列に接続されている。
集積回路231Aは、下位バッテリ制御装置220から出力された充電状態調整指令に基づいて、スイッチング半導体素子を所定時間、個別に導通させ、第1グループを構成する4つのリチウム単電池213の正極側と負極側との間にバイパス直列回路を個別に電気的に並列に接続させる。これにより、バイパス直列回路が電気的に並列に接続されたリチウム単電池213は放電し、充電状態SOC(State Of Charge)が調整される。集積回路231B〜231Xも集積回路231Aの場合と同様に、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213に電気的に並列に接続されたバイパス直列回路のスイッチング半導体素子の導通を個別に制御して、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213の充電状態SOCを個別に調整する。
以上のように、集積回路231A〜231Xによって、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213に電気的に並列に接続されたバイパス直列回路のスイッチング半導体素子の導通を個別に制御し、各グループを構成する4つのリチウム単電池213の充電状態SOCを個別に調整すれば、全グループのリチウム単電池213の充電状態SOCを均一にでき、リチウム単電池213の過充電などを抑制できる。
集積回路231A〜231Xは、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213の異常状態を検出する。異常状態には過充電及び過放電がある。過充電及び過放電は、各集積回路231A〜231Xにおいて、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213の端子電圧の検出値と、過充電閾値及び過放電閾値のそれぞれとを比較することにより検出する。過充電は端子電圧の検出値が過充電閾値を越えた場合に、過放電は端子電圧の検出値が過放電閾値を下回った場合にそれぞれ判断される。また、集積回路231A〜231Xは、自己の内部回路の異常、例えば充電状態の調整に用いられるスイッチング半導体素子の異常、温度異常などを自己診断する。
このように、集積回路231A〜231Xはいずれも同じ機能、すなわち対応するグループの4つのリチウム単電池213(BC1〜BC4)の端子電圧検出、充電状態の調整、異常状態の検出、及び自己の内部回路の異常診断を実行するように、同じ内部回路により構成されている。
集積回路231A〜231Xのそれぞれの一辺側には、単位電池モジュール210側と電気的に接続される複数の端子が設けられている。複数の端子としては、電源端子(Vcc)、電圧端子(V1〜V4,GND)、及びバイパス端子(B1〜B4)を備えている。電圧端子(V1〜V4,GND)には、接続線235に電気的に接続される基板配線236が電気的に接続されている。バイパス端子(B1〜B4)には抵抗234のスイッチング半導体素子側が基板配線236を介して電気的に接続されている。抵抗234のスイッチング半導体素子側とは反対側は、基板配線236を介して電圧端子に電気的に接続された基板配線236に電気的に接続されている。電源端子(Vcc)には、電圧端子V1(最も高電位側のリチウム単電池213の正極側に電気的に接続される電圧端子)に電気的に接続された基板配線236に電気的に接続されている。
電圧端子(V1〜V4,GND)及びバイパス端子(B1〜B4)の両者は、電気的に接続されるリチウム単電池213の電位的の順にしたがって交互に配置されている。これにより、集積回路231A〜231Xのそれぞれと接続線235との電気的な接続回路を簡単に構成できる。
電圧端子GNDには、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213のうちの最低電位のリチウム単電池BC4の負極側に電気的に接続されている。これにより、各集積回路231A〜231Xは、対応するグループの最低電位を基準電位として動作する。このように、各集積回路231A〜231Xの基準電位が異なっていれば、単位電池モジュール210から各集積回路231A〜231Xに印加される電圧の差を小さくすることができるので、集積回路231A〜231Xの耐圧をより小さくできると共に、安全性や信頼性をより向上させることができる。
電源端子Vccには、応するグループを構成する4つのリチウム単電池213のうちの最高電位のリチウム単電池BC1の正極側に電気的に接続されている。これにより、各集積回路231A〜231Xは、対応するグループの最高電位の電圧から、内部回路を動作させるための電圧(例えば5v)を発生させている。このように、各集積回路231A〜231Xの内部回路の動作電圧を、対応するグループの最高電位の電圧から発生させるようになっていれば、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213から消費される電力を均等にでき、対応するグループを構成する4つのリチウム単電池213の充電状態SOCが不均衡になることを抑制できる。
集積回路231A〜231Xのそれぞれの他辺側(電圧系端子が設けられた一辺側に対向する辺側)には通信系の複数の端子が設けられている。複数の端子としては、通信コマンド信号を送受信するための通信コマンド信号用送受信端子(TX,RX)、及び異常信号や異常テスト信号を送受信するための異常信号用送受信端子(FFO,FFI)を備えている。
集積回路231A〜231Xの通信コマンド信号用送受信端子(TX,RX)は、対応するグループの電位の順にしたがって非絶縁状態で電気的に直列に接続されている。すなわち集積回路231A(上位電位の集積回路)の通信コマンド信号用送信端子(TX)と、集積回路231B(下位電位の集積回路であって、上位電位の集積回路に対して電位的に次の電位の集積回路)の通信コマンド信号用受信端子(RX)とを非絶縁状態で電気的に直列に接続し、集積回路231Bの通信コマンド信号用送信端子(TX)と、集積回路231Cの通信コマンド信号用受信端子(RX)とを非絶縁状態で電気的に直列に接続し、・・・、集積回路231dの通信コマンド信号用送信端子(TX)と、集積回路231Xの通信コマンド信号用受信端子(RX)とを非絶縁状態で電気的に直列に接続する、というように、通信コマンド信号用送信端子(TX)と通信コマンド信号用受信端子(RX)とを非絶縁状態で電気的に直列に接続している。このような接続方式を本実施例ではディジーチェーン接続方式と呼ぶ。
集積回路231A〜231Xの異常信号用送受信端子(FFO,FFI)も通信コマンド信号用送受信端子(TX,RX)と同様の接続関係にあり、対応するグループの電位の順にしたがって非絶縁状態で電気的に直列に接続されている。すなわち上位電位の集積回路の異常信号用送信端子(FFO)と、上位電位の集積回路に対して電位的に次の電位となる下位電位の集積回路の異常信号用受信端子(FFI)とを非絶縁状態で電気的に直列に接続している。
複数のリチウム単電池213の最高電位のグループに対応する集積回路231Aの通信コマンド信号用受信端子(RX)にはフォトカプラ240a(PH1)の受光側が電気的に接続されている。フォトカプラ240aの発光側にはマイコン221の通信コマンド信号用送信端子(TX)が電気的に接続されている。また、複数のリチウム単電池213の最低電位のグループに対応する集積回路231Xの通信コマンド信号用送信端子(TX)にはフォトカプラ240c(PH3)の発光側が電気的に接続されている。フォトカプラ240cの受光側にはマイコン221の通信コマンド信号用受信端子(RX)が電気的に接続されている。それらの接続により、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間には、それらの間において電気的に絶縁されると共に、マイコン221からフォトカプラ240a→集積回路231A→・・・→集積回路231X→フォトカプラ240cを順番に経由してマイコン221に至る通信コマンド信号用ループ伝送路237が形成される。そのループ伝送路237はシリアル伝送路である。
通信コマンド信号用ループ伝送路237には、マイコン221から出力された通信コマンド信号が伝送される。通信コマンド信号は、通信(制御)内容を示すデータ領域など、複数の領域が設けられた複数バイトの信号であり、上述の伝送順にしたがってループ状に伝送される。
マイコン221から集積回路231A〜231Xに通信コマンド信号用ループ伝送路237を介して出力される通信コマンド信号には、リチウム単電池213の検出された端子電圧を要求するための要求信号、リチウム単電池213の充電状態を調整させるための指令信号、各集積回路231A〜231Xをスリープ状態からウエイクアップ状態、すなわち起動させるための起動信号、各集積回路231A〜231Xをウエイクアップ状態からスリープ状態、すなわち動作を停止させるための停止信号、各集積回路231A〜231Xの通信用のアドレスを設定するためのアドレス設定信号、各集積回路231A〜231Xの異常状態を確認するための異常確認信号などが含まれている。
尚、本実施例では、通信コマンド信号を集積回路231Aから集積回路231Xに向かって伝送する場合を例に挙げて説明するが、集積回路231Xから集積回路231Aに向って伝送するようにしても構わない。
さらに、複数のリチウム単電池213の最高電位のグループに対応する集積回路231Aの異常信号用受信端子(FFI)にはフォトカプラ240b(PH2)の受光側が電気的に接続されている。フォトカプラ240bの発行側にはマイコン221の異常テスト信号用送信端子(FFTEST)が電気的に接続されている。また、複数のリチウム単電池213の最低電位のグループに対応する集積回路231Xの異常信号用送信端子(FFO)にはフォトカプラ240d(PH4)の発行側が電気的に接続されている。フォトカプラ240dの受光側にはマイコン221の異常信号用受信端子(FF)が電気的に接続されている。それらの接続により、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間には、それらの間において電気的に絶縁されると共に、マイコン221からフォトカプラ240a→集積回路231A→・・・→集積回路231X→フォトカプラ240cを順番に経由してマイコン221に至る異常信号用ループ伝送路238が形成される。そのループ伝送路238はシリアル伝送路である。
異常信号用ループ伝送路238には、マイコン221から出力された異常テスト信号が伝送される。異常テスト信号は、集積回路231A〜231Xの異常や通信回路の断線などの異常を検出するために伝送される1ビットのHiレベル信号であり、上述の伝送順にしたがって伝送される。もし、異常がある場合には、異常テスト信号はLowレベルの信号としてマイコン221に戻ってくる。これにより、マイコン221は集積回路231A〜231Xの異常や通信回路の断線などの異常を検出できる。また、集積回路231A〜231Xのうちのいずれかにおいて異常を検出した場合、異常信号用ループ伝送路238には、異常を検出した集積回路、例えば集積回路231Cから異常を示す信号が出力される。異常を示す信号は1ビットの信号であり、集積回路231d→・・・→集積回路231X→フォトカプラ240dを順番に経由してマイコン221に伝送される。これにより、異常を検出した集積回路からマイコン221に対して異常を速やかに通知できる。
尚、本実施例では、異常テスト信号を集積回路231Aから集積回路231Xに向かって伝送する場合を例に挙げて説明するが、集積回路231Xから集積回路231Aに向って伝送するようにしても構わない。また、本実施例では、異常を示す信号を、異常を検出した集積回路から、電位的に下位の集積回路に向かって伝送する場合を例に挙げて説明するが、異常を検出した集積回路から、電位的に上位の集積回路に向って伝送するようにしても構わない。
フォトカプラ240a〜244d(PH1〜PH4)は、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間において通信コマンド信号用ループ伝送路237及び異常信号用ループ伝送路238を電気的に絶縁すると共に、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間において送受信される信号を光に変換して伝送する。前述したように、セル制御装置230及び下位バッテリ制御装置220はその電源電位及び電源電圧が大きく異なる。このため、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間を電気的に接続して信号伝送を実施しようとすると、伝送される信号の電位変換及び電圧変換が必要となり、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間のインタフェース回路が大きくかつ高価になり、小型かつ安価な制御装置の提供ができなくなる。そこで、本実施例では、セル制御装置230と下位バッテリ制御装置220との間の通信をフォトカプラ240a〜544d(PH1〜PH4)を用いて実施し、制御装置の小型化及び低コスト化を図っている。
また、前述したように、各集積回路231A〜231X間においてもその電源電位が異なっている。しかし、本実施例では、複数のリチウム単電池213の対応するグループの電位順にしたがって集積回路231A〜231Xを電気的に直列に接続、すなわちディジーチェーン方式により接続しているので、各集積回路231A〜231X間の信号伝送を電位変換(レベルシフト)によって簡単に実施できる。各集積回路231A〜231Xは信号受信側に電位変換(レベルシフト)回路を備えている。従って、本実施例では、他回路素子よりも高価なフォトカプラを設けることなく、各集積回路231A〜231X間の信号伝送を実施できるので、小型かつ安価な制御装置を提供できる。
マイコン221は、各種信号を入力し、その入力信号から得られた入力情報に基づいて或いはその入力情報から演算された演算情報に基づいて、前述した通信コマンド信号をセル制御装置230に送信すると共に、上位制御装置(モータ制御装置11や車両制御装置)に対して信号を出力する。
マイコン221に入力される各種信号としては、各集積回路231A〜231Xから出力された各リチウム単電池213の端子電圧信号、集積回路231A〜231Xのうち、異常を検出した集積回路から出力された異常信号、単位電池モジュール210の充放電流を検出するための電流センサ250から出力された電流センサ信号、単位電池モジュール210の総電圧を検出するための電圧センサ260から出力された電圧センサ信号、単位電池モジュール210の内部に設けられ、組電池の温度を検出するための温度センサ(例えばサーミスタ素子)270から出力された温度センサ信号、イグニションキースイッチの動作に基づくオンオフ信号、及び上位制御装置(モータ制御装置11や車両制御装置)から出力された信号などがある。
マイコン221から出力される各種信号としては、前述した通信コマンド信号、単位電池モジュール210の状態情報(例えば電圧、電流、温度など)に基づいて演算された充放電可能電力、充電状態SOC、及び劣化状態SOH(State Of Health)などの情報に対応する信号、及び単位電池モジュール210の状態を情報(例えば電圧、電流、温度など)に基づいて演算された結果や異常情報から判定された異常状態情報(例えば過充電、過放電、過温度など)に対応する信号などがある。
それらの出力信号のうち、充放電可能電力、充電状態SOC、及び劣化状態SOHなどの情報に対応する信号、及び異常状態情報(例えば過充電、過放電、過温度など)に対応する信号は、上位制御装置(モータ制御装置11や車両制御装置)に対して出力される。
<蓄電装置1000のハード構成>
次に、図4〜図8を用いて、実際の蓄電装置1000の構造について説明する。
蓄電装置1000は、4つの直方体形状のモジュール電池セット200,300,400,500がケーシング(下容器910及び上蓋(図示省略)から構成された筐体)900に収容されて構成されている。ケーシング900(下容器910)は直方体形状の収納体である。モジュール電池セット200,300,400,500は、その長手方向がケーシング900の短手方向と同方向になるようにして、かつケーシング900の長手方向中央部に一定のスペースが形成されるようにして、ケーシング900の長手方向に1列に並べられている。ケーシング900の長手方向中央部のスペースを挟んでその一方側に配置されたモジュール電池セットは、第1電池モジュールブロックを構成するモジュール電池セット200,300(モジュール電池セット200が中央側)である。また、その他方側に配置されたモジュール電池セットは、第2電池モジュールブロックを構成するモジュール電池セット400,500(モジュール電池セット500が中央側)である。
ケーシング900(下容器910)の短手方向一方側端部には、モジュール電池セット200,300,400,500の冷却媒体である空気が外部から導入される吸気ダクト930が設けられている。ケーシング900(下容器910)の短手方向一方側の側壁の中央部(ケーシング900の長手方向中央部に設けられたスペースに対応する部位)には、冷却空気を吸気ダクト930に導入するための吸気孔(図示省略)が設けられている。ケーシング900(下容器910)の短手方向一方側の側壁の中央部(ケーシング900の長手方向中央部に設けられたスペースに対応する部位)、かつ吸入孔の上部には、モジュール電池セット200,300,400,500を冷却し終えた冷却空気をケーシング900(下容器910)内部から外部に導出するための排気孔920が設けられている。
ケーシング900(下容器910)の長手方向中央部のスペースには統括バッテリ制御装置100、下記バッテリ制御装置220,320,420,520、正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950、及び負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960が配置されている。下記バッテリ制御装置220,320,420,520は、ケーシング900(下容器910)の中央スペースの短手方向一方側端部に積層配置されている。具体的には下位バッテリ制御装置220,320が上下2段に積層されてモジュール電池セット200側に配置され、下位バッテリ制御装置420,520が上下2段に積層されてモジュール電池セット500側に配置されている。正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950及び負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960は、ケーシング900(下容器910)の中央スペースの短手方向他方側端部において、ケーシング900(下容器910)の長手方向に並列に配置されている。負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960と下位バッテリ制御装置420,520との間には統括バッテリ制御装置100が配置されている。このように、本実施例では、ケーシング900(下容器910)の短手方向において、正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950と下位バッテリ制御装置220,320の積層体とが列をなすように、負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960と統括バッテリ制御装置100と下位バッテリ制御装置420,520の積層体とが列をなすように、それらをケーシング900(下容器910)の中央スペースに配置している。
吸気ダクト930とモジュール電池セット200,300,400,500との間には配線ダクト940が設けられている。配線ダクト940の内部には複数の端子部が設けられている。その複数の端子は、正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950及び負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960から配線ダクト940の内部に延びた正極側強電ケーブル970及び負極側強電ケーブル980、各単位電池モジュール210,310,410,510から配線ダクト940の内部に延びた正極側及び負極側の接続ケーブル990を電気的に接続している。これにより、図2に示す電気回路が構成される。
正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950では、第1電池モジュールブロック(モジュール電池セット200,300が電気的に直列に接続されたもの)の正極側に電気的に接続された正極側強電ケーブル970が第1正極側メインコンタクタ800を介して、第2電池モジュールブロック(モジュール電池セット400,500が電気的に直列に接続されたもの)の正極側に電気的に接続された正極側強電ケーブル970が第2正極側メインコンタクタ801を介して、そだぞれ、正極端子600に電気的に接続されている。これにより、第1及び第2電池モジュールブロックの正極側が電気的に並列に接続される。
負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960では、第1電池モジュールブロック(モジュール電池セット200,300が電気的に直列に接続されたもの)の負極側に電気的に接続された負極側強電ケーブル980が第1負極側メインコンタクタ810を介して、第2電池モジュールブロック(モジュール電池セット400,500が電気的に直列に接続されたもの)の負極側に電気的に接続された負極側強電ケーブル980が第2負極側メインコンタクタ811を介して、そだぞれ、負極端子610に電気的に接続されている。これにより、第1及び第2電池モジュールブロックの負極側が電気的に並列に接続される。
ケーシング900(下容器910)の短手方向他方側の側壁の正極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス950と対応する部位には、外方向に向かって延びるように正極端子600が設けられている。ケーシング900(下容器910)の短手方向他方側の側壁の負極側第1及び第2正極側メインコンタクタ800,801、第1及び第2負極側メインコンタクタ810,811ボックス960と対応する部位には、外方向に向かって延びるように負極端子610が設けられている。正極端子600及び負極端子610は互いに同じ高さ位置において平行に配置されている。正極端子600と負極端子610との間には外部通信用のコネクタ700が設けられている。コネクタ700にはCAN用の通信ケーブルのコネクタが接続される。これにより、統括バッテリ制御装置100と、モータ制御装置11及び車両制御装置との間において情報伝達ができる。
モジュール電池セット200は、単位電池モジュール210が2つ、すなわち高電位側単位電池ブロック211と低電位側単位電池ブロック212が上下に一体化されて構成されている。本実施例では、高電位側単位電池モジュール211を上段、低電位側単位電池モジュール212を下段に配置しているが、その逆であっても構わない。
単位電池モジュール210は、48個のリチウム単電池213を電気的に直列に接続した組電池214がモジュールケース215(下容器215b及び上蓋215aから構成された筐体)に収容されて構成されている。モジュールケース215は直方体形状の収納体である。
モジュール電池セット200(単位電池モジュール210の2段重ね)の長手方向一方側端部には、2つの単位電池モジュール210に対して共通に1つの吸気側通気ダクト290が付設されている。吸気側通気ダクト290の先端部には1つのファンユニット280が接続されている。モジュール電池セット200(単位電池モジュール210の2段重ね)の長手方向一方側端部には、2つの単位電池モジュール210に対して共通に1つの排気側通気ダクト291が付設されている。本実施例では、モジュール電池セット200に対して1つのファンユニット280(吸気用)を設けたが、排気側通気ダクト291側にも排気側ファンユニットを設けてもよい。また、本実施例では、モジュール電池セット200,300,400,500を単位としてファンユニット及びダクトを設けたが、単位電池モジュール210,310,410,510を単位としてファンユニット及びダクトを設けてもよい。
モジュールケース215の長手方向一方側端部の側壁の下部には吸気口216が設けられている。モジュールケース215の長手方向他方側端部の側壁の下部には排気口217が設けられている(図6参照)。モジュールケース215(下容器215b)の底面と組電池214との間には補強ルーバー215dが設けられている。補強ルーバー215dは、モジュールケース215(下容器215b)の底面と組電池214との間に、モジュールケース215の内部に導入された冷却空気を組電池214の各リチウム単電池213間に導くためのダクトを形成するためのものであり、各リチウム単電池213間の対応する位置に導入孔215eが設けられている。導入孔215eは、吸気口216側から排気口217に向かうにしたがって開口面積が小さくなり、最も排気口217側に位置する開口面積が大きくなるように形成されている。最も吸気口216側に位置する導入孔215eには遮蔽ルーバー215fが設けられている。
組電池214は2つの単組電池ユニット(第2サブ組立体)214a,214bから構成されている。2つの単組電池ユニット(第2サブ組立体)214a,214bはそれぞれ、6個の単組電池(第1サブ組立体)214cから構成されている。
単組電池(第1サブ組立体)214cは、4つの円筒型或いは円柱型のリチウム単電池213を1つのグループとする単位として構成されている。4つのリチウム単電池213は、その中心軸(正極端子と負極端子との(上面と底面との)対向方向に貫く軸)が平行配置されるように、別な言い方をすれば、互いの周面が対向し合うように、上下左右に2段2列に並列に配置され、中心軸方向両方向から、電気絶縁性の高い樹脂成形品であるホルダ214dにより挟持されている。上下左右に隣り合うリチウム単電池213同士は、ホルダ214dに面する端子の極性が異なっている。このように、リチウム単電池213の周面が互いに対向するように配置することにより、単組電池214cをコンパクトに構成できる。また、4つのリチウム単電池213の外部端子(正極端子及び負極端子)が同一方向に規則的に配置されているので、作業性の向上に加え、安全性が維持でき、メンテナンスの観点でも良好である。さらに、車両に搭載された状態での耐震性も向上し、車両の交通事故時での機械的な衝撃に対しても良好である。
4つのリチウム単電池213のホルダ214dから露出する端子面には、4つのリチウム単電池213が電気的に直列に接続されるように、導電性の接続部材である銅製のバスバー214eが溶接により接合されている。一方のホルダ214d側におけるリチウム単電池213のバスバー214eによる接続方向と、他方のホルダ214b側におけるリチウム単電池213のバスバー214eによる接続方向は異なっている。他方のホルダ214b側においては上下に隣接するリチウム単電池213同士がバスバー214eによって接続されている。一方のホルダ214d側においては、下段の隣接するリチウム単電池213同士がバスバー214eによって接続されている。一方のホルダ214d側の上段のリチウム単電池213はそれぞれ、隣接する他の単組電池214cのリチウム単電池213と電気的に接続される。このため、その2つのリチウム単電池213に接合されるバスバー214eは、他のバスバー214eとは形状が異なっており、ホルダ214dの側端部において、隣接する他の単組電池214cのリチウム単電池213に接合されたバスバー214eと導電性の連結部材214fを介して接続できるように構成されている。バスバー214eはインサート成型によりホルダ214dに埋め込まれている。
予め決められた特定の単組電池214c(本実施例では単組電池214c)4つののリチウム単電池213には温度センサ270が固着されており、その温度センサ270から温度検出線が延びている。また、各単組電池214cからは電圧検出線235が延びている。
リチウム単電池213は、正極活物質にリチウムマンガン複酸化物を、負極活物質に非晶質炭素を用いたものであり、公称出力電圧が3.6V、容量が5.5Ahである。尚、リチウム単電池213は充電状態が変わると端子電圧が変化する。充電量が減少したときのリチウム単電池213の端子電圧は2.5ボルト程度、充電量が増大したときのリチウム単電池213の端子電圧は4.3ボルト程度になる。
ホルダ214dの上下2箇所、かつ左右に隣接するリチウム単電池213間には、ホルダ214d間の間隔を画定すると共に、リチウム単電池213の外側に面する周面に冷却風を流通させるための断面略U状のアーチ状ルーバー214jが配設されている。また、ホルダ214dの中央の4つのリチウム単電池213間には、ホルダ214d間の間隔を画定すると共に、リチウム単電池213の内側に面する周面に冷却風を流通させるための断面クロス状の十字状ルーバー214kが配置されている。
2つの単組電池ユニット(第2サブ組立体)214a,214bはそれぞれ、6個の単組電池214cから構成されている。6個の単組電池214cは、リチウム単電池213の中心軸が平行配置されるように、別な言い方をすれば、互いのリチウム単電池213の周面が対向し合うように、1列に並べて配置されている。6個の単組電池214cのブロック体は、その2つの下辺部において、断面が略h字状で互いに向き合うように配置された2本のチャネル状ブロックベース214gによって固定されていると共に、その2つの上辺部において、断面が略L字状で互いに向き合うように配置された2本のチャネル状ブロック補強板214hによって固定されている。また、隣接する単組電池214c同士のバスバー214eが連結部材214fを介して連結されている。本実施例では、平行するブロックベース214gに単組電池214cを固定する構造であるので、作業性が向上する。また、本実施例では、単組電池214cのブロック体をブロック補強板214hによって固定するので、単組電池214cのブロック体が増す。さらに、本実施例では、組電池214の生産性が向上し、他の電源システムにおける組電池と共通する構造や寸法関係とすることが可能となると共に、品質管理のための単電池の検出や生産後のメンテナンスにも優れている。
ブロック補強板214hの一方側には、リチウム単電池213の電圧を検出するための電圧検出線235や温度センサ270から延びる温度検出線を結束バンドなどによって束ねたハーネス群214iが固定されている。本実施例では、ハーネス群214iを束ねてブロック補強板214hに固定するので、ハーネス群214iに対する振動や衝撃などに関し、機械的な強度が維持されると共に、に電気接続の作業性が向上する。
2つの単組電池ユニット(第2サブ組立体)214a,214bは、単組電池214cの配列方向がモジュールケース215(下容器215b)の長手方向になるように、モジュールケース215(下容器215b)の短手方向に2列に並べられて収納され、図示を省略した単組電池ユニット接続ブスバーにより、電気的に直列に接続されている。
モジュールケース215の長手方向一端側には、集積回路231、フォトカプラ240、抵抗234などのセル制御装置230を構成する電子回路部品が実装された回路基板232を収納するセル制御装置ボックス215cが配置され、ネジなどにより固定されている。1個の集積回路231は1個の単組電池214cに対応している。セル制御装置ボックス215cには、2つの単組電池ユニット214a,214bのそれぞれからハーネス群214iが延びている。一方のハーネス群214iの先端に設けられたコネクタは、モジュールケース215の短手方向一方側から回路基板232のコネクタに接続されている。他方のハーネス群214iの先端に設けられたコネクタは、モジュールケース215の短手方向他方側から回路基板232のコネクタに接続されている。
モジュールケース215の長手方向他端側(セル制御装置ボックス215cの配置側とは反対側)の側壁からは、組電池214の正極側に電気的に接続された正極側強電ケーブル214lと、組電池214の負極側に電気的に接続された負極強電ケーブル214mが導出されている。単位電池モジュール210は公称出力電圧が170V、容量が5.5Ahである。尚、リチウム二次電池は充電状態で端子電圧が変わるので、実際の端子電圧は充電状態に基づき変化する。
複数の温度センサ270の出力信号に基づいて検出された温度情報から、モジュール電池セット200の冷却が必要と判断する(例えば温度閾値と比較して、温度閾値よりも検出温度が大きくなり、冷却が必要と判断する)と、下位制御装置220はファンユニット280を作動する。これにより、吸気ダクト930に導入された空気が冷却空気として吸気側通気ダクト290に吸入される。吸入された冷却空気は、2つの単位電池モジュール210に分配され、吸気口216を介してモジュールケース215の下部のダクト内部に流入し、排気口217側に向かって流通する。ダイク内部を流れる冷却空気は、補強ルーバー215dの導入孔215eを介して組電池214の各リチウム単電池213間に流入する。、冷却組電池214の各リチウム単電池213間に流入した冷却空気は、モジュールケース215の内部を下部から上部に向かって流入する。この時、冷却空気は、アーチ状ルーバー214j及び十字状ルーバー214kによって流通が制御され、各リチウム単電池213の外周を周る。これにより、組電池214(48個のリチウム単電池213)が冷却される。冷却し終えた冷却空気は、モジュールケース215の上部を排気口217側に向かって流れ、モジュールケース215の下部の排気口217から排気側通気ダクト291に排出される。各単位電池モジュール210から排気側通気ダクト291に排出された冷却空気は、排気側通気ダクト291の内部において合流し、排気側通気ダクト291の開口部からケーシング900内部に排出される。ケーシング900内部に排出された冷却空気は排気孔920を介して外部に排出される。
次に、図1〜図8を参照して蓄電装置1000の動作の概要を説明する。バッテリ放電時には、各バッテリ制御装置220,320,420,520でそれぞれの電池ブロックの電圧、電流、温度を各センサにより検出するとともに、これらのデータに基づいて各モジュール電池セット200,300,400,500の出力可能電力を計算し、これらのデータをすべて統括バッテリ制御装置100へ通知する。統括バッテリ制御装置100は、各バッテリ制御装置220,320,420,520から取得した電圧、電流、温度、出力可能電力などのデータを蓄電装置1000のデータとして集計するとともに、蓄電装置1000の総出力可能電力を計算し、これらのデータをモータ制御装置11へ通知する。モータ制御装置11は、これらのデータを基にモジュール電池セット200,300,400,500からの電力を正負極端子600,610を介して取り出し、モータ4の駆動に利用する。
一方、バッテリ充電時には、車両側のモータ4から正負極入出力端子600,610を介して電力の供給を受け、モジュール電池セット200,300,400,500を充電する。このとき、各バッテリ制御装置220,320,420,520は、電圧、電流、温度を各センサにより検出するとともに、これらのデータに基づいて入力可能電力を計算し、これらのデータを統括バッテリ制御装置100へ通知する。統括バッテリ制御装置100は、各バッテリ制御装置22,320,420,520から入力したデータを蓄電装置1000のデータとして集計するとともに、蓄電装置1000の総入力可能電力を計算し、これらのデータをモータ制御装置11へ通知する。モータ制御装置11は、総入力可能電力などのデータに基づいて充電電力の供給を行う。
温度センサ270,370,470,570により検出した各単位電池モジュール210,211,310,311,410,411,510,511の温度は、上述したように入出力可能電力の計算に用いられる他、検出温度が予め設定した過温度を超えた場合には、バッテリ制御装置220,320,420,520は統括バッテリ制御装置100へ過温度超過の情報を通知する。統括バッテリ制御装置100は、CANを介してモータ制御装置11へバッテリ過温度を通知するとともに、モータ制御装置11に対して蓄電装置1000と車両側との間に設けられているメインコンタクタ800,801,810,811の開放を要求する。これらのメインコンタクタ800,801,810,811が開放されると蓄電装置1000に対する電力の入出力が遮断され、蓄電装置1000が使用禁止状態になる。
なお、温度センサにより単位電池モジュール210,211,310,311,410,411,510,511のケースへ冷却用ファン280,380,480,580により送風される冷却空気の流入側温度と流出側温度を検出し、検出温度に基づいて上述した入出力可能電力の計算や過温度保護を行ってもよい。
次に、蓄電装置1000の故障診断について説明する。なお、以下ではモジュール電池セット200における故障診断を説明するが、他のモジュール電池セット300,400,500における故障診断も同様である。モジュール電池セット200には、単位電池モジュール210,211の総電圧を検出するための電圧センサ260が設けられている。一方、それぞれの単位電池モジュール210,211の電圧は、セル制御装置230により検出することができる。また、それぞれの単位電池モジュール210,211の動作状態も、セル制御装置230により検出することができる。ただし、セル制御装置230でそれぞれの単位電池モジュール210,211の電圧を検出するにはある程度の時間がかかるため、通常のバッテリ制御においてはセル制御装置230による検出電圧を利用せず、短時間で電圧検出が可能な電圧センサ260の検出値を用いる。
一方、電流に関しては電流センサ250により検出して制御に用いる。また、温度に関しては、モジュール電池セット200に複数の温度センサ270を備えており、これら複数の温度センサ270の検出値から最高温度、最低温度、平均温度などを計算して制御に用いる。
バッテリ制御装置220は、電圧、電流および温度センサによる検出値を一定の周期で入力する。センサのいずれかに故障が発生した場合には、そのセンサから入力した検出値は信頼性がなく、制御に用いることができないため、これらのセンサが正しく動作しているか否かの診断を行い、故障と判定された場合にはその旨を統括バッテリ制御装置100へ通知する。例えば、センサの検出値が予め設定した基準範囲を超えている場合には、そのセンサに何らかの異常が発生し、故障していると判定する。
ここで、例えば電圧センサ260が故障した場合を例に挙げて従来の蓄電装置における制御方法を説明する。今、モジュール電池セット200の電圧センサ260の検出値が予め設定した基準範囲外になった場合には、電圧センサ260に何らかの故障が発生していると判定する。例えば、電圧センサ260の接続線が開放となった場合は、検出値がゼロになり、故障と判定される。バッテリ制御装置220は、CANを介して統括バッテリ制御装置100へ電圧センサ260の故障を通知する。
統括バッテリ制御装置100は、CANを介してモータ制御装置11へ電圧センサ260の故障を通知するとともに、モータ制御装置11に対して蓄電装置1000と車両側との間に設けられているメインコンタクタ800,801,810,811の開放を要求する。これらのメインコンタクタ800,801,810,811が開放されると蓄電装置1000に対する電力の入出力が遮断され、蓄電装置1000が使用禁止状態になる。また、この電圧センサ260の故障が回復したとしても、蓄電装置1000を再起動するまでは使用禁止状態のままになっている。
従来の蓄電装置における上述した故障診断動作は、電圧センサ260に限らず、他の電流センサや温度センサなどのすべてのセンサに共通した動作である。
図9は、図2に示す単位電池モジュール210の温度検出回路を示すブロック図である。なお、図3では単位電池モジュール210の温度検出回路270bを例に挙げて説明するが、図2に示す他の単位電池モジュール211,310,311,410,411,510,511の温度検出回路370b、470b、570b(不図示)についても同様である。単位電池モジュール210のケースの表面には温度センサ270が密着して設けられ、接続線270aを介してバッテリ制御装置220に内蔵される温度検出回路270bへ接続されている。温度センサ270,370,470,570として、この一実施の形態ではサーミスタを用いた例を示すが、サーミスタ以外の温度センサを用いてもよい。なお、各単位電池モジュールごとに2個の温度センサを用いた例を示すが、温度センサの個数はこの一実施の形態に限定されるものではない。
サーミスタなどの温度センサ270から出力される信号は、測定対象物であるバッテリ温度に対して必ずしも比例増加または比例減少する信号ではない。温度検出回路270bは温度センサ270へ測定用電流を通電し、温度センサ270に発生する電圧を測定対象物のバッテリ温度に比例増加または減少する信号に変換して統括バッテリ制御装置100へ出力する。
図1および図2により説明したように、バッテリ制御装置220,320,420,520は蓄電装置1000の中央部に纏めて設置されており、一方、温度センサ270,370,470,570は各単位電池モジュール210,211,310,311,410,411,510,511内のバッテリケース表面に設置されているから、図2および図9に示すように、温度センサ270,370,470,570とバッテリ制御装置220,320,420,520の温度検出回路270b、370b、470b、570bは接続線270a、370a、470a、570aにより接続されている。詳細を後述するが、接続線270aは2本1組の信号線により構成されている。
バッテリ制御装置220は、温度検出回路270bにより検出された温度に基づいて最高温度、最低温度、平均温度などを計算し、統括バッテリ制御装置100へ通知する。統括バッテリ制御装置100は、これらのバッテリ温度情報に基づいて上述した入出力可能電力の計算と過温度保護を行う。
次に、温度センサ270,370,470,570からバッテリ制御装置220,320,420,520の温度検出回路270b、370b、470b、570bまでの接続線270a、370a、470a、570aの具体的な実施例を説明する。なお、以下では単位電池モジュール210に設置される温度センサ270とバッテリ制御装置220の温度検出回路270bとの間の接続線270aを例に挙げて説明するが、他の温度センサ370,470,570とバッテリ制御装置320,420,520の温度検出回路370b、470b、570bの間の接続線370a、470a、570aについても同様である。
《接続線270a、370a、470a、570aの実施例1》
図10は実施例1の接続線270aの構造を示す図であり、2本の信号線を温度センサ270から温度検出回路270bまでの全範囲に亘って撚り合わせる。つまり、単位電池モジュール210内の範囲と、単位電池モジュール210外の温度検出回路270bまでの範囲の両範囲に亘って2本の信号線を撚り合わせる。撚り合わせ方は例えば2cm間隔で1撚りする構造とする。温度センサ接続線270aを全範囲に亘って撚り合わせることによって、高周波電流が温度センサ接続線270aへ誘導するのを防止し、温度検出誤差を低減することができる。
《接続線270a、370a、470a、570aの実施例2》
図11は実施例2の接続線270aの構造を示す図であり、単位電池モジュール210を出た所から温度検出回路270bまでの範囲のみ、2本の信号線を撚り合わせる。単位電池モジュール210は金属製のケースで被覆されているから、高周波ノイズに対してシールド効果があり、単位電池モジュール内の接続線270aを撚り合わせなくても高周波ノイズによる影響は低くなる。接続線270aの撚り合わせを単位電池モジュール210外の範囲に限定することによって、撚り合わせによるコスト増を抑制することができる。温度センサ接続線270aの一部を撚り合わせることによって、高周波電流が温度センサ接続線270aへ誘導するのを防止し、温度検出誤差を低減することができる。
《接続線270a、370a、470a、570aの実施例3》
図12は実施例3の接続線270aの構造を示す図であり、温度センサ270の近傍の2本の信号線に高周波ノイズ除去用のコンデンサ270cを接続する。コンデンサ270cの仕様は、高周波ノイズ除去効果を見ながら実験的に決定するのが望ましいが、ここでは例えば0.01μFとする。なお、この実施例3では2本の信号線の撚り合わせはしない。温度センサ270の近傍にコンデンサ270cを接続することによって、温度検出回路270bから温度センサ270までの間の接続線270aのどの部分に高周波電流が誘導しても、誘導した高周波電流がコンデンサ270cを介してバイパスし、高周波電流が温度センサ270へ流れ込まなくなって温度検出誤差を低減することができる。
《接続線270a、370a、470a、570aの実施例4》
図13は実施例4の接続線270aの構造を示す図であり、単位電池モジュール210を出た所の2本の信号線に高周波ノイズ除去用コンデンサ270cを接続する。上述したように、単位電池モジュール210は金属製ケースで被覆されているから、単位電池モジュール210のケース内の接続線270aは高周波ノイズの影響を受けにくく、単位電池モジュール210のケースを出た所にノイズ除去用コンデンサ270cを接続する。なお、この実施例4では2本の信号線の撚り合わせはしない。温度センサ270から温度検出回路270bまでの接続線270aの途中にコンデンサ270cを接続し、温度検出回路270bからコンデンサ270cまでの間に誘導した高周波電流がコンデンサ270cを介してバイパスし、高周波電流が温度センサ270へ流れ込まなくなって温度検出誤差を低減することができる。
《接続線270a、370a、470a、570aの実施例5》
上述した接続線270aの実施例1〜4の内、実施例1(図10参照)と実施例3(図12参照)を組み合わせ、接続線270aを全範囲に亘って撚り合わせるとともに、温度センサ270の近傍の2本の信号線にノイズ除去用コンデンサ270cを接続する。この実施例5では、上述した実施例1による効果と実施例3による効果が得られ、温度検出誤差をさらに低減することができる。
《接続線270a、370a、470a、570aの他の実施例》
なお、上記実施例5以外の、実施例1〜4のその他の組み合わせにおいても高周波ノイズ低減効果を得ることができる。
図10〜図13に示す実施例1〜4の接続線270aに対して高周波ノイズ試験を行い、高周波ノイズの低減効果を確認する。図14は、一実施の形態の蓄電装置1000に対して高周波ノイズ試験として一般的な電波障害試験(BCI)を行う回路を示す。なお、図14では単位電池モジュール210とバッテリ制御装置220のみを示すが、他の単位電池モジュール211,310,311,410,411,510,511とバッテリ制御装置320,420,520についても同様である。
12Vバッテリ51をバッテリ接続線52を介してバッテリ制御装置220に接続し、制御用電源を供給する。なお、バッテリ制御装置220は接続線270dを介して統括バッテリ制御装置100に接続されている。この電波障害試験では、バッテリ接続線52と接続線270dを高周波電流注入プローブ50内に通し、不図示の高周波電力発生装置から高周波電流注入プローブ50へ高周波電力を通電し、バッテリ接続線52と接続線270dに高周波電流を注入する。
まず、温度センサ270と温度検出回路270bとの間の接続線270aに従来の一般的な平行ビニール線を用いて電波障害試験を行う。図15は、接続線270aに従来の一般的な平行ビニール線を用いた場合の試験結果を示す。図に示されるように、ある周波数で温度検出誤差が大きく、最大の温度検出誤差は6℃にも達している。従来から一般的に用いられている平行ビニール線を用いた接続線270aの電波障害試験において、温度検出回路270bの入力フィルタ(不図示)の定数を調整しても温度検出誤差が生じる場合の原因を調べた結果、高周波電流が温度センサ270の接続線270aに誘導し、温度センサ270自体に高周波電流が流れて温度センサ270が発熱し、温度検出誤差を生じていることが判明した。
次に、温度センサ270と温度検出回路270bとの間の接続線270aに上述した実施例1〜4を適用し、図14に示す電波障害試験を行う。図16は、接続線270aに実施例1〜4を適用した場合の試験結果を示す。図16に示すように、実施例1〜4の接続線270aを用いた場合には、すべて温度検出誤差が許容範囲に入り、本発明の優位性が確認できた。特に、図10に示す実施例1と図12に示す実施例3では、実施例2と実施例4に比べて温度検出誤差が小さいことが明らかである。なお、実施例5の接続線270aを用いた場合には、実施例1と実施例3を組み合わせた接続線であるから、試験を行うまでもなく温度検出誤差が許容範囲に入る。
なお、実施例3と実施例4では、誘導した高周波電流をコンデンサ270cへ流し、温度センサ270へ流れないようにしているが、実際のシステムでは、温度検出誤差が発生する周波数帯においてコンデンサ270cのインピーダンスが温度センサ270のインピーダンスに比べて十分に小さくなるコンデンサ容量を選定すればよい。
また、実施例4では、接続線270aの途中のバッテリケースを出た所にコンデンサ270cを接続した例を示したが、コンデンサ270cの接続位置は高周波電流を誘導しやすい部分と高周波電流を誘導しにくい部分の間に接続すればなお効果的である。バッテリケースが金属で構成されている場合には、そのシールド効果でバッテリ近傍は高周波電流を誘導しにくいため、バッテリ近傍の位置にコンデンサ270cを接続すればよい。
一方、実施例1と実施例2では、接続線270aを撚り合わせて高周波電流を誘導しにくくしている。この効果を検証するために電磁界シミュレーションを行った結果を図17に示す。図17は、電磁波を照射した場合の温度センサ接続線270aに誘導される高周波電流の計算結果を示す。従来の温度検出装置による平行線を用いた場合と、上述した一実施の形態による2cm間隔で一撚りした場合の撚り合わせ線でシュミレーションしてみると、一定強度の電磁波を照射した場合、撚り合わせ線は明らかに誘導される高周波電流が小さくなり、図14に示す電波障害試験で問題となった周波数近辺では30db近く誘導電流が小さくなっており、撚り合わせの効果を計算でも確認することができた。
なお、実施例2では、撚り合わせる部分を温度センサ接続線270aの一部に限定しているが、これも実施例4と同様に、バッテリケースが金属で構成されている場合には、そのシールド効果でバッテリの近傍は高周波電流を誘導しにくいため、撚り合わせる部分を温度センサ270の温度検出回路270bからバッテリケースまでの範囲としても、十分に高周波電流の誘導を抑えることが可能である。
上述した一実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、電磁気的環境が悪い電気自動車のバッテリ温度を検出する場合に、バッテリ温度を検出する温度センサの接続線を撚り合わせるだけで耐電波障害性能を向上させることができる。また、接続線の途中あるいは温度センサ近傍にコンデンサを接続するだけで同様の効果が得られ、高価なシールド線を用いることなく耐電波障害性能を向上させることができる。さらに、電波障害の影響を考慮しないで温度センサ接続線の配線引き回しを設計でき、電気自動車の車載装置の配置設計、構造設計、配線設計などの自由度を増すことができる。
なお、上述した一実施の形態では、本願発明を電気自動車のバッテリ温度を検出する温度検出装置に適用した例を示したが、本願発明の温度検出装置は電気自動車用に限定されず、あらゆる測定対象の温度を検出する装置に適用することができる。
また、上述した一実施の形態では、温度センサと温度検出回路を結ぶ接続線が2本の信号線で構成される例を示したが、信号線は3本以上あってもよい。3本以上の信号線を用いる場合には、3本以上の信号線を互いに撚り合わせて実施すればよい。また、3本以上の信号線にコンデンサを接続する場合には、2本ずつ1組にして各組ごとにコンデンサを接続すればよい。
270a、370a、470a、570a;温度センサ接続線、270b、370b、470b、570b;温度検出回路、270c、370c、470c、570c;コンデンサ、220,320,420,520;バッテリ制御装置、100;統括バッテリ制御装置、270,370,470,570;温度センサ、210,211,310,311,410,411,510,511;単位電池モジュール