JP2010106219A - プリプレグ、繊維強化樹脂成形体、及び積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】非ハロゲン系での難燃性と機械強度に優れた、繊維強化樹脂成形体及び積層体、並びにそれらの製造に有用なプリプレグを提供すること。
【解決手段】シクロオレフィンポリマー、架橋剤、ホスフィン酸塩、及び炭素繊維を含んでなるプリプレグ、前記プリプレグを硬化してなる繊維強化樹脂成形体、並びに前記プリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層した後、硬化してなる積層体。
【選択図】なし

Description

本発明は、プリプレグ、繊維強化樹脂成形体、及び積層体に関する。詳しくは、非ハロゲン系での難燃性(以下、非ハロゲン難燃性という。)と機械強度に優れた、繊維強化樹脂成形体及び積層体、並びにそれらの製造に有用なプリプレグに関する。
炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化樹脂は、その力学的特性が優れていることから、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣竿などのスポーツ用途から自動車や航空機などの乗物用構造体用途、一般産業用途まで幅広く用いられている。この中で、特に自動車や航空機などの構造材料、建築材料などにおいては、火災によって構造材料が着火延焼することを防ぐため、材料に難燃性を有することが強く求められている。従来使用されているハロゲン系難燃剤は難燃効果が高い反面、着火して消火するまでの間にハロゲン化水素や有機ハロゲン化物などの有害ガスを発生するため、非ハロゲン系難燃剤への転換が求められていた。
例えば、特許文献1では、ハロゲン原子を含有しないエポキシ樹脂、硬化剤、及びエポキシ樹脂100重量部に対して10〜30重量部の非ハロゲン系難燃剤を含んでなる樹脂フィルムを炭素繊維に圧着させてなるプリプレグが開示されており、難燃性の評価規格であるUL−94にてV−0を達成し、難燃性に優れることが記載されている。
また、特許文献2には、芳香環を有するシクロオレフィンモノマー、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤、架橋剤、及び難燃剤等を含む重合性組成物を塊状重合して樹脂成形体を製造する方法が開示されいる。本法には、難燃剤としてハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、フォスファゼンなどのリン系難燃剤、窒素系難燃剤などの難燃剤が使用できることが記載されており、具体的に赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び水酸化アルミニウムの組み合わせが示されている。また、本法には、重合性組成物を繊維強化材に含浸させた後に重合しても良いこと、及びその繊維強化材に炭素繊維が用いられることが記載されている。
特開平11−147965号公報 国際公開第05/014690号パンフレット
しかしながら、特許文献1のプリプレグでは、マトリックス樹脂として主にエポキシ樹脂が用いられており、その樹脂ワニスは粘度が高いため、炭素繊維への含浸が困難になり、該プリプレグを硬化して得られる繊維強化樹脂成形体の高温高湿下での機械強度等が低下する問題があること、また、特許文献2に記載の、シクロオレフィンモノマーの重合体をマトリックス樹脂とする樹脂成形体では、繊維強化材として炭素繊維を用いると、非ハロゲン難燃性の付与が困難な場合があることが、本発明者の検討により明らかとなった。
本発明の目的は、非ハロゲン難燃性と機械強度に優れた、繊維強化樹脂成形体及び積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、前記繊維強化樹脂成形体及び積層体の製造に有用なプリプレグを提供することにある。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、シクロオレフィンモノマー、ルテニウム錯体等の重合触媒、架橋剤、及び難燃剤としてホスフィン酸塩を含む重合性組成物を炭素繊維に含浸した後に、重合してプリプレグを作製し、次いで該プリプレグを単独で、又は所望により積層して、硬化することにより、非ハロゲン難燃性と機械強度に優れた繊維強化樹脂成形体、又は積層体が得られることを見出した。また、炭素繊維として特定のものを用いると、シクロオレフィンモノマーを含む重合性組成物の炭素繊維への含浸性が大幅に改善されること、及びそれに伴い繊維強化樹脂成形体の非ハロゲン難燃性と機械強度の特性を格段に向上できること、さらに、重合性組成物に架橋助剤を配合することにより、該組成物の炭素繊維への含浸性や、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度と耐熱性を高度に向上できることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕シクロオレフィンポリマー、架橋剤、ホスフィン酸塩、及び炭素繊維を含んでなるプリプレグ、
〔2〕炭素繊維が、アクリル系炭素繊維である前記〔1〕記載のプリプレグ、
〔3〕シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及びホスフィン酸塩を含んでなる重合性組成物を炭素繊維の存在下に重合することを特徴とするプリプレグの製造方法、
〔4〕重合触媒が、ヘテロ環構造を有するルテニウム錯体である前記〔3〕記載のプリプレグの製造方法、
〔5〕重合性組成物が、さらに架橋助剤を含むものである前記〔3〕又は〔4〕記載のプリプレグの製造方法、
〔6〕前記〔1〕又は〔2〕記載のプリプレグを硬化してなる繊維強化樹脂成形体、並びに
〔7〕前記〔1〕又は〔2〕記載のプリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層した後、硬化してなる積層体、
を提供するものである。
本発明によれば、非ハロゲン難燃性と機械強度に優れた、繊維強化樹脂成形体及び積層体、並びにそれらの製造に有用なプリプレグが提供される。本発明の繊維強化樹脂成形体及び積層体は、前記特性を有することから、自動車や航空機などの乗物用部材として、また、スポーツ、土木、建築などの分野において種々の部材として、広く好適に使用することができる。
本発明のプリプレグは、シクロオレフィンポリマー、架橋剤、難燃剤としてホスフィン酸塩、及び炭素繊維を含んでなる。また、本発明の繊維強化樹脂成形体は前記プリプレグを硬化してなり、本発明の積層体は前記プリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層した後、硬化してなる。
(シクロオレフィンポリマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンポリマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有するシクロオレフィンモノマーを重合して得られる熱可塑性樹脂である。シクロオレフィンポリマーは、シクロオレフィンモノマー単位に環構造を有するが、かかる環構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造や不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられる。得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体が機械強度や耐熱性に優れたものとなることから、シクロオレフィンモノマー単位の環構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましい。環構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。シクロオレフィンポリマー中のシクロオレフィンモノマー単位の割合は、所望により適宜選択すればよいが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。シクロオレフィンモノマー単位の割合がこの範囲にあると、得られるプリプレグ等の機械強度が向上し、好ましい。
前記シクロオレフィンポリマーの具体例としては、シクロオレフィンモノマーの開環重合体、シクロオレフィンモノマーの付加重合体、シクロオレフィンモノマーと鎖状オレフィンモノマーとの付加共重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。シクロオレフィンポリマーの分子量は、所望により適宜選択すればよいが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。シクロオレフィンポリマーの分子量が、この範囲にあれば、プリプレグの流動性、繊維強化樹脂成形体の機械強度や耐熱性、及び積層体の層間密着性等の各特性が高度にバランスされ、好適である。
(架橋剤)
本発明で使用される架橋剤は、熱可塑性樹脂であるシクロオレフィンポリマーにおいて架橋反応を誘起する目的で使用される。本発明において、架橋剤としては、通常ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、及び非極性ラジカル発生剤である。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状ペルオキシド類;が挙げられる。特に、メタセシス重合によりシクロオレフィンポリマーを製造する場合には、メタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、環状ペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、及びペルオキシケタール類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、例えば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
本発明に使用される架橋剤がラジカル発生剤の場合の1分間半減期温度は、硬化(本発明のシクロオレフィンポリマーの架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば、各ラジカル発生剤メーカー(例えば、日本油脂株式会社)のカタログやホームページを参照すればよい。
前記ラジカル発生剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に用いるシクロオレフィンポリマーに対するラジカル発生剤の使用量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
(難燃剤)
本発明においては、難燃剤としてホスフィン酸塩を用いる。本発明に使用されるホスフィン酸塩は、工業的に使用されるものであれば格別な限定はなく用いることができる。かかるホスフィン酸塩は、例えば、特開2000−219772号公報、特開2004−115797号公報、及び特開2006−328124号公報に記載されている。
ホスフィン酸塩としては、好ましくはホスフィン酸の金属塩が挙げられ、中でも、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸亜鉛塩、及びホスフィン酸アルミニウム塩が好適に用いられる。また、ホスフィン酸塩としては、ホスフィン酸単位の数に応じて、モノホスフィン酸塩;ジホスフィン酸塩などのオリゴホスフィン酸塩;及びホスフィン酸ポリマー塩;などが挙げられ、モノホスフィン酸塩及びオリゴホスフィン酸塩が好適に、モノホスフィン酸塩がより好適に用いられる。
ホスフィン酸塩の好適な具体例としては、一般式(1)及び一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2010106219
Figure 2010106219
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、又はアリール基を、Rは、アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基、又はアリールアルキレン基を、Mは金属原子を、m及びnはそれぞれ1〜4の整数を、xは1〜4の整数を、示す。)
及びRの好ましい例としては、炭素数1〜6のアルキル基や炭素数3〜12のアリール基などが挙げられる。Rの好ましい例としては、炭素数1〜10のアルキレン基;炭素数6〜12の、アリーレン基、アルキルアリーレン基、又はアリールアルキレン基;などが挙げられる。Mの好ましい例としては、カルシウム原子、アルミニウム原子及び亜鉛原子などが挙げられる。mは、Mがカルシウム原子や亜鉛原子のときは2であり、アルミニウム原子のときは3である。ホスフィン酸部分の具体例としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル−n−プロピルホスフィン酸、メタンジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン−1,4−(ジメチルホスフィン酸)、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
前記一般式(1)で示される化合物の例としては、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛などが挙げられる。前記一般式(2)で示される化合物の例としては、ジエチルジホスフィン酸アルミニウム、ジエチルジホスフィン酸亜鉛、ジメチルジホスフィン酸アルミニウム、ジメチルジホスフィン酸亜鉛などが挙げられる。
これらのホスフィン酸塩は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、所望により適宜選択されるが、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、1〜500重量部、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは20〜200重量部の範囲である。ホスフィン酸塩の配合量が、この範囲にあれば、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体において非ハロゲン難燃性、耐クラック性、機械強度及び高温高湿下での耐熱性等の各特性が高度にバランスされ、好適である。
本発明においては、所望により、ホスフィン酸塩に加え、その他の難燃剤をプリプレグに配合してもよい。その他の難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物系難燃剤;酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物系難燃剤;赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート等の、ホスフィン酸塩以外のリン系難燃剤;メラミン誘導体類、グアニジン類、イソシアヌル類等の窒素系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、リン酸グアニジン、フォスファゼン類等の、リンと窒素の双方を含有する難燃剤;が挙げられる。これらのその他の難燃剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択すればよいが、本発明のプリプレグを構成する全難燃剤中、ホスフィン酸塩の含有量は、通常、10重量%以上、好ましくは40重量%以上とするのが好適である。
(炭素繊維)
本発明に使用される炭素繊維は、従来公知の材料を格別な限定なく用いることができる。炭素繊維の種類に特に限定はなく、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種の炭素繊維が使用できる。特に、本発明のプリプレグを、後述の重合性組成物を用い、メタセシス重合によりシクロオレフィンモノマーを塊状重合しシクロオレフィンポリマーを形成させて得る場合にメタセシス重合の阻害を生じないこと、並びに得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度、靭性、耐熱性等の特性を高度に改善できることから、アクリル系繊維(ポリアクリロニトリル繊維)を原料として製造される炭素繊維であるアクリル系炭素繊維の使用が好適である。また、アクリル系炭素繊維は、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンモノマーとの親和性が良いため、該ポリマー及び該モノマーの炭素繊維への含浸性に優れ、ボイドの少ないプリプレグが得られ、該プリプレグを硬化して得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の、機械強度、及び非ハロゲン難燃性が良好となり、好適である。
本発明に使用される炭素繊維の強度特性は、格別な限定はなく所望により適宜選択すればよい。引張強度としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張強度で、通常、0.5〜50GPa、好ましくは1〜10GPa、より好ましくは2〜8GPaの範囲である。引張弾性率としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張弾性率で、通常、100〜1,000GPa、好ましくは200〜800GPa、より好ましくは300〜700GPaの範囲である。伸びとしては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張伸びで、通常、0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜3%の範囲である。炭素繊維の強度特性がこれらの範囲にあれば、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度と靭性が高度にバランスされ好適である。
本発明に使用される炭素繊維の断面形状は、格別な限定はないが、実質的に円形であるものが好ましい。断面形状が円形であると、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンモノマーを含浸させる際、フィラメントの再配列が起こりやすくなり、繊維間へのシクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンモノマーの浸み込みが容易になり、好適である。さらに、繊維束の厚みを薄くすることが可能となるため、ドレープ性に優れたプリプレグを得やすい利点がある。なお、断面形状が実質的に円形であるとは、その断面の外接円半径Rと内接円半径rとの比(R/r)を変形度として定義した場合に、この変形度が1.1以下であるものを意味する。
本発明に使用される炭素繊維の長さは格別な限定無く所望により適宜選択され、炭素繊維としては短繊維及び長繊維のいずれも用いることができるが、より高い機械強度と靭性を有する繊維強化樹脂成形体や積層体を得たい場合、繊維長が1cm以上、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、さらに好ましくは3cmを超える連続繊維を用いるのが好適である。
本発明に使用される炭素繊維の形態は、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、チョップド等から適宜選択できる。これらの中でも、靭性と耐衝撃性がより高い水準にある繊維強化樹脂成形体を得る観点からは、炭素繊維の形態は、織物、一方向ストランド、及びロービング等の連続繊維の形態が好ましい。織物の形態としては、従来公知のものを使用でき、例えば、平織、繻子織、綾織、3軸織物などの、繊維が交錯する織り構造の全てが使用できる。また、織物の形態としては、2次元だけでなく、織物の厚み方向に繊維が補強されているステッチ織物や3次元織物等も使用できる。
本発明に使用される炭素繊維は、織物等で使用する場合は繊維束糸条として利用するのが好ましい。その場合の繊維束糸条1本中のフィラメント数は、格別な限定はないが、好ましくは1,000〜100,000本、より好ましくは5,000〜50,000本、さらに好ましく波10,000〜30,000本の範囲である。
これらの炭素繊維は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、所望により適宜選択されるが、本発明のプリプレグ中、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%の範囲である。
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、シクロオレフィンポリマー、架橋剤、難燃剤としてホスフィン酸塩、及び炭素繊維を必須成分とし、所望により、その他の配合剤を含むことができる。
その他の配合剤としては、格別な限定はなく所望により適宜選択されるが、架橋助剤、充填剤、老化防止剤、エラストマー材料、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤、高分子改質剤などを挙げることができる。
本発明においては、架橋助剤を配合することにより、プリプレグの賦形性、並びにプリプレグを硬化して得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度と耐熱性を高度にバランスさせることができ好適である。
架橋助剤としては、重合反応に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する多官能性化合物が好適に用いられる。かかる架橋性の炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば、末端ビニリデン基として、特にイソプロペニル基やメタクリル基として存在するのが好ましい。
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能性化合物;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、メタクリル基を2以上有する多官能性化合物が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能性化合物の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能性化合物がより好適である。
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の配合量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対し、通常、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
本発明においては、充填剤を配合することで、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度、耐熱性、耐薬品性等の各特性を高度にバランスさせることができ好適である。充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機系充填剤及び有機系充填剤のいずれも用いることができるが、好適には無機系充填剤である。
無機系充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウム、炭化ケイ素粒子やウィスカー等が挙げられる。
有機系充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
これらの充填剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、50重量部以上、好ましくは50〜1,000重量部、より好ましくは50〜750重量部、さらに好ましくは50〜500重量部の範囲である。充填剤がこの範囲にあれば、繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度、耐熱性、耐薬品性等の各特性を高度にバランスさせることができ好適である。
本発明においては、老化防止剤として、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を配合することにより、架橋反応を阻害しないで、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の耐熱性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。
これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の配合量は、所望により適宜選択されるが、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
また、エラストマー材料を配合することにより、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の靭性を向上させることができ好適である。エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらのエラストマー材料は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、シクロオレフィンポリマー100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。エラストマー材料の配合量がこの範囲であれば、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の靭性を高度に向上させることができ好適である。
着色剤としては、染料や顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらの着色剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
本発明のプリプレグの厚さは、所望により適宜選択されるが、通常、0.001〜10mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.5mmの範囲である。プリプレグの厚さがこの範囲であれば、プリプレグの積層時の賦形性、また、硬化して得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度や靭性が充分に発揮され好適である。
本発明のプリプレグの揮発成分量は、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、通常、30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下である。未反応モノマーなど、プリプレグの揮発成分量が過度に多いと、プリプレグにベタ付きが発生し、その操作性、及び保存安定性が悪くなり、また、硬化後の繊維強化樹脂成形体や積層体にボイドが発生し、外観や機械強度が低下したり、ブリードの発生や耐熱性、耐薬品性等に問題が生じる可能性がある。
本発明のプリプレグの製造方法としては、格別な限定はなく、例えば、シクロオレフィンポリマー、架橋剤、及び難燃剤を任意の溶媒に溶解して低粘度化し炭素繊維に含浸させた後に脱溶媒させるウェット法、保護フィルム上にシクロオレフィンポリマーを塗布し、その上に炭素繊維を引き揃え、加熱溶解したシクロオレフィンポリマーをロール又はドクターブレード等で加圧含浸させ、その後、放冷するホットメルト法(ドライ法)などが挙げられる。前記保護フィルムとしては、特に限定はされず、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロンなどの樹脂;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀などの金属材料;などからなるものが挙げられる。その形状についても特に限定はないが、通常、金属箔、又は樹脂フィルムとして使用される。これらの金属箔又は樹脂フィルムの厚さは、作業性などの観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜75μmである。本発明のプリプレグの製造方法としては、上記揮発成分が少なく、操作性や安定性に優れたプリプレグを効率的に製造する観点から、とりわけ、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び難燃剤としてホスフィン酸塩を含有してなる重合性組成物を炭素繊維存在下に塊状重合する直接重合法が好適である。
以下、本発明のプリプレグの製造方法について、直接重合法を例に詳細に説明する。
(プリプレグの製造方法)
本発明に使用される重合性組成物には、通常、シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及び難燃剤としてのホスフィン酸塩を必須成分として、所望により、重合調整剤、連鎖移動剤、重合反応遅延剤、及びその他の配合剤などをさらに添加する。プリプレグを、かかる重合性組成物を使用して製造する場合、生産効率を向上させる観点から、架橋剤や難燃剤に加え、その他の配合剤も重合性組成物に配合しておくのが好適である。
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合可能な炭素−炭素二重結合をいう。重合には、イオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、メタセス開環重合をいう。
シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせ多環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。
シクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーと多環のシクロオレフィンモノマーのいずれをも用いることができる。得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度と耐水性を向上させる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。
シクロオレフィンモノマーは、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとに分けられる。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−プロピル−2−ノルボルネン、5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、1−メチル−2−ノルボルネン、7−メチル−2−ノルボルネン、5,5,6−トリメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、1,4−メタノ−1.4.4a.9aテトラヒドロフルオレン(MTF)、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロ−2−ノルボルネン、5,5−ジクロロ−2−ノルボルネン、5−フルオロ−2−ノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチル−2−ノルボルネン、5−クロロメチル−2−ノルボルネン、5−メトキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシル−2−ノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノ−2−ノルボルネン、5−シアノ−2−ノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーである。
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−アリル−2−ノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーである。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の所望の効果の発現を阻害しない範囲であれば、シクロオレフィンモノマーと共重合可能な任意のモノマーをさらに用いることができる。
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーとしては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーを含むものを使用するのが、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度が向上し、好適である。
本発明の重合性組成物に配合するシクロオレフィンモノマー中、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーと架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択されるが、重量比(架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー/架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体において、機械強度、層間密着性、及び非ハロゲン難燃性等の各特性が高度にバランスされ、好適である。
重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーを重合できるものであれば特に限定はないが、前記重合性組成物は、プリプレグの製造において、直接塊状重合に供して用いるのが好適であり、通常、メタセシス重合触媒を用いるのが好ましい。
メタセシス重合触媒としては、前記シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合可能である、通常、遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び化合物などが結合してなる錯体が挙げられる。遷移金属原子としては、第5族、第6族及び第8族(長周期型周期表による。以下、同じ。)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、第5族の原子としては、例えば、タンタルが挙げられ、第6族の原子としては、例えば、モリブデンやタングステンが挙げられ、第8族の原子としては、例えば、ルテニウムやオスミウムが挙げられる。遷移金属原子としては中でも、第8族のルテニウムやオスミウムが好ましい。すなわち、本発明に使用されるメタセシス重合触媒としては、ルテニウム又はオスミウムを中心原子とする錯体が好ましく、ルテニウムを中心原子とする錯体がより好ましい。ルテニウムを中心原子とする錯体としては、カルベン化合物がルテニウムに配位してなるルテニウムカルベン錯体が好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、重合時の触媒活性に優れるため、前記重合性組成物を塊状重合に供してプリプレグを得る場合、得られるプリプレグには未反応のモノマーに由来する臭気が少なく、生産性良く良質なプリプレグが得られる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用可能である。
また、ヘテロ環構造を有するルテニウム錯体、例えば、後述のヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム錯体の使用が、アクリル系炭素繊維との相性がよく、硬化して得られる繊維強化樹脂及び積層体において、外観、機械強度、耐熱性、耐薬品性等の各特性を高度にバランスさせることができ好適である。ヘテロ環構造の炭素原子以外の原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環、又はイミダゾリジン環構造が好ましい。かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
本発明においてメタセシス重合触媒として使用される、好適なルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子として、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物と、その他の中性電子供与体とを有するルテニウムカルベン錯体が挙げられる。ここで「中性電子供与体」とは、中心金属原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。
これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶媒に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では、鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、及び脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
重合調整剤としては、メタセシス重合活性を制御したり、メタセシス重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の使用量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:共触媒)のモル比で、通常1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
本発明においては、重合性組成物に連鎖移動剤を配合することで、プリプレグの流動性や賦形性、繊維強化樹脂成形体及び積層体の機械強度、並びに積層体の材料間の密着性及び耐熱性等の各特性を高度にバランスさせることができ好適である。
連鎖移動剤としては、重合、中でも開環重合に関与でき、前記重合性組成物を重合反応に供して得られる重合体の末端に結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物が好ましい。当該二重結合の例としては、末端ビニル基が挙げられる。連鎖移動剤は、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有していてもよい。
かかる連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシランなどの、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する連鎖移動剤などが挙げられる。これらの中でも、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体において、非ハロゲン難燃性と機械強度とを高度にバランスさせる観点から、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものが好ましく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有するものがより好ましい。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物への連鎖移動剤の配合量としては、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明においては、重合性組成物に重合反応遅延剤を配合することにより、その粘度増加を抑制しうる。従って、重合反応遅延剤を配合してなる重合性組成物は、プリプレグを作製する際、重合性組成物を均一に炭素繊維に含浸することが容易となるので、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。
これら重合反応遅延剤の中でも、室温以下での重合反応の進行を抑制する効果が大きいことから、ホスフィン化合物が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン及びビニルジフェニルホスフィンがより好ましい。これらの重合反応遅延剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合反応遅延剤)のモル比で、通常、1:0.01〜1:100重量部、好ましくは1:0.1〜1:10重量部、より好ましくは1:0.1〜1:5重量部の範囲である。
本発明に使用する重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合触媒を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(触媒液)を調製し、別にシクロオレフィンモノマーや架橋剤などの必須成分、及び所望によりその他の配合剤を配合した液(モノマー液)を調製し、該モノマー液に該触媒液を添加し、攪拌することによって調製することができる。
次いで、得られた重合性組成物を前記炭素繊維存在下に塊状重合することにより、本発明のプリプレグを得る。ここで、「重合性組成物を炭素繊維存在下に塊状重合する」とは、炭素繊維と重合性組成物とが接触した状態で塊状重合を行うことをいう。具体的には、例えば、炭素繊維として織物を使用し、当該織物に重合性組成物を含浸させ、次いで塊状重合を行う方法が挙げられる。炭素繊維への重合性組成物の含浸は、支持体上又は型内で行うことが好ましい。
重合性組成物の炭素繊維への含浸は、例えば、支持体として保護フィルムを用いる場合、例えば、保護フィルム上に炭素繊維を置き、所定量の重合性組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により炭素繊維に塗布し、所望によりその上にもう一枚の保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。重合性組成物を炭素繊維に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することにより、重合性組成物を塊状重合させることができ、それによってシート状又はフィルム状のプリプレグが得られる。ここで用いる保護フィルムとしては、前述と同様のものを使用することができる。
含浸を型内で行う場合は、型内に炭素繊維を設置し、該型内に重合性組成物を注ぎ込み、次いで重合を行う。この方法によれば、任意の形状のプリプレグを得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とするプリプレグの形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。また、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入し、該型内で重合を行うことにより、シート状、又はフィルム状のプリプレグを得ることができる。
本発明に使用される重合性組成物は、従来、プリプレグや積層体の製造に用いられている、エポキシ樹脂等を溶媒に溶かしてなる重合体ワニスと比較して低粘度であり、炭素繊維に対する含浸性に優れるので、上記方法によれば、重合で得られるシクロオレフィンポリマーを炭素繊維に均一に含浸させることができる。得られるプリプレグ、並びに該プリプレグを硬化して得られる、繊維強化樹脂成形体及び積層体は、ボイドが少なく、機械強度に優れたものとなる。
また、塊状重合を行う場合、重合性組成物は反応に関与しない溶媒等を実質的に含まないので、炭素繊維に含浸させた後に溶媒を除去するなどの工程が不要であり、従って、プリプレグの生産性に優れ、また、プリプレグでは、残存溶媒による臭気やフクレ等も生じないので好適である。さらに、重合で得られるシクロオレフィンポリマーは未反応のモノマーを実質的に含まず、よって、該モノマーに起因する臭気が実質的になく、また、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体の耐熱性は優れたものとなる。
炭素繊維がチョップドなどの短繊維である場合には、炭素繊維を重合性組成物に混合し、次いで塊状重合を行う方法をとりうる。炭素繊維は、モノマー液と触媒液を混合する前にモノマー液及び/又は触媒液に添加してもよいし、モノマー液と触媒液とを混合した後に添加してもよい。塊状重合の方法としては、上記と同様に型内で塊状重合を行う方法をとりうる。また、短繊維と長繊維からなる織物とを併用し、炭素繊維の短繊維を含む重合性組成物を、上記と同様に長繊維からなる織物に含浸させてから重合してもよい。
本発明の重合性組成物は、通常、メタセシス重合触媒を含んでなるが、上記いずれの方法においても、重合性組成物を重合させるための加熱温度は、通常、50〜250℃、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜150℃の範囲であり、かつ前記架橋剤、通常、ラジカル発生剤の1分間半減期温度以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは20℃以下である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒間から60分間、好ましくは10秒間から20分間以内である。重合性組成物をかかる条件で加熱することにより未反応モノマーの少ないプリプレグが得られるので好適である。
かくして得られる本発明のプリプレグの炭素繊維含有量は、所望により適宜選択すればよいが、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは30〜70重量%の範囲である。
(繊維強化樹脂成形体、及び積層体)
本発明の繊維強化樹脂成形体は、前記プリプレグを、所望により賦形した後に、硬化することで製造することができる。また、本発明の積層体は、前記プリプレグと、当該プリプレグ及び/又は他の材料とを積層し、所望により賦形した後に、硬化することで製造することができる。
積層してもよい他の材料としては、所望により適宜選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料などが挙げられ、特に金属材料が好適に用いられる。熱可塑性樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブリレンなどのポリオレフィン;ポリスチレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチレンメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。金属材料としては、ステンレス鋼や鉄、炭素鋼、ステンレス合金、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、その他種々の金属、及び合金などが挙げられる。中でも、ステンレス鋼、アルミニウム合金及びチタン合金が好ましく、特にアルミニウム合金やチタン合金が軽量で、かつ機械強度が高いため好適である。金属材料の厚さは、所望により適宜選択されるが、通常0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、より好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは3〜15μmの範囲である。
本発明においては、使用する炭素繊維が一方向材である場合、プリプレグは、プリプレグの層が4層又は8層となるよう連続的に又は断続的に積層し、積層体として使用するのが好ましい。その場合、各層を構成するプリプレグは、各プリプレグの炭素繊維の方向の角度を互いにずらして積層するのが好適である。具体的には、プリプレグを4層積層する場合、一層目のプリプレグの炭素繊維の方向を基準とし、基準となる該方向に対する他のプリプレグの炭素繊維の方向のなす角度(絶対値が小さい方)をθとして、順にθ=−45°、45°、45°、−45°となるように積層するのが好ましい。また、プリプレグを8層積層する場合、同様に、順にθ=0°、90°、−45°、45°、45°、−45°、90°、0°となるように積層するのが好ましい。各プリプレグをこのように積層すれば、得られる繊維強化樹脂成形体及び積層体に反りが生じず、機械強度の異方性がなくなるため好適である。
積層及び硬化させる方法は、常法に従えばよく、例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて熱プレスを行なうことができる。加熱温度は、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上である。、例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を用いた場合、通常、1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜60分の範囲である。プレス圧力としては、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空または減圧雰囲気下で行ってもよい。
かくして得られる本発明の繊維強化樹脂成形体及び積層体は、非ハロゲン難燃性や機械強度に優れるので、例えば、OAやAV機器、自動車や鉄道などの車両用構造体材、航空機内装部品などをはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途、その他一般産業用途に広く好適に用いられる。具体的な用途としては、例えば、釣竿、ゴルフクラブ用シャフト、テニスラケット、スキーストック等のスポーツ用途;ディスプレー、FDDキャリッジ、シャーシ、HDD、MO、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、ポータブルMD、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどの電気・電子機器;電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、アイロン、ヘアドライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、掃除機、トイレタリー用品、レザーディスク、コンパクトディスク、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどのオフィスオートメーション機器及び家電機器;アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ドライブシャフト、ホイール、ホイールカバー、フェンダー、ドアミラー、ルームミラー、フェシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、トランクフード、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スピラー及び各種モジュールなどの自動車部品;ランディングギアポッド、ウイングレッド、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリングなどの航空機部品;及びパネルなどの建材;などが挙げられる。これらの中でも、自動車や航空機などの乗物用部品材料として特に好適に用いられる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
実施例及び比較例における各特性は、以下の方法に従い測定し、評価した。
(1)シクロオレフィンポリマーの炭素繊維への含浸性
積層板のX線解析をX線非破壊解析装置(松定プシジョン社製)を用いて行い、以下の基準で評価した。
良好:空洞部が認められない
可:空洞部が殆ど認められない
不良:中程度以上に空洞部が認められる
(2)非ハロゲン難燃性
125mm×15mm×1mmの積層板に10秒間接炎したのちの総発熱量を測定し、以下の基準で評価した。
良好:3KJ/g未満
可:3KJ以上、6KJ/g未満
不良:6KJ/g以上
(3)機械強度
積層板を85℃で湿度85%の高温高湿槽に72時間放置した後、該積層板の引張強度をJIS K−7073に規定する試験方法に従い、標点間距離150mm及びクロスヘッド速度2mm/分の条件で測定して引張強度2を得、高温高湿槽に72時間放置前に同様にして測定して得た引張強度1に対する変化率を以下の式:
引張強度の変化率(%)=〔(引張強度2−引張強度1)/引張強度1〕×100
により算出し、以下の基準で評価した。
良好:試験後の変化率が10%未満
不良:試験後の変化率が10%以上
(実施例1)
ガラス製フラスコ中で、ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製した。
ポリエチレン製の瓶にシクロオレフィンモノマーとしてジシクロペンタジエン(DCP)を100部入れ、ここに連鎖移動剤としてアリルメタクリレートを0.74部、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド(1分間半減期温度186℃)を1.2部、分散剤としてアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(プレンアクトAL−M、味の素ファインテクノ製)を1.1部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを10部、難燃剤としてジメチルホスフィン酸亜鉛を70部加えた後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mLの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製した。
次いで、この重合性組成物100部をポリエチレンナフタレートフィルム(タイプQ51、厚み75μm、帝人デュポンフィルム社製)の上に流延し、その上にアクリル系炭素繊維織物パイロフィルTR 3110M(三菱レイヨン社製)を敷いて、さらにその上に上記重合性組成物80部を流延した。その上からさらにポリエチレンナフタレートフィルムを被せ、フィルムの上からローラーを用いて押圧し、重合性組成物を炭素繊維に含浸させた。次いで、これを150℃に熱した加熱炉中で、1分間加熱し、重合性組成物を塊状重合させて厚さ0.25mmのプリプレグを得た。
このプリプレグを100mm角の大きさに切り出し、ポリエチレンナフタレートフィルムを剥離した後、4枚を重ねて、さらにその両端面に12μmF2銅箔(シランカップリング剤処理電解銅箔、粗度Rz=1600nm、古河サーキットホイル社製)を重ね、熱プレスにて、3MPa、200℃で15分間加熱圧着し、積層板(積層体)を作製した。この積層板について、含浸性、非ハロゲン難燃性、及び機械強度を評価した。その結果を表1に示す。
(実施例2)
難燃剤として、ジメチルホスフィン酸亜鉛50部と水酸化アルミニウム25部とを用いた以外は実施例1と同様にして積層板を得、該積層板について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
難燃剤をジフェニルホスフィン酸カルシウムに代えた以外は実施例1と同様にして積層板を得、該積層板について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート834(ジャパンエポキシレジン社製)10部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート1002(ジャパンエポキシレジン社製)40部、N,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンエピコート604(ジャパンエポキシレジン社製)20部、ウレタン変性エポキシ樹脂アデカレジンEPU−6(ADEKA社製)30部、ポリエーテルイミド樹脂PEI Ultem1000(日本ジーイープラスチック社製)5部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン10部、硬化促進剤として3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア3部、及び難燃剤として水酸化マグネシウム50部を混合してエポキシ樹脂組成物を調製した。
重合性組成物を上記エポキシ樹脂組成物に変えた以外は実施例1と同様にして積層板を得、該積層板について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
難燃剤を、赤リン15部、ポリリン酸アンモニウム50部、及び水酸化アルミニウム(平均粒子径0.4μm、嵩比重1.1g/mL)50部に代えた以外は実施例1と同様にして積層板を得、該積層板について各特性を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 2010106219
表1より、実施例1〜3で得られた積層板は、含浸性、非ハロゲン難燃性、及び機械強度のいずれの特性にも優れることが分かる。これに対し、マトリックス樹脂をエポキシ樹脂として得られた比較例1の積層板はいずれの特性にも劣り、難燃剤としてホスフィン酸塩を使用しなかった比較例2の積層板は特に非ハロゲン難燃性が不充分であることが分かる。

Claims (7)

  1. シクロオレフィンポリマー、架橋剤、ホスフィン酸塩、及び炭素繊維を含んでなるプリプレグ。
  2. 炭素繊維が、アクリル系炭素繊維である請求項1記載のプリプレグ。
  3. シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、及びホスフィン酸塩を含んでなる重合性組成物を炭素繊維の存在下に重合することを特徴とするプリプレグの製造方法。
  4. 重合触媒が、ヘテロ環構造を有するルテニウム錯体である請求項3記載のプリプレグの製造方法。
  5. 重合性組成物が、さらに架橋助剤を含むものである請求項3または4記載のプリプレグの製造方法。
  6. 請求項1または2に記載のプリプレグを硬化してなる繊維強化樹脂成形体。
  7. 請求項1または2に記載のプリプレグと、当該プリプレグおよび/または他の材料とを積層した後、硬化してなる積層体。
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