JP2010104991A - 鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造機 - Google Patents
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Abstract
【課題】 凝固末期の鋳片を凝固収縮量程度の圧下量で圧下して中心偏析の軽微な鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するにあたり、軽圧下の効率を高め、近年の厳しい品質要求にも対処可能な中心偏析の軽微な鋳片を安定して製造する。
【解決手段】 複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯14を備えた連続鋳造機1を用い、鋳片10の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から、少なくとも鋳片の厚み中心部の固相率が0.7以上になる時点まで、前記軽圧下帯にて鋳片の圧下を継続して鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するに際し、前記軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させる。
【選択図】 図2
【解決手段】 複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯14を備えた連続鋳造機1を用い、鋳片10の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から、少なくとも鋳片の厚み中心部の固相率が0.7以上になる時点まで、前記軽圧下帯にて鋳片の圧下を継続して鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するに際し、前記軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させる。
【選択図】 図2
Description
本発明は、凝固末期の鋳片を凝固収縮量程度の圧下量で圧下して、中心偏析の軽微な鋼の連続鋳造鋳片を製造する、鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造機に関するものである。
鋼の凝固過程では、炭素、燐、硫黄などの溶質元素は、凝固時の再分配により未凝固の液相側に濃化される。これがデンドライト樹間に形成されるミクロ偏析である。連続鋳造機により鋳造されつつある鋳片の凝固収縮や、連続鋳造機のロール間で発生する凝固シェルのバルジングなどによって、鋳片中心部に空隙が形成されたり負圧が生じたりすると、この部分に溶鋼が吸引されるが、凝固末期の未凝固相には十分な量の溶鋼が存在しないので、上記のミクロ偏析によって濃縮された溶鋼が流動し、鋳片中心部に集積して凝固する。このようにして形成された偏析スポットは、溶質元素の濃度が溶鋼の初期濃度に比べ格段に高濃度となっている。これを一般にマクロ偏析と呼び、その存在部位から、中心偏析と呼んでいる。
この中心偏析は、一般に、鋼製品の品質を劣化させる。例えば、石油輸送用や天然ガス輸送用のラインパイプ材においては、サワーガスの作用により中心偏析を起点として水素誘起割れが発生する。また、飲料用の缶製品に用いられる深絞り材においては、成分の偏析により加工性に異方性が出現することもある。そのため、連続鋳造工程から圧延工程に至るまで、鋳片の中心偏析を低減する対策が多数提案されている。
そのなかで、効果的に鋳片の中心偏析を低減する手段として、連続鋳造機内において、未凝固相を有する凝固末期の鋳片をロールによって凝固収縮量程度の圧下速度で徐々に圧下しながら鋳造する方法(以下、「軽圧下」と呼ぶ)が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この軽圧下技術は、鋳造方向に並んだ複数対のロール(「軽圧下帯」と呼ぶ)を用い、凝固収縮量に見合った圧下速度及び圧下量で鋳片を徐々に圧下して未凝固相の体積を減少させ、鋳片中心部における空隙或いは負圧部の形成を防止すると同時に、デンドライト樹間に形成される濃化溶鋼の流動を防止し、これによって鋳片の中心偏析を軽減するという技術である。
また、最近では鋳造速度や二次冷却水量の変化に応じて鋳造中の鋳片の凝固完了位置を推定し、凝固完了位置に応じて軽圧下の位置を変更する、所謂「ダイナミック軽圧下法」も行われている。
このダイナミック軽圧下法に関連する技術として、例えば、特許文献2には、鋳造中の鋳片厚みを測定し、この測定結果に基づいて圧下量を制御し、所定の厚みの鋳片を鋳造する技術が開示されている。
また、特許文献3には、軽圧下帯入側の鋳片表面温度を900℃よりも低くするとともに、軽圧下帯の各位置における圧下速度(mm/min)を、未凝固相厚みが小さくなるほど、つまり最終凝固部に近づくほど圧下速度が大きくなるように、未凝固相厚みに応じて変更する技術が開示されている。
また更に、特許文献4には、連続鋳造機の軽圧下適用ゾーン内に複数台の軽圧下適用可能ロールスタンドを設け、連続鋳造中の鋳造速度の変化、溶鋼温度の変化、二次冷却条件の変化などによる凝固完了位置の変化に合わせて軽圧下適用可能ロールスタンドのロール間隔を変更することにより、鋳造長手方向に対して軽圧下適用位置を移動させる技術が開示されている。
特開昭49−121738号公報
特開昭58−13454号公報
特開平8−132203号公報
特開平5−15956号公報
ところで、連続鋳造鋳片の中心偏析は、鋳造速度の遅い方が程度は軽く、鋳造速度の高速化に伴って悪化する。これは種々の理由が重なって起こると考えられるが、主な理由としては、鋳造速度の上昇に伴って凝固完了位置が鋳造方向の下流側に移行し、最終凝固部に作用する溶鋼静圧が大きくなり、バルジングが発生しやすくなること、鋳造速度の上昇に伴って中心偏析の発生する可能性のある領域が鋳造方向に伸張し、バルジングなどの影響を受ける頻度が増大すること、鋳造速度の上昇に伴って未凝固相の鋳造方向角度が鋭くなり、凝固界面の凹凸によるブリッジングなどが発生しやすくなること、などが挙げられる。
上記従来技術では、鋳造速度と圧下速度との関係は明確な基準がなく、特許文献3のように、鋳造速度が変わっても所定の圧下速度(例えば、1.0mm/minなど)で軽圧下することが一般的であった。これでは、鋳造速度を高速化した場合には基本的に中心偏析の悪化は避けられない。尚、軽圧下帯での圧下速度は、軽圧下帯の圧下勾配(ロール間隔の減少勾配:mm/m)と鋳造速度(m/min)との積で決まるので、圧下勾配を一定にして鋳造速度を上昇すれば、圧下速度は鋳造速度に比例して上昇することになる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、凝固末期の鋳片を凝固収縮量程度の圧下量で圧下して中心偏析の軽微な鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するにあたり、圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させ、つまり、圧下速度を鋳造速度の上昇率よりも更に大きい上昇率で鋳造速度に応じて変更し、これにより軽圧下の効率を高め、近年の厳しい品質要求にも対処可能な中心偏析の軽微な鋳片を安定して製造することのできる、鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造機を提供することである。
上記課題を解決するための本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯を備えた連続鋳造機を用い、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から、少なくとも鋳片の厚み中心部の固相率が0.7以上になる時点まで、前記軽圧下帯にて鋳片の圧下を継続して鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するに際し、前記軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させることを特徴とするものである。
また、本発明に係る鋼の連続鋳造機は、複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯と、鋳片の鋳造速度を測定する鋳造速度測定装置と、圧下ロールのロール間隔を測定するロール間隔測定装置と、圧下ロールのロール間隔を調整するロール間隔調整装置と、前記鋳造速度測定装置による鋳造速度の測定値に基づいて、鋳造速度の上昇に伴って軽圧下帯の圧下勾配が増加するように、軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度に応じて定める圧下勾配設定装置と、を備えた鋼の連続鋳造機であって、鋳造中、鋳造速度の変化に対応して、前記圧下勾配設定装置からの圧下勾配の出力値に基づき、前記ロール間隔調整装置によって圧下ロールのロール間隔が自動的に調整されることを特徴とするものである。
本発明によれば、軽圧下帯における圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させるので、鋳造速度の上昇に伴う中心偏析の悪化を防止することができ、中心偏析の軽微な連続鋳造鋳片を安定して製造することが実現される。
以下、本発明を具体的に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。
鋼の連続鋳造鋳片の中心偏析の程度、つまり偏析度を、C/C0=1+α(ここで、Cは中心偏析部の溶質濃度、C0は溶質の初期濃度、α=0の場合は偏析がない状態を表す)で表すと、鋳造速度の上昇に伴って、αはほぼ鋳造速度に比例して増加することが判明した。一方、中心偏析の偏析スポットの大きさ(偏析スポット径)と、その偏析スポットにおける炭素濃度の偏析度C/C0との関係を求めると、C/C0=1+αと表したときに、図1に示すように偏析スポット径とαとはほぼ比例関係にあることが判明した。
これらの事象から、高速鋳造時であっても、偏析スポット径を小さくすれば、中心偏析は抑制されることが分かった。尚、図1の縦軸の偏析度C/C0は、鋳片の中心偏析部及び1/4厚み部から直径3mmのドリルで採取した分析試料の炭素濃度分析値の比で表示している。
ところで、軽圧下技術は、圧下効率を考慮しつつ、鋳片の凝固収縮量と熱収縮量との和の収縮量に対応する量の圧下量及び圧下速度で鋳片を徐々に圧下し、鋳片中心部での空隙の発生、つまりマクロ偏析スポットの原因となる領域の発生を防止する技術である。
即ち、偏析スポット径は、軽圧下帯における圧下勾配(ロール間隔の減少勾配:通常「mm/m」で表示)の設定量によって変化させることが可能である。従って、鋳造速度が高速化する場合には、軽圧下帯における圧下勾配を増加させることで、マクロ偏析スポットの原因となる領域の発生が抑制される或いは領域が狭くなり、高速化による鋳片中心偏析の悪化を防止できるとの知見が得られた。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させることを特徴とする。
ここで、注意すべき点は、本発明は、鋳造速度の上昇に対応して圧下勾配を増加するという点である。これに対して、従来、一般的には、鋳造速度の上昇に対応して圧下勾配は低下される。これは、連続鋳造機の構造や鋳造鋼種などに応じて最適な圧下速度が定められ、それに合わせて圧下勾配を決定するからである。例えば、或る鋼種の或る鋳造条件では、1.2mm/minの圧下速度が最適と定められると、鋳造速度が上昇した場合には、圧下速度を一定とするために、圧下勾配は低下される。なぜなら、圧下速度は、圧下勾配と鋳造速度との積であるので、一定の圧下速度を得るためには、圧下勾配を鋳造速度に反比例させる必要があるからである。
次に、本発明の具体的な実施の形態例を図面を参照して説明する。図2は、本発明に係るスラブ連続鋳造機の側面概略図である。尚、図2に示すスラブ連続鋳造機は垂直曲げ型の連続鋳造機であるが、湾曲型連続鋳造機であっても何ら問題なく本発明を適用することができる。
図2に示すように、スラブ連続鋳造機1には、溶鋼9を冷却して凝固シェル11を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼9を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、溶鋼9の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、浸漬ノズル4が設置されている。一方、鋳型5の下方には、サポートロール、ガイドロール及びピンチロールからなる複数対の鋳片支持ロール6が配置されている。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール6の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置された二次冷却帯が構成され、二次冷却帯のスプレーノズルから噴霧される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって鋳片10は引抜かれながら冷却されるようになっている。また、鋳片支持ロール6の下流側には、鋳造された鋳片10を搬送するための複数の搬送ロール7が設置されており、この搬送ロール7の上方には、鋳造される鋳片10から所定の長さの鋳片10aを切断するための鋳片切断機8が配置されている。
鋳片10の凝固完了位置13を挟んで鋳造方向の上流側及び下流側には、鋳片10を挟んで対向する鋳片支持ロール間の間隔(この間隔を「ロール間隔」と呼ぶ)を鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定された、複数対の鋳片支持ロール群から構成される軽圧下帯14が設置されている。軽圧下帯14では、その全域または選択した一部領域で、鋳片10に軽圧下を行うことが可能である。軽圧下帯14の各鋳片支持ロール間にも鋳片10を冷却するためのスプレーノズルが配置されている。尚、軽圧下帯14の鋳片支持ロール6を、軽圧下を施すためのロールであることから「圧下ロール」とも称している。また、鋳造方向下流に向かって順次狭くなるように設定されたロール間隔の状態を「圧下勾配」と称している。圧下勾配は、通常1m当たりのロール間隔絞り込み量(mm)で表示される。
図2に示す軽圧下帯14は、三対の圧下ロールを1組とするセグメント構造の圧下ロール群が鋳造方向に3基つながって構成されており、各セグメントの上流側端部と下流側端部には、圧下ロールのロール間隔を鋳造中に測定するためのロール間隔測定装置16が設置されている。このロール間隔測定装置16は、各セグメントの端部の圧下ロールの位置を、レーザー光などを利用して非接触で測定しており、測定値は圧下勾配設定装置18に入力され、圧下勾配設定装置18は上下一対の圧下ロールの位置の測定値からロール間隔を算出している。各セグメントの端部に設けられたロール間隔測定装置16によって圧下ロールのロール間隔が測定されるので、それぞれのセグメントの圧下勾配が分かるようになっている。尚、このロール間隔測定装置16は非接触で測定しているが、本発明を実施する上で非接触とする必要はなく、作動トランスなどを圧下ロールに接触させて配置し、それによりロール間隔を測定しても構わない。
また、軽圧下帯14の各セグメントの上面側のセグメントには、その上流側端部及び下流側端部に、油圧或いは電動機による遠隔操作によって鋳造中でも圧下ロールのロール間隔を調整可能なロール間隔調整装置17が設置されている。但し、セグメント構造であるので、三対の圧下ロールのロール間隔が一括して調整されるようになっている。各セグメントのロール間隔調整装置17は圧下勾配設定装置18からの信号によって圧下ロールのロール間隔を変更するようになっている。ロール間隔の変更の際には、ロール間隔測定装置16による測定値でフィードバック制御され、所定の間隔に調整されるようになっている。
また、鋳造される鋳片10の長さを測定すると同時に鋳造速度を測定するためのメジャーロール15が、スラブ連続鋳造機1の湾曲部と出側との二箇所に設置されている。メジャーロール15が鋳片10と接触して回転し、この回転数から鋳造速度及び鋳造される鋳片10の長さを測定する装置である。メジャーロール15の測定値は圧下勾配設定装置18に入力されている。
圧下勾配設定装置18は、メジャーロール15から入力される鋳造速度に基づき、鋳造速度に応じた圧下勾配となるように、入力される鋳造速度に応じてロール間隔測定装置16にロール間隔の調整命令を出力する装置である。
圧下勾配設定装置18には、例えば図3に示すような鋳造速度と圧下勾配との関係が鋼種毎に入力されており、この鋳造速度と圧下勾配との関係に基づいて、圧下勾配を調整する。尚、図3には、圧下速度も示しており、圧下勾配を一定とした場合は鋳造速度に比例して圧下速度が上昇するが、本発明の場合には、圧下速度は鋳造速度の上昇率よりも更に大きい上昇率で上昇することになる。また、図3は、厚みが240mm、幅が2000mm、炭素濃度がおよそ0.08質量%の鋳片を鋳造するときの例である。
このようにして構成される本発明のスラブ連続鋳造機1を用いて、以下のようにして溶鋼9の連続鋳造を実施する。
取鍋からタンディッシュ2に溶鋼9を注入してタンディッシュ2に所定量の溶鋼9を滞留させ、次いで、タンディッシュ2に滞留した溶鋼9を、浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入する。鋳型5に注入された溶鋼9は、鋳型5で冷却されて凝固シェル11を形成し、外殻を凝固シェル11とし、内部に未凝固相12を有する鋳片10として、鋳片支持ロール6に支持されながらピンチロールによって鋳型5の下方に連続的に引抜かれる。鋳片10は、鋳片支持ロール6を通過する間、二次冷却帯の二次冷却水で冷却され、凝固シェル11の厚みを増大し、軽圧下帯14で軽圧下されながら凝固完了位置13で内部までの凝固を完了する。鋳片10は、鋳片切断機8によって切断されて鋳片10aとなる。
このような連続鋳造操業の種々の鋳造条件において、予め伝熱計算などを用いて凝固シェル11の厚み並びに鋳片厚み中心部の固相率を求めておき、軽圧下帯14に入る時点での鋳片厚み中心部の固相率が0.4以下になるとともに、軽圧下帯14の出側での鋳片厚み中心部の固相率が0.7以上になるように、鋳造速度及び二次冷却水量などの鋳造条件を調整する。軽圧下を開始する時点での鋳片厚み中心部の固相率は0.4以下であればいくらであっても構わず、また、軽圧下帯14の出側での鋳片厚み中心部の固相率は0.7以上であればいくらであっても構わない。尚、図2では凝固完了位置13が軽圧下帯14の範囲内であるが、これは例として示すものである。
鋳片厚み中心部の固相率が0.4を越えてから軽圧下を開始しても、それ以前に濃化溶鋼の流動が発生する可能性があり、これにより中心偏析が発生し、軽圧下の効果を十分に発揮することができず、また、濃化溶鋼の流動は、固相率が0.7程度まで発生する可能性があり、それよりも早期に軽圧下を停止してしまうと、濃化溶鋼の流動が発生し、これにより中心偏析が発生して、軽圧下の効果を十分に発揮することができない。
尚、軽圧下帯14の設置範囲が鋳造方向に長く、軽圧下帯14の中でも軽圧下を付与するロール群と軽圧下を付与しないロール群が存在する場合には、実際に軽圧下を付与するロール群のみを上記の軽圧下帯14とみなして操業すればよい。
そして、鋳造中、鋳片10の鋳造速度の変化に応じて、圧下勾配設定装置18は、メジャーロール15による鋳造速度の測定結果に基づいて軽圧下帯14の圧下勾配を設定し直し、各セグメントのロール間隔調整装置17を駆動させ、軽圧下帯14の圧下勾配を変更する。この場合、鋳造速度に±0.1m/min程度の不感帯を設け、測定される鋳造速度がこの範囲内の場合には圧下勾配をそのまま維持するなどとしても構わない。鋳造速度が変わった場合も、軽圧下帯14に入る時点での鋳片厚み中心部の固相率が0.4以下になるとともに、軽圧下帯14の出側での鋳片厚み中心部の固相率が0.7以上になるように、二次冷却水量などの鋳造条件を調整する。軽圧下帯14における総圧下量は、鋳造速度によっても変わるが、3〜12mm程度とすれば十分である。
このようにして鋼の連続鋳造を実施することで、鋳造速度が上昇した場合でも軽圧下が効果的且つ有効に鋳片10に作用し、鋳造速度の上昇に伴う中心偏析の悪化を防止することができ、中心偏析の軽微な鋳片10aを安定して製造することが可能となる。
尚、本発明は上記説明に限るものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記説明のスラブ連続鋳造機1では、軽圧下帯14がセグメント構造であるが、セグメント構造とする必要はなく、軽圧下帯14のそれぞれの圧下ロールを油圧或いは電動機で個別に昇降させるようにしてもよい。また、図2では、スラブ連続鋳造機1の水平部に軽圧下帯14が設置されているが、鋳片支持ロール6の設置されている範囲であればどこであっても、例えば湾曲部であっても軽圧下帯14とすることができる。
また、本発明は、図2に示すような、鋳造速度に対応して圧下勾配を変更可能な連続鋳造機での適用が最適であるが、このような機能を備えていない連続鋳造機の場合には、以下のようにすることで、ほぼ同等の効果を得ることができる。即ち、鋳造速度が変化すると凝固完了位置13が鋳造方向で変化するが、これを利用して、予め鋳造速度に対応した凝固完了位置13に合わせて、圧下勾配を設定しておけば、つまり、予め下流側ほど圧下勾配が大きくなるようなロール間隔としておけば、鋳造速度の増速時の中心偏析悪化を防止することができる。
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
15 メジャーロール
16 ロール間隔測定装置
17 ロール間隔調整装置
18 圧下勾配設定装置
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
7 搬送ロール
8 鋳片切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 凝固完了位置
14 軽圧下帯
15 メジャーロール
16 ロール間隔測定装置
17 ロール間隔調整装置
18 圧下勾配設定装置
Claims (2)
- 複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯を備えた連続鋳造機を用い、鋳片の厚み中心部の固相率が0.4以下の時点から、少なくとも鋳片の厚み中心部の固相率が0.7以上になる時点まで、前記軽圧下帯にて鋳片の圧下を継続して鋼の連続鋳造鋳片を鋳造するに際し、前記軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度の上昇に対応して増加させることを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
- 複数対の圧下ロールからなる軽圧下帯と、鋳片の鋳造速度を測定する鋳造速度測定装置と、圧下ロールのロール間隔を測定するロール間隔測定装置と、圧下ロールのロール間隔を調整するロール間隔調整装置と、前記鋳造速度測定装置による鋳造速度の測定値に基づいて、鋳造速度の上昇に伴って軽圧下帯の圧下勾配が増加するように、軽圧下帯の圧下勾配を鋳造速度に応じて定める圧下勾配設定装置と、を備えた鋼の連続鋳造機であって、鋳造中、鋳造速度の変化に対応して、前記圧下勾配設定装置からの圧下勾配の出力値に基づき、前記ロール間隔調整装置によって圧下ロールのロール間隔が自動的に調整されることを特徴とする、鋼の連続鋳造機。
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