JP2010095731A - 難燃性スチレン系樹脂組成物およびそれからの成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】難燃性を維持しつつ、工業的に有用な熱安定性、色相、流動性および耐熱性等のバランスを兼ね備えたスチレン系樹脂組成物およびそれから形成されるシルバーの無い外観に優れた成形品を提供する。
【解決手段】(A)スチレン系樹脂(A成分)100重量部および(C)下記式(1)で示される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部からなる樹脂組成物であって、当該有機リン化合物(C成分)は、
(i)500℃における加熱重量減少残さが10%以下、
(ii)HPLC純度が90%以上、且つ
(iii)酸価が0.5mgKOH/g以下
を満足することを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
【化1】
Figure 2010095731

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、置換基を有しても良いフェニル基である。)
【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性、熱安定性、色相、流動性および耐熱性を兼ね備えた難燃性スチレン系樹脂組成物およびそれから形成される外観に優れた成形品に関する。さらに詳しくは特定の特性を有するペンタエリスリトールジホスホネート化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性スチレン系樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
スチレン系樹脂は耐衝撃性に優れ、さらに成形性も優れていることから、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、自動車部品など多岐の分野で使用されているが、スチレン系樹脂の易燃性のために、その用途は制限されている。特に、近年製品の安全性を高めるためにオフィスオートメーション機器や、家電製品の成形品には、アメリカの規格であるアンダーライターズラボラトリー(UL)社のサブジェクト94に基づく難燃試験の規制が年々厳しくなっており、より高度な難燃化が要求されている。
スチレン系樹脂のような易燃性樹脂に難燃性を付与する方法として、従来からハロゲン系難燃剤が用いられている。ハロゲン系難燃剤は酸化アンチモンと併用することによって、高度な難燃化が達成されることが一般に知られており、多用されてきたが、近年、燃焼時の有毒ガス発生等の環境問題からノンハロゲン系難燃剤の検討が盛んに行われている。
かかる方法として、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との混合物にリン系難燃剤を添加する方法が多数報告されている。かかる方法はスチレン系樹脂にポリフェニレンエーテル系樹脂を添加することによって熱安定性を向上させ、リン系難燃剤により難燃化を行う方法であり、特許文献1〜6等に開示されている。
しかしながら上記公報の樹脂組成物はいずれも、難燃剤添加前と比較し耐熱性が著しく低下するため、ポリフェニレンエーテル系樹脂添加の特性の一つである耐熱性の向上を生かせておらず、実用化に至っていない。これは上記公報の樹脂組成物に用いられているリン系難燃剤の可塑性に由来しており、芳香族系リン酸エステル単量体、或いは芳香族系リン酸エステル縮合体を用いているためであり、リン系難燃剤を用いる限りは避けられないものとされてきた。
特許文献7には、耐衝撃性ポリスチレンにペンタエリスリトールジホスホネート化合物を添加した2成分系樹脂組成物およびそれに更にポリフェニレンエーテルを添加した3成分系樹脂組成物が、前者は比較例として、後者は実施例として開示されている。しかしながら、この特許ではペンタエリスリトールジホスホネート化合物の純度、酸価、および耐衝撃性ポリスチレンの還元粘度、ゴム成分量が適切ではなかったものと推測され、いずれも実用可能な難燃性組成物は得られていない。すなわち、該特許の比較例においては、耐衝撃性ポリスチレンに種々のペンタエリスリトールジホスホネート化合物を8重量%添加した例が記載されており、実施例ではその難燃性を改善するためにポリフェニレンエーテルを更に添加しているが、上記ペンタエリスリトールジホスホネート化合物の欠点のため、難燃性に関して未だ不十分であり、実用に耐えないものであった。
前記のような状況のため、該特許には実用上重要な項目となる樹脂組成物の熱安定性、色相、外観に関係する、ペンタエリスリトールジホスホネート系化合物の加熱重量減少残さや純度および酸価についてもなんら記載されていない。
特許文献8には、耐衝撃性ポリスチレンを主とする樹脂成分にペンタエリスリトールのジホスフェートまたはジホスホネートを添加する発明が記載されている。ジホスホネートを使用する例としては、HIPS/ジホスホネート組成物が実施例として挙げられ、難燃性V−2を達成しているが、実用上重要な項目となる成形品の外観および熱安定性については未だ不十分であった。
特許文献9には、ABS樹脂に、2個のヒドロカルビル置換基中の全炭素数が8以下である、従って2個の置換基が同時に芳香環を含むことができない、本発明のものとは異なるP,P′−ジヒドロカルビルペンタエリスリトールジホスホネートを配合する難燃性樹脂組成物が記載されている。ジホスホネートとして具体的には、ケミカルウエポンの原料となるので工業的使用が禁止されているジメチルペンタエリスリトールジホスホネートが使用され、ABS樹脂に25重量%配合した時に難燃性V−0を達成してはいるが、実用的でないのは明白である。また、この公報には実用上重要な項目となる成形品の外観、熱安定性、色相に関係するペンタエリスリトールジホスホネート化合物の加熱重量減少残さ、純度、酸価に関する記載もされていない。
特許文献10には、芳香族ポリエステル樹脂を主とする樹脂成分に酸価が0.7mgKOH/g以下のペンタエリスリトールジホスホネートを配合する難燃性に優れた樹脂組成物が記載されている。
本発明者らが知る限り、従来スチレン系樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、リン化合物単独の使用で有効な難燃レベルを達成し、かつ実用的な諸物性を達成することは極めて困難であり、実用上多くの問題点があった。リン化合物を使用して実用上有効な難燃レベルを達成するためには多量のリン化合物を使用する必要があった。更に従来のリン化合物は低沸点化合物であり、比較的高温で押出および成形を行う当該樹脂において、押出時のガス発生や成形時の金型汚染等の問題が発生した。また、更に通常のリン化合物をスチレン系樹脂に添加すると耐熱性が極端に低下し、スチレン系樹脂本来の特徴を損なうことが一般に知られている。
特開昭54−38348号公報 特開平5−287119号公報 特開平5−339417号公報 特開平7−316383号公報 特開平9−132693号公報 特開平9−151315号公報 米国特許4,162,278号公報 WO01/57134号明細書 WO00/17268号明細書(特表2002−526585号公報) WO02/92690号明細書
本発明は熱安定性、色相、流動性および耐熱性に優れ、且つ難燃性能を併せ持つスチレン系樹脂組成物およびそれから形成される外観に優れた成形品の提供を目的とするものである。
本発明の第1の目的は、難燃性を維持しつつ、工業的に有用な熱安定性、色相、流動性および耐熱性等のバランスを兼ね備えたスチレン系樹脂組成物およびそれから形成されるシルバーの無い外観に優れた成形品を提供することにある。
本発明の第2の目的は、実質的にハロゲンを含有しないで、UL94規格のV−2レベル以上の高度な難燃性を達成することができるスチレン系樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明の第3の目的は、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品などに有利に利用できる難燃性のスチレン系樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、
(A)スチレン系樹脂(A成分)100重量部および(C)下記式(1)で示される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部からなる樹脂組成物であって、当該有機リン化合物(C成分)は、
(i)500℃における加熱重量減少残さが10%以下、
(ii)HPLC純度が90%以上、且つ
(iii)酸価が0.5mgKOH/g以下
を満足することを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物、
Figure 2010095731
(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、置換基を有しても良いフェニル基である。)
により達成される。
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の難燃性スチレン系樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(i)難燃剤として使用する有機リン化合物の特性に起因して、スチレン系樹脂の成形時または成形品の使用時に、スチレン系樹脂の熱劣化をほとんど起さず、熱安定性に優れた樹脂組成物が得られる。また、ヤケやシルバーの無い外観に優れた成形品が得られる。従って熱安定性、外観、色相、流動性、耐熱性および難燃性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく工業的に有用な難燃性、耐熱性、流動性、および機械物性を有するスチレン系樹脂組成物が得られる。
(ii)難燃剤としての有機リン化合物は、スチレン系樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−2レベルは達成される。すなわち、目的とする難燃レベルを達成するために多くの添加量および成分の添加を必要とせず、比較的簡単な組成により目的とする難燃レベルの組成物が得られる。
(iii)実質的にハロゲンを含有することなく、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品など種々の成形品を成形する材料が得られる。
以下本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明のA成分として使用するスチレン系樹脂とは、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものである。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。耐衝撃性の観点からは、ゴム変性スチレン系樹脂が好ましく、ゴム変性スチレン系樹脂はビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
ゴム変性スチレン系樹脂におけるゴム状重合体は、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜50重量%、好ましくは98〜60重量%である。この範囲内では目的とする樹脂組成物の耐衝撃性と剛性のバランスが向上し、熱安定性が良い。
本発明におけるスチレン系樹脂の分子量の尺度である還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は0.2〜1.5dl/gであり、好ましくは0.3〜1.4dl/gである。ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/Cに関する上記条件を満たすための手段としては、重合開始剤量、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を上げることができる。還元粘度が低いと耐熱性、耐衝撃性も低くなる。
本発明で使用されるスチレン系樹脂としては、好ましくは耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)である。HIPSの衝撃値はJISK6871試験により測定されたアイゾット衝撃強度(ノッチ付)が20J/m〜300J/mの範囲が好ましい。
本発明の樹脂組成物のうち、(A)スチレン系樹脂(A成分)と(C)有機リン化合物(C成分)からなる樹脂組成物の難燃性は、A成分のゴム状重合体含有量およびA成分の還元粘度の影響を受けやすい。該組成物での安定した難燃性を得るための、A成分のゴム状重合体含有量は1〜6%、好ましくは1〜5.5%である。該組成物での安定した難燃性を得るための、A成分の還元粘度は0.2〜0.9dl/g、好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
本発明において、C成分として使用する有機リン化合物は、下記(i)〜(iii)の特性を満足する下記式(1)で表されるペンタエリスリトールジホスホネート化合物である。
(i)500℃における加熱重量減少残さが10%以下、
(ii)HPLC純度が90%以上、
(iii)酸価が0.5mgKOH/g以下
Figure 2010095731
(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、置換基を有しても良いフェニル基である。)
前記(i)〜(iii)の特性を満足する前記式(1)の有機リン化合物を使用することにより熱安定性、色相、外観、難燃性等に優れた樹脂組成物が得られる。
C成分として使用する有機リン化合物の500℃における加熱重量減少残さは、熱重量天秤試験(TGA法)により窒素気流下、昇温速度10℃/分にて測定を行い、500℃での残量(%)を加熱重量減少残さとした。有機リン化合物(C成分)の500℃加熱重量減少残さは10%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。500℃加熱重量減少残さが多いものは、不純物を多く含んでいることを示しており、この不純物は本発明の樹脂組成物の熱安定性、色相、外観、難燃性等に悪影響を及ぼす。
C成分の有機リン化合物は、そのHPLC純度が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。かかる高純度のものは難燃性、色相および熱安定性に優れ好ましい。HPLC純度が90%未満のものは、その含有する不純物の影響により、難燃性、色相および熱安定性に悪影響を及ぼし、成型機の金型汚染、成形品の外観不良(シルバー)が発生する。
ここでC成分のHPLC純度の測定は、以下の方法が用いられる。
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6.5:3.5(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
C成分の有機リン化合物は、その酸価が0.5mgKOH/g以下、好ましくは0.4mgKOH/g以下、より好ましくは0.3mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.2mgKOH/g以下、特に好ましくは0.1mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のC成分を使用することにより、色相、外観および難燃性に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。酸価が0.5mgKOH/gを越えるC成分の有機リン化合物は、成型機の金型汚染や押出機の錆等の原因にもなり好ましくない。また、酸価が高いと有機リン化合物自身の分解の原因となり、有機リン化合物の分解物は成形品の外観不良の原因となりシルバーが発生する。さらに、本発明の樹脂組成物は電気・電子機器用途にも使用されるため、酸成分が電気・電子機器に悪影響を及ぼすことも考えられる。ここで酸価とは、サンプル(C成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味し、JIS−K−3504に規定される方法により測定できる。
本発明の樹脂組成物は、ベース樹脂を基準としたHDT保持率が85%以上であり、かかる保持率の範囲では実用上大きな欠点となり得ず、ベース樹脂本来の高い耐熱性を保持することを特徴とする。HDT保持率の好適範囲としては90%以上、より好ましくは95%以上である。
本発明ではC成分の有機リン化合物の他に、C成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、C成分である有機リン化合物の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。これらの他の配合成分については後に具体的に説明する。
本発明においてC成分として使用するリン系化合物の好適例としては、下記式(2)で表される有機リン化合物である。
Figure 2010095731
次に本発明における前記有機リン化合物(C成分)の合成法について説明する。C成分の有機リン化合物は、本発明特定の特性を満足する限り、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであっても良い。
C成分の有機リン化合物は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
C成分の有機リン化合物の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるC成分の有機リン化合物は、前記特定の特性を満足するものであれば、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
(I)C成分中の前記(2)の有機リン化合物の製造法1;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(II)C成分中の前記(2)の有機リン化合物の製造法2;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた反応物にベンジルアルコールを反応させる。得られたホスファイト化合物をベンジルブロマイド存在下、高温でArbuzov転移を行うことにより得ることができる。
さらに、前記(I)または(II)の製造法で得られた有機リン化合物は、前記(i)〜(iii)の特性を満足させるために洗浄を行なう。洗浄の方法としては、メタノールでの還流洗浄法が採用される。
本洗浄方法は、不純物を含有する有機リン化合物とメタノールを加熱還流させた後、室温まで冷却し濾過を行う方法である。本洗浄方法はリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)よりも効果的に不純物の除去、および酸価の低減を行うことができ、コスト的にも有利である。
具体的な洗浄法は、前記(I)または(II)の製造法にて製造されたペンタエリスリトールジホスホネートの粗生成物100部にキシレン100〜500部を添加し、15〜40℃で0.5〜3時間攪拌機により攪拌した後、濾過する。得られた濾取物100部にメタノール100〜500部を添加し、該混合物を0.5〜6時間加熱還流する。このとき、固体成分が完全溶解する必要は無い。加熱還流後のスラリーを室温まで冷却し、濾過することによって、目的の特性を有するペンタエリスリトールジホスホネートを得ることができる。
C成分の有機リン化合物は、スチレン系樹脂(A成分)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜50重量部、特に好ましくは5〜50重量部の範囲で配合される。
C成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。さらに他の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂の使用によってもC成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりC成分の配合割合を低減することができる。
前記した本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物はハロゲンを実質的に含有しない組成物であり、熱安定性と色相において非常に優れたV−2レベル以上の難燃性が達成される。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A成分)および前記式(1)で示される有機リン化合物(C成分)からなる難燃性スチレン系樹脂組成物(I)である。
難燃性スチレン系樹脂組成物(I)
(A)スチレン系樹脂(A成分)100重量部および下記式(1)で示される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部からなる樹脂組成物であって、当該有機リン化合物(C成分)は、
(i)500℃における加熱重量減少残さが10%以下、
(ii)HPLC純度が90%以上、且つ
(iii)酸価が0.5mgKOH/g以下
を満足することを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
Figure 2010095731
(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、置換基を有しても良いフェニル基である。)
前記した本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物(I)は、熱安定性に優れ、成形時にヤケがなく色相が良好で、成形品はシルバーの発生が無く外観に優れ、流動性および耐熱性も良好である。また、難燃性はUL94規格の難燃レベルで少なくともV−2であり、好適にはV−1である。V−2という同一難燃レベルでもその平均燃焼秒数や酸素指数(LOI)によって、難燃性に差が生じる。平均燃焼秒数が小さいと延焼を防ぐ効果が高く、厚み1.6mmの試験片で平均燃焼秒数は10秒以下が好ましく、8秒以下がより好ましく、6秒以下が特に好ましい。また、LOIが22.0以上であれば空気中で燃焼し難くなり適用範囲が広がり好ましい。
有機リン化合物(C成分)は、スチレン系樹脂(A成分)100重量部に対して2〜50重量部の範囲が好ましく、3〜30重量部の範囲がより好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物において、有機リン化合物(C成分)以外に、他の難燃剤としてリンまたはリン化合物(D成分)を併用することができる。D成分としては下記(D−1)〜(D−5)を例示することができる。
(D−1);赤リン
(D−2);下記一般式(D−2)で表されるトリアリールホスフェート
Figure 2010095731
(D−3);下記一般式(D−3)で表される縮合リン酸エステル
Figure 2010095731
(D−4);下記一般式(D−4)で表される縮合リン酸エステル
Figure 2010095731
(D−5);下記一般式(D−5)で表される有機リン化合物
Figure 2010095731
前記式(D−2)〜(D−4)中Q〜Qは、それぞれ同一もしくは異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基である。このアリール基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基が挙げられる。これらアリール基は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
式(D−3)および(D−4)において、ArおよびArは、両者が存在する場合(D−4の場合)には同一または異なっていてもよく、炭素数6〜15のアリーレン基、好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基を示す。具体例としては、フェニレン基またはナフチレン基が挙げられる。このアリーレン基は1〜4個、好ましくは1〜2個の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基の如き炭素数1〜4のアルキル基、(ii)ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基およびクミル基の如き炭素数7〜20のアラルキル基、(iii)Q−W−式で示される基(ここでWは−O−または−S−を示し、Qは炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基または炭素数6〜15、好ましくは6〜10のアリール基を示す)および(iv)フェニル基の如き炭素数6〜15のアリール基が挙げられる。
式(D−3)および(D−4)において、mは1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数を示し、特に好ましくは1である。
式(D−4)においてZはArおよびArを結合する単結合もしくは基であり、−Ar−Z−Ar−は通常ビスフェノールから誘導される残基である。かくしてZは単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−または炭素数1〜3のアルキレン基を示し、好ましくは単結合、−O−、またはイソプロピリデンである。
前記(D−1)〜(D−5)のリンまたはリン化合物以外のリン化合物であってもC成分と併用することができる。
前記(D−1)〜(D−5)のリンもしくはリン化合物(D成分)を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、有機リン化合物(C成分)100重量部当たり、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、特に好ましくは10〜60重量部の範囲が適当である。前記(D−1)〜(D−5)のリンもしくはリン化合物の内、好ましくは(D−2)〜(D−5)のリン化合物である。
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに下記式で示されるビスクミル化合物(E成分)を配合することができる。
Figure 2010095731
このビスクミル化合物の芳香族環は1〜5個、好ましくは1〜3個の置換基を有していてもよく、その置換基としては(i)メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基およびノニル基の如き炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜9のアルキル基、(ii)メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基の如き炭素数1〜12のアルキルオキシ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルオキシ基、(iii)メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基およびペンチルチオ基の如き炭素数1〜12のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜9のアルキルチオ基および(iv)Ar−W−式で表される基(ここでWは−O−、−S−または炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基を示し、Arは炭素数6〜15、好ましくは炭素数6〜10のアリール基を示す)が挙げられる。
このビスクミル化合物(E成分)を樹脂組成物に配合する場合、その割合は、スチレン系樹脂(A成分)100重量部に対して0.01〜3重量部、好ましくは0.02〜2重量部、特に好ましくは0.03〜1重量部配合される。このビスクミル化合物を前記割合で配合することによる難燃効果はラジカル発生によるものと推測され、その結果として難燃性のレベルが向上する。
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに知られた難燃助剤を配合することができる。難燃助剤としては、例えばシリコーンオイルを挙げることができる。かかるシリコーンオイルとしては、ポリジオルガノシロキサンを骨格とし、好ましくはポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、あるいはそれらの任意の共重合体または混合物であり、なかでもポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。その粘度は好ましくは0.8〜5,000センチポイズ(25℃)、より好ましくは10〜1,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは50〜500センチポイズ(25℃)であり、かかる粘度の範囲のものは難燃性に優れ好ましい。かかるシリコーンオイルの配合量は、スチレン系樹脂(A成分)100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
更に本発明の難燃性樹脂組成物は種々の難燃性改良剤を配合することもできる。本発明の難燃性樹脂組成物に配合することのできる難燃性改良剤の例として、フェノール樹脂やエポキシ樹脂に代表される熱硬化性樹脂が挙げられる。
難燃性改良剤として使用されるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例えばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あるいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは、硬化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で非反応性であるフェノールノボラック樹脂が難燃性、耐衝撃性、経済性の点で好ましい。また、形状は特に限定されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、液状など何れも使用できる。上記フェノール樹脂は必要に応じて1種または2種以上の混合物として使用することができる。
フェノール樹脂は特に限定するものではなく、一般に市販されているものを使用することができる。例えば、ノボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるように反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後に加熱、還流反応を行う。生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去することにより得られる。これらの樹脂は複数の原料成分を用いることにより、共縮合フェノール樹脂を得ることができ、これについても同様に使用することができる。
また、レゾール型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2となるように反応槽に仕込み、さらに水酸化ナトリウム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の操作を行うことによって得ることができる。
ここで、フェノール類とはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフェノール類は必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。一方、アルデヒド類とは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙げられる。これらのアルデヒド類についても必要に応じて1種または2種以上の混合物として用いることができる。
フェノール樹脂の分子量についても、特に限定されるものではないが、好ましくは数平均分子量200〜2,000、さらに好ましくは400〜1,500の範囲のものが機械的物性、成形加工性、経済性に優れ好ましい。
難燃性改良剤として使用されるエポキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって1種類のみに限定されるものではなく、2種類以上の併用または、各種変性されたものでも使用可能である。
前記難燃性改良樹脂を配合する場合、その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜45重量部、好ましくは0.1〜40重量部、特に好ましくは0.5〜35重量部である。
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに滴下防止剤としてフッ素含有樹脂を配合することができる。フッ素含有樹脂の配合により成形品の難燃性が改良される。殊に成形品の燃焼テストにおける滴下が抑制される。
滴下防止剤として使用するフッ素含有樹脂としては、フィブリル形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素含有モノマーの単独または共重合体が挙げられる。特にフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしてはテトラフルオロエチレンを乳化重合して得られるラテックスを凝析および乾燥した粉末(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのファインパウダーであり、ASTM規格においてタイプ3に分類されるもの)が挙げられる。あるいはそのラテックスに界面活性剤を加え濃縮および安定化して製造される水性分散体(いわゆるポリテトラフルオロエチレンのディスパージョン)が挙げられる。
かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの分子量は、標準比重から求められる数平均分子量において100万〜1,000万、より好ましく200万〜900万である。
さらにかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、1次粒子径が0.05〜1.0μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。ファインパウダーを使用する場合の2次粒子径としては1〜1,000μmのものが使用可能であり、さらに好ましくは10〜500μmのものを用いることができる。
かかるポリテトラフルオロエチレンはUL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンとしては具体的には、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)6Jおよびテフロン(登録商標)30J、ダイキン化学工業(株)製のポリフロンMPA FA−500、ポリフロンF−201LおよびポリフロンD−1、および旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のCD076などを挙げることができる。
かかるポリテトラフルオロエチレンはファィンパウダーにおいて、2次凝集を防止するために各種の処理を施したものがより好ましく使用される。かかる処理としては、ポリテトラフルオロエチレンの表面を焼成処理することが挙げられる。またかかる処理としては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの表面を非フィブリル形成能のポリテトラフルオロエチレンで被覆することが挙げられる。本発明においてより好ましいのは後者の処理を行ったポリテトラフルオロエチレンである。前者の場合には、目的とするフィブリル形成能が低下しやすいためである。かかる場合フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが全体量の70〜95重量%の範囲であることが好ましい。またフィブリル非形成能ポリテトラフルオロエチレンとしては、その分子量が標準比重から求められる数平均分子量において1万〜100万、より好ましく1万〜80万である。
かかるポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)は、上記の通り固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
かかる凝集混合物を調製するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有する上記ビニル系重合体の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合体成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、ビニル系重合体のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、1〜80重量%、特に1〜60重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、攪拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造方法を好ましく挙げることができる。他に攪拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系重合体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」、およびGEスペシャリティーケミカルズ社より「BLENDEX449」を代表例として挙げることができる。
フッ素含有樹脂を配合する場合その割合は、A成分100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以上では十分な溶融滴下防止性能が得られ易く、10重量部以下では外観不良や分散不良を起こし難くなり、さらに経済的にも有利となるため好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物には、種々の添加剤、例えば、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤などの劣化防止剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、ガラス繊維、炭素繊維などの補強繊維、タルク、マイカ、ワラストナイトなどの充填剤、顔料などの着色剤などを添加しても良い。前記添加剤の使用量は耐熱性、耐衝撃性、機械的強度などを損なわない範囲で、添加剤の種類および目的に応じて適当に選択できる。
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、A〜C成分および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合した組成物であっても良いが、通常、前記予備混合物を均一に溶融混合した混合物である場合が多い。このような混合物は、前期予備混合物を混練手段を用い、例えば、200℃〜300℃、好ましくは210℃〜280℃程度の温度で溶融混練し、ペレット化することによって得ることができる。混練手段としては、種々の溶融混合機、例えば、ニーダー、単軸または二軸押出機などが使用できるが、二軸押出機などを用いて樹脂組成物を溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出、ペレタイザーによりペレット化する場合が多い。
本発明の難燃性樹脂組成物は、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、自動車部品などの種々の成形品を成形する材料として有用である。このような成形品は慣用の方法、例えば、ペレット状難燃性樹脂組成物を射出成形機を用いて、例えば、200〜280℃程度のシリンダー温度で射出成形することにより製造できる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。尚、評価は下記の方法で行った。
(1)樹脂組成物の着色性
樹脂組成物の押出混練時に着色剤としてタイオキサイド製RTC−30を樹脂成分100重量部に対して0.5重量部添加し、得られた樹脂組成物の角板(縦50mm×横50mm×厚み5mm)を射出成形した。射出成形時に該樹脂組成物をシリンダー内で10分間滞留し、その後3ショット目に得られた角板の色相を日本電色工業(株)製分光式色彩計SE−2000を用いて、反射測定を行い、リン化合物を添加しない組成物との△Eによって着色性の判定を行った。判定基準は下記の基準で行った。
ΔEが1.0未満のもの:○
ΔEが1.0以上のもの:×
(2)成形品の色相
押出混練にて得られたペレットから、見本板(全体は縦90mm×横50mmの大きさで、縦方向の20mmの厚さが3mm、縦方向の45mmの厚さが2mm、縦方向の25mmの厚さが1mmの階段状になっている板)を射出成形し、その色相について目視で判定した。判定基準は下記の基準で行った。
色相良好:○
見本板に若干ヤケが観られるもの:△
見本板にヤケが観られるもの:×
(3)成形品の外観(シルバーの有無)
押出混練にて得られたペレットから、見本板を射出成形し、その成形品の外観についてシルバーの有無を目視で判定した。判定基準は下記の基準で行った。
シルバーなし:○
見本板に若干シルバーが観られるもの:△
見本板にシルバーが観られるもの:×
(4)金型汚染性
樹脂組成物の見本板成形を500Shot行った後の金型汚染を、目視にて判定を行った。判定基準は下記の基準で行った。
金型汚染なし:○
金型汚染小:△
金型汚染大:×
(5)耐熱性(荷重たわみ温度;HDT)
ASTM−D648に準拠した方法により6.35mm(1/4インチ)試験片を用いて18.5kg荷重で荷重たわみ温度(HDT)を測定した。また、荷重たわみ温度保持率(M)は、使用したベース樹脂(A成分)からの成形品の荷重たわみ温度x(℃)と難燃性樹脂組成物(ベース樹脂とC成分の混合物)からの成形品の荷重たわみ温度y(℃)を測定し、M=(y/x)×100(%)の計算式により算出した。
(6)流動性(MVR)
ISO−1133に準拠して行った。測定条件は230℃、3.8kg荷重の条件で行った。
(7)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ3.2mm(1/8インチ)、1.6mm(1/16インチ)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。UL規格と燃焼時間の合計秒数を表に示した。
UL−94垂直燃焼試験は、試験片5本を一組の試験として行い、どの試験片も10秒間の着炎を2回繰り返す。但し、一度目の着炎で全焼する試験片に関しては、その限りではない。1回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定し、消炎後、2回目の着炎を行う。2回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定する。5本一組の試験で、計10回の燃焼時間が測定でき、いずれの燃焼時間も10秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が50秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−1、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2、この評価基準以下のものをnotVとした。
(8)難燃性(酸素指数;LOI評価)
JIS−K−7201酸素指数法による高分子材料の燃焼試験方法に準拠して行った。
(9)還元粘度ηsp/C
ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン18mlとメタノール2mlの混合溶媒を加え、25℃で2時間振とうし、4000rpmで30分間遠心分離する。上澄み液を取り出し、メタノールで樹脂成分を析出させた後、乾燥した。このようにして得られた樹脂、0.1gをトルエンに溶解し、0.5g/dlの溶液とし、この溶液10mlを毛細管径約0.3mmであるオストワルド型粘度計に入れ、30℃でこの溶液の流下秒数tを測定した。一方、同じ粘度計でトルエンの流下秒数tを測定し、以下の数式により算出した。このときトルエンの流下秒数tが240秒以上になることが好ましい。
ηsp/C=(t/t−1)/C (C:ポリマー濃度g/dl)
(10)ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状重合体成分量
核磁気共鳴測定装置(バリアン製、UNITY300)により、水素原子の核磁気共鳴を測定し、スチレンユニットとブタジエンユニットのモル比よりゴム状重合体成分量を算出した。
(11)リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
(12)リン化合物のHPLC純度
試料をアセトニトリルと水の6.5:3.5(容量比)の混合溶液に溶解し、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−260nmを用いた。
(13)リン化合物の31PNMR純度
核磁気共鳴測定装置(JEOL製、JNM−AL400)により、リン原子の核磁気共鳴を測定し(DMSO−d、162MHz、積算回数3072回)、積分面積比をリン化合物の31PNMR純度とした。
尚、31PNMRチャートは下記拡大範囲に関して拡大を行い、不純物の確認を行った。拡大倍率として、縦方向にはメインピークをメインピークの頂点がコンピューター画面の上端の位置にくるまで拡大し、更にその画面上のメインピークの高さの1/200倍の高さがコンピューター画面の上端の位置になるように拡大した。横方向には下記おのおのの拡大範囲をコンピューター画面上最大幅に拡大した。拡大が不十分な場合、不純物を確認できず、見かけの31PNMR純度が向上する場合がある。
拡大範囲1:219ppm〜216ppm
拡大範囲2:180ppm〜177ppm
拡大範囲3:149ppm〜145ppm
拡大範囲4:124ppm〜121ppm
拡大範囲5:93ppm〜90ppm
拡大範囲6:27ppm〜23ppm
拡大範囲7:23ppm〜18ppm
拡大範囲8:9ppm〜−4ppm
拡大範囲9:−6ppm〜−15ppm
(14)加熱重量減少残さ
熱重量天秤試験(TGA法)を用いて測定した。島津製作所製熱重量測定装置TGA−50を用い、窒素気流下、10℃/分にて昇温し、500℃での残量(%)を加熱重量減少残さとした。
[調製例1]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にてベンジルブロマイド2037.79g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1863.5g(4.56モル)を得た。得られた結晶は31P、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。収率は76%、加熱重量減少残さは0.85%(図1参照)、酸価は0.06mgKOH/g、HPLC純度は99%、31PNMR純度は99%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,162MHz):δ21.0(S)、融点:255−256℃、元素分析 計算値:C,55.89;H,5.43、測定値:C,56.24;H,5.35
[調製例2]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール100mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、加熱重量減少残さは0.46%(図2参照)、酸価は0.05mgKOH/g、HPLC純度は99%、31PNMR純度は99%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,162MHz):δ21.0(S)、融点:257℃
[調製例3]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、得られたろ取物を100℃、1.33×10Paにて減圧乾燥を行った。得られた白色固体は、H、31P―NMRにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドであることを確認した。加熱重量減少残さは10.1%、酸価は2.5mgKOH/g、HPLC純度は84%、31PNMR純度は85%であった。
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(イ)スチレン系樹脂(A成分)
(i)市販の耐衝撃性ポリスチレン(A&Mスチレン製スタイロン492R;還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は0.96dl/g、ゴム状重合体は6.5重量%)を用いた(以下HIPS−1と称する)。
(ii)市販の耐衝撃性ポリスチレン(A&Mスチレン製スタイロンH9152;還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は0.82dl/g、ゴム状重合体は6.1重量%)を用いた(以下HIPS−2と称する)。
(iii)市販の耐衝撃性ポリスチレン(A&Mスチレン製スタイロン433;還元粘度ηsp/C(0.5g/dl、トルエン溶液、30℃測定)は0.78dl/g、ゴム状重合体は5.2重量%)を用いた(以下HIPS−3と称する)。
(ロ)有機リン化合物(C成分)
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド
前記一般式(4)で示される有機リン系化合物(以下FR−1と称する)。
(ii)調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド
前記一般式(4)で示される有機リン系化合物(以下FR−2と称する)。
(iii)調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド
前記一般式(4)で示される有機リン系化合物(以下FR−3と称する)。
(ハ)その他の有機リン化合物(D成分)
(i)トリフェニルホスフェート
市販の芳香族リン酸エステル(大八化学工業製TPP)を用いた(以下FR−4と称する)。
(ii)1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]
前記一般式(D−3)でArがフェニレン基、Q、Q、QおよびQが2,6−ジメチルフェニル基であり、mは1である有機リン酸エステル化合物であり、市販の芳香族リン酸エステル(旭電化工業製アデカスタブFP−500)を用いた(以下FR−5と称する)。
(iii)レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)
前記一般式(D−3)でArがフェニレン基、Q、Q、QおよびQがフェニル基であり、mは0、1、2(m=1が主成分)である有機リン酸エステル化合物であり、市販の芳香族リン酸エステル(大八化学工業製CR−733S)を用いた(以下FR−6と称する)。
(iv)ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)
前記一般式(D−4)でAr−Z−ArがビスフェノールA、Q、Q、QおよびQがフェニル基であり、mは1である有機リン酸エステル化合物であり、市販の芳香族リン酸エステル(大八化学工業製CR−741)を用いた(以下FR−7と称する)。
[実施例1〜24および比較例1〜26]
表1〜5記載の各成分を表1〜5記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にて、シリンダー温度220℃でペレット化し、得られたペレットを70℃の熱風乾燥機にて4時間乾燥を行った。該ペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製、J75Si)にて、成形温度210℃、金型温度40℃で各試験片を成形した。この試験片を用いて評価した結果を表1〜表5に示した。
Figure 2010095731
Figure 2010095731
Figure 2010095731
Figure 2010095731
Figure 2010095731
本発明の難燃性樹脂組成物は、オフィスオートメーション機器部品、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品など種々の成形品を成形する材料として有用である。

Claims (12)

  1. (A)スチレン系樹脂(A成分)100重量部および(C)下記式(1)で示される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部からなる樹脂組成物であって、当該有機リン化合物(C成分)は、
    (i)500℃における加熱重量減少残さが10%以下、
    (ii)HPLC純度が90%以上、且つ
    (iii)酸価が0.5mgKOH/g以下
    を満足することを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
    Figure 2010095731
    (式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、置換基を有しても良いフェニル基である。)
  2. C成分の有機リン化合物が下記式(2)で表される有機リン化合物である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
    Figure 2010095731
  3. A成分のスチレン系樹脂がゴム変性スチレン系樹脂である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  4. A成分のスチレン系樹脂が耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  5. A成分のスチレン系樹脂が、本文記載の方法で測定される還元粘度ηsp/Cが0.2〜1.5dl/gであり、且つ本文記載の方法で測定されるゴム状重合体成分含有量が1〜50重量%であるゴム変性スチレン系樹脂である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  6. C成分の有機リン化合物の500℃における加熱重量減少残さが8%以下である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  7. C成分の有機リン化合物のHPLC純度が95%以上である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  8. C成分の有機リン化合物の酸価が0.4mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  9. A成分100重量部に対して、C成分が2〜50重量部の割合である請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  10. UL−94規格の難燃レベルにおいて少なくともV−2で、厚み1.6mmの試験片で難燃レベルがV−2の場合にその平均燃焼秒数が10秒以内であり、且つ酸素指数(LOI)が22.0以上を達成することができる請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  11. 実質的にハロゲンを含有しない請求項1記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  12. 請求項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。
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