JP2010073637A - 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】エポキシ系接着剤であっても良好な接着が得にくいプラスチック基材を、エポキシ系接着剤を介してプロトン伝導膜に接着するに際し、固体高分子型燃料電池において、熱水、水蒸気や強酸性に対して高い接着強度と耐久性が優れた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体を提供する。
【解決手段】プロトン伝導膜2の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極7,8が設けられた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、プロトン伝導膜2と接合されているエポキシ系接着剤層11と、エポキシ系接着剤層11と接合されているプラスチック基材12とをさらに有し、プラスチック基材12がエポキシ系接着剤層11との界面13に有する窒素官能基と、エポキシ系接着剤層11のエポキシ基とが化学結合している。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチック基材をエポキシ系接着剤を介してプロトン伝導膜に接着した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体に関する。
エポキシ系接着剤は、接着強度、耐水性や耐熱性が高く、適合する対象の範囲が広いので、各種の部材や基材の固定や積層等に用いられている。しかし、プラスチック基材、特に極性基を有しないプラスチック基材に対しては、接着性が十分でない場合がある。
固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜となるフッ素系樹脂や芳香族系樹脂からなる高分子電解質膜と極性基を有しないプラスチック基材を接着する場合、一般に、高分子電解質膜を形成する樹脂は、スルホン酸基を側鎖に有するので、エポキシ系接着剤との接着性に優れるが、極性基を有しないプラスチック基材は、エポキシ系接着剤を用いても高い接着強度が得られない場合がある。
また、このような高分子電解質膜に接着されたプラスチック基材は、プラスチック基材の接着界面が高分子電解質膜のスルホン酸基による強酸性の水溶液にさらされる。さらに、発電に伴い、高温になった水溶液にさらされる場合もある。
このため、強酸性や高温の水溶液にさらされても接着強度が低下しにくく耐久性の優れたプラスチック基材の接着技術が求められている。
エポキシ系接着剤に限らず、一般に、高い接着強度が得られる接着方法としては、プライマーやアンカー剤等の下地処理剤を用いる化学的な表面処理や接着する基材の表面洗浄、微細凹凸の形成や官能基導入のための紫外線やプラズマの照射等の物理的な表面処理が行われる。物理的な表面処理として、例えば、空気中でのコロナ放電処理は、古くから、ポリオレフィンをはじめ各種の樹脂フィルムの濡れ性を改善して接着性を向上させるため用いられてきた。コロナ放電処理は、高周波電圧を用いて大気中にコロナ放電を発生させ、それに伴って発生する電子を樹脂フィルムの表面に照射し、樹脂フィルムの表面に酸素原子による官能基を付加することによって樹脂フィルムの表面改質を行うものである。
また、接着する基材の表面洗浄や微細な凹凸形成のために酸素原子のプラズマを接触させ表面処理して接着性を向上させることもおこなわれている。例えば、特許文献1には、ポリエチレンからなるプラスチック成型体を、エポキシ系接着剤を介して接着する際、プラスチック成型体にポリフェニレンサルファイド(PPS)を含有させて低圧の空気雰囲気下プラズマ処理する方法が提案されている。この方法によれば、PPSの炭素−硫黄結合の一部が切断され、この硫黄に酸素原子が結合し、この酸素原子がエポキシ系接着剤の分子に結合して接着強度が高くなる。
しかし、この方法は、特許文献1の実施例から明らかなように、高い接着強度を得るためには、PPSの含有量を高くする必要がある。したがって、被着体を形成する樹脂の本来の性質が損なわれる場合がある。しかも、この方法は、初期の接着強度が高くても導入される官能基が硫黄−酸素の結合を有するので、熱水や強酸性の環境下では、耐久性が劣る。また、低圧プラズマ処理は、真空状態で放電させるので、真空設備を要することから装置が大掛かりとなり操作が煩雑であるという欠点があった。
装置が大掛かりとなる問題点については、通常、真空状態でしか発生できないグロー放電状態を、雰囲気ガスとしてヘリウム、アルゴンなどの希ガスや窒素などの不活性ガスを用いることで安定してグロー放電を発生させ、大気圧近傍でプラズマ処理(大気圧プラズマ処理)する装置が開発されている。それにより生じる反応ラジカル、電子などを用いて表面改質を行う大気圧プラズマ処理が、ウェハーなどの表面洗浄や電子部品の接着向上に簡便に使用されるようになった。例えば、特許文献2には、金属材料の被着面にモノマーを塗工し、希ガスや窒素ガス等の不活性ガスと酸素含有ガス、窒素ガスや水素ガス等の処理ガスとの混合ガス中で大気圧プラズマ処理して、金属材料の被着面に親水性の厚いラジカル重合皮膜を形成させ、エポキシ系接着剤で接着させることが提案されている。
しかし、厚い親水性の皮膜は、高いアンカー効果が期待されるものの、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
また、特許文献3には、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)の両面に希ガスや窒素ガス等の不活性ガスや酸素ガス中で大気圧プラズマ処理して、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤を用いて塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を押出して積層することが提案されている。
しかし、この方法も、初期の接着強度が高いが、導入される官能基が酸素原子によるものなので、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
さらに、特許文献4には、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気下の放電により窒素原子で表面処理を行った第1の樹脂フィルムの処理面上に窒素官能基を生成させ、酸素ガスおよび/または窒素ガスを含む雰囲気下の放電により酸素原子および/または窒素原子で表面処理を行って処理面上に酸素官能基を生成させた第2の樹脂フィルムの処理面を、接着剤層を介すことなく圧着した積層構造を有する積層フィルムが提案されている。
特開平07−216105号公報 特開平08−259902号公報 特開2007−268798号公報 特開2007−307771号公報
特許文献1〜3に記載された方法は、いずれも被着体の接着表面に酸素官能基を導入するので、高い初期接着力が得られるものの、熱水や水蒸気に対して高い接着強度が得られるものではない。一方、特許文献4に記載された方法は、高い初期接着力が得られるとともに熱水や水蒸気に対して高い接着強度が得られるものであるが、固体高分子型燃料電池の強酸性の条件下における接着強度の低下を防ぐには、なお課題を有するものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エポキシ系接着剤であっても良好な接着が得にくいプラスチック基材を、エポキシ系接着剤を介してプロトン伝導膜に接着するに際し、固体高分子型燃料電池において、熱水、水蒸気や強酸性に対して高い接着強度と耐久性が優れた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、プロトン伝導膜(例えば、実施形態におけるプロトン伝導膜2)の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極(例えば、実施形態における電極7,8)が設けられた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、前記プロトン伝導膜と接合されているエポキシ系接着剤層(例えば、実施形態におけるエポキシ系接着剤層11)と、前記エポキシ系接着剤層と接合されているプラスチック基材(例えば、実施形態におけるプラスチック基材12)とをさらに有し、前記プラスチック基材が前記エポキシ系接着剤層との界面(例えば、実施形態におけるプラスチック基材の界面13)に有する窒素官能基と、前記エポキシ系接着剤層のエポキシ基とが化学結合していることを特徴とする。
このように構成することで、膜−電極構造体のプロトン伝導膜に対して、エポキシ系接着剤を介してプラスチック基材を、水蒸気や強酸性に対して高い接着強度と耐久性にて接着することができる。
請求項2に記載した発明は、前記窒素官能基が、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基であることを特徴とする。
このように構成することで、プラスチック基材の窒素雰囲気下の放電処理によって窒素官能基を効果的に導入することができる。
請求項3に記載した発明は、前記エポキシ系接着剤層を構成するエポキシ系接着剤が硬化剤を含有する一液型であることを特徴とする。
このように構成することで、エポキシ系接着剤に硬化剤を配合する手間を省くことができる。
請求項4に記載した発明は、前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであることを特徴とする。
このように構成することで、膜−電極構造体の厚さの増大を回避することができる。
請求項1に記載した発明によれば、固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体のプロトン伝導膜に対して、エポキシ系接着剤を介してプラスチック基材を、水蒸気や強酸性に対して高い接着強度と耐久性にて接着することができる。
請求項2に記載した発明によれば、プラスチック基材の窒素雰囲気下の放電処理によって窒素官能基を効果的に導入することができる。
請求項3に記載した発明によれば、エポキシ系接着剤に硬化剤を配合する手間を省くことができる。
請求項4に記載した発明によれば、固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の厚さの増大を回避することができる。
以下、最良の形態に基づき、本発明を説明する。
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体は、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に表面処理により窒素官能基を導入し、該窒素官能基が導入された表面に接してエポキシ系接着剤層を形成し、プロトン伝導膜とエポキシ系接着剤層を接合するとともに、エポキシ系接着剤層とプラスチック基材を接合することによって製造することができる。
本発明で用いるプラスチック基材を構成する樹脂は、特に限定されず、接着部材の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、6−ナイロンや66−ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PPEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンエーテル(PPE)とポリスチレン(PS)とのアロイ(以下、PPE−PSアロイという場合がある。)等のスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる樹脂;ポリイミドやエポキシ樹脂等からなる硬化性の樹脂などが挙げられる。これらのうち、ポリオレフィン等の極性基を有しないプラスチック基材は、本発明の効果が顕著なことから、好適な対象となる。
本発明で用いるプラスチック基材の形態は、特に制限はないが、例えば、フィルムやシート(以下、これらを総称してフィルムという。)などが挙げられる。
耐熱性を向上するため、プラスチック基材を構成するプラスチックのガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。
本発明のプラスチック基材の表面処理によりプラスチック基材の表面に窒素官能基を導入する表面処理工程で用いるプラスチック基材の表面処理は、窒素官能基として、第1級アミン(−NH)、第2級アミン(−NH−)、およびアミド(−CONH−)から選ばれる少なくとも1つの窒素官能基をプラスチック基材の表面に導入することが可能な手法が好ましい。
そして、エポキシ系接着剤層をプラスチック基材に接着する面を表面処理して前記窒素官能基を導入すればよい。つまり、エポキシ系接着剤層を、例えば、フィルム状のプラスチック基材の両面に積層する場合は、両面とも表面処理をして前記窒素官能基を導入する。導入された窒素官能基が、エポキシ系接着剤のエポキシ基と反応し、化学結合を形成することによって、強固な接着力が得られる。
(窒素官能基導入工程)
窒素官能基を導入する表面処理の方法としては、窒素ガスを含み、かつ実質的に酸素ガスを含まない窒素雰囲気下の放電処理により行うことができる。このように表面処理を行う方法は、上述した種々のプラスチックの表面に窒素官能基を導入することが可能なので好ましい。
酸素濃度が高いとプラスチック表面に導入される窒素官能基量が少なくなり、酸素濃度が低いと窒素官能基量が多くなり、接着が強くなる。窒素雰囲気の酸素濃度は、容量比で1000ppm以下が好ましい。なお、窒素官能基がプラスチックの表面に導入されたか否かは、後述するようにXPS(X線光電子分光法)のN(窒素原子)の1sにおける化学結合エネルギーによって確認する事ができる。
この窒素雰囲気下の放電処理は、プラズマ処理でも良いし、コロナ放電処理でも良い。また、プラズマ処理は、低圧(真空)プラズマ処理であっても良いし、大気圧プラズマ処理であっても良い。これらの放電処理の内、この窒素官能基導入工程においては、装置が簡易なこと、および、プラスチック基材がフィルムである場合に、窒素官能基導入工程をロール・ツウ・ロールで連続して行うことが容易となることから、コロナ放電処理が好ましい。なお、後述する本発明に好適な窒素雰囲気下の表面処理をロール・ツウ・ロールで連続して行う場合は、コロナ放電処理装置をフィルムが通過可能な狭い入口および出口を設けたハウジングで覆い、窒素ガスで等の処理ガスで陽圧を維持して、放電処理することで連続して処理することができる。
そして、後述するエポキシ系接着剤層形成工程で、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布する場合は、このフィルム塗工装置の接着剤塗工部より上流にハウジングで覆われたコロナ放電処理装置を設置しておけば、表面処理工程とエポキシ系接着剤層形成工程とを順次連続して行うことができる。
ところで、通常の空気雰囲気下で行なわれるコロナ放電表面処理では、活性酸素原子(酸素ラジカル)が発生する。空気中においては酸素ガスの方が窒素ガスに比べて遙かに含有率が小さいにも関わらず、コロナ放電処理したプラスチック基材の表面は、この活性酸素原子で表面処理される。即ち、プラスチック基材の表面が酸化され、プラスチック基材の表面において、高分子の主鎖や側鎖に、カルボニル基(>CO)やカルボキシル基(−COOH)などの酸素官能基が主として形成される。
そして、これらの官能基は、エポキシ系接着剤との接着性能に寄与するが、熱水や水蒸気に対しては高い接着強度が得られない。また、強酸性の条件における接着強度の低下を防ぐこともできない。この理由は定かではないが、この活性酸素原子が官能基を生成する際に高分子を切断して低分子化する作用も強いため、プラスチック基材の表面において、酸素原子を含む低分子化合物が極めて薄い層状に生成する。この低分子化合物層は分子量が比較的小さいので、親水性を呈しやすくなるとともに凝集力などの物理的強度が小さいためと考えられる。
これに対して、本発明の表面処理工程で好適に用いられる実質的に酸素ガスを含まない窒素雰囲気でのコロナ放電処理は、基材表面の高分子の主鎖や側鎖に、窒素原子によるアミノ基(−NH)等の窒素官能基が主として生成する。そして、この窒素雰囲気でのコロナ放電処理は、通常の空気雰囲気でのコロナ放電処理と異なり、実質的に酸素ガスを含まない窒素雰囲気中で放電が起こるために活性酸素原子の発生量が少なく、かつ、活性窒素原子が官能基を生成する際に高分子を切断して低分子化する作用も弱いため、空気雰囲気でのコロナ放電処理を行った場合に発生する低分子化合物の発生が抑えられると考えられる。
つまり、酸素濃度の低い窒素雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物は、空気雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物より分子量が大きく、この低分子物層の凝集力などの物理的強度も大きくなる。このことから、本発明の表面処理工程をプラスチック基材へ適用することでエポキシ系接着剤層との接着性向上の効果が得られると考えられる。
本発明においては、耐水性や耐酸性の観点から、アミド基よりアミノ基を多く導入することが望ましいので、コロナ放電処理の窒素雰囲気に酸素ガスを極力含まないようにすることが好ましい。コロナ放電処理するプラスチック基材や処理条件等にもよるが、酸素濃度を、容量比で1000ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは20ppm以下に制御する。そして、それと共に、プラスチック基材以外には酸素原子を供給する材料(例えばCOやNOなど)を窒素雰囲気中へ混入させないことが好ましい。また、さらに積極的にアミノ基を導入するためには、酸素原子を吸収する材料(例えばH、NHやCHなど)を窒素雰囲気中に添加しても良い。
なお、本発明においては、意図的にCOをコロナ放電処理の窒素雰囲気中に混入して、アミノ基ではなくアミド基(−NHCO−)を形成させることもできる。窒素雰囲気中ではCOがラジカルとなり、COラジカルおよび酸素ラジカルが生成するため、アミノ基よりアミド基が優先的に生成される。
本発明の表面処理工程においては、窒素雰囲気の大気圧プラズマ処理も使用できる。この場合には、安定したグロー放電のために希ガスが混入されても良い。そして、希ガスの比率は、半分を超えることもできる。
(エポキシ系接着剤層形成工程)
前記窒素官能基が導入されたプラスチック基材の表面に、エポキシ系接着剤を塗布してエポキシ系接着剤層を形成する。塗布には、浸漬、スプレーコートやスピンコート、あるいは刷毛塗りなどを採用することができる。プラスチック基材がフィルムである場合は、グラビアコートやドクターコートなど公知のフィルム塗工方法を採用することができ、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布することができる。
塗布されるエポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤を含有し、塗布する際には硬化していないか、一部硬化していても被着体に塗布し得る程度の粘度を有するもの等が挙げられる。エポキシ系接着剤は、予め硬化剤が配合された一液型でも使用時に硬化剤を配合する二液型でも使用可能である。これらのうち、硬化剤を配合する手間が省けることから、一液型であることが好ましい。特に、プラスチック基材がフィルムである場合は、硬化剤は、一液型であることが好ましい。
塗布されたエポキシ系接着剤には、表面を他の物品との接触やほこり等の付着から保護するために剥離紙が積層されることが好ましい。剥離紙は、シリコーン等の剥離剤で剥離処理されたものでもよいが、剥離剤がエポキシ系接着剤層に移行して接着力に影響を及ぼすことがあるため、剥離処理していないポリオレフィンやフッ素系の樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。これらのフィルムは、エポキシ系接着剤との接着性が良くないので、剥離紙として機能させることができる。
剥離紙を用いる場合は、剥離紙にエポキシ系接着剤を塗布してプラスチック基材を合わせてもよい。
主剤としては、エポキシ基を含有する化合物が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;脂環式オレフィンの二重結合をエポキシ化した脂環式エポキシ樹脂;ポリオール、水酸基含有シリコーン樹脂等とエピハロヒドリンと反応によって得られるポリグリシジル化合物類等;N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールなどのグリシジルアミン系樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸などのグリシジルエステル系樹脂などが挙げられる。
エポキシ系接着剤は、2種類以上の主剤を含有するものでもよい。主剤としては、中でもグリシジルエーテル系エポキシ樹脂およびグリシジルアミン系樹脂が好ましく、とりわけビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
エポキシ系接着剤に配合される硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ピペリジン、N−アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、m−キシレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ビス(ジメチルアミノエチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のジメチルアミノアルキルフェノール類;メタンフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族アミン;無水トリメット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの酸無水物;ダイマー酸にポリアミンを反応させるポリアミノポリアミド;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールなどのイミダゾール類;三フッ化ホウ素−アミン錯体;ジシアンジアミド;芳香族ジアゾニウム塩;ポリスルフィド類などが挙げられる。硬化剤として芳香族アミン等を用い、熱硬化性の一液型としたエポキシ系接着剤を用いることもできる。熱硬化性の一液型としたエポキシ系接着剤は、硬化装置が簡易で、効果操作も容易なので好ましい。
なお、エポキシ系接着剤は、2種類以上の硬化剤を含有するものでもよい。硬化剤として、中でもジメチルアミノアルキルフェノール類、ポリアミノポリアミド等が好適である。
エポキシ系接着剤には、接着性を損なわない範囲で他の樹脂、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、有機充填剤、だれ防止剤、染料、顔料、増粘剤、消泡剤、分散剤、難燃剤、光沢剤、チキソ性付与剤、密着付与剤、界面活性剤などの表面調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤および帯電防止剤などの配合剤などを含有させてもよい。
ここで、含有させてもよい他の樹脂としては、不飽和ポリエステルなどの重合性二重結合含有モノマー類およびそのプレポリマー類;ポリブタジエン、マレイン化ブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの低分子量液状ないし高分子量エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィドなどの高分子量ポリマーおよびそれらの低分子量プレポリマーもしくはオリゴマー;ポリウレタン、多官能性マレイミド類などが例示される。
(固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体)
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体は、図1および図2に示すように、プロトン伝導膜2と接合されているエポキシ系接着剤層11と、エポキシ系接着剤層11と接合されているプラスチック基材12とをさらに有し、プラスチック基材12がエポキシ系接着剤層11との界面13に有する窒素官能基と、エポキシ系接着剤層11のエポキシ基とが化学結合していることを特徴とする。
プロトン伝導膜2の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極7,8が設けられている。図1の場合、一対の電極7,8のうち、いずれか一方の電極がアノード電極となり、プロトン伝導膜2を介してアノード電極の反対側の電極がカソード電極となる。図2の場合、プラスチック基材12側の電極7と反対側の電極8とのうち、いずれか一方の電極がアノード電極となり、プロトン伝導膜2を介してアノード電極の反対側の電極がカソード電極となる。
固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜2には、例えば、スルホン酸基を含有する高分子電解質からなる高分子電解質膜を用いることができる。高分子電解質としては、例えばパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名))やスルホン化ポリアリーレン化合物等の高分子電解質が挙げられる。
プロトン伝導膜2の表面には、表面粗さの最大高さRmaxが3〜20μmの範囲にある凹凸(「しぼ(皺)」と呼ばれる。)が形成されることが好ましい。この凹凸は、表面粗さの最大高さRmaxが5〜50μmの範囲にある金型を加熱下に押圧し、金型の表面形状を転写することによって形成することができる。
本形態例の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の場合、プロトン伝導膜2の表裏両面にそれぞれ触媒層3,4が積層され、両触媒層3,4の上に多孔質拡散層5,6が積層されている。このような膜−電極構造体においては、触媒層3,4と多孔質拡散層5,6とにより形成される一対の電極7,8が、プロトン伝導膜2の両面に配置された構成を有する。一対の電極7,8のうち、一方の電極はアノード電極となり、他方の電極はカソード電極となる。
触媒層3,4は、プロトン伝導膜2の外周縁よりも内周側に位置するように積層されている。また、触媒層3,4の上には、多孔質拡散層5,6が積層される。
多孔質拡散層5,6は、例えばカーボンペーパー(炭素繊維からなる)と、該カーボンペーパー上に形成された図示しない下地層とから構成することができる。下地層は、例えば、カーボンブラックと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子との4:6(重量比)の混合物からなる。下地層の形成方法としては、カーボンブラックとPTFE粒子との混合物をエチレングリコールに均一に分散させたスラリーを、カーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させる方法が挙げられる。
触媒層3,4は、例えば触媒粒子とイオン導伝性バインダーとからなる。触媒層3,4の形成方法としては、高分子電解質溶液からなるイオン導伝性バインダーに触媒粒子を均一に分散させることで調製した触媒ペーストの塗布・乾燥により形成する方法が挙げられる。前記触媒粒子としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を、白金:カーボン粒子=1:1(重量比)となるように担持させたものを用いることができる。また、イオン導伝性バインダーとしては、前記プロトン伝導膜2を構成する高分子電解質と同様の高分子電解質を用いることができる。
触媒層3,4と多孔質拡散層5,6とにより電極7,8を形成する方法としては、例えばカーボンペーパーの片面に下地層を形成し、さらに下地層の上に触媒層を形成する方法が挙げられる。図3に示す膜−電極構造体は、触媒層3,4をプロトン伝導膜2の側に向けて、2枚の電極7,8でプロトン伝導膜2を挟み込み、積層することによって製造することができる。
そして、図4に示すように、エポキシ系接着剤層11とプラスチック基材12とが接合されてなる接着部材が内部に開口部を有する枠状としておけば、図5に示すように、その開口部内に、電極7,8を配置することができる。多孔質拡散層5,6は、その外周縁が前記接着部材と重なり合うように積層されていても良い。
エポキシ系接着剤層11を介したプロトン伝導膜2とプラスチック基材12との接着方法は、通常の感圧接着剤を用いる接着と同様であるが、接着するプラスチック基材12とプロトン伝導膜2がともにフィルムである場合は、プラスチック基材12とエポキシ系接着剤層11とプロトン伝導膜2を重ね合わせた状態で加熱圧着する熱ラミネートが好ましい。
エポキシ系接着剤が一液型の場合はそのまま、二液型の場合は硬化剤を配合して、エポキシ系接着剤層11をプロトン伝導膜2とプラスチック基材12との接着に用いることができる。
熱ラミネートは、プラスチック基材12とエポキシ系接着剤層11とプロトン伝導膜2とを重ね合わせた状態で加熱して熱圧着することによりラミネートする。熱圧着する条件は、目標とする接着強度が得られる条件を適宜選定すればよい。接着強度は、熱圧着温度、時間、圧力を上げることで向上する。
そして、プラスチック基材12とプロトン伝導膜2との間に介在させたエポキシ系接着剤を硬化させて、本形態例の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体1a,1bを形成することができる。エポキシ系接着剤が熱硬化型である場合は、熱圧着と同時に硬化処理を行ってもよい。
硬化させたエポキシ系接着剤のガラス転移温度Tgは、耐熱性の観点から、80℃以上であることが好ましい。
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体によれば、プラスチック基材がエポキシ系接着剤層と接する界面に表面処理による窒素官能基を有するので、窒素官能基がエポキシ系接着剤層のエポキシ基と反応して強固な接着力が得られる。
実質的に酸素を含まない窒素雰囲気下の放電処理による表面処理を用いることにより、プラスチック基材が接着剤層と接する界面のみに窒素官能基を導入することが可能となり、接着剤層と接しない内部に窒素官能基を有しない構造となる。このため、本発明において接合したプラスチック基材が強酸性物質に接しても、プラスチック基材の窒素官能基が塩基として強酸性物質と反応することがない。したがって、強酸性物質が生成する燃料電池等の強酸性媒質に接する部材として用いるときに、内容物や媒質を変質させるおそれがない。
膜−電極構造体は、一方の電極を燃料極(アノード)として、アノード側の多孔質拡散層を介して触媒層に水素やメタノール等の還元性ガスを導入する一方、他方の電極を酸素極(カソード)として、カソード側の多孔質拡散層を介して触媒層に空気や酸素等の酸化性ガスを導入する。このようにすると、燃料極(アノード)側では、触媒層に含まれる触媒の作用により、前記還元性ガスからプロトン及び電子が生成し、前記プロトンは固体高分子電解質膜を介して、前記酸素極(カソード)側の触媒層に移動する。そして、前記プロトンは、触媒層に含まれる触媒の作用により、触媒層に導入される前記酸化性ガス及び電子と反応して水を生成する。従って、前記燃料極と酸素極とを導線を介して接続することにより、前記燃料極で生成した電子を前記酸素極に送る回路が形成され、電流を取り出すことができる。このようにして、膜−電極構造体を用いて燃料電池を構成することができる。
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
(参考例1:XPSによる窒素存在量の測定)
PPSフィルム(厚み12μm)の表面に、表面処理工程として、バッチ式コロナ放電処理装置を用いて窒素雰囲気下でコロナ放電処理を実施し、XPS(X線光電子分光法)にて表面の窒素(N)、炭素(C)および硫黄(S)の元素存在量(Atomic%)を測定した。窒素雰囲気下のコロナ処理の酸素濃度(容量比)は、0.2%、0.09%、0.075%(2000ppm、900ppm、750ppm)の3通りとした。その結果を表1に示す。
Figure 2010073637
表1において、「N(%)」は表面のN存在量であり、「N/C」は表面のN存在量/C存在量の比であり、「N/S」は表面のN存在量/S存在量の比である。
また、比較のため、大気下でコロナ処理したPPSおよび未処理のPPSについても、XPSにて表面の窒素(N)の存在量を測定したが、N存在量は0であった。
表1から、窒素官能基は、空気雰囲気下での表面処理では導入されず、酸素濃度の低い窒素雰囲気下での表面処理で導入されること、および、窒素雰囲気中の酸素濃度の低下に伴い窒素官能基の導入量が増えることがわかる。
図7および図8に、酸素濃度900ppmの窒素雰囲気下でコロナ処理した場合のXPS分析チャートを示す。
図7は、F(1s)、O(1s)、N(1s)、C(1s)およびS(2p)に対応するピークを含むチャートである。
また、図8は、N(1s)ピークを拡大して、アミン(NH)のピークとアミド(NHCO)のピークの比率を解析した様子を示す。N存在量のうち、NHCOの窒素は約65%、NHの窒素は約35%であった。
(参考例2:XPSによるエポキシ樹脂の観測)
臭素元素を指標とするために、ビスフェノールAに臭素原子を導入した臭素化エポキシ接着剤の主剤のみを酸素濃度900ppmの窒素雰囲気下でコロナ処理して窒素官能基を導入したPPSフィルムに塗布して、150℃で20分間、熱処理をした。その後、臭素化エポキシ接着剤の主剤を溶解可能なMEK(メチルエチルケトン)に熱処理したPPSフィルムを浸漬し、2時間、超音波洗浄した。そして、そのまま2日間、MEKに浸漬し、取り出す直前に再度、2時間、超音波洗浄した。そのようにしてPPSフィルムの表面から未反応の臭素化エポキシ接着剤を完全に除去して取り出したサンプルを乾燥後、PPSフィルムの臭素化エポキシ接着剤と接した面をXPSで表面分析した。結果を図9に示す。
図9から、臭素化エポキシ接着剤に存在していた臭素原子による化学結合の発現が確認された。
このことから、臭素化エポキシ樹脂がPPSフィルムの表面に存在していることがわかる。つまり、PPSフィルムの表面に導入された窒素官能基と臭素化エポキシ接着剤のエポキシ基が化学結合してPPSフィルムの表面に結合したものと推測される。したがって、PPSに導入された窒素官能基が臭素化エポキシ接着剤の硬化剤と同様な働きをして、エポキシ基一部がこれと反応してMEKに不溶となり、PPSフィルムに固定化されたものと推測される。
また、臭素化エポキシ接着剤で処理した後のN存在量を示す図10と、同処理前のN存在量を示す図8から、PPSフィルム表面に導入された窒素原子の結合量の比率の減少が、および図9から、硫黄原子の結合量比率の減少が確認された。
このことは、大多数の窒素原子や硫黄原子がPPSフィルムの表面に露出しなくなったことを意味する。したがって、ごく微量のMEKに溶解しないPPSフィルムに固定化された臭素化エポキシ樹脂が皮膜の様にPPSフィルムの表面を覆っていると推定される。
そして、本発明の接着部材においては、プラスチック基材の表面を覆うようにエポキシ系接着剤のエポキシ基と窒素官能基が結合しており、被着体に接着してエポキシ系樹脂を硬化させた時、固定化されたエポキシ樹脂に残っている未反応のエポキシ基が硬化剤と反応して、熱水、酸やアルカリに対して耐性の高い接着界面の形成が可能となると推測される。
(実施例1:PPSフィルム積層MEAの作製方法)
プロトン伝導膜(PEM)の両面にそれぞれ触媒層および多孔質拡散層を有する電極を形成して、膜−電極構造体(MEA)を作製した。このようにして作製したMEAに、PEMの露出部分に(PEMの外周部の片側、又は両側)、PPSフィルム12μm(東レ製)を1液性のエポキシ接着剤XNR3305(長瀬産業製)を用いて接着した。エポキシ接着剤はバーコーターにて塗布厚みは20μmとなるように制御した。次にこのエポキシ付きPPSフィルムを、前頁のMEAの膜の露出部分に貼り合わせ、接着圧力1kgf/cm,接着温度は150℃、硬化時間は10minにてPPSフィルムを接着した。
PPSフィルムには、以下の方法により窒素官能基が導入されている。PPSからなる厚み12μmの基材を2枚用意し、それぞれの片面に、表面処理工程として、バッチ式コロナ放電処理装置を用い、窒素ガスで充満し酸素濃度を900ppmに保持した窒素雰囲気下でコロナ放電処理を実施し、窒素官能基を導入した。
(実施例2:MEA接着耐久性)
実施例1で作製したPPSが接着されたサンプルの接着耐久性を測定した。比較サンプルとして、PPSフィルムの表面処理方法を大気中コロナ処理として、同様な方法でPPSフィルム積層MEAのサンプルを作製した。これらのMEAを燃料電池セルに組みこみ、セル内に水を混入させ−20℃⇔90℃の凍結乾燥サイクルによる接着耐久性を確認した。セル構造を図6に示す。
図6に示す燃料電池のセル構造には、プロトン伝導膜2の両面にそれぞれ触媒層3,4および多孔質拡散層5,6を有する電極7,8が形成されるとともに、プロトン伝導膜2の外周部の片側に、エポキシ系接着剤層11を介してプラスチック基材12が積層された図2に示す膜−電極構造体1bが組み込まれている。膜−電極構造体は、一対のセパレータ23,24との間に挟みこまれ、膜−電極構造体1bのプラスチック基材12が積層されていない側の外周部にはガスケット21が挿入され、プラスチック基材12が積層された側ではプラスチック基材12とセパレータ23との間にシール22が設けられている。
セル内に投入した水は、90℃の状態においてセル内の相対湿度(RH)が100%を超えるように水分量を調節した。サイクルは−20℃の状態および90℃の状態はそれぞれ1時間保持し、−20℃⇔90℃への変化は上昇および下降とも各1時間で行った。
初期サンプルの接着強度を測定するために、サンプルを幅15mmに切り出し接着強度を測定したところ180度剥離試験において、いずれのサンプルも9N/15mmであった。
上記実験条件にて100回の凍結乾燥サイクルを行った後にMEAを取り出し、接着部位接着強度を確認したところ、PPS表面に窒素官能基を導入していないサンプルの接着強度は、初期の20%程度に低下した。このサンプルの破壊断面を観察すると、PPS表面とエポキシ界面で剥離しており、接着が界面で破壊された事が分かる。
一方で、PPS表面に窒素官能基を導入したサンプルの接着強度を測定しところ、9N/15mmと初期との接着強度と差異がなかった。また剥離部位では、凝集剥離しており、エポキシとPPS、及びエポキシと電解膜との接着の耐久性が良好である事が分かった。
以上の事から、窒素官能基を導入したPPSフィルムをエポキシ接着剤で積層した接着構造の耐久性が良好であることが確認された。
本発明は、接着剤で接合しづらい被着体、例えば、フッ素系樹脂や芳香族系樹脂からなる高分子電解質型燃料電池(PEFC)の電解質膜や水の電気分解に用いる分離膜に接着させる接着部材として好適に用いることができる。
フィルム基材をプロトン伝導膜の両側に積層した本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の一形態例を示す断面図である。 フィルム基材をプロトン伝導膜の片側に積層した本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の一形態例を示す断面図である。 フィルム基材を積層する前の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の一形態例を示す断面図である。 フィルム基材をプロトン伝導膜に積層する方法を模式的に説明する斜視図である。 フィルム基材をプロトン伝導膜に積層した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の一形態例を示す斜視図である。 燃料電池のセル構造例を示す断面図である。 窒素雰囲気下コロナ処理したPPSのXPS分析結果の一例を示すチャートである。 図7のチャートのN(1s)ピークを示す部分拡大チャートである。 窒素雰囲気下コロナ処理したPPSのサンプルと、臭素化エポキシ接着剤の主剤のみを窒素官能基を導入したPPSに塗布して熱処理してMEKで表面を洗浄したサンプルのXPS分析結果を比較した、硫黄(S)および臭素(Br)のピークを示す部分拡大チャートである。 臭素化エポキシ接着剤の主剤のみを窒素官能基を導入したPPSに塗布して熱処理してMEKで表面を洗浄したサンプルのXPS分析結果におけるN(1s)ピークを示す部分拡大チャートである。
符号の説明
1a,1b 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体
2 プロトン伝導膜
7,8 電極
11 エポキシ系接着剤層
12 プラスチック基材

Claims (4)

  1. プロトン伝導膜の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極が設けられた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、
    前記プロトン伝導膜と接合されているエポキシ系接着剤層と、前記エポキシ系接着剤層と接合されているプラスチック基材とをさらに有し、前記プラスチック基材が前記エポキシ系接着剤層との界面に有する窒素官能基と、前記エポキシ系接着剤層のエポキシ基とが化学結合していることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
  2. 前記窒素官能基が、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
  3. 前記エポキシ系接着剤層を構成するエポキシ系接着剤が硬化剤を含有する一液型であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
  4. 前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
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