JP2010073637A - 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロトン伝導膜2の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極7,8が設けられた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、プロトン伝導膜2と接合されているエポキシ系接着剤層11と、エポキシ系接着剤層11と接合されているプラスチック基材12とをさらに有し、プラスチック基材12がエポキシ系接着剤層11との界面13に有する窒素官能基と、エポキシ系接着剤層11のエポキシ基とが化学結合している。
【選択図】図1
Description
固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜となるフッ素系樹脂や芳香族系樹脂からなる高分子電解質膜と極性基を有しないプラスチック基材を接着する場合、一般に、高分子電解質膜を形成する樹脂は、スルホン酸基を側鎖に有するので、エポキシ系接着剤との接着性に優れるが、極性基を有しないプラスチック基材は、エポキシ系接着剤を用いても高い接着強度が得られない場合がある。
また、このような高分子電解質膜に接着されたプラスチック基材は、プラスチック基材の接着界面が高分子電解質膜のスルホン酸基による強酸性の水溶液にさらされる。さらに、発電に伴い、高温になった水溶液にさらされる場合もある。
このため、強酸性や高温の水溶液にさらされても接着強度が低下しにくく耐久性の優れたプラスチック基材の接着技術が求められている。
しかし、この方法は、特許文献1の実施例から明らかなように、高い接着強度を得るためには、PPSの含有量を高くする必要がある。したがって、被着体を形成する樹脂の本来の性質が損なわれる場合がある。しかも、この方法は、初期の接着強度が高くても導入される官能基が硫黄−酸素の結合を有するので、熱水や強酸性の環境下では、耐久性が劣る。また、低圧プラズマ処理は、真空状態で放電させるので、真空設備を要することから装置が大掛かりとなり操作が煩雑であるという欠点があった。
しかし、厚い親水性の皮膜は、高いアンカー効果が期待されるものの、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
しかし、この方法も、初期の接着強度が高いが、導入される官能基が酸素原子によるものなので、熱水、強酸性や強アルカリ性の環境下では、耐久性に劣ることが懸念される。
このように構成することで、膜−電極構造体のプロトン伝導膜に対して、エポキシ系接着剤を介してプラスチック基材を、水蒸気や強酸性に対して高い接着強度と耐久性にて接着することができる。
このように構成することで、プラスチック基材の窒素雰囲気下の放電処理によって窒素官能基を効果的に導入することができる。
このように構成することで、エポキシ系接着剤に硬化剤を配合する手間を省くことができる。
このように構成することで、膜−電極構造体の厚さの増大を回避することができる。
請求項2に記載した発明によれば、プラスチック基材の窒素雰囲気下の放電処理によって窒素官能基を効果的に導入することができる。
請求項3に記載した発明によれば、エポキシ系接着剤に硬化剤を配合する手間を省くことができる。
請求項4に記載した発明によれば、固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体の厚さの増大を回避することができる。
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体は、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に表面処理により窒素官能基を導入し、該窒素官能基が導入された表面に接してエポキシ系接着剤層を形成し、プロトン伝導膜とエポキシ系接着剤層を接合するとともに、エポキシ系接着剤層とプラスチック基材を接合することによって製造することができる。
本発明で用いるプラスチック基材の形態は、特に制限はないが、例えば、フィルムやシート(以下、これらを総称してフィルムという。)などが挙げられる。
耐熱性を向上するため、プラスチック基材を構成するプラスチックのガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。
そして、エポキシ系接着剤層をプラスチック基材に接着する面を表面処理して前記窒素官能基を導入すればよい。つまり、エポキシ系接着剤層を、例えば、フィルム状のプラスチック基材の両面に積層する場合は、両面とも表面処理をして前記窒素官能基を導入する。導入された窒素官能基が、エポキシ系接着剤のエポキシ基と反応し、化学結合を形成することによって、強固な接着力が得られる。
窒素官能基を導入する表面処理の方法としては、窒素ガスを含み、かつ実質的に酸素ガスを含まない窒素雰囲気下の放電処理により行うことができる。このように表面処理を行う方法は、上述した種々のプラスチックの表面に窒素官能基を導入することが可能なので好ましい。
酸素濃度が高いとプラスチック表面に導入される窒素官能基量が少なくなり、酸素濃度が低いと窒素官能基量が多くなり、接着が強くなる。窒素雰囲気の酸素濃度は、容量比で1000ppm以下が好ましい。なお、窒素官能基がプラスチックの表面に導入されたか否かは、後述するようにXPS(X線光電子分光法)のN(窒素原子)の1sにおける化学結合エネルギーによって確認する事ができる。
そして、後述するエポキシ系接着剤層形成工程で、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布する場合は、このフィルム塗工装置の接着剤塗工部より上流にハウジングで覆われたコロナ放電処理装置を設置しておけば、表面処理工程とエポキシ系接着剤層形成工程とを順次連続して行うことができる。
そして、これらの官能基は、エポキシ系接着剤との接着性能に寄与するが、熱水や水蒸気に対しては高い接着強度が得られない。また、強酸性の条件における接着強度の低下を防ぐこともできない。この理由は定かではないが、この活性酸素原子が官能基を生成する際に高分子を切断して低分子化する作用も強いため、プラスチック基材の表面において、酸素原子を含む低分子化合物が極めて薄い層状に生成する。この低分子化合物層は分子量が比較的小さいので、親水性を呈しやすくなるとともに凝集力などの物理的強度が小さいためと考えられる。
つまり、酸素濃度の低い窒素雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物は、空気雰囲気でのコロナ放電処理時に生成する低分子化合物より分子量が大きく、この低分子物層の凝集力などの物理的強度も大きくなる。このことから、本発明の表面処理工程をプラスチック基材へ適用することでエポキシ系接着剤層との接着性向上の効果が得られると考えられる。
本発明の表面処理工程においては、窒素雰囲気の大気圧プラズマ処理も使用できる。この場合には、安定したグロー放電のために希ガスが混入されても良い。そして、希ガスの比率は、半分を超えることもできる。
前記窒素官能基が導入されたプラスチック基材の表面に、エポキシ系接着剤を塗布してエポキシ系接着剤層を形成する。塗布には、浸漬、スプレーコートやスピンコート、あるいは刷毛塗りなどを採用することができる。プラスチック基材がフィルムである場合は、グラビアコートやドクターコートなど公知のフィルム塗工方法を採用することができ、公知のフィルム塗工装置を用いて、ロール・ツウ・ロールで連続して塗布することができる。
塗布されるエポキシ系接着剤としては、主剤と硬化剤を含有し、塗布する際には硬化していないか、一部硬化していても被着体に塗布し得る程度の粘度を有するもの等が挙げられる。エポキシ系接着剤は、予め硬化剤が配合された一液型でも使用時に硬化剤を配合する二液型でも使用可能である。これらのうち、硬化剤を配合する手間が省けることから、一液型であることが好ましい。特に、プラスチック基材がフィルムである場合は、硬化剤は、一液型であることが好ましい。
剥離紙を用いる場合は、剥離紙にエポキシ系接着剤を塗布してプラスチック基材を合わせてもよい。
エポキシ系接着剤は、2種類以上の主剤を含有するものでもよい。主剤としては、中でもグリシジルエーテル系エポキシ樹脂およびグリシジルアミン系樹脂が好ましく、とりわけビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
なお、エポキシ系接着剤は、2種類以上の硬化剤を含有するものでもよい。硬化剤として、中でもジメチルアミノアルキルフェノール類、ポリアミノポリアミド等が好適である。
ここで、含有させてもよい他の樹脂としては、不飽和ポリエステルなどの重合性二重結合含有モノマー類およびそのプレポリマー類;ポリブタジエン、マレイン化ブタジエン、エポキシ化ブタジエン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、マレイン化ブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体およびそのカルボキシル基含有樹脂、ポリクロロプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリイソプレン、ブチルゴム、フッ素ゴム、天然ゴムなどの低分子量液状ないし高分子量エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリスチレン、AS樹脂、MBS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など;ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィドなどの高分子量ポリマーおよびそれらの低分子量プレポリマーもしくはオリゴマー;ポリウレタン、多官能性マレイミド類などが例示される。
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体は、図1および図2に示すように、プロトン伝導膜2と接合されているエポキシ系接着剤層11と、エポキシ系接着剤層11と接合されているプラスチック基材12とをさらに有し、プラスチック基材12がエポキシ系接着剤層11との界面13に有する窒素官能基と、エポキシ系接着剤層11のエポキシ基とが化学結合していることを特徴とする。
プロトン伝導膜2の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極7,8が設けられている。図1の場合、一対の電極7,8のうち、いずれか一方の電極がアノード電極となり、プロトン伝導膜2を介してアノード電極の反対側の電極がカソード電極となる。図2の場合、プラスチック基材12側の電極7と反対側の電極8とのうち、いずれか一方の電極がアノード電極となり、プロトン伝導膜2を介してアノード電極の反対側の電極がカソード電極となる。
プロトン伝導膜2の表面には、表面粗さの最大高さRmaxが3〜20μmの範囲にある凹凸(「しぼ(皺)」と呼ばれる。)が形成されることが好ましい。この凹凸は、表面粗さの最大高さRmaxが5〜50μmの範囲にある金型を加熱下に押圧し、金型の表面形状を転写することによって形成することができる。
触媒層3,4は、プロトン伝導膜2の外周縁よりも内周側に位置するように積層されている。また、触媒層3,4の上には、多孔質拡散層5,6が積層される。
エポキシ系接着剤が一液型の場合はそのまま、二液型の場合は硬化剤を配合して、エポキシ系接着剤層11をプロトン伝導膜2とプラスチック基材12との接着に用いることができる。
そして、プラスチック基材12とプロトン伝導膜2との間に介在させたエポキシ系接着剤を硬化させて、本形態例の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体1a,1bを形成することができる。エポキシ系接着剤が熱硬化型である場合は、熱圧着と同時に硬化処理を行ってもよい。
硬化させたエポキシ系接着剤のガラス転移温度Tgは、耐熱性の観点から、80℃以上であることが好ましい。
実質的に酸素を含まない窒素雰囲気下の放電処理による表面処理を用いることにより、プラスチック基材が接着剤層と接する界面のみに窒素官能基を導入することが可能となり、接着剤層と接しない内部に窒素官能基を有しない構造となる。このため、本発明において接合したプラスチック基材が強酸性物質に接しても、プラスチック基材の窒素官能基が塩基として強酸性物質と反応することがない。したがって、強酸性物質が生成する燃料電池等の強酸性媒質に接する部材として用いるときに、内容物や媒質を変質させるおそれがない。
(参考例1:XPSによる窒素存在量の測定)
PPSフィルム(厚み12μm)の表面に、表面処理工程として、バッチ式コロナ放電処理装置を用いて窒素雰囲気下でコロナ放電処理を実施し、XPS(X線光電子分光法)にて表面の窒素(N)、炭素(C)および硫黄(S)の元素存在量(Atomic%)を測定した。窒素雰囲気下のコロナ処理の酸素濃度(容量比)は、0.2%、0.09%、0.075%(2000ppm、900ppm、750ppm)の3通りとした。その結果を表1に示す。
また、比較のため、大気下でコロナ処理したPPSおよび未処理のPPSについても、XPSにて表面の窒素(N)の存在量を測定したが、N存在量は0であった。
表1から、窒素官能基は、空気雰囲気下での表面処理では導入されず、酸素濃度の低い窒素雰囲気下での表面処理で導入されること、および、窒素雰囲気中の酸素濃度の低下に伴い窒素官能基の導入量が増えることがわかる。
図7は、F(1s)、O(1s)、N(1s)、C(1s)およびS(2p)に対応するピークを含むチャートである。
また、図8は、N(1s)ピークを拡大して、アミン(NH2)のピークとアミド(NHCO)のピークの比率を解析した様子を示す。N存在量のうち、NHCOの窒素は約65%、NH2の窒素は約35%であった。
臭素元素を指標とするために、ビスフェノールAに臭素原子を導入した臭素化エポキシ接着剤の主剤のみを酸素濃度900ppmの窒素雰囲気下でコロナ処理して窒素官能基を導入したPPSフィルムに塗布して、150℃で20分間、熱処理をした。その後、臭素化エポキシ接着剤の主剤を溶解可能なMEK(メチルエチルケトン)に熱処理したPPSフィルムを浸漬し、2時間、超音波洗浄した。そして、そのまま2日間、MEKに浸漬し、取り出す直前に再度、2時間、超音波洗浄した。そのようにしてPPSフィルムの表面から未反応の臭素化エポキシ接着剤を完全に除去して取り出したサンプルを乾燥後、PPSフィルムの臭素化エポキシ接着剤と接した面をXPSで表面分析した。結果を図9に示す。
このことから、臭素化エポキシ樹脂がPPSフィルムの表面に存在していることがわかる。つまり、PPSフィルムの表面に導入された窒素官能基と臭素化エポキシ接着剤のエポキシ基が化学結合してPPSフィルムの表面に結合したものと推測される。したがって、PPSに導入された窒素官能基が臭素化エポキシ接着剤の硬化剤と同様な働きをして、エポキシ基一部がこれと反応してMEKに不溶となり、PPSフィルムに固定化されたものと推測される。
このことは、大多数の窒素原子や硫黄原子がPPSフィルムの表面に露出しなくなったことを意味する。したがって、ごく微量のMEKに溶解しないPPSフィルムに固定化された臭素化エポキシ樹脂が皮膜の様にPPSフィルムの表面を覆っていると推定される。
そして、本発明の接着部材においては、プラスチック基材の表面を覆うようにエポキシ系接着剤のエポキシ基と窒素官能基が結合しており、被着体に接着してエポキシ系樹脂を硬化させた時、固定化されたエポキシ樹脂に残っている未反応のエポキシ基が硬化剤と反応して、熱水、酸やアルカリに対して耐性の高い接着界面の形成が可能となると推測される。
プロトン伝導膜(PEM)の両面にそれぞれ触媒層および多孔質拡散層を有する電極を形成して、膜−電極構造体(MEA)を作製した。このようにして作製したMEAに、PEMの露出部分に(PEMの外周部の片側、又は両側)、PPSフィルム12μm(東レ製)を1液性のエポキシ接着剤XNR3305(長瀬産業製)を用いて接着した。エポキシ接着剤はバーコーターにて塗布厚みは20μmとなるように制御した。次にこのエポキシ付きPPSフィルムを、前頁のMEAの膜の露出部分に貼り合わせ、接着圧力1kgf/cm2,接着温度は150℃、硬化時間は10minにてPPSフィルムを接着した。
実施例1で作製したPPSが接着されたサンプルの接着耐久性を測定した。比較サンプルとして、PPSフィルムの表面処理方法を大気中コロナ処理として、同様な方法でPPSフィルム積層MEAのサンプルを作製した。これらのMEAを燃料電池セルに組みこみ、セル内に水を混入させ−20℃⇔90℃の凍結乾燥サイクルによる接着耐久性を確認した。セル構造を図6に示す。
初期サンプルの接着強度を測定するために、サンプルを幅15mmに切り出し接着強度を測定したところ180度剥離試験において、いずれのサンプルも9N/15mmであった。
一方で、PPS表面に窒素官能基を導入したサンプルの接着強度を測定しところ、9N/15mmと初期との接着強度と差異がなかった。また剥離部位では、凝集剥離しており、エポキシとPPS、及びエポキシと電解膜との接着の耐久性が良好である事が分かった。
以上の事から、窒素官能基を導入したPPSフィルムをエポキシ接着剤で積層した接着構造の耐久性が良好であることが確認された。
2 プロトン伝導膜
7,8 電極
11 エポキシ系接着剤層
12 プラスチック基材
Claims (4)
- プロトン伝導膜の両面にそれぞれアノード電極およびカソード電極となる一対の電極が設けられた固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、
前記プロトン伝導膜と接合されているエポキシ系接着剤層と、前記エポキシ系接着剤層と接合されているプラスチック基材とをさらに有し、前記プラスチック基材が前記エポキシ系接着剤層との界面に有する窒素官能基と、前記エポキシ系接着剤層のエポキシ基とが化学結合していることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。 - 前記窒素官能基が、第1級アミン、第2級アミン、およびアミドから選ばれる少なくとも1つの窒素官能基であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 前記エポキシ系接着剤層を構成するエポキシ系接着剤が硬化剤を含有する一液型であることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
- 前記プラスチック基材がフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
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