JP2010068595A - 同期電動機の固定子 - Google Patents

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篤 松岡
Kazuhiko Baba
和彦 馬場
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仁 川口
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Abstract

【課題】振動・騒音を抑えることができるとともに、誘起電圧の歪みを低減できる同期電動機の固定子を提供する。
【解決手段】この発明に係る同期電動機の固定子は、電磁鋼板を積層して形成される固定子鉄心10と、固定子鉄心10に巻回され、電流が通電される巻線とを備えた同期電動機の固定子において、固定子鉄心10は、同期電動機の固定子内部で回転する回転子に向かって突出する複数の歯部1と、歯部1の一部を形成し、回転子に対向する回転子対向部1aと、回転子対向部1aの内部に設けられ、周方向中央部から周方向両端部に向かって体積が徐々に大きくなる非磁性空間2とを備えたことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

この発明は、回転子に永久磁石を用いる同期電動機の固定子に関する。
回転子に永久磁石を用いる同期電動機は、回転子に生じる磁束が固定子の巻線に鎖交し、これに対して外部より巻線に電流を通電することによって、回転子を回転させるトルクを発生する。回転子より発生し、固定子の巻線に鎖交する磁束の変化が緩やかでないと、同期電動機が出力するトルクに変動が生じ、同期電動機から振動や騒音が発生する。
また、一般的に固定子には、回転子の磁束をより巻線に鎖交させるため、磁束の通りやすい磁性体の材料を用いた固定子鉄心が用いられる。固定子の巻線は、固定子鉄心から回転子に向かって突出した歯部に巻回されることが多い。より巻線に磁束を鎖交させるために、隣り合う歯部の間には、スロット開口部が設けられることが多い。このとき、歯部の回転子対向部と開口部で磁気抵抗が異なるため、回転子より発生する磁束にアンバランスが生じ、コギングトルクが発生し、同期電動機の振動や騒音の要因となる。
この課題に対して、以下に示す技術の提案がなされている。即ち、回転子に対向する固定子歯部の一部に軸方向に貫く溝を設けて、擬似的な開口部とすることで、磁気的にアンバランスとなる部分の数を増やし、エネルギーを分散させ、コギングトルクを低減する回転電機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、固定子鉄心のティースに補助溝を有するモータにおいて、補助溝の幅が理想形状から多少外れた場合でもプレス金型等の形状の変更無くコギングトルクの低減を図ることを目的として、ティースの永久磁石と対向する位置に補助溝が設けられた固定子鉄心を積層して固定子を形成する永久磁石型モータにおいて、補助溝の溝幅をゼロを含めて固定子鉄心の積層方向の位置により変化させることによりコギングトルクを低減する永久磁石型モータが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、閉スロットタイプの固定子鉄心を備えた永久磁石形モータにおいて、トルクリップルを小さくするために、固定子鉄心は、各ティースの回転子側の先端部に隣り合ったティース間を連結する連結部を有する閉スロットタイプであり、かつ、各ティースの先端部付近に、軸方向に延びる穴を2個ずつ設けた構成とする。ティースの先端部付近に形成した穴が、回転子の回転時において連結部を流れる鎖交磁束の磁気抵抗となり、連結部側へ磁束が流れ難くなり、連結部を流れる鎖交磁束の量の急激な変化が抑えられるようになる。これにより、ティース(固定子巻線部)に発生する誘起電圧波形にひずみが発生することが抑えられ、ひいてはトルクリップルが発生することを極力抑えることができる永久磁石形モータが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、ステータコアに溝を設けることなくコギングトルクの小さいモータを安価に提供するために、ステータとしての積層厚みの1/2程度に積層したステータコアのティース部の片側先端部を加圧して磁気特性を劣化させる。同様に1/2程度積層したステータコアの他方先端部を加圧する。先端部を加圧した2つのステータコアを、先端部と先端部が点対称になるように積層すると磁気特性の劣化部が点対称となり、スキューと同様の効果が得られるモータが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開昭62−77840号公報 特開2006−230116号公報 特開2006−288043号公報 特開2005−168153号公報
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2のように、固定子の歯部の回転子対向部に軸方向に延びる溝を設けるのは、コギングトルクを低減する効果は得られるが、トルクリップルの原因となる誘起電圧の歪みを低減する効果は得られないという課題がある。
また、上記特許文献3に記載されている永久磁石形モータ(同期電動機)の場合、誘起電圧の歪みを低減することで、永久磁石形モータの振動・騒音を抑える効果を得ることができる。また、スロットの開口部が無いため、コギングトルクの発生が少なく、同様に永久磁石形モータの振動・騒音を抑える効果が期待できる。しかし、隣り合う歯部の先端を連結するため、回転子から生じる磁束がこの連結部で短絡して固定子の巻線に鎖交する量が減少し、永久磁石形モータの出力が低下するという課題がある。
また、上記特許文献4に記載されているモータ(同期電動機)の場合、固定子の歯部の回転子対向部にスキューと同等の効果が得られ、コギングトルクの低減,誘起電圧の歪み低減ができ、モータの振動・騒音を低減するという効果が得られるが、固定子鉄心の製造の際に、鉄心の一部に加圧を行い、磁気特性を劣化させる工程が必要となり、加工コストが増加するという課題がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされるもので、振動・騒音を抑えることができるとともに、誘起電圧の歪みを低減できる同期電動機の固定子を提供することを目的とする。
この発明に係る同期電動機の固定子は、電磁鋼板を積層して形成される固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回され、電流が通電される巻線とを備えた同期電動機の固定子において、
前記固定子鉄心は、
当該同期電動機の固定子内部で回転する回転子に向かって突出する複数の歯部と、
前記歯部の一部を形成し、前記回転子に対向する回転子対向部と、
前記回転子対向部の内部に設けられ、周方向中央部から周方向両端部に向かって体積が徐々に大きくなる非磁性空間とを備えたことを特徴とする。
この発明に係る同期電動機の固定子は、回転子対向部の内部に周方向中央部から周方向両端部に向かって体積が徐々に大きくなる非磁性空間を備えたことにより、回転子より固定子に鎖交する磁束の変化が緩やかになり、誘起電圧の歪みを抑え、トルク脈動を抑え、同期電動機の振動・騒音を抑えることができる。
実施の形態1.
図1乃至図10は実施の形態1を示す図で、図1は同期電動機の固定子鉄心10の斜視図、図2は図1の歯部1を拡大した斜視図、図3は図1の歯部1の回転子対向部1aを拡大した斜視図(a)とA〜E部の断面図(b)、図4は変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図5は図4の回転子対向部1aを拡大した斜視図、図6は変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図7は図6の歯部1の回転子対向部1aを拡大した斜視図(a)とA〜E部の断面図(b)、図8は図4に示す固定子鉄心10を用いた同期電動機の誘起電圧を示す図、図9は同固定子鉄心10を用いた同期電動機のコギングトルクを示す図、図10は誘起電圧の周波数成分分析の結果を示す図である。
図1、図2を参照しながら、同期電動機の固定子鉄心10の構成を説明する。同期電動機の固定子は、主に板厚が0.1〜1.5mmの電磁鋼板を積層して形成される固定子鉄心10と、電流を通電する巻線(図示せず)とにより構成される。
固定子鉄心10は、固定子内部で回転する回転子(図示せず)に向かって突出する複数の歯部1を有する。図1の例では、6個の歯部1を有する。
歯部1の先端(内周面)に、回転子に対向する回転子対向部1aを有する。回転子対向部1aの内周面は、軸方向に直交する断面の形状が略円弧である。6個の回転子対向部1aの内周面の円弧を結ぶと一つの円になる。
通常、回転子対向部1aは、回転子からの磁束をより多く集めるために歯部1よりも周方向に幅広の形状である。
隣り合う歯部1の間のスロット3(空間)には巻線(図示せず)が挿入される。巻線は線径が太いほど抵抗が低くなり、通電時に巻線で発生する損失が少なくなるため、歯部1間のスロット3が大きくなるように、歯部1の幅(周方向)は回転子対向部1aの幅(周方向)より小さくしている。隣り合う歯部1の間には、スロット開口部3aが設けられる。
回転子対向部1aの内部には、回転子からみて四隅に非磁性空間2を有する。非磁性空間2の形状は、回転子からみて略直角三角形である。
この非磁性空間2は、周方向の長さが回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなっている。非磁性空間2の径方向の寸法は全体が略同一であるので、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなる。別の言い方をすると、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの周方向中央部から周方向両端部に向かって徐々に大きくなる。即ち、非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となる。これによって、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の形状は、回転子からみて略八角形〜六角形となる。
同期電動機の回転子が回転するとき、回転子の磁極に対向する固定子鉄心10の回転子対向部1aの面積は、非磁性空間2が無い固定子鉄心10の場合には、回転子の回転角に比例して徐々に増加する。
これに対して、非磁性空間2を有する同期電動機の固定子鉄心10では、回転子の回転角に対して、初めは回転子の磁極に対向する磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の面積の増加が少なく、徐々に面積の増加が大きくなっていく。
固定子鉄心10の回転子対向部1aに非磁性空間2が無い場合、回転子の磁極より回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、回転子磁極の磁束分布に従って変化する。
例えばラジアル配向に着磁された回転子の場合、磁極間の磁束の変化は急であるため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、磁極の切り替わり付近で急に変化する。
また、永久磁石を磁性体内部に配置する回転子の場合には、永久磁石より発生する磁束は、永久磁石の外周部にある磁性体部分で向きを自由に変化させるため、この磁性体部分が、回転子の回転に従って固定子鉄心10の回転子対向部1aに対向したと同時に、磁束が急激に回転子対向部1aへと集中するため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束は急激に変動する。
これによって、固定子の巻線に生じる誘起電圧に歪みが生じ、同期電動機のトルク脈動が大きくなり、振動・騒音の要因となる。
本実施の形態による同期電動機の固定子鉄心10は、回転子が回転するときに、固定子鉄心10の回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
通常、固定子鉄心10は電磁鋼板を積層して構成することが多く、図2に示す固定子鉄心10は、回転子対向部1aにある非磁性空間2を構成するための電磁鋼板を打ち抜く穴の形状を、図3に示すように、積層する電磁鋼板ごとに徐々に変化させることで実現できる。
図3に示すように、積層される電磁鋼板の非磁性空間2を形成する穴2aの形状は、軸方向端部(A)で最も大きく、軸方向の中央部に向かって徐々に小さくなる(A→E)。
しかし、この場合(図3)は、打ち抜く電磁鋼板の種類が多くなるため、大規模な金型、プレス設備が必要となる。
これに対して、例えば、図4に示す変形例1の固定子鉄心10は、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させている。
そのため、図5に示すように、変形例1の固定子鉄心10の電磁鋼板は、A〜Eの5種類になる。
このようにすることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、図6に示す変形例2の固定子鉄心10のように、非磁性空間2を、軸方向に開けられる複数のスリット孔2b,2c,2d,2eで構成してもよい。スリット孔2b,2c,2d,2eを、「空間」と定義する。
スリット孔2b,2c,2d,2eは、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向両端に向かって順に形成される。軸方向の長さは、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなっている。
図6のように構成することで、図2に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。
図6に示す変形例2の固定子鉄心10は、図7に示すように、軸方向の位置A付近の電磁鋼板は、回転子対向部1aにスリット孔2b,2c,2d,2eを左右に略対称に有する。
また、軸方向の位置B付近の電磁鋼板は、回転子対向部1aにスリット孔2c,2d,2eを左右に略対称に有する。
また、軸方向の位置C付近の電磁鋼板は、回転子対向部1aにスリット孔2d,2eを左右に略対称に有する。
また、軸方向の位置D付近の電磁鋼板は、回転子対向部1aにスリット孔2eを左右に略対称に有する。
また、軸方向の位置E付近の電磁鋼板は、回転子対向部1aにスリット孔が存在しない。
このように、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、図7に示すようにその数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
本実施の形態に示すように、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1a内部に非磁性空間2を設けると、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となる。そのため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。また、インシュレータの一部をこの非磁性空間2にはめ込むことで、強度を上げることも可能である。
また、回転子対向部1aの内周面(回転子と対向する面)に溝を入れないため、固定子鉄心10の内周面を円弧で構成でき、寸法の管理も容易となる。
また、例えば、本実施の形態の固定子鉄心10を備える同期電動機を、電動機本体が冷媒や冷凍機油の中で使用される圧縮機などに用いる場合、回転子と固定子間の空隙がスロット開口部3a以外は均一となるため、回転子の回転による空隙間の冷媒や冷凍機油の流れに乱れが生じにくく、損失が生じにくい。
図8は図4に示す固定子鉄心10を用いた同期電動機の誘起電圧波形を示したものである。比較のため、非磁性空間2を持たない固定子鉄心10を用いた同期電動機の誘起電圧波形も同時に示している。回転子には、永久磁石を表面に配置した形態の回転子を用いた。永久磁石は、円筒状のもので、ラジアル配向されたものを多極に着磁した。スロット数は6、極数は4である。
固定子鉄心10の回転子対向部1aに非磁性空間2を持たない固定子を用いたときの誘起電圧に比べると、図4の固定子鉄心10を用いた同期電動機の誘起電圧は、波形の歪みが少なくなっていることがわかる。
図10は誘起電圧の波形を周波数分析した結果を示している。図8中の回転角180°を1周期(基本周波数)として、これに対して、整数倍の周波数成分がどの程度含まれるかを分析したものである。各周波数成分の基本周波数成分に対する割合を2乗したものの総和の平方根をとったものを全歪率(THD)としている。成分によっては、増加しているものも見られるが(7次成分、11成分)、最も大きな成分である5次の成分が大きく低下しており、トータルとしての全歪率(THD)も低下しており、誘起電圧の歪みが低減されていることがわかる。
また、図9は図4に示す固定子鉄心10を用いた同期電動機のコギングトルクの波形を示す。比較のため、非磁性空間2を持たない固定子鉄心10を用いた同期電動機のコギングトルクの波形も同時に示している。スロット開口部3aの形状が同じであるため、コギングトルクには増加の傾向は見られず、僅かではあるが低下していることがわかる。
以上のように、本実施の形態による同期電動機の固定子鉄心10は、回転子対向部1aの内部に、回転子からみて四隅に非磁性空間2を有する。この非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなっており、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となる。これによって、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の形状は、回転子からみて略八角形〜六角形となる。このような構成にしたので、回転子が回転するときに、固定子鉄心10の回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、ティースに急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、非磁性空間2を、軸方向に開けられる複数のスリット孔2b,2c,2d,2eで構成することにより、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
また、回転子対向部1aの内周面(回転子と対向する面)に溝を入れないため、固定子鉄心10の内周面を円弧で構成でき、寸法の管理も容易となる。
また、例えば、本実施の形態の固定子鉄心10を備える同期電動機を、電動機本体が冷媒や冷凍機油の中で使用される圧縮機などに用いる場合、回転子と固定子との間の空隙がスロット開口部3a以外は均一となるため、回転子の回転による空隙間の冷媒や冷凍機油の流れに乱れが生じにくく、損失が生じにくい。
実施の形態2.
図11乃至図13は実施の形態2を示す図で、図11は同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図12は変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図13は変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図である。
図11により、同期電動機の固定子鉄心10の構成を説明する。固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1aの内部には、回転子からみて二つの角(隅)に非磁性空間2を有する。これらの非磁性空間2は、対角線上に配置される。
この非磁性空間2は、周方向の長さが回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなっている。非磁性空間2の径方向の寸法は全体が略同一であるので、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなる。別の言い方をすると、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの周方向中央部から周方向両端部に向かって徐々に大きくなる。即ち、非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となる。
これによって、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の形状は、斜めに略六角形となる。
同期電動機の回転子が回転するとき、回転子の磁極に対向する固定子鉄心10の回転子対向部1aの面積は、非磁性空間2が無い固定子鉄心10の場合には、回転子の回転角に比例して、徐々に増加する。
これに対して、非磁性空間2を有する同期電動機の固定子鉄心10では、回転子の回転角に対して、初めは回転子の磁極に対向する磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の面積の増加が少なく、徐々に面積の増加が大きくなっていく。
固定子鉄心10の回転子対向部1aに非磁性空間2が無い場合、回転子の磁極より回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、回転子磁極の磁束分布に従って変化する。
例えばラジアル配向に着磁された回転子の場合、磁極間の磁束の変化は急であるため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、磁極の切り替わり付近で急に変化する。
また、永久磁石を磁性体内部に配置する回転子の場合には、永久磁石より発生する磁束は、永久磁石の外周部にある磁性体部分で向きを自由に変化するため、この磁性体部分が、回転子の回転に従って固定子鉄心10の回転子対向部1aに対向したと同時に、磁束が急激に回転子対向部1aへと集中するため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束は急激に変動する。
これによって、固定子の巻線に生じる誘起電圧に歪みが生じ、同期電動機のトルク脈動が大きくなり、振動・騒音の要因となる。
本実施の形態による同期電動機の固定子は、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多い領域がちょうどスキューをかけたような形状となるため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、一般的に、固定子鉄心10の隣り合う回転子対向部1a間のスロット開口部3aが大きくなると、回転子からみた外側(固定子鉄心10側)の磁気抵抗が大きくなる空間が広がり、スロット開口部3aと固定子鉄心10の回転子対向部1aとの磁気抵抗の差が大きくなり、コギングトルクが増大する。
例えば、固定子鉄心10の回転子対向部1aにおいて、軸方向端部を完全に非磁性空間とした場合、実質的なスロット開口部3aが広くなってしまうため(軸方向端部では、スロット開口部3aが広くなる)、前述のように誘起電圧の歪みを抑える効果は得られるものの、コギングトルクが増大してしまう。
これに対して、本実施の形態に示す同期電動機の固定子鉄心10の場合、スロット開口部3aの幅(周方向)は広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
通常、固定子鉄心10は電磁鋼板を積層して構成することが多く、図2に示す固定子鉄心10は、回転子対向部1aにある非磁性空間2を構成するための電磁鋼板を打ち抜く穴の形状を、積層する電磁鋼板ごとに徐々に変化させることで実現できる。
しかし、この場合は、打ち抜く電磁鋼板の種類が多くなるため、大規模な金型、プレス設備が必要となる。
これに対して、例えば、図12に示す変形例1の同期電動機の固定子鉄心10は、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させている。
このようにすることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板(打ち抜き後)の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、図13に示す変形例2の固定子鉄心10のように、非磁性空間2を、軸方向に開けられる複数のスリット孔2b,2c,2d,2eで構成してもよい。スリット孔2b,2c,2d,2eを、「空間」と定義する。
スリット孔2b,2c,2d,2eは、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向端に向かって順に形成される。軸方向の長さは、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなっている。
このように構成することで、図11に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
本実施の形態に示すように、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1a内部に非磁性空間2を設けると、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となる。そのため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。また、インシュレータの一部をこの非磁性空間2にはめ込むことで、強度を上げることも可能である。
以上のように、この実施の形態によれば、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1aの内部に、回転子からみて二つの角(隅)に対角線上に配置される非磁性空間2を有し、この非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に大きくなる。非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となるようにすることにより、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多い領域がちょうどスキューをかけたような形状となるため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、スロット開口部3aの幅(周方向)が広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
また、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板(打ち抜き後)の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、スリット孔2b,2c,2d,2eを、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向端に向かって順に形成し、軸方向の長さを、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなるように構成することで、図11に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
実施の形態3.
図14乃至図16は実施の形態3を示す図で、図14は同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図15は変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図16は変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図である。
図14により、同期電動機の固定子鉄心10の構成を説明する。回転子対向部1aの内部に、回転子からみて周方向両端で軸方向中央付近に非磁性空間2を有する。これらの非磁性空間2は、回転子対向部1aにおいて、周方向に対称に配置される。
この非磁性空間2は、周方向の長さが軸方向中央部から軸方向端部に向かって徐々に小さくなっている。非磁性空間2の径方向の寸法は全体が略同一であるので、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に小さくなる。別の言い方をすると、非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの周方向中央部から周方向両端部に向かって徐々に大きくなる。即ち、非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となる。これによって、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の形状は、上下に略台形の領域をひっくり返して重ねたような形状となる。
同期電動機の回転子が回転するとき、回転子の磁極に対向する固定子鉄心10の回転子対向部1aの面積は、非磁性空間2が無い固定子鉄心10の場合には、回転子の回転角に比例して、徐々に増加する。
これに対して、非磁性空間2を有する同期電動機の固定子鉄心10では、回転子の回転角に対して、初めは回転子の磁極に対向する磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の面積の増加が少なく、徐々に面積の増加が大きくなっていく。
固定子鉄心10の回転子対向部1aに非磁性空間2が無い場合、回転子の磁極より回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、回転子磁極の磁束分布に従って変化する。
例えばラジアル配向に着磁された回転子の場合、磁極間の磁束の変化は急であるため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、磁極の切り替わり付近で急に変化する。
また、永久磁石を磁性体内部に配置する回転子の場合には、永久磁石より発生する磁束は、永久磁石の外周部にある磁性体部分で向きを自由に変化させるため、この磁性体部分が、回転子の回転に従って固定子鉄心10の回転子対向部1aに対向したと同時に、磁束が急激に回転子対向部1aへと集中するため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束は急激に変動する。
これによって、固定子の巻線に生じる誘起電圧に歪みが生じ、同期電動機のトルク脈動が大きくなり、振動・騒音の要因となる。
本実施の形態による同期電動機の固定子は、回転子対向部1aの磁性体が周方向端部では少ないため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、一般的に、固定子鉄心10の隣り合う回転子対向部1a間のスロット開口部3aが大きくなると、回転子からみた外側(固定子鉄心10側)の磁気抵抗が大きくなる空間が広がり、スロット開口部3aと固定子鉄心10の回転子対向部1aとの磁気抵抗の差が大きくなり、コギングトルクが増大する。
例えば、固定子鉄心10の回転子対向部1aにおいて、軸方向端部を完全に非磁性空間とした場合、実質的なスロット開口部3aが広くなってしまうため(軸方向端部では、スロット開口部3aが広くなる)、前述のように誘起電圧の歪みを抑える効果は得られるものの、コギングトルクが増大してしまう。
これに対して、本実施の形態に示す同期電動機の固定子の場合、スロット開口部3aの幅(周方向)は広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
通常、固定子鉄心10は電磁鋼板を積層して構成することが多く、図14に示す固定子鉄心10は、回転子対向部1aにある非磁性空間2を構成するための電磁鋼板を打ち抜く穴の形状を、積層する電磁鋼板ごとに徐々に変化させることで実現できる。
しかし、この場合は、打ち抜く電磁鋼板の種類が多くなるため、大規模な金型、プレス設備が必要となる。
これに対して、例えば、図15に示す変形例1の同期電動機の固定子鉄心10は、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させている。
このようにすることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、図16に示す変形例2の同期電動機の固定子鉄心10のように、非磁性空間2を、軸方向に開けられる複数のスリット孔2b,2c,2d,2eで構成してもよい。スリット孔2b,2c,2d,2eを、「空間」と定義する。
スリット孔2b,2c,2d,2eは、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向両端に向かって順に形成される。軸方向の長さは、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなっている。
このように構成することで、図14に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
本実施の形態に示すように、固定子鉄心10の回転子対向部1a内部で軸方向の中央付近に非磁性空間2を設けると、固定子鉄心10回転子対向部1aの軸方向端部に磁性体(電磁鋼板)が存在するため強度が高くなり、製造時や運搬時に鉄心の変形を防止できる。
また、本実施の形態に示すように、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1a内部に非磁性空間2を設けると、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となる。そのため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。
以上のように、この実施の形態によれば、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1aの内部に、回転子からみて周方向両端で軸方向中央付近に周方向に対称に配置される非磁性空間2を有し、この非磁性空間2の体積は回転子対向部1aの軸方向中央部から軸方向両端部に向かって徐々に小さくなる。非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向両端部及び周方向両端部で最も大きな空間となるようにすることにより、回転子対向部1aの磁性体が周方向端部では少ないため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、スロット開口部3aの幅(周方向)は広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
また、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化ることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、スリット孔2b,2c,2d,2eを、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向両端に向かって順に形成し、軸方向の長さを、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなるように構成することで、図14に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
また、固定子鉄心10の回転子対向部1a内部で軸方向の中央付近に非磁性空間2を設けると、固定子鉄心10回転子対向部1aの軸方向端部に磁性体(電磁鋼板)が存在するため強度が高くなり、製造時や運搬時に鉄心の変形を防止できる。
また、固定子鉄心10の歯部1の回転子対向部1a内部に非磁性空間2を設けると、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となるため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。
実施の形態4.
図17乃至図19は実施の形態4を示す図で、図17は同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図18は変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図、図19は変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図である。
図17により、同期電動機の固定子鉄心10の構成を説明する。回転子対向部1aの内部に、回転子からみて、二つの角(隅)に略直角三角形の非磁性空間2を有する。二つの非磁性空間2が回転子対向部1aの略中央部を中心に点対称に配置される。二つの略直角三角形の長辺が、回転子対向部1aの略対角線上にある配置である。
この非磁性空間2は、回転子対向部1aの軸方向中央部で最も大きく、軸方向端部に向かってそれぞれ徐々に小さくなっている。これによって、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多く存在する領域の形状は、長方形の1辺を切り欠いたものをひっくり返して重ねた様な形状となる。
同期電動機の回転子が回転するとき、回転子の磁極に対向する固定子鉄心10の回転子対向部1aの面積は、非磁性空間2が無い固定子鉄心10の場合には、回転子の回転角に比例して、徐々に増加する。
これに対して、非磁性空間2を有する同期電動機の固定子鉄心10では、回転子の回転角に対して、初めは回転子の磁極に対向する磁性体が多く存在する領域の面積の増加が少なく、徐々に面積の増加が大きくなっていく。
固定子鉄心10の回転子対向部1aに非磁性空間2が無い場合、回転子の磁極より回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、回転子磁極の磁束分布に従って変化する。
例えばラジアル配向に着磁された回転子の場合、磁極間の磁束の変化は急であるため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束の変化は、磁極の切り替わり付近で急に変化する。
また、永久磁石を磁性体内部に配置する回転子の場合には、永久磁石より発生する磁束は、永久磁石の外周部にある磁性体部分で向きを自由に変化させるため、この磁性体部分が、回転子の回転に従って固定子鉄心10の回転子対向部1aに対向したと同時に、磁束が急激に回転子対向部1aへと集中するため、固定子鉄心10の回転子対向部1aに流入する磁束は急激に変動する。
これによって、固定子の巻線に生じる誘起電圧に歪みが生じ、同期電動機のトルク脈動が大きくなり、振動・騒音の要因となる。
本実施の形態による同期電動機の固定子は、回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多い領域がちょうどスキューをかけたような形状となるため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなる。従って、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、一般的に、固定子鉄心10の隣り合う回転子対向部1a間のスロット開口部3aが大きくなると、回転子からみた外側(固定子鉄心10側)の磁気抵抗が大きくなる空間が広がり、スロット開口部3aと固定子鉄心10の回転子対向部1aとの磁気抵抗の差が大きくなり、コギングトルクが増大する。
例えば、固定子鉄心10の回転子対向部1aにおいて、軸方向端部を完全に非磁性空間とした場合、実質的なスロット開口部3aが広くなってしまうため(軸方向端部では、スロット開口部3aが広くなる)、前述のように誘起電圧の歪みを抑える効果は得られるものの、コギングトルクが増大してしまう。
これに対して、本実施の形態に示す同期電動機の固定子鉄心10の場合、スロット開口部3aの幅は広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
通常、固定子鉄心10は電磁鋼板を積層して構成することが多く、図17に示す固定子鉄心10は、回転子対向部1aにある非磁性空間2を構成するための電磁鋼板を打ち抜く穴の形状を、積層する電磁鋼板ごとに徐々に変化させることで実現できる。
しかし、この場合は、打ち抜く電磁鋼板の種類が多くなるため、大規模な金型、プレス設備が必要となる。
これに対して、例えば、図18に示す変形例1の同期電動機の固定子鉄心10は、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させている。
このようにすることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、図19に示す変形例2の同期電動機の固定子鉄心10のように、非磁性空間2を、軸方向に開けられる複数のスリット孔2b,2c,2d,2eで構成してもよい。スリット孔2b,2c,2d,2eを、「空間」と定義する。
スリット孔2b,2c,2d,2eは、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向端に向かって順に形成される。軸方向の長さは、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなっている。
このように構成することで、図17に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
本実施の形態に示すように、固定子鉄心10の回転子対向部1a内部に、回転子対向部1aの軸方向中央部で最も大きく軸方向端部に向かってそれぞれ徐々に小さくなる非磁性空間を設けると、回転子対向部1aの端部に磁性体が存在するため強度が高くなり、製造時や運搬時に固定子鉄心10の変形を防止できる。
また、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となる。そのため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。また、インシュレータの一部をこの非磁性空間2にはめ込むことで、強度を上げることも可能である。
以上のように、この実施の形態によれば、固定子鉄心10の回転子対向部1aの磁性体(電磁鋼板)が多い領域がちょうどスキューをかけたような形状となるため、回転子が回転するときに、回転子対向部1aが回転子磁極に対向する面積がはじめは小さく、歯部1中心に向かって回転が進むに従って徐々に面積の増加量が大きくなるため、歯部1に急に磁束が流入することが抑制されて、巻線に生じる誘起電圧の歪みが少なくなり、トルク脈動を抑えて、振動・騒音の少ない同期電動機が得られる。
また、スロット開口部3aの幅は広がらないため、コギングトルクの増加を抑制することができる。
また、同一形状の電磁鋼板を複数枚連続して積層し、非磁性空間2の周方向長さを軸方向に対して階段状に変化させることで、非磁性空間2を構成するための電磁鋼板の種類を削減でき、金型、プレス設備の規模を縮小できる。
また、スリット孔2b,2c,2d,2eを、回転子対向部1aの周方向の中央部付近から周方向両端に向かって順に形成し、軸方向の長さを、中央部付近のスリット孔2bが最も短く、周方向両端に向かって徐々に長くなりスリット孔2eが最も長くなるように構成することで、図17に示す非磁性空間2に近い効果が得られる。また、非磁性空間2を構成するために電磁鋼板を打ち抜く穴(スリット孔)も、その数を変更することで実現できることから、規模の小さい金型、プレス設備での製造が可能である。
また、固定子鉄心10の回転子対向部1a内部に、回転子対向部1aの軸方向中央部で最も大きく軸方向端部に向かってそれぞれ徐々に小さくなる非磁性空間を設けると、回転子対向部1aの端部に磁性体が存在するため強度が高くなり、製造時や運搬時に固定子鉄心10の変形を防止できる。
また、回転子対向部1aの軸方向端部の外観形状は、非磁性空間2のない回転子対向部1aの場合と同様となるため、固定子鉄心10と巻線との間の絶縁として、また巻線が回転子側に倒れ込むことを防止する巻き枠として用いられる樹脂で構成されるインシュレータを特殊な形状にする必要が無い。また、インシュレータの一部をこの非磁性空間2にはめ込むことで、強度を上げることも可能である。
本発明の活用例として、空気調和機に搭載される圧縮機に用いられる同期電動機の固定子への適用が可能である。
実施の形態1を示す図で、同期電動機の固定子鉄心10の斜視図。 実施の形態1を示す図で、図1の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態1を示す図で、図1の歯部1の回転子対向部1aを拡大した斜視図(a)とA〜E部の断面図(b)。 実施の形態1を示す図で、変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態1を示す図で、図4の回転子対向部1aを拡大した斜視図。 実施の形態1を示す図で、変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態1を示す図で、図6の歯部1の回転子対向部1aを拡大した斜視図(a)とA〜E部の断面図(b)。 実施の形態1を示す図で、図4に示す固定子鉄心10を用いた同期電動機の誘起電圧を示す図。 実施の形態1を示す図で、同固定子鉄心10を用いた同期電動機のコギングトルクを示す図。 実施の形態1を示す図で、は誘起電圧の周波数成分分析の結果を示す図同期電動機の固定子の斜視図。 実施の形態2を示す図で、同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態2を示す図で、変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態2を示す図で、変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態3を示す図で、同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態3を示す図で、変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態3を示す図で、変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態4を示す図で、同期電動機の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態4を示す図で、変形例1の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。 実施の形態4を示す図で、変形例2の固定子鉄心10の歯部1を拡大した斜視図。
符号の説明
1 歯部、1a 回転子対向部、2 非磁性空間、2a 穴、2b スリット孔、2c スリット孔、2d スリット孔、2e スリット孔、3 スロット、3a スロット開口部、10 固定子鉄心。

Claims (9)

  1. 電磁鋼板を積層して形成される固定子鉄心と、前記固定子鉄心に巻回され、電流が通電される巻線とを備えた同期電動機の固定子において、
    前記固定子鉄心は、
    当該同期電動機の固定子内部で回転する回転子に向かって突出する複数の歯部と、
    前記歯部の一部を形成し、前記回転子に対向する回転子対向部と、
    前記回転子対向部の内部に設けられ、周方向中央部から周方向両端部に向かって体積が徐々に大きくなる非磁性空間とを備えたことを特徴とする同期電動機の固定子。
  2. 前記非磁性空間は、軸方向中央部から軸方向両端部に向かって体積が徐々に大きくなることを備えたことを特徴とする請求項1記載の同期電動機の固定子。
    請求項1記載の同期電動機の固定子。
  3. 前記非磁性空間が、軸方向両端において、前記歯部の前記回転子対向部の両端付近に集中することを特徴とする請求項2記載の同期電動機の固定子。
  4. 前記非磁性空間が、前記歯部の前記回転子対向部の軸方向両端において、周方向片側に集中して存在し、且つ前記軸方向両端部において集中する周方向の位置が異なることを特徴とする請求項2記載の同期電動機の固定子。
  5. 前記非磁性空間は、軸方向両端部から軸方向中央部に向かって体積が徐々に大きくなることを備えたことを特徴とする請求項1記載の同期電動機の固定子。
  6. 前記非磁性空間が、軸方向中央部において、前記歯部の前記回転子対向部の両端付近に集中することを特徴とする請求項5記載の同期電動機の固定子。
  7. 前記非磁性空間が、前記歯部の前記回転子対向部の軸方向中央部から軸方向端部において、周方向片側に集中して存在し、且つ前記軸方向中央部から軸方向端部において集中する周方向の位置が異なることを特徴とする請求項5記載の同期電動機の固定子。
  8. 前記非磁性空間を、軸方向に階段状に変化させることを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の同期電動機の固定子。
  9. 前記非磁性空間を、軸方向の長さの異なる複数の空間により構成することを特徴とする請求項2乃至7のいずれかに記載の同期電動機の固定子。
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