JP2010043505A - 鉄塔の主柱材取替え工法 - Google Patents

Abstract

【課題】 山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔において、電線を仮設鉄塔に移設しなくても腕金取付け箇所の主柱材の取替えが可能な主柱材取替え工法を提供する。
【解決手段】 本発明は、山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔において、腕金が取付いていない２面の塔体面に仮主柱材を取付ける工程と、仮主柱材の上端部と、仮主柱材取付面の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続する工程と、仮主柱材の下端部と、仮主柱材取付面の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続する工程と、２本の仮主柱材間にトラス構造を形成する工程と、仮主柱材間のトラス構造部から腕金の先端部に仮腕金吊材を取付ける工程と、により主柱材取替えパネルの補強を行い、主柱材を取替える工法である。
【選択図】図１２

Description

本発明は、山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔において、電線を仮設鉄塔に移設しなくても腕金取付け箇所の主柱材の取替えが可能な主柱材取替え工法に関するものである。

送電用の既設鉄塔の一例を図１７および図１８に示す。鉄塔は４本の主柱材と、トラス構造を形成する複数の斜材および水平材からなる腹材と、電線を支持する複数の腕金とで構成されている。主柱材は、地盤に埋設され四角形状に配置された基礎体に支持されている。腹材は、４本の主柱材間を結ぶようにして、両端が各主柱材に固定され、４本の主柱材間にトラス構造の４面を構成している。鉄塔を構成する部材が、腐食した場合や地震などにより損傷を受けた場合には、部材の取替えを行う必要がある。

部材の取替え作業の中で、他の部材よりも応力の大きい主要構成材である主柱材の取替え作業は非常に困難な作業である。鉄塔の主柱材を取替える方法として、従来、次に示すものが提案されている。

鉄塔の主柱材を取替える場合に用いられるもので、取替え主柱材の上下に位置する健全な主柱材に取替え装置を取付け、油圧シリンダを押出して取替え主柱材に発生している応力を取替え装置で受けることで、主柱材の取替えを行う主柱材取替え装置が提案されている（例えば、特許文献１参照。）。

既設鉄塔の上部に被冠して仮設鉄塔を設け、既設鉄塔に支持された電線を仮設鉄塔に移設し、既設鉄塔上部の部材に発生している応力を低減して、仮設鉄塔に覆われた既設鉄塔上部の部材取替えを行う方法が提案されている（例えば、特許文献２参照。）。

特開平８−１６３７２９号公報 特開２００２−１４７０６４号公報

しかしながら、従来の主柱材取替え装置を用いて、腕金取付け箇所の主柱材を取替える場合、一般的な鉄塔の主柱材は、鉄塔の頂部から最下部まで直線的でなく、下段腕金の下面位置に曲げ部が設けられており、主柱材取替え装置は取替え主柱材の上下に位置する健全な主柱材に取付けるため、曲げ部を挟んで装置を取付ける必要があり、装置を取付けることができないという問題があった。

既設鉄塔の上部に被冠して仮設鉄塔を設ける方法の場合、腕金取付け箇所の主柱材を取替えることは可能であるが、既設鉄塔に支持された電線を仮設鉄塔に移設する必要があるため、作業が大掛かりになるという問題があった。また、取替え対象となる主柱材を取外すために、取替え主柱材より上方の健全な部材も全て取外す必要があり、作業効率が悪く、作業に時間がかかるという問題があった。

前述の問題を有利に解決するために、本発明の鉄塔の主柱材取替え工法は、山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔において、既設鉄塔の４面の塔体面の内、腕金が取付いていない２面の中央位置に主柱材取替えパネルの上端と下端を結ぶように仮主柱材を取付ける工程と、仮主柱材の上端部と、仮主柱材の上端部より１パネル上方で仮主柱材取付面の既設主柱材の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材の上端側の取付位置間に仮水平材を取付ける工程と、仮主柱材の下端部と、仮主柱材の下端部より１パネル下方で仮主柱材取付面の既設主柱材の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材の下端側の取付位置間に仮水平材を取付ける工程と、２本の仮主柱材間にトラス構造を形成する工程と、取替え主柱材に取付いている腕金の既設腕金吊材を取外し、前記仮主柱材間のトラス構造部から腕金の先端部に仮腕金吊材を取付ける工程と、により主柱材取替えパネルの補強を行い、取替え対象の主柱材を取替える工法である。

本発明の鉄塔の主柱材取替え工法によれば、既設鉄塔の主柱材取替えパネルに仮主柱材などを取付けて主柱材取替えパネルの補強を行うことで、仮設鉄塔を設置して、電線を移設することなく、腕金取付け箇所の主柱材の取替えができることから、作業が大掛かりにならず、また作業時間も短縮できる。

送電用の既設鉄塔の一例を図１７および図１８に示す。鉄塔Ａは４本の主柱材１と、トラス構造を形成する複数の斜材２および水平材３からなる腹材と、電線７を支持する複数の腕金４とで構成されている。主柱材１は、地盤に埋設され四角形状に配置された基礎体５に支持されている。腹材は、４本の主柱材間を結ぶようにして、両端が各主柱材１に固定され、４本の主柱材間にトラス構造の４面Ｄ１，Ｄ２，Ｄ３，Ｄ４を構成している。なお、図において、６は主柱材接続位置、Ｃ１〜Ｃ１２はパネルを示している。

鉄塔を構成する部材が、腐食した場合や地震などにより損傷を受けた場合には、部材の取替えを行う必要がある。部材の取替え作業の中で、他の部材よりも応力の大きい主要構成材である主柱材の取替えは非常に困難な作業であり、特に腕金取付け箇所の主柱材については、電線７の移設を伴う非常に大掛かりな取替え方法しかない。本発明は、山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔Ａにおいて、電線７を仮設鉄塔に移設しなくても腕金取付け箇所の主柱材の取替えが可能な主柱材取替え工法であり、本発明の例として図１７のＣ５〜Ｃ８パネルの主柱材を取替える場合について以下に説明する。

図１は仮主柱材を取付けた既設鉄塔の正面図、図２は図１のａ−ａ線に沿う断面図、図３は既設鉄塔の斜材取付け状態図、図４は内付け斜材を取り外した既設鉄塔の正面図、図５は内付け斜材を取り外し、仮主柱材を取付けた既設鉄塔の正面図である。図において、１８は腕金吊材、Ｃ５〜Ｃ８パネルは主柱材取替えパネルＢ、平行斜線（ハッチング）の箇所は取替え主柱材８を示している。また、図中の円記号はボルト位置１１を示している。

本発明の主柱材取替え工法の第１の工程では、図１〜図２に示すように、山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔Ａにおいて、既設鉄塔Ａの４面の塔体面Ｄ１，Ｄ２，Ｄ３，Ｄ４の内、腕金４が取付いていない２面Ｄ１，Ｄ３の中央位置に主柱材取替えパネルＢの上端と下端を結ぶように仮主柱材９を取付ける。この時、斜材２が図３に示すように、主柱材１の内側（以下、内付け２ａ）または主柱材１の外側（以下、外付け２ｂ）に取付けられている場合、仮主柱材９を塔体面Ｄ１，Ｄ３の中央位置に主柱材取替えパネルＢの上端と下端を結ぶように取付けるために、図４に示すように、主柱材取替えパネルＢの内付けの斜材２ａを取外す。図５に示すように、仮主柱材９を腕金４が取付いていない塔体面Ｄ１，Ｄ３の中央位置に主柱材取替えパネルＢの上端と下端を結ぶように取付けた後は、図１に示すように、取外した斜材２ａ位置に新規の斜材１０を取付ける。新規斜材１０は、既設主柱材１と仮主柱材９間を結ぶようにして、両端が各主柱材に固定される。

図６は接続用仮主柱材の取付け状態図、図７は図６のｂ−ｂ線から見た接続用仮主柱材の取付け状態図、図８は図６のｃ−ｃ線から見た接続用仮主柱材の取付け状態図である。

第２の工程では、図６および図７に示すように、第１の工程で既設鉄塔Ａの主柱材取替えパネルＢに取付けた仮主柱材９の上端部と、仮主柱材９の上端部より１パネル上方Ｃ４で仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設主柱材１の斜材取付位置と、を接続用仮主柱材１２で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材１２の上端側の取付位置間に仮水平材１５を取付ける。まず、接続用仮主柱材１２を取付けるために、仮主柱材９の上端部より１パネル上方Ｃ４の仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設斜材２を取外す。次に、図６に示すように、仮主柱材９の上端部と、仮主柱材９の上端部より１パネル上方Ｃ４で仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設主柱材１の斜材取付位置とを接続用仮主柱材１２で接続する。同一塔体面の接続用仮主柱材１２の上端側の取付位置間に仮水平材１５を取付ける。また、図７に示すように、接続用仮主柱材１２と対向する塔体面の接続用仮主柱材１２との間には、クロス形状に断面部材１３を取付ける。

第３の工程では、図６および図８に示すように、第１の工程で既設鉄塔Ａの主柱材取替えパネルＢに取付けた仮主柱材９の下端部と、仮主柱材９の下端部より１パネル下方Ｃ９で仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設主柱材１の斜材取付位置と、を接続用仮主柱材１２で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材１２の下端側の取付位置間に仮水平材１５を取付ける。まず、接続用仮主柱材１２を取付けるために、仮主柱材９の下端部より１パネル下方Ｃ９の仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設斜材２を取外す。次に、図６に示すように、仮主柱材９の下端部と、仮主柱材９の下端部より１パネル下方Ｃ９で仮主柱材取付面Ｄ１，Ｄ３の既設主柱材１の斜材取付位置とを接続用仮主柱材１２で接続する。同一塔体面の接続用仮主柱材１２の下端側の取付位置間に仮水平材１５を取付ける。また、図８に示すように、接続用仮主柱材１２と対向する塔体面の接続用仮主柱材１２との間には、クロス形状に断面部材１３を取付ける。

図９は図６のｄ−ｄ線から見た仮主柱材間に形成したトラス構造を示す図、図１０および図１１は図９のｅ−ｅ線に沿う断面図の例である。図１０および図１１の平行斜線（ハッチング）の水平材３は、取外される水平材３を示している。

第４の工程では、図９に示すように、２本の仮主柱材間に複数の仮斜材１４および仮水平材１５を用いてトラス構造Ｅ１，Ｅ２，Ｅ３，Ｅ４を形成し、仮主柱材９の補強を行う。図の仮主柱材間のトラス構造Ｅ１，Ｅ２，Ｅ３，Ｅ４は、既設鉄塔Ａの腹材の結構に合わせた例を示している。この時、腕金取付け箇所の鉄塔断面は、図１０および図１１に示すように、取替え主柱材側の腕金取付面Ｄ４の既設水平材３を取外して、塔体付近の腕金主材間２２を接続するように補強水平材１６を取付け、鉄塔内部にはクロス形状に断面部材１３を取付けて、腕金取付け箇所の鉄塔断面の補強を行う。

図１２は仮腕金吊材を取付けた既設鉄塔の正面図、図１３はトラス構造部への縦補強材取付け状態を示す図、図１４は図１３のｆ−ｆ線から見た仮腕金吊材の取付け状態図である。第５の工程では、図１２〜図１４に示すように、主柱材取替えパネルＢに取付いている腕金４の既設腕金吊材１８を取外し、仮主柱材間に形成したトラス構造部Ｅ１，Ｅ４から腕金４の先端部に仮腕金吊材１７を取付ける。まず、仮主柱材間に形成したトラス構造部Ｅ１，Ｅ４で腕金４を支持するため、図１３に示すように、トラス構造部Ｅ１，Ｅ４には縦補強材２０を取付ける。縦補強材２０には、図１４に示すように、仮腕金吊材１７を取付けるための仮腕金吊材用金具１９を取付け、取替え主柱材側の腕金４の既設腕金吊材１８を取外し、縦補強材２０に取付けられた仮腕金吊材用金具１９を介してトラス構造部Ｅ１，Ｅ４と腕金４の先端部を結ぶように仮腕金吊材１７を取付ける。

図１５は取替え主柱材の取外し後の既設鉄塔の正面図、図１６は取替え主柱材取外し後の鉄塔の構成を示す正面図である。図１６に示すように、第１〜第５の工程で、仮主柱材９などにより主柱材取替えパネルＢの補強を行うことで、主柱材取替え時は図１６の実線で示すトラス構造として、応力が伝達されるようになるため、取替え主柱材８に発生する応力を仮主柱材９で負担するようになり、図１５に示すように、既設主柱材１を取外しても、鉄塔Ａが倒壊することはない。図１６において、破線部は主柱材取替え時の既設鉄塔の形状を示している。

主柱材取替え時には、取替え主柱材８に取付いている部材のボルトを外して、取替え主柱材８を取外し、新規の主柱材を取付けた後は、仮主柱材９，接続用仮主柱材１２，仮主柱材間のトラス構造部Ｅ１，Ｅ２，Ｅ３，Ｅ４，仮腕金吊材１７などを取外す。次いで、第２および第３の工程で取外した既設斜材２、第４の工程で取外した既設水平材３、第５の工程で取外した既設腕金吊材１８などを取付けて、主柱材の取替え作業が完了する。

このように、本発明の鉄塔の主柱材取替え工法によれば、仮主柱材９などで主柱材取替えパネルＢの補強を行うことで、仮設鉄塔を設置して、電線７を移設することなく、腕金取付け箇所の既設主柱材の取替えが可能であり、また作業時間も短縮できる。

仮主柱材を取付けた既設鉄塔の正面図 図１のａ−ａ線に沿う断面図 既設鉄塔の斜材取付け状態図 内付け斜材を取り外した既設鉄塔の正面図 内付け斜材を取り外し、仮主柱材を取付けた既設鉄塔の正面図 接続用仮主柱材の取付け状態図 図６のｂ−ｂ線から見た接続用仮主柱材の取付け状態図 図６のｃ−ｃ線から見た接続用仮主柱材の取付け状態図 図６のｄ−ｄ線から見た仮主柱材間に形成したトラス構造を示す図 図９のｅ−ｅ線に沿う断面図の例 図９のｅ−ｅ線に沿う断面図の例 仮腕金吊材を取付けた既設鉄塔の正面図 トラス構造部への縦補強材の取付け状態図 図１３のｆ−ｆ線から見た仮腕金吊材の取付け状態図 取替え主柱材取外し後の既設鉄塔の正面図 取替え主柱材取外し後の鉄塔の構成を示す正面図 送電用の既設鉄塔の構成を示す正面図 送電用の既設鉄塔の構成を示す上面図

符号の説明

Ａ 既設鉄塔
Ｂ 主柱材取替えパネル
Ｃ１〜Ｃ１２ パネル
Ｄ１〜Ｄ４ 塔体面
Ｅ１〜Ｅ４ トラス構造部
１ 主柱材
２ 斜材
２ａ 内付け斜材
２ｂ 外付け斜材
３ 水平材
４ 腕金
５ 基礎体
６ 主柱材接続位置
７ 電線
８ 取替え主柱材
９ 仮主柱材
１０ 新規斜材
１１ ボルト位置
１２ 接続用仮主柱材
１３ 断面部材
１４ 仮斜材
１５ 仮水平材
１６ 補強水平材
１７ 仮腕金吊材
１８ 腕金吊材
１９ 仮腕金吊材用金具
２０ 縦補強材
２１ 腕金主材

Claims (1)

1. 山形鋼の鋼材で構成された送電用の既設鉄塔において、
   既設鉄塔の４面の塔体面の内、腕金が取付いていない２面の中央位置に主柱材取替えパネルの上端と下端を結ぶように仮主柱材を取付ける工程と、
   仮主柱材の上端部と、仮主柱材の上端部より１パネル上方で仮主柱材取付面の既設主柱材の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材の上端側の取付位置間に仮水平材を取付ける工程と、
   仮主柱材の下端部と、仮主柱材の下端部より１パネル下方で仮主柱材取付面の既設主柱材の斜材取付位置とを接続用仮主柱材で接続し、同一塔体面の接続用仮主柱材の下端側の取付位置間に仮水平材を取付ける工程と、
   ２本の仮主柱材間にトラス構造を形成する工程と、
   取替え主柱材に取付いている腕金の既設腕金吊材を取外し、前記仮主柱材間のトラス構造部から腕金の先端部に仮腕金吊材を取付ける工程と、
   により主柱材取替えパネルの補強を行い、主柱材を取替えることを特徴とする鉄塔の主柱材取替え工法。

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