JP2010036436A - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】傾斜位相差構造が大きく、光学特性の均一性が高く、表示視認性に優れるフィルムの製造方法およびフィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、前記挟圧装置によりフィルム状溶融物にかかる圧力が下記式を満たし、該圧力のバラツキがフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域において0〜10%であることを特徴とするフィルムの製造方法。Ps/Pc=0.1〜0.99(式中、Psはフィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域にかかる平均圧力を表し、Pcはフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力を表す。)
【選択図】図1

Description

近年、液晶ディスプレイ市場の隆盛に伴い、様々な光学フィルムが開発されている。液晶パネルにおける液晶モード(液晶の配向状態)が種々異なるタイプが提案され、この中、ツイステッドネマチック(TN)モードや、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードや、ベント構造をもつOCBモードの液晶セル用として、フィルム厚み方向の光軸が傾斜したフィルムが提案されている。例えば、特許文献1および2には、金属ロールとゴムロールとの周速度差をつけて、フィルム製膜時に20MPa以下の圧力でずりのせん断をかけ、フィルム厚み方向の光軸を傾斜した光学フィルムが開示されている。特に特許文献2ではその実施例で厚みが90μm〜180μm、光軸が11.5〜18.2°傾斜した光学フィルムが開示されている。
一方、携帯やパソコンやテレビなど液晶表示装置の薄型化及び高精細化の進化に伴い、これに使用される光学フィルムが薄さ、高い表示視認性が強く要求されている。
上記の特許文献1及び2では、光軸傾斜角度と液晶ディスプレイの光学補償との関係については何ら記載されておらず、実際に、透過型のTNやECB液晶ディスプレイや、半透過型のECB液晶ディスプレイの光学補償を行うには、液晶セルのリタデーションを補償できるまでもの大きな位相差を有する、さらに傾斜構造の大きな光学フィルムが望まれていた。またさらに、光学特性の均一性が高い光学フィルムが望まれていた。
上記特許文献1および2のような従来の製造方法ではこれらの要求を満たすことができず、製造した未延伸フィルムの傾斜構造が小さく、レターデーションのバラツキが大きく、表示視認性が低かった。そのため、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を達成するのが困難であるのが現状である。
特開2003−25414号公報 特開2007−38646号公報
ここで、熱可塑性樹脂の溶融物をダイから溶融押出しし、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形することによって傾斜構造のフィルムを作製する際、フィルムにかかる圧力が樹脂の配向状態に影響を与え、得られるフィルムのレターデーションが変化する。したがって、フィルム状の溶融物の全幅に均一な圧力をかけない場合、タッチ抜け故障が発生し、得られるフィルムの表示視認性は低下してしまう。そのため、表示視認性が高い光学フィルムを得るためには、十分に均一な圧力で挟圧を行うことが重要になる。
しかし、本発明者が実際に特許文献1および2に提案されている製造方法を検討したところ、フィルム状の溶融物の全幅に均一な圧力をかけることができず、結果として表示視認性が高い光学フィルムを得ることができない課題があることが判明した。この課題に対し、本発明者が鋭意検討したところ、熱可塑性樹脂の溶融物を流延ダイから挟圧装置の表面にフィルム状に押し出した場合、押し出されたフィルム状の溶融物は、ネックイン現象(流れ方向の進行に伴い、メルトの幅がダイ吐出時の幅により狭くなる現象)により、溶融物の両端部の膜厚が中央部の膜厚と比べ、厚くなることを明らかになった。すなわち、特許文献1および2おいては、かかる両端部が厚膜部を形成することについては全く認識されておらず、そのため特許文献1および2に提案されている製造方法を用いた場合、該厚膜部の影響により、フィルム状の溶融物の中央薄膜部に均一な圧力をかけることができず、タッチ抜け故障が発生する。そのため、前記タッチ抜け故障を改善することで表示視認性及びレデーデーションの均一性が高い光学フィルムを得ることができることを見出した。
さらに、例えば挟圧装置として同じ幅のタッチロールとキャストロールを用いた場合、フィルムに高いレターデーションを発現させるために2つのロール間の圧力を高くして製膜するとフィルム状の溶融物の中央薄膜部に均一な圧力をかけることができないことがわかった。すなわち、タッチロールが撓んでフィルムよりも外側でタッチロールの端部がキャストロールに接触してしまい、溶融物中央に形成される薄膜部にかかる圧力が大きくばらついてしまうという問題があった。また、製膜時のタッチ幅が例えば1500mm以上など大きい場合にこの問題が顕著となることがわかった。
このような新規課題に鑑みて、本発明の第一の目的は、傾斜位相差構造が大きく、光学特性の均一性が高く、表示視認性に優れるフィルムの製造方法およびフィルムを提供することにある。また、本発明の第二の目的は、光学補償性能に優れた偏光板、および液晶表示装置を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成を有する本発明によって達成される。
[1] 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、
前記挟圧装置によりフィルム状溶融物にかかる圧力が下記式(I)を満足することを特徴とするフィルムの製造方法。
Ps/Pc=0.1〜0.99 (I)
(式(I)中、Psはフィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域にかかる平均圧力を表し、Pcはフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力を表す。)
[2] 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする[1]に記載のフィルムの製造方法。
[3] 前記フィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域におけるダイリップの平均クリアランスdcと、前記フィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域におけるダイリップの平均クリアランスdsが、ds/dc=0.5〜0.95を満たすことを特徴する[1]または[2]に記載のフィルムの製造方法。
[4] 前記2つのロール中のうち少なくとも1つのロールが、中央部が太く、両端部が細いクラウン形状のロールであり、かつ、前記2つのロールを圧着した際の前記クラウン形状のロールの両端部から10%幅の領域ともう一方のロールとの距離が1〜80μmであることを特徴とする[2]または[3]に記載のフィルムの製造方法。
[5] 前記2つのロールがともに金属ロールであることを特徴とする[2]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[6] 前記2つの金属ロール中のうち少なくとも1つの金属ロールにおいて、該金属ロールの全幅に対して中央部80%の領域の金属外筒平均肉厚が、該金属ロールの全幅に対して両端部10%の領域の金属外筒平均肉厚の1.05〜1.5倍であることを特徴とする[5]に記載のフィルムの製造方法。
[7] ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離が、30〜200mmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記フィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力Pcが20〜500MPaであることを特徴する[1]〜[7]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[9] フィルム厚みが10〜85μmであり、かつフィルム製膜幅が0.85〜2.5mであることを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[10] 製膜速度が5〜35m/分であり、かつ前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度が第二挟圧面の移動速度よりも速く、かつ、下記式(II)で定義される挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.60〜0.99であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (II)
[11] 前記熱可塑性樹脂が環状オレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれることを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
[12] [1]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法で作成されたことを特徴とするフィルム。
[13] 熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から+40°傾いた方向から測定した測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が下記式(III)を満たし、該フィルムのタッチ抜け故障が15個/m2未満であることを特徴とする[12]に記載のフィルム(ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である)。
40nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
[14] フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]が60〜300nmであり、厚み方向のレターデーションRthが40〜500nmであり、かつ前記Re[0°]および前記Rthのバラツキがいずれも0〜10%であることを特徴とする[12]または[13]に記載のフィルム。
[15] [12]〜[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
[16] [12]〜[14]のいずれか一項に記載のフィルムの少なくとも一枚のフィルム、または、[15]に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明によれば、液晶ディスプレイに使用した場合に十分な光学補償を実現できるフィルムおよびその製造方法を提供することができる。詳しくは、上記光学特性を有するフィルムは、TNモード、ECBモード、OCBモードの液晶ディスプレイに使用した場合に、十分な光学補償を実現できる。例えば、TNモードの液晶ディスプレイでは、視野角度が狭いため、通常、光学補償を実現する液晶組成物からなる光学補償層が設けられた光学補償フィルム(例えば、WVフィルム(富士フィルム製))が偏光子に積層されて使用されるが、本発明のフィルムを使用した場合には、液晶組成物からなる光学補償層を利用しなくても、従来の液晶組成物からなる光学補償層を有する光学補償フィルムを利用したものよりも簡便に視野角補償を行うことができる。また、本発明のフィルムの製造方法により、本発明のフィルムを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において、「フィルム長手方向」とは、MD(マシン・ダイレクション)方向を意味する。
[フィルム]
(タッチ抜け故障)
本発明のフィルムは、タッチ抜け故障が15個/m2未満であり、10個/m2以下であることがより好ましく、5個/m2以下であることが特に好ましい。ここで、前記タッチ抜け故障とは、フィルム上に発生する幅1mm以上、長さ10mm以上、斜め不定形の状態になっていることを言う。前記タッチ抜け故障を少なくすると、液晶表示装置に組み込んだ際の表示視認性が向上するため、好ましい。
フィルムのタッチ抜け故障は次に記載する測定方法にしたがって、測定することができる。フィルム(製膜全幅×流れ方向1m)を白色スクリーンの前に10mmの間隔を空けてスクリーンと平行に設置する。点光源を用い、点光源発生装置(例えば、スライド投影機、キャビン工業社製Color CabinIII)を用い、フィルムに向けて投光する。その際のスクリーンに投影されたフィルムの明暗模様の欠陥数を数え、単位面積にあたりのタッチ抜け故障数を求める。
(面内方向のレターデーションRe、厚み方向のレターデーションRth)
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]と、+40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が、以下の式(III)を満たす。
40nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
本明細書において、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
本発明のフィルムにおいて、|Re[+40°]−Re[−40°]|は40〜300nmであり、50〜300nmであることが好ましく、60〜200nmであることがより好ましく、さらに好ましくは、80〜180nmである。
また、本発明のフィルムは、面内方向のレターデーションRe[0°]が60〜300nmであることが好ましく、より好ましくは60〜250nmであり、特に好ましくは60〜200nmであり、さらに好ましくは、80〜180nmである。
さらに、本発明のフィルムは、厚み方向のレターデーションRthが40〜500nmであることが好ましく、より好ましくは40〜350nm、さらに好ましくは40〜300nmである。
またさらに、本発明のフィルムは、下記式(IV)〜(VI)を同時に満たすことが好ましい。
60nm≦Re[0°]≦200nm (IV)
60nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦250nm (V)
40nm≦Rth≦350nm (VI)
|Re[+40°]−Re[−40°]|が前記好ましい範囲のフィルムは、後述する本発明の製造方法によって作製することができる。また、上記好ましい光学特性の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディ液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
本発明のフィルムの膜厚は、100μm以下である。液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点からは、80μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。本発明のフィルムの製造方法では、このような薄手のフィルムを作成でき、従来技術との差異点の一つである。
Re[0°]、および、Rthのバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、色ムラや光漏れや画像歪みとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には0〜10%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましく、0〜3%であることが特に好ましい。
また、同様に遅相軸の角度のバラツキも、光漏れや画像歪みの原因となるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°以内であることが特に好ましい。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
本発明において、フィルムのRe[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]は、KOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、傾斜角度0°での位相差、傾斜角度40度での位相差および傾斜角度−40度での位相差を測定したものである。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位とフィルム法線を含む面内においてRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、|Re[+40°]−Re[−40°]|≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位で|Re[+40°]−Re[−40°]|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]、Rthのバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]、Rthを測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]、Rthのぞれぞれの平均値で割り、百分率で示す値をバラツキとする。本願では、任意の位置でフィルムの幅方向を11等分した10点、および、その点からフィルム搬送方向に0.2m間隔で9点ずつサンプリングした計100点でのバラツキを測定した。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
Rthは、屈折率楕円体がβ°一様傾斜したことを仮定し、屈折率楕円体の各方位の屈折率nx、ny、nzを数値計算し、下記数式(A)に代入して、求めることができる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
本発明のフィルムでは、nyはフィルム幅方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されているが、例えば、Re[0°]、Re[+40°]およびRe[−40°]の値および平均屈折率naveの値および膜厚値dから、以下の数式(B)を用いて計算することが出来る。
Figure 2010036436
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、数式(B)中のβは、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の傾斜角度を表し、傾斜型位相差フィルムの構造を単純に把握するときに使用される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
(熱可塑性樹脂)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂は、2つのロールでせん断変形を付加した場合、遅相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>40のフィルムを作成することができ、例えば、2つのロールをダイ出口と平行に配置した場合、傾斜方位はフィルム長手方向と同じである。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向き、|Re[+40°]―Re[−40°]|>40のフィルムを作成することができる。
本発明のフィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正または負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることが出来る。
本発明に使用可能な環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られたノルボルネン系樹脂が含まれる。また、開環重合および付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006/004376号公報、国際公開WO第2006/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート系樹脂の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基および芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基から選択される1種または2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基およびプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。前記CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
本発明の製造方法を含む溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)および(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
前記式(S−1)および(S−2)中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式(S−3)および(S−4)を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましい。
式(S−3)2.3≦X+Y≦2.95
式(S−4)1.0≦Y≦2.95
下記式(S−5)および(S−6)を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
式(S−5)2.7≦X+Y≦2.95
式(S−6)2.0≦Y≦2.9
セルロースアシレート系樹脂の質量平均重合度および数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、および数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート系樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)またはそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)および(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート系樹脂として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914号公報、特開2006−106386号公報、特開2006−284703号公報記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系樹脂とは、主成分としてスチレン及びそれらの誘導体を重合して得られる樹脂及び、その他の樹脂の共重合体を指し、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のスチレン系熱可塑性樹脂等を用いることができ、特に複屈折、フィルム強度、耐熱性を改良できる、共重合体樹脂が好ましい。
共重合体樹脂としては、例えばスチレン-アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−無水マレイン酸系樹脂がフィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
本発明に使用可能なアクリル系樹脂とは、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂、およびさらにその誘導体のことをいい、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、公知のメタクリル酸系熱可塑性樹脂等を用いることできる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
Figure 2010036436
前記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、分枝鎖状、もしくは環状のアルキル基を示す。
前記アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
これらの中でも、前記熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン系樹脂であることが好ましく、高透明性、複屈折発現性および耐熱性の観点からノルボルネン系樹脂であることがより好ましく、付加重合系のノルボルネン系樹脂であることが特に好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
(添加剤)
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。さらに、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定か剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物(以下、メルトともいう)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法であって、 前記挟圧装置によりフィルム状溶融物にかかる圧力が下記式(I)を満足することを特徴とする。
Ps/Pc=0.1〜0.99 (I)
ここで、式(I)中、Psはフィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域にかかる平均圧力を表し、Pcはフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力を表す。このような大きな圧力をフィルム状溶融物の中央部に均一にかけることが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。前記挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ等が挙げられる。この中でも、大きな傾斜構造を得る観点から、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。例えば、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を2つのロール間に挟み、発色したプレスケールが濃度計FPD−305E(富士フィルム社製)を用い、ロール間の圧力及び圧力のバラツキを測定できる。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
<溶融押出し>
本発明の製造方法では、まず、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練および溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。ダイの押出し温度(以下、吐出温度とも言う)は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
ダイ出口部分(以下、ダイリップともいう)のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。
本発明の製造方法では、前記フィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域におけるダイリップの平均クリアランスdcと、前記フィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域におけるダイリップの平均クリアランスdsが、ds/dc=0.5〜0.95を満たすことが好ましい。このようなダイリップのクリアランスとすることで、前記Ps/Pcを達成しやすいため好ましい。詳しくは、ダイ中央部のリップクリアランスを、ダイ両端部より厚くすることにより、吐出されたメルトも中央部が厚く、両端部が薄くなる。これにより、メルトが挟圧装置間に到着した際に、ネックイン現象が発生しても、両端部の膜厚が大きくならず、本発明のタッチ圧力分布をできる。
一般的な溶融製膜分野において、このような構成のダイを用いることは、従来好ましくないとも考えられていた。すなわち、ダイから吐出されたメルト両端部が薄い場合、メルト両端部のねじれによる波うち(以下、耳揺れとも言う)が発生し、耳揺れがメルト中央部に伝播すると、メルトに波状しわが発生し易くなる。そのため挟圧装置間に挟んで固化すると、フィルム上に斜めしわが形成されると考えられてきた。これに対し、本発明の製造方法では、上記メルトが挟圧装置間に挟まれる直前にバンクと呼ばれる樹脂だまりを形成した状態で強いずりせん断を加えることにより、バンクをつぶし、メルトのレべリング性を促進させ、優れた面状のフィルムを得ることができる。
前記ds/dcは、より好ましくはds/dc=0.6〜0.9であり、さらに好ましくはds/dc=0.6〜0.8である。
前記ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
<キャスト>
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押し出し、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが面状不良(剥離ダン、剥離粘着ムラなど)を低減する観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いことが好ましいが、移動速度に差がある場合に先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
(Pc、Ps)
本発明の製造方法では、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、前記挟圧装置によりフィルム状溶融物にかかる前記Psと前記PcがPs/Pc=0.1〜0.99を満たし、該圧力のバラツキをフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域において0%〜10%とすることで、本発明の光学特性を有するフィルムを作製している。すなわち、従来の方法ではダイから押し出されたメルトは、ネックイン現象により、両端部に膜厚が中央と比べ、厚くなる。これにより、均一な圧力をかけることができず、レターデーションのバラツキが大きくなる。
これに対し、本発明は端部の圧力Psを中央部の圧力Pcより小さくし、中央部の圧力Pcのバラツキを小さくしておくことにより、タッチムラ故障を減らし、本課題を解決できる。
前記Ps/Pcは、好ましくはPs/Pc=0.5〜0.95、さらに好ましくはPs/Pc=0.6〜0.90である。
前記Pcのバラツキは好ましくは0%〜6%、より好ましくは0%〜5%である。
さらに、前記Pcが20〜500MPaであることが好ましく、25〜300MPaであることがより好ましく、25〜200MPaであることが特に好ましく、30〜150MPaであることがより特に好ましい。前記Pcを高くすることにより、アイロン効果でメルトの粘度ムラおよび厚みムラを低減できる。また同時に、挟圧装置間の圧力を均一に維持しやすくなり、本発明の目的が得られる。また、Pcが上記の好ましい範囲内であれば、得た光学フィルムのレターデーション発現性が大きく、傾斜構造も大きくなり、先行技術で達成できない領域を達成できる。さらにPcが20MPa以上であれば、タッチロールの押し付けが十分強く、挟圧装置間の圧力の不均一に起因するタッチ抜け故障を低減する効果を充分に得ることができる。また、Pcが500MPa以下であれば、タッチ圧力が強すぎず、メルトと挟圧装置の第一挟圧面もしくは第二挟圧面との密着力が高くなりすぎず、メルトが第一挟圧面もしくは第二挟圧面から剥離する際に、フィルム表面に剥離粘着ムラが発生しにくくなり、面状悪化しにくくなるため好ましい。また、Pcが25MPa以上であれば、さらにRe[0°]およびRthのバラツキが低減される傾向がある。
本発明の製造方法では、前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度が第二挟圧面の移動速度より速いことが好ましく、さらに下記式(II)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に調製し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。挟圧装置の移動速度比は、0.60〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (II)
前記移動速度比が0.60以上であれば、得られるフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]の差の絶対値は大きくなり、前記式(III)を満たすことができ好ましい。移動速度比が0.60以上であれば、得られるフィルムの表面に傷が付きにくく好ましい。前記前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99にすると、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができるため好ましい。
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(ダイ出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、エアーギャップ(ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、30〜200mmであることが好ましく、より好ましくは、50〜180mm、特に好ましくは、70〜150mmである。前記エアーギャップを短くすることにより、メルトのネックイン現象を抑え、メルト両端部の厚みが厚くなることを防止でき、本発明のPs/Pcの比を達成する効果が得られる。また、同時にメルトの保温効果も得ることができ、挟圧装置間に挟むメルトの流動性を向上させ、レターデーションの均一性を促進させると同時に、ずりせん断を加える際に、レターデーションの発現性を向上できる。
(製膜速度)
本発明の製造方法では、5〜35m/分であることが好ましく、より好ましくは10〜30m/分、さらに好ましくは12〜25m/分である。製膜速度(以下、ライン速度とも言う)が速くなると、ダイから吐出されたメルトを引き取る速度が速くなり、メルト樹脂のダイスウェル現象が小さくなり、ダイリップとの接触時間が短くなり、メルト表面の凹凸ムラが発生難くなる。また、製膜速度が速くすることで、冷却ムラの影響を受けにくく、タッチされる際に、粘度および圧力の均一化を向上させ、本発明の目的が得られる。また、製膜速度を本発明の範囲に速くすることで、メルト樹脂の伸長変形が大きくなり、レターデーションの発現性がより大きくなる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
本発明の製造方法では、フィルム幅が0.85〜2.5mであることが好ましく、より好ましくは1.0〜2.2m、さらに好ましくは1.5〜2.0mである。フィルム幅が本発明の範囲になると、吐出されたメルト幅が広くなり、エアーギャップ距離が一定の場合、幅方向のネックイン量がより小さくなる。そのためメルト幅方向の応力および表面張力を緩和し易くなり、結果としてメルトの冷却ムラおよび厚みムラ分布を抑制でき、本発明の圧力分布が得られ易い。フィルム幅が0.85m以上であれば、吐出メルト幅が十分広く、メルトリップの冷却ムラおよび厚みムラが発生しにくいため、本発明の効果が得られやすい。また、ダイ設備の小型化およびダイリップの精密加工の観点から、フィルム幅が2.5m以下であることが好ましい。
(2つのロールを用いたキャスト)
前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
本発明のフィルムの製造方法では、前記ダイから押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該ダイから押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。前記メルトの着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
本発明の製造方法では、前記2つのロールのそれぞれの横幅は特に制限はなく、フィルム状の溶融物の幅に対応して、自由に変更して採用することができる。
本発明の製造方法における互いに異なる周速で回転している2つのロールのメルトに対するタッチ圧力について、Ps/Pcの値、およびPcのバラツキは前記挟圧装置一般で記載した範囲と同様であり、好ましい範囲も同様である。
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が200mmの場合、3〜100KNであることが好ましく、3〜50KNであることがより好ましく、3〜25KNであることが特に好ましい。
前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、さらに好ましくは60〜90HSである。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
本発明の製造方法では、前記2つのロール中のうち少なくとも1つのロールが、中央部が太く、両端部が細いクラウン形状のロールであり、かつ、前記2つのロールを圧着した際の前記クラウン形状のロールの両端部から10%幅の領域ともう一方のロールとの距離が1〜80μmであることが好ましく、5〜75μmであることがより好ましく、10〜70μmであることが特に好ましい。このように2つのロールを圧着する際に、クラウン形状のロールの両端部が1μm〜80μm浮いていることにより、2つのロールの挟圧時のたわみ量を大幅に抑制することができ、メルト中央部分に均一な圧力を掛けることができるため好ましい。また、同時にメルト両端部の圧力を弱くする効果もあり、好ましい。
前記2つのロールはともに金属製の外筒を有する金属ロールであることがフィルム平滑性を向上させる観点から好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記ロール圧力を達成できれば特に制限なく用いることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
前記2つの金属ロール中のうち少なくとも1つの金属ロールにおいて、該金属ロールの全幅に対して中央部80%の領域の金属外筒平均肉厚と、該金属ロールの全幅に対して両端部10%の領域の金属外筒平均肉厚との比、(ロール中央部の金属外筒平均肉厚)/(ロール中央部の金属外筒平均肉厚)が1.05〜1.5であることが好ましい。このような構造の金属ロールを用いると、金属ロール中央部が硬く、金属ロール両端部が柔らかくなり、挟圧する際のPs/Pcおよび圧力のバラツキを本発明の範囲に実現し易くなる。
前記(ロール中央部の金属外筒平均肉厚)/(ロール中央部の金属外筒平均肉厚)の比は、1.10〜1.45であることがより好ましく、1.15〜1.40であることが特に好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロールの周速比を調整することで、溶融樹脂が2つのロールを通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。2つのロールの周速比は、0.60〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。ここで、2つのロールの周速比とは、遅いロールの周速度/速いロールの周速度を意味する。
2つのロールの周速比が0.60以上であれば、得られるフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]の差の絶対値は大きくなり、前記式(III)を満たすことができ好ましい。周速比が0.60以上であれば、得られるフィルムの表面に傷が付きにくく好ましい。前記2つのロールの周速比を0.60〜0.99にすると、フィルム表面に傷が付き難く、平滑性が良好なフィルムを安定的に製造することができるため好ましい。
本発明のフィルムを得るためには、前記2つのロールの速度はどちらが速くても構わないが、タッチロールが遅い場合、タッチロール側にバンク(溶融物の余剰分がロール上へ滞留し、形成された滞留物)が形成される。タッチロールは、溶融物が接触している時間が短いため、タッチロール側に形成されたバンクは、十分に冷却することができず、剥離ダンが発生し、面状故障の原因となり易い。よって、遅いロールがチルロール(第2ロール)であり、速いロールがタッチロール(第1ロール)であることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法では、前記2つのロールとして、それぞれ直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が350〜600nm、より好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、Re[+40°]とRe[−40°]の差が大きなフィルムを、しかもRe[0°]、Rthのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の製造方法では、前記2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
本発明の製造方法では、前記2つのロールが、互いに異なる周速で駆動される。前記2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、Re[0°]、Rthのバラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
さらにRe[40°]とRe[−40°]の差を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、はTg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
また、本発明の製造方法では、ダイから溶融押出しされ2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物を保温し、幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、溶融物のダイと2つのロールとの間の通路の少なくとも一部に、断熱機能または熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
前記遮蔽部材は、例えば、2つのロールの両端部よりも内側で、且つダイの幅方向側面と隙間を介して設けられる。遮蔽板は、ダイの側面に直接固定されてもよいし、支持部材によって支持固定されてもよい。遮蔽部材の幅は、ダイの放熱による上昇気流を効率的に遮断できるように、例えば、ダイ側面の幅と同等かそれ以上であるのが好ましい。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、ダイの側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
よりRe[0°]、およびRthのバラツキをなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
このようにして製膜した後、フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
さらに加工したフィルムの両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
本発明の製造方法で得られるフィルムの未延伸時の膜厚は、フィルム厚みが10μm〜85μmであることが好ましく、より好ましくは15μm〜65μm、さらに好ましくは20μm〜40μmである。このような薄い膜厚で製膜することで、ダイリップ吐出口から挟圧装置間に挟むまでのメルトの伸長変形を大きくできるため、メルト表面の凹凸および冷却ムラが発生し難く、本発明の圧力分布が得られ易い。フィルム厚みが85μm以下であれば、ダイから吐出されたメルトのダイスウェルが大きくなりすぎず、ダイリップとの接触面積が増えすぎず、メルト表面の凹凸が発生しにくくなるため本発明の目的が得られやすい。また、フィルム厚みが10μm以上であれば、フィルムの強度が十分強く、ハンドリング性の観点から、好ましい。
<延伸、緩和処理>
さらに、上記方法により製膜した後、延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(g)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸
(d) 縦延伸→緩和処理
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(f) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)〜(d)の工程である。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−30℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−20℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい横延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速を入口側の周速より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフイルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−30℃〜Tg+60℃が好ましく、Tg−20℃〜Tg+45℃がより好ましく、Tg−10℃〜Tg+20℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
熱緩和は(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
[偏光板]
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板は、本発明のフィルムと偏光子を用いたものであれば、特に構成に制限はない。例えば、本発明の偏光板が、偏光子とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明ポリマーフィルム)からなる場合において、本発明のフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして用いることができる。また、本発明の偏光板は、その少なくとも一方の面に、他の部材との貼着のための粘着剤層を有してもよい。また、本発明の偏光板において、本発明のフィルムの表面が凹凸構造であれば、アンチグレア性(防眩性)の機能を有することになる。さらに、本発明の偏光板には、本発明のフィルムの表面にさらに反射防止層(低屈折率層)を積層した本発明の反射防止フィルムや、本発明のフィルムの表面にさらに光学異方性層を積層した本発明の光学補償フィルムを用いることも好ましい。
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のフィルムは、液晶表示装置における液晶セルと偏光板との間に配置される保護フィルムとして、特に有利に用いることができる。
本発明の偏光板は、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムがこの順に積層している構成であることがより好ましい。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子、本発明のフィルムおよび粘着剤層がこの順に積層している構成もより好ましい。
(光学フィルム)
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
(セルロースアシレートフィルム)
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フィルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
(偏光子)
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明に用いられる偏光子は、本発明の目的を達成し得るものであれば、任意の適切なものが選択され得る。前記偏光子としては、例えば、親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。前記親水性高分子フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等が挙げられる。本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させた偏光子が好ましい。
前記偏光子は、好ましくは、さらにカリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含有する。前記偏光子が、カリウムおよびホウ素を含有することによって、好ましい範囲の複合弾性率(Er)を有し、且つ、偏光度が高い偏光子(偏光板)を得ることができる。カリウムおよびホウ素の少なくとも一方を含む偏光子の製造は、例えば、偏光子の形成材料であるフィルムを、カリウムおよびホウ素の少なくとも一方の溶液に浸漬すればよい。前記溶液は、ヨウ素を含む溶液を兼ねてもよい。
前記ポリビニルアルコール系フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。前記成形加工法としては、従来公知の方法が適用できる。また、前記ポリビニルアルコール系フィルムには、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム(原反フィルム)は、純水を含む膨潤浴、およびヨウ素水溶液を含む染色浴に浸漬され、速比の異なるロールでフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。つぎに、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む架橋浴中に浸漬され、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロールによって、純水を含む水洗浴中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥して水分率を調節した後で巻き取られる。このように、偏光子は、原反フィルムを、例えば、元の長さの5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
前記偏光子は、接着剤との密着性を向上させるために、任意の表面改質処理が施されていてもよい。前記表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、グロー放電処理、火炎処理、オゾン処理、UVオゾン処理、紫外線処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で、または2つ以上を組み合せて用いてもよい。
(粘着剤層)
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
(偏光板の製造方法)
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。
本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
前記接着剤としては、公知の偏光板製造用接着剤を用いることができる。また、前記偏光子と各フィルムの間に接着剤層を有する態様も好ましい。前記接着剤の具体例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアセタール(例、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。前記ポリビニルアルコール系接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を含有することが好ましい。
本発明の偏光板の製造方法は、上記の方法に限定されず、他の方法を用いることもできる。例えば、特開2000−171635号、特開2003−215563号、特開2004−70296号、特開2005−189437号、特開2006−199788号、特開2006−215463号、特開2006−227090号、特開2006−243216号、特開2006−243681号、特開2006−259313号、特開2006−276574号、特開2006−316181号、特開2007−10756号、特開2007−128025号、特開2007−140092号、特開2007−171943号、特開2007−197703号、特開2007−316366号、特開2007−334307号、特開2008−20891号各公報などに記載の方法を使用できる。これらの中でもより好ましくは特開2007−316366号、特開2008−20891号公報に記載の方法である。
偏光膜の他方の表面にも保護フィルムが貼り付けられているのが好ましく、かかる保護フィルムは、本発明のフィルムであってもよい。また、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン系ポリマーフィルム等、従来偏光板の保護フィルムとして用いられている種々のフィルムを利用することができる。
このようにして得た本発明の偏光板は、液晶表示装置内で使用するのが好ましく、液晶セルの視認側、バックライト側のどちらか片側に設けても、両側に設けてもよく、限定されない。本発明の偏光板が適用可能な画像表示装置の具体例としては、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)のような自発光型表示装置が挙げられる。液晶表示装置は透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置等に適用される。
[液晶表示装置]
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[製造例1] 環状オレフィン共重合体のペレットP−1の製造
環状オレフィン共重合体として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
[製造例2] 環状オレフィン樹脂P−2のペレットの製造
環状オレフィン系樹脂として、日本ゼオン(株)社製の「ゼオノア1420R」のペレットを用いた。また、当該樹脂のガラス転移点は138℃であった。
[製造例3] アクリル系樹脂のペレットP−3の製造
アクリル系樹脂として、スチレン-アクリル系共重合体である旭化成ケミカルズ社製の「デルペット980N」のペレットを用いた。なお、「デルペット980N」は、負の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は123℃であった。
[製造例4] セルロースアシレートのペレットP−4の製造
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)を特開2006−348123号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAPの組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.60、全アシル置換度2.75、数平均重合度DPn=118で、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
[製造例5] ポリカーボネートのペレットP−5の製造
ポリカーボネートとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は150℃であった。
[実施例1]
(フィルムの作製)
環状オレフィン共重合体TOPAS#6013のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥した。安定剤IRGANOX−1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を樹脂100重量部に対して1.0重量部を添加し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを押出し温度(吐出温度)265℃で幅2000mmのダイから押出した。ここで、自動厚み調整ダイを用い、ダイリップの中央部のクリアランスdcと、端部のクリアランスdsがds/dc=0.80となるように調整した。
この後、キャストロール上にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅2800mmのキャストロール(チルロール)にフィルム中央部にかかるタッチ圧力Pcが40kg/cm、フィルム端部にかかるタッチ圧力PsがPs/Pc=0.60となるようにシリンダーを設定し、タッチロールを接触させた。なお、前記シリンダー設定値で、前記圧力がかかることは、メルトを押し出す前に、2つのロール間に、中圧用プレスケール(富士フィルム社製)を通して圧力を測定し、確認した。この際、中央部Pcのバラツキが0.1%であった。タッチロールは、中央部の肉厚と端部の肉厚との比が1.20のものを用いた。また、用いたタッチロールには、ロールたわみを考慮したクラウン加工を施し、2つのロールの圧着時の隙間を15μmとした。また、2つのロールの表面材質は共に金属のものを用いた。これらのロールを用い、タッチロール速度とチルロール速度の周速比を下記表1に記載の条件に設定して製膜した。ダイとメルト着地点の距離(エアギャップ距離)を150mmと設定した。なお、タッチロール、チルロールの温度はTg−5℃とし、製膜の雰囲気は25℃、30%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅15mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。また製膜幅は1700mmとし、製膜速度10m/分(チルロール速度)で450m巻き取った。製膜後のフィルムの厚みは60μmとし、実施例1のフィルムを作製した。
(フィルムの特性)
得られた実施例1のフィルムの特性を表1にあわせて記載した。なお、実施例1のフィルムのRe[+40°]とRe[−40°]を測定した傾斜方位は、いずれも、フィルムの長手方向である。
(偏光板の作製)
作成した実施例1のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光フィルムを作製した。この偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フィルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1のフィルムを貼合わせた。この様にして、実施例1のフィルムを用いた偏光板PL1をそれぞれ2枚ずつ作製した。
(半透過型ECBモード液晶表示装置の作製と評価)
次に、上記偏光板を用いてECB型の半透過型液晶表示装置を作製した。使用した液晶セルは、液晶材料としてZLI−1695(Merck社製)を用い、液晶層厚は反射電極領域(反射表示部)で2.4μm、透過電極領域(透過表示部)で4.9μmとした。液晶層の基板両界面のプレチルト角は2度であり、液晶セルのΔndは、反射表示部で略150nm、透過表示部で略320nmであった。
この液晶セルの上下に、上記作製した2種の偏光板を、図1に示すように配置した。偏光板P1およびP2中の矢印はそれぞれの吸収軸を、位相差フィルム中の矢印はそれぞれの遅相軸を、ECBセルの矢印はそれぞれの対向面に施されたラビング処理のラビング方向を示す。ここで、12時方向が0°、時計回りが+である。
(表示視認性)
実施例1の液晶表示装置について、下記方法にしたがって評価した表示視認性結果を、下記表1に示す。
得られた液晶表示装置の液晶セルを真っ暗な部屋で全面黒表示した際に、正面から光漏れと色ムラなどの表示ムラが発生している領域を目視で検出し、この領域の面積を液晶表示板の全面積で割り百分率で示した。また、液晶表示装置正面からの方位角方向45度、極角方向60度における黒表示時の表示ムラを同様に観察した。下記の基準で評価した。
○:全く気にならなく、正面と斜めからの表示ムラが3%未満であった。
△:変化は気になるが、許容できる、正面と斜めからの表示ムラが3%以上10%未満であった。
×:変化が気になり、正面と斜めからの表示ムラが10%以上であった。
[実施例2〜19、比較例1〜7]
用いた樹脂と製膜条件を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。また、各実施例および比較例の液晶表示装置を得た。各実施例および比較例のフィルムの特性および液晶表示装置の表示視認性を下記表2に示す。なお、各樹脂の製膜温度は以下の通りである。P−2樹脂の製膜温度が265℃、P−3樹脂の製膜温度が260℃、P−4樹脂の製膜温度が240℃、P−5樹脂の製膜温度が270℃である。
Figure 2010036436
Figure 2010036436
表1および表2から、実施例1〜19のフィルムはタッチ抜け故障が少なく、液晶表示装置に組み込んだ際の表示視認性がかなり高いことがわかった。また、比較例1〜7ではいずれもタッチ抜け故障が15個/m2以上であり、液晶表示装置に組み込んだ際の表示視認性は低かった。
以上より、本発明の製造方法によれば、挟圧装置によるメルトの幅方向の中央部および両端部にかかる圧力の関係Ps/Pcを本発明の範囲とし、Pcのバラツキを本発明の範囲とし、2つのロール間に周速差を与えることで、良好な表示視認性のフィルムを製造できることがわかった。
また、実施例1〜19より、本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。
本発明の半透過型ECBモード液晶表示装置における偏光板の吸収軸、液晶セルの配向方向およびフィルムの遅相軸を表した平面図である。

Claims (16)

  1. 熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、
    前記挟圧装置によりフィルム状溶融物にかかる圧力が下記式(I)を満足することを特徴とするフィルムの製造方法。
    Ps/Pc=0.1〜0.99 (I)
    (式(I)中、Psはフィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域にかかる平均圧力を表し、Pcはフィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力を表す。)
  2. 前記溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程において、前記挟圧装置が互いに周速が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記フィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域におけるダイリップの平均クリアランスdcと、前記フィルム状溶融物の全幅に対して両端部から10%幅の領域におけるダイリップの平均クリアランスdsが、ds/dc=0.5〜0.95を満たすことを特徴する請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記2つのロールのうち少なくとも1つのロールが、中央部が太く、両端部が細いクラウン形状のロールであり、かつ、前記2つのロールを圧着した際の前記クラウン形状のロールの両端部から10%幅の領域の全領域において、もう一方のロールとの距離が1〜80μmであることを特徴とする請求項2または3に記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記2つのロールがともに金属製の外筒を有する金属ロールであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
  6. 前記2つの金属ロール中のうち少なくとも1つの金属ロールにおいて、該金属ロールの全幅に対して中央部80%の領域の金属製の外筒の平均肉厚が、該金属ロールの全幅に対して両端部10%の領域の金属製の外筒の平均肉厚の1.05〜1.5倍であることを特徴とする請求項5に記載のフィルムの製造方法。
  7. ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離が、30〜200mmであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  8. 前記フィルム状溶融物の全幅に対して中央部80%の領域にかかる平均圧力Pcが20〜500MPaであることを特徴する請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  9. フィルム厚みが10〜85μmであり、かつフィルム製膜幅が0.85〜2.5mであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  10. 製膜速度が5〜35m/分であり、かつ前記挟圧装置の第一挟圧面の移動速度が第二挟圧面の移動速度よりも速く、かつ、下記式(II)で定義される挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比が0.60〜0.99であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
    移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (II)
  11. 前記熱可塑性樹脂が環状オレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂から選ばれることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルムの製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法で作成されたことを特徴とするフィルム。
  13. 熱可塑性樹脂を含有し、フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から+40°傾いた方向から測定した測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]が下記式(III)を満たし、該フィルムのタッチ抜け故障が15個/m2未満であることを特徴とする請求項12に記載のフィルム(ここで、「フィルム法線からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向である)。
    40nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
  14. フィルム傾斜方位とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]が60〜300nmであり、厚み方向のレターデーションRthが40〜500nmであり、かつ前記Re[0°]および前記Rthのバラツキがいずれも0〜10%であることを特徴とする請求項12または13に記載のフィルム。
  15. 請求項12〜14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
  16. 請求項12〜14のいずれか一項に記載のフィルムの少なくとも一枚のフィルム、または、請求項15に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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