JP5411603B2 - フィルム、フィルムの製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
(式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[2] 遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることを特徴とする[1]に記載のフィルム。
[3] 下記(II)式および(III)式を満足することを特徴とする[1]または[2]に記載のフィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
40nm≦γ≦300nm (III)式
(式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
[4] 厚み方向のレターデーションRthが40nm〜300nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフィルム。
[5] 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフィルム。
[6] 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、を含むフィルムの製造方法。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
[7] 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする[6]に記載のフィルムの製造方法。
[8] 前記横延伸工程が、さらにクリップをTg−80℃〜Tgに加熱する工程と、加熱後のクリップによって前記フィルムの両端を把持しながら横延伸する工程と、を含むことを特徴とする[6]または[7]に記載のフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
[9] 前記横延伸工程を、フィルム膜面温度がTg−40℃〜Tg+5℃となるように制御して行うことを特徴とする[6]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[10] 前記挟圧工程において、前記溶融物を5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする[6]〜[9]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[11] 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする[6]〜[10]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
[12] 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする[6]〜[11]のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
[13] 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする[12]に記載のフィルムの製造方法。
[14] [6]〜[13]のいずれか一項に記載の方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
[15] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
[16] [1]〜[5]および[14]のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
本発明のフィルムは、熱可塑性樹脂を含み、下記式(I)で表されるγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とする。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
(式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
本発明のフィルムは、γの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であり、好ましくは0%〜7%、さらに好ましくは0%〜5%である。γの遅相軸方向の分布が10.5%以下であれば、場所によりγが異なることが実用上問題になりにくい程度となるため、液晶表示板に使用した際に斜めから覗いた際の表示むらが視認され難い。ここで、フィルムの光学特性の中でもγは左右から測定した際の複屈折の差を示すものであるため、左右の斜め方向から覗いた際に表示むらとなり易い。
このようなγの遅相軸方向の分布はどこをとっても上記範囲に入ることが好ましく、例えば遅相軸方向に任意に取った遅相軸方向30cm中のばらつきがこの範囲に入っていることが好ましい。
なお、Re[0°]、遅相軸およびRthのバラツキも同様に測定される。
本発明のフィルムは、遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることが好ましく、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°である。このように遅相軸が傾斜方位から傾いていることが、フィルムをロールに巻き取った後に経時させ、その後液晶表示板に使用した場合に斜めから覗いた際の表示むらを視認され難くする観点から好ましい。詳しくは、本発明のフィルムをロールに巻き取った際の寸法変化の絶対値(長さ×寸法変化率)が大きいほど大きな応力が発生し、このようにロールに巻き取った際の寸法変化が生じると、仮に延伸直後においてはγの遅相軸方向の分布が前記の範囲であったとしても、ロール経時後のγの遅相軸方向の分布が好ましい範囲を外れる程度まで増加することがある。すなわち、本発明のフィルムは、このようなロール経時後のγの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることが好ましく、0%〜7%であることがより好ましく、0%〜5%であることが特に好ましい。
本発明のフィルムは、下記(II)式および(III)式を満足することが好ましい。
50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
40nm≦γ≦300nm (III)式
(式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。)
より好ましくは、70nm≦Re[0°]≦250nm、60nm≦γ≦250nmを満たす場合であり、
さらに好ましくは、100nm≦Re[0°]≦200nm、80nm≦γ≦180nm場合である。
γが前記(III)式の範囲であると、液晶表示装置に組み込んだ場合に液晶補償能が改善され、僅かなむらが視認され難くなり、特に液晶表示板の光学特性を補償しにくい斜めから覗いた場合の表示むらが実質的に減少する。
本明細書において、ReおよびRthは、光学異方性層、フィルム、積層体等の、フィルム状の測定対象物の、面内のレターデーション(nm)、及び厚み方向のレターデーション(nm)を表す。
Re[0°]は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長550nmの光を、フィルム状の測定対象物の法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合、以下の方法によりRthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、フィルム状の測定対象物の法線方向に対して、法線方向から−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて、レターデーション値を11点測定し、そのレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を回転軸として(遅相軸がない場合には、フィルム状の測定対象物の、面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(A)及び式(B)よりRthを算出することもできる。
また、式(A)において、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
測定されるフィルム状の測定対象物が1軸、又は2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がない測定対象物の場合には、以下の方法により、Rthが算出される。
Rthは、前記Reを面内の任意に設定した方位(KOBRA 21ADH又はWRに設定できる)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長550nmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS、INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定できる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示すると、セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
なお、Re[θ°]、Rth及び屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、測定波長550nmでの値である。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定した。
(1)フィルム面内の遅相軸方位を0°、フィルム面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)フィルム法線に対して各仮傾斜方位側へ40°又は−40°傾いた方向からRe[+40°]とRe[−40°]を測定し、各仮傾斜方位の|Re[+40°]−Re[−40°]|を求める。
(3)|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
すなわち、本明細書において、「傾斜方位を有する」とは、|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位が存在することを言う。
また、本明細書において、フィルムのRthは傾斜方位を傾斜軸(回転軸)として、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、どの方位で測定しても、γ≒0nmとなる。すなわち、傾斜方位でγを測定した場合、0nm以上の位相差を発現することが本発明のフィルムの特徴である。
また、Re[0°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。フィルム面の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe[0°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re[0°]のバラツキとする。
さらに、遅相軸および後述のRthのバラツキも同様に測定される。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。本発明のフィルムでは、環状オレフィン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。また、前記環状オレフィン類は、付加重合によって得られた環状オレフィン類であることが好ましい。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、上記加工を行った場合、進相軸が傾斜方位を向いたフィルムを作成することができる。
付加重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合およびそれにより得られる環状オレフィン系樹脂としては、国際公開WO98第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合によって得られるものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(ポリプラスチックス(株)社製)を用いることができる。
共重合体樹脂としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−無水マレイン酸系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン−アクリル系樹脂やスチレン−無水マレイン酸系樹脂が耐熱性・フィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン−無水マレイン酸系樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「 Daylark D332」などが挙げられる。
また、スチレン−アクリル系樹脂としては、後述する、旭化成ケミカル社製の「デルペット980N」などを用いることができる。
アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体を重合して得られる樹脂としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造のものを挙げることができる。
タ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルが好ましく、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチル(以下MMAともいう)がより好ましい。これらのうち一種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち一種の単重合体であっても、2種以上の共重合体であっても、その他の樹脂の共重合体であってもよいが、ガラス転移温度を高める観点からその他の樹脂との共重合体であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
特開2007−297615号、特開2007−63541号、特開2007−70607号、特開2007−100044号、特開2007−254726号、特開2007−254727号、特開2007−261265号、特開2007−293272号、特開2007−297619号、特開2007−316366号、特開2008−9378号、特開2008−76764号の各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378号公報に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109号、特開2003−292714号、特開平6−279546号、特開2007−51233号(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905号、特開2002−167694号、特開2000−302988号、特開2007−113110号、特開2007−11565号各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109号公報に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263号、特開2004−70290号、特開2004−70296号、特開2004−126546号、特開2004−163924号、特開2004−291302号、特開2004−292812号、特開2005−314534号、特開2005−326613号、特開2005−331728号、特開2006−131898号、特開2006−134872号、特開2006−206881号、特開2006−241197号、特開2006−283013号、特開2007−118266号、特開2007−176982号、特開2007−178504号、特開2007−197703号、特開2008−74918号、国際公開WO2005/105918等各公報に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918号公報に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃〜170℃が好ましく、より好ましくは110℃〜160℃、さらに好ましくは115℃〜150℃である。
また、前記熱可塑性樹脂が共重合体である場合は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもかまわない。
本発明のフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種または2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、および光学調整剤が含まれる。
本発明のフィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前にまたは加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質および揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄および米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
本発明のフィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明のフィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明のフィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500〜10000であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
本発明のフィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることがさらに好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
本発明のフィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(以下、メルトとも言う)を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、を含むことを特徴とする。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
このように横延伸工程後のフィルムを特定の範囲だけ湾曲させることが、従来の方法と異なる本発明の特徴である。前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速度が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、挟圧装置によって圧力を均一にかけられることから、互いに周速度が異なる2つのロールであることが好ましい。
以下、本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
本発明の製造方法では、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程(以下、挟圧工程とも言う)を含むが、前記挟圧工程において、熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物(メルト)を供給する手段に特に制限はない。例えば、メルトの具体的な供給手段として、熱可塑性樹脂組成物を溶融してフィルム状に押出す押出機を用いる態様でもよく、押出機およびダイを用いる態様でもよく、熱可塑性樹脂を一度固化してフィルム状とした後に加熱手段により溶融してメルトを形成し、製膜工程に供給する態様でもよい。
本発明のフィルムの製造方法は、前記熱可塑性樹脂を含有する組成物(以下、熱可塑性樹脂組成物とも言う)をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことが、より得られるフィルムの光学特性のムラを抑える観点から好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物を溶融押出しする場合、溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。市販品の熱可塑性樹脂(例えば、TOPAS#6013、タフロンMD1500、デルペット980N、DayLark D332等)は、ペレット化されている場合もあるが、ペレット化されていない場合は以下の方法を用いることができる。前記熱可塑性樹脂としては本発明のフィルムに含まれる熱可塑性樹脂として説明したものを用いることができ、好ましい範囲も同様である。
前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってから前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給手段(例えばダイ)から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、熱可塑性樹脂の溶融物を前記供給手段から供給し、挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形し、固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化の観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フイルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度)
挟圧装置の挟圧面どうしの移動速度差は1%〜15%であることがより好ましく、さらに好ましくは2%〜10%である。
移動速度差が20%以下であればメルトが挟圧装置の挟圧面間でスリップを引き起こさず、挟圧装置間の圧力にムラが発生しがたい。このムラが発生しなければ、横延伸工程時にムラが増幅されることもなく、γの遅相軸方向分布が減少する。一方、移動速度差が0.5%以上であれば、強固な傾斜構造を作ることができ、横延伸工程中の収縮応力により傾斜構造が低下することを抑制できるため、γの遅相軸方向分布が減少することとなる。
本発明の製造方法では、吐出温度(前記供給手段出口の樹脂温度)は、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
本発明の製造方法では、例えばダイなどの供給手段から熱可塑性樹脂組成物を挟圧装置に供給する場合、エアーギャップ(供給手段の出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、エアーギャップ間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
本発明の製造方法では、エアーギャップでのメルトの保温の観点から、ライン速度(製膜速度)が2m/分以上であることが好ましく、5m/分以上であることがより好ましく、10m/分以上であることが特に好ましい。ライン速度が速くなると、エアーギャップ中でのメルトの冷却を抑制でき、メルトの温度が高い状態で、挟圧装置によって、より均一なせん断変形を付与できる。なお、前記ライン速度とは、挟圧装置間を溶融物が通過する速度、および搬送装置におけるフィルム搬送速度を表す。
本発明の製造方法では、製膜幅は1m〜3mが好ましく、より好ましくは1.2m〜2.5m、さらに好ましくは1.4m〜2mである。
前記挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に溶融押出しされた溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)およびチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流の前記熱可塑性樹脂組成物供給手段(例えば、ダイ)に最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点および周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
従来金属製のタッチロールは特開平11−235747号公報のように金属製外筒厚みが2〜5mmと薄いものか、カレンダーロールのように金属製外筒厚みが50mm以上のものが主流であり、本発明ではこの間の新規な厚みのロールを用いたことで顕著にγの遅相軸方向分布を小さくできたことが特徴の一つである。
周速度差(%)=100×[(速い方のロールの周速度)−(遅い方のロールの周速度)]
/(速い方のロールの周速度)
2つのロールの周速度差の好ましい範囲は、前記挟圧装置における移動速度差における好ましい範囲と同様である。
なお、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)を用いて、測定パンに樹脂をいれ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温した(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)として、求めることができる。
さらに、前記遮蔽部材を用いると、フィルム状溶融物の温度が高い状態、すなわち、溶融粘度が低い状態で、ロール間を通過させることができるため、本発明のフィルムを作成しやすい効果もある。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。
遮蔽部材とフィルム状の溶融物の幅方向端部との隙間は、ロールの表面に沿って流れ込む上昇気流を効率よく遮蔽する上で狭く形成されることが好ましく、フィルム状溶融物の幅方向端部から50mm程度であることがより好ましい。なお、ダイの側面と遮蔽部材との隙間は、必ずしも設ける必要はないが、遮蔽部材に囲まれた空間内の気流を排出できる程度、例えば10mm以下に形成されることが好ましい。
また、断熱機能および/または熱反射機能を持つ材料として、遮風性や保温性に優れたものが好ましく、例えば、ステンレス等の金属板が好ましく使用できる。
さらに、上記方法により製膜した後、本発明の製造方法では、得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程を行い、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させる工程を行い、前記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する。
また、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、その他の延伸および/または緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(f)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 横延伸→横延伸
(d) 縦(横)延伸→横(縦)延伸
(e) 縦(横)延伸→横(縦)延伸→緩和処理
(f) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に好ましいのは、(a)の工程である。以下、延伸工程について説明する。
イ)通常の横延伸
本発明の製造方法では、横延伸工程として、通常の横延伸を採用することができる。すなわち、通常の横延伸とは、フィルムの両端をクリップで把持し、テンターを用いオーブン内で加熱しながらクリップを拡幅する横延伸法であり、例えば下記のような方法を使用できる。
実開昭62−35817号、特開2001−138394号、特開平10−249934号、特開平6−270246号、実開平4−30922号、特開昭62−152721号各公報。
本発明では、テンター内でのγの遅相軸方向の分布の増加が、クリップ近傍のフィルムが固定されており、フィルム幅方向中央部に比べて、横延伸に伴う収縮応力で変形し難いことに起因して生じていることを見出した。したがって、γの遅相軸方向の分布を低下させるためにクリップ近傍のフィルムを柔らかくして変形し易くすることが有効であることを見出した。
具体的な対策として、クリップを上記温度に加熱する工程の後に、加熱後のクリップによってフィルムの両端を把持しながら横延伸することが好ましい。これにより特に変形し易くする必要のある(クリップで固定され変形し難い)クリップ近傍のフィルムを選択的に加温できる。
前記クリップの加熱温度がTg以下であれば把持部のフィルムが柔らかくなりすぎず、延伸中に逆に延伸され易くなってしまうことがなく、γの遅相軸方向の分布を抑えることができる。一方、Tg−80℃以上であれば、上記効果(端部の加熱による効果)が十分に現れ、γの追走軸方向の分布が十分に抑制でき好ましい。
横延伸工程の延伸倍率は1.05倍〜3倍、より好ましくは1.1倍〜2.6倍、さらに好ましくは1.2倍〜2.3倍である。
なお、γの遅相軸方向分布を0%にしたい場合は、例えばテンターの温度調整用熱風吹き出し口の端部と中央に温度分布を与え、両端の吹き出し口の温度を中央より15〜40℃高くすることで達成できる。
また、本発明の製造方法において横延伸工程は1段階で実施しても多段階で実施してもよいが、1段階で実施することが好ましい。
通常の横延伸と同様、横方向にクリップを拡幅するが、それと同時に縦方向に延伸、収縮するものであり、具体的には下記のような方法を使用できる。
実開昭55−93520号、特開昭63−247021号、特開平6−210726号、特開平6−278204号、特開2000−334832号、特開2004−106434号、特開2004−195712号、特開2006−142595号、特開2007−210306号、特開2005−22087号、特表2006−517608号、特開2007−210306号各公報。
通常の横延伸と同様、横方向にクリップを拡幅するが、左右のクリップの搬送速度を変えることで斜め方向に延伸できる。これによりMD方向から30°〜150°、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°にすることができ、具体的には下記のような方法を使用できる。
特開2002−22944号、特開2002−86554号、特開2004−325561号、特開2008−23775号、特開2008−110573号、特開2000−9912号、特開2003−342384号、特開2004−20701号、特開2004−258508号、特開2006−224618号、特開2006−255892号、特開2008−221834号、特開2003−342384号、国際公開WO2003/102639号各公報。
このような横延伸工程の前に予熱を行ったり、横延伸工程の後に熱固定を行ったりすることで横延伸後のフィルムのRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃〜30℃高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃〜50℃低い温度で行うことができ、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすく好ましくない。
本発明の製造方法では、前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させる工程を含み、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する。ここで、前記湾曲量は好ましくはフィルム全幅の0.3%〜8%であり、さらに好ましくは0.5%〜6%である。前記湾曲量が0.1〜10%であると、γの遅相軸方向の分布が抑制され、フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際の斜め方向の表示むらが顕著に改善されるため好ましい。なお、このようなフィルムを湾曲させる工程は(横延伸温度)〜(横延伸温度−80℃)において実施するのが好ましく、より好ましくは(横延伸温度−10℃)〜(横延伸温度−50℃)である。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅)
本発明において横延伸工程後の湾曲は、フィルムが膨らんでおればよく、上に凸でも下に凸でもかまわない。
本発明では、このような横延伸工程でフィルム幅方向中央部に大きく働く収縮応力を低減させることを検討した結果、上記のように横延伸工程後にフィルムを湾曲させることが有効であることを見出した。いかなる理論に拘泥するものでもないが、横延伸ゾーンでフィルム幅方向中央部に大きく発生する収縮応力のため、横延伸工程後のフィルムは幅方向中央部を強く延伸部(両端部)に向かって引っ張られる。これに対し、フィルムを湾曲させる(膨らませる)と、物理学上、把持されている両端に対して、中央部がより膨らもうとする力を受けることとなる。このフィルムを湾曲させた際に中央部に選択的に大きく働く力と、横延伸工程で発生した収縮応力が綱引きすることとなり、横延伸工程による収縮応力の履歴を低減できる。すなわち、このような湾曲による効果は、横延伸工程時において収縮応力の大きい中央部で大きく、収縮応力の弱い両端で小さい。したがって、本発明の製造方法で規定する湾曲量に制御しながらフィルムを横延伸後に湾曲させることで、フィルム全幅にわたり横延伸工程で発生した収縮応力を均等に相殺でき、γの遅相軸方向の分布を抑制できる。このように本発明ではフィルムを湾曲させるという容易かつ簡便な方法によって、中央部に選択的に応力を掛けることが特徴であり、張力を掛け引っ張るような方法に比べて幅方向に均一な応力が加えられる観点から、顕著に好ましい効果を奏する。
さらに、縦延伸を行ってもよい。縦延伸は、前記横延伸工程の後に行っても、前に行ってもよい。
縦延伸は、2対のロール間を加熱しながら出口側の周速度を入口側の周速度より速くすることで達成できる。この際、間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2〜50以下(長スパン延伸)ではRthを小さいフィルムを作成し易く、L/Wが0.01〜0.3(短スパン)ではRthが大きいフィルムを作成できる。本実施の形態では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)のどれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
延伸温度は、Tg−40℃〜Tg+5℃が好ましく、Tg−30℃〜Tg℃がより好ましく、Tg−20℃〜Tg-3℃以下がさらに好ましい。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜3.0倍、より好ましく1.2〜2.5倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍である。
さらに、これらの延伸の後に緩和処理を行ってもよい。緩和処理は製膜後、縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましい。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行ってもよく、延伸後巻き取った後、オフラインで行ってもよい。
緩和処理は(Tg−40)℃〜(Tg+5)℃、より好ましく(Tg−30)℃〜(Tg)℃、さらに好ましくは(Tg−20)℃〜(Tg−3)℃で、1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分、0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
本発明のフィルムに、少なくとも偏光子(以下、偏光膜ともいう)を積層することで、本発明の偏光板を得ることができる。以下において、本発明の偏光板を説明する。本発明の偏光板の例は、偏光膜の一面に、保護フィルムと視野角補償の2つの機能を目的として作成されたものや、TACなどの保護フィルムの上に積層された複合型偏光板が挙げられる。
本発明の偏光板の光学フィルムには、本発明のフィルムが用いられる。また、前記フィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、コロナ放電、グロー放電、UV照射、火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明の偏光板のセルロースアシレートフィルムには、公知の偏光板用のセルロースアシレートフィルムが用いられる。例えば、公知のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(例えば、富士フイルム(株)製フジタックT−60)などを好ましく用いることができる。また、前記ルロースアシレートフィルムには表面処理をしておくこともできる。表面処理方法としては、例えば、けん化処理などが挙げられる。
前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。
本発明の偏光板は、最外層の少なくとも一方として粘着剤層を有していても良い(このような偏光板を粘着型偏光板と称することがある)。特に好ましい形態として、前記光学フィルムの偏光子が接着されていない側に、他の光学フィルムや液晶セル等の他部材と接着するための粘着剤層を設けることができる。
本発明の偏光板の製造方法を説明する。
本発明の偏光板は、接着剤を用いて前記偏光子の少なくとも片面に本発明のフィルムの片面(表面処理をしてある場合は表面処理面)を貼り合わせることで製造できる。また、セルロースアシレートフィルム、偏光子および本発明のフィルムの順に貼り合わせる場合は、本発明の偏光板は偏光子の両面に接着剤を用いて偏光子とその他のフィルムを張り合わせることで製造できる。本発明の偏光板の製造方法においては、本発明のフィルムが偏光子と直接貼合されていることが好ましい。
本発明のフィルムおよび偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。好ましくは、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードの液晶表示装置、中でも、より好ましくは、TN、ECBモード液晶表示に用いることができる。
本発明のフィルムは、光学用途用フィルムとして好ましく用いることができ、光学補償フィルムとして特に好ましく用いることができる。
本発明のフィルムにさらに光学異方性層を付与することで積層フィルムとすることもできる。
(1)Re[0°]、γ、Rth
明細書中に記載した方法に従い、これらの光学特性を測定した。
延伸後のフィルムの任意の遅相軸方向30cmについて10等分し、上記方法でγを求める。10点の測定値のうち、最大点と最小点の差を10点の平均値で割り百分率で表したものを遅相軸方向分布(%)とした。
横延伸工程に使用するテンターの出口にカメラを設置し、延伸されたフィルムが搬送されるところを望遠撮影する。この写真の両端のクリップ間を直線で結び、この線から、フィルムが最も高く湾曲した高さを読む。この高さをフィルムの全幅で割り、百分率で示したものを湾曲量(%)とした。
付加重合型ノルボルネン樹脂(COC)として、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いた。なお、「TOPAS#6013」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は130℃であった。
開環重合型ノルボルネン樹脂(COP)を国際公開WO98/14499号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。当該樹脂のガラス転移点は136℃であった。
ポリカーボネートとして、出光興産社製の「タフロンMD1500」のペレットを用いた。なお、「タフロンMD1500」は、正の固有複屈折性を示す。また、当該樹脂のガラス転移点は142℃であった。
アクリル系を特開2008−9378号公報[0222]〜[0224]の製造例1に従いメタクリル酸メチル=7500g、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル2500gから合成し、ラクトン化率98%、ガラス転移点134℃のアクリル系化合物を得た。
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−1)を2008−87398号公報の実施例1に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−1の組成は、アセチル化度1.95、プロピオニル化度0.7、全アシル置換度2.65であった。また、当該樹脂のガラス転移点は174℃であった。
セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP−2)を2008−50562号公報の実施例101に記載の方法に従って製造し、これを常法に従ってペレット化した。なお使用したCAP−2の組成は、アセチル化度0.15、プロピオニル化度2.55、全アシル置換度2.70であった。また、当該樹脂のガラス転移点は137℃であった。
(フィルムの作製)
(製膜)
熱可塑性樹脂として下記表1に記載の環状オレフィン共重合体TOPAS#6013(COC)のペレットを用いて、100℃において2時間以上乾燥し、260℃で溶融し、1軸混練押出し機を用い混練し押出した。このとき押し出し機とダイの間にスクリーンフィルター、ギアポンプ、リーフディスクフィルターをこの順に配置し、これらをメルト配管で連結した。これを下記表1に記載の押出し温度(吐出温度)で幅1300mm、リップギャップ0.8mmのダイから押出した。
この後、キャストロールとタッチロールで挟圧した部分の中央にメルト(溶融樹脂)を押出した。この時、最上流側の幅1500mm、直径300mmのハードクロムメッキしたステンレス製キャストロール(チルロール)に下記表1に記載のタッチ圧力となるようにシリンダーを設定し、幅1500mm、直径200mmの下記表1に記載の材質のタッチロールを接触させた。また、タッチロールの外筒厚みを下記表1に記載した。なお、タッチ圧力は、中圧用プレスケール(富士フイルム社製)を、メルトのない状態で、等周速度(5m/分)でともに25℃に制御した二つのロールに挟みこむことで測定し、その値を製膜時の圧力とした。タッチロールおよびチルロールはショア硬度70HSのものを用いた。また、メルトはキャストロールとタッチロールで挟まれる中央部分に落とした。これらのロールを用い、タッチロール周速度をチルロール周速度よりも速くし、これらのロール間の周速度差を下記表1に記載の条件に設定し、ダイとメルト着地点の距離を50mmに設定し、搬送速度(チルロール速度)15m/分で製膜した。なお、タッチロールの温度をTg−5℃、チルロールの温度をTg−10℃とした。また、製膜の雰囲気は25℃、60%であった。
この後、巻き取り直前に両端(全幅の各5cm)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ20μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた。またトリミング後の製膜幅は1mとし、450m巻き取り、実施例1のフィルムを作製した。
上記製膜フィルムを表1記載の条件で延伸した。延伸はテンター両端の吹き込み温度をTg+5℃の設定温度として下記表1に記載のフィルムの膜面温度になるようにし、下記表1に記載の倍率で延伸した。延伸後の厚みは80μmであった。
この時、延伸後のテンター内に設置した矩形の形状の吹き出し口からの風量のバランスを調整することで表1記載の湾曲量を調整した。吹き出し口はテンターの上、下側に設置し、風量はダンパーによって調節した。また、フィルムは上に凸に湾曲させた。なお、吹き込み風の温度は延伸時のテンター両端の吹き込み温度−30℃で実施した。
クリップの温度は、延伸終了後にフィルムを把持せずに延伸開始点に戻ってくる途中の延伸開始点直前に設置した赤外線ヒーターにより表1記載の温度に調整した。
延伸には、下記のように通常の横延伸のほか、同時2軸延伸、斜め延伸を実施した。
横延伸:特開平10−249934号公報に記載の方法。
同時2軸延伸:特表2006−517608号公報に記載の方法。
斜め延伸:特開2008−110573号公報に記載の方法。
上記方法でγ、Re[0°]、Rth、遅相軸と傾斜方位のなす角度およびγの遅相軸方向の分布を測定した。
斜め方向の表示むらは、クロスニコルに配置した偏光板の間に上記延伸フィルムを挟み、MD方向から左右に45度ずつ傾いた方向から見た際に視認されるむらの領域を計測した。これは、液晶表示板に組み込んだ際の斜め方向の表示むらを反映する。そのため、「斜め方向の表示むら」は小さいほど好ましく、例えば20%未満であれば実用上問題がなく、5%以下であることが好ましい。
さらに上記延伸フィルムを両端5cmずつスリットし、ナーリングを付与したあと、張力20kg/mで3000m巻取り、50℃で24時間加温した。このような工程は、室温で半年経時した程度に相当する。24時間加湿後のフィルムの収縮応力による巻き締まりを最も受け易い巻き芯部からサンプリングし、上記の方法で斜め方向の表示むらを計測した。これをロール経時後の斜め方向の表示むらとした。ロール経時後の斜め方向の表示むらは小さいほど好ましく、例えば20%未満であれば実用上より好ましく、10%未満であることが特に好ましい。
これらの実施例1のフィルムの光学特性の測定結果を下記表1に示した。
用いた樹脂と製膜条件を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例および比較例のフィルムを得た。各実施例および比較例のフィルムの光学特性を下記表1および表2に示す。なお、実施例15では、テンター両端の吹き込み温度を実施例1に比べて20℃高くしたため、横延伸工程時のフィルム膜面温度はTg+6℃となった。実施例17における同時2軸延伸は、下記表1に記載の倍率での横延伸と同時に、縦方向に20%収縮させた。なお、同時2軸延伸機は特開2007−210306号公報に記載の設備を用いた。実施例18〜21は、特開2008−110573号公報に記載の装置を用い、表1記載の条件で斜め延伸を行った。実施例37においてアクリル樹脂は230℃にて溶融した。
比較例3では特開平7−151915号公報の実施例1のFS−4に準じて溶液製膜し、乾燥、巻き取り後、フィルムに2本のロール間でせん断応力(ズリ)を付与し、横延伸を行った。さらに、本発明の実施例の方法にて横延伸後のフィルムを湾曲させた。該文献実施例の条件および湾曲量を下記表2に示す。
実施例42は、比較例3を本発明の製造方法に準じて実施したものであり、溶融製膜にて、ダイから押出されたメルトに周速度の異なるタッチロールおよびチルロールでズリを与えた後、横延伸を行い、横延伸後のフィルムを湾曲させた。実施例42の条件を下記表2に示す。
得られた実施例42および比較例3のフィルムの光学特性を下記表2に示す。
製膜条件と横延伸温度(横延伸工程におけるフィルム膜面温度)を下記表1および表2に記載したように変更した以外は実施例1と同様にして、各実施例のフィルムを得た。なお、実施例43〜47における横延伸温度の調整は、テンター両端からの吹込み風温度を実施例43ではTg+22℃、実施例44、実施例48および49ではTg+8℃、実施例45ではTg−2℃、実施例46ではTg−32℃、実施例47ではTg+38℃に設定することにより調節した。
次に、本発明のフィルムは、斜め方向の表示むらが少ないことがわかった。また、本発明のより好ましい態様では、ロール経時後の斜め方向の表示むらも少なかった。詳しくは、比較例1〜3ではいずれもγの遅相軸方向の分布が本発明の範囲外であった。さらに、斜め方向の表示むらもロール経時後の斜め方向の表示むらも悪かった。
また、実施例1〜49より、γ、Re[0°]およびRthが良好な範囲で発現しており、さらにγの遅相軸方向分布も小さかった。そのため本発明のフィルムは本発明のフィルムは光学用途に適したフィルムであり、特に光学補償フィルムとして好適に用いることができることがわかった。横延伸時のフィルム膜面温度を本発明のより好ましい範囲であるTg−40℃〜Tg+5℃で行った実施例1〜14、16〜46、48および49では、γが大きく形成されることが分った。
作成した実施例1〜49のフィルムを用いて偏光板を作製した。具体的には、まず、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて各偏光フィルムを作製した。これらの偏光フィルムを用いて、図1に示すような配置で、80μmのTACフィルム(富士フイルム社製)、一軸延伸したノルボルネン系高分子フィルムからなる、Re=270nmのλ/2板、実施例1〜49のフィルムを貼合わせた。このようにして、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板をそれぞれ2枚ずつ作製した。
実施例1〜49のフィルムを視野角補償フィルムとして、1対の偏光板と液晶セルの間に設置した。また、実施例1〜49のフィルムを用いた偏光板を液晶セルの上下に配置した。液晶表示装置としてTN、ECB、OCB、VA、IPSモードのものを使用したところ、いずれも良好な視野角補償性能を発現した。
Claims (16)
- 熱可塑性樹脂を含み、下記(I)式で表されるγが17nm以上であり、γの遅相軸方向の分布が0%〜10.5%であることを特徴とするフィルム。
γ=|Re[+40°]−Re[−40°]| (I)式
(式(I)中、Re[+40°]はフィルム法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表し、Re[−40°]は該法線に対して傾斜方位側へ−40°傾いた方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。ここでいう傾斜方位は、フィルム面内の方位のうち|Re[+40°]−Re[−40°]|が最大となる方位を意味する。γの遅相軸方向の分布とは、遅相軸方向30cmを10等分してγを測定し、最大点と最小点の差を10点の平均値で割り百分率で表したものを意味する。) - 遅相軸と傾斜方位のなす角度が30°〜150°であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
- 下記(II)式および(III)式を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム。
50nm≦Re[0°]≦300nm (II)式
40nm≦γ≦300nm (III)式
(式(II)中、Re[0°]はフィルム法線方向から測定した波長550nmにおける面内方向のレターデーションを表す。) - 厚み方向のレターデーションRthが40nm〜300nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
- 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびセルロースアシレート系樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
- 挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に熱可塑性樹脂を含有する組成物の溶融物を通過させて連続的に挟圧してフィルム状に成形する挟圧工程(該挟圧工程において前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くする)と、
フィルム状の溶融物を固化してフィルムを得る工程と、
得られたフィルムをフィルム幅方向に延伸する横延伸工程と、
前記横延伸工程後のフィルムの幅方向中央部を幅方向両端部に対してフィルム法線方向に湾曲させ、下記式(IV)で表される湾曲量を0.1%〜10%に制御する工程と、
を含むフィルムの製造方法。
式(IV)
湾曲量(%)=100×(フィルムの幅方向中央部と幅方向両端部の高さの差)/(フィルム全幅) - 前記熱可塑性樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物を前記第一挟圧面と前記第二挟圧面の間を通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項6に記載のフィルムの製造方法。
- 前記横延伸工程が、さらにクリップをTg−80℃〜Tgに加熱する工程と、加熱後のクリップによって前記フィルムの両端を把持しながら横延伸する工程と、を含むことを特徴とする請求項6または7に記載のフィルムの製造方法(但し、Tgは前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度を表す)。
- 前記横延伸工程を、フィルム膜面温度がTg−40℃〜Tg+5℃となるように制御して行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧工程において、前記溶融物を5〜500MPaの圧力で挟圧することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧工程において、下記式(V)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度差が0.5〜20%となるように制御することを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
式(V)
移動速度差(%)=100×{(第一挟圧面の移動速度)−(第二挟圧面の移動速度)}
/(第一挟圧面の移動速度) - 前記挟圧工程において、前記挟圧装置が互いに周速度が異なる2つのロールであることを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
- 前記挟圧装置を構成する2つのロールの一方に、外筒厚み6〜45mmの金属製タッチロールを用いることを特徴とする請求項12に記載のフィルムの製造方法。
- 請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法で製膜したことを特徴とするフィルム。
- 請求項1〜5および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜5および14のいずれか一項に記載のフィルムを少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
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