JP2010035553A - 植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法 - Google Patents

植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 植物細胞壁成分を加水分解することで得られる低利用性の単糖を資化させて、α−グルカンとして‘大量に’蓄積させた細菌の菌体を製造することを、課題とする。
【解決手段】 植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖をα−グルカンに変換し保持する特定の細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法、を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法に関し、詳しくは、細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上の‘大量の’α−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法に関する。
また本発明は、前記製造方法から得られたα−グルカンを保持する菌体からグルコースを製造する方法、さらには、前記グルコースからエタノールを製造する方法、に関する。
食料と競合しないバイオマス利用技術を開発する場合、農産物の一次加工残渣や食品加工廃棄物などの廃棄物資源や、稲わら、もみ殻、麦わら、バガス、雑草、製材残渣、間伐材などの未利用資源、さらには、エネルギー作物の有効利用技術開発が鍵となる。これらの利用においては、植物細胞壁を構成するセルロース、ヘミセルロースやペクチンの利用技術開発が重要となる。
植物細胞壁の各構成糖のうち、グルコースやフラクトースなどの六炭糖は、酵母などの発酵性細菌の基質となりやすく、バイオエタノールや他の種々の発酵生産物の製造原料として用いられている。しかしながら、植物細胞壁中には、上記六炭糖のほかに、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロースなどの多様な糖が含まれており、これらは、主として‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’などの高分子の構成成分として存在している。
しかしながら、これらの成分の利用技術は十分に開発されていない。
例えば、‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’の構成糖をエタノールに変換する工程では、ヘミセルロースの構成糖である‘キシロース’や‘アラビノース’に対して、発酵性を有する微生物が知られている。しかし、キシロース発酵性酵母Pichia stipitisは、酸素要求性、エタノール低耐性などが問題となり、商業レベルでの発酵技術として完成しておらず、同様にアラビノースをエタノール発酵する微生物の利用性も低く実用化には程遠い状態にある。
また、当該代謝を司る遺伝子を導入した微生物を利用する方法も検討されている。例えば、キシロースやアラビノースなど多様な糖質を資化できる大腸菌へ、エタノール代謝遺伝子導入することにより、KO11と呼ばれるエタノール発酵性大腸菌が作出され、多様な事業に用いられてきた。また、酵母やZymomonas属の細菌などの高濃度エタノール耐性菌に対して、キシロースやアラビノースの代謝経路を司る遺伝子を導入し、エタノール製造効率を向上する試みが数多く行われてきた。
しかしながら、これらの遺伝子組み換え技術を適用する場合、環境への組み換え微生物放出を抑制するためのシステムに対する設備・管理コストが高いものになると懸念される。
現在、‘ヘミセルロース’や‘ペクチン’などの主な利用法としては、機能性食品素材としての用途が存在する。例えば、キシリトール、キシロオリゴ糖、アラビノース、ペクチンオリゴ糖などが開発されており、一部で実用化されている。しかし、その市場は小さく、大量のバイオマス原料から副生する量をカバーできる規模の出口になっていない。このように、ヘミセルロースやペクチンを主体とする細胞壁成分の有効利用技術の開発が求められている。
また、利用性の低い、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロースなどの糖を廃棄して堆肥化・メタン発酵に用いる用途も存在するが、産業上、利用性が高く、大量消費が可能な物質に変換することが望ましく、特に、食料、飼料、微生物栄養源、あるいは化学工業原料・燃料などの、通年的に大量消費される物質への変換が望ましい。
このような中で、グリコーゲンなどの「α−グルカン」は、グルコースより構成される多糖類の糖質であり、高等動物をはじめとして極めて多くの生物によって酵素分解される物質として、食料、飼料や微生物栄養源等への利用が期待できる糖質である。
また、α−グルカンは、酵素のみならず、酸処理によっても分解され、グルコースに変換できる。このことは、グルコースからの発酵システムが完成しているような、バイオエタノール等の種々の化学工業原料・燃料の製造におけるグルカンの利用性が高いことを示す。
しかしながら、このような目的で、植物細胞壁成分である低利用性糖質(ヘミセルロースやペクチン)を変換して、α−グルカンを製造する技術の開発は行われておらず、その有効利用技術の開発が期待されている。
グリコーゲンなどのα−グルカンを生産する微生物自体は、数多く知られている。例えば、酵母などの真核生物のほか、Bacillus subtilis, Streptomyces coelicolor, Micropruina glycogenica, Mycobacterium smegmatis, Corynebacterium glutamicum, Escherichia coli, Mesorhizobium lotiなど多くの細菌が生産することが知られている。
これら微生物由来α−グルカンについては、‘グルコース’を含む培地で培養した際には、菌体乾燥重量比で、最大で8.4%、あるいは9%程度蓄積するというデータが得られている(例えば、非特許文献1および2参照)。
しかしこれらの微生物の多くは、活性汚泥法による‘リン酸’の除去法において鍵となる微生物群として基礎研究が行われてきた経緯があり、‘植物細胞壁成分に由来する低利用性の単糖’を変換する技術と関連づけられた研究は行われていない。また、その蓄積量は、実用的には不十分な量である。
また、キシロースやアラビノースなどの単糖を代謝して、グリコーゲンを蓄積する能力を有するEscherichia coliやMicropruina glycogenicaなども存在するが(例えば、非特許文献1および3参照)、これらについても実用面で十分と認められる大量のα−グルカンを蓄積させる技術については検討されていない。また、これらの微生物が、キシロースやアラビノース以外のヘミセルロース、ペクチン等の構成糖を代謝した場合のα−グルカンの蓄積特性についても報告されていない。
Shintani, T., et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 50, 201-207 (2000) Seibold, G., et al., Microbiology, 153, 1275-1285 (2007) Govons. S., et al., J. Bacteriol., 97,970-972 (1969)
本発明は、上記従来の課題を解決し、植物細胞壁成分を加水分解することで得られる低利用性の単糖を資化させて、α−グルカンとして‘大量に’蓄積させた細菌の菌体を製造することを、課題とする。
本発明者は、植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖をα−グルカンに変換し保持する特定の細菌、特には、Enterobacter cancerogenus(エンテロバクター・キャンセロゲナス) S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp.(アルスロバクター・エスピー) 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp.(スポロサルシナ・エスピー) N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株、を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上の‘大量の’α−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させること、;ができることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は以下に関するものである。
即ち、請求項1に記載の本発明は、植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖を資化してα−グルカンに変換し保持する性質を有するProteobacteria綱、Actinobacteria綱、またはBacilli綱に属する細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項2に記載の本発明は、前記単糖が、D−キシロース、L−アラビノース、D−ガラクツロン酸、L−ラムノース、D−グルクロン酸、D−ガラクトース、および、D−マンノースのうちの、少なくともいずれか一つ以上のものである、請求項1に記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項3に記載の本発明は、前記培養液中における前記単糖を、グルコース換算で当該単糖量の10%以上の量のα―グルカンに変換する、請求項1又は2のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項4に記載の本発明は、前記培養液中における前記単糖の濃度が、0.05%(w/v)以上であり0.5%(w/v)未満である、請求項1〜3のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項5に記載の本発明は、植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって加水分解し、当該加水分解物を含有する培養液中でProteobacteria綱、Actinobacteria綱、またはBacilli綱に属する細菌を培養して、前記加水分解物を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項6に記載の本発明は、前記細菌が、土壌から選抜するにあたり、前記単糖を資化することにより前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを前記細菌の菌体内に蓄積させる性質、を指標として、選抜されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項7に記載の本発明は、前記細菌が、Enterobacter属、Arthrobacter属、またはSporosarcina属に属する細菌である、請求項1〜6のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項8に記載の本発明は、前記細菌が、Enterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株である、請求項1〜7のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項9に記載の本発明は、前記植物細胞壁成分が、ヘミセルロース及び/又はペクチンを主成分とするものである、請求項1〜8のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項10に記載の本発明は、前記植物細胞壁成分が、キシランを主成分とするものである、請求項1〜9のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項11に記載の本発明は、前記α−グルカンが、グリコーゲンを主成分とするものである、請求項1〜10のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項12に記載の本発明は、前記細菌を培養した後、固液分離して菌体を固形分として回収する、請求項1〜11のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法、に関するものである。
また、請求項13に記載の本発明は、請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法により得られた、α−グルカンを保持する菌体、に関するものである。
また、請求項14に記載の本発明は、請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体を破壊した後、α−グルカンを、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α−グルコシダーゼのうち少なくとも一つ以上の酵素で処理することによって、グルコースに加水分解する、グルコースの製造方法、に関するものである。
また、請求項15に記載の本発明は、請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体を、希塩酸または希硫酸を用いて60℃以上の温度で処理することによって、α−グルカンをグルコースに加水分解することを特徴とする、グルコースの製造方法、に関するものである。
また、請求項16に記載の本発明は、請求項14又は15のいずれかに記載の製造方法により得られたグルコースを、エタノール発酵の原料として用いることを特徴とする、エタノールの製造方法、に関するものである。
また、請求項17に記載の本発明は、請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体に含まれるα−グルカン、もしくは、請求項14又は15のいずれかに記載の製造方法により得られたグルコース、を含有する、食料、飼料または微生物栄養源、に関するものである。
本発明は、植物細胞壁成分を加水分解することで得られる‘低利用性’の単糖を資化させて、α−グルカンとして‘大量に’蓄積させた細菌の菌体を製造すること、を可能とする。
次に、本発明は、植物細胞壁成分を加水分解することで得られる、‘低利用性’の単糖からなる加水分解物を資化させて、α−グルカンとして‘大量に’蓄積させた細菌の菌体を製造すること、を可能とする。
また、本発明は、植物細胞壁成分からグルコースに製造することを可能とし、さらには、植物細胞壁成分からエタノールを製造することを可能とする。
また、本発明によると、エタノール発酵後の廃液の有機物を分解して廃液のBODを低下させながら、有用性の高いグルカン保持菌体を固液分離により回収できる。
また、廃液処理工程、特に活性汚泥処理工程の一部として、BODを低下させながら、グルカン保持菌体を得ることが可能となる。
実施例2において、酵素処理により遊離したグルコース量の測定結果を示す図である。 実施例11において、酵素処理により遊離したグルコース量の測定結果を示す図である。 実施例15において、酵素処理により遊離したグルコース量の測定結果を示す図である。 実施例18において、乾燥菌体重量と菌体グルカン保持量の測定結果を示す図である。 実施例18において、培養液における各糖質の量の測定結果を示す図である。
本発明は、植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖を資化してα−グルカンに変換し保持する性質を有する特定の細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上の‘大量の’α−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法に関する。
「α−グルカンを保持する菌体」とは、菌体内や菌体外マトリクスにおいて、α−グルカンを蓄積している菌体をさすものであるが、本発明においては、特に、‘菌体として固液分離時に固形分として回収される画分’において、α−グルカンを蓄積している菌体をさすものである。
‘α−グルカン’は、‘グルコース’を構成糖とする多糖類の糖質であり、人や多くの動植物のみならず、細菌や菌類なども蓄積し、対応する加水分解酵素も有している。このことから、食料、飼料や微生物栄養源等への利用性が高い糖質であると期待される。
主要なα−グルカンとしては、でん粉、グリコーゲン、プルラン、デキストランなどが知られている。
これらのうち、グリコーゲンは、非晶性であり生分解性が極めて高いことから、利用性が高いと期待される。また、天然のでん粉は、結晶性が高いため、熱変性・糊化して結晶性を低下させて酵素分解性が向上させた後に、利用することができる。
従って、本発明で菌体内に蓄積されるα−グルカンとしては、特に、グリコーゲンであることが、利用性が高い点で好ましい。
なお、セルロース、β−(1→3)−グルカン、β−(1→3)−(1→6)−グルカンなども‘グルコース’を構成糖とするものであるが、これらは「β−グルカン」に分類される糖質であり、対応する加水分解酵素などの面で利用性が低いものである。従って、本発明では、これらβ−グルカンを保持する菌体を対象とするものではない。
本発明でα−グルカンを保持する菌体として用いる「細菌」としては、後述する単糖を資化してα−グルカンに変換し保持する性質を有するProteobacteria綱(class Proteobacteria)、Actinobacteria綱(class Actinobacteria)、またはBacilli綱(class Bacilli)に属する細菌であることを要する。
本発明に用いることができる前記細菌としては、Enterobacter属、Arthrobacter属、またはSporosarcina属、に属する細菌を用いることが望ましい。
さらには、Enterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株、であることが望ましい。
なお、α−グルカンを生産する微生物自体は、極めて多岐にわたっており、活性汚泥法によるリン酸の回収工程において問題となる未同定の微生物を含むグリコーゲン蓄積微生物群などの他、多くの細菌が知られているが、‘植物細胞壁成分を加水分解することで得られる単糖を資化性’および‘グリコーゲンの大量蓄積能’の両方を同時に満たすものはこれまでに報告されていない。
「植物細胞壁成分」とは、主に植物細胞壁を構成する多糖類を指すものであり、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンを挙げることができる。本発明においては、特に、低利用性の糖質(単糖)を多く含む、ヘミセルロース、ペクチンを対象にするものである。(なお、‘ヘミセルロース’とは、セルロースとペクチンを除いた植物細胞壁を構成する多糖類の総称である。)
低利用性の糖質(単糖)を多く含む‘ヘミセルロース’としては、キシラン(グルクロノキシラン、グルクロノアラビノキシラン、アラビノキシランを含む。)、グルコマンナン、キシログルカンなどが挙げられる。本発明では、具体的に、キシラン、を用いることができる。
低利用性の糖質(単糖)を多く含む‘ペクチン’としては、ホモガラクツロナン、ラムノガラクツロナン、アラビノガラクタン、アラビナン、ガラクタンなどが挙げられる。
これらの植物細胞壁成分(ヘミセルロース、ペクチン)は、D−キシロース、L−アラビノース、D−ガラクツロン酸、L−ラムノース、D−グルクロン酸、D−ガラクトース、D−マンノースなどの低利用性の糖質(単糖)を構成糖として多量に含有するものである。
なお、特に、‘L−アラビノース’は、前記ヘミセルロースやペクチンの多くの種類に含有され、その含有量も多いものである。また、単子葉植物細胞壁、双子葉植物細胞壁や木質系細胞壁に広く存在する点で利点がある。
本発明において、植物細胞壁成分の原料としては、被子植物、裸子植物、シダ植物、コケ植物、藻類(アオサ藻類、緑藻類、車軸藻類)など、全ての真核性緑色植物の細胞壁成分が利用できる。また、維管束植物においては、根、茎、葉、などあらゆる器官が利用できる。また、資源作物、雑草など、資源としての有用性に関わらず、あらゆるものが利用できるが、好ましくは、低利用性の植物種、器官、収穫物の加工残さなどを用いることが好ましい。
例えば、広葉樹、針葉樹などの木本系植物由来の間伐材や林地残材、穀物の非可食部(茎、もみ殻、芯、根など)、竹、農作物の収穫物由来の加工残渣(例えば、稲わら、麦わら、サトウキビバガス、コーンストーバー、でん粉絞りかす、テンサイ絞りかす、エタノール発酵残渣や蒸留廃液、野菜残渣、ジュース製造工程における浮遊・懸濁物画分、野菜等植物由来の調理廃棄物、など)、食品規格外部分、雑草、双子葉植物茎葉、非維管束植物、淡水で生育する藻や海藻類、クロレラなどの微細藻類、などが挙げられる。
前記植物細胞壁成分は、‘酸’もしくは‘前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素’で処理することによって‘単糖’に加水分解された後、前記細菌に資化させることができる(植物細胞壁成分加水分解工程)。
なお、本加水分解工程において、前記植物細胞壁成分を完全に単糖に加水分解できない場合においても、当該加水分解物が‘細菌自体の酵素により単糖に分解できる大きさの糖’の状態になっていれば、前記細菌に資化させることが可能となる。好ましくは、本工程の加水分解処理により、‘単糖’の状態に加水分解することが望ましい。
また、軽度の‘酸処理’による加水分解を行った後に、さらに‘酵素処理’加水分解を行うことで、熱酸に対する安定性が低いガラクツロン酸などを、効率良く回収することもできる。
ここで、前記植物細胞壁成分の加水分解を行う際の酸処理は、蟻酸、酢酸水溶液、クエン酸などの有機酸水溶液、希塩酸、希硫酸、希硝酸などを用いて行うことができる。具体的には、例えば0.05%〜60%程度、望ましくは0.5%〜10%程度の希硫酸を用いて行うことができる。
なお、当該酸処理を行う場合には、60℃以上の加熱を行うことにより、当該処理を効率化することができる。さらに、酸処理の後に酵素処理を行うことにより、酸処理の条件を穏和にして、酸の使用量やpH変化を抑えることができる。
また、前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素での処理は、キシラナーゼ、β−グルカナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、α−D−ガラクトシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、α−L−グルクロニダーゼ、β−マンノシダーゼ、β−マンナナーゼ、グルコマンナナーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ペクトリアーゼ、エンドアラビナナーゼ、フェルロイルエステラーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、α−L−ラムノシダーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、などの酵素を用いて行うことができる。
これらの酵素群のうち、どの酵素を用いるかは、原料の糖組成や構造特性によるが、例えば、キシランでは、キシラナーゼ、β−D−キシロシダーゼ、α−L−アラビノフラノシダーゼ、α−L−グルクロニダーゼなどを用いることにより、効率的に行うことができる。
当該酵素処理により加水分解を行う際には、‘前記細菌自体の生産する酵素を用いる’方法や、‘他の生物が生産した酵素を添加する’方法などが考えられる。
‘前記細菌自体の生産する酵素を用いる’方法で行う場合、前記細菌に、外来の分解酵素遺伝子を導入し、分解酵素を生産させることができる。
また、‘他の生物が生産した酵素を添加する’方法で行う場合、予め植物細胞壁成分を前処理(例えば、弱アルカリ処理)に供することで、加水分解の効率を向上させることができる。なお、前処理として弱アルカリで処理することで、細胞壁成分を修飾するアセチル基やメチル基などを除去するとともに、リグニンやフェルラ酸などの分子と多糖との結合を切断することができる。
なお、当該工程(植物細胞壁成分加水分解工程)を酵素処理で行う場合においては、下記の‘培養資化工程’と同一の反応系で‘並行複反応’として行うことも可能である。
上記工程後に得られる、植物細胞壁成分から加水分解された‘単糖’は、前記細菌を、当該単糖を含有する培養液中で培養することにより、資化させ(培養資化工程)、‘大量の’α−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることができるものである。
本工程においては、‘前記単糖を含んだ’培養液中で、前記細菌を培養することにより、前記細菌に資化させることができる。
本工程に用いる培養液としては、前記細菌の生育に適したものであれば如何なるものでも用いることができる。例えば、M9培地、YE培地、LB培地、YP培地などを用いることができる。
また、本工程の培養条件としては、前記細菌の生育に適した条件であれば如何なる条件でも行うことができる。例えば、10〜45℃、120〜200回転数/分、8〜72時間、の条件で効率的に行うことができる。
なお、本工程において用いる培地に含有させる基質である‘単糖’の濃度としては、菌体の生育が可能である限り高い濃度で行うことができる。
当該基質濃度は、生育が可能である限り‘高濃度’で行う方が、回収できるα−グルカンの総保持量が増加するので好ましい。しかし、基質濃度を高濃度にするほど、生育効率が低下するとともに、基質あたりのα−グルカンへの変換効率が低下する。
従って、‘基質の有効利用’の観点から見た場合、基質濃度が1%(w/v)前後未満で行うことが望ましく、好ましくは0.5%(w/v)未満、さらに好ましくは0.2%(w/v)以下であることが望ましい。また、回収される総保持量の点をも同時に考慮すると、0.05%(w/v)以上であることが望ましい。
本培養資化工程後の前記細菌は、前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%、好ましくは、20%以上の‘保持率’で、α−グルカンが前記細菌の菌体内に蓄積され保持されたものである。
また、本培養資化工程後の前記細菌は、培養液中に含有させた前記‘単糖’のα−グルカンへの‘変換率’(蓄積されたα−グルカンから遊離したグルコース量/培養前の培養液中のアラビノース量×100)が、10%以上であるものが好ましい。
なお、ここで、α−グルカンの‘保持率’(保持量)および‘変換率’は、α−グルカンを構成する糖質(単糖)であるグルコース量を測定して、その値から換算して計算した値(グルコース換算での値)である。
培養資化工程の終了後、得られた前記菌体は、固液分離して、培養液を除去することで、‘菌体’を固形分として回収することができる。(菌体回収工程)
固液分離の方法としては、如何なる方法でも行うことができるが、例えば、遠心分離によって行うことができる。
以上の工程を経ることで、「植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを‘大量に’保持する菌体」を製造することができる。
このようなα−グルカン保持菌体を製造することにより、溶液中の低利用性の単糖を、利用性の高いα−グルカンに変換して濃縮することが可能となる。
なお、通常、単糖のような低分子糖質を濃縮する際には、加熱蒸発または減圧濃縮を行うか、RO膜などを用いた濾過濃縮が行われるが、本発明の方法は、公知の微生物学研究やバイオプロセスにおいて用いられる方法、例えば自然沈降、遠心分離や膜分離等による回収が可能であることから、基質の変換物が蓄積した菌体を簡単に濃縮・回収することができる。
当該α−グルカン保持菌体は、懸濁液、粉末、菌体ペレット等の形で、あるいは破砕物や加水分解物等の形で、炭水化物給源として食料、飼料または微生物栄養源として利用することができる。
当該菌体に保持されるα−グルカンは、ヒトや動物、微生物のもつ消化酵素によって分解することができるため、極めて利用価値の高いものである。
また、当該菌体に保持されるα−グルカンは、菌体細胞壁は物理的に破壊されるか、菌体死後に自己溶解するか、酵素的あるいは化学的に破壊されることにより、加水分解を効率化させることができる。
食料に用いる際には、本発明に用いる菌が有害な物質を生産しないことが重要となる。また、前述したとおり、糖以外の栄養源としての利用性を考慮することができる。
上記工程を経て得られたα−グルカンを‘大量に’保持する菌体は、保持されたα−グルコースを加水分解することで、「グルコース」を効率よく生成させることができる(グルコース生成工程)。
本グルコース生成工程は、i)前記α−グルカンを加水分解する酵素で処理する方法、もしくは、ii)前記α−グルカンを保持する菌体を希塩酸または希硫酸を用いて加熱処理する方法、により行うことができる。
もしくは、i)とii)を組み合わせて方法で行うことも可能である。
i )‘前記α−グルカンを加水分解する酵素で処理する方法’は、前記α−グルカンを保持する菌体を破壊した後、前記α−グルカンを加水分解する酵素を処理することで行うことができる。
本方法において、前記α−グルカンを保持する‘菌体の破壊’は、例えば、自己溶解処理、リゾチームなどの溶菌酵素処理、界面活性剤処理、酸またはアルカリによる溶解処理、浸透圧処理、60℃以上の高温処理、高圧処理、凍結破砕処理、超音波破砕処理、ビーズミルなどを用いた物理的破砕処理などによる方法を用いることができる。破壊した菌体破壊物は、遠心分離などで沈殿部を回収することで、‘α−グルカン含有画分’として回収することができる。回収した当該画分は、反応液に懸濁溶解することで、酵素反応を行うことができる。
本方法において、前記α−グルカンを加水分解する酵素としては、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α−グルコシダーゼなどを用いることができる。好ましくは、‘α−アミラーゼおよびプルラナーゼ’もしくは‘α−アミラーゼおよびアミログルコシダーゼ’の組合せを同時に用いることが好適であり、さらには、‘α−アミラーゼ、プルラナーゼおよびアミログルコシダーゼ’の3種類の組合せを同時に用いることがより好適である。
酵素の反応条件としては、各酵素の反応に好適な反応液および温度や時間条件で行うことができる。具体的には、‘α−アミラーゼ、プルラナーゼおよびアミログルコシダーゼ’の3種類の組合せを同時に用いる場合、例えば、pH4.5〜6.5付近の酢酸ナトリウムバッファーを用いて、37〜50℃で、30分〜24時間の反応を行うことができる。
ii)‘前記α−グルカンを保持する菌体を希塩酸または希硫酸を用いて加熱処理する方法’は、前記α−グルカンを保持する菌体を希塩酸もしくは希硫酸を用いて60℃以上、好ましく100℃以上で処理することで、行うことができる。
希塩酸または希硫酸の濃度としては、0.01%〜9%程度のものを用いることができる。また、処理時間としては、10分〜120分程度で行うことができる。
本グルコース生成工程を経ることで、前記菌体に保持されていたα−グルカンから、グルコースを生成された溶液(加水分解液)を得ることができる。
当該溶液に含まれるグルコースは、食料、飼料または微生物栄養源として利用することができる。また、さらには、グルコースを原料とする様々な発酵工程、特には、酵母によるエタノール発酵に利用することが可能となる。
酵母によるエタノール発酵は、得られたグルコースを用いる方法であれば、如何なる方法であっても行うことができる。
具体的には、前記グルコース生成工程で得られた加水分解液(好ましくは酵素反応液)を添加して、酵母によりエタノール発酵を行うことで、エタノールを生成することができる。
なお、前記グルコース生成工程で得られた加水分解液が、前記酵素反応液である場合、酵素を失活させた後(例えば70℃以上の加熱処理や酸処理を行った後)に、酵母によるエタノール発酵を行うことが望ましい。
また、前記グルコース生成工程で得られた加水分解液が、希硫酸もしくは希塩酸による処理したものである場合、酸の中和、もしくは、グルコースを分離回収した後に、酵母によるエタノール発酵を行うことが望ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
〔Enterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株について〕
<実施例1> S24株の選抜と同定
(1)菌株の選抜
‘植物細胞壁成分’を酸や酵素により加水分解することで得られる‘単糖’を資化してα−グルカンとして大量に蓄積する能力、を有する微生物の選抜するため、アラビノースを資化してα−グルカンとして大量に蓄積する能力、を有する微生物の選抜を行った。
なお、アラビノースは、‘植物細胞壁成分’を酸や酵素により加水分解した際に、多量に得られる単糖の一つである。
まず、土壌試料0.1mgを1ml滅菌水で懸濁し、適宜希釈して0.2%アラビノースを含むM9寒天培地(M9培地の組成を表1に示す)に撒いて、30℃で一晩培養した。次いで、培養後に寒天培地上で得られたコロニーを、爪楊枝で取って1%アラビノース含んだM9液体培地に植菌し、30℃、120回転/分の条件で14時間培養を行った。
その後、得られた‘菌体培養液’0.1mlを取って、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部である菌体を得た。
この得られた‘菌体’に、0.1mlの9%希硫酸を加え、100℃1時間処理した。その後、NaOHで中和し、15000×gで5分間遠心した。
そして、得られた上清0.01mlを取って、グルコースC−IIテストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いてグルコース量を測定した。このなかで、旺盛に生育し、グルカンを大量に蓄積した菌株(本測定において、グルコース量の測定値の高い菌株)を分離し、S24株とした。
Figure 2010035553
(2)菌体の性質(DNA配列)
分離された菌株S24について電子顕微鏡観察を行ったところ、0.5〜0.6×1〜2μmの桿菌であった。
次に、培養した菌体からゲノム抽出を行い、サーマルサイクラーでプライマー(27F〔配列番号1〕と1522R〔配列番号2〕)を用いて16SrDNAをコードする塩基配列をPCR法により増幅した。このPCR産物について、4つのシーケンス用プライマー(S24-1 seq F01〔配列番号3〕,S24-1 seqF02〔配列番号4〕,S24-1 seqR01〔配列番号5〕,S24-1 seqR02〔配列番号6〕)を用いて、DNAシークエンサーによって解析した結果、S24株の16SrDNAをコードする遺伝子は、下記の配列番号7に示す1533塩基対からなることが確認された。
この配列と、Ribosomal Database Project II(http://rdp.cme.msu.edu/index.jsp)より取得した配列を、配列解析ソフトであるGENETYX-WIN(Genetyx社)を用いて解析した結果、本発明におけるS24株の16SrDNAの部分配列〔配列番号7〕は、Enterobacter cancerogenusの標準株(LMG2693株)の配列と、99.3%の相同性を示した。
この菌について、菌学的性質を詳細に調べたところ、形状(桿菌:0.5〜0.6×1〜2μm)、グラム染色(−)、Voges-Proskauer(VP)テスト(+)、Indole生産性(−)、グルコース発酵性(+)、ラクトース分解性(+)、尿素分解性(−)、DNase(−)、硝酸還元性(+)、クエン酸利用性(+)、リジンデカルボシキラーゼ(−)、ONPG(+)、アルギニンジハイドロラーゼ(+)、オルニチンデカルボキシラーゼ(+)、硫化水素産生性(−)、ゼラチン利用性(−)、グルコース利用性(+)、D−マンニトール利用性(+)、イノシトール利用性(−)、D−ソルビトール利用性(+)、L−ラムノース利用性(+)、ショ糖利用性(+)、D−メリビオース利用性(+)、L−アラビノース利用、などの性質を示すものであった。
このことから、本発明におけるS24株は、Enterobacter属に属する細菌であることが明らかになり、Enterobacter cancerogenus S24とした。
なお、本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6)の特許生物寄託センターに「Enterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)」として寄託されている。
<実施例2> S24株が保持するグルカンの種類の同定
まず、1%アラビノースを含むM9液体培地(組成を表1に示す)20mlに、実施例1で得られた Enterobacter cancerogenus S24株 (FERM P-21598)を接種し、30度、120回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液10mlを、(500ml容三角フラスコに入った)1%アラビノースを含むM9培地100mlに接種し、30℃、120回転/分の条件で14時間培養を行った。
その後、得られた菌体培養液を、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部を水で洗浄して再度遠心分離し、沈殿部である菌体を得た。
この‘菌体’に対して5mlのDMSOを加えて、100℃で1時間処理することで、加水分解を行った。この液に40mlエタノールを加え、4℃で一晩静置した後、10000×g、30分間の遠心分離を行った。
そして、得られた沈澱部を40mlのエタノールで一回洗浄した後、再度遠心分離して沈殿部を回収し、これを60℃で乾燥させることによって、‘グルカン含有画分’を得た。
この‘グルカン含有画分’を、α-アミラーゼ(メガザイム社製)、プルラナーゼ(Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc.製)、アミログルコシダーゼ(メガザイム社製)を用いて分解実験を行ことで、当該グルカンの酵素分解特性を調べ、グルカンの種類を同定した。
まず、この‘グルカン含有画分’0.21mgに対して、50mMのMOPSバッファー(pH7.0)を0.05ml、15Uのα−アミラーゼを加えて、総量0.105mlとして、50℃で30分間反応させたものを、反応液A(‘α−アミラーゼ処理区’)とした。
また、この反応液Aを0.05ml取り分け、50mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を0.05ml、1Uのプルラナーゼを加えて、総量0.105mlとして、50℃で30分間反応させたものを、反応液B(‘α−アミラーゼ+プルラナーゼ処理’)とした。
また、この反応液Aを0.05ml取り分け、200mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)を0.05ml、2Uのアミログルコシダーゼを加えて、総量0.11mlとして、50℃で30分間反応させたものを、反応液C(‘α−アミラーゼ+アミログルコシダーゼ処理’)とした。
また、この反応液Aを0.05ml取り分け、200mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH4.5)を0.05ml、15Uのα−アミラーゼ、2Uのアミログルコシダーゼ、1Uのプルラナーゼを加えて総量0.115mlとして、50℃で30分間反応させたものを、反応液D(‘α−アミラーゼ+アミログルコシダーゼ+プルラナーゼ処理’)とした。
そして、これら反応液A〜Dにおけるグルコース量(当該グルカンが加水分解されて遊離したグルコース量)を、グルコースC−IIテストワコーにより定量した。
また、この‘グルカン含有画分’0.5mgに対して、0.1mlの9%希硫酸を加えて100℃で1時間処理することで加水分解(‘硫酸処理’)を行い、NaOH水溶液で中和した後、15000×gで5分間の遠心分離を行った。そして、得られた上清0.01mlを取って、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、グルカンから遊離する‘総グルコース量’を測定した。
そして、上記、各反応液A〜Dから遊離したグルコース量の測定値について、‘希硫酸処理’で測定された総グルコース量(定量されたグルコース換算のグルカン量)を100とした場合の相対値を計算した。結果を図1に示す。
その結果、図1に示したように、前記した3種類の酵素で同時に処理(反応液D:‘α−アミラーゼ+アミログルコシダーゼ+プルラナーゼ処理’)することにより、‘総グルコース量’と同量のグルコース、が遊離することが明らかになった。
なお、アミラーゼ単独での処理(反応液A)や、アミラーゼとプルラナーゼの組合せでの処理(反応液B)では、グルコース遊離量は極めて少なかった。また、アミラーゼとアミログルコシダーゼの組合せでの処理(反応液C)では、‘総グルコース量’の約7割しか、グルコースが遊離しなかった。
このような酵素分解特性から、S24株が保持するグルカンは、‘α-グルカン’の一種である‘グリコーゲン’であると同定された。
<実施例3> S24株のα−グルカン保持
まず、1%アラビノースを含むM9液体培地(組成を表1に示す)5mlに、実施例1で得られたS24株 (FERM P-21598)を接種し、30度、120回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この‘前培養液’を7000×gで5分間遠心分離し、沈殿部として回収される菌体を10mMリン酸バッファー(pH7.3)で2回洗浄を行って‘沈殿部’を得、10mMリン酸バッファー5mlに懸濁した。
この‘懸濁液’1mlを1%アラビノースを含むM9培地10mlに接種し、30℃、120回転/分の条件で14時間培養を行った。
その後、得られた‘菌体培養液’0.1mlを取って、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部である菌体を得た。
この‘菌体’に0.1mlの9%希硫酸を加え、100℃で1時間処理することで、加水分解を行った。これをNaOH水溶液で中和した後、15000×gで5分間の遠心分離を行った。
そして、得られた上清0.01mlを取って、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、グルコース量を測定した。なお、菌体に蓄積されていたα−グルカンの保持量は、1mlの菌体培養液から検出されたグルコース量(mg)に換算して測定した。また、α−グルカンの保持率を計算した。結果を表2に示す。
Figure 2010035553
その結果、1mlの菌体培養液からグルコース換算で‘0.52mg’のα−グルカンが得られることが分かった。1ml培養液中の乾燥菌体重量は2.65mgであることから、α−グルカンの保持率は菌体乾燥重量の‘19.6%’を占めことが明らかになった。
<実施例4> S24株の糖質の資化性
まず、実施例3で用いた1%アラビノースを含むM9液体培地の代わりに、表3で示す各単糖(L−アラビノース、D−キシロース、D−ガラクトース、D−ガラクツロン酸、L−ラムノース、D−グルコン酸)を炭素源として1%含むM9液体培地を用いたこと以外は、実施例3に記載の方法と同様にして、S24株の前培養および培養(30℃、120回転/分の条件で14時間の培養)を行い、菌体培養液を調製した。
その後、得られた各菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べ、そして、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。結果を表3に示す。
Figure 2010035553
その結果、表に示したように、S24株はL−アラビノース、D−キシロース、D−ガラクトース、L−ラムノース、D−ガラクツロン酸、D−グルコン酸を資化して、菌体乾燥重量の10%を越える保持率でα−グルカンを菌体に蓄積することが分かった。
また、L−アラビノースを炭素源とした時のグルカン保持量やグルカン保持率が一番高いことが分かった。
<実施例5> α−グルカン生産に対する単糖基質の濃度の影響
まず、実施例3に記載の方法と同様にして、S24株の前培養を行い、10mMリン酸バッファー(pH7.3)への懸濁液を調製した。その1mlを、表4に記載の各濃度のアラビノース含むM9培地10mlに接種した。そして、30℃、120回転/分の条件で14時間培養した。
その後、得られた各菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べ、そして、基質である単糖(アラビノース)がα−グルカンへ変換した‘変換率’(蓄積されたα−グルカンから遊離グルコース量/培養前の培養液中のアラビノース量×100)を、グルコース換算で計算した。結果を表4に示す。
Figure 2010035553
その結果、表に示したように、基質であるアラビノース濃度が0.5%の時、アラビノースのα−グルカンへ変換した変換率は‘8.9%’であり、基質であるアラビノース濃度が0.2%の時、変換率は‘22%’であった。
従って、この培養条件において効率的にα−グルカンを菌体に保持させるためには、培養液中における基質である単糖の濃度を、0.5%より低くすること、特には0.2%以下にすること、が有効であることが明らかになった。
<実施例6> キシラン加水分解物のα−グルカンへの変換
ヘミセルロースの一種であるキシラン(Birchwood xylan、Sigma製)の酵素処理による加水分解物を基質とした場合の、S24株によるα−グルカンへの変換および蓄積能を調べた。
まず、実施例3に記載の方法と同様にして、S24株の前培養を行い、10mMリン酸バッファー(pH7.3)で2回洗浄して、沈殿部を得た。
これに、「‘0.2%キシラン’および‘キシラン分解酵素(Bio-Feed Wheat L (0.47mg/ml Novozymes製)0.01ml)’を含んだM9培地」0.5mlを添加して懸濁し、40℃ 、120回転/分の条件で14時間培養した。
なお、前記沈殿部を、‘キシラン分解酵素を含まず’に「‘0.2%キシランを含む’M9培地0.5ml」に懸濁し、同様に培養したものを、対照とした。
その後、得られた各菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。また、実施例5に記載の方法に準拠して、α−グルカンへ変換した‘変換率’を、グルコース換算で計算した。結果を表5に示す。
Figure 2010035553
その結果、‘0.2%キシラン’に加えて‘キシラン分解酵素’を培養液に加えて培養を行うことにより、キシランが加水分解され、この加水分解物を基質として、S24株の菌体内にα−グルカンが蓄積され保持されることが示された。また、当該反応は、並行副反応的に行うことが可能であることが示された。
また、培地中のキシラン(キシランの加水分解物)のα−グルカンへの変換率は12.5%であった。
<実施例7> アラビノキシラン加水分解物のα−グルカンへの変換
小麦から抽出したヘミセルロースの一種であるアラビノキシラン(Megazyme製)の酵素処理による加水分解物を基質とした場合の、S24株によるα−グルカンへの変換および蓄積能を調べた。
まず、実施例3に記載の方法と同様にして、S24株の前培養を行い、10mMリン酸バッファー(pH7.3)で2回洗浄して、沈殿部を得た。
これに、「‘0.2%アラビノキシラン’および‘アラビノキシラン分解酵素(Pectinex Ultra SPL(9500 U/ml, Novozymes)0.01ml、Celluclast 1.5L(700 U/g, sigma)0.01ml、Viscozyme L(Batch KTN02157, Novozymes)0.01ml)’を含んだM9培地」0.5mlを添加して懸濁し、40℃、120回転/分の条件で14時間培養した。
なお、前記沈殿部を、‘アラビノキシランを含まず’に「‘前記アラビノキシラン分解酵素を含む’M9培地0.5ml」に懸濁し、同様に培養したものを、対照とした。
その後、得られた各菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。また、実施例5に記載の方法に準拠して、α−グルカンへ変換した‘変換率’を、グルコース換算で計算した。結果を表6に示す。
Figure 2010035553
その結果、‘アラビノキシラン’に加えて‘前記分解酵素’を培養液に加えて培養を行うことにより、アラビノキシランが加水分解され、この加水分解物を基質として、S24株の菌体内にα−グルカンが蓄積され保持されることが示された。また、当該反応は、並行複反応的に行うことが可能であることが示された。
また、培地中のアラビノキシラン(アラビノキシランの加水分解物)のα−グルカンへの変換率は23%であった。
<実施例8> アラビナン加水分解物のα−グルカンへの変換
ペクチンの一種であるアラビナン(Megazyme製)の加水分解物を基質とした場合の、S24株によるα−グルカンへの変換および蓄積能を調べた。
まず、2%アラビナン(Megazyme製)を含む2%硫酸水溶液を、100℃で1時間加熱処理した後、CaCOでpH6.0に中和した。そして、10000×gで10分間遠心分離した後、得られた上清を0.2μmフィルターでフィルター減菌し、‘アラビナン酸処理物を含む溶液(最終糖濃度2%)’を得た。
次いで、実施例3に記載の方法と同様にして、S24株の前培養を行い、10mMリン酸バッファー(pH7.3)で2回洗浄して、沈殿部を得た。
これに、「前記‘アラビナン加水分解物を含む溶液(最終糖濃度2%)’および‘ペクチン分解酵素(Pectinex Ultra SP-L(9500 U/ml, Novozymes)0.01ml)’を含んだM9培地」0.5mlを添加して懸濁し、40℃ 、120回転/分の条件で14時間培養した。
なお、「‘(酸処理による加水分解を行わなわずに前記フィルター滅菌した)2%アラビナン水溶液’および‘ペクチン分解酵素(Pectinex Ultra SP-L(9500 U/ml, Novozymes)0.01ml)’を含んだM9培地」0.5mlを添加して懸濁し、同様に培養したものを、対照とした。
その後、得られた各菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。また、実施例5に記載の方法に準拠して、α−グルカンへ変換した‘変換率’を、グルコース換算で計算した。結果を表7に示す。
Figure 2010035553
その結果、‘2%アラビナン’に加えて‘ペクチン加水分解酵素’を培養液に加えて培養を行う場合においては、アラビナンを前もって硫酸処理することが好適であることが示された。当該流酸処理を行うことにより、アラビナンが顕著に加水分解され、この加水分解物を基質としてS24株の菌体内にα−グルカンが蓄積され保持されることが示された。
また、培地中のアラビナン(アラビナンの加水分解物)のα−グルカンへの変換率は20.5%であった。
<実施例9> 低利用性単糖からのエタノールの生成
まず、1%アラビノースを含むM9液体培地(組成を表1に示す)100mlに、実施例1で得られたS24株 (FERM P-21598)を接種し、30度、120回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液(全量)を、(5000ml容三角フラスコに入った)1%アラビノースを含むM9培地1000mlに接種し、30℃、120回転/分の条件で14時間培養を行った。
その後、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べ、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。
この菌体のα−グルカン保持率は、菌体乾燥重量あたり‘11.4%’であった。
次に、得られた菌体培養液200mlを、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部を水で洗浄して再度遠心分離し、沈殿部である菌体を得た。
次いで、この‘菌体’に対して、50mMのMOPSバッファー(pH7.0)を5mlと、α−アミラーゼ(メガザイム社製)を0.15mlと、を加えて、100℃で15分間反応させた。
次に、この反応液に、100mM酢酸ナトリウム(pH5.5)を5mlと、プルラナーゼ(Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc.製)を0.15mlと、アミログルコシダーゼ(メガザイム社製)を0.15mlと、を加え、50℃で1時間反応させた。この反応液を凍結した後、減圧濃縮を行い、総液量を1mlとしたものを‘酵素反応液’とした。
なお、この‘酵素反応液’におけるグルコース量(当該菌体に蓄積されていたα−グルカンが加水分解されて遊離したグルコース量)を、グルコースC−IIテストワコーにより定量した。
次に、この‘酵素反応液’を100℃で1時間加熱し、酵母Saccharomyces cerevisiaeにより発酵実験を行った。
まず、YPD培地で一晩前培養した酵母S. cerevisiaeを(NBRC224)を、7000×gで5分間遠心分離し、10mMリン酸バッファー(pH7.3)で2回洗浄を行って、沈殿部を得た。
この酵母の沈殿部に、前記‘酵素反応液’0.5mlを、最終OD(光路長1cmのセルを用いた時の600nmの濁度)が1.0になるように添加して懸濁し、30℃、120回転/分の条件で24時間培養することで、エタノール発酵を行った。
なお、得られた‘エタノール発酵液’中に生成されたエタノールは、HPLC(LC Prominence、島津製作所)を用いて、表8に示す条件で分析することで、定量した。また、基質である培地中の単糖がエタノールへ変換された‘変換率’を計算した。結果を表9に示す。
Figure 2010035553
Figure 2010035553
その結果、上記方法で得られたS24株菌体の‘酵素反応液’を原料にして、酵母発酵を行うことで、エタノールが生産されることが示された。また、前記‘酵素反応液’に含まれていた(α−グルカンが酵素分解された)グルコースの74%がエタノールに変換されることが示された。
〔Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株について〕
<実施例10> 4P−01−A1株の選抜と同定
(1)菌株の選抜
上記菌株の他に、アラビノースを資化してα−グルカンとして大量に蓄積する能力、を有する微生物の選抜を行った。
まず、土壌試料0.1mgを1ml滅菌水で懸濁し、適宜希釈して0.1%アラビノースを含んだ0.2×YP(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract,pH 6.8)の2%寒天培地に撒いて、30℃で一晩培養した。次いで、培養後に寒天培地上で得られたコロニーを、爪楊枝で取って、96穴のプレートを用いて、0.6mlの1%アラビノースを含んだ0.2×YP液体培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract,pH 6.8)に植菌し、30℃、120回転/分の条件で24時間培養を行った。
その後、得られた‘菌体培養液’0.1mlを取って、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部である菌体を得た。
この得られた‘菌体’に、0.05mlのBugBuster protein extraction reagent(Novagen)を加え、30℃、15分間で処理し、細胞分解を行った。その後0.05mlの酵素液「‘0.25μl Liquozyme SC (Amylase) (Novozyme)’と‘0.25μl Spirizyme Fuel (AMG) (Novozyme)’を含んだ50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)」を加え、50℃で1時間処理した。酵素反応後、5000×g、10分間遠心し、上清画分10μlを取って、グルコース量を測定し、α−グルカンを大量蓄積する菌の選抜を行った。その中からα−グルカンを大量蓄積する菌株を分離し、4P−01−A1株とした。
(2)菌体の性質(DNA配列)
分離された菌株4P−01−A1について、培養した菌体からゲノム抽出を行い、サーマルサイクラーでプライマー(27F〔配列番号1〕と1522R〔配列番号2〕)を用いて16SrDNAをコードする塩基配列をPCR法により増幅し、配列の解析を行った。
そして、次の4つのプライマー(27F〔配列番号1〕,1522R〔配列番号2〕,800R〔配列番号8〕,800R-F〔配列番号9〕)を用いたことを除いて、実施例1と同様にしてDNAシークエンサーによって解析した結果、4P−01−A1株の16SrDNAをコードする遺伝子は、下記の配列番号10に示す1472塩基対からなることが確認された。
この配列と、DDBJ−16S rRNAのデータベース中の配列とをBLAST検索により比較解析した結果、本発明における4P−01−A1株の16SrDNAの部分配列〔配列番号10〕は、Arthrobacter nitroguaiacolicus (AJ512504) の標準株(CCM4924株)の配列と、99、2%の相同性を示した。
このことから、本発明における4P−01−A1株は、Arthrobacter属に属する細菌であることが明らかになった。
なお、本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6)の特許生物寄託センターに「Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)」として寄託されている。
<実施例11> 4P−01−A1株が保持するグルカンの種類の同定
1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)5mlに、実施例10で得られた4P−01−A1株 (FERM P-21807)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
得られた前培養液を10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄した後、1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)、100mlで30℃、250回転/分で24時間培養して、菌体培養液を調製した。
この得られた菌体培養液30mlを、遠心で集菌し、1mlの50mM MOPS(pH7.0)で100℃10分間処理し、細胞の溶菌を行った。そして、20000×g、5分間遠心した後、上清をグルカン含有画分として回収した。このグルカン含有画分に対して、実施例2に記載の方法と同様にして、グルカンの種類を同定した。結果を図2に示す。
図に示したように、アミラーゼ単独での処理(反応液A)では、グルコース遊離量は極めて少なかった。また、アミラーゼとプルラナーゼの組合せでの処理(反応液B)では、‘総グルコース量’の約7割、アミラーゼとアミログルコシダーゼの組合せでの処理(反応液C)では、‘総グルコース量’の約4割しか、グルコースが遊離しなかった。
それに対して、3種類の酵素で同時に処理(反応液D:‘α−アミラーゼ+アミログルコシダーゼ+プルラナーゼ処理’)することにより、‘総グルコース量’と同量のグルコース、が遊離することが明らかになった。
このような酵素分解特性から、4P−01−A1株が保持するグルカンは、‘α-グルカン’の一種である‘グリコーゲン’であると同定された。
<実施例12> 4P−01−A1株のα−グルカン保持
1%アラビノースを含む0.2×YP液体培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract,pH 6.8)5mlに、実施例10で得られた4P−01−A1株 (FERM P-21807)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液0.2mlを、1%アラビノースを含むYP液体培地10mlに接種し、30℃、250回転/分の条件で24時間培養を行った。
その後、得られた菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。結果を表10に示す。
Figure 2010035553
その結果、1mlの菌体培養液からグルコース換算で‘0.49mg’のα−グルカンが得られることが分かった。そして、α−グルカンの保持率は菌体乾燥重量の‘19.5%’を占めことが明らかになった。
<実施例13> 4P−01−A1株の糖質の資化性
1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)5mlに、実施例10で得られた4P−01−A1株 (FERM P-21807)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液を10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄した後、0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract, 1%の各種糖質を含んだ培地10mlで 30℃、250回転/分で24時間培養を行った。
その後、得られた菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。結果を表11に示す。
Figure 2010035553
その結果、表に示したように、4P−01−A1株は、セロビオース、L−アラビノース、D−キシロース、D−ガラクツロン酸、D−グルコン酸、L−ラムノース、を資化して、菌体乾燥重量の13〜24.8%の保持率でα−グルカンを菌体に蓄積することが分かった。
また、L−アラビノースを炭素源とした時のグルカン保持率が一番高いことが分かった。
〔Sporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株について〕
<実施例14> N52株の選抜と同定
(1)菌株の選抜
上記菌株の他に、アラビノースを資化してα−グルカンとして大量に蓄積する能力、を有する微生物の選抜を行った。
まず、土壌試料0.1mgを1ml滅菌水で懸濁し、適宜希釈して0.1%アラビノースを含んだYP(2% Tryptone, 1% Yeast extract)の2%寒天培地に撒いて、30℃で一晩培養した。次いで、培養後に寒天培地上で得られたコロニーを、爪楊枝で取って、0.1%アラビノースを含んだYP液体培地(2% Tryptone, 1% Yeast extract)に植菌し、30℃、120回転/分の条件で24時間培養を行った。
その後、得られた‘菌体培養液’0.1mlを取って、7000×gで5分間遠心分離して培地を除去した後、沈殿部である菌体を得た。
この得られた‘菌体’に、0.1mlの9%希硫酸を加え、100℃で1時間処理した。その後NaOHで中和し、15000×gで5分間遠心した。
得られた上清0.01mlを取って、グルコースC−IIテストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いてグルコース量を測定した。このなかで、生育が早く、グルカンを蓄積した菌株(本測定においてグルコース量の多い菌株)を分離し、N52株とした。
(2)菌体の性質(DNA配列)
分離された菌株N52について、培養した菌体からゲノム抽出を行い、サーマルサイクラーでプライマー(27F〔配列番号1〕と1522R〔配列番号2〕)を用いて16SrDNAをコードする塩基配列をPCR法により増幅し、配列の解析を行った。
そして、次の6つのプライマー(27F〔配列番号1〕,1522R〔配列番号2〕,N52-F01〔配列番号11〕,N52-F02〔配列番号12〕,N52-R01〔配列番号13〕,N52-R02〔配列番号14〕)を用いたことを除いて、実施例1と同様にしてDNAシークエンサーによって解析した結果、N52株の16SrDNAをコードする遺伝子は、下記の配列番号15に示す1544塩基対からなることが確認された。
この配列と、DDBJ−16S rRNAのデータベース中の配列とをBLAST検索により比較解析した結果、本発明におけるN52株の16SrDNAの部分配列〔配列番号15〕は、Sporosarcina ginsengisoli の標準株(Gsoil 1433株)の配列と、99.7%の相同性を示した。
このことから、本発明におけるN52株は、Sporosarcina属に属する細菌であることが明らかになり、Sporosarcina sp. N52とした。
なお、本菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市東1−1−1つくばセンター中央第6)の特許生物寄託センターに「Sporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)」として寄託されている。
<実施例15> N52株が保持するグルカンの種類の同定
1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)5mlに、実施例14で得られたN52株(P−21808)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液を10mMリン酸緩衝液(pH 7.3)で洗浄した後、2% Tryptone, 1% Yeast extract, 1%アラビノースよりなる培地100ml中で、30℃、250回転/分で24時間培養した。
得られた菌体培養液35mlを遠心で集菌し、1mlの50mM MOPS(pH 7.0)で100℃10分間処理し、細胞の分解を行った。そして、20000×gで5分間遠心した後、上清をグルカン含有画分として回収した。このグルカン含有画分に対して実施例2に記載の方法と同様にして、グルカンの種類を同定した。結果を図3に示す。
図に示したように、アミラーゼ単独での処理(反応液A)では、グルコース遊離量は極めて少なかった。また、アミラーゼとプルラナーゼの組合せでの処理(反応液B)では、‘総グルコース量’の約7割、アミラーゼとアミログルコシダーゼの組合せでの処理(反応液C)では、‘総グルコース量’の約2割しか、グルコースが遊離しなかった。
それに対して、3種類の酵素で同時に処理(反応液D:‘α−アミラーゼ+アミログルコシダーゼ+プルラナーゼ処理’)することにより、‘総グルコース量’とほぼ同量のグルコース、が遊離することが明らかになった。
このような酵素分解特性から、N52株が保持するグルカンは、‘α-グルカン’の一種である‘グリコーゲン’であると同定された。
<実施例16> N52株のα−グルカン保持
1%アラビノースを含むYP液体培地(2% Tryptone, 1% Yeast extract)5mlに、実施例14で得られたN52株(P−21808)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液0.2mlを、1%アラビノースを含むYP液体培地10mlに接種し、30℃、250回転/分の条件で24時間培養を行った。
その後、得られた菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。結果を表12に示す。
Figure 2010035553
その結果、1mlの菌体培養液からグルコース換算で2.39mgのα−グルカンが得られることが分かった。1ml培養液中の乾燥菌体重量は8.58mgであることから、α−グルカンの保持率は菌体乾燥重量の27.9%を占めことが明らかになった。
<実施例17> N52株の糖質の資化性
1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)5mlに、実施例14で得られたN52株(P−21808)を接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。
この前培養液を、10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄した後、0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract, そして1%の各種糖質を含んだ培地10mlで、30℃、250回転/分で24時間培養した。
その後、得られた菌体培養液について、実施例3に記載の方法と同様にして、菌体培養液1mlあたりのα−グルカンの保持量をグルコース量に換算して調べた。また、菌体乾燥重量あたりのα−グルカンの保持率を調べた。結果を表13に示す。
Figure 2010035553
その結果、表に示したように、N52株は、セロビオース、L−アラビノース、D−キシロース、D−ガラクツロン酸、D−グルコン酸、L−ラムノース、を資化して、菌体乾燥重量の26〜36%の保持率でα−グルカンを菌体に蓄積することが分かった。
また、L−アラビノース、D−キシロース、D−グルコン酸を炭素源とした時のグルカン保持率が特に高いことが分かった。
<実施例18> N52株によるカンショ蒸留残渣の処理
カンショをエタノール発酵した後の残渣を用いて、α−グルカンへの変換を行った。
カンショ(品種:ダイチノユメ)3kgを粉砕後、ジェットクッカー(株式会社ノリタケエンジニアリング(NCP-250/20-3/3))で液化処理し、ジャーファーメンター(5L容)を用いて、30℃、pH5の条件で5日間、酵母S. cerevisiaeを(NBRC224)株を用いてエタノール発酵を行った。なお、その際の培地組成は、Srichuwong S. et al., 2009, Biomass and Bioenrgy, 33: 890-898. において、バレイショで最適化された組成を適用した。
その後、得られたもろみ全体を、EYELA社製溶媒再生装置(SR-2000)を用いて、99℃で蒸留を行い、蒸留残渣のエタノール濃度を0.18%とした。この蒸留残渣(50ml)を15000rpmで10分間遠心した後、上清液を0.2μmのフィルターに通して滅菌することにより、‘蒸留廃液’を得た。
次いで、実施例14で得られたN52株を、1%アラビノースを含む0.2×YP培地(0.4% Tryptone, 0.2% Yeast extract)10mlに接種し、30℃、250回転/分の条件で一晩振とう培養することで前培養を行った。その後、菌体を10mMリン酸緩衝液(pH7.3)で洗浄し、得られた洗浄菌体を少量の滅菌水に懸濁し、濁度(OD600)の値が120の‘菌体懸濁液’を得た。
そして、前記カンショ由来の蒸留廃液50mlを、200mlの三角フラスコに移した後、添加後OD600が1になるよう前記N52の菌体懸濁液を添加して菌体を接種し、30℃、250回転/分で72時間培養した。
なお、培養途中でサンプリングし、菌体乾燥重量及び菌体内蓄積したα−グルカン量を、実施例3に記載の方法と同様にして測定した。
また、培養液中に含まれる主要な単糖と二糖の量については、イオンクロマトグラフィー〔Dionex ICS-3000(Dionex Corp., Sunnyvale, CA)、カラム:Carbo-Pac PA1、カラム温度:20度、検出器:パルスド・アンペロメトリック検出器、流速:1ml/min.〕により行った。そして、単糖はについては水で30分間分離を行い、また、二糖及びGalAについては、150mM NaOHと150mM NaOH-185 mM sodium acetateでグラジジェントをかけて15分間分離を行った。そして、カラムの洗浄は、150mM NaOH-500mM sodium acetateで15分、カラムの再生は150 mM NaOH,12分行った。
‘菌体乾燥重量’と‘α−グルカン保持量’の測定結果を図4に示す。
また、蒸留廃液(培養液)中に含まれる主要な残存単糖と二糖の量の測定結果を図5に示す。(なお、図5において、「GalA」はガラクツロン酸、「Cellobiose」はセロビオース、「Gal」はガラクトース、「Ara」はアラビノース、「Glc」はグルコース、「Rha」はラムノース、「Xyl」はキシロース、「Fructose」はフルクトース、「Man」はマンノース、を示す。)
また、カンショ蒸留廃液からのグルカンの生産工程に係る数値データをまとめた結果を表14に示す。
Figure 2010035553
その結果、図4に示したとおり、培養時間の経過とともに菌体乾燥重量と菌体内グルカン保持量は増大し、培養48時間後に最大になった。また、図5が示すように、培養48時間までには、カンショ由来の蒸留廃液に含まれていた主な残存単糖と二糖は、完全に資化されたことが明らかとなった。
これらの結果から、カンショ蒸留廃液からのグルカンの生産工程において、蒸留廃液に含まれた主な残存単糖と二糖(9.3mg/ml)は、N52菌株により資化され、4.3mg/mlのグルカンが生産されることが示された。また、菌体のグルカン保持率は32%であることが分かった。
本発明は、生物系産業において副生する資源の有効利用技術に関するものである。利用性の低い糖質等の資源、特に植物細胞壁成分を、多くの生物がエネルギー源として利用できるα−グルカンに変換することにより、資源の有効利用が可能となるのみならず、食料、飼料や発酵産業における新たな可能性を提供することができる。
さらに本発明は、α−グルカンの蓄積機構の解明を目的とした代謝学研究を推進するとともに、微生物育種研究や遺伝子組み換え技術を活用した分子育種研究を加速することにより、α−グルカン生産性の向上が実現する。
また、廃液処理工程において、BODを低下させながら、グルカン保持菌体を得ることが可能となる。
FERM P−21598
FERM P−21807
FERM P−21808

Claims (17)

  1. 植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって単糖に加水分解し、;当該単糖を含有する培養液中で、前記単糖を資化してα−グルカンに変換し保持する性質を有するProteobacteria綱、Actinobacteria綱、またはBacilli綱に属する細菌を培養して、前記単糖を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  2. 前記単糖が、D−キシロース、L−アラビノース、D−ガラクツロン酸、L−ラムノース、D−グルクロン酸、D−ガラクトース、および、D−マンノースのうちの、少なくともいずれか一つ以上のものである、請求項1に記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  3. 前記培養液中における前記単糖を、グルコース換算で当該単糖量の10%以上の量のα−グルカンに変換する、請求項1又は2のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  4. 前記培養液中における前記単糖の濃度が、0.05%(w/v)以上であり0.5%(w/v)未満である、請求項1〜3のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  5. 植物細胞壁成分を、酸もしくは前記植物細胞壁成分を加水分解する酵素で処理することによって加水分解し、当該加水分解物を含有する培養液中でProteobacteria綱、Actinobacteria綱、またはBacilli綱に属する細菌を培養して、前記加水分解物を資化させることにより、;前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを、前記細菌の菌体内に蓄積させることを特徴とする、植物細胞壁成分から変換されたα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  6. 前記細菌が、土壌から選抜するにあたり、前記単糖を資化することにより前記細菌の菌体乾燥重量あたり10%以上のα−グルカンを前記細菌の菌体内に蓄積させる性質、を指標として、選抜されたものである、請求項1〜5のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  7. 前記細菌が、Enterobacter属、Arthrobacter属、またはSporosarcina属に属する細菌である、請求項1〜6のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  8. 前記細菌が、Enterobacter cancerogenus S24 (FERM P-21598)株、Arthrobacter sp. 4P-01-A1 (FERM P-21807)株、またはSporosarcina sp. N52 (FERM P-21808)株、あるいはそれらの変異株である、請求項1〜7のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  9. 前記植物細胞壁成分が、ヘミセルロース及び/又はペクチンを主成分とするものである、請求項1〜8のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  10. 前記植物細胞壁成分が、キシランを主成分とするものである、請求項1〜9のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  11. 前記α−グルカンが、グリコーゲンを主成分とするものである、請求項1〜10のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  12. 前記細菌を培養した後、固液分離して菌体を固形分として回収する、請求項1〜11のいずれかに記載のα−グルカンを保持する菌体の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法により得られた、α−グルカンを保持する菌体。
  14. 請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体を破壊した後、α−グルカンを、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α−グルコシダーゼのうち少なくとも一つ以上の酵素で処理することによって、グルコースに加水分解する、グルコースの製造方法。
  15. 請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体を、希塩酸または希硫酸を用いて60℃以上の温度で処理することによって、α−グルカンをグルコースに加水分解することを特徴とする、グルコースの製造方法。
  16. 請求項14又は15のいずれかに記載の製造方法により得られたグルコースを、エタノール発酵の原料として用いることを特徴とする、エタノールの製造方法。
  17. 請求項13に記載のα−グルカンを保持する菌体に含まれるα−グルカン、もしくは、請求項14又は15のいずれかに記載の製造方法により得られたグルコース、を含有する、食料、飼料または微生物栄養源。
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