JP2010032059A - 高精度すべり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精度を有しつつ、潤滑性に優れた高精度すべり軸受を提供することを目的とする。
【解決手段】軸受外周部として金属を用い、この軸受外周部の摺動部に樹脂材料をインサート成形して樹脂層を形成すると共に、この軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に細かい凹部を設け、上記樹脂層における(樹脂材料の線膨張係数)×(樹脂層の肉厚)を0.15以下とし、上記凹部が占める見かけ面積の合計を、上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分の面積の25〜95%とする。
【選択図】なし
【解決手段】軸受外周部として金属を用い、この軸受外周部の摺動部に樹脂材料をインサート成形して樹脂層を形成すると共に、この軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に細かい凹部を設け、上記樹脂層における(樹脂材料の線膨張係数)×(樹脂層の肉厚)を0.15以下とし、上記凹部が占める見かけ面積の合計を、上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分の面積の25〜95%とする。
【選択図】なし
Description
この発明は、高精度かつ摺動特性に優れたすべり軸受材料に関する。
従来から、回転精度の高いすべり軸受として、焼結金属(多孔質)に油を含浸させたすべり軸受が知られている。このすべり軸受は、焼結金属系の多孔質材料に油を含浸させて使用する場合、油を継続的に摺動界面に供給することが可能であるため、摩擦力を低くすることができる。このすべり軸受の相手材は、一般に金属材料の場合が多く、線膨張の相違によるダキツキ、抜け等の心配がない。また、この金属材料は加工精度を高めることが可能であり、回転精度が要求される個所への使用が適している。
また、上記以外の自己潤滑性を有するすべり軸受としては、樹脂にPTFEや黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤配合したり、潤滑油やワックスを配合したものが知られている。
しかしながら、金属系の多孔質材料に油を含浸させてすべり軸受として使用した場合、相手材がアルミ材等の軟質材の場合は、相手材を摩耗させる恐れがある。また、潤滑油の供給が途切れた場合、一時的に金属接触が発生するため、異音が発生し、急速に摩擦が進行する恐れがある。さらに、荷重が極端に大きい場合やすべり速度が低く油膜ができない場合にも金属接触が生じやすい。
一方、すべり軸受の材料が摺動特性のよい樹脂材料を用いると、軟質材相手でも相手材を攻撃しない。しかし、一般的に樹脂材料は金属材料と比較して線膨張係数、吸水率が大きく、使用温度領域が広い場合、低温時の使用では樹脂すべり材の収縮によりダキツキを発生したり、高温時の使用では、外径側ハウジングからの形状拘束を受けて、体積膨張が内径側へ逃げて、内径寸法が小さくなり軸へのダキツキが発生する。このため、樹脂軸受の場合、必然的に軸受の隙間を大きくとる必要があり、回転精度が悪化するという問題を有する。また、樹脂すべり軸受が吸水すれば、体積膨張が発生するため、軸との隙間が変化して好ましくないという問題もある。
この発明は、上記のような問題に対処するためになされたものであり、高精度を有しつつ、潤滑性に優れた高精度すべり軸受を提供することを目的とする。
この発明は、軸受外周部として金属を用い、この軸受外周部の摺動部に樹脂材料をインサート成形して樹脂層を形成すると共に、この軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に細かい凹部を設け、上記樹脂層における(樹脂材料の線膨張係数)×(樹脂層の肉厚)を0.15以下とし、上記凹部が占める見かけ面積の合計を、上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分の面積の25〜95%とすることにより、上記課題を解決したのである。
軸受外周部の摺動部に所定の樹脂層を形成したので、樹脂層の温度変化による寸法変化が抑えられる。このため、高精度を有しつつ、潤滑性に優れたものとなる。
また、軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に所定の細かい凹部を設けたので、樹脂層を形成する際、この細かい凹部に樹脂が入り込むので、アンカー効果によって、軸受外周部と樹脂層との密着性を向上させることができる。
この発明にかかる高精度すべり軸受は、軸受外周部の摺動部に所定の樹脂層を形成させるので、樹脂層の温度変化による寸法変化が抑えられる。このため、高精度を有しつつ、潤滑性に優れたものとなる。
さらに、摺動部に所定の樹脂層を形成させるので、軟質相手材を攻撃したり、異音の発生を抑えることが可能となる。
また、軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に所定の細かい凹部を設けることができる。これにより、樹脂層を形成する際、この細かい凹部に樹脂が入り込むので、アンカー効果によって、軸受外周部と樹脂層との密着性を向上させることができる。
この発明にかかる高精度すべり軸受は、軸受外周部として金属を用い、この軸受外周部の摺動部に樹脂材料をインサート成形して樹脂層を形成したものである。
上記軸受外周部とは、すべり軸受の外周部を構成する筒状の部材であり、摺動部を有する部材である。この摺動部とは、ラジアル方向の荷重を支持するための内径側摺動部をいい、また、スラスト方向にも荷重を支持する場合には、上記の内部摺動部だけでなく、端面摺動部も含む。
上記軸受外周部を構成する金属は、上記樹脂層との接合性の点から細かい凹部を有する金属を用いるのが好ましく、焼結金属がより好ましい。特に、焼結金属を用いると、焼結金属が有する凹部が内部で連通して連通孔を形成しているので、樹脂材料をインサート成形する際に、上記連通孔に樹脂が浸入し、上記の軸受外周部と樹脂層とがより強固に保持される。
この焼結金属の材質としては、Cu系、Fe−Cu系等があげられ、成分としてC、Zn、Sn等を含んでもよい。また、成形性や離型性を向上させるためバインダーを少量添加してもよい。さらに、アルミニウム系でCu、Mg、Si等を配合した材料や金属−合成樹脂で鉄粉をエポキシ系の合成樹脂で結合させた材料でもよい。さらにまた、上記樹脂層との密着性を向上させるため、成形を阻害しない程度であれば表面処理を行ったり、接着剤等を使用することも可能である。
なお、上記焼結金属は、加圧成形、脱脂、焼成、サイジングの各工程を経て製造することができる。
上記軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分には、細かい凹部が設けられる。樹脂層を形成する際、この細かい凹部に樹脂が入り込むので、アンカー効果によって、軸受外周部と樹脂層との密着性を向上させることができる。
上記凹部が占める見かけ面積の合計は、上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分の面積の20〜95%がよく、40〜90%が好ましい。20%より少ないと、アンカー効果が発揮できず、容易に樹脂が剥がれる場合がある。一方、95%を超えると、寸法精度及び強度を保持できなくなる場合がある。なお、上記見かけ面積とは、上記の軸受外周部の表面部分を上方から見たときに、凹部が占める面積をいう。
上記凹部の大きさは、5〜300μmがよく、10〜250μmが好ましい。上記の凹部の大きさとは、図1(a)〜(d)に示すように、絶対最大長(凹部の周囲に存在する任意の2点の最大長さ)を表す。大きさが5μm未満だと、溶融樹脂が容易に孔に入り込むことができないため、十分なアンカー効果を発揮することができない。一方、大きさが300μmを超えると寸法精度が出難くかつ機械的強度も極端に低下する為好ましくない。上記凹部の大きさは、金属粒子の粒子径や焼結金属の密度、あるいはサイジング金型の寸法等を調整することで調整できる。
上記凹部の深さは、3〜500μmがよく、3〜300μmが好ましい。3μm未満だと、溶融樹脂が容易に孔に入り込むことができないため、十分なアンカー効果を発揮することができない場合がある。一方、500μmより大きいと、寸法精度がでにくく、かつ機械的強度も極端に低下する場合がある。
上記凹部の形成は、例えば、機械加工やサンドブラスト、エッチング、圧力による凹凸の転写等で所定の表面形状にすることができる。また、コスト面を考慮すれば、焼結金属を利用することが好ましい。焼結金属は、金属粒子の粒子径や焼結金属の密度、あるいはサイジング金型の寸法、成形圧力、焼成温度等を調整することによって金属粒子間の隙間に起因する凹部の大きさや深さ、割合を最適化することができ、後加工なしで所定の表面形状を得ることができ、コスト的に安価となる。
上記の樹脂層は、樹脂材料を上記軸受外周部の摺動部表面にインサート成形して形成される。この樹脂材料は、樹脂層としたときに摺動性に優れる材料が好ましく、固体潤滑材や潤滑油を配合することも可能である。上記樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等があげられる。
上記固体潤滑材としては、ポリテトラフルオロエチレン、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化硼素、二硫化タングステン等一般的な固体潤滑材、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、炭化水素、エステル、ポリグリコール、シリコーン油、フッ素化油、等の合成油等、一般に使用されている潤滑油等の油があげられる。また、これらの油を焼結金属製の軸受外周部に含浸し、樹脂層を介して摺動面に滲出させて潤滑させることも可能である。含浸は、真空含浸等の方法で行うことができる。
上記樹脂材料は、摩擦・摩耗特性を改善させたり、線膨張係数を小さくするために、適当な充填材を添加することができる。例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ポリエステル繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、金属繊維、アスベスト、石英ウール等の繊維類やこれらを布状に編んだもの、炭酸カルシウムやタルク、シリカ、クレー、マイカ等の鉱物類、硼酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー類、カーボンブラック、黒鉛、ポリイミド樹脂やポリベンゾイミダゾール等の各種耐熱性樹脂等があげられる。さらに、潤滑性組成物の熱伝導性を向上させる目的で、カーボン繊維、金属繊維、黒鉛粉末、酸化亜鉛等を添加しても良い。さらにまた、炭酸リチウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、リン酸リチウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩等を配合しても良い。
なお、この発明の効果を阻害しない配合量で一般合成樹脂に広く適用しえる添加剤を併用しても良い。例えば離型剤、難燃剤、帯電防止剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、着色剤等の工業用添加剤を適宜添加しても良く、これらを添加する方法も特に限定されるものではない。
更に、この発明の樹脂組成物の潤滑性を損なわない限り、中間製品または最終製品の形態において、別途、たとえばアニール処理等の化学的または物理的な処理によって性質改善のための変性が可能である。
上記樹脂層における、(樹脂材料の線膨張係数(単位:℃-1))×(樹脂層の肉厚(単位:μm))は、0.15以下がよく、0.13以下が好ましく、0.10以下がさらに好ましい。上記値が0.15より大きい場合、樹脂部の肉厚又は膨張も大きくなる。このとき、樹脂部の外径側は金属で拘束されていることから、金属の膨張分以上は膨張できず、内径側へ膨張し、内径寸法が小さくなる。その結果、隙間が減少し、初期の隙間設定によっては、温度上昇により軸へのダキツキが発生する可能性がある。また、過度の隙間の変動は、トルク変動を引き起こすため好ましくなく、回転精度の点からは隙間は小さいほうが好ましい。また、吸水による寸法変化も大きくなり、過度の隙間の変動が生じる場合がある。
また、成形可能な樹脂層の厚みは、50μm位であり、これより薄いと形成が困難となる。従って、樹脂膨張係数×肉厚は0.003以上が必要であり、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.015以上必要である。
この発明にかかる高精度すべり軸受は、金型内に軸受外周部を配置し、摺動部となる内径面又は端面、及び、必要に応じて、外径面に上記樹脂材料をインサート成形することにより製造することができる。具体的には、金型内に軸受外周部をあらかじめ投入し、フィルムゲートやサイドゲートを利用して軸受外周部とコアピンなどの金型部品の隙間に溶融樹脂を注入することで製造される。
この発明にかかる高精度すべり軸受の形状としては、ラジアル型、フランジ付きブッシュ等、摺動部の形状に合わせて、最適な軸受形状を選択することができる。
また、樹脂層の軸受外周部へインサート成形する場所は、軸受外周部の摺動部であれば特に限定されない。例えば、図2(a)〜(f)に示すような場合があげられる。図2(a)(f)は、ラジアル方向への荷重を支持するため、軸受外周部1の内径側摺動部に樹脂層2を形成したものである。図2(d)は、スラスト方向への荷重を支持するため、軸受外周部1の端面摺動部に樹脂層2を形成したものである。図2(b)(c)(e)は、ラジアル方向及びスラスト方向への荷重を支持するため、軸受外周部1の内径側摺動部及び端面摺動部に樹脂層2を形成したものである。なお、図示しないが、必要に応じて、軸受の外径部に樹脂層を付与することも可能である。なお、図2(c)(f)に示すように、軸受外周部と樹脂層とが剥がれないような引っ掛け部を有する樹脂層の形状を採用してもよい。
この発明にかかる高精度すべり軸受は、軸の回転精度向上のため、軸受と軸との隙間を小さくすることができる。このとき、摺動によって摩耗粉が発生すると、この摩耗粉が上記の隙間に介在することがある。この場合、回転トルクを上昇させたり、摩耗粉が研磨材として働いて、軸や軸受の異常摩耗を引き起こす場合がある。
上記の異常摩耗の回避策として、軸受の内径側摺動部に設けた樹脂層2や、スラスト荷重用の端面摺動部に設けた樹脂層2に凹部を設けることができる。この凹部を設けることにより、この凹部に摩耗粉を捕捉し、異常摩耗の発生を抑制することができる。
内径側摺動部の樹脂層2に上記凹部を設ける場合、凹部1個当たりの見かけ面積は、全内径面面積の0.5〜10%が好ましく、かつ、上記凹部の見かけ面積の総和が、全内径面面積の0.5〜30%が好ましい。
また、端面摺動部の樹脂層2に上記凹部を設ける場合、片側端面に設けられた上記凹部1個当たりの見かけ面積は、片側端面全体の面積の0.5〜10%が好ましく、かつ、片側端面に設けられた上記凹部の見かけ面積の総和が、片側端面全体の面積の0.5〜30%が好ましい。
いずれの場合も、0.5%未満の場合は、凹部は十分な容積を持たず、長期間の運転に支障がでる場合がある。一方、30%を超えると、荷重を受ける面積が減少して面圧過大となり、異常摩耗の原因となり得る。
上記凹部は、内径側摺動部や端面摺動部に設けた樹脂層2上に、独立して分散した窪みや、溝状に形成することができ、その形状、寸法及び凹部の個数に特に限定されない。この凹部のうち、最も好ましい形態は、溝状のものであり、この溝状の凹部を、軸受内径の中心軸と平行に配置したり、角度を持たせた、いわゆる螺旋溝の配置をとることができる。また、その凹部の長さ及び個数は、上記の凹部の見かけ面積の比を満たす程度の長さ及び個数を採用することができる。さらに、上記凹部を複数設ける場合、これらを内径側摺動部又は端面摺動部の全体からみて等間隔に配置するのが好ましい。
上記凹部の形成は、機械加工、サンドブラスト、エッチング、圧力による転写等で、所定の形状にすることができる。また、予めインサート成形時の金型に凸部形状を設定しておくことで、成形と同時に凹部が形成される手法を採用してもよい。
さらに、この発明にかかる高精度すべり軸受の軸受外周部を構成する金属として多孔質焼結金属を用いる場合、この焼結金属に潤滑油を含浸して用いることができる。この潤滑油が樹脂層2を通じて摺動面に滲み出すことにより、摺動性を更に向上させ、長寿命化させることができる。その際、樹脂層2として多孔質構造を有する樹脂や、潤滑油との親和性に優れる樹脂、多孔質構造を有する充填材を配合した樹脂等を採用した場合、一層効果的となる。
上記の多孔質構造を有する樹脂は、下記の方法で製造することができる。まず、2種類の樹脂(樹脂材料Aと樹脂材料B)とを混練した後、射出成形して合成樹脂層を得る。その後、樹脂材料Bを溶解させず、樹脂材料Aを溶解させる溶剤を用いて処理する。これにより、多孔質構造を有する樹脂を製造することができる。
上記連通孔を付与させるための樹脂材料(上記樹脂材料B)としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリエポキシ樹脂、フェノール樹脂等があげられる。また、溶剤に溶解しやすい樹脂材料(上記樹脂材料A)としては、ケトン系溶剤に溶解するポリスチレン、水や熱水に溶解するポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。
上記の多孔質構造を有する充填材を配合した樹脂とは、樹脂材料に連通孔を有する充填材を配合したものをいう。この連通孔を有する充填材としては、多孔質シリカ等の多孔質粉末等があげられる。上記多孔質シリカとして好ましいものは、非晶質の二酸化ケイ素を主成分とする粉末である。例えば、一次粒子径が15nm以上の微粒子の集合体である沈降性シリカ、特開2000−143228号等に開示されている、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有したケイ酸アルカリ水溶液を有機溶媒中で乳化し、二酸化炭素でゲル化させることにより得られる粒子径が3〜8nmの一次微粒子の集合体である真球状多孔質シリカ等があげられる。
この発明においては、粒子径が3〜8nmの一次微粒子が集合して真球状シリカ粒子を形成した多孔質シリカが、連通孔を有しているため特に好ましい。この真球状シリカ粒子の平均粒子径は、0.5〜100μmが好ましく、取扱い易さや摺動特性の付与を考慮した場合は、1〜20μmが特に好ましい。
このような真球状多孔質シリカとしては、旭硝子社製;サンスフェア、鈴木油脂工業社製;ゴッドボール等があげられる。また、多孔質バルク状シリカとしては、(株)東海化学工業所製;マイクロイド等があげられる。
粒子径が3〜8nmの一次微粒子が集合した真球状シリカ粒子は、比表面積が200〜900m2/g、好ましくは300〜800m2/g、細孔容積が1〜3.5ml/g、細孔径が5〜30nm、好ましくは20〜30nm、吸油量が150〜400ml/100g、好ましくは300〜400ml/100gの特性を有することが好ましい。また、水に浸漬した後に再度乾燥しても、上記細孔容積及び吸油量が浸漬前の90%以上を保つことが好ましい。
なお、上記の比表面積及び細孔容積は窒素吸着法により、吸油量はJIS K5101に準じて測定した値である。
また、上記真球状シリカ粒子の内部と外表面は、シラノール(Si−OH)で覆われていることが、潤滑剤を内部に保持しやすくなるため好ましい。
さらに、多孔質シリカは、母材に適した有機系、無機系等の表面処理を行うことができる。上記多孔質シリカは、粒子の形状は特に限定されず、平均粒子径、比表面積、吸油量等が上記真球状シリカ粒子の範囲内であれば、非球状多孔質シリカであっても使用できる。なお、摺動相手材への攻撃性や混練性の観点から、球状、真球状の粒子がより好ましい。なお、ここで、球状とは、長径に対する短径の比が0.8〜1.0の球をいい、真球状とは、上記球状よりもっと真球に近い球をいう。
この発明にかかる高精度すべり軸受は、高精度であり、摺動特性に優れており、かつ、アルミ軸等の軟質相手材を攻撃しない特徴を有する。このため、上記高精度すべり軸受を、複写機やプリンター等の事務機の感光ドラム、現像部及び/又は定着部等の回転精度が必要な支持軸受等の箇所に使用できる。これらに使用することにより、異音の発生を抑制することができる。
また、上記高精度すべり軸受を、キャリッジ軸受として使用することができる。上記キャリッジ軸受のキャリッジ材には焼結金属が使用されており、摺動性には優れるが、相手軸と金属同士の摺動となるため、潤滑状態が悪化した場合、異音が発生する場合がある。また、キャリッジとして樹脂製を用いた場合、異音は発生しないが、精度維持が困難である。これに対し、この発明にかかる高精度すべり軸受をキャリッジ軸受として使用すると、高精度を保ち続けて樹脂層で摺動するため、異音の発生を抑制することができる。
さらに、異音の発生抑制を目的に、比較的低荷重、低速で使用される転がり軸受との置き換えも可能である。
(実施例1)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:20μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用意する。射出成形用の金型内にこの軸受外周部を装着し、内径面に下記に示す樹脂材料を用いて、下記の方法でインサート成形を行い、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:250μm)。得られた複合すべり軸受を用いて、以下の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:20μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用意する。射出成形用の金型内にこの軸受外周部を装着し、内径面に下記に示す樹脂材料を用いて、下記の方法でインサート成形を行い、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:250μm)。得られた複合すべり軸受を用いて、以下の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
<樹脂材料>
・ベース樹脂:ポリエチレン(三井石油化学社製:リュブマーL5000)−68.4wt%
・充填剤:シリコーン油(信越シリコーン社製:KF96H)、多孔質シリカ(旭硝子(株)製:サンスフェアH33)を用意する。多孔質シリカ:シリコーン油の混合比を1:2.76(重量換算)とし、混合物:31.6wt%とポリエチレン樹脂:68.4wt%を2軸押し出し装置で溶融混練し、ペレットを作製した。
・ベース樹脂:ポリエチレン(三井石油化学社製:リュブマーL5000)−68.4wt%
・充填剤:シリコーン油(信越シリコーン社製:KF96H)、多孔質シリカ(旭硝子(株)製:サンスフェアH33)を用意する。多孔質シリカ:シリコーン油の混合比を1:2.76(重量換算)とし、混合物:31.6wt%とポリエチレン樹脂:68.4wt%を2軸押し出し装置で溶融混練し、ペレットを作製した。
<インサート成形条件>
金型内に所定形状の焼結金属を固定し、油含有ペレットを用いてインサート成形を行った。
・金型温度:100℃
・成形温度:210℃
・射出圧力:140MPa
金型内に所定形状の焼結金属を固定し、油含有ペレットを用いてインサート成形を行った。
・金型温度:100℃
・成形温度:210℃
・射出圧力:140MPa
<試験条件>
[摩耗・摩擦試験]
・相手材軸:A5056(アルミニウム合金、Ra=0.8μm)、φ7.985mm
・面圧 :1MPa(投影面積に換算)
・周速 :3m/min
・温度 :30℃・時間 :120h
・測定項目は、試験軸受の比摩耗量、軸の摩耗の有無、及び試験終了時の動摩擦係数。なお、軸とすべり軸受の隙間は、15μm(20℃で測定)とした。
[摩耗・摩擦試験]
・相手材軸:A5056(アルミニウム合金、Ra=0.8μm)、φ7.985mm
・面圧 :1MPa(投影面積に換算)
・周速 :3m/min
・温度 :30℃・時間 :120h
・測定項目は、試験軸受の比摩耗量、軸の摩耗の有無、及び試験終了時の動摩擦係数。なお、軸とすべり軸受の隙間は、15μm(20℃で測定)とした。
[内径側寸法の変化の測定]
熱による膨張の影響を調査するため、すべり軸受の外径側を焼結金属で拘束し、内径側のみ寸法が変化できるようにして−10℃から60℃までの変化させ、内径側寸法がどの程度変化するか測定した(20℃の寸法を基準とし、−10℃と60℃での寸法変化量を求めた)。各温度での試験片内径の寸法変化量と軸の寸法変化量を測定し、隙間が0〜25μm未満の場合:○、隙間が0未満(軸へのダキツキ発生)あるいは25μm以上の場合:×と判定した。
熱による膨張の影響を調査するため、すべり軸受の外径側を焼結金属で拘束し、内径側のみ寸法が変化できるようにして−10℃から60℃までの変化させ、内径側寸法がどの程度変化するか測定した(20℃の寸法を基準とし、−10℃と60℃での寸法変化量を求めた)。各温度での試験片内径の寸法変化量と軸の寸法変化量を測定し、隙間が0〜25μm未満の場合:○、隙間が0未満(軸へのダキツキ発生)あるいは25μm以上の場合:×と判定した。
[隙間の測定]
樹脂層と内挿したA5056からなる軸との隙間を、−10℃及び60℃の場合に測定した。なお、初期の隙間は、15μmに設定した。また、軸の寸法変化量は、−5.2μm(−10℃の場合)、7μm(60℃の場合)であった(軸材質の線膨張係数は、2.2×10−5/℃)。
樹脂層と内挿したA5056からなる軸との隙間を、−10℃及び60℃の場合に測定した。なお、初期の隙間は、15μmに設定した。また、軸の寸法変化量は、−5.2μm(−10℃の場合)、7μm(60℃の場合)であった(軸材質の線膨張係数は、2.2×10−5/℃)。
(実施例2)
φ9mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:500μm)。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ9mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:500μm)。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例3)
φ9.54mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:770μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ9.54mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂層の肉厚:770μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例4)
φ9.8mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:900μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ9.8mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:900μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例5)
φ10.3mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:1150μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ10.3mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:30μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:1150μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例6)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:90%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:90%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例7)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:10μm,平均深さ:5μm,凹部の割合:80%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:10μm,平均深さ:5μm,凹部の割合:80%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例8)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10Wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用い、樹脂材料として下記のものを用い、下記のインサート成形条件を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10Wt%系,孔の大きさの平均値:125μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、線膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用い、樹脂材料として下記のものを用い、下記のインサート成形条件を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
<樹脂材料>
・ベース樹脂:ポリフェニレンサルファイド(トープレン製:T4AG)−43.6wt%
・充填剤:ポリテトラフルオロエチレン(住友3M製:ホスタフロンTF9205)−25.4wt%アラミド繊維(アクゾノーベル製:トワロンMicrol088)−8.5wt%リン酸リチウム米山化学製:リン酸リチウム)−22.5wt%を用意する。これらの材料を2軸押し出し装置を用いて溶融混練し、ペレットを作製した。
・ベース樹脂:ポリフェニレンサルファイド(トープレン製:T4AG)−43.6wt%
・充填剤:ポリテトラフルオロエチレン(住友3M製:ホスタフロンTF9205)−25.4wt%アラミド繊維(アクゾノーベル製:トワロンMicrol088)−8.5wt%リン酸リチウム米山化学製:リン酸リチウム)−22.5wt%を用意する。これらの材料を2軸押し出し装置を用いて溶融混練し、ペレットを作製した。
<インサート成形条件>
金型内に所定形状の焼結金属を固定し、ペレットを用いてインサート成形を行った。
金型温度:150℃
成形温度:305℃
射出圧力:200MPa
金型内に所定形状の焼結金属を固定し、ペレットを用いてインサート成形を行った。
金型温度:150℃
成形温度:305℃
射出圧力:200MPa
(実施例9)
φ9mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:90%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例8と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:500μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ9mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:90%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例8と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:500μm)を製作した。得られた複合すべり軸受を用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例10)
実施例1で製作された複合すべり軸受の軸受外周部の金属部にシリコーンオイル(信越シリコーン社製:KF96H)を含浸させた。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
実施例1で製作された複合すべり軸受の軸受外周部の金属部にシリコーンオイル(信越シリコーン社製:KF96H)を含浸させた。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例11)
実施例1で製作された複合すべり軸受の軸受内径面の樹脂層に、溝状の凹部(幅×長さ×深さ=1mm×5mm×150μm、断面形状:半円状、配置場所:アキシアル方向に3箇所等配で配置)を形成した。このときの凹部一箇所あたりの見かけ面積の全内径面積に対する割合は、{(1mm×5mm)/(8mm×5mm×π)}×100=3.97(%)である。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
実施例1で製作された複合すべり軸受の軸受内径面の樹脂層に、溝状の凹部(幅×長さ×深さ=1mm×5mm×150μm、断面形状:半円状、配置場所:アキシアル方向に3箇所等配で配置)を形成した。このときの凹部一箇所あたりの見かけ面積の全内径面積に対する割合は、{(1mm×5mm)/(8mm×5mm×π)}×100=3.97(%)である。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(実施例12)
実施例11で製作された軸受内径面の樹脂層に溝状の凹部を有する複合すべり軸受の軸受外周部の金属部にシリコーンオイル(信越シリコーン社製:KF96H)を含浸させた。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
実施例11で製作された軸受内径面の樹脂層に溝状の凹部を有する複合すべり軸受の軸受外周部の金属部にシリコーンオイル(信越シリコーン社製:KF96H)を含浸させた。これを用いて、上記の条件で試験を行った。試験結果を表1に示す。
(比較例1)
φ8mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃、Cu−Sn系)からなる軸受外周部をすべり軸受として使用する。この焼結金属軸受をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行い気孔の部分に油を封入した。この試験軸受を用いて実施例1と同様の条件で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ8mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃、Cu−Sn系)からなる軸受外周部をすべり軸受として使用する。この焼結金属軸受をエステル油(日本油脂製:H481R)中に浸し、真空含浸処理を行い気孔の部分に油を封入した。この試験軸受を用いて実施例1と同様の条件で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1に使用した樹脂材料のみでφ8mm×φ14mm×t5mmのすべり軸受を製造し、実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と各種評価試験を行った。試験結果を表1に示す。
実施例1に使用した樹脂材料のみでφ8mm×φ14mm×t5mmのすべり軸受を製造し、実施例1と同様の条件で摩擦・摩耗試験と各種評価試験を行った。試験結果を表1に示す。
(比較例3)
φ11.2mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm、平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用意する。射出成形用の金型内にこの軸受外周部を装着し、内径面に実施例1の樹脂材料のインサート成形を行い、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:1600μm)を製作した。実施例1と同様の条件で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
φ11.2mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:250μm、平均深さ:50μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用意する。射出成形用の金型内にこの軸受外周部を装着し、内径面に実施例1の樹脂材料のインサート成形を行い、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(形状;図2(a)、樹脂の肉厚:1600μm)を製作した。実施例1と同様の条件で各種試験を行った。試験結果を表1に示す。
(比較例4)
φ9mm×φ14mm×t5mmのSUS304(表面あらさRa=0.01μm)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例2と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
φ9mm×φ14mm×t5mmのSUS304(表面あらさRa=0.01μm)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例2と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
(比較例5)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10Wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:100μm,凹部の割合:10%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を(樹脂の肉厚:250μm)製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10Wt%系,孔の大きさの平均値:250μm,平均深さ:100μm,凹部の割合:10%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受を(樹脂の肉厚:250μm)製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
(比較例6)
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:3μm,平均深さ:1μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
φ8.5mm×φ14mm×t5mmの焼結金属(Cu:90wt%−Sn:10wt%系,孔の大きさの平均値:3μm,平均深さ:1μm,凹部の割合:30%、膨張係数:2.0×10−5/℃)からなる軸受外周部を用いた以外は、実施例1と同様にして、φ8mm×φ14mm×t5mmの複合すべり軸受(樹脂の肉厚:250μm)を製作した。得られた複合すべり軸受は、焼結金属層と樹脂層の間で剥がれが発生したため、試験を行うことができなかった。
(結果)
実施例1〜11に示すように適切な孔の大きさ、深さ、凹部の割合を持った焼結金属と樹脂層を併用した場合、焼結金属と樹脂層の間で密着力の不足によるはがれは発生しなかった。比摩耗量は100×10-8mm3/(N・m)以下と少なく、かつ相手材軸の摩耗はなく、また動摩擦係数も0.2以下と低い値を示した。また、熱膨張による寸法変化も小さく、寸法安定性に優れていた。
実施例1〜11に示すように適切な孔の大きさ、深さ、凹部の割合を持った焼結金属と樹脂層を併用した場合、焼結金属と樹脂層の間で密着力の不足によるはがれは発生しなかった。比摩耗量は100×10-8mm3/(N・m)以下と少なく、かつ相手材軸の摩耗はなく、また動摩擦係数も0.2以下と低い値を示した。また、熱膨張による寸法変化も小さく、寸法安定性に優れていた。
それに対し、比較例1の焼結金属層のみですべり軸受を構成した場合、寸法変化は小さいが、軸の摩耗が発生しかつ摩擦係数も0.5と高い値を示した。また、比較例2の樹脂材料のみですべり軸受を構成した場合、比摩耗量は少なく、かつ軸の摩耗もなく、摩擦係数も小さいが、熱膨張による寸法変化が大きかったため、高精度が要求される個所への使用には適さない。比較例3の樹脂層と焼結金属層を併用した軸受の場合、比摩耗量は少なく、かつ軸の摩耗はなく摩擦係数も小さいが、樹脂層が厚いため、高温時、金属層からの形状拘束を受けて、体積膨張が内径側へ逃げて、内径寸法が小さくなる。その結果、軸との隙間が初期値よりも大幅に小さくなり、軸へのダキツキが発生するため好ましくない。比較例4のSUS304と樹脂層を併用した場合、SUS304の表面が滑らかであり、樹脂層との密着力が弱いため、成形収縮により界面ではがれが生じた。金属層表面に凹凸がない場合、金属と樹脂の複合体を得ることは困難である。比較例5の凹部の割合が3%と少ない焼結金属の場合、比較例4のSUS304を使用した場合と同様に樹脂層との密着力が弱いため、成形収縮により界面ではがれが生じた。比較例6の孔の大きさが3μmと小さい場合、溶融樹脂が孔に入り込めない為に密着力が低下し成形収縮により界面ではがれが生じた。
Claims (12)
- 軸受外周部として金属を用い、この軸受外周部の摺動部に樹脂材料をインサート成形して樹脂層を形成し、
この軸受外周部の表面のうち、少なくとも上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分に細かいアンカー効果用の凹部を設けると共に、上記樹脂層のうち、上記軸受の内径側摺動部に設けた樹脂層や、スラスト荷重用端面摺動部に設けた樹脂層に、摩耗粉捕捉用の凹部を設け、
上記樹脂層における(樹脂材料の線膨張係数)×(樹脂層の肉厚)を0.15以下とし、
上記アンカー効果用の凹部の大きさが5〜300μm、深さが3μm以上であり、このアンカー効果用の凹部が占める見かけ面積の合計を、上記樹脂層と接触する軸受外周部の表面部分の面積の25〜95%とし、
上記摩耗粉捕捉用の凹部の見かけ面積は、上記樹脂層を上記軸受の内径側摺動部に設けた場合においては、全内径面面積の0.5〜30%であり、また、上記樹脂層をスラスト荷重用端面摺動部に設けた場合においては、片側端面全体の面積の0.5〜30%である高精度すべり軸受。 - 上記軸受外周部の摺動部は、ラジアル方向の荷重を支持するための内径側摺動部である請求項1に記載の高精度すべり軸受。
- 上記軸受外周部の摺動部は、ラジアル方向とスラスト方向の両方の荷重を支持するための内径側摺動部及び端面摺動部である請求項1に記載のすべり軸受。
- 上記軸受外周部を構成する金属が焼結金属である請求項1乃至3のいずれかに記載の高精度すべり軸受。
- 上記焼結金属は、多孔質焼結金属であり、潤滑油が含浸されていることを特徴とする請求項4記載の高精度すべり軸受。
- 上記樹脂材料は、多孔質構造を有する樹脂材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高精度すべり軸受。
- 上記樹脂材料は、潤滑油又は固体潤滑剤が配合されたものである請求項1乃至6のいずれかに記載の高精度すべり軸受。
- 上記樹脂材料は、潤滑油が配合されると共に、多孔質構造を有する充填剤を配合されることを特徴とする請求項6に記載の高精度すべり軸受。
- 上記多孔質構造を有する充填剤は、多孔質シリカである請求項8に記載の高精度すべり軸受。
- 上記多孔質構造を有する充填剤は、シリコーン油からなる潤滑油を多孔質シリカに混合、吸油させた混合物が配合されたものである、請求項9に記載の高精度すべり軸受。
- 複写機やプリンターの感光ドラム、現像部及び/又は定着部に使用される請求項1乃至10のいずれかに記載の高精度すべり軸受。
- キャリッジ軸受として使用される請求項1乃至10のいずれかに記載の高精度すべり軸受。
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