図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機であってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、プリンタ、ファクシミリとして用いられる場合には、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをも記録用紙である転写シートとしてのシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。
画像形成装置100は、上下方向において中央位置を占める本体99と、本体99の上側に位置し原稿を読み取るスキャナとしての読取装置21と、読取装置21の上側に位置し原稿を積載され積載された原稿を読取装置21に向けて送り出すADFといわれる自動原稿給紙装置22と、本体99の下側に位置し感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kと中間転写ベルト11との間に向けて搬送される記録媒体である転写媒体たる転写紙Sを積載した給紙テーブルとしてのシート給送装置23とを有している。
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な複数の像担持体としての潜像担持体である円筒状の光導電性感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kを並設したタンデム構造を採用したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式すなわちタンデム型の画像形成装置である。
感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kは、同一径であり、画像形成装置100の本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端ベルトである中間転写ベルトとしての転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に、等間隔で並んでいる。
感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kは、A1方向の上流側からこの順で並設されている。各感光体ドラム感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像を形成するための、画像形成部としての作像部たる画像ステーション60Y、60M、60C、60Kに備えられている。
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、転写紙Sに一括転写されるようになっている。
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kのそれぞれに対向する位置に配設された転写チャージャとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Kによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kと転写ベルト11と対向位置である転写位置にて行われる。
転写ベルト11は、その全層をゴム剤等の弾性部材を用いて構成した弾性ベルトである。転写ベルト11は、単層の弾性ベルトであっても良いし、その一部を弾性部材とした弾性ベルトであっても良いし、従来から用いられている、フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂等を用いても良く、非弾性ベルトであっても良い。
画像形成装置100は、4つの画像ステーション60Y、60M、60C、60Kと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの下方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた中間転写装置であるベルトユニットとしての転写ベルトユニット10と、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11に当接し、転写ベルト11への当接位置において転写ベルト11と同方向に回転する転写部材としての紙転写ベルトである転写装置たる2次転写ローラ5とを有している。
画像形成装置100はまた、転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写クリーニングブレードを備えた中間転写ベルトクリーニング装置としての図示しないクリーニング装置と、画像ステーション60Y、60M、60C、60Kの上方に対向して配設された書き込み手段である光書き込み装置としての書込装置たる光走査装置8とを有している。
画像形成装置100はまた、シート給送装置23から搬送されてきた記録紙Sを、画像ステーション60Y、60M、60C、60Kによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト11と2次転写ローラ5の間の転写部に向けて繰り出すレジストローラ対13と、転写紙Sの先端がレジストローラ対13に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
画像形成装置100はまた、トナー像を転写され矢印C1方向に搬送されることで進入してきた転写紙Sに同トナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着装置6と、定着装置6を経た転写紙Sを本体99の外部に排出する排紙ローラ7と、本体99の上部に配設され排紙ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17とを有している。
画像形成装置100はまた、図示しないCPU、メモリ等を備え、光走査装置8の駆動制御など、画像形成装置100の各構成を統括しその動作全般を制御する制御手段40と、画像形成装置100にネットワーク42を通じて接続されるパーソナルコンピュータ等の上位装置等との双方向通信を制御する通信制御装置41と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを充填された図示しないトナーボトルとを有している。
画像形成装置100は、排紙トレイ17が本体99の上方でかつ読取装置21の下側に位置した胴内排紙型の画像形成装置である。排紙トレイ17上に積載された転写紙Sは、図1において左方に対応するD1方向下流側に取り出されるようになっている。
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12Kと、中間転写ベルト11を巻き掛けられた、駆動ローラ72、2次転写対向ローラとしての転写入口ローラ73および従動ローラであるテンションローラ74とを有している。駆動ローラ72は、図示しない駆動源としてのモータの駆動により回転駆動され、これによって、転写ベルト11がA1方向に回転駆動される。
定着装置6は、熱源を内部に有する定着ローラ62と、定着ローラ62に圧接された加圧ローラ63とを有しており、トナー像を担持した転写紙Sを定着ローラ62と加圧ローラ63との圧接部である定着部に通すことで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙Sの表面に定着するようになっている。
光走査装置8は、感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面によって構成された被走査面をそれぞれ走査して露光し、静電潜像を形成するための、画像信号に基づくレーザービームとしてのレーザー光であるビームLY、LM、LC、LKを発するものである。ビームLY、LM、LC、LKは、形成すべき画像に対応した電子情報が光情報に変換されたものであり、光走査装置8は、かかる光情報を感光体ドラム20Y、20M、20C、20K上に潜像として固定するものである。
光走査装置8は、本体99に対し着脱自在となっており、離脱時には、画像ステーション60Y、60M、60C、60Kにそれぞれ備えられた後述するプロセスカートリッジをそれぞれ独立で本体99から上方に取り出せるようになっている。
シート給送装置23は、転写紙Sを積載した給紙トレイ15と、給紙トレイ15上に積載された転写紙Sを送り出す給紙コロ16とを有している。
読取装置21は、本体99の上方に位置し、画像形成装置100のD1方向上流側端部に配設された軸24により本体99に回動自在に一体化され本体99に対して開閉可能となっている。
読取装置21は、D1方向下流側端部に、読取装置21を本体99に対して開くときに把持するための把持部25を有している。読取装置21は、軸24を中心に回動自在であって、把持部25を把持して上方に回動させることで本体99に対して開く。本体99に対する読取装置21の開放角度はほぼ90度であり、本体99内部へのアクセス、読取装置21を閉じる作業等が容易となっている。
読取装置21は、原稿を載置するコンタクトガラス21a、コンタクトガラス21aに載置された原稿に光を照射する図示しない光源及び光源から原稿に照射され反射された光を反射する図示しない第1の反射体を備え図1における左右方向に走行する第1走行体21b、第1走行体21bの反射体によって反射された光を反射する図示しない第2の反射体を備えた第2走行体21c、第2走行体21cからの光を結像するための結像レンズ21d、結像レンズ21dを経た光を受け原稿の内容を読み取る読み取りセンサ21e等を備えている。
自動原稿給紙装置22は、読取装置21の上方に位置し、画像形成装置100のD1方向上流側端部に配設された軸26により読取装置21に回動自在に一体化され読取装置21に対して開閉可能に備えられている。
自動原稿給紙装置22は、D1方向下流側端部に、自動原稿給紙装置22を読取装置21に対して開くときに把持するための把持部27を有している。自動原稿給紙装置22は、軸26を中心に回動自在であって、把持部27を把持して上方に回動させることで読取装置21に対して開き、コンタクトガラス21aを露出させる。
自動原稿給紙装置22は原稿を載置する原稿台22aと、原稿台22aに載置された原稿を給送する、図示しないモータ等を備えた駆動部とを有している。画像形成装置100を用いて複写を行うときには、原稿を自動原稿給送装置22の原稿台22aにセットするか、自動原稿給送装置22を上方に向けて回動して手動でコンタクトガラス21a上に原稿を載置してから自動原稿給送装置22を閉じて原稿をコンタクトガラス21aに押圧する。読取装置21に対する自動原稿給紙装置22の開放角度はほぼ90度であり、コンタクトガラス21a上に原稿を載置する作業、コンタクトガラス21aのメンテナンス作業等が容易となっている。
図1を参照して、画像ステーション60Y、60M、60C、60Kについて、そのうちの一つの、感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yの構成を代表して構成を説明する。なお、他の画像ステーションの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像ステーション60Yの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像ステーションの構成に付し、また詳細な説明については適宜省略することとし、符号の末尾にY、M、C、Kが付されたものはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成を行うための構成であることを示すこととする。
感光体ドラム20Yを備えた画像ステーション60Yは、感光体ドラム20Yの周囲に、図中時計方向であるその回転方向B1に沿って、1次転写ローラ12Yと、感光体ドラム20Yをクリーニングするためのクリーニング手段としてのクリーニング装置70Yと、感光体ドラム20Yを高圧に帯電するための帯電手段である帯電装置としての帯電チャージャたる帯電装置30Yと、感光体ドラム20Yを現像するための現像手段としての現像器である現像装置50Yとを有している。現像装置50Yは、感光体ドラム20Yに対向する位置に配設された現像ローラ51Yを有している。
感光体ドラム20Yと、クリーニング装置70Yと、帯電装置30Yと、現像装置50Yとは一体化されており、プロセスカートリッジを構成している。プロセスカートリッジは本体99に対して着脱自在となっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことができるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
以上のような構成により、感光体ドラム20Yは、B1方向への回転に伴い、帯電装置30Yにより表面を一様に帯電され、光走査装置8からのビームLYの露光走査によりイエロー色に対応した静電潜像を形成される。この静電潜像の形成は、ビームLYが、紙面垂直方向である主走査方向に走査するとともに、感光体ドラム20YのB1方向への回転により、感光体ドラム20Yの円周方向である副走査方向へも走査することによって行われる。
このようにして形成された静電潜像には、現像装置50Yにより供給される帯電したイエロー色のトナーが付着し、イエロー色に現像されて顕像化され、現像により得られたイエロー色の可視画像たるトナー像は、1次転写ローラ12YによりA1方向に移動する転写ベルト11に1次転写され、転写後に残留したトナー等の異物はクリーニング装置70Yにより掻き取り除去され備蓄されて、感光体ドラム20Yは、帯電装置30Yによる次の帯電に供される。
他の感光体ドラム20C、20M、20Kにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ12C、12M、12Kにより、A1方向に移動する転写ベルト11上の同じ位置に順次1次転写される。なお、後述のようにして、各色のトナー像はトナー濃度が良好であり、濃度ムラがなくゴースト画像が防止ないし抑制されている。
転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト11のA1方向の回転に伴い、2次転写ローラ5との対向位置である2次転写部である転写部まで移動し、この転写部において転写紙Sに2次転写される。
転写ベルト11と2次転写ローラ5との間に搬送されてきた転写紙Sは、シート給送装置23から繰り出され、レジストローラ対13によって、センサによる検出信号に基づいて、転写ベルト11上のトナー像の先端部が2次転写ローラ5に対向するタイミングで送り出されたものである。
転写紙Sは、すべての色のトナー像を一括転写され、担持すると、C1方向に搬送されて定着装置6に進入し、定着ローラ62と加圧ローラ63との間の定着部を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、この定着処理により、転写紙S上に合成カラー画像たるカラー画像が形成される。このカラー画像は、各色のトナー像のトナー濃度が良好であること等により、高品質となっている。
定着装置6を通過した定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て、排紙トレイ17上にスタックされる。一方、2次転写を終えた転写ベルト11は、クリーニング装置によってクリーニングされ、次の1次転写に備える。
画像形成装置100は、高速の画像形成を行うため、光走査装置8による感光体ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面への潜像の書き込みが高速で行なわれるようになっている。そのため、光走査装置8は、回転多面鏡を複数設けた構造が採用されており、また回転多面鏡の回転高速化がなされるなどの、以下述べる技術が採用されている。
かかる光走査装置8について以下詳述する。なお、光走査装置8の書込み速度の高速化に応じて、感光体ドラム20Y、20M、20C、20K、転写ベルト11の回転速度、転写紙Sの搬送速度なども高速化されている。
図2は、光走査装置8を、図1に示したのと同じ方向から見た状態を概略的に示している。光走査装置8は、同図における左右方向の中心部に、偏向手段としての光偏向器117を有しており、光偏向器117を中心に同図における左右方向において対称な構造となっている。
図3は、光走査装置8の構造のうち、図1、図2における左右方向において光偏向器117から左側の構造を示している。上述のように、光走査装置8は、光偏向器117を中心に図1、図2における左右方向において対称な構造となっているため、光走査装置8の構造は、図3に沿って説明し、図1、図2における左右方向における光偏向器117より右側の構造については、対応する符号を図2に付して適宜説明を省略する。
図3において、符号111K、111Cは半導体レーザを示している。半導体レーザ111K、111Cはそれぞれ1つの光源を構成しており、感光体ドラム20K、20Cを走査するための、それぞれ1本の光ビームを放射する。なお、半導体レーザ111K、111Cは、感光体ドラム20K、20Cを走査するための光ビームとは別に、図4に示すように、その光ビームの逆方向に向けて、その光ビームと同じ強度若しくはその光ビームの強度に対して所定比の強度の光ビームも放射し、これが同図に示して後述する光強度検知手段122K、122Cによって検知される。またこれら半導体レーザ111K、111Cは射出する光ビームの強度すなわち光強度が変調可能すなわち調整可能となっており、何れも図示しないホルダに保持されている。
図3に示すように、半導体レーザ111K、111Cから放射された各光ビームはそれぞれ、カップリングレンズ112K、112Cにより以後の光学系に適した光束形態である平行光束に変換される。なお、カップリングレンズ112K、112Cは、以後の光学系に応じて、半導体レーザ111K、111Cから放射された各光ビームをそれぞれ弱い発散性もしくは弱い収束性の光束に変換するものであっても良い。
カップリングレンズ112K、112Cを透過し、所望の光束形態である平行光束となった各光ビームは、光ビーム幅を規制する開口絞りであるアパーチュア113K、113Cの開口部を通過してビーム整形されビーム径が安定化されたのち、アパーチュア113Kを通過した光ビームのみが光量調整素子114Kを透過する。この光量調整素子114Kについては後に詳述する。
各光ビームはシリンドリカルレンズ115K、115Cに入射し、これらシリンドリカルレンズ115K、115Cの作用により副走査方向へ集光され、入射ミラー116によって反射されてから、光偏向器117の偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像として結像する。
カップリングレンズ112K、アパーチュア113K、シリンドリカルレンズ115K、入射ミラー116は、光源である半導体レーザ111Kから射出された光ビームを光偏向器117に導く1組の偏向器前光学系を構成し、カップリングレンズ112C、アパーチュア113C、シリンドリカルレンズ115C、入射ミラー116は、光源である半導体レーザ111Cから射出された光ビームを光偏向器117に導く1組の偏向器前光学系を構成する。
同図において、符号121は光偏向器117の図示しない防音ハウジングの窓に設けられた防音ガラスを示している。入射ミラー116によって反射された光ビームは光偏向器117内に入射し、光偏向器117によって偏向され、防音ガラス121を介して走査結像光学系側へ射出する。光偏向器117は、上ポリゴンミラーとしての回転多面鏡117a、下ポリゴンミラーとしての回転多面鏡117bを回転軸方向に上下2段に積設して一体とした状態で備えているとともに、回転多面鏡117a、117bは、この例においてそれぞれ4面の偏向反射面を持つ同一形状のものである。
同図において、符号118K、118Cはそれぞれ走査レンズ、符号119K、119Cはそれぞれ光路折り曲げミラー、符号120K、120Cはそれぞれ防塵ガラスを示している。防塵ガラス120K、120Cは、光走査装置8内に埃が侵入することを防ぐために配設されている防塵部材である。
走査レンズ118Kと、光路折り曲げミラー119Kとは、光偏向器117の回転多面鏡117aにより偏向された光ビーム、すなわち、半導体レーザ111Kから射出した光ビームを、対応する光走査位置である感光体ドラム20K上に導光して光スポットを形成する1組の走査結像光学系を構成する。走査レンズ118Cと、光路折り曲げミラー119Cとは、光偏向器117の回転多面鏡117bにより偏向された光ビーム、すなわち、半導体レーザ111Cから射出した光ビームを、対応する光走査位置である感光体ドラム20C上に導光して光スポットを形成する1組の走査結像光学系を構成する。なお、防塵ガラス120K、120Cは、光ビームの入出射面が曲率を持たない平行平板であり入出射する光ビームに対してノンパワーであるため、走査結像光学系に含まれていない。
このようにして、光偏向器117の回転多面鏡117aにより偏向された光ビームが、走査レンズ118Kを含む走査結像光学系及び防塵ガラス120Kを経て感光体ドラム20Kに到達することにより、感光体ドラム20Kが走査され、光偏向器117の回転多面鏡117bにより偏向された光が、走査レンズ118Cを含む走査結像光学系及び防塵ガラス120Cを経て感光体ドラム20Kに到達することビームにより、感光体ドラム20Cが走査される。
カップリングレンズ112Kを含む偏向器前光学系、光偏向器117、走査レンズ118Kを含む走査結像光学系は、半導体レーザ111Kから射出された光ビームにより感光体ドラム20Kを走査するためにかかる光ビームを感光体ドラム20Kに導く1組の光学系を構成しており、カップリングレンズ112Cを含む偏向器前光学系、光偏向器117、走査レンズ118Cを含む走査結像光学系は、半導体レーザ111Cから射出された光ビームにより感光体ドラム20Cを走査するためにかかる光ビームを感光体ドラム20Cに導く1組の光学系を構成している。
かかる光走査装置8は、図4に示すように、半導体レーザ111K、111Cから後方に射出された射出光等の光量言い換えると強度を検知する光強度検知手段122K、122Cと、光強度検知手段122K、122Cによって検知された光の光量すなわち強度に基づいて、感光体ドラム20K、20Cを走査する光ビームの強度を所定範囲に維持するために、半導体レーザ111K、111Cから感光体ドラム20K、20Cに向けて射出される光ビームの光量言い換えると強度を制御する、制御手段40の機能の一部として実現される光強度制御手段123とを備えた光強度制御装置124を有している。
光強度検知手段122K、122Cは、半導体レーザ111K、111Cから後方に射出された射出光を検知する。光強度制御手段123は、光強度検知手段122K、122Cによって検知された光の強度に基づいて、これが所定の値を取るように半導体レーザ111K、111Cの駆動電流を制御する、APC制御(Auto Power Control)などといわれるフィードバック制御を行う。
ただし、実際には、光強度検知手段122K、122Cは、半導体レーザ111K、111Cから後方に射出された射出光の他、カップリングレンズ112K、112C等の光学系の少なくとも一部を経る際に生じる散乱光をも検知するため、それら合計された光の強度を検知するものとなっている。また光強度検知手段122K、122Cは、かかる光学系の少なくとも一部に加えて、光量調整素子114Kその他後述する光量調整素子114C、120K、120Cといった光量調整素子を経た散乱光をも検知し得る。ただし、光強度検知手段122K、122Cは、光学系、光量調整素子を経る際に発生した散乱光の全てを検知するわけではない。
従って、光強度制御手段123がフィードバック制御を行うとき、光強度検知手段122K、122Cにより、光学系、光量調整素子を経る際に発生した散乱光の一部が検知されること、また、以下明らかになるように、光学系、光量調整素子を経る際に種々の要因によりかかる散乱光が発生する等の理由により、光ビームの減衰が不定量で生じることから、かかるフィードバック制御によって、感光体ドラム20K、20Cを走査する光ビームの強度を一定に制御することは困難であり、光強度制御手段123は、実質的には、感光体ドラム20K、20Cを走査する光ビームの強度を、所定範囲に維持するものとなっている。
光量調整素子114Kは、感光体ドラム20Kを走査する走査光の強度を調整するために設けられている。この光量調整素子114Kについて説明すると以下のとおりである。
光量調整素子114Kを除く全ての構成を取り付けた状態の光走査装置8において、半導体レーザ111Kから射出された光ビームの光量に対する、感光体ドラム20Kに到達し感光体ドラム20Kを走査する走査光である光ビームの光量の割合を計測したところ5%であった。すなわち、カップリングレンズ112Kを含む光学系を経る場合の光利用効率は5%であった。これに対し、カップリングレンズ112Cを含む光学系を経る場合の光利用効率は3%であった。そのため、半導体レーザ111K、111Cから射出された光ビームの光量が互いに同じである場合における感光体ドラム20K、20Cを走査する走査光の光量には差が生じ、形成画像にも差が生じる。そこで、光量調整素子111Kとして、光透過率が60%であるものを選択して光走査装置8に配設することで、かかる走査光の光量が互いに同量とされている。なお、光利用効率に差が生じるのは、カップリングレンズ112Kを含む光学系とカップリングレンズ112Cを含む光学系とに同じ部材を用いても、これら光学系を構成する上述の各光学素子の光学特性には製造過程等において微差が生じており、また取り付け誤差も完全には排除することが困難であることなどをその理由としている。
このように、光量調整素子114Kのような、光利用効率を減少させる素子を設けると、光利用効率のばらつきを抑制することが可能となる。図3に示した場合の光量調整素子114Kは、光透過率を60%とするために、入射面に減光コーティングを施して透過率を減少増加させ、入射面の光の透過率(以下、「T1」とする。)を64.81%としているとともに、出射面に低反射コーティングを施し、出射面の光の透過率(以下、「T2」とする。)を92.58%としている。
光量調整素子114Kは、光ビームの入出射面が曲率を持たない平行平板であり、入出射する光ビームに対してノンパワーとなっている。すなわち、光量調整素子114Kは、文字通り、透過光量の調整を行うためにのみ配設される。このことは、次に述べる光量調整素子114C、120K、120C等の光量調整素子すべてにおいて同じである。これにより、光量調整素子を配設することによる露光位置ずれが抑制される。
光量調整素子114K等の光量調整素子は、各走査光の光量を一致させるように必要に応じて配設されるものであり、適宜、図5、図6に示す態様で配設される。
図5に示した光走査装置8では、光量調整素子114K、114Cを配設している。同図に示した光走査装置8において、光量調整素子114K、114Cを除く全ての構成を取り付けた状態では、半導体レーザ111Kから射出された光ビームに関する光利用効率は5%であり、半導体レーザ111Cから射出された光ビームに関する光利用効率は4%であった。そのため、光量調整素子111Kとして光透過率が50%であるもの(T1=52.44%、T2=95.35%)を選択するとともに光量調整素子111Cとして光透過率が62.5%であるもの(T1=68.47%、T2=91.29%)を選択して光走査装置8に配設することで、それぞれのステーションの光利用効率を2.5%とし、感光体ドラム20K、20Cの走査光の光量が互いに同量とされている。
図6に示した光走査装置8では、防塵ガラス120K、120Cを光量調整素子としている。同図に示した光走査装置8において、防塵ガラス120K、120Cを除く全ての構成を取り付けた状態では、半導体レーザ111Kから射出された光ビームに関する光利用効率は5%であり、半導体レーザ111Cから射出された光ビームに関する光利用効率は4%であった。そのため、防塵ガラス120Kとして光透過率が50%であるもの(T1=52.44%、T2=95.35%)を選択するとともに防塵ガラス120Cとして光透過率が62.5%であるもの(T1=68.47%、T2=91.29%)を選択してこれらを光量調整素子として光走査装置8に配設することで、それぞれのステーションの光利用効率を2.5%とし、感光体ドラム20K、20Cの走査光の光量が互いに同量とされている。
図3に示した例では、光量調整素子114Kを、また図5に示した例では光量調整素子114K、114Cを、それぞれ、半導体レーザ111K、111Cから射出された光ビームの、感光体ドラム20K、20Cに至るまでの光路中における、光偏向器117よりも半導体レーザ111K、111C側に配設している。かりに、光量調整素子を、かかる光路中における光偏向器117よりも感光体ドラム20K、20C側に配設するとすれば、光偏向器117によって走査された光ビームの通過領域に光量調整素子を配設する必要があるため、光量調整素子を主走査方向に長尺としなければならない。光学素子のコストは大きさに略比例するため、光量調整素子を主走査方向に長尺とすることはコスト面で不利である。しかしながら、図3、図5に示した例のように、光量調整素子を、かかる光路中における、光偏向器117よりも半導体レーザ111K、111C側に配設すれば、この光量調整素子の大きさは小さくて済むため、コスト面で有利となっている。
図3に示した例と、図5に示した例とでは、後者の方が、光量調整素子の点数が多くなる点、作業工程が増加する点でコスト面で不利となるが、図3に示した例のように、少ない数の光量調整素子で光利用効率を合わせようとすると、光透過率に関して多種の光量調整素子を揃える必要がある点でコスト面で不利となるため、何れを採用するかはこれらの比較によって選択される。このことを考慮して、光走査装置8全体では、たとえば、光量調整素子の光透過率を、画像ステーション60YにおけるビームLYに関しては70%、画像ステーション60MにおけるビームLMに関しては50%、画像ステーション60CにおけるビームLCに関しては60%とし、画像ステーション60KにおけるビームLKに関しては光量調整素子を配設しないといったような組み合わせを用いることが可能である。
図3、図5に示した例と、図6に示した例とでは、上述のように、後者の方が光量調整素子を大きくする必要があるが、後者では、もともと光走査装置8に必要な防塵ガラスを光量調整素子としているため、部品点数増、組み立て工数増によるコストの上昇が抑制されるとともに、組み付け調整性の容易化、組み付けの調整精度の向上が期待され、また、光量調整素子の有無による光路長の変化、光学特性の変化が抑制される。さらに、光学系を経た光ビームを透過するため、光学系に含まれる光学素子のすべてにおける透過率、反射率のばらつきを吸収するような調整が可能となる。
なお、光量調整素子の作成に関しては、減光コーティング、低反射コーティングを、適宜、入射面、出射面の両方、あるいは何れか一方に選択的に施すことで、光量調整素子が作成される。また、各光量調整素子による光量調整の精度や、光量調整素子114K、114Cの配設位置の制限等に応じて、光量調整素子114K及び/又は光量調整素子114Cを設けるとともに、防塵ガラス120K及び/又は防塵ガラス120Cを光量調整素子とする構成としても良い。
一般に、光利用効率は、光源からの射出光の発散角、各レンズの透過率やポリゴンミラー、折り返しミラーの反射率といった、光学系を構成する光学素子の光学特性で決まるが、それぞれがばらつきを持っているため、感光体像面上に到達する光束は、全てのばらつきを含んだ状態となり、よって光利用効率は幅広いものとなっている。たとえば、光源からの射出光の発散角が変動すると、アパーチャを通過する光の割合が変動するため、光利用効率も変動する。
図7に光利用効率の分布についての概念図を示す。同図は、光走査装置ごとの光利用効率のばらつきを表したもので、横軸は光利用効率、縦軸はサンプル数を表す。1つ1つの光学部品の光利用効率がほぼ正規分布で表すことが出来ると考えると、光走査装置全体の光利用効率も同図に示されているように、ほぼ正規分布で表される。なお同図では、0.04を中心値としたガウシアン分布のような分布となっているが、かかる中心値はこれに限られるものではない。
同図に示す分布において光量調整素子114K、114C、120K、120Cのような光量調整素子を使用しない場合、正規分布で中心値に対し3σでばらつきを規定すると、光利用効率0.025から0.055の範囲でばらつきを持つ。このばらつきを持つと、最も光利用効率が低い光走査装置に対する最も光利用効率が高い光走査装置の光利用効率の割合は2.5倍にも達する。感光体の露光に必要な光量は、光走査装置の光利用効率に関係なく決まっているため、これを入れ込んで光量計算を行うと、ばらつきが大きい場合には、光源に求められる光量範囲が広くなる。
たとえば、光量調整素子をせず、光利用効率の中心値が0.04の光走査装置に対して、光源の必要光量が4〜8mWであった場合、光利用効率が0.025の装置に必要な光量は6.4mW〜12.8mWであり、光利用効率が0.055の装置に必要な光量は、2.9mW〜5.8mWのため、全体的な必要光量としては、これら最大値と最小値とをとって2.9mW〜12.8mWとなる。光源の光量を最低光量とし、射出光量が小さくした場合、射出光量が小さすぎると、ドループ特性が悪くなる等の理由により、濃度ムラ等画質の劣化に繋がる。
そこで、光利用効率の高い光走査装置に対して、光利用効率を減少させるような光量調整素子を設置することで、光源の必要最低光量を上げ、光源の発光を安定させることを考える。たとえば、図7に示した分布において、光利用効率が0.04以上の光走査装置に、透過率62.5%の透過率を持つ光量調整素子を設置すると、図8に示す光利用効率の分布が得られる。同図に示した例においては、光利用効率の高い光走査装置に、光量調整素子を設置することで、光利用効率のばらつきが、主に0.025から0.04の間で抑えられている。よって、使用する光源が射出する光量範囲の適正値が、4mW〜13mWの場合、光量調整素子を用い、図8に示したような光利用効率の分布を得て必要光量の範囲を4mW〜12.8mWとすれば、ドループ特性の悪化等が抑制ないし防止され濃度ムラのない高画質な画像が得られることとなる。
そのため、光量調整素子114K、114C、120K、120Cは、光利用効率を、光源である半導体レーザ111K、111Cの射出光の最低光量がドループ特性の悪化等が問題とならず濃度ムラのない高画質な画像が得られる第1の範囲内とするように、必要に応じて配設される。すなわち、光量調整素子114K、114C、120K、120Cは、これらが配設されないときの光利用効率が、第1の範囲外の第2の範囲にあるときに、その光利用効率に応じて、これらが配設された状態での光利用効率が第1の範囲に収まるように、その光透過率が選択されるとともに上述の光路中に配設される。
第1の範囲は、光量調整素子114K、114C、120K、120Cが必要に応じて配設されたときの光利用効率すなわち半導体レーザ111K、111Cから射出された光ビームの強度とこの光ビームが光学系及び必要に応じて配設された光量調整素子114K、114C、120K、120Cを経て感光体ドラム20K、20Cを走査する走査光としての光ビームの強度との第1の比において定義される値の範囲であり、たとえば0.04を下回る範囲であり、第2の範囲は、光量調整素子114K、114C、120K、120Cが配設されないときの光利用効率すなわち半導体レーザ111K、111Cから射出された光ビームの強度とこの光ビームが光学系のみを経て感光体ドラム20K、20Cを走査する走査光としての光ビームの強度との第2の比において定義される値の範囲であり、たとえば0.04以上の範囲である。
したがって、光量調整素子114K、114C、120K、120Cをこのような条件に基づいて配設することで、各色での単独の画像において、半導体レーザ111K、111Cの射出光の最低光量がドループ特性の悪化等が問題とならず濃度ムラのない高画質な画像が得られる。さらに、上述のように、光量調整素子114K、114C、120K、120Cの光透過率を、各ステーションにおける光利用効率を均一化するように選択することで、各色の画像を重ね合わせた状態での画像における画像品質が向上する。
ここで、半導体レーザ111K、111Cから射出された光ビームは、光学系を経る過程で、光学系を構成する光学素子の光学特性あるいは取り付け誤差等に起因して散乱する。かかる光ビームの散乱は、後述のように光量調整素子114K、114C、120K、120Cを、進入する光ビームの光軸に対して傾けることによっても生じる。散乱した光は光学系や光量調整素子114K、114C、120K、120Cを経て、いわゆるゴースト光として、本来の走査位置と異なる位置で感光体ドラム20K、20Cを走査するため、濃度ムラやスジ画像等を生じさせ画像を乱す直接の原因となることから、極力避ける必要がある。また、散乱光は、半導体レーザ111K、111Cから射出される光ビームの強度をフィードバック制御する際の外乱となるという理由、不定量の光利用効率の低下の原因となる理由からも、極力避ける必要がある。
そこで、光量調整素子114K、114C、120K、120Cは、入射面の光の透過率T1と出射面の光の透過率T2とが互いに異なるように、減光コーティング、低反射コーティングが調整されている。このようにT1≠T2とする理由を以下説明する。
図9に、光量調整素子114K、114C、120K、120C等の光量調整素子における、入射面と出射面とでの光の透過率比と、入射光量の劣化率との関係を、全体での光透過率ごとに示す。ここで、光量調整素子は、入射面及び出射面が入射光に垂直な仮想の平面に対して平行な平面をなしている。透過率比は、入射面と出射面とのうち光透過率が他方の面以上の一方の面の光透過量を、他方の面の光透過率で除した値である。入射光量の劣化率は、光量調整素子の入射面に対して入射した光の光量のうち、同光量調整素子の入射面、出射面において反射した光の光量の総和が占める割合である。
同図から、かかる透過率比が1であるときすなわちT1=T2であるときに、かかる劣化率が最も高いことが分かる。具体的には、全体での光透過率が50%である光量調整素子においてT1=T2(=0.708)であるとき、かかる劣化率は同図示外の最大値8.5%を取る。
ゴースト光は後述するように入射光量の4%以下に抑えることが望ましいので、同じ光透過率50%の光量調整素子においてこれを満たす(1−T1)・(1−T2)<0.04、T1・T2=0.05およびT1≠T2の条件から、T1、T2のそれぞれの値が得られる。
ここで、入射面の光の反射率R1(=1−T1)、出射面の光の反射率R2(=1−T2)を用いて、T1、T2のそれぞれの値は、かかる条件を満たすたとえばR1=0.525、R2=0.953によって得られ、またこのときR1・R2=(1−T1)・(1−T2)=0.022となることから、ゴースト光は入射光量の2.2%を下回る値となる。
一方、同図に示した場合において、T1=T2としたときゴースト光の割合(1−T1)・(1−T2)が限界値の0.04となるのは全体での光透過率(=T1・T2)が64%の光量調整素子である。よって、ゴースト光の割合の限界値を0.04としたとき、
(1−T1)・(1−T2)<0.04・・・式(1)
且つ
T1・T2<0.64・・・式(2)
であれば、ゴースト光を抑制する光量調整素子が得られ、これにより、濃度ムラやスジ画像等が充分に抑制され、良好な画像が得られる。
ここで、かかるゴースト光の割合の限界値言い換えると上限値を0.04とする理由について述べる。従来から、ノンパワーであるべき防音ガラスや走査レンズなどの光学素子において、本来透過すべき光学面での1回反射によるゴースト光が問題となっている(たとえば、上記〔特許文献4〕参照)が、かかるゴースト光の光量は、光入射角や光の偏光状態で多少増減するものの、当該光学素子の媒質の屈折率が1.5であるとき、入射光量の4%程度である。よってかかる上限値を0.04としている。
ゴースト光による画像の乱れの更なる抑制のため、光量調整素子114K、114C、120K、120Cは、光ビームの入射面と出射面とのうち、少なくとも一方が、その面に進入する光ビームの光軸に垂直な仮想面に対して傾斜していることが望ましい。
この理由を、図10に沿って説明する。同図において、符号125は、光量調整素子114K、114C、120K、120Cに対応する光量調整素子を示しており、符号126は、かかる仮想面を示している。また、符号L1は光量調整素子125の入射面における反射光であって光源側への戻り光を示しており、符号L2は光量調整素子125の出射面における反射光のうち入射面を透過した光源側への戻り光を示しており、符号L3は光量調整素子125の出射面における反射光のうち入射面でさらに反射され出射面を透過して像担持体に向かう光を示している。同図に示す例では、光ビームの入射面及び出射面が、これらの面に進入する光ビームの光軸に垂直な仮想面126に対してθの角度で傾いている。なお、光L1〜L3の他にも散乱光は生じ得るが、同図においては画像に影響を与え得る代表的な光L1〜L3のみ図示しており、これらのみについて説明する。
光L3は、像担持体に入射するとゴースト光として作用する。よって、光L3が像担持体に入射しないように角度θを調整して光量調整素子125を設置すれば、光L3による画像の乱れが防止される。図3、図6又は図7に示した光量調整素子114K、114C、120K、120Cでは、θがたとえば10degとされている。たとえば図3に示した場合の光量調整素子114Kは、上述のようにT1を64.81%、T2を92.58%とされ、光L3が入射光量の2.6%に抑制されているが、かかる角度θが10degとされていることで光L3がゴースト光とならないようになっている。
なお、角度θの傾斜により、光量調整素子125に入射する光ビームに対し、光量調整素子125から出射する光ビーム位置がずれるため、これを打ち消すように、光源の位置を微小にずらしたり、光量調整機能が無視できる透過率の高い平行平板を適所に配置したりする。
また、光量調整素子125は、光ビームの入射面と出射面とのうち、少なくとも一方が、光L3がゴースト光とならないように、仮想面126に対して傾斜していればよく、光量調整素子125に入射する光ビームに対し、光量調整素子125から出射する光ビーム位置がずれたり、傾斜したりするときは、これを打ち消すように、光源の位置を微小にずらしたり、光量調整機能が無視できる透過率の高い平行平板等を適所に配置したりする。
ゴースト光による画像の乱れの更なる抑制のため、光量調整素子114K、114C、120K、120Cは、T1>T2を満たしている。この理由を以下説明する。
上記式(1)、(2)を満たす光量調整素子として、表1に示すように、T1とT2とが互いに逆の関係にある、(T1=0.9、T2=0.7)の光量調整素子Aと、(T1=0.7、T2=0.9)の光量調整素子Bとにおいては、入射光量に対する光L1、L2、L3の光量の割合が、同表に示すようになる。
同表から分かるように、光L3の光量は同じであるが、光L1、L2の光量が大きく異なり、T1>T2を満たしている光量調整素子Aでは、T1<T2となっている光量調整素子Bよりも、光L1が小さくなっている。これに対し、光L2については逆の関係となっている。なお、光L1、L2、L3の値には、光量調整素子A、B内での光の吸収を考慮していない。
光L1と光L2とは、何れも、光強度制御装置124による、半導体レーザ111K、111Cの射出光量制御に際しての外乱となり得るが、光L1の方が光L2に比べて光強度検知手段122K、122Cに入射しやすく、外乱としての影響が大きい。これは、光L2は光量調整素子125の内部の屈折により光路がずれるためである。また、たとえば光量調整素子125内での光の吸収を考慮すると、光量調整素子Aにおける光L2の強度は、光量調整素子Bにおける光L1の強度よりもさらに低下する。
よって、T1>T2を満たしている光量調整素子Aでは、T1<T2となっている光量調整素子Bよりも、半導体レーザ111K、111Cの射出光量制御精度が高い。
半導体レーザ111K、111Cは、高速で高画質の画像を得るという観点から、面発光レーザであることが好ましい。面発光レーザとしては、光ビームを発生させる発光点を1つの素子上に多数形成する事が容易な、VCSELといわれる垂直共振器型面発光レーザを用いることが好ましい。これにより、多数の光ビームにより同時に1つの像担持体に書き込むことが可能となり、n本の光ビームにより同時に書き込みを行う場合、1本の光ビームを射出する光源を用いて書き込みを行う場合と比較して、潜像形成領域はn倍となり、画像形成に必要な時間は1/nとなる。また、書き込み速度を維持又は向上しつつ書き込み密度を高めることも可能である。よって、光源としてVCSELを使用することで、高速、高画質な画像を得ることができる。
VCSELは一般的なレーザダイオードに対して不利な特性もあるが、このような特性は上述の光量調整素子によって解消される。すなわち、光走査装置8のような光走査装置に用いられる一般的なレーザダイオードでは、書き込みに適した出力範囲が4〜15mW程度であるのに対し、VCSELは0.5〜1.2mW程度と、高出力化および、出力範囲拡大が課題となっている。出力が小さいことに関しては、感光体の感度を上げる等で対応可能であるものの、さらに低出力側な光が必要な場合があり、この場合VCSELを低出力で使用すると、光の発散角が不安定になり、画像上濃度ムラなどの影響が出てしまう。また、VCSELの出力範囲は素子の構造上拡大することが難しい。しかしながら、上述の光量調整素子を用いれば、VCSELを高い出力で使用しつつ、実効光量を低減することができる。たとえば0.3mwの光量が必要な場合、VCSELを0.3mWの光量を得るように発光させるとその特性が低下するとしても、VCSELを、特性が低下しない0.5mWの光量を得るように発光させ、透過率0.6の光量調整素子を用いれば、結果として0.3mWの光量が得られることとなり、安定した画像が得られる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
たとえば、上述の形態では、各光路中に1つの光量調整素子を配設しているが、光量調整素子は、光利用効率のばらつき抑制の最適化のために、各光路中に2つ以上を配設しても良く、またこのとき、それらの光量調整素子の光透過率は異なっていても良い。
上述の形態では、光走査装置を全ての像担持体に対して1つ設け、画像形成装置に1つのみ備えられているが、光走査装置は、1つの像担持体あるいは複数の像担持体に対して1つ設けるなど、画像形成装置に複数備えられていても良い。この場合も、光源の出力特性に合わせ、必要に応じて光量調整素子を光走査装置に配設することが可能である。また光源、像担持体が複数であるときには各走査光間の光量を均一化するように必要に応じて光量調整素子を光走査装置に配設することが可能であり、これによって濃度ムラを防止ないし抑制した高画質の画像形成が可能となる。
画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することができる。画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写紙S等のシートに直接転写しても良い。この場合、複数の像担持体上のトナー像は、シートがたとえば搬送ベルトによって搬送される過程で、直接、同シートに転写される。
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。