以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、印刷装置および印刷用コンピュータシステムの概要について、図1および図2を参照しつつ説明する。図1は、印刷装置であるインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」と略記する)22を備えた印刷用コンピュータシステムの概略構成図であり、図2は、制御回路40を中心としたプリンタ22の主要部分の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、プリンタ22は、紙送りモータ23によって印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ31を紙送りローラ26の軸方向に往復動させる主走査送り機構とを有している。ここで、副走査送り機構による印刷用紙Pの送り方向を副走査方向といい、主走査送り機構によるキャリッジ31の移動方向を主走査方向という。
また、プリンタ22は、キャリッジ31に搭載され、印刷ヘッド12を備えた印刷ヘッドユニット60と、この印刷ヘッドユニット60を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ23、キャリッジモータ24、印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。
制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。このコンピュータ90は、プリンタ22用のドライバーを搭載し、入力装置であるキーボードや、マウス等の操作によるユーザの指令を受け付け、また、プリンタ22における種々の情報を表示装置の画面表示によりに提示するユーザインターフェイスを構成している。
印刷用紙Pを搬送する副走査送り機構は、紙送りモータ23の回転を紙送りローラ26と用紙搬送ローラ(図示せず)とに伝達するギヤトレイン(図示せず)を備える。
また、キャリッジ31を往復動させる主走査送り機構は、紙送りローラ26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサ39とを備えている。
図2に示すように、制御回路40は、CPU(Central Processing Unit)41、プログラマブルROM(P−ROM(Read Only Memory))43、RAM(Random Access Memory)44、文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG(Character Generator))45、およびEEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)46を備えた算術論理演算回路として構成されている。
この制御回路40は、さらに、外部のモータ等とのインタフェース(I/F(Interface))であるI/F専用回路50と、このI/F専用回路50に接続され印刷ヘッドユニット60を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路52と、紙送りモータ23およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54とを備えている。
I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータ90から供給される印刷信号PSを受け取ることができる。
つぎに、コンピュータ90の構成について、図3を参照しつつ説明する。
図3に示すように、コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、HDD(Hard Disk Drive)94、ビデオ回路95、I/F96、バス97、表示装置98、入力装置99および外部記憶装置100によって構成されている。
ここで、CPU91は、ROM92やHDD94に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する制御部である。
ROM92は、CPU91が実行する基本的なプログラムやデータを格納しているメモリである。RAM93は、CPU91が実行途中のプログラムや、演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。
HDD94は、CPU91からの要求に応じて、記録媒体であるハードディスクに記録されているデータやプログラムを読み出すとともに、CPU91の演算処理の結果として発生したデータを前述したハードディスクに記録する記録装置である。
ビデオ回路95は、CPU91から供給された描画命令に応じて描画処理を実行し、得られた画像データを映像信号に変換して表示装置98に出力する回路である。
I/F96は、入力装置99および外部記憶装置100から出力された信号の表現形式を適宜変換するとともに、プリンタ22に対して印刷信号PSを出力する回路である。
バス97は、CPU91、ROM92、RAM93、HDD94、ビデオ回路95およびI/F96を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とする信号線である。
表示装置98は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタによって構成され、ビデオ回路95から出力された映像信号に応じた画像を表示する装置である。
入力装置99は、例えば、キーボードやマウスによって構成されており、ユーザの操作に応じた信号を生成して、I/F96に供給する装置である。
外部記憶装置100は、例えば、CD−ROM(Compact Disk-ROM)ドライブユニット、MO(Magneto Optic)ドライブユニット、FDD(Flexible Disk Drive)ユニットによって構成され、CD−ROMディスク、MOディスク、FDに記録されているデータやプログラムを読み出してCPU91に供給する装置である。また、MOドライブユニットおよびFDDユニットの場合には、CPU91から供給されたデータを、MOディスクまたはFDに記録する装置である。
つぎに、印刷ヘッド12の構成について、図1および図4を参照しつつ説明する。
図1に示すように、キャリッジ31には、クリア(N)インクを収納したカートリッジ71、ブラック(K)インクを収納したカートリッジ72、シアン(C)インクを収納したカートリッジ73、マゼンタ(M)インクを収納したカートリッジ74、イエロー(Y)インクを収納したカートリッジ75の5つのインクカートリッジ71〜75が着脱可能に搭載される。なお、クリアインクおよびカラーインクの組成については、その用途に応じて異なるので、詳細は後述する。
図1に示すように、キャリッジ31の下部には印刷ヘッド12が設けられている。印刷ヘッド12には、図4に示すように、インク吐出箇所としてのノズルが印刷用紙Pの搬送方向に列状に配置され、ノズル列R1〜R5を形成している。
キャリッジ31の下部に設けられ、各インクに対応づけられたノズル列R1〜R5には、ノズル毎に、電歪素子の1つであって応答性に優れたピエゾ素子が配置されている。ピエゾ素子は、ノズルまでインクを導くインク通路を形成する部材に接する位置に設置されている。ピエゾ素子は、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う。
本実施の形態では、ピエゾ素子の両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、ピエゾ素子が電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路の一側壁を変形させる。この結果、インク通路の体積はピエゾ素子の伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって、ノズルの先端から高速に吐出される。このインク滴が紙送りローラ26に沿わされた印刷用紙Pに染み込むことにより、ドットが形成されて印刷が行われる。
図4は、印刷ヘッド12におけるノズルの配列を示す図(ノズル12を印刷用紙P側から眺めた図)である。図示するように印刷ヘッド12は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、およびクリアインク(N)のそれぞれを吐出するための5列のノズル列R1〜R5が副走査方向に配置されて構成されている。ここで、第1のノズル列となるカラーインクに対応するノズル列R1〜R4は、それぞれ10個のノズルN1〜N10によって構成されている。また、第2のノズル列となるクリアインクに対応するノズル列R5は、5個のノズルN1〜N5によって構成されており、カラーインクに対応するノズルN1〜N10の副走査方向の中間位置に各ノズルが配置されている。なお、ノズルの個数および配置は一例であって、本発明がこのような場合にのみ限定されるものではない。例えば、さらに多数のノズルを配置したり、各色のノズルの主走査方向の配置を変更したりすることも可能である。
図5は、コンピュータ90にインストールされているプリンタ22用のドライバソフトの機能ブロックを示す図である。この図に示すように、ドライバソフトは、色変換部120およびハーフトーニング部121によって構成されており、ハーフトーニング部121の出力は、各ノズル列に供給される。
ここで、第1のビットマップデータ生成手段の一部であり、第2のビットマップデータ生成手段である色変換部120は、例えば、RGB(Red, Green, Blue)フルカラー画像データのような画像データの入力を受け、入力された画像データを構成する、例えば、RGB表色系の色データを、カラーインクの色セットに対応した色成分を持つ、CMYK色系の色データに変換する。
また、色変換部120は、RGB表色系の画像データから、クリアインク用のビットマップデータを生成して出力する。なお、クリアインク用のビットマップデータを生成する際の詳細な処理の説明については後述する。
第1のビットマップデータ生成手段の一部であるハーフトーニング部121は、色変換部120から出力された画像データに対して誤差拡散またはディザリング(Dithering)等の処理を施し、CMYKN各色の多階調(例えば、256階調)のデータを、CMYKN各色のドットの密度によって表現した、例えば、2値化されたビットマップデータに変換する。
ハーフトーニング部121から出力されたビットマップデータは、印刷ヘッド12に供給され、ビットマップデータに従ってC,M,Y,K,Nのインク滴が吐出され、印刷用紙P上にドットが形成される。
つぎに、本実施の形態の動作について説明する。なお、以下では、まず、前述した(1)の「光沢ムラの改善」に対応する場合の動作について説明した後、(2)の「インクの滲み改善」および(3)の「印刷速度の改善」に対応する場合の動作について説明する。なお、(1)の場合には、クリアインクとしては、透明ポリマーを溶媒である水に溶解したものを使用する。また、カラーインクとしては、各色の顔料を溶媒である水に溶解したものを使用する。
コンピュータ90の入力装置99を操作して、アプリケーションプログラムを起動する要求がなされた場合には、CPU91は、HDD94から該当するプログラムを読み出して実行する。この結果、アプリケーションプログラムが起動され、画像データの生成または編集が可能になる。
このようなアプリケーションプログラムを利用して、画像が描画または編集された後、生成された画像を印刷する要求が入力装置99を介して行われた場合には、CPU91は、生成された画像データをドライバソフトに対して供給する。なお、画像データは、RGB表色系によって表されているデータであり、例えば、縦および横方向の解像度が360dpiの画像データである。
ドライバソフトを構成する色変換部120は、アプリケーションプログラムから受け渡されたRGB表色系によって表現された画像データを、まず、CMYK表色系の画像データに変換する。なお、この変換処理は、例えば、前述した式(3)〜(6)を用いたり、これらの式によって求められた値を予め格納したLUT(Look Up Table)を参照することにより行う。
また、色変換部120は、RGB表色系の画像データからクリアインク用の画像データを生成する。ここで、色変換部120は、カラーインクのドットの密度が低い部分にクリアインクによるドットが形成されるようにクリアインク用の画像データを生成する。すなわち、色変換部120は、CMYKおよびNの総てのインクに着目した場合に、印刷用紙Pの各部において単位面積あたりに着弾するインク量(質量または体積)が一定の範囲に収まるようにクリアインク用の画像データを生成する。なお、どの程度のクリアインクを打ち込むかについては、クリアインクによって形成されるドットの光沢度や、印刷した際の実際の光沢ムラの状況に応じて適宜設定する。
従来においては、例えば、画像データを構成する任意の画素または画素群に注目した場合に、当該画素(群)に対するCMYKインクの総打ち込み量をDCMYKとすると、打ち込み量DCMYKに応じて図17に示す実線の曲線のようにクリアインクの吐出量を定めていた。すなわち、DCMYKが少ない場合には、クリアインクの吐出量(または、形成されるドットの密度)を増やし、DCMYKが多い場合にはクリアインクの吐出量(または、形成されるドットの密度)を減少させるようにしていた。
なお、図17の点線の曲線は、クリアインクと、CMYKインクの合計打ち込み量を示す。この点線曲線で示されるように、クリアインクとCMYKインクの合計打ち込み量は、一定の範囲L1に収まるように設定されている。なお、実線曲線のように、DCMYKが少ない範囲では、クリアインクを多くし、かつ、その減少度分を小さくし、その後、急激にクリアインクの吐出量を減少させ、さらに、その後、ゆっくりと零になるようなS型の曲線とはせず、合計打ち込み量が一定値となるようにしたり、図17の2点鎖線で示すように、急激に増加または減少するようにしてもよい。
一方、本実施の形態では、RGB表色系をCMYK表色系に変換した後にクリアインク用のビットマップデータを生成するのではなく、RGB表色系の画像データからクリアインク用のビットマップデータを直接求めるようにしている。
すなわち、本実施の形態では、RGB表色系によって表現された画像データの任意の画素または画素群に注目した場合に、その画素(群)を構成するRGBデータから、以下の式に基づいてDRGBを求める。
そして、得られたDRGBを参照し、図6に示すような、DRGBに応じてその値が増加する実線の曲線に基づいてクリアインクの吐出量(または、形成されるドットの密度)を決定する。すなわち、DRGBの値が最大値に近い場合には、その画素または画素群は白色に近い色を示してることから、当該画素(群)に対しては、クリアインクを打ち込む必要があるのでクリアインク用のビットマップデータを“1”の状態にする。また、DRGBの値が小さくなった場合には、ビットマップデータを“0”の状態にする。このとき、生成されるビットマップデータは、もとの画像データと同じ解像度であるので、縦・横の解像度が360dpi×360dpiであるクリアインク用のビットマップデータが生成される。
なお、RGBデータに基づいて、クリアインクの吐出量を決定する場合、DRGBの値と、クリアインクの吐出量の関係を示すテーブル(図6に示す関係に対応するテーブル)をHDD94に格納しておき、このテーブルを参照してクリアインクの吐出量を算出するようにすればよい。あるいは、RGBのそれぞれの値と、クリアインクの吐出量との関係を示すテーブルをHDD64に格納しておき、RGBのそれぞれの値からクリアインクの吐出量をテーブルから直接に求めるようにしてもよい。また、図6に示す実線の曲線のみならず、破線の曲線、一点鎖線の曲線、または2点鎖線の曲線を用いることも可能である。
ハーフトーニング処理部121は、色変換部120から出力されたクリアインク用のビットマップデータ(縦・横360×360dpiのデータ)については必要に応じて解像度を変換して出力する。例えば、後述する図8に示す印刷方法の場合には、縦・横の解像度がそれぞれ360dpiと720dpiであるので、横方向については補完処理(例えば、隣接するドットより線形予測する処理)によりビットマップデータを新たに生成し、縦方向についてはそのまま出力する。また、後述する図12に示す印刷方法の場合には、縦・横の解像度がそれぞれ720dpiと360dpiであるので、縦方向については補完処理(例えば、隣接するドットより線形予測する処理)によりビットマップデータを新たに生成し、横方向についてはそのまま出力する。さらに、図14に示す印刷方法の場合には、縦・横の解像度がともに360dpiであるので、縦・横ともにそのままの状態で出力する。
一方、CMYK表色系の画像データ(256階調のデータ)に対しては、誤差拡散処理またはディザリング処理を施し、CMYKの各色毎に2値化されたビットマップデータを生成する。なお、このとき、画像の解像度は、入力時の縦・横360×360dpiから印刷ヘッド12の解像度に対応する縦・横720×720dpiに補完処理等によって変換される。
このようにして生成されたカラーインクと、クリアインクのビットマップデータは、ハーフトーニング部121から出力され、I/F部96を介してプリンタ22に供給される。プリンタ22では、CPU41がこれらのデータを受信する。CPU41は、紙送りモータ23を駆動して印刷用紙Pを1枚だけ吸引し、印刷開始位置まで移送する。そして、印刷用紙Pの印刷開始位置が印刷ヘッド12の直下まで移動した場合には、受信したビットマップデータをヘッド駆動回路52を介して印刷ヘッド12に供給し、印刷を開始する。このとき、クリアインクのビットマップデータについては、印刷ヘッド12のノズル列R5に供給され、その他のビットマップデータについては色毎にノズル列R1〜R4にそれぞれ供給される。
印刷が開始されると、CPU41は、キャリッジ31を主走査方向に走査しつつノズル列R1〜R4からカラーインクを、また、ノズル列R5からクリアインクを吐出し、副走査方向に印刷用紙Pを間欠的に搬送する動作を繰り返す。この結果、コンピュータ90によって生成された画像データに対応するドット群が印刷用紙P上に形成される。
図7は、印刷動作の詳細を説明するための図である。なお、この図では、図示の簡略化のためにノズル列R4とノズル列R5のみを示している。この図7に示すように、印刷ヘッド12は、主走査方向に走査を行ってカラーインクとクリアインクのそれぞれを吐出して印刷し、第1番目のラインの走査が完了すると、10/720インチ、すなわち、印刷ヘッド12の副走査方向の幅に相当する距離だけ副走査方向に印刷用紙Pを移動させ、第2番目のラインの走査を開始する。そして、第2番目のラインの走査が完了すると、同様にして10/720インチだけ印刷用紙Pを移動させ、第3番目のラインの走査を開始する。このような動作は、全てのラインの印刷が完了するまで繰り返される。
図8は、以上の動作により、印刷用紙Pに形成されるドットパターンの一例を示す図である。図8の(A)は、ノズル列R4とR5の配置の態様を示している。また、図8の(B)および図8の(C)は、ノズル列R4とR5によって打ち込まれるインクの配置状態を示す図である。図8の(B)に示すように、ノズル列R4から打ち込まれるカラーインクは、縦・横それぞれ720dpiの密度で印刷用紙Pに対して打ち込まれる。一方、図8の(C)に示すように、ノズル列R5から打ち込まれるクリアインクは、横方向には720dpiの密度で、縦方向には360dpiの密度でそれぞれ印刷用紙Pに対して打ち込まれる。なお、このとき打ち込まれるインク滴の1滴あたりの量は、クリアインクの方がカラーインクよりも多くなるように設定されている。具体的には、例えば、カラーインクのドット径は40μm、クリアインクのドット径は81μmとなるように設定されている。その結果、印刷用紙P上にはカラーインクの場合には、図8の(D)に示すような小さなドットが形成され、一方、カラーインクの場合には、図8の(E)に示すような大きなドットが形成され、ともに紙面を隙間無く埋めることになる。
図9は、この実施の形態により印刷された印刷用紙Pの断面の模式図である。この図9に示すように、印刷用紙Pの表面には、カラーインクによるドット205が形成され、また、顔料系のカラーインクが付着してない領域またはその付着量が少ない領域には、クリアインクによるドット206が形成されている。これにより、印刷用紙Pの表面におけるインクの付着量が略均一に近くなり、光反射率の相違つまり光沢ムラが低減される。なお、この図は模式図であり、この図に示すように、カラーインクが打ち込まれていない領域の全てに、クリアインクが打ち込まれるわけではない。
以上のように、本実施の形態では、カラーインクの打ち込み量が少ない領域には、クリアインクを補充的に打ち込むようにしたので、当該部分の光沢度を上げ、光沢ムラが生じることを防止できる。また、クリアインクのノズル列R5を構成するノズル群については、カラーインクのノズル列R1〜R4の半分の個数となるようにしたので、印刷ヘッド12の構成を簡略化することが可能になり、製造コストを削減することが可能になる。また、クリアインク用のビットマップデータをRGB表色系のデータから直接生成するようにしたので、クリアインク用のビットマップデータを生成する際の処理量を減少させ、印刷処理の高速化を図ることができる。また、クリアインク用のビットマップデータの解像度を下げることにより、コンピュータ90からプリンタ22に転送するデータの量を減少させることができるので、印刷処理の高速化が可能になる。
さらに、クリアインクの単位面積あたりの打ち込み数を減少させることにより、カラーインクと同数打ち込むようにした場合に比較して、クリアインクの消費量を抑制することが可能になる。
なお、クリアインクは、一般的に、同一量のカラーインクに比較して光沢度が高いため、このようにノズル列R5を構成するノズル群の個数を減少した場合であっても、光沢ムラを十分に改善することが可能になる。また、クリアインクの光沢度が他のインクと同程度か、それ以下の場合であっても、吐出量を増加させることで対応できる。さらに、クリアインクのノズル数を減少させても、カラーインクの場合のように画像の品質が大幅に変化することはないため、ノズル数を減少させることによる画質の劣化よりも印刷ヘッド12の構成を簡略化できるメリットの方が上回る。
なお、以上の実施の形態では、画像のどの領域においてもカラーインクとクリアインクの単位面積あたりの打ち込み総量が所定の範囲内に収まるように、クリアインクの打ち込み位置および打ち込み量を決定するようにした。しかし、前述のように、光沢ムラは、カラーインクが打ち込まれた部分と、打ち込まれていない部分の境界付近で特に顕著であることから、当該部分を中心にクリアインクを打ち込むようにすることも可能である。具体的には、前述したDRGBを画像データ全体について求め、得られた2次元データを空間微分し、値が大きい領域であってDRGBの値が大きい領域(カラーインクが打ち込まれている部分に隣接する領域)にクリアインクを打ち込むようにすることも可能である。このようにすれば、光沢ムラの発生を効果的に防止することができるとともに、クリアインクの消費量を抑制することが可能になる。
図10は、印刷ヘッド12の他の構成例を示す図である。この図に示す印刷ヘッド12Aでは、ノズル列R1〜R5の全てのノズルが副走査方向に1つ置きに(360dpiの密度で)5つのノズルN1〜N5が配置されている。なお、この例では、クリアインク用のビットマップデータの解像度は、縦方向は720dpiであり、横方向は360dpiとなっており、前述の場合と同様にRGB表色系の画像データから直接生成される。
図11は、図10に示す印刷ヘッド12Aによる印刷動作を説明するための図である。この図の例では、コンピュータ90からはカラーインクについては縦・横それぞれ720dpi×720dpiのビットマップデータが供給され、クリアインクについては、縦・横それぞれ720dpi×360dpiのビットマップデータが供給される。なお、この図では、図示を簡略化するために、ノズル列R4とR5のみを示してある。
この図11に示すように、印刷ヘッド12Aを用いた印刷動作では、第1番目のラインを第1回目の走査により印刷する。このとき、カラーインクについては横方向について720dpiの密度となるようにインクの打ち込みを行う。一方、クリアインクについては360dpiの密度となるように、カラーインクの半分の頻度でインクの打ち込みを行う。また、第1番目のラインでは、各ノズル列のうち、上から2つのノズルについてはインクを吐出しないようにする。
そして、第1番目のラインの走査が完了すると、5/720インチだけ印刷用紙Pを紙送りし、第2番目のラインの走査を開始する。なお、このときも、前述の場合と同様に、カラーインクの横方向については720dpiの密度で、クリアインクは360dpiの密度でインクを吐出する。また、このときは、各ノズル列の全てからインクを吐出する。第2番目のラインの印刷が完了すると、前述の場合と同様に5/720インチだけ印刷用紙Pを紙送りし、第3番目のラインの走査を開始する。このような動作を繰り返し、最後のラインの印刷の際には、下から2つのノズルについてはインクを吐出させずに印刷する。その結果、全てのラインの印刷が完了する。
図12は、印刷用紙Pに形成されたドットパターンの一例を示す図である。図12の(A)および図12の(B)は、ノズル列R4とR5によって打ち込まれるインクの状態を示す図である。図12の(A)に示すように、ノズル列R4から打ち込まれるカラーインクは、縦・横それぞれ720dpiの密度で印刷用紙Pに対して打ち込まれる。一方、図12の(B)に示すように、ノズル列R5から打ち込まれるクリアインクは、縦方向には720dpiの密度で、横方向には360dpiの密度でそれぞれ印刷用紙Pに対して打ち込まれる。なお、このとき打ち込まれるインク滴の1滴あたりの量は、クリアインクの方がカラーインクよりも多くなるように設定されている。具体的には、例えば、カラーインクのドット径は40μm、クリアインクのドット径は81μmとなるように設定されている。その結果、印刷用紙P上にはカラーインクの場合には、図12の(C)に示すような小さなドットが形成され、一方、カラーインクの場合には、図12の(D)に示すような大きなドットが形成され、紙面を隙間無く埋めることになる。
以上のような実施の形態によれば、前述の場合と同様にRGB表色系の画像データからビットマップデータを直接生成するようにしたので、印刷速度を向上することができる。また、クリアインクの横方向に対するドットの打ち込み密度を下げることにより、データ処理のオーバーロードを低減させるとともに転送されるデータ量を削減させ、印刷速度を向上させることが可能になる。さらに、図11に示すような走査方法によれば、印刷用紙Pの紙送り精度やノズルから吐出されるインクの飛行軌跡の偏りによって生じるバンディングの発生を防止することが可能になる。
図13は、図10に示す印刷ヘッド12Aによる他の印刷方法の一例を示す図である。なお、この例では、色変換部120は、RGB表色系の画像データからクリアインク用の縦・横それぞれの解像度が360dpiのビットマップデータを生成して出力する。
この図13に示す印刷動作では、第1番目のラインを第1回目の走査により印刷する。このとき、カラーインクについては横方向に720dpiの密度となるようにインクの打ち込みを行う。一方、クリアインクについては横方向に360dpiの密度となるように、カラーインクの半分の頻度でインクの打ち込みを行う。また、第1番目のラインでは、各ノズル列のうち、上から2つのノズルについてはインクを吐出しないようにする。
そして、第1番目のラインの走査が完了すると、5/720インチだけ印刷用紙Pを紙送りし、第2番目のラインの走査を開始する。なお、このときは、カラーインクは横方向に720dpiの密度でインクを吐出するが、クリアインクについては吐出を停止する。また、カラーインクについては各ノズル列の全てからインクを吐出する。第2番目のラインの印刷が完了すると、前述の場合と同様に5/720インチだけ印刷用紙Pを紙送りし、第3番目のラインの走査を開始する。第3番目のラインの印刷では、第1番目の印刷の場合と同様に、カラーインクは横方向に720dpiの密度で、クリアインクは360dpiの密度で印刷がなされる。このような動作を繰り返し、最後のラインの印刷の際には、下から2つのノズルについてはインクを吐出させずに印刷する。その結果、全てのラインの印刷が完了する。
図14は、図13に示す対象範囲において、印刷用紙Pに形成されたドットパターンの一例を示す図である。図14の(A)および図14の(B)は、ノズル列R4とR5によって打ち込まれるインクの配置状態を示す図である。図14の(A)に示すように、ノズル列R4から打ち込まれるカラーインクは、縦・横それぞれ720dpiの密度で印刷用紙Pに対して打ち込まれる。一方、図14の(B)に示すように、ノズル列R5から打ち込まれるクリアインクは、縦方向および横方向のそれぞれに対して360dpiの密度で印刷用紙Pに対して打ち込まれる。なお、このとき打ち込まれるインク滴の1滴あたりの量は、クリアインクの方がカラーインクよりも多くなるように設定されている。具体的には、例えば、カラーインクのドット径は40μm、クリアインクのドット径は102μmとなるように設定されている。その結果、印刷用紙P上にはカラーインクの場合には、図14の(C)に示すような小さなドットが形成され、一方、カラーインクの場合には、図14の(D)に示すような大きなドットが形成され、紙面を隙間無く埋めることになる。
以上のような実施の形態によれば、RGB表色系の画像データからクリアインク用のビットマップデータを直接生成することにより、処理速度を向上させることが可能になる。また、クリアインク用のビットマップデータの解像度を下げ、コンピュータ90からプリンタ22へのデータの転送速度を向上させることが可能になるため、印刷速度を向上させることが可能になる。また、前述の場合と同様にバンディングの発生を防止できる。
図15は、印刷ヘッド12の他の構成例を示す図である。図15の(A)は、図4に示す印刷ヘッド12の変形実施態様であり、この印刷ヘッド12Bでは、ノズル列R5を構成する各ノズルが、図4の場合に比較して、1つだけ下方向にずれて形成されている。このような実施の形態によっても、前述の図4の場合と同様の印刷方法により、クリアインクの打ち込み密度を減少させることができる。
一方、図15の(B)は、図10に示す印刷ヘッド12の変形実施態様であり、この印刷ヘッド12Cでは、ノズル列R5を構成する各ノズルが、図10の場合に比較して、1つだけ下方向にずれて形成されている。このような実施の形態では、図11または図13に示す対象範囲の上端ではノズル1つ分だけ下方向にズレを生じ、また、下端では1つ分だけ上方向にズレを生じる。しかし、その他は、前述の図11または図13の場合と同様の印刷方法により、クリアインクの打ち込み密度を減少させることができる。
つぎに、(2)の「インクの滲み改善」および(3)の「印刷速度の改善」に対応する場合の動作について説明する。
(2)の「インクの滲み改善」および(3)の「印刷速度の改善」に対応する場合では、前述した(1)の「光沢ムラの改善」の場合に比較すると、カラーインクおよびクリアインクの組成が異なる他、ハーフトーニング部121の動作が異なっている。したがって、以下では、インクの組成とハーフトーニング部121の動作を中心に説明する。
まず、(2)の「インクの滲み改善」の場合では、顔料系のカラーインクとしては、例えば、顔料系の色材およびカチオン性樹脂エマルジョンを含む水性インクを用い、また、クリアインクとしては、カラーインク組成物と接触したときに凝集物を生じるアニオン性反応剤およびアニオン性樹脂エマルジョンを含む反応液を用いる。
また、(1)の「光沢ムラの改善」の場合では、カラーインクが打ち込まれていない領域にクリアインクを打ち込むようにしたが、(2)の「インクの滲み改善」に対応する場合では、カラーインクが打ち込まれた領域に対してクリアインクを打ち込むようにする必要がある。
したがって、(2)に対応する場合、ハーフトーニング部121は、クリアインクのビットマップデータを生成する際に、クリアインクの画素の縦方向(副走査方向)に隣接するカラーインクの画素のいずれか一方が“1”である場合、すなわち、CMYKのいずれかのインクが打ち込まれる場合には、クリアインクを打ち込む(ビットマップデータを“1”とする)。また、隣接するカラーインクの画素の双方が“0”である場合、すなわち、CMYKのいずれもが打ち込まれない場合には、クリアインクを打ち込まない(ビットマップデータを“0”とする)。
したがって、任意の画素または画素群に注目した場合に、当該画素(群)を構成するRGBデータのDRGBが最大値またはそれに近い値を示す場合には、白色またはそれに近い色であるのでCMYKのいずれのインクも打ち込まれない、または、ほとんど打ち込まれないことを示す。その場合には、当該画素(群)については、クリアインク用のビットマップデータを“0”とし、それ以外の場合にはビットマップデータを“1”とする。
なお、以上の例では、カラーインクのドットの有無に応じて、クリアインクの打ち込みの有無を決定するようにしたが、クリアインクのインク滴の量を可変とし、カラーインクの打ち込み量等に応じて、クリアインクの打ち込み量を決定するようにしてもよい。
つぎに、(3)に対応する場合について説明する。この場合、顔料系のカラーインクとしては、例えば、顔料系の色材を含む水性インクを用い、クリアインクとしては、例えば、溶媒である水を用いる。
また、(3)の場合も前述の(2)の場合と同様に、カラーインクが打ち込まれた領域に対してクリアインクを打ち込むようにする必要があるため、前述の場合と同様の処理により、クリアインクのビットマップデータを生成することができる。なお、(3)の場合では、ベタ印刷が行われる領域にのみこのような処理を施せばいいので、ベタ印刷が行われる領域を特定し、この領域に対して上述の処理によりクリアインクのビットマップデータを生成するようにすればよい。
このようにして生成された(2)および(3)に対応する、クリアインクのビットマップデータおよびカラーインクのビットマップデータは、プリンタ22に供給され、CPU41の制御に応じて、前述の場合と同様に印刷用紙Pに対して印刷されることになる。
以上の実施の形態によれば、(2)の場合では、カラーインクと化学変化を生じることにより、インクの滲みを防止する物質を溶媒に溶かして生成したクリアインクを、カラーインクによって形成されたドットの近傍に打ち込むことにより、カラーインクの滲みを防止することが可能になる。
また、(3)の場合では、例えば、溶媒のみからなるクリアインクを、カラーインクによって形成されたドットの近傍に打ち込むことにより、カラーインクの滲みを誘発し、ドットサイズを通常よりも大きくすることにより、ベタ印刷を高速に実施することが可能になる。
さらに、(2)および(3)の双方の場合において、RGB表色系の画像データからクリアインク用のビットマップデータを直接生成するようにしたので、処理に要する時間と、転送に要する時間を短縮し、印刷速度を向上させることが可能になる。
また、クリアインクの単位面積あたりの打ち込み数を減少させることにより、カラーインクと同数打ち込むようにした場合に比較して、クリアインクの消費量を抑制することが可能になる。
また、図4に示す印刷ヘッド12を用いた場合、印刷ヘッド12のクリアインク用のノズル列R5を構成するノズルの個数を減少させることができるので、装置の構成を簡略化し、製造コストを縮減することが可能になる。
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能である。例えば、インクとしては、CMYKの4色を用いるようにしたが、これ以外に淡色系のインク(ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、ダークイエロー(DY))のインクを用いるようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、クリアインクのノズル列R5を構成するノズルの個数と、カラーインクのノズル列R1〜R4を構成するノズルの個数の比率を1/2としたが、これ以外の比率(例えば、n/m(n<m))としてもよい。また、カラーインクのノズル列R1〜R4を構成するノズルの個数は同数とし、例えば、一部のノズルのみを使用するようにしてもよい(ひとつおきにノズルを使用するようにしてもよい)。
また、上述の実施の形態では、クリアインクのビットマップデータを生成する際に、式(4)を用いるようにしたが、これは一例であって、これ以外の式を用いることも可能である。要は、RGB表色系の画像データから直接的にクリアインクのビットマップデータを生成できればよい。
また、上述の実施の形態では、色変換部120において、クリアインク用のビットマップデータを生成するようにしたが、これをハーフトーニング部121によって実行することも可能であることはいうまでもない。
また、インクの組成についても具体的な例を挙げて説明したが、本発明は、列挙された具体例に限定されるものではない。
また、上述の例では、カラーインクとして、顔料系のインクを採用したが、(1)の「光沢ムラの改善」については、光沢度が高いインクまたは染料系のインクにも適用することができる。(2)の「インク滲みの改善」については滲みの問題が生ずる全てのインクに適用することができる。さらに、(3)の「印刷速度の改善」についてもインクの拡散が誘発される全てのカラーインクに適用することができる。
また、既に述べた通り、ピエゾ素子を用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンタ22を用いているが、吐出駆動素子としては、ピエゾ素子以外の種々のものを利用することが可能である。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する気泡(バブル)によりインクを吐出するタイプの吐出駆動素子を備えたプリンタに適用することも可能である。
さらに、以上の実施の形態では、HDD94(または、外部記憶装置100)に格納されたドライバソフトにより、色変換部120およびハーフトーニング部121の処理を実行するようにしている。しかし、プリンタ22のP−ROM43に同等の機能を有するプログラムを格納しておき、このプログラムにより色変換部120およびハーフトーニング部121の処理を実行するようにしたり、ドライバソフトとプリンタ22によりこれらを分担して処理するようにしたりすることも可能である。
なお、以上の印刷処理機能は、コンピュータのみによって実現することができる。その場合、印刷装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムがコンピュータに提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記印刷処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disk)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MOなどがある。
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。