本発明の実施の形態について、以下に図面を用いて説明する。
(画像形成装置の構成と動作)
図1に、本発明の一実施形態による画像形成装置の主要部の構成例を示す。図1を用いて画像形成装置の概略構成と動作を説明する。
本画像形成装置は、電子写真方式により像担持体(感光体)1に形成されたトナー像を用紙等の転写媒体Pに転写して画像形成を行うプリンタである。
本画像形成装置は、画像を担持するための像担持体1を有しており、像担持体1の周囲には、像担持体1を帯電するための帯電部材3、像担持体1上の静電潜像を現像する現像装置2、像担持体1上のトナー像を転写するための転写ローラ5、及び像担持体1上の残留トナー除去用のクリーニングブレード6が、像担持体1の回転方向Aに沿って順に配置されている。
像担持体1は、帯電部材3で帯電された後に、図中のE点の位置でレーザ発光器などを備えた露光装置4により露光されて、その表面上に静電潜像が形成される。現像装置2は、この静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写ローラ5は、この像担持体1上のトナー像を転写媒体Pに転写した後、図中の矢印F方向に排出する。クリーニングブレード6は、転写後の像担持体1上の残留トナーを機械的な力で除去する。
画像形成装置に用いられる像担持体1、帯電部材3、露光装置4、転写ローラ5、クリーニングブレード6等は、周知の電子写真方式の技術を任意に使用してよい。例えば、帯電部材3として図中、帯電ローラが示されているが、像担持体1と非接触の帯電装置であってもよい。また例えば、クリーニングブレードはなくてもよい。
次に、本実施形態に係るハイブリッド現像方式の現像装置2の構成例を説明する。
現像装置2は、以下の構成要素を備える。すなわち、トナーとキャリヤを含む現像剤24を収容する現像剤槽16、現像剤槽16から供給された現像剤24を表面に担持して搬送するトナー供給用現像剤担持体11、トナー供給用現像剤担持体11からトナー供給領域7においてトナーの供給を受け、前記像担持体1上に形成された静電潜像を現像するトナー担持体25、現像領域8を通過した後にトナー担持体25上に残留する現像残トナーをトナー回収領域9において回収するトナー回収用現像剤担持体26を備える。
またトナー回収領域9通過後のトナー回収用現像剤担持体26表面に偏在したトナーを引き付け、トナー回収用現像剤担持体26表面から引き離すトナー剥離部材(フィルム部材)41を備える。これにより、現像剤分離領域で分離される現像剤とともに回収トナーを現像剤槽16に戻す構成となっており、トナー担持体25上のトナー層を常にリフレッシュ可能になっている。
また現像装置2は、トナー担持体25に現像バイアス電圧Vb2を供給するトナー担持体用バイアス電源31、トナー供給用現像剤担持体11にトナー供給バイアス電圧Vb1を供給するトナー供給用現像剤担持体用バイアス電源32、トナー回収用現像剤担持体26にトナー回収バイアス電圧Vb3を供給するトナー回収用現像剤担持体用バイアス電源33、トナー剥離部材41にトナー剥離バイアス電圧Vb4を供給するトナー剥離用バイアス電源34を備える。
現像装置2の詳細な構成と動作については、後述する。
(現像剤の構成)
本実施形態に係る現像装置において使用する現像剤の構成について説明する。
本実施形態において使用する現像剤24はトナーと該トナーを帯電するためのキャリヤを含んでなるものである。
<トナー>
トナーとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のトナーを使用することができ、バインダー樹脂中に着色剤や、必要に応じて荷電制御剤や離型剤等を含有させ、外添剤を処理させたものを使用できる。トナー粒径としてはこれに限定されるものではないが、3〜15μm程度が好ましい。
このようなトナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
トナーに使用するバインダー樹脂としては、これに限定されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)やポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂単体もしくは複合体により、軟化温度が80〜160℃の範囲のものを、またガラス転移点が50〜75℃の範囲のものを用いることが好ましい。
また、着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して2〜20質量%の割合で用いることが好ましい。
また、上記の荷電制御剤としても、公知のものを用いることができ、正帯電性トナー用の荷電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。負帯電性トナー用荷電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物などがある。荷電制御剤は一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
また、上記の離型剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を単独あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、一般に上記のバインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の割合で用いることが好ましい。
また、上記の外添剤としても、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子を使用することができ、特にシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコーンオイル等で疎水化したものを用いるのが好ましい。そして、このような流動化剤を上記のトナーに対して0.1〜5質量%の割合で添加させて用いるようにする。外添剤の個数平均一次粒径は10〜100nmであることが好ましい。
さらに上記外添剤として、トナーと逆極性の荷電性を有する逆極性粒子を使用してもよい。好適に使用される逆極性粒子はトナーの帯電極性によって適宜選択される。
トナーとして負帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、正帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に正帯電性を付与する正荷電制御剤を含有させたり、含窒素モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。
上記の正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩等を使用することができ、また上記の含窒素モノマーとしては、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール等を使用することができる。
一方、正帯電性トナーを用いる場合、逆極性粒子としては、負帯電性を有する微粒子が用いられ、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子に加え、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子を使用することができる。また樹脂中に負帯電性を付与する負荷電制御剤を含有させたり、含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体を構成するようにしてもよい。上記の負荷電制御剤としては、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用することができる。
また、逆極性粒子の帯電性及び疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理するようにしてもよく、特に、無機微粒子に正帯電性を付与する場合には、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましく、また負帯電性を付与する場合には、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
逆極性粒子の個数平均粒径は、100〜1000nmであることが好ましい。トナーに対して0.1〜10質量%の割合で添加させて用いるようにする。
<キャリヤ>
キャリヤとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリヤを使用することができ、バインダー型キャリヤやコート型キャリヤなどが使用できる。キャリヤ粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。
バインダー型キャリヤは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けることもできる。バインダー型キャリヤの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御することができる。
バインダー型キャリヤに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
バインダー型キャリヤの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。その形状は粒状、球状、針状の何れであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリヤを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリヤ中に50〜90質量%の量で添加することが適当である。
バインダー型キャリヤの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられ、これらの樹脂を表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
バインダー型キャリヤの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリヤと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリヤの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリヤ中に打ち込むようにして固定することにより行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリヤ中に完全に埋設されるのではなく、その一部を磁性樹脂キャリヤ表面から突き出すようにして固定される。
帯電性微粒子としては、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的には、有機系としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用いることができ、帯電レベル及び極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電性の無機微粒子などが用いられる。
一方、コート型キャリヤは磁性体からなるキャリヤコア粒子に樹脂コートがなされてなるキャリヤであり、コート型キャリヤにおいてもバインダー型キャリヤ同様、キャリヤ表面に正または負帯電性の帯電性微粒子を固着させたりできる。コート型キャリヤの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができ、バインダー型キャリヤと同様の材料を用いることができる。特にコート樹脂はバインダー型キャリヤのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
トナーとキャリヤの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されれば良く、トナー混合比はトナーとキャリヤとの合計量に対して3〜50質量%、好ましくは6〜30質量%が適している。
(現像装置2の構成と動作)
図1を参照して本実施形態に係る現像装置2の詳細な構成例と動作例を説明する。
<装置構成>
現像装置2において使用する現像剤24は、既述したようにトナーとキャリヤからなり、現像剤槽16に収容される。
現像剤槽16は、ケーシング19により形成されており、通常は内部に混合撹拌部材17、18を収納している。混合撹拌部材17、18は、現像剤24を混合・撹拌し、トナー供給用現像剤担持体11へ現像剤24を供給する。ケーシング19の混合撹拌部材18に対向する位置には、好ましくは、トナー濃度検出用のATDC(Automatic Toner Density Control)センサ20が配設されている。
現像装置2は通常、現像領域8で消費される分のトナーを現像剤槽16内に補給するための補給部10を有している。補給部10において、補給トナー23を収納した図示しないホッパから送られた補給トナー23が現像剤槽16内へ補給される。
現像装置2はまた、トナー供給用現像剤担持体11上の現像剤量を規制するための現像剤薄層化用の規制部材(規制ブレード)15を有している。
トナー供給用現像剤担持体11は、固定配置された磁石体13と、これを内包する回転自在なスリーブローラ12とから構成され、画像形成時には、トナー担持体25へとトナーを供給するためのトナー供給バイアスVb1が、トナー供給用現像剤担持体用バイアス電源32により印加される。
磁石体13は、スリーブローラ12の回転方向Bに沿ってS1、N1、S2、S3、N2の5つの磁極を有する。これらの磁極のうち、主磁極N1は、トナー担持体25と対向するトナー供給領域7の位置に配されている。
トナー回収用現像剤担持体26も同様に、固定配置された磁石体28と、これを内包する回転自在なスリーブローラ27とから構成され、トナー担持体25上の現像残トナーを回収するためのトナー回収バイアスVb3が、トナー回収用現像剤担持体用バイアス電源33により印加される。
磁石体28は、スリーブローラ27の回転方向Dに沿ってN4、S3、N5、S4、N6の5つの磁極を有する。これらの磁極のうち、主磁極S3は、トナー担持体25と対向するトナー回収領域9の位置に配されている。
また、スリーブローラ27上の現像剤24を剥離するための反発磁界を発生させる同極部N6、N4が、現像剤槽16内部に対向した位置に配置されている。
トナー回収用現像剤担持体26のトナー回収領域9から現像剤分離領域(上記同極部)の間には、トナー回収領域9通過後のトナー回収用現像剤担持体表面に偏在したトナーを引き付けるためのトナー剥離部材(フィルム部材)41が設けられており、保持電極42を介してトナー剥離バイアスVb4が電源34により印加される。
さらに、現像装置2においては、トナー供給用現像剤担持体11上の現像剤24をトナー回収用現像剤担持体26へと受け渡すために、それぞれのS2極とN4極がトナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26の対向部に配されている。トナー供給用現像剤担持体11のS2磁極側からトナー回収用現像剤担持体26のN4磁極側へ、現像剤24は受け渡され、搬送されていく。
トナー担持体25はトナー供給用現像剤担持体11、トナー回収用現像剤担持体26及び像担持体1のそれぞれに対向するように配され、像担持体1上の静電潜像を現像するための現像バイアスVb2がトナー担持体用バイアス電源31により印加されている。
トナー担持体25は上記電圧を印加可能な限りいかなる材料からなっていてもよく、例えば、アルマイト等の表面処理を施したアルミローラが挙げられる。その他アルミ等の導電性基体上に、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂コートやシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムコーティングを施したものを用いてもよい。コーティング材料としては、これに限定されるものではない。
さらに上記コーティングのバルクもしくは表面に導電剤が添加されていてもよい。導電剤としては、電子導電剤もしくはイオン導電剤が挙げられる。電子導電剤として、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これに制約されない。イオン導電剤として、四級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、その他イオン性高分子材料が挙げられるが、これにこだわらない。さらに、アルミ等の金属材料からなる導電性ローラであっても構わない。
<装置の動作>
図1を参照して現像装置2の動作例について詳しく説明する。
現像剤槽16内の現像剤24は、混合撹拌部材17、18の回転により混合撹拌され、摩擦帯電すると同時に現像剤槽16内で循環搬送され、現像剤担持体11表面のスリーブローラ12へと供給される。
この現像剤24は、トナー供給用現像剤担持体11内部の磁石体13の磁力によってスリーブローラ12の表面側に保持され、スリーブローラ12とともに回転移動して、トナー供給用現像剤担持体11に対向して設けられた規制部材15で通過量を規制される。
その後、現像剤24はトナー担持体25と対向するトナー供給領域7へと搬送される。
トナー供給領域7では磁石体13の主磁極N1の磁力によって現像剤穂立ちが形成され、トナー担持体25に印加された現像バイアスVb2とトナー供給用現像剤担持体11に印加されたトナー供給バイアスVb1により形成された供給電界がトナーに与える力により、現像剤24中のトナーがトナー担持体25側へ供給される。
トナー担持体25に供給されたトナー層は、トナー担持体25の回転に伴って現像領域8へと搬送され、現像バイアスと像担持体1上の潜像電位とによって形成される現像電界により潜像が顕像へと現像される。現像方式は反転現像方式であってもよいし、または正規現像方式であってもよい。
現像領域8でトナーを消費したトナー担持体25上のトナー層(現像残トナー)は、さらにトナー担持体25の回転によって、トナー回収用現像剤担持体26と対向するトナー回収領域9へと搬送される。
一方、トナー供給領域7においてトナー担持体25へとトナーを供給した残りの現像剤24は、トナー回収用現像剤担持体26との対向部まで搬送され、トナー供給用現像剤担持体11の磁極S2とトナー回収用現像剤担持体26の磁極N4により形成される磁界によって、トナー回収用現像剤担持体26へと受け渡される。
トナー回収用現像剤担持体26へと受け渡された現像剤24は、トナー回収用現像剤担持体26のスリーブローラ27とともに回転移動して、トナー担持体25と対向するトナー回収領域9まで搬送される。
トナー回収領域9では、トナー担持体25に印加された現像バイアスVb2とトナー回収用現像剤担持体26に印加されたトナー回収バイアスVb3により形成された回収電界がトナーに与える静電気力、及びトナー回収用現像剤担持体26に保持された現像剤24による機械的摺擦力によって、トナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体26へと現像残トナーが移動し、回収される。
トナー回収用現像剤担持体26上に回収されたトナーは、トナー回収領域9での回収電界の作用により、トナー回収用現像剤担持体26に担持された現像剤24層内において、トナー回収用現像剤担持体表面近傍に偏在した状態(トナー回収用現像剤担持体26表面にトナー層を形成)となる。
しかし、現像剤24が現像剤槽16に向けて搬送される過程のトナー剥離部材(フィルム部材)41との当接領域において、トナー回収用現像剤担持体26に印加されたトナー回収バイアスVb3とフィルム部材41に印加されたトナー剥離バイアスVb4とによって形成された剥離電界がトナーに与える力によって、トナーの偏在状態は解消される。トナーの偏在とトナー剥離部材によるその解消についての詳細は後述する。
その後、トナーは現像剤とともに現像剤槽16に向けて搬送され、磁石体28の同極部N6、N4の反発磁界によってトナー回収用現像剤担持体26上から剥離され、現像剤槽16内へと回収される。
図示しない補給制御部が、ATDCセンサ20の出力値から、現像剤24中のトナー濃度が画像濃度確保のための最低トナー濃度以下になったことを検出すると、図示しないトナー補給手段によってホッパ内に貯蔵された補給トナー23がトナー補給部10を介して現像剤槽16内へ供給される。
<現像剤の流れについて>
なお、上記現像装置2の構成と動作例では、現像剤の流れは次のようであった。
すなわち、トナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26が対向して配置し、現像剤槽16からトナー供給用現像剤担持体11上に供給された現像剤24をトナー供給用現像剤担持体11上で規制し、トナー供給用現像剤担持体11からトナー回収用現像剤担持体26へ受け渡し、トナー回収用現像剤担持体26から分離して現像剤槽16へと戻すようにしている。
しかしながら、現像剤24の流れは上記の流れに限定されるものではない。
例えば、トナー回収用現像剤担持体26から再度トナー供給用現像剤担持体11に現像剤24を受け渡した後に、トナー供給用現像剤担持体11から現像剤槽16へと戻すようにしてもよい。この場合、トナー剥離部材(フィルム部材)41は、トナー回収領域9通過後、現像剤受け渡し前の間に設ければよい。
また、現像剤槽16からトナー供給用現像剤担持体11及びトナー回収用現像剤担持体26のそれぞれに現像剤24を供給し、それぞれで搬送量を規制した後にトナー供給領域7及びトナー回収領域9に搬送し、それぞれの現像剤担持体上から現像剤24を分離して現像剤槽16へと戻す(トナー供給用現像剤担持体11とトナー回収用現像剤担持体26との現像剤の流れを別にする)ようにしてもよい。
つまり、トナー供給領域7に搬送される現像剤24が現像剤槽16でトナー濃度が調整された現像剤であればよい。
(トナー回収領域での問題とトナー剥離部材について)
トナー回収領域でのトナー回収能力の問題(トナー回収用現像剤担持体表面のトナー蓄積)とそれを防止するためのトナー剥離部材の詳細について説明する。
まず、現像履歴(ゴースト)について述べ、次に現像剤担持体によるトナー供給、回収能力とバイアス設定について説明し、最後にトナー回収用現像剤担持体上のトナー蓄積とそれによる回収能力の低下を防止するためのトナー剥離部材の設定について説明する。
<ゴーストについて>
図2を用いて現像履歴(ゴースト、画像メモリーともいう)について説明する。
図2(a)はゴーストを検知するために使用する画像チャートの一例である。背景領域である白部51に黒ベタ領域52及びハーフ画像領域53が図に示すように配置されている。図2(b)は、図2(a)の画像チャートを図示するような印刷方向で印刷し、ゴーストが発生した様子を示す印刷画像例である。
現像履歴(画像メモリー、ゴースト)とは、次のような現象である。
図2(a)の画像チャートに示すような、白地部51に黒ベタ部52のようにコントラストの高い画像を印刷した後に、グレーなどのハーフトーン画像領域53の印刷が続くような中間調画像を出力する。そうすると、出力した印刷画像には、図2(b)に示すようにハーフトーン画像領域53内に、原稿とした画像チャートには存在しなかった、上流側で印刷したハイコントラスト画像のパターンが現れる。図2(b)では、黒ベタ部のトナー担持体一周期分後で印刷されるハーフトーン画像領域53内にゴーストであるパターン54が見られる。
このような現象は、次のようなことに起因するものである。
ハイコントラスト画像を印刷した直後のトナー担持体上には、印刷画像パターンに対応した現像残トナー層が残留するため、それが十分除去されていないと、それに続くトナー担持体へのトナー供給後にも、トナー担持体上には、印刷した画像パターンに応じたトナー層の厚みムラなどが残る。
そのトナー層の厚みムラによる現像特性変化が、次の印刷画像上に、先行して印刷したパターンに対応した濃度ムラ(ゴースト)を生じさせる。この現像特性変動による濃度ムラは特に中間調画像において視認性が高い。
従って、トナー担持体表面の現像残トナーを十分に回収することが、ゴーストの発生を抑止するために必要となる。
<各現像剤担持体によるトナー供給、回収能力とバイアス設定について>
本実施形態は、ハイブリッド現像方式である。特に、トナー担持体にトナーを供給するトナー供給用現像剤担持体に加えて、トナー回収用現像剤担持体を設け、トナー回収用現像剤担持体にトナー担持体上の現像残トナーを回収する電圧を印加するようにしたトナー供給回収機能分離型のハイブリッド現像方式である。
トナー剥離部材を設けない場合を例にして、トナー供給用現像剤担持体、及びトナー回収用現像剤担持体によるトナー供給、回収能力とバイアス設定について、図3を用いて説明する。
図3は、トナー剥離部材を設けない場合の、トナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、トナー回収用現像剤担持体26に印加される各バイアス電圧、及びトナー蓄積に伴うトナー層電位について、負帯電トナーを用いたとして示したものである。
トナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、及びトナー回収用現像剤担持体26のそれぞれに印加される各バイアス電圧は、直流電圧であっても、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧であってもよいが、ここでは単純のためにそれぞれの印加電圧の平均値を用いて説明する。ここで、印加電圧の平均値とはDCバイアスであれば電圧値、AC重畳バイアスであればDC成分の値である。例えばDuty比を設けた矩形波など非対称波形の場合は時間平均のことである(以下、同様)。
図3(a)は、トナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、トナー回収用現像剤担持体26のそれぞれに印加されるバイアス電圧Vb1、Vb2、Vb3の関係の一例を示している。
この例では、トナー供給用現像剤担持体11上の現像剤からトナー担持体25へトナーを供給させるために、トナー供給用現像剤担持体11とトナー担持体25間に電位差Vb2−Vb1(トナー供給電位差)が設定されている。
また、トナー担持体25上の現像に使用されなかったトナー(現像残トナー)をトナー回収用現像剤担持体26に回収するために、トナー担持体25とトナー回収用現像剤担持体26との間に電位差Vb3−Vb2(トナー回収電位差)が設定されている。
まず、トナー供給用現像剤担持体11からトナー担持体23へのトナー供給のみを考える。
トナー供給用現像剤担持体11からトナー担持体25へのトナー供給量は、トナー供給電位差Vb2−Vb1の大きさに依存し、繰り返しトナー供給が行われることによってトナー供給量は次第に増大し、その最大供給量は、トナー担持体25上に供給されたトナー層によるトナー層電位Vtdがトナー供給電位差Vb2−Vb1とほぼ等しくなる量である(図3(b)参照)。
このようにトナー担持体25上のトナー量はトナー供給履歴(トナー供給前のトナー担持体25上のトナー量、すなわち現像履歴)によって変化するため、トナー回収用現像剤担持体26を設けない構成においては、トナー担持体25上のトナー量を一定に保つことが難しく、現像履歴に応じてトナー担持体25上のトナー量にムラが生じ、これが画像メモリー(ゴースト)の要因となる。
そこで、トナー回収用現像剤担持体26を設け、現像残トナーの少なくとも一部を回収することで、現像履歴に関わらずトナー供給前のトナー担持体25上のトナー量を揃えることを可能としている。
このため、トナー担持体25上の現像残トナーのトナー回収用現像剤担持体26への回収は、トナー担持体25とトナー回収用現像剤担持体26間の電位差Vb3−Vb2(トナー回収電位差)に加えて、トナー担持体25上のトナー層電位Vtdの影響も受ける。
すなわちトナー担持体25への印加電圧Vb2にトナー層電位Vtdを加えたVb2+Vtdとトナー回収用現像剤担持体26への印加電圧Vb3との電位差Vb3−(Vb2+Vtd)が実効的なトナー回収電位差となる。
従って、トナー回収用現像剤担持体26への印加電圧Vb3は、Vb2+Vtd−Vb3がトナー回収方向となる電圧であれば静電気力によるトナー回収効果が得られる。
例えば、図3(c)に示すように、トナー回収用現像剤担持体26への印加電圧Vb3がトナー担持体11への印加電圧Vb2に対してトナーを供給する方向であっても、実効的なトナー回収電位差によって、トナー層の一部に対しては回収方向へ作用し、トナー供給前のトナー担持体25上の現像履歴(トナー量ムラ)を均す効果が得られる。
このように、トナー回収領域9でのトナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体26への現像残トナーの回収は、実効的なトナー電位差に依存する。しかしながら、トナー回収領域9で、この回収方向の電界が強すぎると次のような問題が生じてくる。
すなわち、トナー回収領域9でトナー担持体25から回収されたトナーや現像剤(穂立ち)中のキャリヤから分離されたトナーが、トナー回収用現像剤担持体26表面へ移動し、表面でのトナーの偏在が生じてくることが起こる。
<トナー回収用現像剤担持体上のトナー蓄積とトナー回収能力の低下>
図4は、トナー回収領域9における、トナー回収用現像剤担持体26の磁極による現像剤の穂立ちの状態と電界方向へのトナーの移動の様子を示す断面図である。図4を用いて、トナー回収用現像剤担持体26表面でのトナーの偏在と蓄積、それによる回収能力の低下について説明する。
図4(a)では、回収電界の方向(図中央の太い矢印参照)に対して、ほぼ平行に現像剤24の穂立ち(磁気ブラシ)が生じている。トナー回収用現像剤担持体26へ回収されたトナー及びトナー回収用現像剤担持体26上の現像剤24に含まれているトナーのうちの一部は、トナー回収電界の作用を受けることによって、磁極により穂立ちを形成された磁気ブラシチェーンを伝わり、容易にトナー回収用現像剤担持体26表面まで移動する。
その結果、トナー回収領域9の上流側において、図4(b)に示すようにトナー45がキャリヤ46粒子表面に付着して分散した状態であったものが、トナー回収領域9通過後の下流側では、図4(c)に示すように一部のトナー45がキャリヤ46と分離した状態となり、トナー回収用現像剤担持体26表面に偏在したトナー層を形成するようになる。
このように、トナー回収用現像剤担持体26表面へ移動し、偏在したトナーは、キャリヤと分離された状態となる。そのため、現像剤24がトナー回収用現像剤担持体26の回転に伴い搬送され、磁石ロール28の同極部N6、N4の反発磁界によって現像剤槽16へと戻される際に、キャリヤと共に現像剤槽16には戻らず、トナー回収用現像剤担持体26表面に残留した状態となる。
このトナー回収用現像剤担持体26の表面残留トナーの量は、回収動作を繰り返し行うことで次第に増加、蓄積する。図3(a)の電位設定の場合、最終的には、図5に示すように、トナー回収用現像剤担持体26上のトナー層電位Vtrは、トナー担持体25の印加電圧Vb2にトナー担持体25上トナー層電位Vtdを加えた値とほぼ等しくなるまで増大する。
トナー回収用現像剤担持体26上の帯電トナーの蓄積により、トナー層電位Vtrが増大するということは、トナー回収用現像剤担持体26によるトナー回収のための実効的な回収電位差Vb3+Vtr−(Vb2+Vtd)が減少していくということを表す。
特にトナー回収用現像剤担持体26上のトナー層電位Vtrが、図5に示すような状態までに増加すると回収のための実効電位差はゼロとなってしまう。
従って、トナー回収用現像剤担持体26表面での帯電したトナーの蓄積は、トナー回収領域9での回収電界を阻害し、トナー回収能力を低下させてしまう。このため、トナーの蓄積が生ずるまでは良好であった現像残トナーの回収能力が、長期間は持続せず、画像形成の繰り返しとともにゴースト発生が問題となってくる。
本実施形態では、トナー回収領域において、トナー回収用現像剤担持体26表面に偏在したトナーを、トナー剥離部材を設けることで解消し、上述のトナー蓄積によるトナー回収能力の低下を抑制している。以下にその効果について説明する。
<トナー剥離部材の機能動作>
図6及び図7は、本発明のトナー剥離部材(フィルム部材)41を設けた場合の、トナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、トナー回収用現像剤担持体26及びトナー剥離部材(フィルム部材)41への印加電圧、そしてそれぞれの電位差によって移動するトナーに伴うトナー層電位について、図3と同様に負帯電トナーを用いたとして示したものである。
図6及び図7においても図3と同様に、トナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、トナー回収用現像剤担持体26及びトナー剥離部材(フィルム部材)41のそれぞれに印加される電圧は、直流電圧であっても、直流電圧に交流電圧が重畳された電圧であってもよいが、ここでは単純のためにそれぞれの印加電圧の平均値を用いて説明する。
図6(a)はトナー供給用現像剤担持体11、トナー担持体25、トナー回収用現像剤担持体26及びトナー剥離部材(フィルム部材)41のそれぞれに印加される電圧Vb1、Vb2、Vb3及びVb4の関係の一例を示している。
この例でも同様にトナー供給用現像剤担持体11上の現像剤からトナーをトナー担持体25へと供給させるためのトナー供給電位差Vb2−Vb1が設定されている。また、トナー担持体25上の現像に使用されなかったトナー(現像残トナー)をトナー回収用現像剤担持体26に回収するためのトナー回収電位差Vb3−Vb2が設定されている。
加えて、トナー回収用現像剤担持体表面に偏在するトナー層をトナー剥離部材(フィルム部材)41側に引き付けるためにトナー回収用現像剤担持体26とトナー剥離部材(フィルム部材)41との間にトナー剥離電位差Vb4−Vb3が設定されている。
トナー供給用現像剤担持体11からトナー担持体25へのトナー供給、トナー担持体25上の現像残トナーのトナー回収用現像剤担持体26へのトナー回収は図3の場合と同様であるため説明は省略する。
図6(b)に示すようにトナー回収用現像剤担持体表面にある量のトナー層(トナー層電位Vtr)が形成された状態を考える。
トナー回収用現像剤担持体26表面に偏在したトナー層(トナー層電位Vtr)は、実効的なトナー剥離電位差Vb4−(Vb3+Vtr)の作用により、トナー剥離部材(フィルム部材)41の方向へと引き付けられて解消される。そのためVtrが減少し、トナー担持体25とトナー回収用現像剤担持体26間のトナー回収電位差Vb3−(Vb2+Vtd)が、トナー回収用現像剤担持体26表面にトナー層が形成されることによるトナー層電位Vtrによって打ち消されることがなくなる。
ここで、図7(a)に示すように、トナー回収用現像剤担持体26表面のトナー層(トナー層電位Vtr)がトナー剥離電位差Vb4−(Vb3+Vtr)によってトナー剥離部材(フィルム部材)41側に引き付けられた結果、トナー剥離部材(フィルム部材)41上にトナー層(トナー層電位Vtf)が形成されることが懸念される。
すなわち、繰り返し動作によってトナー剥離部材(フィルム部材)41上のトナー層(トナー層電位Vtf)が増大すると、トナー剥離電位差Vb4−(Vb3+Vtr)がトナー層電位Vtfによって打ち消され、実効的なトナー剥離電位差が小さくなってしまうと考えられる。
しかしながら、以下の理由によりトナー剥離部材(フィルム部材)41上にはトナー層(トナー層電位Vtf)がほとんど形成されない。
図8(a)に示すように、トナー回収用現像剤担持体26上の現像剤24の移動速度は、現像剤24がトナー回収用現像剤担持体26表面に磁力により吸着されて移動するため、トナー回収用現像剤担持体26表面(スリーブローラ27)の移動速度とほぼ等しい(トナー回収用現像剤担持体26と現像剤24との界面に速度差が生じない)。
従って、トナー回収用現像剤担持体26表面に形成されたトナー45層に対して摺擦力が作用せず、現像剤24を用いてトナー45層を除去することができない。
それに対して、図8(b)に示すように、トナー剥離部材(フィルム部材)41を設けた場合では、トナー剥離電界によってトナー剥離部材(フィルム部材)41側にトナー45が引き付けられるものの、トナー剥離部材(フィルム部材)41とトナー回収用現像剤担持体26上の現像剤24との当接ニップ部に着目すると、トナー剥離部材(フィルム部材)41が固定されているのに対して、現像剤24はトナー回収用現像剤担持体26の回転に伴い移動している状態である。
これにより、トナー剥離部材(フィルム部材)41と現像剤24との界面で速度差が生じ、トナー剥離電界によってフィルム部材41上にトナー45層が形成されるようなことがあっても、トナー45層に現像剤24による摺擦力が作用するために掻き取られ、フィルム部材41上にトナー層が蓄積していくことがない。
この作用により、図7(b)に示すように、フィルム部材41上のトナー層電位Vtfは繰り返し動作によって増大することがなく、ほぼゼロか、極めて小さいレベルに制限され、トナー剥離電位差を安定して維持することが可能である。
以上のことから、少なくともトナー剥離電位差Vb4−(Vb3+Vtr)が正帯電トナーの場合には負の値、負帯電トナーの場合には正の値になるよう設定すればよい。さらにフィルム部材41とトナー回収用現像剤担持体26との間の電界は振動電界であることが好ましい。
フィルム部材41とトナー回収用現像剤担持体26との間の電界を振動電界とすることで、トナー回収用現像剤担持体26表面に付着したトナーを確実にフィルム部材41側へ引き付けることが可能となる。
(各ニップ部でのトナー層の状態推移)
図10から図13には、トナー剥離部材(フィルム部材)41を設けた場合の各ニップ通過前後での各部材上のトナー層の状態を整理して示す。ここで、各部材の電圧設定は一例であり、必ずしもこれに制限されるものではない。図9は、参照のために図1の主要部を抜き出したものである。
[1]トナー供給領域7の前後では、図10に示すように、ニップ通過前にはトナー担持体25上にはトナーが存在せず、ニップを通過することでトナー供給用現像剤担持体11とトナー担持体25との間に形成されたトナー供給電位差を埋めるように、トナー供給用現像剤担持体11上の現像剤からトナーのみがトナー担持体25に供給される。
[2]現像領域8の前後では、画像部と非画像(背景)部で挙動が異なる。
画像部では図11(a)に示すように、ニップ通過前にはトナー担持体25上に存在していたトナーが、ニップを通過することで、トナー担持体25と像担持体1の画像部電位Viとの間に形成された現像電位差を埋めるように、トナー担持体25から像担持体1の画像部に現像され、トナー担持体25上のトナー量が少なくなる(図では完全に現像されている)。
一方、非画像部では図11(b)に示すように、ニップ通過前にはトナー担持体25上に存在するトナーは、ニップを通過してもトナー担持体25と像担持体1の非画像部電位V0との間に形成された背景部電位差のために、トナー担持体25から像担持体1の非画像部に移動することができず、トナー担持体25上に留まる。
この結果、トナー担持体25上に現像残トナー量の違いとして現像履歴が生じる。
[3]トナー回収領域9の前後では、現像履歴の有無で挙動が異なる。
現像履歴を受けた場合には、図12(a)に示すように、ニップ通過前にはトナー担持体25上にはトナーが存在せず(もしくは非画像領域と比較して少なく)、ニップを通過してもトナー担持体25とトナー回収用現像剤担持体26との間に形成されたトナー回収電位差のために、トナー担持体25上にトナーが付着することはない(現像後にトナー担持体25上にトナーが残っていた場合には、トナー担持体25上のトナーはトナー回収用現像剤担持体26に回収される)。
しかし、トナー回収用現像剤担持体26上には現像剤24が存在するため、トナー回収電位差によって、現像剤中のトナーの一部がトナー回収用現像剤担持体26表面に付着する。
一方、現像履歴を受けていない場合、図12(b)に示すように、ニップ通過前にはトナー担持体25上に存在していた現像残トナーは、ニップを通過するとトナー担持体25とトナー回収用現像剤担持体26との間に形成されたトナー回収電位差を埋めるように、トナー担持体25からトナー回収用現像剤担持体26へ回収される。
この結果、トナー担持体25上に現像残トナーの有無による現像履歴はリセットされ、トナー担持体25は[1]のニップ通過前の状態に戻る。一方、トナー担持体25上の現像履歴の影響はトナー回収用現像剤担持体26へ転写され、トナー回収用現像剤担持体26表面に付着したトナー量の差として残る。
[4]トナー剥離領域29の前後では、トナー剥離部材(フィルム部材)41上にトナーが留まらないため、トナー回収用現像剤担持体26表面に付着したトナー量の影響は受けない。図13に示すように、ニップ通過前にはトナー回収用現像剤担持体26表面に付着していたトナーが、ニップを通過することにより、トナー回収用現像剤担持体26とトナー剥離部材(フィルム部材)41との間に形成されたトナー剥離電位差を埋めるように、トナー回収用現像剤担持体26からトナー剥離部材(フィルム部材)41側へ剥離される。
それと同時に、トナー剥離部材(フィルム部材)41に付着したトナーは、トナー回収用現像剤担持体26上の現像剤24によって摺擦されるため、トナー剥離部材(フィルム部材)41上に留まることはない。現像剤分離領域においてトナー回収用現像剤担持体26に内包される磁石体の磁極N6、N4の同極部が形成する反発磁界によって現像剤槽16へと戻される。
これによって、トナー回収用現像剤担持体26表面に付着していたトナーはリセットされ、トナー回収用現像剤担持体26は[3]のニップ通過前の状態に戻る。
(トナー剥離部材の材質、構成)
上述のように、本実施形態に係るトナー剥離部材(フィルム部材)41には、
(a)トナー回収用現像剤担持体26表面のトナー層をトナー剥離部材(フィルム部材)41側に引き付けるためのトナー剥離電位差を形成すること、及び、
(b)トナー剥離電位差によってトナー剥離部材(フィルム部材)41上に付着したトナーが現像剤24の磁気ブラシにより掻き取られ、トナー剥離部材(フィルム部材)41表面への蓄積が抑制されること、
が求められる。
トナー剥離部材としてはフィルム状の部材を用いることが好ましい。フィルム部材を用いることで、
・現像剤との広い当接ニップ幅を容易に確保できる、
・現像剤への適度な安定した当接圧が確保できる、
といった利点が得られる。
現像剤との当接ニップ幅を広くすることで、トナー回収用現像剤担持体表面に付着したトナーがトナー回収用現像剤担持体とフィルム部材間に形成されるトナー剥離電界によって現像剤層中をフィルム部材側へ移動する時間が確保され、より小さい電界での使用や速いシステム速度での使用が可能となる。
現像剤への適度な当接圧とすることで、フィルム部材と現像剤とが安定して接触することが可能となり、フィルム部材に引き付けたトナーを現像剤によって確実に掻き取ることが可能になる。同時に、環境や耐久によって現像剤搬送量が増加した場合においても、フィルム部材当接部を現像剤が通過することができずにニップ入り口で滞留するような不具合が生じることを抑制できる。
フィルム部材の材料としては、特に制限はなくリン青銅、ニッケルやSUSなどの金属薄膜、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂からなるフィルムや、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等からなるゴムフイルムが挙げられるが、これらに制約されない。
上述したように、トナー剥離電位差によってトナー回収用現像剤担持体26表面のトナー層を引き剥がし、トナー剥離部材(フィルム部材)41側に引き付けるが、トナー剥離電位差によってトナー剥離部材(フィルム部材)41上にトナー付着が生ずる恐れもある。付着したトナーは現像剤24の磁気ブラシにより効率的に掻き取られ、トナー剥離部材(フィルム部材)41表面への蓄積が防止されることが望ましい。
フィルム部材側に付着したトナーを現像剤の摺擦力により掻き取るという観点からは、フィルム部材のキャリヤに対する摩擦帯電極性がトナーと同極性であることが好ましい。
フィルム部材のキャリヤに対する摩擦帯電極性がトナーと同極性であれば、キャリヤからなる磁気ブラシの摺擦により、トナーと同極性に帯電し、付着したトナーと反発することで磁気ブラシ(キャリヤ)により付着トナーを容易に掻き取りやすくなる。
また合わせて、トナーを除電する効果もあり、トナー回収用現像剤担持体表面への再付着も抑制され、効果的にトナー回収用現像剤担持体表面の蓄積トナーの除去が行える。
フィルム部材の摩擦帯電に関わる物性を規定するには、摩擦帯電極性と相関のよい仕事関数を測定してキャリヤと比較してもよいが、フィルム部材とキャリヤを実際に摺り合わせて生成する摩擦帯電量を測定するのが簡便である(後述する実施例2〜7参照)。
また、フィルム表面粗さによってもトナーの付着力を低減することが可能であり、フィルム部材の現像剤当接面の算術平均表面粗さRaは0.01μm〜2μmが好ましい。表面粗さが小さすぎるとフィルム部材とトナーとの付着力が大きくなり掻き取りが容易でなくなり、大きすぎるとフィルム部材表面の凹凸が現像剤による摺擦に対して抗うように作用してしまい掻き取り不良の要因となる。
所望のフィルム部材表面粗さを得るには、フィルム部材のバルクまたは表面に粗さ調整剤を必要に応じて添加すればよい。粗さ調整剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機微粒子やPMMA等の樹脂微粒子が挙げられるが、これに限定されない。また、後述するカーボンブラック等の導電剤を粗さ調整剤として用いても構わない。
また、特にフィルム部材の撓みを用いてフィルム部材を現像剤へ当接する場合、用いる材料の弾性率に応じて適切な形状(厚み、長さ)を選択することで適度な当接圧を得ることが可能となる。
フィルム部材の電気抵抗もフィルム部材とトナー回収用現像剤担持体間に電界を形成することが可能であれば特に制約されることなく、金属のような導電性でも使用可能であるし、樹脂フィルムのような絶縁性のものであっても背面に金属蒸着などを施し電極を形成することで使用可能となる。
但し、導電性が高い場合、フィルム部材とトナー回収用現像剤担持体間でリークが生じない範囲でトナー剥離電位差を設定する必要がある。また、絶縁性フィルムを用いる場合、絶縁性フィルムと現像剤との間の摩擦によって絶縁性フィルムが帯電され、トナー剥離電位差を打ち消す恐れがあるために、材料選択の範囲が狭められる。
このような観点から、フィルム部材抵抗としては104〜1010Ω/□程度が好ましい。このような適度なフィルム部材抵抗を得るために、樹脂フィルムやゴムフイルムのバルクまたは表面に導電剤を必要に応じて添加してもよい。係る導電剤としては電子導電剤またはイオン導電剤が挙げられる。
電子導電剤としては、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子等が挙げられるが、これらに制約されない。イオン導電剤の例としては、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、イオン性高分子材料が挙げられるが、これに限定されない。
フィルム部材の厚さとしては、5μm以上1mm以下、好ましくは10μm以上200μm以下を例示できる。薄すぎると強度不足となり、厚すぎると、フィルム部材の弾性率やフィルムの支点から当接部までの長さにもよるが、フィルム部材の現像剤層への当接圧が大きくなりすぎ、当接部に現像剤がせき止められて現像剤こぼれが生じる恐れがある。さらに、現像剤との接触ニップ幅が十分確保しにくいという問題が生じる。
フィルム部材は、バイアスを印加する保持電極に固定されることで保持され、保持方法は片端を自由端とする片持ち支持でも良いし、両端を固定する両端支持であってもよい。さらに、フィルム部材を円筒形状のスリーブ構成として保持電極に保持しても良い。
保持電極に固定されたフィルム部材の現像剤層への当接はフィルム部材の弾性による復元力を用いても良いし、フィルム部材とトナー回収用現像剤担持体との間に設けられた電位差による静電吸着力を用いても良い。当接方法に応じて、適宜、材料(弾性率)や形状(長さ、厚み)を選択することができる。
図14に、フィルム部材41の弾性変形に対する復元力を用いて当接させている例を示す。保持方法は片端を自由端とする片持ち支持である。図14(a)と(b)とでは保持方法が異なるが、何れもフィルム部材41の弾性による復元力を用いて当接させている。
また図14(a)と(b)とでは、何れもフィルム部材41が第1のフィルム部材61と第2のフィルム部材62の積層構成となっている。第1のフィルム部材61は導電性を有するフィルム部材であり、第2のフィルム部材62は、第1のフィルム部材61より弾性変形に対する復元力が低下しにくい特性を有するフィルム部材である。
以下に述べるような環境条件や耐久によるフィルム部材の弾性変形に対する復元力の低下を抑制するために、このような構成が望ましい。
すなわち、単層のフィルム部材であれば、材料によっては熱によるクリープが生じやすく、特に高温下での待機時に弾性による復元力が低下し変形が復元しなくなる恐れがある。変形に対する復元力が低下すると、トナー回収用現像剤担持体への当接力が弱くなり、フィルム部材上にトナーが付着して電界を弱め、トナーの蓄積を抑制する効果が得られにくくなる。
特に本実施形態では、フィルム部材に導電性を持たせるため、導電性粒子を分散しており、これらがクリープを助長させている場合もある。
従って図14の例では、導電性及び摩擦帯電性を有する第1のフィルム部材61の裏にクリープに強い第2のフィルム部材62を張り合わせて、トナー剥離部材としてのフィルム部材41を構成している。これにより、クリープ等による復元力の低下、すなわち当接力の変化を抑制することができ、安定してトナー回収用現像剤担持体へのトナー蓄積抑止が行える(後述する実施例14、15参照)。
第2のフィルム部材の材料としては、導電性は不要であってクリープに強い、すなわち弾性変形に対する復元力の変化しにくい材料を選択すればよい(フィルム部材の弾性による復元力の評価方法については、後述する実施例14、15参照)。
そのような材料としては、第1のフィルム部材の材料と比べて導電剤等の添加物の少ない樹脂材料等が好ましい。例えば、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、アクリル、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。弾性と変形に対する強さの兼ね合いから、何れも厚みは30〜300μm程度が好ましい。
フィルム部材の現像剤層への当接位置はトナー回収用現像剤担持体内部の磁石体の磁極位置近傍が好ましい。当接位置を磁極位置近傍とすることで現像剤の磁気ブラシが穂立ちした状態となり、トナー剥離電界によってトナー回収用現像剤担持体表面に付着したトナー層のフィルム部材側へ移動が容易になるだけでなく、フィルム部材に付着したトナーを現像剤が掻き取る際の摺擦力を大きくすることが可能となる。
このように、本実施形態に係る現像装置、及び画像形成装置では、トナー回収領域を通過後に、トナー回収した現像剤層を介して、トナー回収用現像剤担持体に当接するトナー剥離部材を設け、バイアス電圧を印加してトナーをトナー回収用現像剤担持体から引き離す方向の電界を形成する。これにより、トナー回収用現像剤担持体表面へのトナー偏在を解消し、トナー蓄積による回収能力の低下を抑制し、ゴーストの問題が発生しない高画質の画像を長期に渡って得ることができる。
上述した実施形態に係る現像装置を用いて、効果を確認するために実施した結果を述べる。
用いた現像装置は、上記現像装置2に相当する構成の現像装置を用意した。但し、本発明に係るトナー剥離部材としてのフィルム部材を設けたもの(実施例に使用)と、従来の設けていないもの(比較例に使用)とを用意した。
画像形成装置は、コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製のMFPであるbizhubC350を改造し、図1に示した構成の現像装置2を装着して用いた。現像剤も上記bizhubC350用の現像剤を用いた。トナーの極性はマイナス帯電であり、現像剤のトナー濃度は8%であった。
各現像装置において、像担持体とトナー担持体との現像ギャップは0.15mmとした。トナー担持体とトナー供給用現像剤担持体とのトナー供給ギャップ、トナー担持体とトナー回収用現像剤担持体とのトナー回収ギャップ、トナー供給用現像剤担持体と規制部材とのギャップはそれぞれ0.35mmとした。
トナー担持体に印加する電圧は、振幅がpeak to peakで1.4kV、DC成分が−350V、周波数が4kHz、Duty比が50%の矩形波電圧とした。
トナー供給用現像剤担持体に印加する電圧はDC−550V、トナー回収用現像剤担持体に印加する電圧はDC−200Vとした。
像担持体上に形成された静電潜像の背景部電位は−550V、画像部電位は−60Vであった。
後述する実施例及び比較例においては、上記の画像形成装置を用いて、図2(a)に示した画像チャートを1000枚(実施例1及び比較例)または50k枚(実施例2〜11)連続印刷し、印刷枚数による現像履歴(ゴースト)の発生状態を比較した。また、実施例12〜15では40℃で12時間保管後に100枚連続印刷し、現像履歴(ゴースト)の発生状態を比較した。
図2(b)の出力画像に54で示したのはゴーストが発生した例で、黒ベタ部52の1周期後の位置にハーフ画像部53より薄い領域54が発生している。この黒ベタ部52に対応する領域54と白ベタ部51に対応するハーフ画像部53の濃度測定によりゴースト発生を評価した。
現像履歴(ゴースト)の評価は、濃度計(X−Rite社製X−Rite310)により行った。印刷されたハーフ画像部の黒ベタ部、白部に対応する領域の濃度を測定し、濃度差が0.05以下の場合を○(特に良好)、濃度差が0.05を超えて0.1以下の場合を△(良好)、それ以外を×(発生)とした。
また、印刷履歴によるトナー回収用現像剤担持体表面へのトナーの蓄積が発生しているかを確認するため、印刷枚数により現像器を取り出して、キャリヤとともに分離されずに同極部(N4極からN6極の間)で表面に付着しているトナー層の表面電位を測定した。
表面電位の測定に際してはTREK社製表面電位計Model344を用い、トナー回収用現像剤担持体を接地した状態で測定を行った。評価は、測定したトナー層電位の絶対値が10V以下であれば○(特に良好)、10Vを超えて100V以下であれば△(良好)、それ以外を×(不良)とした。
<実施例1>
図1に示す現像装置を用い、トナー回収用現像剤担持体26の磁極S4と対向するようにトナー剥離部材としてのフィルム部材41を設けた。
フィルム部材としてはPTFE中にカーボンを分散し、フィルム抵抗104Ω/□とした、厚み80μmのフィルムを用いた。
フィルム部材への印加電圧は、振幅がpeak to peakで1.4kV、DC成分0V、周波数4kHz、Duty比50%の矩形波電圧とした。
<比較例>
実施例の現像装置からフィルム部材41を除いた構成とした。
<実施例1及び比較例の評価結果>
実施例1及び比較例の評価結果を表1に示す。
表中、「トナー剥離部材」のフィルム部材あり、フィルム部材なしは、それぞれ上述したトナー剥離部材としてのフィルム部材を設けたか、否かを表す。
「現像履歴」は、ゴースト発生状況を前記の基準で判断した評価であり、1枚目から1000枚目までの各印刷枚数で評価している。
「トナー層電位」は、トナー回収用現像剤担持体表面における、N4からN6極の間の表面電位を測定した結果を前記の基準で判断した評価であり、これも1枚目から1000枚目までの各印刷枚数で評価している。
表1より、本発明の実施例1と比較例の結果を比較して明らかなように、本発明に係るトナー剥離部材を設けた現像装置では、トナー回収用現像剤担持体表面への付着トナー量がほとんどない状態で維持することが可能であり、これによってトナー担持体上の現像残トナーのリセット性の安定化、ひいては安定して良好な画像出力が可能である。
一方トナー剥離部材を設けていない現像装置では、印刷10枚目で既にトナー層の蓄積が見られ、枚数とともにトナー回収能力が低下している。印刷100枚目ではゴーストが発生している。
<実施例2〜11>
実施例2〜11については、50k枚の耐久テストを実施して実施例1と同様の現像履歴評価を行った。以下に、実施例1と異なる実施条件について述べる。
表2に、各実施例に用いたフィルム部材(サンプルA〜J)を示す。
実施例11以外(サンプルA〜I)は、それぞれ表2に示す樹脂母材に添加率の異なるカーボンが導電材として添加されたフィルムである。実際に使用した各フィルム部材を以下に示す。
サンプルA:日東電工製のPTFEフィルム、「ニフトロン」を使用した。サンプルB:アキレス社製のPEフィルム、「クロポリ」を使用した。サンプルC:日本バルカー社製のPEフィルム、「バルカーシート」を使用した。サンプルD:中興化成工業社製のPTFEフィルム、「スカイプドテープ」を使用した。サンプルG:日本バルカー社製のPTFEフィルム、「バルフロン」を使用した。サンプルH:作新工業社製のPEフィルム、「ニューライトフィルム」を使用した。サンプルF:グンゼ社製のナイロンフィルム、「MSシート」を使用した。サンプルI:NTN精密部品社製のPEフィルム「ベアリーUH3954」を使用した。サンプルJ:東レ社製のAl蒸着フィルム、「メタルミー」を使用した。
またサンプルEについては、次のようにして作製したPCフィルムを使用した。まずテトラヒドロフランに酸化錫粉末(パストランType−IV4310 三井金属製)を分散し、ポリカーボネイト(パンライトC1400 帝人製)を溶解させた。溶液の固形分は17%とし、ポリカーボネイトと酸化錫粉末の割合は、ポリカーボネイトに対する酸化錫粉末を40質量%とした。これらの溶液をバーコード法にてアルミ基板上に塗布した後、100℃30分で乾燥させた。塗膜はアルミ基板から容易に剥離することができ、約70μmのフィルムを得た。
各フィルム部材の厚みは70〜100μm、フィルム抵抗は103〜106Ω/□であった。実施例11(サンプルJ)はPETフィルムにAlを蒸着したものであり、Al面をトナー回収用現像剤担持体表面に対向するよう配置した。
表2の各実施例における仕事関数Wfは、金との接触電位差を測定し求めた。金との接触電位差は、川口電機製作所製のSURFACE POTENTIAL METER(型式SSVII−10)を使用した。
測定した接触電位差は、金の仕事関数を4.8eVとして計算から求めた。この結果、PTFE系の材料はマイナス側に帯電しやすく、ナイロンやアルミはプラス側に帯電しやすいことが分かる。また。同じポリエステルでも構造の違いや添加物の違いで差が生じていると考えられる。
表2の各実施例におけるキャリヤ帯電量は、図15に示す装置を用いて、各フィルムとキャリヤとの摩擦帯電量を測定した。
測定方法は、傾斜した金属板71上に測定するフィルム41を貼り付け、その上にキャリヤ46を落下させ、滑り落ちる過程でキャリヤが帯電する。滑り落ちたキャリヤ46を金属製容器72に回収し、金属容器72に接続したエレクトロメータ(ADVANTEST製エレクトロメータ 型式TR8652)でキャリヤ電荷を測定した。
この結果、実施例2〜7のフィルム部材は、キャリヤに対してトナーと同極性のマイナスに、実施例8〜11のフィルム部材は、反対極性のプラスに帯電することが分かった。
<実施例2〜11の評価結果>
実施例2〜11の評価結果を表3に示す。
表中、「現像履歴」は、ゴースト発生状況を前記の基準で判断した評価であり、1枚目から50k枚目までの各印刷枚数で評価している。
「トナー層電位」は、トナー回収用現像剤担持体表面における、N4からN6極の間の表面電位を測定した結果を前記の基準で判断した評価であり、これも1枚目から50k枚目までの各印刷枚数で評価している。
表3より、本発明の実施例2〜11のすべてにおいて、1k枚までの連続印刷は特に良好な画像(○)を維持している。表1の比較例の結果を比較して明らかなように、本発明に係るトナー剥離部材を設けた現像装置では、トナー回収用現像剤担持体表面への付着トナー量がほとんどない状態で維持することが可能である。
また50k枚目までの連続印刷をみても、すべて良好(△)以上の画像を維持している。特に実施例2〜7においては、50k枚まで特に良好な画像(○)を維持している。
すなわち、フィルム部材がキャリヤに対してトナーと同極性の摩擦帯電特性を有する場合は、特に長期間にわたってトナー蓄積を抑制し、良好な画像を安定して得られることが分かる。
<実施例12〜15>
実施例12〜15については、図1に示す現像装置に、トナー回収用現像剤担持体の磁極S4と対向するように各フィルム部材を配置し、40℃の恒温槽に12時間保管した後に、100枚の耐久テストを実施して実施例1と同様の現像履歴評価を行った。
表4に、各実施例に用いたフィルム部材のサンプル記号を示す。すなわち、用いたフィルム部材は、表2に示したサンプルAとサンプルCである。
実施例12と13はサンプルAとサンプルCをそのままフィルム部材として使用した。実施例14と15は第1のフィルム部材としてのサンプルAとサンプルCに、それぞれ第2のフィルム部材としての60μmのPETフィルムを貼り合わせて積層構成のフィルム部材とし、トナー回収用現像剤担持体にサンプルフィルム面が対向するように配置した(図4(b)参照)。
上述したように、恒温槽を40℃に設定して各フィルム部材を装着した現像装置を12時間保管した後、bizhubC350にセットし、100枚の耐久試験を実施し、実施例1と同様の評価を行った。
なお、第2のフィルム部材としての60μmのPETフィルムは、記述したように、第1のフィルム部材よりも弾性変形に対する復元力が低下しにくいフィルムとして選択した。弾性変形に対する復元力は、例えば図16に示すような評価装置を用いて評価することができる。
図16(a)は、フィルム部材の弾性変形に対する復元力を評価するための装置構成例である。これにより、サンプルフィルムに熱などの履歴を与えたときの復元力を評価することで、弾性変形に対する復元力が変化しやすいかどうかを確認できる。
図16(a)に示すように、サンプルフィルム75はZ軸ステージ82に片持ち状態で固定される。サンプルフィルム75を変形させるための接触部材83は電子天秤84に乗っており、台81とは接触することなく、この接触部材83にサンプルフィルム75の自由端を接触させ変形させる構成になっている。
変形させるにあたっては、マイクロメータ85によってZ軸ステージ82を押し込んだ量を把握することができる。押し込んだ時に接触部材83にかかった荷重は電子天秤によって測定される。この装置で、押し込み量と力の関係が測定できる。
図16(b)に、押し込み量dy(横軸)とサンプルフィルム75にかかった荷重W(縦軸)の関係例を示す。押し込んでいった時の弾性変形(曲線S1)と、熱などの履歴を与えた後、元に戻す時の復元(曲線S2)を比較すると、弾性変形に対する復元力の変化が評価できる。復元力の低下しやすい部材ほど、押し込んでいく前(S1)と元に戻した後(曲線S2)の押し込み量dyの差(dM)が大きくなる。
<実施例12〜15の評価結果>
実施例12〜15の評価結果を表4に示す。
表中、「現像履歴」は、ゴースト発生状況を前記の基準で判断した評価であり、100枚目の印刷枚数で評価している。
「トナー層電位」は、トナー回収用現像剤担持体表面における、N4からN6極の間の表面電位を測定した結果を前記の基準で判断した評価であり、これも100枚目の印刷枚数で評価している。
表4より、本発明の実施例12〜15のすべてにおいて、40℃12時間保管後、100枚の連続印刷は良好(△)以上の画像を維持している。特に実施例14と15においては、特に良好な画像(○)を維持している。
実施例12と13においては、高温下で保管した後のフィルム部材のトナー回収用現像剤担持体表面との接触状態を調べてみると、フィルム面にややトナーの付着が見られた。温度を掛けたことで、クリープ現象で圧接力が弱まり、従って磁気ブラシによると付着トナーの掻き取りが抑制されたものと考えられる。
すなわち、フィルム部材が積層構成を取り、導電性を有する第1のフィルム部材と、第1のフィルム部材より弾性変形に対する復元力が低下しにくい、すなわちクリープに強い第2のフィルム部材を別途設けて積層した場合は、特に高温環境でも当接力を安定して維持し、従ってトナー蓄積を抑制し、良好な画像を安定して得られることが分かる。
このように、本実施形態に係る現像装置、及び画像形成装置では、トナー回収領域を通過後に、トナー回収した現像剤層を介して、トナー回収用現像剤担持体に当接するトナー剥離部材を設け、バイアス電圧を印加してトナーをトナー回収用現像剤担持体から引き離す方向の電界を形成する。
これにより、トナー担持体とトナー回収用現像剤担持体間のトナー回収領域でトナー回収電界によってトナー回収用現像剤担持体表面にトナーが偏在、付着しても、トナー剥離部材(フィルム部材)で剥離することが可能となり、トナー担持体からトナー回収用現像剤担持体へのトナー回収を安定させることが可能となる。
従って、トナー担持体上の現像残トナーのリセット性が安定して維持でき、現像履歴の影響を受けない安定した良好な画像出力が可能となる。
すなわち、トナー回収用現像剤担持体によってトナー担持体上の現像残トナーの回収を確実に行い、常にトナー担持体上に安定したトナー層が供給される。これにより、トナー回収能力が持続し、ゴーストの問題が発生しない高画質の画像を長期に渡って得ることができる。
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。