JP2009300380A - 目標追尾装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンセンテッドカルマンフィルタの推定精度を、観測条件によらずに安定化させることのできる目標追尾装置を得る。
【解決手段】追尾フィルタにおける運動モデルと観測モデルが非線形関数で表される場合に、非線形関数をアンセンテッド変換により近似するアンセンテッドカルマンフィルタを適用した追尾フィルタ2を備え、追尾フィルタ2は、受信信号に基づいて算出された目標の測位結果を逐次読み込み、測位結果からアンセンテッドカルマンフィルタを適用して算出した予測値と測位結果とに基づいて、測位結果に対する予測値の適合度を逐次算出する予測値適合度評価部22と、予測値適合度評価部22で逐次算出された適合度に基づいて、アンセンテッドカルマンフィルタにおけるアンセンテッド変換のスケーリングパラメータを逐次更新するパラメータ設定部24とを備える。
【選択図】図5
【解決手段】追尾フィルタにおける運動モデルと観測モデルが非線形関数で表される場合に、非線形関数をアンセンテッド変換により近似するアンセンテッドカルマンフィルタを適用した追尾フィルタ2を備え、追尾フィルタ2は、受信信号に基づいて算出された目標の測位結果を逐次読み込み、測位結果からアンセンテッドカルマンフィルタを適用して算出した予測値と測位結果とに基づいて、測位結果に対する予測値の適合度を逐次算出する予測値適合度評価部22と、予測値適合度評価部22で逐次算出された適合度に基づいて、アンセンテッドカルマンフィルタにおけるアンセンテッド変換のスケーリングパラメータを逐次更新するパラメータ設定部24とを備える。
【選択図】図5
Description
本発明は、観測装置が観測した目標を追尾する目標追尾装置に関する。
従来の目標追尾装置においては、次のような方法で、目標の位置および速度を推定している。まず、異なる位置に配置された複数の受信局によりネットワークを構成し、受信局間での電波到来時間差(Time Difference Of Arrival:以下、TDOAと称す)より換算される各受信局−目標間の距離の差(以下、距離差と称す)を求める。
さらに、ドップラー周波数差(Frequency Difference Of Arrival:以下、FDOAと称す)より換算される各受信局−目標間のラジアル速度の差(以下、ラジアル速度差と称す)を求める。そして、目標追尾装置は、上述のようにして求められた距離差およびラジアル速度差を非同期に入力し、追尾処理を行うことで目標の位置および速度を推定する。
目標の状態変数ベクトルを、北基準直交座標系における位置、速度で定義すると、TDOAおよびFDOAは、非線形関数となる。そして、追尾目標の運動モデルは、非線形関数式(1)で表され、観測モデルは、非線形関数式(2)で表される。
上式(1)および(2)において、xkはサンプリング時刻tkにおける目標の状態変数ベクトル、wkは駆動雑音ベクトル(平均0、共分散行列Qk)、Γ1は駆動雑音ベクトルに対する変換行列を表す。また、式(2)において、zkはサンプリング時刻tkにおける目標の観測値ベクトル、vkは観測雑音ベクトル(平均0、共分散行列Rk)を表す。
このように、運動モデルと観測モデルが非線形関数となる場合、従来技術では、モデルの非線形性を考慮し、追尾フィルタとして拡張カルマンフィルタ(Extended Kalman Filter:以下、EKFと称す)を適用するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
EKFでは、非線形関数に対する部分的な線形一次近似によって、カルマンフィルタの理論を適用する。このため、問題の非線形性が強い場合には、線形一次近似による真値からの誤差が大きくなり、追尾フィルタによる推定値が真の期待値および誤差共分散から大きく外れる可能性がある。
EKFでは、非線形関数に対する部分的な線形一次近似によって、カルマンフィルタの理論を適用する。このため、問題の非線形性が強い場合には、線形一次近似による真値からの誤差が大きくなり、追尾フィルタによる推定値が真の期待値および誤差共分散から大きく外れる可能性がある。
このようなEKFにおける非線形関数の線形一次近似の問題を軽減するため、追尾フィルタとしてアンセンテッドカルマンフィルタ(Unscented Kalman Filter:以下、UKFと称す)を適用する。
UKFでは、アンセンテッド変換(Unscented Transformation:以下、UTと称す)により、非線形関数をテーラー展開の3次の項まで近似することができる。このため、EKFを適用する場合と比較して、非線形関数となるモデルにおける推定精度を、より高くすることが期待できる
UTでは、まず、2n+1個のシグマポイントを、下式(3)〜(5)に従って算出する。
上式(3)〜(5)において、x(^)k|kは、時刻tkにおける追尾フィルタによる平滑値ベクトル、Pk|kは、平滑誤差共分散行列を表す(ここで、(^)という表記は、かっこの前の文字の上部に^が付されることを意味している)。特に、平滑誤差共分散行列Pk|kについては、下三角行列√(Pk|k)と上三角行列(√(Pk|k))Tに分解し、下式(6)のように表す。
また、上式(4)、(5)におけるλは、スケーリングパラメータであり、[√{(n+λ)Pk|k}]iは、下三角行列√{(n+λ)Pk|k}の第i列を表す。
UKFでは、UTによって上式(3)〜(5)で算出される2n+1個のシグマポイントが、モデルの非線形関数の非線形性を軽減する項となる。
しかし、上式(4)、(5)に示されるように、シグマポイントにはスケーリングパラメータλが含まれている。そして、適切なスケーリングパラメータの値の設定は、観測精度やサンプリングレートなどの観測条件によって異なる。従って、設定が不適切な場合には、推定値が発散する、あるいは、推定値の精度劣化を引き起こすなどの課題がある。
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、アンセンテッドカルマンフィルタ(UKF)の推定精度を、観測条件によらずに安定化させることのできる目標追尾装置を得ることを目的とする。
本発明に係る目標追尾装置は、位置が未知である目標から送出される電波を位置が既知である複数の受信局で受信した受信信号に基づいて、目標の位置、速度の運動諸元を推定する追尾フィルタを備え、追尾フィルタにおける運動モデルと観測モデルが非線形関数で表される場合に、前記追尾フィルタとして非線形関数をアンセンテッド変換により近似するアンセンテッドカルマンフィルタを適用した目標追尾装置であって、追尾フィルタは、受信信号に基づいて算出された目標の測位結果を逐次読み込み、測位結果からアンセンテッドカルマンフィルタを適用して算出した予測値と測位結果とに基づいて、測位結果に対する予測値の適合度を逐次算出する予測値適合度評価部と、予測値適合度評価部で逐次算出された適合度に基づいて、アンセンテッドカルマンフィルタにおけるアンセンテッド変換のスケーリングパラメータを逐次更新するパラメータ設定部とを備えるものである。
本発明に係る目標追尾装置によれば、運動モデルおよび観測モデルが非線形性関数となる場合において、測位結果と推定値に基づいて、観測毎にアンセンテッドカルマンフィルタ(UKF)のスケーリングパラメータを更新する構成を備えることにより、UKFの推定精度を、観測条件によらずに安定化させることのできる目標追尾装置を得ることができる。
以下、本発明の目標追尾装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。この図1の目標追尾装置は、目標測位装置1、N個の追尾フィルタ2(1)〜2(N)、統合平滑処理部3、状態量更新部4、および表示部5を備えている。
図1は、本発明の実施の形態1における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。この図1の目標追尾装置は、目標測位装置1、N個の追尾フィルタ2(1)〜2(N)、統合平滑処理部3、状態量更新部4、および表示部5を備えている。
ここで、m=1〜Nとすると、各追尾フィルタ2(m)は、予測値算出部21(m)、予測値適合度評価部22(m)、平滑値算出部23(m)、およびパラメータ設定部24(m)を備えている。
次に、各構成要素の機能について説明する。
目標測位装置1は、受信局によって受信された信号に基づいて、目標の位置、速度などの情報を測位結果として算出する。各追尾フィルタ2(m)は、目標測位装置1から、算出された測位結果および受信局の位置情報を入力し、目標の位置および速度を推定する。
目標測位装置1は、受信局によって受信された信号に基づいて、目標の位置、速度などの情報を測位結果として算出する。各追尾フィルタ2(m)は、目標測位装置1から、算出された測位結果および受信局の位置情報を入力し、目標の位置および速度を推定する。
追尾フィルタ2(m)において、予測値算出部21(m)は、目標測位装置1より目標の測位結果と受信局の位置情報を入力し、パラメータ設定部24(m)よりUKFのスケーリングパラメータの設定を入力する。そして、予測値算出部21(m)は、パラメータ設定部24(m)で設定されたスケーリングパラメータを持つUKFにより、目標の位置および速度の予測値を算出する。
予測値適合度評価部22(m)は、目標測位装置1より目標の測位結果を入力するとともに、予測値算出部21(m)より目標の位置および速度の予測値を入力する。そして、予測値適合度評価部22(m)は、予測値と観測値の差あるいは距離に基づいて、測位結果に対する予測値の適合度を算出し、適合度を統合平滑処理部3に対して出力する。
また、予測値適合度評価部22(m)は、適合度が所定値よりも低い場合には、スケーリングパラメータの設定を修正し、パラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータの設定を更新する。
平滑値算出部23(m)は、予測値算出部21(m)より目標の位置および速度の予測値を入力し、UKFの手順に従って目標位置の平滑値を算出する。
統合平滑処理部3は、N個の平滑値算出部23(1)〜23(N)より目標の位置および速度の平滑値を入力するとともに、N個の予測値適合度評価部22(1)〜22(N)より予測値の適合度を入力する。そして、統合平滑処理部3は、N個の平滑値をそれぞれに対応する適合度によって重み付けし、さらに平滑値の重み付け平均値を算出して統合平滑値とし、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。
状態量更新部4は、統合平滑処理部3で算出されたN個の追尾フィルタ2(1)〜2(N)の統合平滑値を入力し、統合平滑値より距離差およびラジアル速度差の統合予測値を算出する。そして、状態量更新部4は、算出した統合予測値を目標測位装置1にフィードバックする。
表示部5は、統合平滑処理部3で算出されたN個の追尾フィルタ2(1)〜2(N)の統合平滑値を入力し、統合平滑値を現時刻における目標の位置および速度の推定値として表示する。
次に、TDOAおよびFDOAが得られ、目標と受信局の間の距離差およびラジアル速度差を観測値とする場合を例として、並列UKFによって目標を追尾するための各種定義事項について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における受信局と信号源である目標との位置関係を示した図である。ここでは、目標の3次元運動を推定する場合を仮定する。
図2において、sa、sbは、それぞれ受信局a、受信局bの位置ベクトルを表す。また、raは、受信局aから信号源までの距離、rbは、受信局bから信号源までの距離をそれぞれ表す。uは、目標(信号源)の位置ベクトルを表す。
ここで、目標の運動モデルとして、下式(7)で表される等速直線運動を仮定する。
上式(7)において、xkは、位置および速度ベクトルで構成される目標の状態変数ベクトルを表す。また、上式(7)の各要素は、それぞれ下式(8)〜(13)で表される。
ここで、ukは、信号源の位置ベクトルを表し、uk(・)は、信号源の速度ベクトルを表す(ここで、(・)という表記は、かっこの前の文字の上部に・が付されることを意味している)。Φkは、推移行列を表す。wkは、駆動雑音ベクトル、Γ1、kは、駆動雑音ベクトルの変換行列である。
次に、観測モデルを定義する。
まず、TDOAが得られる場合における追尾方式(以下、TDOA追尾方式と称す)の観測モデルを示す。
まず、TDOAが得られる場合における追尾方式(以下、TDOA追尾方式と称す)の観測モデルを示す。
TDOA方式における観測値ベクトルは、受信局間のTDOAより換算される受信局と信号源との距離ra、rbの差(距離差)である。この距離差を観測値として用いる場合の観測モデルを、下式(14)、(15)で定義する。
上式(15)におけるrabは、距離差を表す。また、上式(14)におけるh(xk)は、下式(16)で定義される。
また、上式(14)における観測雑音ベクトルvkについては、下式(17)のように距離差の成分として与える。
次に、TDOAとFDOAが得られる場合における追尾方式(以下、TDOA/FDOA追尾方式と称す)の観測モデルを示す。
TDOA/FDOA追尾方式における観測値ベクトルは、距離差とFDOAから換算される受信局と信号源との距離ra、rbの変化率の差(ラジアル速度差)であり、距離差とラジアル速度差を観測値として用いる場合の観測モデルを下式(18)〜(20)で定義する。
上式(18)における観測雑音ベクトルvkについては、下式(21)のように距離差、ラジアル速度差の成分を持つベクトルとして与える。
次に、並列UKFの、各追尾フィルタ2(m)における追尾処理について説明する。
各追尾フィルタ2(m)において、まず、2n+1個のシグマポイントを、下式(22)〜(24)に従って算出する。
各追尾フィルタ2(m)において、まず、2n+1個のシグマポイントを、下式(22)〜(24)に従って算出する。
上式(22)〜(24)において、x(^)m、k|kは、時刻tkにおける追尾フィルタ2(m)による平滑値ベクトル、Pm、k|kは、追尾フィルタ2(m)による平滑誤差共分散行列を表す。特に、平滑誤差共分散行列Pm、k|kについては、下三角行列√(Pm、k|k)と上三角行列(√(Pm、k|k))Tに分解し、下式(25)のように表す。
また、上式(23)、(24)におけるλmは、追尾フィルタ2(m)のパラメータ設定部24(m)により設定されるスケーリングパラメータであり、[√{(n+λm)Pm、k|k}]iは、下三角行列√{(n+λm)Pm、k|k}の第i列を表す。
次に、上式(22)〜(24)によって得たシグマポイントごとに、予測処理を下式(26)に従って行うとともに、予測値の統合処理を下式(27)、(28)に従って行う。
ここで、上式(27)、(28)におけるωm、iは、下式(29)、(30)に従って算出する。
次に、上式(27)〜(30)の予測処理および予測値の統合処理を実施した後、raとrbの距離差の予測値r(〜)m、ab、およびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを、上式(27)で得た予測値ベクトルにより、下式(31)、(32)に従って算出する(ここで、(〜)という表記は、かっこの前の文字の上部に〜が付されることを意味し、(・)(〜)という表記は、かっこの前の文字の上部に・が付されたものにさらに〜が付されることを意味している)。
次に、新たな観測値ベクトルが得られた場合の位置と速度の平滑値を得る、データ更新について説明する。まず、シグマポイント毎に得た予測値ベクトルx(〜)m、k+1|k、i、および統合後の予測値ベクトルx(〜)m、k+1|kより、下式(33)、(34)を計算する。
次に、Pm、XZ、Pm、ZZおよび観測誤差共分散行列Rm、kによって残差共分散行列Sm、k|k-1、ゲイン行列Km、kをそれぞれ下式(35)、(36)に従って算出する。
次に、平滑値ベクトル、平滑誤差共分散行列を下式(37)、(38)に従って算出する。
上述した式(22)〜(38)までに示した処理が、各追尾フィルタ2(m)において並列に行われるものとする。
次に、本実施の形態1における目標追尾装置の一連の動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1の目標追尾装置において、時刻tkでの目標の位置および速度を推定する流れの一例を示すフローチャートである。図3において、ステップST2a(m)〜ステップST2e(m)(m=1〜N)は、図1における追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)のそれぞれの動作を示す。以下、各ステップの動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1の目標追尾装置において、時刻tkでの目標の位置および速度を推定する流れの一例を示すフローチャートである。図3において、ステップST2a(m)〜ステップST2e(m)(m=1〜N)は、図1における追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)のそれぞれの動作を示す。以下、各ステップの動作について説明する。
ステップST1の動作
目標測位装置1は、複数の受信局による観測の結果、TDOAが得られている場合には、TDOAから距離差rabを算出する。また、目標測位装置1は、TDOAとFDOAが得られている場合には、TDOA/FDOAから距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bを算出する。
目標測位装置1は、複数の受信局による観測の結果、TDOAが得られている場合には、TDOAから距離差rabを算出する。また、目標測位装置1は、TDOAとFDOAが得られている場合には、TDOA/FDOAから距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bを算出する。
そして、目標測位装置1は、距離差およびラジアル速度差に対して、相関ゲートによりマルチパス排除を行った結果を、目標の測位結果として追尾フィルタ2(m)に対して出力する。また、受信局の位置情報sa、sbを追尾フィルタ2(m)に対して出力する。
ステップST2a(m)(m=1〜N)の動作
追尾フィルタ2(m)において、予測値算出部21(m)は、目標測位装置1により算出された距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bおよび受信局の位置情報を入力する。
追尾フィルタ2(m)において、予測値算出部21(m)は、目標測位装置1により算出された距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bおよび受信局の位置情報を入力する。
ステップST2b(m)(m=1〜N)の動作
追尾フィルタ2(m)において、予測値算出部21(m)は、目標測位装置1より目標の測位結果(距離差rabとラジアル速度差r(・)a、b)と受信局の位置情報(sa、sb)を入力する。さらに、予測値算出部21(m)は、パラメータ設定部24(m)よりUKFのスケーリングパラメータの設定λmを入力する。
追尾フィルタ2(m)において、予測値算出部21(m)は、目標測位装置1より目標の測位結果(距離差rabとラジアル速度差r(・)a、b)と受信局の位置情報(sa、sb)を入力する。さらに、予測値算出部21(m)は、パラメータ設定部24(m)よりUKFのスケーリングパラメータの設定λmを入力する。
そして、予測値算出部21(m)は、パラメータ設定部24(m)で設定されたスケーリングパラメータを持つUKFにより、目標の位置と速度の予測値x(〜)m、k+1|kおよび予測誤差共分散行列Pm、k+1|kを算出する。さらに、予測値算出部21(m)は、算出結果を平滑値算出部23(m)に対して出力する。
追尾フィルタの運動モデルとしては、上式(7)〜(13)で定義される運動モデルを使用する。また、観測モデルとしては、TDOAが得られる場合には、上式(14)〜(17)、TDOA/FDOAが得られる場合には、上式(18)〜(21)を使用する。
目標の位置および速度の予測値を算出する手順は、上式(22)〜(30)による。
目標の位置および速度の予測値より、距離差の予測値r(〜)m、ab、およびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを算出する。そして、予測値適合度評価部22(m)に対して出力する。
目標の位置および速度の予測値より、距離差の予測値r(〜)m、ab、およびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを算出する。そして、予測値適合度評価部22(m)に対して出力する。
目標の位置および速度の予測値から距離差の予測値およびラジアル速度差の予測値を算出する手順は、上式(31)、(32)による。
ステップST2c(m)(m=1〜N)の動作
予測値適合度評価部22(m)は、予測値算出部21(m)によって算出された距離差の予測値r(〜)m、abおよびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abの適合度を評価する。さらに、予測値適合度評価部22(m)は、評価した適合度に応じてパラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータλmの設定を変更する。
予測値適合度評価部22(m)は、予測値算出部21(m)によって算出された距離差の予測値r(〜)m、abおよびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abの適合度を評価する。さらに、予測値適合度評価部22(m)は、評価した適合度に応じてパラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータλmの設定を変更する。
図4は、本発明の実施の形態1の予測値適合度評価部22(m)における適合度を評価の過程およびスケーリングパラメータλmの設定を変更する過程の説明図である。予測値適合度評価部22(m)は、目標測位装置1より距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bを入力する。さらに、予測値適合度評価部22(m)は、予測値算出部21(m)より距離差の予測値r(〜)m、abおよびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを入力する。
そして、予測値適合度評価部22(m)は、予測値と観測値の差あるいは距離に基づいて、予測値の測位結果に対する適合度を算出する。そして、予測値適合度評価部22(m)は、算出した適合度を統合平滑処理部3に対して出力する。
予測値の適合度の算出方法としては、例えば、次のものが考えられる。予測値適合度評価部22(m)は、各追尾フィルタ2(m)のパラメータ設定部24(m)において設定されているスケーリングパラメータλmに基づいて、追尾フィルタ2(m)の予測値を中心とするN個の確率密度関数式である下式(39)に、目標測位装置による測位結果を代入し、尤度として算出することができる。
ステップST2d(m)(m=1〜N)の動作
予測値適合度評価部22(m)は、上式(39)あるいはその他の計算式によって算出される予測値適合度を評価するための閾値Thplを有している。そして、予測値適合度評価部22(m)は、上式(39)による計算結果がThpl以上の場合には、スケーリングパラメータの設定を存続させる。
予測値適合度評価部22(m)は、上式(39)あるいはその他の計算式によって算出される予測値適合度を評価するための閾値Thplを有している。そして、予測値適合度評価部22(m)は、上式(39)による計算結果がThpl以上の場合には、スケーリングパラメータの設定を存続させる。
一方、予測値適合度評価部22(m)は、上式(39)による計算結果がThpl未満の場合には、スケーリングパラメータの設定を修正し、修正の結果をパラメータ設定部24(m)に対して出力する。この結果、パラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータの設定が更新される。ここで、閾値Thplは、あらかじめ設定するパラメータである。
スケーリングパラメータλmの修正方法は、例えば、下式(40)による。下式(40)の右辺第2項のΔλは、スケーリングパラメータの修正量であり、例えば、下式(41)を用いる。下式(41)の右辺におけるεは、あらかじめ設定するパラメータである。
ステップST2e(m)(m=1〜N)の動作
平滑値算出部23(m)は、予測値算出部21(m)より目標の位置と速度の予測値x(〜)m、k+1|kおよび予測誤差共分散行列Pm、k+1|kを入力し、UKFの手順に従って目標位置の平滑値x(^)m、k|kおよび平滑誤差共分散行列Pm、k|kを算出する。平滑値および平滑誤差共分散行列の算出手順は、上式(33)〜(38)による。
平滑値算出部23(m)は、予測値算出部21(m)より目標の位置と速度の予測値x(〜)m、k+1|kおよび予測誤差共分散行列Pm、k+1|kを入力し、UKFの手順に従って目標位置の平滑値x(^)m、k|kおよび平滑誤差共分散行列Pm、k|kを算出する。平滑値および平滑誤差共分散行列の算出手順は、上式(33)〜(38)による。
本実施の形態1における目標追尾装置では、各追尾フィルタ2(m)において、上述したステップST2a(m)からステップST2e(m)(m=1〜N)までが並列に動作しているものとする。
ステップST3の動作
統合平滑処理部3は、平滑値算出部23(m)(m=1〜N)より目標の位置と速度の平滑値x(^)m、k|kを入力し、予測値適合度評価部22(m)より予測値の適合度Pm(λm|rab、r(・)ab)を入力する。そして、統合平滑処理部3は、N個の平滑値をそれぞれに対応する適合度によって重み付けし、平滑値の重み付け平均値x(^)k|kを算出する。さらに、統合平滑処理部3は、重み付け平均値を統合平滑値として、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。
統合平滑処理部3は、平滑値算出部23(m)(m=1〜N)より目標の位置と速度の平滑値x(^)m、k|kを入力し、予測値適合度評価部22(m)より予測値の適合度Pm(λm|rab、r(・)ab)を入力する。そして、統合平滑処理部3は、N個の平滑値をそれぞれに対応する適合度によって重み付けし、平滑値の重み付け平均値x(^)k|kを算出する。さらに、統合平滑処理部3は、重み付け平均値を統合平滑値として、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。
重み付け平均値の算出方法としては、適合度の算出方法が上式(39)である場合には、例えば、下式(42)による。
ステップST4の動作
状態量更新部4は、統合平滑処理部3より追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の統合平滑値x(^)k|kを入力する。そして、状態量更新部4は、統合平滑値より距離差の統合予測値r(〜)ab、およびラジアル速度差の統合予測値r(・)(〜)abを算出し、これらの統合予測値を、目標測位装置1にフィードバックする。統合予測値の算出方法としては、下式(43)、(44)による。
状態量更新部4は、統合平滑処理部3より追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の統合平滑値x(^)k|kを入力する。そして、状態量更新部4は、統合平滑値より距離差の統合予測値r(〜)ab、およびラジアル速度差の統合予測値r(・)(〜)abを算出し、これらの統合予測値を、目標測位装置1にフィードバックする。統合予測値の算出方法としては、下式(43)、(44)による。
ステップST5の動作
表示部5は、統合平滑処理部3より追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の統合平滑値x(^)k|kを入力し、統合平滑値を現時刻における目標の位置および速度の推定値として表示する。
表示部5は、統合平滑処理部3より追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の統合平滑値x(^)k|kを入力し、統合平滑値を現時刻における目標の位置および速度の推定値として表示する。
以上のように、実施の形態1によれば、運動モデルおよび観測モデルが非線形性関数となる場合において、異なるスケーリングパラメータの設定を持つ複数のUKFを用いて、それぞれのUKFによる目標の位置および速度の予測値の適合度に基づいて、観測毎にそれぞれのUKFのスケーリングパラメータを更新している。このような構成により、観測条件によって適切なスケーリングパラメータの設定が異なるUKFを用いた追尾フィルタによる目標の位置と速度の推定精度を、観測条件によらずに安定させることができる。
実施の形態2.
図5は、本発明の実施の形態2における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態2における目標追尾装置は、先の実施の形態1におけるN個の追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)を1個とし、統合平滑処理部3を省いた場合に相当する。
図5は、本発明の実施の形態2における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態2における目標追尾装置は、先の実施の形態1におけるN個の追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)を1個とし、統合平滑処理部3を省いた場合に相当する。
追尾フィルタ2における予測値算出部21とパラメータ設定部24の機能は、それぞれ先の実施の形態1における予測値算出部21(m)、パラメータ設定部24(m)と同一である。
予測値適合度評価部22は、目標測位装置1より目標の測位結果を入力し、予測値算出部21より目標の位置および速度の予測値を入力する。そして、予測値適合度評価部22は、予測値の測位結果に対する残差を計算し、残差に基づいてパラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータの設定を更新する。
平滑値算出部23は、予測値算出部21より目標の位置および速度の予測値を入力し、UKFの手順に従って目標位置の平滑値を算出する。そして、平滑値算出部23は、平滑値を状態量更新部4および表示部5に対して出力する。
また、状態量更新部4は、平滑値を目標測位装置1にフィードバックする。表示部5は、追尾フィルタ2の平滑値算出部23より追尾フィルタの平滑値を入力し、平滑値を現時刻における目標の位置および速度の推定値として表示する。
次に、本実施の形態2における目標追尾装置の動作について説明する。図6は、本発明の実施の形態2の目標追尾装置において、時刻tkでの目標の位置および速度を推定する流れの一例を示すフローチャートである。以下、各ステップの動作について説明する。
ステップST1〜ステップST2bの動作
この図6におけるステップST1〜ステップST2bの動作は、それぞれ、先の実施の形態1におけるステップST1〜ステップST2b(m)と共通である。予測処理に用いる数式としては、上式(22)〜(32)において、m=1のみとした場合に相当する。
この図6におけるステップST1〜ステップST2bの動作は、それぞれ、先の実施の形態1におけるステップST1〜ステップST2b(m)と共通である。予測処理に用いる数式としては、上式(22)〜(32)において、m=1のみとした場合に相当する。
ステップST2cの動作
予測値適合度評価部22は、目標測位装置1より距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bを入力し、予測値算出部21より距離差の予測値r(〜)m、abおよびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを入力する。そして、予測値適合度評価部22は、予測値と測位結果との残差を計算する。
予測値適合度評価部22は、目標測位装置1より距離差rabとラジアル速度差r(・)a、bを入力し、予測値算出部21より距離差の予測値r(〜)m、abおよびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)m、abを入力する。そして、予測値適合度評価部22は、予測値と測位結果との残差を計算する。
ステップST2dの動作
予測値適合度評価部22は、ステップST2cにおいて計算した残差に基づいて、パラメータ設定部24におけるスケーリングパラメータの設定を更新する。スケーリングパラメータの修正方法としては、例えば、下式(45)による。下式(45)の右辺第2項のΔλ2は、スケーリングパラメータの修正量であり、例えば、下式(46)を用いる。下式(46)の右辺におけるε2は、あらかじめ設定するパラメータである。
予測値適合度評価部22は、ステップST2cにおいて計算した残差に基づいて、パラメータ設定部24におけるスケーリングパラメータの設定を更新する。スケーリングパラメータの修正方法としては、例えば、下式(45)による。下式(45)の右辺第2項のΔλ2は、スケーリングパラメータの修正量であり、例えば、下式(46)を用いる。下式(46)の右辺におけるε2は、あらかじめ設定するパラメータである。
ステップST2eの動作
平滑値算出部23は、予測値算出部21より目標の位置と速度の予測値x(〜)k+1|kおよび予測誤差共分散行列Pk+1|kを入力する。そして、平滑値算出部23は、UKFの手順に従って、目標位置の平滑値x(^)k|kおよび平滑誤差共分散行列Pk|kを算出し、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。平滑値および平滑誤差共分散行列の算出には、上式(33)〜(38)において、m=1のみとした場合のものを用いる。
平滑値算出部23は、予測値算出部21より目標の位置と速度の予測値x(〜)k+1|kおよび予測誤差共分散行列Pk+1|kを入力する。そして、平滑値算出部23は、UKFの手順に従って、目標位置の平滑値x(^)k|kおよび平滑誤差共分散行列Pk|kを算出し、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。平滑値および平滑誤差共分散行列の算出には、上式(33)〜(38)において、m=1のみとした場合のものを用いる。
ステップST4の動作
状態量更新部4は、平滑値算出部23より追尾フィルタ2の平滑値x(^)k|kを入力し、平滑値より距離差の予測値r(〜)ab、およびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)abを算出する。そして、状態量更新部4は、これらの予測値を目標測位装置1にフィードバックする。距離差およびラジアル速度差の予測値の算出方法は、上式(43)、(44)による。
状態量更新部4は、平滑値算出部23より追尾フィルタ2の平滑値x(^)k|kを入力し、平滑値より距離差の予測値r(〜)ab、およびラジアル速度差の予測値r(・)(〜)abを算出する。そして、状態量更新部4は、これらの予測値を目標測位装置1にフィードバックする。距離差およびラジアル速度差の予測値の算出方法は、上式(43)、(44)による。
以上のように、実施の形態2によれば、追尾フィルタには単一のUKFを用いつつ、観測毎にUKFのスケーリングパラメータを更新することにより、観測条件によらずに安定した推定精度を得ることができる。さらに、先の実施の形態1に比べ、目標追尾装置の構成を簡略化し、追尾処理の負荷を低減できる。
なお、本実施の形態2おけるスケーリングパラメータの修正方法の例としては、予測値の残差に基づく方法を示した。しかしながら、スケーリングパラメータの修正方法は、他のものであってもよい。
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態3における目標追尾装置は、先の実施の形態1の目標追尾装置に対して、追尾フィルタ制御部6をさらに備えている。そして、目標測位装置1から、追尾フィルタ制御部6を介して各追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の予測値算出部21(m)に接続されている。
図7は、本発明の実施の形態3における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態3における目標追尾装置は、先の実施の形態1の目標追尾装置に対して、追尾フィルタ制御部6をさらに備えている。そして、目標測位装置1から、追尾フィルタ制御部6を介して各追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の予測値算出部21(m)に接続されている。
本実施の形態3における目標測位装置1、予測値算出部21(m)、平滑値算出部23(m)、パラメータ設定部24(m)、状態量更新部4の機能は、それぞれ、先の実施の形態1における目標追尾装置のものと同一である。
また、統合平滑処理部3の機能は、追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定されるまでは、先の実施の形態1における目標追尾装置のものと同一である。追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定された後における、統合平滑処理部3の機能については、後述する。
本実施の形態3における予測値適合度評価部22(m)は、先の実施の形態1における予測値適合度評価部22(m)の機能を有するのに加え、算出した予測値の適合度を追尾フィルタ制御部6に入力する機能を有している。
追尾フィルタ制御部6は、目標測位装置1から目標の測位結果と受信機の位置情報を入力し、追尾処理を開始してからあらかじめ設定した時間が経過するまでは、全ての追尾フィルタ#m(m=1〜N)に、測位結果と受信機の位置情報を入力する。
また、追尾フィルタ制御部6は、各追尾フィルタ2(m)の予測値適合度評価部22(m)より、追尾フィルタ2(m)による予測値の測位結果に対する適合度を入力する。そして、追尾フィルタ制御部6は、追尾処理を開始してからあらかじめ設定した時間が経過した時点で、最も予測値の適合度が高い追尾フィルタ1つのみを選択し、残る(N−1)個の追尾フィルタの動作を停止させる。
動作する追尾フィルタが1つに限定された後では、統合平滑処理部3は、動作している追尾フィルタによる平滑値をそのまま統合平滑値とし、状態量更新部4および表示部5に対して出力する。
次に、本実施の形態3における目標追尾装置の動作について説明する。図8は、本発明の実施の形態3の目標追尾装置において、時刻tkでの目標の位置および速度を推定する流れの一例を示すフローチャートである。以下、各ステップの動作について説明する。
ステップST1、ステップST2a(m)〜ステップST2e(m)、ステップST4、ステップST5の動作
これらの動作は、先の実施の形態1における図3のものと同一である。
これらの動作は、先の実施の形態1における図3のものと同一である。
ステップST6の動作
追尾フィルタ制御部6は、追尾処理を開始してからの時間を計測し、所定の時間tchangeが経過した後、出力先として、かかる時点で最も予測値の適合度が高い追尾フィルタ1つのみを選択し、残るN−1個の追尾フィルタの動作を停止させる。時間tchangeは、あらかじめ追尾フィルタ制御部6に設定するパラメータである。
追尾フィルタ制御部6は、追尾処理を開始してからの時間を計測し、所定の時間tchangeが経過した後、出力先として、かかる時点で最も予測値の適合度が高い追尾フィルタ1つのみを選択し、残るN−1個の追尾フィルタの動作を停止させる。時間tchangeは、あらかじめ追尾フィルタ制御部6に設定するパラメータである。
ステップST3の動作
統合平滑処理部3の動作は、追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定されるまでは、先の実施の形態1における目標追尾装置のものと同一である。一方、追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定された後では、動作している追尾フィルタによる平滑値をそのまま統合平滑値とする。
統合平滑処理部3の動作は、追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定されるまでは、先の実施の形態1における目標追尾装置のものと同一である。一方、追尾フィルタ制御部6によって動作する追尾フィルタが1つに限定された後では、動作している追尾フィルタによる平滑値をそのまま統合平滑値とする。
以上のように、実施の形態3によれば、追尾精度が安定しない追尾開始直後の時間帯に並列UKFによる追尾を行う過程でUKFのスケーリングパラメータとして最適な値を算出する。そして、一定時間経過後は、最適なスケーリングパラメータを持ったUKFによる追尾フィルタのみを動作させる。これにより、観測条件によらずに安定した推定精度を得ることができると同時に、追尾開始直後の時間帯より後の追尾処理にかかわる負荷を低減することができる。
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態4における目標追尾装置は、先の実施の形態1の目標測位装置に対して、遅延観測値処理部7をさらに備えている。そして、目標測位装置1から、遅延観測値処理部7を介して各追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の予測値算出部21(m)に接続されている。
図9は、本発明の実施の形態4における目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態4における目標追尾装置は、先の実施の形態1の目標測位装置に対して、遅延観測値処理部7をさらに備えている。そして、目標測位装置1から、遅延観測値処理部7を介して各追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の予測値算出部21(m)に接続されている。
本実施の形態4における目標測位装置1は、実施の形態1における目標測位装置と同様に目標を測位し、測位結果を遅延観測値処理部7に対して出力する。遅延観測値処理部7は、目標測位装置1より目標に対する測位結果を入力し、状態量更新部4より統合平滑処理後の統合予測値を入力し、測位結果の時刻と最新の統合予測値の時刻とを比較する。
測位結果に付与されている時刻が最新の統合予測値に付与されている時刻よりも新しい場合(すなわち、測位結果が追尾フィルタに対して遅延なく入力された場合)には、遅延観測値処理部7は、測位結果をそのまま各追尾フィルタ2(m)の予測値算出部21(m)と予測値適合度評価部22(m)に対して出力する。
一方、測位結果に付与されている時刻が最新の統合予測値に付与されている時刻よりも古い場合には、遅延観測値処理部7は、最新の統合予測値に基づいて、受信機毎の目標に対するラジアル速度とラジアル加速度を推定する。
遅延観測値処理部7は、ラジアル速度、ラジアル加速度、および最新の統合予測値に付与されている時刻と測位結果に付与されている時刻との時間差により、観測値であるTDOAおよびFDOAを外挿する。
遅延観測値処理部7は、外挿により得られたTDOAより距離差を算出し、TDOA/FDOAよりラジアル速度差を算出する。そして、遅延観測値処理部7は、予測値算出部21(m)および予測値適合度評価部22(m)に対して算出結果を出力する。
本実施の形態4における追尾フィルタ2(m)および追尾フィルタ2(m)の各部、表示部5の機能は、先の実施の形態1と同様である。
統合平滑処理部3は、先の実施の形態1と同様の機能を持つのに加え、各追尾フィルタ2(m)の予測値の適合度、各追尾フィルタ2(m)のパラメータ設定部24(m)におけるスケーリングパラメータの値を状態量更新部4に対して出力する。
状態量更新部4は、統合平滑処理部3より追尾フィルタ2(m)(m=1〜N)の統合平滑値、予測値の適合度を入力する。そして、状態量更新部4は、統合平滑値より距離差およびラジアル速度差の統合予測値を算出し、統合予測値を目標測位装置1と遅延観測値処理部7にフィードバックする。
次に、本実施の形態4における目標追尾装置の動作について説明する。図10は、本発明の実施の形態4の目標追尾装置において、時刻tkでの目標の位置および速度を推定する流れの一例を示すフローチャートである。以下、各ステップの動作について説明する。
ステップST2a(m)〜ステップST2e(m)、ステップST3、ステップST4、ステップST5の動作
これらの動作は、先の実施の形態1における図3のものと同一である。
これらの動作は、先の実施の形態1における図3のものと同一である。
ステップST7aの動作
遅延観測値処理部7は、目標測位装置1より目標に対する測位結果を入力し、状態量更新部4より平滑値を入力し、測位結果の時刻と最新の平滑値の時刻とを比較する。
遅延観測値処理部7は、目標測位装置1より目標に対する測位結果を入力し、状態量更新部4より平滑値を入力し、測位結果の時刻と最新の平滑値の時刻とを比較する。
測位結果に付与されている時刻が最新の平滑値に付与されている時刻よりも新しい場合(Yesの側のフロー)、遅延観測値処理部7は、測位結果をそのまま各追尾フィルタ2(m)の予測値算出部21(m)と予測値適合度評価部22(m)に対して出力する。
ステップST7bの動作
測位結果に付与されている時刻が最新の平滑値に付与されている時刻よりも古い場合((ステップST7a)におけるNoの側のフロー)、遅延観測値処理部7は、平滑値に基づいて、受信機毎の目標に対するラジアル速度とラジアル加速度を推定する。
測位結果に付与されている時刻が最新の平滑値に付与されている時刻よりも古い場合((ステップST7a)におけるNoの側のフロー)、遅延観測値処理部7は、平滑値に基づいて、受信機毎の目標に対するラジアル速度とラジアル加速度を推定する。
遅延観測値処理部7は、推定によるラジアル速度、ラジアル加速度、および最新の平滑値に付与されている時刻と測位結果に付与されている時刻との時間差により、平滑値の時刻よりも遅延した測位結果に対する時刻補正を行う。
遅延観測値処理部7は、外挿により得られたTDOAより距離差を算出し、TDOA/FDOAよりラジアル速度差を算出する。そして、遅延観測値処理部7は、予測値算出部21(m)および予測値適合度評価部22(m)に対して出力する。
遅延観測値処理部7におけるラジアル速度とラジアル加速度の推定、および遅延した測位結果に対する時刻補正は、例えば、次の手順による。まず、追尾フィルタ2(m)による平滑値に付与されている時刻tkと、測位結果に付与されている時刻tk'より、下式(47)より時刻差Δtを得る。
測位結果の伝送に遅延が生じた場合は、Δt<0であり、この場合はステップST7bとして、下記の観測値補正処理を実施する。ここでは、TDOAが得られている場合の、遅延した測位結果に対する時刻補正の手順を、数式を用いて説明する。
距離差に関する観測精度が時間によらず一定であると見なし、まず、下式(48)を計算することにより、時刻tk'におけるラジアル速度差を推定する。
上式(48)におけるsa、k'、sb、k'は、時刻tk'におけるセンサの位置ベクトルであり、s(・)a、k'、s(・)b、k'は、時刻tk'におけるセンサの速度ベクトルであり、いずれも既知量である。
上式(48)におけるu(〜)k'|k、u(・)(〜)k'|kは、それぞれ時刻tk'における目標の位置ベクトルおよび速度ベクトルの推定値であり、時刻tkにおける目標の位置の平滑値および速度ベクトルの平滑値から算出する。u(〜)k'|k、u(・)(〜)k'|kの算出方法としては、例えば、下式(49)、(50)による。
次に、時刻tkにおける観測モデルを下式(51)で定義する。
上式(51)の右辺第1項のzk'は、時刻tk'における観測値ベクトルである。また、上式(51)の右辺第2項のvk'は、観測雑音ベクトルである。さらに、上式(51)の右辺第3項の括弧内に、上式(48)によって算出された時刻tk'におけるラジアル速度差の推定値を代入し、遅延して得られた観測値ベクトルzk'の時刻を現時刻tkに補正した結果を得る。
次に、TDOA/FDOAが得られている場合の、遅延した測位結果に対する時刻補正の手順を、数式を用いて説明する。速度差に関する観測精度が時間によらず一定であると見なし、まず、下式(52)を計算することにより、時刻tk'におけるラジアル加速度の差を推定する。
式(52)におけるsa、k'、sb、k'は、時刻tk'におけるセンサの位置ベクトルであり、s(・)a、k'、s(・)b、k'は、時刻tk'におけるセンサの速度ベクトルであり、いずれも既知量である。
上式(52)におけるu(〜)k'|k、u(・)(〜)k'|kは、それぞれ時刻tk'における目標の位置ベクトルおよび速度ベクトルであり、時刻tkにおける目標の位置の平滑値および速度ベクトルの平滑値から算出する。u(〜)k'|k、u(・)(〜)k'|kの算出方法としては、例えば、上式(49)、(50)による。
次に、時刻tkにおける観測モデルを式(53)で定義する。
上式(53)の右辺第1項のzk'は、時刻tk'における観測値ベクトルである。また、上式(53)の右辺第2項のvk'は、観測雑音ベクトルである。さらに、上式(53)の右辺第3項の括弧内に、式(52)によって算出された時刻tk'におけるラジアル加速度の差の推定値を代入し、遅延して得られた観測値ベクトルzk'の時刻を現時刻tkに補正した結果を得る。
以上のように、実施の形態4によれば、複数の受信局間でのTDOAあるいはTDOA/FDOAが得られる。この結果、距離差およびラジアル速度差を観測値ベクトルとしてUKFによって目標の位置と速度の推定を行う場合に、観測条件によらずに安定した推定精度を得ることができる。さらに、ネットワークの状況によって測位結果の転送に遅延が生じ、同時刻に得られる測位結果データの一部に欠落を生じた場合でも、追尾を維持することができる。
なお、上述の実施の形態1〜4では、複数の受信局間でのTDOAあるいはTDOA/FDOAが得られ、距離差およびラジアル速度差を観測値ベクトルとして目標の位置と速度を推定する例を示した。しかしながら、観測装置の形式は、他のものでもよく、観測値ベクトルの要素は、距離差およびラジアル速度差でなく、例えば、位置あるいは位置と速度で構成されていてもよい。
また、観測モデルにおける非線形項は、上式(16)や(20)の形式に限らず、他の形式のものであってもよい。
また、上述の実施の形態1〜4における予測値の観測値に対する適合度を算出方法の例としては、パラメータ設定部24(m)において設定されているスケーリングパラメータλmに基づく、追尾フィルタ2(m)の予測値を中心とするN個の確率密度関数によって尤度として算出する方法を示した。しかしながら、適合度の算出方法は、これに限定されず、他のものであってもよい。
また、上述の実施の形態1〜4において、予測値の観測値に対する適合度の低い追尾フィルタ2(m)のスケーリングパラメータの変更方法の例として、予測値の残差の2次形式に基づく数式を挙げた。しかしながら、変更方法は、他のものであってもよい。
1 目標測位装置、2、2(1)〜2(N) 追尾フィルタ、21、21(1)〜21(N) 予測値算出部、22、22(1)〜22(N) 予測値適合度評価部、23、23(1)〜23(N) 平滑値算出部、24、24(1)〜24(N) パラメータ設定部、3 統合平滑処理部、4 状態量更新部、5 表示部、6 追尾フィルタ制御部、7 遅延観測値処理部。
Claims (5)
- 位置が未知である目標から送出される電波を位置が既知である複数の受信局で受信した受信信号に基づいて、前記目標の位置、速度の運動諸元を推定する追尾フィルタを備え、前記追尾フィルタにおける運動モデルと観測モデルが非線形関数で表される場合に、前記追尾フィルタとして前記非線形関数をアンセンテッド変換により近似するアンセンテッドカルマンフィルタを適用した目標追尾装置であって、
前記追尾フィルタは、
前記受信信号に基づいて算出された前記目標の測位結果を逐次読み込み、前記測位結果から前記アンセンテッドカルマンフィルタを適用して算出した予測値と前記測位結果とに基づいて、前記測位結果に対する前記予測値の適合度を逐次算出する予測値適合度評価部と、
前記予測値適合度評価部で逐次算出された前記適合度に基づいて、前記アンセンテッドカルマンフィルタにおける前記アンセンテッド変換のスケーリングパラメータを逐次更新するパラメータ設定部と
を備えることを特徴とする目標追尾装置。 - 請求項1に記載の目標追尾装置において、
前記予測値適合度評価部は、前記予測値と前記測位結果との残差に基づいて、前記測位結果に対する前記予測値の適合度を逐次算出することを特徴とする目標追尾装置。 - 請求項1に記載の目標追尾装置において、
前記追尾フィルタは、前記スケーリングパラメータが異なる複数の追尾フィルタで構成され、
前記複数の追尾フィルタのそれぞれは、算出した前記予測値の平滑値を算出する平滑値算出部をさらに備え、
前記複数の追尾フィルタのそれぞれの平滑値算出部で算出された複数の平滑値と、前記複数の追尾フィルタのそれぞれの予測値適合度評価部で算出された複数の適合度とを読み込み、前記複数の平滑値を前記複数の適合度により加重平均化した統合平滑値を算出することにより前記目標の最終的な予測値を算出する統合平滑処理部
をさらに備えることを特徴とする目標追尾装置。 - 請求項3に記載の目標追尾装置において、
前記複数の追尾フィルタの前段に設けられ、前記受信信号に基づいて算出された前記目標の測位結果を読み込むとともに、前記複数の追尾フィルタのそれぞれの予測値適合度評価部で算出された複数の適合度を読み込み、追尾処理開始から所定時間経過するまでは、前記複数の追尾フィルタの全てに対して前記測位結果を出力して前記複数の追尾フィルタの全てを動作させ、前記所定時間経過後は、読み込んだ前記複数の適合度に基づいて最も適合度の高い1つの追尾フィルタを特定し、特定した前記1つの追尾フィルタに対して前記測位結果を出力して前記1つの追尾フィルタのみを動作させて残りの追尾フィルタの動作を停止させる追尾フィルタ制御部をさらに備え、
前記統合平滑処理部は、前記所定時間経過後においては、特定された前記1つの追尾フィルタに対応する平滑値算出部で算出された平滑値を前記目標の最終的な予測値として算出する
ことを特徴とする目標追尾装置。 - 請求項3に記載の目標追尾装置において、
前記複数の追尾フィルタの前段に設けられ、前記受信信号に基づいて算出された前記目標の測位結果を読み込むとともに、前記統合平滑処理部で算出された前記目標の最終的な予測値を読み込み、前記測位結果に付与された第1時刻と前記最終的な予測値に付与された第2時刻とを比較し、前記第2時刻が前記第1時刻よりも過去の時刻である場合には、前記複数の追尾フィルタの全てに対して前記測位結果を出力し、前記第1時刻が前記第2時刻よりも過去の時刻である場合には、前記第1時刻における測位結果に基づいて前記第2時刻における推定測位結果を求め、前記複数の追尾フィルタの全てに対して前記推定測位結果を前記第2時刻における測位結果として出力する遅延観測値処理部をさらに備えることを特徴とする目標追尾装置。
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