JP2009298828A - インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】色材に多価金属を一定の比率で混合させた場合に起こる色材の凝集性に関与する構造又は凝集特性を簡易な手法により良好な組み合わせに設定し、適切な状況に纏め上げる要素に着目することで、インクの付与量に関わらず、画像が高いレベルの耐オゾン性と画質品質とを両立するインクを提供すること。
【解決手段】色材及び多価金属を含有するインクであって、色材が一般式(I)で表されるフタロシアニン系化合物であり、小角X線散乱法により測定される、インク中の色材のd値をd1とし、インク中の多価金属を水に置き換えた組成を有する対照インク中の色材のd値をd0としたときに、0.3≦(d1−d0)≦2.3の関係を満足するインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、インク小滴を普通紙や光沢メディアなどの記録媒体に付与して画像を形成する記録方法であり、その低価格化、記録速度の向上により、急速に普及が進んでいる。また、インクジェット記録方法により得られる画像の高画質化が進んだことに加えて、デジタルカメラの急速な普及に伴い、銀塩写真に匹敵する画像の出力方法として広く一般的になっている。
近年、インク滴の極小化や、多色インクの導入に伴う色域の向上などにより、インクジェット記録方法により記録した画像は、今まで以上に高画質化が進んでいる。しかしその反面、色材やインクに対する要求はより大きくなり、発色性の向上や、インクの目詰まり防止や吐出安定性などのインクの信頼性においてより厳しい特性が要求されている。
一方で、インクジェット記録方法の問題点としては、得られた画像の画像保存性に劣ることが挙げられる。特に、記録物が、光、湿度、熱、空気中に存在するオゾンガスなどの環境ガスに長時間さらされた際に、記録物上の色材が劣化し、画像の色調変化や褪色が発生しやすいといった問題がある。
画像保存性の中でも特に耐オゾン性を向上させるために、従来から数多くの提案がなされている。例えば、インクジェット用のインクに用いる色材について、画像の堅牢性、特に耐オゾン性を向上させるための技術が数多く提案されている。しかし、ユーザーが満足する高いレベルには至っていないのが現状である。
さらに、近年では、記録物を額縁などに入れずに、壁や掲示板などにディスプレイしたいという要望も多くなってきている。これに対して、現在広く用いられているインクによって得られている程度の堅牢性では、画像における色材が、空気中の酸化性ガス、特にオゾンにより顕著に褪色し、画像として許容できないレベルにまで劣化(褪色)する場合がある。
オゾンによる画像の褪色は、シアン、イエロー、及びマゼンタの各インクの中でも特に耐オゾン性が低いシアンインクが主たる要因となって起こる。このため、シアンインクの画像における耐オゾン性を向上させるための数多くの提案がされている(特許文献1乃至7参照)。
また、シアンインクの色材の凝集性に注目した技術も提案されている。フタロシアニン系色材に多価金属を加え、他色と反応させることにより画質を向上させることについての提案がある(特許文献8及び9参照)。フタロシアニン系色材の凝集を促進させる有機物を併用することで、画像の耐オゾン性を向上させることについての提案がある(特許文献10参照)。また、フタロシアニン系色材の凝集を促進させるポリマーを併用することで、画像の耐オゾン性を向上させることについての提案がある(特許文献11参照)。
しかし、ユーザーのインクジェット記録画像の耐オゾン性に対する要求レベルは日々高まっており、更なる改善が必要である。
特開2002−249677号公報 特開2002−275386号公報 特開2002−294097号公報 特開2002−302623号公報 特開2002−327132号公報 特開2003−3099号公報 特開2003−213168号公報 特開平05−208548号公報 特開平06−106841号公報 特開2004−307824号公報 特開2006−52336号公報
上記したように、インクジェット記録方法により得られる記録物の耐オゾン性に対して要求される性能は年々高まってきており、シアンインクに従来から用いられている色材では、上記の要求を満たすレベルの耐オゾン性を有する画像を得るまでには至っていない。例えば、前記特許文献1乃至7に記載の発明では、色材に様々な置換基を導入することで、画像の耐オゾン性を向上させることを試みているが、このような色材の特性のみで耐オゾン性を向上させるには限界がある。
また、前記特許文献8及び9に記載の発明では、フタロシアニン系色材と多価金属の組み合わせにより、記録品質を向上させる検討がなされているが、画像の堅牢性には着目されていない。
また、前記特許文献10及び11に記載の発明では、インク中に有機物を加えることにより、画像品質を維持しつつ堅牢性を向上することを試みているが、堅牢性の評価に際して、画像濃度を限定して評価している。ここで、記録物の寿命を評価する際には、インクの付与量が多い単色の部分から、カラーインクの重ね合わせで記録するコンポジットブラック、すなわち単独のインクの付与量が少ない部分まで、インクの付与量に関して広い範囲での評価を行うべきである。そして、この付与量が多い部分から少ない部分まで全体を通して同じようなレベルの堅牢性を備えなければ、記録物の耐オゾン性に対して近年要求されている高い性能を満足し得るものとはならない。すなわち、ある付与量の部分で耐オゾン性を解決しても、別の付与量の部分で耐オゾン性が十分に得られない場合には、全体的に耐オゾン性を向上させたとは言うことは到底できない。
一方で、添加剤の効果を十分に発揮させるためには、色材と添加剤との質量比率が重要であることは容易に想像される。すなわち、添加剤の含有量を規定し、その範囲内でインクを設計したとしても、色材の含有量が多いインクにおいては効果が十分に得られず、色材の含有量が少ないインクにおいては添加剤が過剰となる場合がある。これに対して本発明者らは、インク中の添加剤の含有量を色材の含有量に対して規定できる指標があれば、色材の含有量を問わず良好な効果を達成できる範囲を設定することが可能になると考えている。
したがって、本発明の目的は、インクの付与量に関わらず、形成した画像が、高いレベルの耐オゾン性と画質品質とを両立できるものとなるインクを提供することにある。その場合に、色材に多価金属を一定の比率で混合させた場合に起こる色材の凝集性に関与する構造又は凝集特性を簡易な手法により良好な組み合わせに設定し、適切な状況に纏め上げる要素に着目することで、上記目的を解決する。また、本発明の別の目的は、前記インクを用いることで上記の優れた画像の形成を可能とするインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるインクは、少なくとも、色材及び多価金属を含有するインクであって、前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、小角X線散乱法により測定される、前記インク中の色材のd値をd1とし、前記インク中の多価金属を水に置き換えた組成を有する対照インク中の色材のd値をd0としたときに、これらのd1及びd0が、0.3≦(d1−d0)≦2.3の関係を満足することを特徴とする。
Figure 2009298828
(一般式(I)中、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、スルホン酸基、−CONR12、又はCO21のいずれかを表し、Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基のいずれかであり、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基のいずれかである。また、一般式(I)中の、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基のいずれかを表し、a1、a2、a3、及びa4はそれぞれ、X1、X2、X3、及びX4の置換基の数を示し、それぞれ独立に1又は2のいずれかである。)
また、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録方法は、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、上記構成のインクであることを特徴とする。
また、本発明の別の実施態様にかかるインクカートリッジは、インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、上記構成のインクであることを特徴とする。
また、本発明の別の実施態様にかかる記録ユニットは、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、上記構成のインクであることを特徴とする。
また、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、上記構成のインクであることを特徴とする。
本発明によれば、インクの付与量に関わらず、近年要求されている高いレベルの耐オゾン性と画質品質とを両立するインクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記インクを用いることで上記の優れた画像の形成を可能とするインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、以下の記載において、一般式(I)で表される化合物は、「一般式(I)の化合物」と省略して記載することがある。
本発明者らは、シアンインクに用いる色材及び添加剤についての詳細な検討を行う過程で、インクに多価金属を加えることによる重要な知見及び規定方法を見出した。本発明はかかる知見に基づいてなされたものである。
まず、本発明者らの検討の結果、特定の構造を有する化合物と多価金属を組み合わせることで、耐オゾン性を高いレベルで満足した画像が得られることがわかった。また、後述するd値によって規定される値が特定の範囲内となるようにして色材と多価金属とを用いることで、特に顕著に、耐オゾン性が優れ、かつ、高い画像品質を両立した記録物とできることがわかった。
<インク>
以下、本発明のインクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
(色材)
本発明のインクは、色材として下記一般式(I)の化合物を用いることが必要である。
Figure 2009298828
(一般式(I)中のX1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、スルホン酸基、−CONR12、又はCO21である。上記Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。また、R1及びR2はそれぞれ独立に、下記の群から選択されるいずれかである。群としては、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。一般式(I)中の、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は下記の置換基からなる群から選択される。群としては、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基。置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基である。一般式(I)中のa1、a2、a3、及びa4はそれぞれ、X1、X2、X3、及びX4の置換基の数を示し、それぞれ独立に1又は2のいずれかである。)
一般式(I)におけるX1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、スルホン酸基、−CONR12、又はCO21である。中でも、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、及びCONR12が好ましく、さらには−SO2−Z及びSO2NR12が好ましく、特には−SO2−Zが好ましい。X1、X2、X3、及びX4の置換基の数を表すa1、a2、a3、及びa4のいずれかが2である場合、X1、X2、X3、及びX4のうち複数存在するものは同一であっても又は異なっていてもよく、それぞれ独立に上記で挙げたいずれかの置換基である。また、X1、X2、X3、及びX4は、それぞれ全て同一の置換基であっても又は異なる置換基であってもよい。異なる置換基である場合、例えば、X1、X2、X3、及びX4が全て−SO2−Zであり、かつそれぞれのZは異なるものである場合のように、置換基の種類は同じであるが部分的に異なる置換基を含んでもよい。又は、例えば、−SO2−Zと−SO2NR12とを含む場合のように、互いに異なる置換基を含んでもよい。
Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。中でも、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、さらには置換アルキル基、置換アリール基、又は置換複素環基が好ましい。
1及びR2はそれぞれ独立に、下記の群から選ばれる。群としては、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基である。中でも、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基が好ましく、さらには水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、又は置換複素環基が好ましい。ただし、R1及びR2が共に水素原子であることは好ましくない。
以下に、一般式(I)における、R1、R2、及びZをさらに詳しく説明する。なお、下記で説明する各基の炭素数は置換基の炭素原子を含まない数である。
アルキル基は、炭素数1乃至30の置換又は無置換のアルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアルキル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
シクロアルキル基は、炭素数5乃至30の置換又は無置換のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、不斉炭素を有するシクロアルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。シクロアルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
アルケニル基は、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルケニル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアルケニル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアルケニル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アルケニル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
アラルキル基は、炭素数7乃至30の置換又は無置換のアラルキル基が挙げられる。中でも、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐のアラルキル基が好ましく、さらには不斉炭素を有するアラルキル基(ラセミ体として用いる)が特に好ましい。アラルキル基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、又はスルホンアミド基が、色材の会合性を高め、堅牢性を向上することができるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有してもよい。
アリール基は、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリール基が挙げられる。アリール基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、色材の酸化電位が貴であると堅牢性を向上することができるので、電子吸引性基が特に好ましい。電子吸引性基は、ハメットの置換基定数σp値が正のものが挙げられる。中でも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が好ましい。さらには、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が特に好ましい。
複素環基は、5員環又は6員環であり、置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族の複素環で、これらはさらに縮環していてもよい。以下に、R1、R2、及びZが複素環基である場合の具体例を、置換位置を省略して複素環として挙げる。なお、置換位置は以下の記載に限られるものではなく、例えば、ピリジンであれば、2位、3位、4位で置換できる。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール。イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール。イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、及びチアゾリンなどが挙げられる。中でも、芳香族複素環基が好ましい。さらには、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、及びチアジアゾールが特に好ましい。
これらの複素環基はさらに置換基を有してもよく、置換基の具体例は、後述のZ、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でも、色材の酸化電位が貴であると堅牢性を向上することができるので、電子吸引性基が特に好ましい。電子吸引性基は、ハメットの置換基定数σp値が正のものが挙げられる。中でも、ハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が好ましい。さらには、シアノ基、カルボキシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホン酸基、又は4級アンモニウム基が特に好ましい。
一般式(I)におけるY1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はそれぞれ独立に、下記のいずれかである。水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは無置換のカルバモイル基。置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基のいずれかである。中でも、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、又はスルホン酸基が好ましく、さらには水素原子が特に好ましい。
以下に、一般式(I)におけるY1〜Y8をさらに詳しく説明する。なお、下記で説明する各基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない数である。
ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子などが挙げられ、中でも、塩素原子又は臭素原子が好ましく、特には塩素原子が好ましい。
アルキル基は、炭素数が1乃至30の置換又は無置換のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、及び4−スルホブチルなどが挙げられる。
アリール基は、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、及びo−ヘキサデカノイルアミノフェニルなどが挙げられる。
アルコキシ基は、炭素数が1乃至30の置換又は無置換のアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシ、及び3−カルボキシプロポキシなどが挙げられる。
カルバモイル基は、炭素数1乃至30の置換又は無置換のカルバモイル基が挙げられる。具体的には、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどである。
スルファモイル基は、炭素数1乃至30の置換又は無置換のスルファモイル基が挙げられる。具体的には、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、及びN−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイルなどが挙げられる。
アルコキシカルボニル基は、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルコキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、及びn−オクタデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
上記に説明した、Z、R1、R2、Y1〜Y8がさらに置換基を有することが可能な基であるときは、以下に挙げる置換基をさらに有してもよい。この場合の置換基としては、下記に挙げるものがある。炭素数1乃至12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7乃至18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2乃至12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2乃至12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基。炭素数3乃至12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3乃至12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基が挙げられる。これらの置換基は、色材の溶解性やインクの安定性の観点から、分岐を有するものが好ましく、さらには不斉炭素を有するものが特に好ましい。
置換基の具体例としては、下記のものが挙げられる。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、及びシクロペンチルなどの置換又は無置換のアルキル基。塩素原子、及び臭素原子などのハロゲン原子。フェニル、4−t−ブチルフェニル、及び2,4−ジ−t−アミルフェニルなどのアリール基。イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、及び2−ベンゾチアゾリルなどの複素環基。シアノ基。ヒドロキシル基。ニトロ基。カルボキシ基。アミノ基。メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、及び2−メタンスルホニルエトキシなどのアルキルオキシ基。フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、及び3−メトキシカルバモイルなどのアリールオキシ基。アセトアミド、ベンズアミド、及び4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミドなどのアシルアミノ基。メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、及びメチルブチルアミノなどのアルキルアミノ基。フェニルアミノ、及び2−クロロアニリノなどのアニリノ基。フェニルウレイド、メチルウレイド、及びN,N−ジブチルウレイドなどのウレイド基。N,N−ジプロピルスルファモイルアミノなどのスルファモイルアミノ基。メチルチオ、オクチルチオ、及び2−フェノキシエチルチオなどのアルキルチオ基。フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、及び2−カルボキシフェニルチオなどのアリールチオ基。メトキシカルボニルアミノなどのアルキルオキシカルボニルアミノ基。メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、及びp−トルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド基。N−エチルカルバモイル、及びN,N−ジブチルカルバモイルなどのカルバモイル基。N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、及びN−フェニルスルファモイルなどのスルファモイル基。メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、及びトルエンスルホニルなどのスルホニル基。メトキシカルボニル、及びブチルオキシカルボニルなどのアルキルオキシカルボニル基。1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、及び2−テトラヒドロピラニルオキシなどの複素環オキシ基。フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、及び2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾなどのアゾ基。アセトキシなどのアシルオキシ基。N−メチルカルバモイルオキシ、及びN−フェニルカルバモイルオキシなどのカルバモイルオキシ基。トリメチルシリルオキシ、及びジブチルメチルシリルオキシなどのシリルオキシ基。フェノキシカルボニルアミノなどのアリールオキシカルボニルアミノ基。N−スクシンイミド、及びN−フタルイミドなどのイミド基。2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、及び2−ピリジルチオなどの複素環チオ基。3−フェノキシプロピルスルフィニルなどのスルフィニル基。フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、及びフェニルホスホニルなどのホスホニル基。フェノキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル基。アセチル、3−フェニルプロパノイル、及びベンゾイルなどのアシル基。カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、及び4級アンモニウム基などのイオン性親水性基が挙げられる。なお、一般式(I)におけるイオン性親水性基は、1分子中に少なくとも2個であることが好ましく、さらにはスルホン酸基及び/又はカルボキシル基を少なくとも2個であることが特に好ましい。
一般式(I)中のa1、a2、a3、及びa4は、それぞれX1〜X8の置換基の数である。a1、a2、a3、及びa4はそれぞれ独立に1又は2のいずれかである。なお、a1、a2、a3、及びa4の少なくとも1つが2であるとき、X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも一種は複数個存在することになる。このとき、複数個存在する置換基は、それらは同一であっても、又は異なってもよい。本発明においては、a1、a2、a3、及びa4が、いずれも1であることが特に好ましい。
一般式(I)の化合物は、2価の連結基(L)を介してフタロシアニン環(Pc)が、2量体(Pc−Cu−L−Cu−Pc)、や3量体(Pc−Cu−L−Cu−L−Cu−Pc)などを形成してもよい。Lは2価の連結基であり、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)、カルボニル基(−CO−)、スルホニル基(−SO2−)、イミノ基(−NH−)、メチレン基(−CH2−)、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
本発明においては、一般式(I)における置換基のうち、少なくとも1つが上記で挙げた置換基であることが好ましく、さらにはより多くの置換基が上記で挙げた置換基であることが好ましく、特には全ての置換基が上記で挙げた置換基であることが好ましい。さらに、一般式(I)の化合物が水溶性を有することが好ましく、この場合、一般式(I)における置換基が、イオン性親水性基を含むことが好ましい。イオン性親水性基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ホスホノ基、及び4級アンモニウム基などが挙げられ、中でも、カルボキシル基、ホスホノ基、又はスルホン酸基が好ましく、さらにはカルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基、及びスルホン酸基は塩の形態であってもよく、塩を形成する対イオンは、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機カチオンが挙げられる。アルカリ金属イオンは、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンが挙げられる。また、有機カチオンは、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、及びテトラメチルホスホニウムなどが挙げられる。中でも、アルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は色材の溶解性やインクの安定性の観点から特に好ましい。
さらに、一般式(I)の化合物には、スルフィニル基、スルホニル基、及びスルファモイル基などの電子吸引性基を、フタロシアニン骨格の4つのベンゼン環にそれぞれ少なくとも1つ導入してなることが好ましい。さらには、一般式(I)におけるフタロシアニン骨格に置換した全ての前記電子吸引性基のハメットの置換基定数σp値の合計が、1.60以上であることが特に好ましい。
ここで、ハメット則及びハメットの置換基定数σp値(以下、「ハメットのσp値」と呼ぶ)について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応や平衡に及ぼす、置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であり、今日では広く妥当性が認められている。ハメット則により求められる置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載がある。例えば、J.A.Dean編、Lange s Handbook of Chemistry 第12版、1979年、McGraw-Hillや、化学の領域、増刊、122号、96〜103頁、1979年、南光堂に詳細な記載がある。
なお、本発明においては、各置換基をハメットのσp値により規定している。しかし、本発明では、上記したような文献に具体的にσp値が記載された置換基のみに限られるものではない。本発明は、上記したような文献にσp値が記載されていない置換基であっても、ハメット則に基づいてσp値を算出した場合に、その範囲内に含まれるであろう置換基をも含むことはいうまでもない。以下に、本発明の一般式(I)の化合物における、ハメットのσp値が正の値である電子吸引性基として用いることができる置換基の具体例を、ハメットのσp値と共に示す。
ハメットのσp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基)、及びアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基)などがある。ハメットのσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えて、以下の基が挙げられる。アシル基(例えば、アセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、ドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル基)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル基)。また、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、及びハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル基)などが挙げられる。ハメットのσp値が0.30以上の電子吸引性基は、上記に加えて、以下の基が挙げられる。アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ基)。また、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ基)、スルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ基)。また、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ基)、及び複素環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル基)などが挙げられる。また、σp値が0.15以上の2つ以上の電子吸引性基で置換されたアリール基が挙げられる。ハメットのσp値が0.20以上の電子吸引性基は、上記に加えて、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)などが挙げられる。
ここで、フタロシアニン化合物におけるα位及びβ位について、下記の構造式を用いて説明する。α位とは、1位及び/又は4位、5位及び/又は8位、9位及び/又は12位、13位及び/又は16位のことであり、α位置換型フタロシアニン化合物とはこれらの位置の少なくとも1つに特定の置換基を有するフタロシアニン化合物である。また、β位とは、2位及び/又は3位、6位及び/又は7位、10位及び/又は11位、14位及び/又は15位のことであり、β位置換型フタロシアニン化合物とはこれらの位置の少なくとも1つに特定の置換基を有するフタロシアニン化合物のことである。つまり、一般式(I)の化合物は、X1、X2、X3、及びX4はα位に、また、Y1〜Y8はβ位に、それぞれ置換してなるフタロシアニン化合物である。
Figure 2009298828
上記で述べたように、スルファモイル基などの電子求引性基を数多くフタロシアニン骨格に導入すると、酸化電位がより貴となり、記録画像の耐オゾン性を向上することができる。しかし、上記で挙げた方法で合成を行うと、電子求引性基の数が少ない、つまり、酸化電位がより卑であるフタロシアニン化合物が混入することは避けられない。したがって、記録画像の耐オゾン性を向上するためには、酸化電位がより卑であるフタロシアニン化合物の生成を抑えるような方法で合成を行うことが特に好ましい。
一般式(I)の化合物は、例えば、下記に挙げた2通りの合成フローのようにして合成することができる。その一つは、フタロニトリル誘導体及び/又はジイミノイソインドリン誘導体と銅誘導体とを反応させることにより、一般式(I)の化合物(β位置換型)を合成する方法である。また、別の方法は、4−スルホフタロニトリル誘導体と銅誘導体とを反応させることで得られるテトラスルホフタロシアニン化合物から誘導することにより、一般式(I)の化合物(β位置換型)を合成する方法である。
Figure 2009298828
上記合成フロー中、Xmは一般式(I)におけるX1、X2、X3、又はX4に相当する。また、Ynは一般式(I)におけるY1、Y3、Y5又はY7に、また、Yn'は一般式(I)におけるY2、Y4、Y6、又はY8に相当する。4−スルホフタロニトリル誘導体におけるMはカチオンである。具体的には、Li、Na、Kなどのアルカリ金属イオン、又はトリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオンなどの有機カチオンなどが挙げられる。銅誘導体(Cu(Y)d)におけるYは、1価又は2価の配位子であり、具体的には、ハロゲン原子、酢酸陰イオン、アセチルアセトネート、及び酸素などが挙げられる。また、dは1乃至4のいずれかの整数である。
上記で説明した合成フローによれば、銅フタロシアニン骨格に、所望の置換基を所望の数だけ導入することができる。特に、本発明のように、銅フタロシアニン骨格に、酸化電位を貴とするために電子求引性基を数多く導入したい場合には、上記の合成フローは極めて有効である。
前記一般式(I)の化合物の好ましい具体例としては、下記の例示化合物II−1〜II−102が挙げられる。勿論、本発明は、一般式(I)の構造及びその定義に包含されるものであれば、下記の例示化合物に限られるものではない。本発明においては、下記の例示化合物の中でも、水酸基を有する例示化合物を用いることが好ましく、さらには、例示化合物II−66を用いることが特に好ましい。
Figure 2009298828
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Figure 2009298828
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Figure 2009298828
Figure 2009298828
Figure 2009298828
下記に例示化合物II−13〜II−57を表にして示したが、表中のXmの組、及び(Yn、Yn')の組は、一般式(I)に含まれる下記に示した一般式中における各置換基を表す。これらの組は、下記の一般式中において、それぞれ独立に順不同である。
Figure 2009298828
Figure 2009298828
Figure 2009298828
Figure 2009298828
下記に、前記した一般式(I)に含まれる下記式で表される例示化合物II−58〜II−102を表にして示した。表中の、Xprはそれぞれ独立にP1又はP2であり、銅フタロシアニン骨格に置換するP1の数はm及びP2の数はnであり、Yqは水素原子である。なお、P1及びP2の各置換基は銅フタロシアニン骨格のβ位に置換するものであり、β位における置換位置は順不同である。
Figure 2009298828
Figure 2009298828
Figure 2009298828
〔色材の検証方法〕
本発明で用いる色材が液体(インク)中に含有されているか否かの検証には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法が適用できる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークの吸光度検出器による最大吸収波長
(3)(1)のピークについての質量分析法によるマススペクトルのM/Z(posi、nega)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体を測定用サンプルとし、前記サンプルについて、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行った。そして、ピークの保持時間(retention time)、及び、可視吸光度検出器によるピークの極大吸収波長を測定した。
・カラム:SunFire C18 2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:下記表1
Figure 2009298828
また、質量分析装置によるマススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。HPLCで得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたM/Zをposi、negaそれぞれに対して測定した。
・イオン化法
・ESI
キャピラリ電圧:3.5kV
脱溶媒ガス:300℃
イオン源温度:120℃
・検出器
posi 40V 200〜1500amu/0.9sec
nega 40V 200〜1500amu/0.9sec
本発明で使用する色材の具体例である例示化合物II−66に対しての保持時間、極大吸収波長、M/Z(posi)、M/Z(nega)の値を表2に示した。未知のインクについて、上記と同様の分析を行った結果、それぞれの値が表2に示す値に該当する場合、本発明において用いる化合物に該当する色材が含有されていると判断できる。
Figure 2009298828
〔色材の含有量〕
インク中の色材(一般式(I)の化合物)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが特に好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、耐オゾン性及び発色性が十分に得られない場合があり、含有量が20.0質量%を超えると、耐固着性などのインクジェット特性が得られない場合がある。
(色材の凝集性)
色材の凝集性の測定には、小角X線散乱法を適用することができる。小角X線散乱法は、「最新コロイド化学」(講談社サイエンティフィック 北原文雄、古澤邦夫)や「表面状態とコロイド状態」(東京化学同人 中垣正幸)などに記載があるように、コロイド溶液中の粒子間距離の算出に汎用に用いられている手法である。
小角X線散乱装置の概要を小角X線散乱法の測定原理図である図1を用いて説明する。X線源より発生したX線は、第1〜第3スリットを通る間に数mm以下の程度まで焦点サイズを絞られ、試料溶液に照射される。試料溶液に照射されたX線は、試料溶液中の粒子によって散乱された後、イメージングプレート上で検出される。散乱されたX線は、その光路差の違いによって干渉が起こるため、得られたθ値から粒子間の距離d値をBraggの式(下記式(A))によって求めることができる。なお、ここで求められるd値は、一定間隔で配列している粒子の中心から中心の距離Lと考えることができる。
Figure 2009298828
(式(A)中、λはX線の波長、dは粒子間の距離、θは散乱角である。)
一般に、溶液中の粒子が規則正しく配列していない場合、散乱角プロファイルにはピークが発生しない。これに対し、本発明で用いる一般式(I)で示される構造を有する化合物の水溶液の場合は、2θ=0°〜5°の範囲に最大値を持つ強いピークが検出される。したがって、フタロシアニン系色材分子の凝集により形成される粒子(分子集合体)が、ある一定の規則で配列していることがわかる。図2に、トリフェニルメタン系色材である下記化合物(A)と、一般式(I)で表される構造を有するフタロシアニン系色材の、それぞれ10質量%水溶液における散乱角プロファイルを示した。図2より、同じシアンの色相を有する色材であっても、散乱角プロファイルは異なり、フタロシアニン系色材は特異的に散乱角ピークを有することがわかる。つまり、フタロシアニン系色材の場合、水溶液中ではフタロシアニン分子がいくつか凝集し分子集合体を形成しており、分子集合体間の距離は、散乱角プロファイルで示されるような一定の分布を有することになる。
Figure 2009298828
図3は、フタロシアニン系色材の分子集合体の分散距離の概念図である。図3に示すように、あるフタロシアニン系色材の分子集合体の半径をr1、分子集合体間の距離をL1とする。L1は常に一定である、と仮定すると、フタロシアニン系色材が形成する分子集合体の半径がr1→r2と大きくなるのにしたがって、小角X線散乱法で測定されたd値もL2→L3へと大きくなると考えられる。そのため、前記方法で測定されるd値は、フタロシアニン系色材の分子集合体の大きさを表す指数と考えられ、d値が大きいほど、色材分子が形成する分子集合体の大きさが大きくなっていると考えられる。このようにして、色材の凝集性、すなわち、凝集体の大きさをd値により表すことができる。
(耐オゾン性が向上するメカニズム)
一般式(I)の色材及び多価金属を組み合わせて用いることで、インクの付与量に関わらず画像の全体にわたって、予測されるレベルをはるかに超えた画像の耐オゾン性が得られるメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
本発明者らの検討の結果、色材の会合性と、画像の耐オゾン性との間には相関があることがわかった。すなわち、インク中に色材が単独で存在するときの凝集性よりも、特定のd値シフトを達成する多価金属が混合された状態、つまり、色材が会合体として存在するときの凝集性が高い場合に、耐オゾン性が向上することがわかった。したがって、特定のd値シフトを生じる多価金属を使用することで形成される色材の会合体における凝集性をコントロールでき、インク中に色材が単独で存在するときよりも、さらに凝集した状態になることにより、より高い耐オゾン性が得られたものと考えられる。なお、インク中に存在する色材の凝集性をコントロールすることは、記録媒体上に付与された色材の会合体の凝集性をコントロールすることと同じ効果があると考えられる。
本発明の規定を満足する色材と多価金属との組み合わせによって、従来の凝集剤との組み合わせでは不可能であった、インクの付与量に関わらず、画像全体にわたっての耐オゾン性の向上を達成することが可能になる。本発明の構成によってこのような効果が得られる理由を、本発明者らは、多価金属においては、複数の結合部位が1つの原子核を中心として互いに近い位置に存在しているためである、と考えている。
例えば、結合部位の位置がポリマー分子上に離れて存在し得るカチオンポリマーのような凝集剤を含有するインクの場合、インクの付与量が多い部分では色材が存在する量も多い。したがって、結合部位の位置が離れて存在する凝集剤を用いても、色材同士を凝集させることが可能である。しかし、インクの付与量が少ない部分では、色材が存在する量も少ないため、色材が存在する位置も相対的に離れ、この結果、結合部位の位置が離れて存在する凝集剤を用いると、十分な凝集効果が得られなくなると考えられる。一方、複数の結合部位を有する低分子量の有機化合物を用いた場合は、有機化合物の特性上、一定の確率で結合部位が中和され、結合部位が損失する場合がある。このため、インクの付与量が多い部分では色材が存在する量も多いので、結合部位の損失は表面化せずに色材同士を凝集させることが可能である。しかし、インクの付与量が少ない部分では、色材が存在する量も少ないため、色材を十分に凝集させるほどの結合部位が稼げず、結果として、十分な耐オゾン性向上の効果が得られなくなると考えられる。
これに対し、複数の結合部位が1つの原子核を中心として存在する多価金属であれば、色材が存在する量に関係せずに色材の近傍に存在させることができ、その結果、効率的に色材を凝集させることができる。さらに、多価金属は結合部位も安定であるため、上述のような結合部位の損失も起こらず、色材が存在する量に関係なく、凝集効果を発揮することができる。以上のことから、本発明においては、凝集剤として多価金属を用いる。
さらに、本発明のインクでは、多価金属を用いることにより生じるd値シフトを適切にコントロールすることで、画像の耐オゾン性及び耐ブロンズ性を両立させることができるという効果を得ている。フタロシアニン系色材を含有するインクを用いて形成した画像における別の課題として、色材の凝集性の高さに起因して生じる金属光沢、いわゆるブロンズ現象の発生がある。記録物においてブロンズ現象が発生した場合、その光学反射特性の変化により、画像の発色性や色相が著しく変化し、画像品位の著しい低下を引き起こす。これに対して、本発明の構成によれば、ブロンズ現象の発生が抑制された耐ブロンズ性に優れる高品位の画像が得られる。また、本発明のインクの構成によって、さらに、下記の効果も得られる。すなわち、色材と多価金属との組み合わせは、化合物の種類、インク中の含有量やその比率によって多岐にわたり、好ましい性能を発現するための条件の規定には複雑な場合分けなどが必要となる。ところが、本発明のように、色材の凝集性をd値シフトの観点から制御する構成とすることで、優れた耐オゾン性を得ることができるインクの特性を簡易な手法で規定することができる。
このように、色材の凝集性がコントロールされ、色材が凝集しやすい状態にあるインクが記録媒体に付与されると、記録媒体上において色材の会合体がさらに凝集することでより大きな凝集体が形成される。すると、空気中のオゾンガスなどの酸化性ガスが記録媒体上の色材を劣化させる反応を引き起こした場合に、凝集体の表面近傍に存在する分子は劣化するが、凝集体の内部に存在する分子は酸化性ガスによる劣化を受けにくくなる。この結果、全体としては、劣化せずに残る色材の割合が増えることになる。一方、凝集体が大きすぎると、ブロンズ現象を生じたり、吐出性が低下することになり、画像品質が低下する。これらのことから、d値による色材の凝集の制御が耐オゾン性と画像品質の両立に極めて重要となる。本発明のインクにおいては、このようなメカニズムにより画像の耐オゾン性を、インクの付与量に関わらず全体にわたって顕著に向上させることができ、画像品質の向上とも両立させることができる。
本発明者らの検討の結果、先に説明した構造の一般式(I)の化合物及び多価金属をある一定の質量比率で併用したインクにおけるd値は、多価金属を含有せずに一般式(I)の化合物を含有させたインクにおけるd値よりも大きくなることがわかった。本発明者らがさらに検討を行った結果、本発明のインクを下記のように構成した場合に、画像の耐オゾン性を特に顕著に向上させることができることがわかった。すなわち、一般式(I)の化合物と多価金属とを併用してなるインクにおけるd値(d1値)が、多価金属を含有せず一般式(I)の化合物を含有するインクにおけるd値(d0値)よりもある程度大きくなる関係となっている場合に画像の耐オゾン性が向上する。
上記した効果に基づいて規定した本発明のd値シフトの条件は以下の通りである。具体的には、小角X線散乱法により測定されるインク中の色材のd値をd1とし、前記インクの中の多価金属イオンを水に置き換えた組成を有する対照インク中の色材のd値をd0としたときに、前記d1及びd0が、下記式の関係を満足することが必要である。
0.3≦(d1−d0)≦2.3
さらには、前記d1及びd0が、下記式の関係を満足することが好ましい。
0.3≦(d1−d0)≦1.5
(多価金属)
本発明のインクに用いる多価金属は、インク中において多価金属イオンの形態で存在していることが好ましい。このような多価金属イオンをインク中に含有させるためには、水溶性を有する多価金属塩を用いることが好適である。インクに添加された多価金属塩は、インク中において多価金属イオンと陰イオンとに解離して存在するようになる。多価金属塩とは、多価金属イオンと、該多価金属イオンに結合する陰イオンとで構成される金属塩のことであるが、本発明においては、その少なくとも一部が水溶性であることを要する。
多価金属としては2価や3価の多価金属を用いることができる。具体的には、例えば、Ca、Cu、Ni、Mg、Zn、Sr及びBaなどの2価の金属や、Al、Fe、Cr及びYなどの3価の金属が挙げられる。これらの多価金属は、水性媒体中において、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+などの2価の金属イオン、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+などの3価の金属イオンとして存在する。また、多価金属塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、酸の共役塩基が挙げられるが、例えば、CH3HOO-、NO3 -、SO4 2-、Cl-などが好ましい。
本発明においては、多価金属の中でも、特に2価の金属を用いた場合により顕著な効果が得られるので、2価の金属を用いることが好ましい。2価の金属を使用した場合、インクの付与量に関わらず画像の全体にわたって耐オゾン性を向上させる効果が3価の金属よりも高く、さらに耐オゾン性と画像品質とをより優れたレベルで両立することができる。2価の金属を使用した場合に得られるこれらの効果は、2価の金属における2つの結合部位が、記録媒体上における色材の凝集性を特に好適な状態にすることが可能であるためと考えられる。一方、3価の金属における3つの結合部位は、2価の金属と同じd値、つまり凝集の大きさを同じに保ったときに、2価の金属よりも金属と色材との結合が多く、凝集力がより大きくなる。このため、3価の金属を用いると、耐オゾン性が向上する効果よりも、吐出性の低下や耐ブロンズ性の低下がより生じやすくなる。このため、3価の金属を用いた場合に、2価の金属によって得られたインクの高い性能を実現するまでには至らなかったものと考えている。本発明においては、2価の金属の中でも特に、Mgを用いることが好ましい。これは、同じ2価の金属の中でも金属の種類によって結合力に差があり、上記と同じ理由から、Mgが結果として最も良好なレベルで、耐オゾン性と画像品質とを両立することができたためであると考えている。
インク中の多価金属の含有量はd値に依存して決定することが好ましい。d値はインク中の色材の凝集の程度を示すものであり、d値の幅を規定することは、すなわち、その色材と多価金属の凝集レベルを規定することである。d値が小さいと、色材と多価金属との凝集が小さく、d値が大きいと、色材と多価金属との凝集が大きくなる。色材の凝集が小さすぎると、十分な耐オゾン性が得られず、色材の凝集が大きすぎると、画像においてブロンズ現象が発生したり、吐出性が低下し、その結果として画像品質が低下する。したがって、本発明では、小角X線散乱法により測定される、インク中の色材のd値をd1、及びインク中の多価金属を水に置き換えた組成を有する対照インク中の色材のd値をd0としたときに、これらの値が特定の関係を満足するようにインクを設計する。すなわち、d1及びd0が、0.3≦(d1−d0)≦2.3を満足するように多価金属の含有量を決定する。さらには、前記d1及びd0が、0.3≦(d1−d0)≦1.5を満足するように多価金属の含有量を決定することが好ましい。d値シフトの幅が上記範囲を満足するように多価金属の含有量を決定することで、インクの付与量に関わらず画像の全体にわたって耐オゾン性の向上を達成させることができ、また、これと共に、画像の品質も両立することができる。また、本発明においては、前記d1値が7.0以上9.0以下の範囲にあることが好ましい。
上述の通り、多価金属としては2価及び3価の金属を用いることができ、この場合のインク中の多価金属の含有量(質量%)は、上記d1−d0の範囲の条件を満足するように適宜決定することができる。
なお、本発明における上記d1−d0の範囲に相当する具体的な多価金属の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.03質量%以上1.0質量%以下とすることが好ましい。勿論、上記d1−d0の範囲を満足すれば、多価金属の種類によってその含有量を適宜変更してもよい。例えば、多価金属としてMgを用いる場合、インク中の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.03質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。また、多価金属としてCaを用いる場合、インク中の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.03質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。なお、本発明における「多価金属の含有量」とは、フタロシアニン系色材の中心金属である銅は含まないものとする。
本発明者らの検討の結果、インクの付与量に関わらず画像の全体にわたって耐オゾン性の向上を達成することができ、かつブロンズや吐出性能も両立できる多価金属の含有量は、上記した範囲内とした場合が特に好ましいことがわかった。さらに、本発明の構成によって、一般式(I)の化合物が本来有する耐オゾン性が、凝集剤を組み合わせた場合に予測される性能をはるかに上回り、特に優れた耐オゾン性が、画像の全体にわたって得られることもわかった。つまり、本発明のインクによれば、色材及び多価金属を特定の比率で混合することで、これらの材料から予測されるレベルをはるかに超えた耐オゾン性を、画像の全体にわたって実現し、さらに耐ブロンズ性と吐出性をも両立することができる。
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より少ないと、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に吐出安定性などの信頼性が得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲より多いと、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チオジグリコールなどのグリコール類。1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を持つアルキレングリコール類。ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性ポリマーなど、種々の添加剤を含有しても良い。
(その他のインク)
また、フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクを、本発明のインクとは別の色調を有するインクと組み合わせて用いることができる。本発明のインクは、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、ブルーインクなどの少なくともいずれか1種のインクと共に用いられることが好ましい。また、これらのインクと実質的に同一の色調を有する、所謂淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。これらのインク又は淡インクの色材は、公知の染料であっても、新規に合成された色材であっても用いることができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクは、インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行う本発明のインクジェット記録方法に適用される。この場合のインクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用することによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクを収容してなるインク収容部を備えてなることを特徴とする。
<記録ユニット>
本発明の記録ユニットは、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットであって、インクが本発明のインクであることを特徴とする。特に、好ましいものとしては、前記記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用することによりインクを吐出する記録ユニットが挙げられる。さらに、本発明においては、金属及び/又は金属酸化物を含有する発熱部接液面を有する記録ヘッドを用いることが好ましい。前記発熱部接液面を構成する金属及び/又は金属酸化物は、具体的には、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、若しくはAlなどの金属、又はこれらの金属の酸化物などが挙げられる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えてなり、インクが本発明のインクであることを特徴とする。特に、好ましいものとしては、インクを収容するインク収容部を有する記録ヘッドの内部のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを作用することによりインクを吐出するインクジェット記録装置が挙げられる。
以下に、本発明の一例のインクジェット記録装置について、機構部の概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部などで構成される。
図4は、インクジェット記録装置の斜視図である。また、図5及び図6は、インクジェット記録装置の内部機構を説明する図であり、図5は右上部からの斜視図、図6はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示す。
給紙を行う際には、給紙トレイM2060を含む給紙部において、記録媒体の所定枚数のみが給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に搬送された記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に搬送される。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転し、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。
記録媒体に画像を形成する際には、キャリッジ部は、記録ヘッドH1001(図7;詳細な構成は後述する)を目的の画像を形成する位置に配置して、電気基板E0014からの信号にしたがって記録媒体にインクを吐出する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。画像が形成された記録媒体は、排紙部において、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれた状態で搬送されて、排紙トレイM3160に排出される。
なお、クリーニング部は、画像を形成する前後の記録ヘッドH1001をクリーニングする。キャップM5010で記録ヘッドH1001の吐出口をキャッピングした状態で、ポンプM5000を作動すると、記録ヘッドH1001の吐出口から不要なインクなどが吸引されるようになっている。また、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010の内部に残っているインクなどを吸引することにより、残インクによる固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
(記録ヘッドの構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。図7は、ヘッドカートリッジH1000の構成を示した図であり、また、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有しており、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
インクジェット記録装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンの各インクで画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。なお、上記において、少なくとも1つのインクに、本発明のインクを用いる。そして、図7に示すように、それぞれのインクカートリッジH1900が、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000を搭載した状態でも行うことができる。
図8は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、カートリッジホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などで構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAlなどの電気配線は成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路はフォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図9は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクのノズル列H2000、マゼンタインクのノズル列H2100、及びシアンインクのノズル列H2200の3色分のノズル列が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクのノズル列H2300、ブラックインクのノズル列H2400、グリーンインクのノズル列H2500、及び淡マゼンタインクのノズル列H2600の4色分のノズル列が形成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成されている。そして、各ノズルからは、それぞれ約2ピコリットルのインクが吐出される。このため、各吐出口における開口面積は、およそ100μm2に設定されている。
以下、図7及び図8を参照して説明する。第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、カートリッジホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するカートリッジホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、上記したように、カートリッジホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着などで結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。なお、カートリッジホルダー部は、カートリッジホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。また、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
なお、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じた膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うサーマルインクジェット方式の記録ヘッドについて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂、オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用することができる。
サーマルインクジェット方式は、オンデマンド型に適用することが特に有効である。オンデマンド型の場合には、インクを保持する液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する。このことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、インクに膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応したインク内の気泡を形成できる。この気泡の成長及び収縮により吐出口を介してインクを吐出することで、少なくとも1つの滴を形成する。駆動信号をパルス形状とすると、即時、適切に気泡の成長及び収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
また、本発明のインクは、前記のサーマルインクジェット方式に限らず、下記に述べるような、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置においても好ましく用いることができる。かかる形態のインクジェット記録装置は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクをノズルから吐出する。
インクジェット記録装置は、上記したように、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。さらに、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、また、インクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給するものでもよい。また、記録ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収容部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などとすることができる。また、インクジェット記録装置は、上記したようなシリアル型の記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、実施例、比較例のインク成分は「質量%」を意味する。
(例示化合物II−66の合成)
下記の例示化合物II−66を、特許第3851569号公報などを参考に合成した。
Figure 2009298828
<インクの調製>
下記表3に示した各成分を混合して、十分撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターにて加圧濾過を行い、実施例及び比較例のインクを調製した。
Figure 2009298828
Figure 2009298828
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれ、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置(商品名:PIXUS iP8600;キヤノン製)に搭載した。記録条件を、温度23℃、相対湿度55%、記録密度2400dpi×1200dpi、吐出量2.5plとした。そして、プロフェッショナルフォトペーパー(キヤノン製)に記録デューティを10%から100%まで10%刻みで変化させた画像を形成した。
(耐オゾン性)
上記で得られた記録物における記録デューティが100%及び10%の画像の部分について、画像濃度を測定した(「耐オゾン性試験前の画像濃度D1」とする)。さらに、この記録物を、オゾン試験装置(商品名:OMS−H;スガ試験機製)を用いて、オゾンガス濃度10ppm、相対湿度60%、槽内温度23℃で4時間曝露した。その後、記録物における記録デューティが10%及び100%の画像の部分について、画像濃度を測定した(「耐オゾン性試験後の画像濃度D2」とする)。なお、画像濃度は、分光光度計(商品名:Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。得られた耐オゾン性試験前の画像濃度及び耐オゾン性試験後の画像濃度から、下記式(B)に基づいて残存濃度率を算出して、耐オゾン性の評価を行った。耐オゾン性の基準は以下の通りである。評価結果を表4に示した。下記の評価基準において、Aが耐オゾン性として特に良好なレベル、Bが耐オゾン性として良好なレベル、一方、Cは耐オゾン性として劣るレベルである。
A:記録デューティが100%及び10%の画像の部分の残存濃度率の差が5未満
B:記録デューティが100%及び10%の画像の部分の残存濃度率の差が5以上10未満
C:記録デューティが100%及び10%の画像の部分の残存濃度率の差が10以上
Figure 2009298828
(画像品質)
上記で得られた画像について、記録デューティが30%の画像の部分における、ブロンズ現象の発生の程度及び吐出性を、画像の状態を目視で確認して、画像品質の評価を行った。画像品質の基準は以下の通りである。評価結果を表8に示した。
A:ブロンズ現象及び吐出不良が発生していない。
B:ブロンズ現象又は吐出不良がわずかに発生している。
C:明らかなブロンズ現象又は明らかな吐出不良が発生している。
(d値)
上記で得られた各インクについて、小角X線散乱法により散乱角プロファイルを測定した。散乱角プロファイルの測定条件は以下に示す通りである。
・装置:Nano Viewer(理学製)
・X線源:Cu−Kα
・出力:45kV−60mA
・実効焦点:0.3mmφ+Confocal Max−Flux Mirror
・1st Slit:0.5mm、2nd Slit:0.4mm、3rd Slit:0.8mm
・照射時間:240min
・ビームストッパー:3.0mmφ
・測定法:透過法
・検出器:Blue Imaging Plate
得られた散乱角プロファイルから、X線回折データ処理ソフトJADE(Material Data Inc.製)を用いて、散乱角ピークトップの2θ値から、下記式(A)に基づいてd値(nm)を算出した。このようにして得られたd値をそれぞれ、実施例及び比較例のインク中の色材のd1値とする。そして、実施例1〜9及び比較例2〜4の組成から、インク中の多価金属を水に置き変えた組成を有する対照インクである比較例1のインク中の色材のd値をd0値として、d1−d0の値(d値シフト)を求めた。結果を表4に示した。なお、d値は、インク中の色材又は色材の混合物の凝集性を表すものである。また、d値は小数点第2位を四捨五入した数値とした。
Figure 2009298828
Figure 2009298828
以上のことから、一般式(I)の色材と多価金属とを特定の関係を満足する状態で併用することで、従来不可能であった、インクの付与量に関わらず画像の全体にわたっての耐オゾン性の向上が確認され、また画像品質との両立も達成できることが確認された。具体的には、色材と多価金属との質量比率を、d値シフトの幅が0.3以上2.3以下、より好適には0.3以上1.5以下となるようにすることで、この両立が達成できる。さらに、d値シフトをこの範囲に留めることにより、多価金属の種類を問わず、耐オゾン性の向上と画像品質の両立を達成することができることを確認した。
以上のことは、色材と多価金属とを組み合わせ、さらにその凝集性を好ましい範囲に調整することによって、下記の作用・効果が得られたものと考えられる。すなわち、本発明のインクの構成により、記録媒体上において好ましい凝集体が形成され、これによって、空気中の酸化性ガスからの攻撃、特にオゾンからの攻撃を受けて劣化する色材の割合が減少し、かつ、ブロンズ現象の発生や吐出不良の発生も抑制される。そして、これらの結果、本発明のインクを用いることで、インクの付与量に関わらず、画像の全体にわたって特に優れた耐オゾン性及び画像品質の両立が達成されたものと考えられる。
小角X線散乱法の測定原理図である。 トリフェニルメタン系色材及びフタロシアニン系色材の小角X線散乱プロファイルである。 フタロシアニン系色材の分子集合体の分散距離の概念図である。 インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の斜視図である。 インクジェット記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。
符号の説明
M2041:分離ローラ
M2060:給紙トレイ
M2080:給紙ローラ
M3000:ピンチローラホルダ
M3030:ペーパーガイドフラッパー
M3040:プラテン
M3060:搬送ローラ
M3070:ピンチローラ
M3110:排紙ローラ
M3120:拍車
M3160:排紙トレイ
M4000:キャリッジ
M5000:ポンプ
M5010:キャップ
E0002:LFモータ
E0014:電気基板
H1000:ヘッドカートリッジ
H1001:記録ヘッド
H1100:第1の記録素子基板
H1101:第2の記録素子基板
H1200:第1のプレート
H1201:インク供給口
H1300:電気配線基板
H1301:外部信号入力端子
H1400:第2のプレート
H1500:タンクホルダー
H1501:インク流路
H1600:流路形成部材
H1700:フィルター
H1800:シールゴム
H1900:インクカートリッジ
H2000:イエローノズル列
H2100:マゼンタノズル列
H2200:シアンノズル列
H2300:淡シアンノズル列
H2400:ブラックノズル列
H2500:グリーンノズル列
H2600:淡マゼンタノズル列

Claims (8)

  1. 少なくとも、色材及び多価金属を含有するインクであって、
    前記色材が、下記一般式(I)で表される化合物であり、
    小角X線散乱法により測定される、前記インク中の色材のd値をd1とし、前記インク中の多価金属を水に置き換えた組成を有する対照インク中の色材のd値をd0としたときに、これらのd1及びd0が、
    0.3≦(d1−d0)≦2.3
    の関係を満足することを特徴とするインク。
    Figure 2009298828
    (一般式(I)中の、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立に、−SO−Z、−SO2−Z、−SO2NR12、スルホン酸基、−CONR12、又はCO21のいずれかを表し、Zはそれぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基のいずれかであり、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基のいずれかである。また、一般式(I)中の、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、及びY8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、アミド基、ウレイド基、スルホンアミド基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のスルファモイル基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はスルホン酸基のいずれかを表し、a1、a2、a3、及びa4はそれぞれ、X1、X2、X3、及びX4の置換基の数を示し、それぞれ独立に1又は2のいずれかである。)
  2. 前記d1及びd0が、
    0.3≦(d1−d0)≦1.5
    の関係を満足する請求項1に記載のインク。
  3. 前記多価金属が2価の金属である請求項1又は2に記載のインク。
  4. 前記多価金属がMgである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
  5. インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  6. インクを収容してなるインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  7. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とする記録ユニット。
  8. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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