JP2009298736A - 没食子酸関連物質による難防除土壌病害用防除剤、及びそれを用いた難防除土壌病害防除方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリフェノールの一種である没食子酸メチル又はその誘導体を主たる有効成分として含有する難防除土壌病害用防除剤を提供する。これにより、没食子酸メチル誘導体の有する優れた抗菌作用により、ターゲットとなる難防除病害を選択的に防除することが可能となる。
【選択図】なし
Description
これら病原細菌や病害放線菌は、防除が非常に困難な病害の原因体として知られており、その対策の確立が課題である。
しかしながら、没食子酸エチルによる抗菌性のみでは、アメリカフウロの優れた防除効果を十分に説明するには至っておらず(非特許文献2)、アメリカフウロを用いた防除技術の開発においては、その抗菌作用のメカニズムを解明することが望まれている。
また、没食子酸メチルは消毒剤や収れん剤、或いは眼科用に使用されている。
更に、特許文献2に、天然物由来の没食子酸エステルをアルカリ存在下でハロゲン化物又はスルホン酸エステルと有機溶媒中で反応させて得られた没食子酸誘導体が、枯草菌や黄色ブドウ球菌等のグラム陽性菌に対して、選択的な抗菌性を示すことが開示されている。
即ち、本発明は、(I)下記一般式(1)
[(1)式中、R1,R2,R3は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム塩あるいは炭素数1から3のアルキル基のいずれか1つを表わし、R1,R2,R3のうちの少なくとも1つは水素原子を表わす。]で示される水溶性没食子酸メチル誘導体のうち少なくとも1種を有効成分として含有する難防除土壌病害用防除剤を提供する。
本発明は、(II)没食子酸メチルを有効成分として含有する難防除土壌病害用防除剤を提供する。
また、本発明は、(III)前記難防除土壌病害が青枯病及び/又は植物放線菌病であることを特徴とする上記(I)又は(II)に記載の難防除土壌病害用防除剤を提供する。
更に、本発明は、(IV)上記(I)〜(III)のいずれか1項に記載の難防除土壌病害用防除剤を用いて土壌消毒を行うことを特徴とする難防除土壌病害防除方法を提供する。
また、本発明によれば、ターゲットとなる土壌病害を選択的に防除できるので、従来の化学農薬による土壌消毒法のように土壌環境を撹乱するリスクが低減できる。従って、本発明により、生物農薬と化学農薬の利点を兼ね備えた、環境に優しく効果の高い新たな難防除技術を提供することが可能となる。
また、かかる没食子酸メチル誘導体は、アメリカフウロの抗菌性に着目し、その抽出物中から見出されたものである。従って、天然物由来であることから、これを防除剤の有効成分として用いることにより、環境への負荷が少なく、且つ使用のし易さや経済性を備えた、生物農薬と化学農薬の両方の利点をあわせもつ画期的な新規農薬の提供が可能になると期待される。
該没食子酸メチル誘導体としては、下記一般式(1)で示される没食子酸メチル誘導体であって、水に可溶化するものがいずれも使用可能である。
ここで、(1)式中、R1,R2,R3は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム塩あるいは炭素数1から3のアルキル基のいずれか1つを表わし、R1,R2,R3のうちの少なくとも1つは水素原子を表わす。
該没食子酸メチル誘導体としては、化学合成により製造したもの、アメリカフウロなどの植物体から抽出・分離・精製したもの、或いは植物体から得られるリグニン等の抽出物を原料として化学合成法や生合成を適宜組合せた方法により合成したものなどがいずれも使用可能であり、特に限定されない。
上記植物体としてアメリカフウロを用いる場合、有効成分は地上部に多く含まれることから、葉や茎を使用することが好ましい。このとき、生草、乾燥物のいずれを使用しても良い。
かかる没食子酸メチル誘導体は、液体担体や固体担体の他、安定剤や製剤補助剤など、病害に対する殺菌効果を有効に発揮させるために必要な成分と適宜配合することにより、防除剤としての利用が可能になる。
上記混和処理や灌注処理は、定植時に行っても良く、適当な時期に追加灌注を行っても良い。また、作物によって根の深さが異なるので、施用する深度や薬剤の使用量などの条件は、適宜設定されることが望ましい。
更に、該難防除土壌病害用防除剤を土壌中に混和処理した後、太陽熱土壌消毒や敷きわら被覆などを併用することにより、難防除土壌病害をより効果的に防除することができる。
実施例1
本発明にかかる難防除土壌病害用防除剤として、没食子酸メチルを有効成分とした場合において、青枯病菌と植物病原放線菌に対する防除効果を調べた。
先ず、本実施例において抗菌成分として使用する没食子酸メチルを沖縄県に自生する野草のアメリカフウロからの分離・精製により調製した。
即ち、アメリカフウロ(Geranium carolinianum L.)の生草の地上部(葉及び茎)100gを70%エタノール1,200ml中に室温で2週間浸漬処理して、アメリカフウロに含まれる有効成分を抽出した。
得られた酢酸エチル抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、次いで逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、没食子酸メチルを調製した。
9cmシャーレにジャガイモ半合成培地10mlを固化させ青枯病菌の菌液100μlを滴下し、コンラージ棒で均一に広げた。没食子酸メチルはメタノール溶液としてペーパーディスクにしみ込ませた後、減圧下で溶媒を除去した。ペーパーディスクを植菌したシャーレに置き、28℃で3日間静置培養した後、形成された生育阻止円の直径を計測した。結果を下記表1に示す。
表1中、数値は青枯病菌の生育阻止円の直径(cm)を表す。
実施例1において抗菌成分として使用した没食子酸メチルを没食子酸(比較例1とする。)、没食子酸エチル(比較例2)、没食子酸プロピル(比較例3)、没食子酸オクチル(比較例4)及び没食子酸ドデシル(比較例5)にそれぞれ代え、その他は実施例1と同様にして青枯病菌に対する抗菌活性を調査した。この結果を上記表1に併せて示す。
表1中、生育阻止円がみられなかったものは「−(マイナス)」として表す。
これに対して、没食子酸メチルを用いた実施例1では、きわめて優れた抗菌活性が得られ、特に0.5μmolの比較的低濃度の投与量においても十分な効果を有することが明らかとなった。この結果は、従来から知られる没食子酸関連物質の抗菌性から予想されるものとは異なり、青枯病菌に対する抗菌活性は全く逆の傾向をもつことがわかった。
次に、没食子酸メチルの青枯病菌以外の抗菌スペクトラムについて調べた。
即ち、実施例1において難防除土壌病害として用いた青枯病菌を各種病原菌に変えた場合において、上述と同様にして抗菌活性の評価を行った。供試菌には、ジャガイモそうか病菌(Streptomyces scabies:Ss(実施例2)、S. acidiscabies :Sa(実施例3))、サツマイモ炭腐病菌(Macrophomina phaseolina:Mp (比較例6))、レタス菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum:Ssc (比較例7))、ツルレイシ蔓割病菌(Fusarium oxysporum f. sp. Momordicae:Fo (比較例8))、パパイヤ軟腐病菌(Phytophthora nicotianae:Pn (比較例9))、キク斑点細菌病菌(Pseudomonas chicholli:Pc (比較例10))、ラッキョウ軟腐病菌(Erwinia carotovora:Ec (比較例11))を用いた。この結果を表2に示す。
従って、アメリカフウロに含まれる没食子酸メチル誘導体は、青枯病菌と植物病原放線菌に対して選択的に優れた抗菌作用を有するので、これを有効成分とする難防除土壌病害用防除剤を利用することにより、土壌環境を撹乱することの無い低環境負荷型の新規な化学農薬の開発が可能になると期待できる。
Claims (4)
- 没食子酸メチルを有効成分として含有することを特徴とする難防除土壌病害用防除剤。
- 前記難防除土壌病害が青枯病及び/又は植物放線菌病であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難防除土壌病害用防除剤。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の難防除土壌病害用防除剤を用いて土壌消毒を行うことを特徴とする難防除土壌病害防除方法。
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