JP2009286918A - 水性分散体および積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、変性ナイロン樹脂(B)、および水性媒体を含有することを特徴とする水性分散体。(A)が不飽和カルボン酸成分で変性されており、(A)における不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜30質量%であることを特徴とする前記水性分散体。(B)がアルコキシアルキル化されたナイロン樹脂であることを特徴とする前記水性分散体。前記水性分散体から水性媒体を除去して得られる塗膜。この塗膜を設けてなる積層体。
【選択図】 なし
Description
乳化剤や保護コロイド等は接着界面の状態に大きく影響を与える物質であり、これらを含有すると基材との密着性が低下してしまう。また、これらは親水性が高く、さらに可塑化能力も有しているため、形成される塗膜の耐水性、耐溶剤性が著しく低下してしまうという問題がある。さらに、乳化剤や保護コロイド等を含む塗膜は、それらがブリードアウトする恐れがあるために環境的、衛生的にも好ましくないだけでなく、接着性が経時的に変化する恐れがある。
前者の場合には、水性分散体の塗膜には耐溶剤性が必要となる。溶剤系コーティング剤で使用される溶剤は、衛生面からトルエン等の芳香族系溶剤から、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどの溶剤へ置き換わっている。そこで、水性分散体の塗膜は、これらの溶剤に対する耐性が必要となる。
また、後者のように、水性分散体を基材に塗布した後に巻き取ったりする場合は、塗膜の耐ブロッキング性が必要となる。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、変性ナイロン樹脂(B)、および水性媒体を含有することを特徴とする水性分散体。
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が不飽和カルボン酸成分で変性されており、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜30質量%であることを特徴とする(1)記載の水性分散体。
(3)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル成分を含有しており、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が1〜45質量%であることを特徴とする(1)または(2)記載の水性分散体。
(4)変性ナイロン樹脂(B)がアルコキシアルキル化されたナイロン樹脂であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の水性分散体。
(5)変性ナイロン樹脂(B)が不飽和カルボン酸成分を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の水性分散体。
(6)酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と変性ナイロン樹脂(B)との質量比(A)/(B)が95/5〜10/90であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の水性分散体。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の水性分散体から水性媒体を除去した塗膜。
(8)基材の少なくとも片面に(7)記載の塗膜を設けた積層体。
(9)基材が金属材料またはポリアミド樹脂である(8)記載の積層体。
上述のように得られた塗膜は各種基材への密着性に優れており、かつシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチルに対する耐性に優れるため、溶剤系のオーバーコート剤を塗布する場合のプライマーとして好適である。特に、電気機器、モータ、発電機、相間絶縁等の絶縁塗膜、変圧器、電線の被覆、コンデンサーなどの誘電体塗膜、情報記録用ディスクなどの塗膜や、電子写真感光体の下地剤などへの適用が可能であり、産業上の利用価値は極めて高い。
本発明の水性分散体は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、変性ナイロン樹脂(B)、および水性媒体を含有する。
水性媒体とは、水を主成分とする媒体であり、後述する塩基性化合物や水溶性有機溶剤を含有していてもよい。水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に導入されたカルボキシル基は、上記した塩基性化合物によって少なくとも一部が中和されていればよく、水性分散体の分散安定性の点から、中和度は30〜100%であることが好ましく、50〜100%がより好ましく、70〜100%がさらに好ましく、80〜100%が特に好ましい。カルボキシル基(酸無水物を含む)の一部が中和されていることでアニオンを生じ、アニオンの静電気的反発力によって樹脂微粒子間の凝集を防ぎ、水性分散体を安定化させることができる。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を塩素化する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、塩素化させたい樹脂をクロロホルム等の塩素系溶剤に溶解させた後、紫外線を照射しながら、または、ラジカル発生剤の存在下で、ガス状の塩素を吹き込むことにより行うことができる。
不飽和カルボン酸成分の含有量は、通常、ポリアミド樹脂100質量部に対して1〜100質量部であり、5〜80質量部が好ましく、10〜60質量部がより好ましく、20〜60質量部がさらに好ましい。不飽和カルボン酸成分の量が1質量部未満では水性分散体として得ることが困難になり、100質量部以上では塗膜の耐水性が低下する。なお、不飽和カルボン酸成分の一部は前述した塩基性化合物で中和されていることが分散体の安定性の面から好ましい。
硬化剤としては、自己架橋性を有する硬化剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属錯体等を用いることができ、このうちイソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、アジリジン化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。また、これらの架橋剤を組み合わせて使用してもよい。硬化剤の中でも、耐水性、耐溶剤性などの各種の塗膜性能向上の点から、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましく、イソシアネート化合物が特に好ましい。
硬化剤の添加量は、水性分散体中の樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部である。硬化剤の添加量が0.1質量部未満の場合は、塗膜性能の向上の程度が小さく、50質量部を超える場合は、水性分散体の液安定性や加工性等の塗膜性能が低下してしまう。
他の重合体の水性分散体としては、特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
粘着付与成分としては、ロジン類、テルペン類、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂から選ばれる少なくとも1種の成分を用いることができる。ロジン類としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどが挙げられる。テルペン類としては、低重合テルペン系、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペンなど挙げられる。石油樹脂としては、炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、及びこれらを水素添加した石油樹脂、マレイン酸変性、フタル酸変性した石油樹脂などが挙げられる。
1.酸変性ポリオレフィン樹脂の特性
(1)構成
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。酸変性ポリオレフィン樹脂は、オルトジクロロベンゼン(d4)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)メルトフローレート(MFR)
JIS 6730記載(190℃、2160g荷重)の方法で測定した。
(1)固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(2)ポットライフ
水性分散体を室温および40℃で90日放置したときの外観を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし、または加熱で低粘度化(塗工可能)
×:固化、凝集や沈殿物の発生、加熱しても低粘度化しない(塗工不可)
以下の評価においては、熱可塑性樹脂フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm、以下、PET)、2軸延伸ナイロン6フィルム(ユニチカ社製エンブレム、厚み15μm、以下、Ny)、延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、厚み50μm、以下、PP)、未延伸ポリエチレンフィルム(タマポリ社製、厚み40μm、以下、PE)を用いた。金属材料としてはアルミ箔を用いた。
アルミ箔に本発明の水性分散体を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、120℃で1分間、乾燥させた。得られた積層体は1日放置後、60℃の温水に24時間浸漬し、風乾燥後の塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし
△:塗膜がくもる
×:塗膜が完全に溶解、または剥離
アルミ箔に本発明の水性分散体を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、120℃で1分間、乾燥させた。得られた積層体は1日放置後、40℃のシクロヘキサノン、メチルエチルケトン、酢酸エチルにそれぞれ24時間浸漬し、風乾燥後の塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし
△:塗膜がくもる、または一部に溶解の痕跡あり
×:塗膜が完全に溶解、または剥離
アルミ箔に本発明の水性分散体を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、120℃で1分間、乾燥させた。得られた積層体を室温で1日放置後、コート面に2軸延伸PETフィルムの非コロナ処理面を重ね合わせた状態で、0.02MPaの負荷をかけ、40℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置後、その耐ブロッキング性を次の3段階で評価した。
○:フィルムを軽く持ち上げる程度で剥離する。
△:フィルムを引っ張ることで剥離する(塗膜の凝集破壊はない)。
×:フィルムを引っ張っても剥離しない、または塗膜の凝集破壊が認められる。
各種基材に水性分散体を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で3分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、表面にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がした場合の剥がれの程度を目視で評価した。
○:全く剥がれなし
△:一部、剥がれた
×:全て剥がれた
JIS K5400 8.5.2に準じて評価した。ガラス繊維を30質量%含有したナイロン6樹脂(ユニチカ社製A1030BRT)の射出成形体の表面に、水性分散体を乾燥後の塗膜の厚みが2μmになるようにマイヤーバーを用いてコートした後、90℃で3分間、乾燥させた。得られた積層体は室温で1日放置後、評価した。積層体表面をクロスカットし、1mm×1mm×100個の碁盤目部分にセロハンテープ(ニチバン社製TF−12)を貼り付け、テープを一気に剥がし、剥離せずに残っている数で評価した。「n/100」は、試験後に100個の碁盤目中のn個が剥離せず残っていることを示す。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は市販のものを使用した。以下の水性分散体の製造において使用した酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の組成を表1に示す。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX−8290、アルケマ社製〕、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、2.2gのトリエチルアミン(和光純薬社製)および177.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂〔ボンダインTX−8030、アルケマ社製〕、90.0gのイソプロパノール(和光純薬社製)、2.2gのトリエチルアミン(和光純薬社製)および147.8gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2を得た。
変性ナイロン(B)の水性分散体としては、FR−700E(鉛市社製、メトキシメチル化6−ナイロン樹脂、アニオン性、固形分20質量%)(以下、FR700Eとする)を用いた。酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体E−1とFR700Eとを、固形分質量比E−1/FR700Eが75/25になるように配合し、室温で5分間、混合攪拌し、水性分散体W−1を得た。W−1を用いて各種性能評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1とFR700Eとを、固形分質量比E−1/FR700Eが90/10(実施例2)、50/50(実施例3)、35/65(実施例4)、20/80(実施例5)、になるに配合し実施例1と同様の方法でW−2〜W−5を得た。W−2〜W−5を用いて各種性能評価を行った。
酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1に変えてE−2を用いた。固形分質量比E−2/FR700Eが80/20(実施例6)、60/40(実施例7)になるに配合し実施例1と同様の方法でW−6、W−7を得た。W−6、W−7を用いて各種性能評価を行った。
実施例1で作製したW−1を用い、各評価における塗膜厚みを0.3μmとした以外は実施例1と同様の操作を行った。
それぞれ単独の酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1(比較例1)、E−2(比較例2)を用いて各種性能評価を行った。
変性ナイロン(B)の水性分散体FR700Eを単独で用い、各種性能評価を行った。
Claims (9)
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、変性ナイロン樹脂(B)、および水性媒体を含有することを特徴とする水性分散体。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が不飽和カルボン酸成分で変性されており、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1記載の水性分散体。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル成分を含有しており、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)における(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が1〜45質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の水性分散体。
- 変性ナイロン樹脂(B)がアルコキシアルキル化されたナイロン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性分散体。
- 変性ナイロン樹脂(B)が不飽和カルボン酸成分を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散体。
- 酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と変性ナイロン樹脂(B)との質量比(A)/(B)が95/5〜10/90であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性分散体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の水性分散体から水性媒体を除去した塗膜。
- 基材の少なくとも片面に請求項7記載の塗膜を設けた積層体。
- 基材が金属材料またはポリアミド樹脂である請求項8記載の積層体。
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