JP2009278837A - 誘導電力伝送システム - Google Patents

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Abstract

【課題】電源装置から大きな間隔を隔てた遠隔装置に電力を高い伝送効率で伝送し、その際に被給電装置の電子部品に加わる電圧を低く抑えることで大きな電力を伝送できる誘導電力伝送システムを得る。
【解決手段】送信アンテナ及び前記受信アンテナがコイル状の配線の両端を結ぶ容量を有し、前記容量と前記コイル状の配線のインダクタンスで共振回路を構成し、前記送信アンテナと前記受信アンテナのコイルを、両アンテナのコイルの直径の2倍以下の距離を隔てて配置し、前記コイル状の配線の中間に直列に電源回路及び負荷回路を接続し、前記送信アンテナに誘導される抵抗に前記電源回路の出力インピーダンスを整合させ、前記受信アンテナに誘導される抵抗に前記負荷回路の入力インピーダンスを整合させて前記電源回路から前記負荷回路まで電力を伝送することを特徴とする誘導電力伝送システムを製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電力を無線誘導手段を介して空間を越えて給電する誘導電力伝送システムに関する。
従来、特許文献1で、電動車などへの応用を見込んで、空間を隔てて対向する電源装置の一次巻線から被給電装置の二次巻線に電力を供給する誘導電力伝送システムが提案されていた。この誘導電力伝送システムでは、電気端子を接触させないので、電気端子の接点の接触不良が発生しない利点がある。ここで、誘導電力伝送システムの電源装置の一次巻線に電流を流して電磁界を発生させ、その電磁界が遠隔装置の二次巻線に電磁誘導させて電力を伝達するが、特に、二次巻線の両端にコンデンサを接続して二次巻線のインダクタンスとコンデンサの容量とによる共振回路を形成し、その共振回路の共振を利用して二次巻線が電力を受け取る電力を大きくしていた。そして、その共振回路に並列に被給電装置を接続し、被給電装置に電力を供給する効率を向上させていた。また、この種の誘導電力伝送システムの応用製品として、歯ブラシや携帯電話などに非接触で電力を伝送するシステムが実用化されている。特許文献1では、一次巻線と被給電装置の二次巻線との距離は変えずに一定に保って電力を伝送し、歯ブラシや携帯電話では被給電装置をホルダーに設置して所定の一定位置に保持して電力を伝送していた。しかし、一次巻線と二次巻線の間隔が大きくなると電力の伝送効率が悪くなり、伝送する電力の大きさが小さくなってしまう問題があった。
特許文献2では、ICカードの被給電装置の二次巻線の位置を、リーダーライターの電源装置の一次巻線から空間を隔てた遠隔位置に置き、その一次巻線と二次巻線の間隔を一定位置に保持せずに、リーダーライターの電源装置からICカードの被給電装置(遠隔装置)に電力を供給する技術が開示されていた。その被給電装置の二次巻線の両端にコンデンサを接続し、二次巻線のインダクタンスとコンデンサとで共振回路を構成して受信する電力を大きくしていた。そして、一次巻線と二次巻線の間の距離が変わると電源装置から遠隔装置に供給される電力が変動する問題を解決することを課題とした。この課題を解決するために、電源装置を、電源回路と整合回路と一次巻線で構成して電力を送信した。また、ICカードの遠隔装置には、電力を受信する二次巻線と容量による共振回路を構成し、その共振回路に並列に可変インピーダンス回路を接続し、その先に整流回路から成る誘起電圧発生部を接続し、その先にICチップの負荷回路を接続した。そして、負荷回路に加わる電圧を検出してその電圧を安定させるべく可変インピーダンス回路を調整した。この構成により、負荷回路へ供給する電力を安定させた。しかし、電源回路から供給される電力のうち、負荷回路に供給される電力以外の電力は無駄に消費され、電源回路から負荷回路までの電力の伝送効率が良くない問題があった。
特許文献3では、特許文献2と同様にICカードにおいて、一次巻線と二次巻線の間隔が変化することにともなって変動するアンテナのインピーダンスを以下のように補正して電力の伝送効率を最大化させていた。すなわち、検出手段で電力伝送効率を検出して、電源装置と一次巻線のインピーダンスを、2つのコンデンサの容量を変化させるか、コンデンサとインダクタンスのパラメータを変化させるインピーダンス可変手段により整合するか、あるいは、二次巻線と被給電装置のインピーダンスを、同様な2つの回路素子のパラメータを変化させるインピーダンス可変手段により、電源回路から負荷回路に至る電力伝送経路のインピーダンスを整合させて、電力の伝送効率を良くした。
特許文献4では、特許文献2及び3と同様に、電源装置から物理的に大きな空間を隔てて配置された遠隔装置へ電力を伝送し、遠隔装置から、そのエネルギー受信状況を、電源装置側に通知し、その情報により電源装置が電力の供給を調整していた。すなわち、電源装置のコンデンサとインダクタンスとの2つの回路素子のパラメータを、パラメータ可変手段により変えることで、電源装置から遠隔装置に高い電力伝送効率で電力を供給していた。
以下に公知文献を記す。
特表平6−506099号公報 特開平10−145987号公報 特開2001−238372号公報 特表2006−517778号公報
特許文献2から4では、一次巻線と二次巻線の間隔が変化する場合に対応して電力を伝送し、遠隔装置の二次巻線(あるいはスパイラルアンテナ)の両端にコンデンサを接続して二次巻線(スパイラルアンテナ)のインダクタンスとコンデンサから成る共振回路を共振させることで、一次巻線から二次巻線への電力の伝送効率を高くしていた。それらは、二次巻線の両端にコンデンサを接続した共振回路に並列に負荷回路を接続して電力を受信していた。そのうち、特許文献3では、一定の電力を効率良く伝送するように2つの回路素子のパラメータを変えて共振回路のインピーダンスを調整するが、その場合には、一次巻線と二次巻線の間の距離が大きくなると、二次巻線とコンデンサの並列共振回路のインピーダンスが高くなる。その場合に大きな電力を伝送しようとすると、並列共振回路のコンデンサに加わる電圧が高くなり、回路を構成する電子部品の許容電圧を超えて高くなってしまう。そのため、特許文献3では伝送できる電力の大きさに限界があり、ICカード向けなどの小電力の伝送の用途にのみ適用が限定されていた。特許文献4も同様な回路構成であり、同様に伝送できる電力の大きさに限界がある問題があった。
そのため、本発明の第1の目的は、電源装置から大きな間隔を隔てた遠隔装置に電力を高い伝送効率で伝送し、その際に被給電装置の電子部品に加わる電圧を低く抑えることで大きな電力を伝送できる誘導電力伝送システムを得ることにある。
また、特許文献3と特許文献4では、一次巻線と二次巻線の間隔の変動に対応して電力の伝送効率を高い効率に維持しようとすると、同時に2つの回路素子のパラメータを適切な値に調整することでインピーダンスを整合しなければならず、インピーダンスの整合手段が複雑であるので適用が難しい問題があった。そのため、本発明の第2の目的は、1つの回路素子のパラメータの調整のみで電源回路から負荷回路まで空間を隔てて大きな電力を伝送できる誘導電力伝送システムを得ることにある。
本発明は、この課題を解決するために、電源回路に接続した送信アンテナから、受信アンテナに接続した負荷回路まで空間を経由して電力を伝送するシステムにおいて、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナがコイル状の配線の両端を結ぶ容量を有し、前記容量と前記コイル状の配線のインダクタンスで共振回路を構成し、前記送信アンテナと前記受信アンテナのコイルを、両アンテナのコイルの直径の2倍以下の距離を隔てて配置し、前記コイル状の配線の中間に直列に前記電源回路及び前記負荷回路を接続し、前記送信アンテナに誘導される抵抗に前記電源回路の出力インピーダンスを整合させ、前記受信アンテナに誘導される抵抗に前記負荷回路の入力インピーダンスを整合させて前記電源回路から前記負荷回路まで電力を伝送することを特徴とする誘導電力伝送システムである。
また、本発明の誘導電力伝送システムは、上記電源回路あるいは上記負荷回路に、1つの回路パラメータを可変にすることで整合インピーダンスを可変にしたインピーダンス整合手段を設置したことを特徴とする誘導電力伝送システムである。
本発明は、両端を容量でつないだコイル状の送信アンテナに直列に接続した電源回路と、同様の受信アンテナに直列に接続した負荷回路のインピーダンスを電磁界がアンテナに誘導して発生する比較的低い値の誘導抵抗に整合させることで、効率良く空間を隔てたアンテナ間に電力を伝送できる効果がある。また、本発明は、任意の実数αに関して、そのインピーダンスをα倍からα分の1に変換して電力を伝送するインピーダンス変換回路が得られる効果がある。
<本発明の原理>
図1(a)に、本発明の誘導電力伝送システムの送信アンテナ1と受信アンテナ2の平面図(XY面)を示し、図1(b)に側面図を示す。本発明の誘導電力伝送システムは、送信アンテナ1と受信アンテナ2を、両アンテナが共振する電磁界の波長λに比べて十分短い距離の空間を隔てて、両アンテナを共振させて非接触で電力を伝送するシステムである。本発明の特徴的な構成は、両アンテナはコイル(スパイラル)状の配線で形成し、そのコイルの両端は開放するかコンデンサで接続し、送信アンテナ1は、そのコイル状の配線の中間に直列に電源回路3を接続し、受信アンテナ2は、そのコイル状の配線の中間に直列に負荷回路4を接続する。電源回路3の接続する点をポート1とし、負荷回路の接続する点をポート2とする。送信アンテナ1のコイルの両端を接続する容量をC1とし、受信アンテナ2のコイルの両端を接続する容量をC2とする。送信アンテナ1のコイルの自己インダクタンスをL1とし、受信アンテナ2のコイルの自己インダクタンスをL2とすると、送信アンテナ1はL1とC1の共振回路になり、受信アンテナ2はL2とC2の共振回路になる。
本発明の誘導電力伝送システムは、図2の回路図にモデル化でき、その回路は、送信アンテナ1と受信アンテナ2を角周波数ω=2πfで共振させ、両アンテナ間を、その相互インダクタンスMを介して非接触で電力を伝送する。アンテナのポートの設置位置は、アンテナの配線の中央に限定されず、アンテナの両端間を開放せずにコンデンサを設置する場合は、ポートの位置をそのコンデンサの近くのアンテナの先端部近くまで移動させることもできる。本発明は、この構成により、相互インダクタンスMがアンテナの自己シンダクタンスL1およびL2に比べて小さい場合も、効率良くエネルギーを伝送することを特徴とする。特に、本発明は、電源回路3と負荷回路が整合するインピーダンスが低いことを特徴とする。そのため、本発明は、電力を伝送するために回路素子に加わる電圧を低くでき、回路素子の寿命を長くできる効果がある。
図2の回路図のモデルで、送信アンテナ1に流れるアンテナ電流I1と、受信アンテナ2に流れるアンテナ電流I2が角周波数ωで時間変化し、電磁界を時間変化させ、アンテナに誘導電圧を発生させる。図2の電源回路3側から見た送信アンテナ1側の回路の入力インピーダンスには、受信アンテナ2のアンテナ電流I2が送信アンテナ1側に発生する誘導電圧E1に起因する見かけのインピーダンス(E1/I1)が加わっている。そのインピーダンス(E1/I1)の実数成分を誘導抵抗r1とすると、以下の式1から式3であらわせる。
r1=α・ωM・sin(β) (式1)
I2/I1≡α・exp(−jβ) (式2)
m≡M/√(L1×L2) (式3)
式1で用いるβは、式2による、送信アンテナ1のアンテナ電流I1と受信アンテナ2のアンテナ電流I2の高周波の位相角のずれ角βをあらわし、αは電流の比をあらわす。また、式3により、送信アンテナ1と受信アンテナ2の電磁誘導の結合係数mを、相互誘導係数Mから定義する。
送信アンテナ1が直径Dの円形コイルで受信アンテナ2が直径Gの円形コイルの場合は、両コイル間の電磁誘導の結合係数mを理論的に厳密に計算した以下の式4を得た。
m=A×((−k+2/k)×K(k)−(2/k)×E(k)) (式4)
A=μ√(D×G/(L1×L2))/2
k=√(D×G/(((D+G)/2)+h)) (式5)
ここで、μは透磁率である。kは式5で定義し、K(k)は第1種完全楕円積分関数、E(k)は第2種完全楕円積分関数である。
電源回路3から送信アンテナ1(を含む)より先の回路に効率良く電力を伝送するため、電源回路3の出力インピーダンスZ1を送信アンテナ1の入力インピーダンスと等しくしてインピーダンスを整合する。電源回路3の出力インピーダンスZ1を誘導抵抗r1に等しくし、更に送信アンテナ1の入力インピーダンスの虚数成分を0にしてインピーダンスを整合させることで効率良く電力を伝送できる。同様に、受信アンテナ2の回路の出力インピーダンスの虚数成分を0にして負荷回路4の入力インピーダンスZ2に整合させることで、電源回路3から負荷回路4まで効率良く電力を伝送させる。このように全回路のインピーダンスを整合させて、アンテナ1の電磁界とアンテナ2の電磁界を共鳴させる。この受信アンテナ2の回路の出力インピーダンスの実数成分である誘導抵抗r2は、式1と同様に以下の式6であらわされる。
r2=(1/α)・ωM・sin(β) (式6)
ωMが小さい値の場合に、電源回路3の出力インピーダンスZ1を送信アンテナ1(を含む)より先の回路の入力インピーダンスに整合させ、かつ、受信アンテナ2の出力インピーダンスを負荷回路4の入力インピーダンスZ2に整合させる条件は以下の式7から式9であらわせる。
L1・C1=L2・C2≡1/ωo (式7)
(条件1:アンテナ電流間の位相差βが90度では無い場合)
ω=ωo/√(1+m・cos(β)) (式8)
(条件2:アンテナ電流間の位相差βが90度の場合)
ω=ωo (式9)
(アンテナ電流間の位相差βが90度では無い場合)
アンテナ電流間の位相差βが90度では無い場合には、式7を満足するアンテナ系は、アンテナ電流2がアンテナ電流1の√(L1/L2)倍になり、送信アンテナ1に蓄積される電磁界のエネルギーと受信アンテナ2に蓄積される電磁界のエネルギーが等しくなる。そして、両アンテナが互いに電磁界エネルギーを交換して共鳴する。このとき、式1と式6は、式3であらわす結合係数mにかかわる以下の式10と式11になる。
r1=mωL1・sin(β) (式10)
r2=mωL2・sin(β) (式11)
式10と式11で示すように、インピーダンスを整合させるべき誘導抵抗r1とr2には、上限mωL1とmωL2がある。また、送信アンテナ1と受信アンテナ2が共鳴する角周波数ωは、式8のように角周波数ωoからずれている。
空芯コイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2を対向させ遠ざけると、相互誘導係数Mが小さくなるので、式3で定義する結合係数mが小さくなる。そのとき、送信アンテナ1と受信アンテナ2それぞれの誘導抵抗r1とr2は式10と式11に従がって小さくなる。そのため、アンテナ間の距離が遠くなっても一定の電力Pwを、インピーダンスを整合させつつ伝送させる場合は、誘導抵抗rが小さくなり、ポート部分での電圧が低くなり、電力伝送回路の回路素子に加わる電圧が低くなり、電力伝送回路に損傷を与えない効果がある。
また、この現象を応用して、送信アンテナ1と受信アンテナ2の位置が安定せず電磁誘導の結合係数mが変動する場合にも誘導抵抗r1とr2を一定に保つ誘導電力伝送システムを構成することができる。それは、送信アンテナ1と受信アンテナ2間の距離の変化によるmの変化に応じて、共振角周波数ωを変え、βを変えることで、式10と式11による誘導抵抗r1とr2を常時一定値に保ち、その一定の誘導抵抗r1とr2に整合する電源回路3と負荷回路のインピーダンスZ1とZ2を設定することで得られる。そのために、電源回路3は、送信アンテナ1の電流I1を正帰還回路により電源回路3に正帰還させて、その電流I1を増幅して送信アンテナ1に出力する電源回路3の構成する。この回路により、結合係数mが変動しても、誘導電力伝送システムのインピーダンスを整合させるように角周波数ω=2πfを適応させて、常時効率良く電力を伝送できる効果がある。
ここで、送信アンテナ1から受信アンテナ2への電力伝送効率Peは、以下の式12で、アンテナ系の電力を伝送する誘導抵抗r1とr2と、送信アンテナ1の配線の実効的抵抗r3と受信アンテナ2の配線の実効的抵抗r4から計算できる。
Pe=(1−r4/r2)/(1+r3/r1) (式12)
アンテナのコイルの配線の厚さが表皮効果の表皮の厚さより厚い場合、配線の抵抗r3またはr4をrcとあらわすと、長さlenで幅Wのアンテナ配線の実効的抵抗rcは、アンテナ配線に流れる電流は、アンテナ配線の表裏面に流れ、また、アンテナ電流はアンテナ先端部分に近づくにつれ少なくなると考えると、以下の式13で計算できると考える。
rc=√(πfμ/σ)×len/(4W) (式13)
ここで、μは透磁率であり、1.26×10−6Ω秒/mである。σは配線の導電率であり、銅の場合は、5.81×10/(Ωm)である。ただし、アンテナの両端間を容量の大きなコンデンサで結合する場合は、アンテナ電流は、アンテナの両端を接続するコンデンサの大きな容量に流れ込むので、アンテナの先端部分に至るまで電流が減少しないので、アンテナの実行的抵抗rcは式13の2倍になると考える。
式12によると、送信アンテナ1の実効的抵抗r3が誘導抵抗r1より小さく、受信アンテナ2の実効的抵抗r4が誘導抵抗r2より小さいほど電力の伝送効率Peが良くなる。アンテナ配線の実効的抵抗r3とr4が誘導抵抗r1とr2に比べて無視できるほど小さい場合はアンテナ間でほぼ100%近い効率で電力が伝送できると考える。また、送信アンテナ1と受信アンテナ2の形状を、ダイポールアンテナをコイル状に巻くことで、アンテナの自己インダクタンスL1およびL2をダイポールアンテナの場合より大きくする。それにより、式10と式11に従って誘導抵抗r1およびr2が大きくなるので、式12に従ってアンテナ系の電力伝送効率Peを大きくできる効果がある。
(アンテナ電流間の位相差βが90度の場合)
アンテナ電流I1とアンテナ電流I2の位相が90度ずれている、すなわち、その位相差βが90度であり、sin(β)が1の場合には、式9のように、角周波数ω=ωoで共振し、以下の式14から式16の状態でアンテナ系が共鳴する。
r1=mω√(L1・L2)・α (式14)
r2=mω√(L1・L2)/α (式15)
I2/I1=−jα (式16)
この共鳴の場合は、式9で示すようにアンテナの共鳴の角周波数ω=2πfがωoに一致して共鳴するが、任意のアンテナ電流の比αで電力を伝送できる特徴がある。アンテナ電流の比αが任意であるという意味は、送信アンテナ1の電流I1を大きくして大きな電磁界を発生させれば、受信アンテナ2に流れる電流I2が小さくても良い効率で電力を伝送できることを意味する。逆に、受信アンテナ2に流れる電流I2が大きければ、送信アンテナ1の電流I1が小さくても良い効率で電力を伝送できることを意味する。
この現象を利用することで、誘導電力伝送システムにおいて、空芯コイルによる送信アンテナ1の誘導抵抗r1と受信アンテナ2の誘導抵抗r2の値をアンテナ電流の比αで変えて、その誘導抵抗に整合させてインピーダンスを変えた電源回路3から負荷回路4に良い効率で電力を伝送できるインピーダンス変換回路が構築できる。すなわち、図2の回路図中で、電源回路3と送信アンテナ1の間に挿入するインピーダンス変換回路で、電源回路3のインピーダンスを負荷回路4のインピーダンスに変換するインピーダンス変換回路が構築できる。このインピーダンス変換回路用の送信アンテナ1と受信アンテナ2の位置を変えて結合係数mを変えて、それを補うようにαを変えてmαを一定にするように共鳴させれば、回路の1つのパラメータである結合係数mのみを変えるだけで、インピーダンスの値を、一定値であるω√(L1・L2)mαから、ω√(L1・L2)m/αに、1/αに変換できるインピーダンス変換回路が構築できる。このインピーダンス変換回路は、送信アンテナ1と受信アンテナ2の回路の1つのパラメータmを変えるだけでインピーダンス変換の割合の1/αを変えることができるので、回路パラメータの調整が簡単であり容易にインピーダンスを調整できる効果がある。
<本発明の実施形態>
本発明の誘導電力伝送システムの実施形態は、図1の1巻きのコイル、図11の3巻きのコイル、図16の7巻きのコイルなどのコイル状の送信アンテナ1と受信アンテナ2を非接触で配置し、アンテナ間の空間中を電力伝送する誘導電力伝送システムである。アンテナのコイル状配線の中間にポートを設置し、図2に示す電源回路3あるいは受信回路4を接続するものである。送信アンテナ1と受信アンテナ2は、ポートを中間に設置したダイポールアンテナをコイル状(スパイラル状)に巻いて、そのアンテナの配線の両端(アンテナ端)を開放するか、あるいは両端を接続するコンデンサを設置した構造にする。アンテナの両端が開放されている場合も、アンテナの両端間に浮遊容量がある。そして、送信アンテナ1と受信アンテナ2のアンテナ電流の角周波数ωをωoに近い値にして共振させることで、効率良く電力を伝送する。第1の実施形態から第5の実施形態では、アンテナ電流間の位相差βは90度(=π/2)と異なる値で電力を伝送する。第1の実施形態で示す変形例3以外では、位相差βを90度に近くする。その場合は、ωoに近い値のωで誘導電力伝送システムのインピーダンスが整合し、式10と式11のあらわす誘導抵抗rの値は、近似的に以下の式17と式18であらわされる値になる。
r1≒mωL1 (式17)
r2≒mωL2 (式18)
このように、電源回路3の出力インピーダンスZ1を式17の誘導抵抗r1に整合させ、負荷回路4の負荷インピーダンスZ2を式18の誘導抵抗r2に整合させて電源回路3から負荷回路4まで電力Pwを伝送することで、電力を最大の効率で伝送する電力伝送システムが得られる。
各実施形態の誘導電力伝送システムは、送信アンテナ1と受信アンテナ2の誘導抵抗r1とr2は、電磁界シミュレーションにより電力を最大の効率で伝送する電源回路3の出力インピーダンスZ1と負荷回路4の入力インピーダンスZ2の値を求めることで、それらに整合するアンテナの誘導抵抗rを求めることができる。以下の各実施形態では、送信アンテナ1と受信アンテナ2の間の空間を大きくあけて、両アンテナの電磁誘導の結合係数mを0.004ぐらいに小さくした場合でも、送信アンテナ1と受信アンテナ2を共鳴させてアンテナ間に良い効率で電力を伝送できる。そして、シミュレーションから得られた誘導抵抗r1とr2は、式17と式18であらわされるため、非接触で電力を最大の効率で伝送する回路のインピーダンスの整合条件を設計できる。なお、共鳴させる送信アンテナ1と受信アンテナ2の間の空間は、真空や空気以外の、例えば誘電体媒質を充填した回路の誘導電力伝送システムも使え、また、アンテナ間に常磁性体を充填することも可能である。
<第1の実施形態>
以下、図1から図10により、本発明の第1の実施形態を説明する。図1では、送信アンテナ1は、幅が1mmで厚さが50μmの銅の配線でコイル径Dが46mmの1巻のコイルを形成した。この送信アンテナ1の自己インダクタンスL1は160nHであり、受信アンテナ2の自己インダクタンスL2は180nHである。この送信アンテナ1の配線の中間に電源回路3の端子(ポート1)を直列に接続して給電した。また、送信アンテナ1の両端をつなぐ外付けコンデンサで100pFの容量C1を設置した。100pFの容量C1の外付けコンデンサは、一辺の長さが34mmの正方形の電極を2つ平行に配置し0.1mmの空気の間隔をあけて形成した容量で実現できる。受信アンテナ2は、送信アンテナ1と同じく、幅が1mmで厚さが50μmの銅の配線により、コイル径Gが50mmの1巻のコイルを形成した。その受信アンテナ2の配線の中間に負荷回路4の端子(ポート2)を直列に接続した。また、受信アンテナ2の両端をつなぐ外付けコンデンサで90pFの容量C2を設置した。図1(b)の側面図のように、送信アンテナ1と受信アンテナ2は、アンテナのコイルの軸方向にアンテナ間隔hの距離を隔てて配置する。そして、電源回路3から負荷回路4へ電力を最大の効率で伝送する電源回路3の出力インピーダンスZ1を送信アンテナ1の誘導抵抗r1とし、負荷回路4の負荷インピーダンスZ2を受信アンテナ2の誘導抵抗r2とする。そして、電源回路3は、アンテナ回路が共鳴する角周波数ωの電流I1を送信アンテナ1の出力するように、出力電流I1を正帰還して増幅する電源回路に構成し、アンテナの共鳴角周波数ωで発振させる。
図3に、アンテナ間隔hを種々に変えてシミュレーションした結果の、電源回路3から負荷回路4までの電力の伝送のSパラメータ(S21)をdB(デシベル)であらわして縦軸に示す。その横軸は、電源回路が送信アンテナ1に流すアンテナ電流I1の周波数fをあらわすグラフを示す。図3(a)は、図1のアンテナ間隔hが1mmの場合を示し、図3(b)はh=10mmの場合を示し、図3(c)は、h=20mmの場合を示す。図3(a)で、アンテナ間隔hが1mmの場合は、送信アンテナ1の誘導抵抗r1が20Ωであり、受信アンテナ2の誘導抵抗r2が23Ωである。この誘導抵抗r1とr2に電源回路3と負荷回路4のインピーダンスZ1とZ2を一致させた場合にアンテナが共鳴して電力の伝送効率が最も良くなり、アンテナ電流I1の周波数fが40MHzの場合の電力の伝送効率は極めて良く電力を伝送できた。図3(b)で、アンテナ間隔hが10mmの場合は、r1=8Ωでr2=9Ωであり、図3(c)で、アンテナ間隔hが20mmの場合は、r1=4Ωでr2=4Ωである。図3(c)の、アンテナ間隔hが20mmの場合でも、S21は−0.3dBであり92%の電力を伝送できた。
以上の場合は、アンテナ間隔hが1mm、10mm、20mmの場合とも、ほとんど100%近い効率で電力を伝送できた。電力伝送効率がほぼ100%となる周波数fには周波数帯域(共鳴周波数帯域)の帯域幅があり、それは、図3(a)の、アンテナ間隔hが1mmの場合は、35MHzから55MHzまでの周波数帯域であり、約20MHzの周波数帯域幅がある。この現象は、後で詳しく解析するが、送信アンテナ1と受信アンテナ2の結合係数mが大きくなるほど帯域幅が大きくなる。電力伝送効率がほぼ100%で飽和する周波数帯域は、アンテナ間隔hが大きくなるにつれて(結合係数mが小さくなるので)狭まり、図3(b)の、アンテナ間隔hが10mmの場合は、共鳴周波数帯域は36MHzから46MHzまでの約8MHzの周波数帯域幅になる。図3(c)の、アンテナ間隔hが20mmの場合は、共鳴周波数帯域は38MHzから41MHzまでの約3MHzの周波数帯域幅になる。
図4のグラフは、縦軸に、シミュレーションで得た誘導抵抗r1を(2πfL1)で割り算して無次元量にした値r1/(2πfL1)を黒丸印で示し、r2/(2πfL2)を白丸印で示す。実線は、両アンテナの結合係数mを計算する式4を1割程度の誤差で近似した近似式19による計算結果を示す。図4の縦軸の値0.1がr1又はr2の約4.3Ωに対応する。図4のグラフの横軸は、アンテナ間隔hを、コイル径Dとコイル径Gの積の平方根で割り算して無次元量にした(h/√(D×G))をあらわす。
m≒1.8EXP(−4.3√(0.04+√(1/k−1))) (式19)
近似式19のkは式5で計算される値である。図4で、実線で示す近似式19の結合係数mは、シミュレーション結果のr1/(2πfL1)およびr2/(2πfL2)と良く一致した。このように、シミュレーションから得た図4の黒丸印と白丸印であらわす縦軸のr/(2πfL)は、結合係数mの近似式19の計算結果の実線に近い値になった。これは、式17と式18が成り立つことを意味する。
図4から、h=1mmで(h/√(D×G))が0.02の場合は、mが0.5であり、h=10mmで(h/√(D×G))が0.2の場合はmが0.2であり、h=20mmで(h/√(D×G))が0.4の場合はmが0.1である。本実施形態では、周波数f=40MHzの電磁界の波長は約7.5mの波長であり、その周波数fで共振する送信アンテナ1と受信アンテナの間隔が20mmの場合は、その間隔は波長の375分の1であり、波長に比べて十分短い。また、図3(a)のグラフでは、h=1mmでm=0.5の場合の電力の伝送効率Peの周波数特性をSパラメータS21で示す。図3(b)のグラフでは、h=10mmでm=0.2の場合を示し、図3(c)のグラフでは、h=20mmでm=0.1の場合を示す。図3のこれらのグラフでは、電力の伝送効率Peが飽和する周波数fの帯域の上限は、ほぼf/fo=1/√(1−m)であり、下限は、ほぼf/fo=1/√(1+m)になっている。このため、結合係数mを大きくすると、電力の伝送効率Peが飽和する周波数fの帯域幅の割合f/foが結合係数m程度の幅を確保できる効果がある。それゆえ、結合係数mを大きくすると、送信アンテナ1から受信アンテナ2への電力伝送効率Peを飽和させる周波数帯域幅を大きくでき、両アンテナの共振周波数同士を緩い精度で一致させれば十分であり、両アンテナ回路の製造と調整が容易になる効果がある。
本実施形態で、電力の伝送効率Peが飽和する周波数fの帯域幅の割合f/foが結合係数m程度の幅を確保できるので、誘導電力伝送システムの送信アンテナ1と受信アンテナ2の結合係数mを0.004以上に設定して電力を伝送すると、周波数fの帯域幅が共振周波数の0.4%以上の幅を確保することができる。そのため、結合係数mを0.004以上にすることが望ましい。そうすれば、誘導電力伝送システムに用いる部品の特性のバラツキを0.4%以内にして送信アンテナ1と受信アンテナ2の共振周波数のバラツキを0.4%以内にすることが比較的容易にできるので、この両アンテナの共振周波数のずれを電力を伝送するのに支障が無い程度の範囲内に収めることができる効果が得られる。
また、電力Pwを伝送する場合に、容量C1に加わる電圧V1と容量C2に加わる電圧V2は、次の式20と式21であらわされる。
V1≒√(Pw/m)×(L1/C1)(1/4) (式20)
V2≒√(Pw/m)×(L2/C2)(1/4) (式21)
ここで、電力Pw=100Wを伝送する場合でアンテナ系の結合係数mが0.1の場合は、L1=160nH、C1=100pFを式20に代入すると、V1=200Vである。L2=180nH、C2=90pFを式21に代入するとV2=211vである。そのため、容量C1とC2は平均で200V及び211Vの電圧(電圧のピークはその√2倍)に耐えなければならない。しかし、このように高い電圧が発生する箇所はアンテナの両端間だけで良く、そこに用いる容量C1とC2のみを高い耐電圧の部品で構成すれば良い。
本実施形態では、電源回路の端子(ポート1)では、アンテナ系の結合係数mが0.1の場合は、電源回路3と負荷回路4のインピーダンスを整合するアンテナの誘導抵抗r1とr2が約4Ωであるので、100Wの電力Pwを伝送する場合は、電源回路3と負荷回路4に20ボルトの電圧をかけ5アンペアの電流を流すことになり、電源回路3と負荷回路4の回路部分に発生する電圧は低いので、その部分で用いる回路部品は耐電圧をさほど高くする必要が無い効果がある。このように、本実施形態の誘導電力伝送システムは、電力を伝送するために誘導抵抗rに整合する電源回路3の出力インピーダンスZ1及び負荷回路4の入力インピーダンスZ2を小さくできる効果がある。そのため、所定の電力を伝送するために、電源回路3の出力端子のポート1及び負荷回路4の入力端子のポート2の電圧を低くできるので電力伝送回路の安全性が高い効果がある。
本実施形態では、非接触でアンテナ間隔hがアンテナ径の40%の20mm(h/√(D×G)が0.4)でありアンテナの結合係数mが0.1の場合でも、92%の高い電力伝送効率Peが得られる効果がある。このため、応用例として、生体の組織を隔てて、生体内に縦横50mmで厚さが50μmの薄くて生体内で占有する体積が小さく埋め込み易い受信アンテナ2と負荷回路4から成る装置を埋め込み、生体外の送信アンテナ1から20mm以下の厚さの生体組織を隔てて生体内に埋め込んだ受信アンテナ2に40MHの電磁界を共鳴させることにより効率良く電力を伝送する装置を製造できる。なお、このアンテナの寸法は50mmに限定されず、アンテナの共振周波数も40MHzに限定されず、更に、アンテナの形状も1巻きのアンテナに限定されず多数巻きのコイル状あるいはスパイラル状のアンテナを用いることができる。
(変形例1)
変形例1として、図1の第1の実施形態の送信アンテナ1と受信アンテナ2の両端を結ぶ容量がほぼ4倍で、C1が400pFでC2が360pFの外付けコンデンサで接続する。これらの容量C1とC2のコンデンサにはアルミ電解コンデンサ等を用いることもできる。この場合は、共振周波数fが先の実施形態の半分の20MHzになる。そして、電力伝送効率の周波数特性は、図3の周波数軸の周波数を半分にしたグラフになる。また、変形例1での、縦軸にr/(2πfL)=mをあらわし、横軸を(h/√(D×G))にしたグラフは、周波数fが2分の1になるとともに誘導抵抗が2分の1になり、結局、図4と同じグラフであらわせる。なお、変形例1では、アンテナの両端間の容量C1とC2をほぼ4倍の容量にしたので、式20と式21に従って、電力Pwが100Wの電力を伝送する場合の、容量C1とC2の耐電圧は、先の実施例の約0.7倍の140V程度に低下する。
(変形例2)
変形例2の誘導電力伝送システムは、図5のように送信アンテナ1と受信アンテナ2の縦横の径Dが同じ寸法の50mmのアンテナを用いる。このアンテナの自己インダクタンスはL1=L2=L=176nHである。そのアンテナの両端間を結ぶ外付けコンデンサの容量C1とC2を100pFにすると、アンテナ電流が37MHzの周波数fで共振する。送信アンテナ1に対して受信アンテナ2を図5(a)の面の方向に縦(Y方向)と横(X方向)へのずれ距離dを0にすると、シミュレーションの結果、図6に示す誘導抵抗rが発生した。図6は、縦軸に誘導抵抗rを無次元量のr/(2πfL)であらわし、横軸にアンテナ間隔hをイル径で割り算した値の無次元量の(h/D)であらわすグラフを示す。このグラフの縦軸の値0.1は誘導抵抗rの4.1Ωに対応する。図6のグラフの横軸は、アンテナの軸方向のアンテナ間隔hを2mmから50mm(h/D=0.1)まで種々に変えた場合をあらわす。図6のグラフの黒丸印はシミュレーションから得たrをあらわし、実線は、近似式19による結合係数mの計算結果を示すが、両者は良く一致した。図6で、(h/D)が1の場合に結合係数mが約0.02になった。また、(h/D)が2になる場合は、シミュレーションの結果の誘導抵抗rは0.24Ωになり、結合係数mに相当するr/(2πfL)は0.006になった。そして電力伝送効率Peは、22%あった。このようにmが0.006程度あれば、電力伝送効率Peの飽和する周波数fの帯域幅が共振周波数foの0.6%程度あるので、0.6%程度の特性のバラツキのある部品を使っても、送信アンテナ1と受信アンテナ2の共振周波数のバラツキを許容範囲内に留めることができる。そのため、直径Dのコイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2の間隔hをアンテナのコイルの直径Dの2倍以下にすることで、実用的な誘導電力伝送システムが構成できる。
図7のグラフは、共振周波数fが37MHzの場合の、電力伝送効率Peをあらわす。横軸は図6と同じく(h/D)である。図7の電力伝送効率Peは(h/D)が大きくなるとともに低下する。その理由は、(h/D)が大きくなるとともに結合係数mが小さくなり、式10と式11であらわされる誘導抵抗r1とr2が小さくなり、式12の電力伝送効率Peが小さくなるからである。図7から、幅1mmの銅の配線では、アンテナ間隔hをコイル径Dと同じ距離の50mm離した場合(h/D=1の場合)でも、電力伝送効率が約75%あり、十分効率良く電力を伝送できた。また、電力伝送効率Peの式12に従って、アンテナコイルの巻き数を増してインダクタンスLを大きくすることにより、アンテナの配線の導通抵抗に比して誘導抵抗rを大きくでき、電力伝送効率Peを大きくできる効果がある。一方、式12によると、アンテナの両端を大きな容量C1とC2のコンデンサで接続すると、共振角周波数ωが小さくなり、それにより誘導抵抗rが小さくなるので、電力伝送効率Peが小さくなる。
この送信アンテナ1と受信アンテナ2の両端を4倍の容量である400pFの容量C1及びC2の外付けコンデンサで接続すると、共振周波数fが変形例2の2分の1の約20MHzになる。そして、図6における、縦軸にr/(2πfL)=mをあらわし、横軸を(h/D)にして誘導抵抗rをあらわすグラフは、周波数fが約2分の1の20MHzでのグラフになり、また誘導抵抗も約2分の1になるので、結局、同じ図6のグラフになる。
変形例2の誘導電力伝送システムは、以下の装置に応用できる。家屋内の電源回路3から電力を周波数が約37MHzの高周波電流によりコイル径Dが50mmの送信アンテナ1に供給して、家屋の壁に配線のための孔をあけずに、50mm程度の厚さの壁を隔てて対向する家屋外の受信アンテナ2に約75%の効率で電力を送信し、家屋外の照明装置や表示装置などの負荷回路4に電力を供給する装置が製造できる。アンテナの径Dを大きくすると、アンテナ間隔hを大きくでき、共振周波数fは下がる。また、共振周波数fは、アンテナの巻数を変えたり、アンテナの両端を容量C1及びC2が大きいコンデンサで接続することでも変えられる。
(変形例3)
変形例3の誘導電力伝送システムは、送信アンテナ1と受信アンテナ2の位置が安定せず電磁誘導の結合係数mが変動する場合にも誘導抵抗r1とr2を一定に保つ誘導電力伝送システムを構成する。図8(a)に、h=10mm(h/D=0.2)の場合の、電源回路3と負荷回路4のインピーダンスZを変えた場合の電力伝送効率Peをあらわす。この場合は、アンテナの結合係数mは0.22である。図8(a)の横軸は、無次元量のZ/(2πfL)によってインピーダンスZをあらわし、横軸の値0.1がZの4.1Ωに対応する。図8(a)において、実線は、周波数fを37MHzに固定した場合の電力伝送効率Peをあらわし、破線は、アンテナ電流の周波数fを、最大の電力を伝送する周波数fに適合させて変えた場合の電力の伝送効率Peをあらわす。
図8(b)には、図8(a)のグラフの横軸に示す特定のインピーダンスZに電源回路3と負荷回路のインピーダンスZを固定した電力伝送効率Peの周波数特性をSパラメータ(S21)のデシベル(dB)表示であらわす。図8(a)のように、Z/(2πfL)が結合係数mの値の0.22より大きくなると電力伝送効率Peが低下する。一方、Z/(2πfL)が結合係数mの値の0.22より小さい場合は、以下の2つの場合に分かれる。一つは、伝送する電力の周波数fをfo=37MHzに固定する場合は、電力伝送効率Peは、Z/(2πfL)が結合係数mより小さくなるにつれて低下する。図8(b)の電力伝送効率Peの周波数特性の2つのピークの間の谷間の位置がfo=37MHzである。一方、Z/(2πfL)に応じて、アンテナ電流の周波数fを、図8(b)のグラフの最大の電力伝送効率Peのピークの位置の周波数fに適合させて変える場合は、図8(a)の破線で示すように、電力伝送効率Peは飽和した値に維持することができる。
変形例3の誘導電力伝送システムは、この効果を利用して、送信アンテナ1と受信アンテナ2間の距離の変化によるmの変化に応じて、共振角周波数ωを変えることで、式10と式11による誘導抵抗r1とr2を常時一定値に保ち、その一定の誘導抵抗r1とr2に整合する電源回路3と負荷回路のインピーダンスZ(Z1とZ2)を設定する。そのために、電源回路3は、送信アンテナ1の電流I1を正帰還回路により電源回路3に正帰還させて、その電流I1を増幅して送信アンテナ1に出力する電源回路3の構成する。また、結合係数mの値の変化に適応させて電力の伝送効率を飽和させられる結合係数mの値の範囲は、電源回路3と負荷回路のインピーダンスZを(2πfL)で割り算した値以上の結合係数mの値である。この誘導電力伝送システムの送信アンテナ1と受信アンテナ2の配置が、この値の結合係数m以上であるならば、その結合係数mの値の変化に角周波数ω=2πfを式8に従って適応させて、電力伝送効率Peを常時飽和値に維持して効率良く電力を伝送できる効果がある。
(変形例4)
変形例4の誘導電力伝送システムは、図5に示す送信アンテナ1と受信アンテナ2のコイルの軸を図5(a)の縦(Y)と横(X)方向にずれ距離dでずらす誘導電力伝送システムである。送信アンテナ1と受信アンテナ2の両端を容量C1とC2が100pFの外付けコンデンサで接続し、アンテナ間隔hは2mmに固定する。この場合のアンテナ回路の共振周波数fは、変形例1と同じ37MHzになる。図9に、この共振周波数f=37MHzにおけるシミュレーション結果の誘導抵抗rを黒丸印で、縦軸に無次元量のr/(2πfL)であらわし、横軸にコイルのずれ距離dを無次元量(d/D)であらわすグラフを示す。縦軸の値0.1がrの4.1Ωに対応する。図9のように、コイルの位置を水平方向にずらすと、アンテナに現われるインピーダンスrが低下する。この原因は、コイルの位置をずらすと、コイル同士の電磁誘導の結合係数mが小さくなる為である。
図10に、電源回路3から負荷回路4までの電力伝送効率Peを縦軸にあらわし、横軸をコイルのずれ距離dを無次元量(d/D)であらわすグラフを示す。図10から、(d/D)が0.4以下、すなわち、コイルのずれ距離dがコイル径の4割である20mm以下ならば90%以上の電力伝送効率があり、十分効率良く電力を伝送できる。コイルのずれ距離dが(d/D)=0.66になる位置では電力伝送効率が略0になる。この位置では、一方のアンテナのコイルが発生して他方のアンテナのコイルを横切る磁界の方向がアンテナのコイル内の場所により反転して磁界の正負が逆になるため、磁界の総和が0になり、誘導電圧及び結合係数mが0になる為と考える。図10のように、(d/D)が0.8を超えると電力伝送効率が回復して来る。
この送信アンテナ1と受信アンテナ2のコイルの軸を横方向にのみ、アンテナの径D=50mmの2倍の距離の100mmずらすと、誘導抵抗rが0.23Ωになり、アンテナ系のコイルの結合係数mと等しいr/(2πfL)が0.005になり、電力伝送効率Peが20%の効率で電力を伝送できる。このように、アンテナのコイルの軸をずらす距離をアンテナの径Dの2倍以下にすることで、アンテナの結合係数mが0.005以下になるので、電力伝送効率Peの飽和する周波数fの帯域幅が共振周波数foの0.5%程度あるので、0.5%程度の特性のバラツキのある部品を使っても、送信アンテナ1と受信アンテナ2の共振周波数のバラツキを許容範囲内に留めることができる。そのため、直径Dのコイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2の間隔dを、コイルの直径Dのを2倍以下にすることで実用的な誘導電力伝送システムが構築できる。
この変形例4の効果を利用することで、50mm程度の厚さの壁を隔てて対向する家屋内の送信アンテナ1と家屋外の受信アンテナ2との間に電力を伝送する誘導電力伝送システムが、以下のように改善できる。すなわち、屋内の電源装置3から家屋外の照明装置や表示装置などの負荷回路4に電力を伝送する際に、家屋の壁の厚さのバラツキによりアンテナ系の結合係数mがばらつく問題を、アンテナを軸に垂直方向にずらすことで結合係数mを所定の値に調整することができ解決できる。これにより、固定したインピーダンスZを有する電源回路3と負荷回路4にアンテナの誘導抵抗を整合させて効率良く電力を伝送できる誘導電力伝送システムが構築できる。
<第2の実施形態>
図11に、3巻きのコイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2を用いた第2の実施形態の誘導電力伝送システムを示す。図11(a)にアンテナの平面図を示し、図11(b)に側面図を示し、図11(c)に、電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。このグラフは電磁界シミュレーションにより得た。第1の実施形態と同様に、図11(b)の側面図のように、送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2のコイルをコイル面に平行にアンテナ間隔hで離して配置し、図11(a)の平面図のように、送信アンテナ1の配線の中間に電源回路3から給電する端子(ポート1)を設置し、受信アンテナ2の配線の中間に負荷回路4の端子(ポート2)を設置する。本実施形態では、図11に示すように、送信アンテナ1及び受信アンテナ2として、幅が1mmで厚さが50μmの銅の配線で直径Dが54mmの3巻のコイルを形成し、そのコイルの両端を開放し、コイルの中間にポートを接続したアンテナを用いる。この開放した両端間の浮遊容量をC1とC2とする。なお、両アンテナのコイルの軸を縦(Y)方向と横(X)方向とにずれ距離dを7mmずらして配置する。
電磁界シミュレーションの結果、アンテナの共振周波数は146MHzになり、送信アンテナ1の自己インダクタンスL1と受信アンテナ2の自己インダクタンスL2は、ともに1.2μHであった。本実施形態では、アンテナの配線のコイルが3巻であり、第1の実施形態のコイルの巻き数の3倍あるので、このアンテナのコイルの自己インダクタンスL=L1=L2は、第1の実施形態のコイルの巻き数の3倍ある巻き数比の二乗に近い約7倍に大きくなった。また、共振周波数f=146MHzとアンテナのコイルの自己インダクタンスL=1.2μHから計算すると、アンテナのコイルの両端間に発生する浮遊容量C1とC2の容量は約1pFある。図11(c)には、アンテナ間隔hが1mmの場合の電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。この場合の両アンテナの結合係数mは約0.6である。ただし、アンテナのコイルの両端を開放した場合は、後の図15で示すように、r/(2πfL)は、アンテナのコイルの式4あるいは式19で計算する結合係数mの(2/π)倍になると考える。図11(c)では、共振周波数146MHz前後に、図3(a)と同様に電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域の幅を持つ周波数特性のグラフを得た。
(変形例5)
図12(a)に、変形例5の誘導電力伝送システムの送信アンテナ1と受信アンテナ2の平面図を示し、図12(b)に側面図を示す。図12(c)に、電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。変形例5の誘導電力伝送システムでは、送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2のコイルの軸を7mmのずれ距離dで横(X)方向にのみずらして、縦(Y)方向にはずらさずに、両アンテナの縦(Y)方向の配線同士をXY面に垂直方向に1mmの間隔hを隔てて重ねて配置する。この場合の両アンテナの結合係数mは、図11の場合と大差無く0.6程度である。図12(c)に、この場合の電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域が、共振周波数146MHzの前後にあるが、その周波数帯域幅は、上限周波数が図11(c)の場合よりかなり高い400MHz近くまでの広い周波数帯域幅が得られた。このように電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域幅が広くなった原因は、両アンテナの縦(Y)方向の複数の配線同士が対向することで、配線同士が容量結合することで電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域幅が広げられる効果が得られると考える。そのため、誘導電力伝送システムは、電力伝送効率Peの飽和する周波数帯域幅を広くするために、両アンテナのコイルの軸を重ねて配置して送信アンテナ1と受信アンテナ2の全部の配線を対向させることが望ましい。
図13に、第2の実施形態の誘導電力伝送システムの3巻きのコイル状のアンテナの間隔hを6mmあけた場合の、送信アンテナ1から受信アンテナ2への電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。この図13には、両アンテナのコイルの軸を一致させた場合のグラフと、変形例5のように両コイルの軸をY方向に7mmずらした場合と、最初の例のように両コイルの軸をY方向に7mmずらし、かつ、X方向に6mmずらした場合のグラフを併記した。アンテナの間隔hを6mmあけた場合は、アンテナのコイルの軸を少しずらしても、電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域はさほど変わらなかった。このことから、この場合の電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域幅は、配線同士が対向することによる容量結合の影響よりも、むしろ、コイルの巻き数が多くなったことによる効果が大きいと考える。第2の実施形態の3巻きのアンテナ系の結合係数mも近似式19で計算できる。間隔hを6mmあけると、アンテナ径Dが54mmであるからh/Dが約0.1である。この場合は、式19の計算結果をあらわす図3を見ると、結合係数mが約0.35程度であることがわかる。第1の実施形態の場合では、この値の結合係数mの誘導電力伝送システム場合では、電力の伝送効率Peが飽和する周波数fの帯域の上限は、fo=146MHzとして、f=1/√(1−m)×fo=約181MHzとなったが、第2の実施形態では、周波数の上限が第1の実施形態より大きくなり、周波数の帯域幅が広くなった。このようにアンテナ間の間隔hが6mmと比較的大きい場合でも、コイルの巻き数が多い第2の実施形態では、周波数の帯域幅が広くなる効果がある。この現象を利用して、誘導電力伝送システムのアンテナのコイルの巻き数を多くすることで、アンテナ間に伝送する電力伝送効率が飽和する周波数帯域を広げる効果を得、送信アンテナ1から受信アンテナに安定して電力を伝送できる効果がある。
(変形例6)
変形例6の誘導電力伝送システムは、変形例5と同様に図12(a)のように、送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2を配置するが、それぞれのアンテナのコイルの配線の両端は外付けコンデンサで接続する。それらの容量C1とC2を280pFにする。この場合は、容量C1とC2のコンデンサが大きいので、共振周波数fは、浮遊容量のみの場合の146MHzから9MHzにまで下がった。図14に、この共振周波数fが9MHzの場合のシミュレーション結果を示す。図14(a)のグラフは、縦軸に、黒丸印で、シミュレーション結果の誘導抵抗rを無次元量であらわしたr/(2πfL)をあらわし、実線で、近似式19で計算される結合係数mの値をあらわす。そして、横軸には、アンテナ間隔hをコイルの直径Dで割り算した値(h/D)をあらわす。シミュレーション結果のr/(2πfL)は近似式19による結合係数mの計算結果と概ね一致した。また、r/(2πfL)の値は、実施形態2での3巻きのコイルのアンテナの場合と、実施形態1での1巻きのコイルのアンテナの場合とで大差が無かった。
図14(b)に、この誘導電力伝送システムの電源回路3から負荷回路4までの電力伝送効率Peを縦軸であらわし、横軸にアンテナ間隔hを無次元量(h/D)であらわすグラフを示す。図14(b)から、アンテナ間隔hをコイル径Dの6割程度離した場合(h/D=0.6の場合)でも、電力伝送効率が約90%あり十分効率良く電力を伝送できる。図14(b)の電力伝送効率Peは、第1の実施形態の変形例2での図7の電力伝送効率Peと大差無い結果を得た。本変形例6では、共振周波数fが第1の実施形態の変形例2の図7の4分の1程度に小さい9MHzなので、式10と式11に従う誘導抵抗r1とr2は小さくなり、式12に従う電力伝送効率Peが小さくなる不利益があった。一方、アンテナ配線のコイルの巻き数を3倍の3巻きにすることでアンテナコイルのインダクタンスL1とL2を第1の実施形態の変形例2の7倍の1.2μHに大きくすることで、電力伝送効率Peを大きくする利益があり、結果的に第1の実施形態の変形例2の図7と同等の、良い電力伝送効率Peが得られた。この変形例6で、容量C1とC2だけを小さくして共振周波数fを高くすれば、式12に従って電力伝送効率Peを高くできる。
(変形例7)
変形例7の誘導電力伝送システムは、図12(a)の送信アンテナ1及び受信アンテナ2の両端を開放して浮遊容量のみでつなぐ。この場合は、共振周波数fが146MHzになる。この誘導電力伝送システムのシミュレーション結果を図15に示す。図15(a)に、縦軸に、黒丸印で、シミュレーション結果の誘導抵抗rを無次元量のr/(2πfL)であらわし、点線で近似式19の値×(2/π)をあらわすグラフを示す。このグラフの横軸は、アンテナ間隔hを無次元量の(h/D)であらわす。この変形例7のように、アンテナの両端を開放した場合は、アンテナの両端間を外部コンデンサで接続した場合とは異なり、アンテナの端部に近づくにつれアンテナ電流が小さくなる電流分布になる。そのアンテナ電流の平均値がアンテナの配線の中間のポートでの電流値の(2/π)倍になるため、近似式19の結合係数mの計算結果に(2/π)を掛け算した値を点線のグラフであらわした。その結果がシミュレーション結果のr/(2πfL)に良く一致した。また、図15(b)には、縦軸に電源回路3から負荷回路4までの電力伝送効率Peをあらわし、横軸にアンテナ間隔hを無次元量(h/D)であらわすグラフを示す。図15(b)から、アンテナ間隔hをコイル径Dの8割程度離した場合(h/D=0.8の場合)でも、電力伝送効率Peが約90%あり十分効率良く電力を伝送できる。
(変形例8)
変形例8の誘導電力伝送システムは、半導体集積回路チップ内に形成する。すなわち、第2の実施形態の図12(a)のアンテナの寸法を1000分の1に縮小した、外形が縦横54μm程度のコイル(スパイラル)状のアンテナを半導体の製造工程で製造する。この誘導電力伝送システムは、半導体チップ中で上下方向で対向した配線層に形成したアンテナ間に効率良く電力を伝送する。この場合は、送信アンテナ1と受信アンテナ2として、幅が1μmで厚さが0.5μmの銅の配線の矩形のコイルを、コイルの一辺の大きさDが54μmの3巻のコイルに形成した。また、変形例7と同様に、アンテナのコイルの両端は開放する。送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2のコイルは、コイル軸を水平方向に7μmのずれ距離dでずらした。このアンテナのコイルの自己インダクタンスLは1000分の1の1.3nHになり、このアンテナのコイルの開放された両端間には、1000分の1の約0.001pFの浮遊容量C1とC2が発生し、アンテナの共振周波数fは1000倍の約150GHzになった。変形例8の場合も、図15(a)のグラフの関係が成り立ち、しかも、同じ縦軸の値に対する誘導抵抗rは変形例7と同じになった。また、電力伝送効率Peは、図15(b)より悪化したが、アンテナ間隔hをコイル径Dの2割程度(h/D=0.2)離した場合でも電力伝送効率Peが約80%あり十分効率良く電力を伝送でき、また、h/D=0.6の場合でも電力伝送効率Peが約40%あった。電力伝送効率Peが低くなるのは、共振周波数が高くなると表皮効果によって銅配線の抵抗が大きくなるため、アンテナの損失が増えるためである。また、アンテナ間隔h=1μm(結合係数mが0.6)の場合は、誘導抵抗rは図12(c)における値とほぼ同じ480Ωになり、電力伝送効率Peのグラフは、図12(c)のグラフの周波数を1000倍したグラフになった。このように、半導体集積回路内でもこの誘導電力伝送システムが効率良く電力を伝送できる。
(変形例9)
変形例9の誘導電力伝送システムは、第2の実施形態の図12(a)の3巻きのコイル状のアンテナの寸法を約6倍の300mmに拡大し、厚さ50μmで幅が10mmの配線を3巻きした送信アンテナ1と受信アンテナ2を対向させてアンテナ間に電力を伝送する。各アンテナコイルの配線の両端に容量C1とC2が100pFの外付けコンデンサを接続する場合は、共振周波数fが7.3MHzになる。また、各アンテナのコイルのインダクタンスL1とL2は4.9μHである。アンテナ間隔hをアンテナの寸法D程度に300mm離した場合では、両アンテナの結合係数mが約0.02になる。その配置では、誘導抵抗r1とr2が約4Ωになるが、整合した回路での電力伝送効率Peは約94%になり、効率良く電力が伝送できる。この電力伝送効率Peは、第1の実施形態の変形例2における75%の電力伝送効率より効率が良い。電力伝送効率が良くなる原因は、第1の実施形態よりもアンテナの巻き数が増すことで、アンテナコイルのインダクタンスLが大きくなるからである。この構成の誘導電力伝送システムにより、電力を充電して動力として利用する車両などに、電力供給設備の電源回路3から電力を周波数が約7.3MHzの高周波電流により、幅10mmの銅の配線による3巻きの矩形のコイルの直径Dが300mmの送信アンテナ1に供給して、300mm程度の距離を隔てて対向する車両の受信アンテナ2に約94%の効率で電力を送信し、その車両の充電池などの負荷回路4に電力を供給する誘導電力伝送システムを構成できる。
<第3の実施形態:トランス回路>
第3の実施形態の誘導電力伝送システムは、共鳴電磁界の波長より十分近い距離に設置した送信アンテナ1と受信アンテナ2のコイルの巻き数を変えることで両アンテナの誘導インピーダンスを異ならせるトランス回路である。すなわち、送信アンテナ1と受信アンテナ2を、コイルの巻き数を変えて自己インダクタンスL1とL2を変えることにより、アンテナのコイルの誘導抵抗r1とr2を、式10と式11に従ってL1とL2に比例して変えることができる。
r1=mωL1・sin(β) (式10’)
r2=mωL2・sin(β) (式11’)
ω=ωo/√(1+m・cos(β)) (式8’)
誘導抵抗r1は、(L2/L1)=(1/α)倍の誘導抵抗r2に変換される。
この現象を利用して、図2の回路図で、誘導抵抗r1に整合させた電源回路3の出力インピーダンスZ1を、(L2/L1)倍の誘導抵抗r2に整合させた負荷回路4の負荷インピーダンスZ2に変換するトランス回路を構成することができる。このトランス回路で変換できる電源回路3のインピーダンスZ1は、0からmωL1までの範囲である。空芯コイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2を対向させ近づけると、結合係数mが大きくなり、インピーダンス変換できるインピーダンスの値の上限mωL1とmωL2が大きくなるため、送信アンテナ1と受信アンテナ2は近づける方が望ましい。このトランス部品を用い、送信アンテナ1の自己インダクタンスL1と受信アンテナ2の自己インダクタンスL2を、アンテナのコイルの巻数を変えて調整する。アンテナのコイルの自己インダクタンスLは、概ね巻数の二乗に比例して変わる。こうして、両アンテナの自己インダクタンスLを調整することで、異なるインピーダンスZ1を持つ電源回路3と負荷回路4のインピーダンスZ2を変換して、電源回路3から負荷回路4へ効率良く電力を伝送するトランス回路を構成することができる。
ここで、cos(β)を負にする共鳴条件の場合は、式8の共振角周波数ωはωoより高い周波数にシフトし、受信アンテナ2の電流I2は送信アンテナ1の電流I1を打ち消すように逆向きに流れる。この条件を満たす共振周波数は、電力伝送効率PeをS21であらわす図8(b)の左側のグラフでの周波数特性の2山のグラフの、周波数が高い側のS21のピークを与える周波数である。この周波数では、送信アンテナ1と受信アンテナ2の総体のアンテナ系が外部に出す電磁界が小さくなり、このトランス回路の発生する不要電磁波ノイズ(EMI)が小さくなる効果がある。また、cos(β)が正の共鳴条件の場合は、共振角周波数ωはωoより低い周波数にシフトする。この条件を満たす共振周波数は、図8(b)の左側のグラフでの周波数特性の2山のグラフの、周波数が低い側のS21のピークを与える周波数である。この周波数では、受信アンテナ2の電流I2は送信アンテナ1の電流I1と同じ方向に流れ、送信アンテナ1と受信アンテナ2の総体のアンテナ系が外部に出す電磁界が大きくなる。その一方、このトランス回路は、1つの送信アンテナ1のコイルの軸に軸が重なる複数の受信アンテナ2のコイルを並列に設置して、それらの複数の受信アンテナ2とそれに接続する負荷回路4に同時に、電源回路1から電力を伝送できる効果がある。
この、空芯コイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2で構成するトランス回路は、従来の磁性体のコアを有するトランス回路に比べ、重量を軽減できる効果がある。また、磁性体のコアを用いる従来のトランス回路が、そのコアの材料の周波数特性による制約で使えなかった高周波でも、コアの材料に制約されずに有効に動作させることができる効果がある。
<第4の実施形態>
図16(a)に、本発明の第4の実施形態の誘導電力伝送システムのアンテナの平面図を示す。これは、送信アンテナ1と受信アンテナ2を7巻きのコイル状アンテナにした。図16(b)にシミュレーション結果の、電力伝送効率Peの周波数特性のグラフを示す。第1の実施形態と同様に、送信アンテナ1に電源回路3を接続し、受信アンテナ2に負荷回路4を接続する。図16では、送信アンテナ1及び受信アンテナ2として、幅が1mmで厚さが50μmの銅の配線で形成したコイル径Dが47mmの7巻のコイルのアンテナを形成し、アンテナの両端は開放する。そのアンテナの両端間の浮遊容量をC1とC2とする。アンテナ1の配線の中間に電源回路3から給電する端子(ポート1)を設置し、受信アンテナ2の配線の中間に負荷回路4の端子(ポート2)を設置する。送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2のコイルは、コイル面に平行にアンテナ間隔hを5mm離して配置する。すなわち、h/Dが約0.1の場合を示す。更に、両アンテナのコイルの軸をずらさない場合と、両アンテナのコイルの軸をY方向に5mmずらす場合と、X方向とY方向ともに5mmずらした場合、の3つの場合のシミュレーション結果を図16(b)に示す。このグラフでは、電力伝送効率Peが飽和する周波数帯域幅が140MHzから210MHzまであるが、この周波数帯域幅は、同じ(h/D)=0.1の場合における、第2の実施形態の図12の3巻きのコイルのアンテナでの図13の周波数帯域幅より広くなった。この原因は、誘導電力伝送システムのスパイラル形のアンテナの巻き数を多くすることで、電力伝送効率Peの飽和する周波数帯域幅を広くする効果が得られたためと考える。
<第5の実施形態>
図17(a)に、本発明の第5の実施形態の誘導電力伝送システムの送信アンテナ1と受信アンテナ2の平面図を示す。本実施形態は、同一平面上に20mm隔てて並べて置いた厚さ50μmで幅1mmの銅の配線を巻いたコイル状の送信アンテナ1と受信アンテナ2から成る誘導電力伝送システムである。各アンテナは、縦横47mmの矩形状で、紙面に垂直方向に1mmの間隔をあけて2組の7巻きの銅の渦巻き状コイルを平行させる。この両アンテナのコイルの軸はX方向にアンテナの直径の67/47≒1.4倍離れている。送信アンテナ1のコイルの配線の中間には電源回路3の端子のポート1を設置し、受信アンテナ2のコイルの配線の中間には負荷回路4の端子のポート2を設置し、コイルの両端は開放する。このアンテナは8.9μHの自己インダクタンスLを持ち、アンテナのコイルの開放した両端が5pFの浮遊容量でつながれていて、周波数f=23.8MHzで共振する。このアンテナを構成する平行する2組の渦巻き状コイル間には比較的大きな5pFという浮遊容量が発生し、その容量が両コイルの開放端間を接続する。平行する2組の渦巻き状コイル間の間隔が狭いほどこの浮遊容量の値が大きくなる。
シミュレーションの結果、このアンテナの誘導抵抗r1=r2=rは7Ωであり、結合係数mは、誘導抵抗から計算すると、m=r/(2πfL)=0.013である。図17(b)に、送信アンテナ1から受信アンテナ2への電力伝送効率PeをS21であらわした、S21の周波数特性を示す。この誘導抵抗rにインピーダンスZを整合させて電力を伝送することでS21は−0.73dBが得られ、電力伝送効率Peが約85%の効率良い電力伝送できる。この程度にアンテナの軸をずらしても、良い効率で電力が伝送できる誘導電力伝送システムが得られた。このアンテナの電力伝送効率Peを式12で計算すると約0.84になり、電磁界シミュレーションの結果と良く一致する。
また、送信アンテナ1のコイルの同一平面上に送信アンテナ1の周囲の四方に間隔を隔てて複数の受信アンテナ2を設置し、送信アンテナ1から複数の受信アンテナ2に同時に電力を伝送する電力伝送システムを構築できる。そのように受信アンテナ2が複数ある場合は、送信アンテナ1に直列に接続する電源回路3のインピーダンスZ1を、各受信アンテナ2の送信アンテナ1への結合係数mの総和に(ωL1)を掛け算した値に調整して整合させることができる。
(変形例10)
変形例10の誘導電力伝送システムは、図17(a)の各アンテナの構成要素の2組のコイルの紙面に垂直方向の間隔を、先の実施形態の場合の4倍の4mmの間隔をあけ、そのアンテナの両端を開放する。この誘導電力伝送システムを電磁界シミュレーションした結果、共振周波数fは、先の実施形態の2倍弱の40.1MHzで共振し、アンテナの誘導抵抗r1=r2=rは2倍以上の18Ωになった。この誘導抵抗rにインピーダンスZを整合させて電力を伝送すると電力伝送効率PeをあらわすS21は−0.46dBになり、約90%の電力伝送効率Peが得られた。共振周波数fが2倍近く大きくなったのは、アンテナの両端の間の浮遊容量C1とC2が4分の1程度に小さくなったことが原因である。電力伝送効率Peが大きくなったのは、共振周波数fが大きくなったので、式10と式11に従って誘導抵抗r1とr2が大きくなったので式12で計算される電力伝送効率Peが大きくなったためである。また、その各アンテナ毎に、アンテナを構成する2つのコイルの間隔を更に8mmに大きくすると、アンテナの共振周波数fは更に大きな値の51.4MHzになり、各アンテナの誘導抵抗r1=r2=rがより大きな値の34Ωになり、S21は−0.32dBになり約93%の電力伝送効率Peで電力を伝送した。
(変形例11)
変形例11の誘導電力伝送システムは、第4の実施形態の図16(a)の縦横47mmの7巻きのコイルの送信アンテナ1と受信アンテナ2を、図17(a)のような形に同一平面上に20mm隔てて配置する。このアンテナ系は115MHzで共振し、電磁界シミュレーションの結果のアンテナの誘導抵抗rは、r=r1=r2=14Ωになり、この誘導抵抗rにインピーダンスZを整合させて電力を伝送するとS21は−0.49dBが得られ、約89%の電力伝送効率Peが得られた。変形例10の各アンテナを2つのコイルで構成しそのコイルの間隔を8mmにした場合のPe=93%よりも本変形例11の電力伝送効率Peが低かった。その原因は、変形例11のアンテナコイルの巻き数が7巻きであり、変形例10のアンテナのコイルの巻き数の14よりも巻き数が少なかったため、電力伝送効率Peが少なくなったと考える。
(変形例12)
変形例12の誘導電力伝送システムは、図16の送信アンテナ1と受信アンテナ2それぞれに、同じ形状のアンテナを、間隔Gapを隔てて平行に非接触で設置することで、送信アンテナ1を、電源回路3と接続する本体アンテナと、それに間隔Gapを隔てて平行する補助アンテナとから構成したアレーアンテナを用いる。このアレーアンテナの概観は、変形例10の各アンテナを構成する2つのコイルを本体アンテナと補助アンテナとに切り離した上で、補助アンテナを左右に反転した形にしたアンテナを持つ誘導電力伝送システムである。すなわち、補助アンテナは、本体アンテナのポートが短絡された本体アンテナと同じ形で、本体アンテナに平行するコイル状に形成する。この各アレーアンテナを図17(a)のような形に同一平面上に20mm隔てて配置する。電磁界シミュレーションの結果、図18のように、各アレーアンテナ毎のアンテナ要素の間隔Gapの大きさによりアレーアンテナの共振周波数fが115MHzより105MHzに至るまで小さくなり、また、アレーアンテナの誘導抵抗rは、補助アンテナを設置しない場合の14Ωに比べて4倍程度の64Ωから50Ωに大きくなる。
図18の結果は、(1)アレーアンテナのアンテナ要素の間隔Gapが0.5mmの場合、共振周波数fが約112MHzで、誘導抵抗が64Ωになる。また、(2)アンテナ要素の間隔Gapが2mmの場合、共振周波数fが約108MHzで、誘導抵抗が58Ωになる。そして、(3)アンテナ要素の間隔Gapが7mmの場合、共振周波数fが約106MHzで、誘導抵抗が50Ωになる。このように、アレーアンテナのアンテナ要素の間隔Gapが0.5mmから約7mmまで変わる場合は、間隔Gapが大きくなるとアレーアンテナの共振周波数fが大きくなる。一方、アンテナ要素の間隔Gapが7mm以上に大きくなると、この傾向が逆になり、共振周波数fは間隔Gapとともに大きくなり、間隔Gapが十分大きくなると、共振周波数fは115MHzに収束する。また、電力伝送効率Peは、間隔Gapが0.5mmから7mmまでの場合は、約94%になり、電力の損失率が半分になる良い電力伝送効率が得られる効果があった。この原因は、本体アンテナと補助アンテナが並列にほぼ同じ大きさの電流が流れ、それらの電流の発生する電磁界が重なって強め合って、強い電磁界を発生することにより電力の伝送効率が向上したためと考える。また、アレーアンテナ構造の送信アンテナ1と受信アンテナ2は、そのアンテナのコイルの軸をずらして離して配置する場合に限らず、アンテナのコイルの軸方向に軸をほぼ重ねて離して配置する場合でも、同様に良い電力伝送効率Peで電力を伝送できる効果がある。
<第6の実施形態>
第6の実施形態の誘導電力伝送システムは、送信アンテナ1と受信アンテナ2で構成する誘導電力伝送システムをインピーダンス変換回路5として用いる。すなわち、アンテナ電流I1とアンテナ電流I2の位相差βを90度ずらしcos(β)を0にし、共振角周波数ωをωoにして、先の式14から式16の状態でアンテナ系を共鳴させる。こうすることで、図2の回路図で、電源回路3を送信アンテナ1のポート1に接続し、負荷回路4を受信アンテナ2のポート2に接続し、任意のαで、電源回路3の出力インピーダンスZ1をωM・αにし、負荷回路4の負荷インピーダンスZ2をr2=ωM/αにし、インピーダンスを変換して電源回路3から負荷回路4に電力を伝送することができる効果がある。
図19(a)は、本実施形態のインピーダンス変換回路5を用いない場合の、送信アンテナ1と受信アンテナ2の平面図を示す。図19(a)では、送信アンテナ1のコイルのインダクタンスL1と受信アンテナ2のコイルのインダクタンスL2が同じインダクタンスL=L1=L2の場合を示す。図19(a)のように送信アンテナ1と受信アンテナ2が結合係数mで電磁結合して相互誘導係数M=Moを持つとする。その場合に、両アンテナを共振角周波数ω=ωo=1/√(L1・L2)で共鳴させると、式17と式18により、誘導抵抗r1とr2がωMoになるので、電源回路3の出力インピーダンスZ1と負荷回路4の入力インピーダンスZ2をωMoに整合させて効率良く電力を伝送できる。
次に、図19(b)に本実施形態の誘導電力伝送システムで構成するインピーダンス変換回路5の構成と使用例の平面図を示す。図19(b)の電源回路3と送信アンテナ1の間に本実施形態のインピーダンス変換回路5を挿入する。この回路で、送信アンテナ1のコイルと受信アンテナ2のコイルの位置が変動すると、送信アンテナ1と受信アンテナ2の相互誘導係数MがMoより小さい値に変動する。ここで、相互誘導係数MがMo/αに小さくなった場合は、受信アンテナ2の誘導抵抗r2を、負荷回路のインピーダンスの固定値のωMo=ωM×αに整合すると、送信アンテナ1の誘導抵抗r1は、式14と式15に従い、ωM/α=ωoMo/αになる。電源回路のインピーダンスの固定値のωMo=ωM×αを、この送信アンテナの誘導抵抗r1のωM/αに変換するために、インピーダンス変換回路5を構成する送信アンテナと受信アンテナ間の距離を可変にしてアンテナ間の相互インダクタンスMを可変にする。そして、インピーダンス変換回路5は、その相互インダクタンスMをMo/αに調整することで、電源回路のインピーダンスの固定値のωMo=ωM×αを、インピーダンス変換回路5の送信アンテナの誘導抵抗r3にし、それを、インピーダンス変換回路5の受信アンテナの誘導抵抗の値ωM/αに変換する。これにより、その誘導抵抗の値を、そのインピーダンス変換回路5に接続する送信アンテナ1の誘導抵抗r1に整合させ、電源回路3から負荷回路4までの全回路のインピーダンスを整合して効率良く電力を伝送する。このように、送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離が変動して相互誘導係数Mが変化しても、その変化によるインピーダンスの変動を、インピーダンス変換回路5が、共鳴の角周波数ωを一定に保ったままで、アンテナ間の距離という1つのパラメータを調整するだけで相互誘導係数Mを可変にして、適正な値にインピーダンスを変換して整合させることができる。
(変形例13)
変形例13の誘導電力伝送システムは、本実施形態の、図19(b)のインピーダンス変換回路5を、誘導電力伝送システム以外の手段で構成する。すなわわち、変形例13のインピーダンス変換回路は、それが接続する誘導電力伝送システムの共振周波数の電磁界の波長の4分の1の長さの伝送線路で構成する。そして、その伝送線路の特性インピーダンスを1つのパラメータを調整するだけで可変にする構成にする。その特性インピーダンスの可変手段は、2つの帯状の線路を平行させて構成する伝送線路の線路幅を可変にして構成することができる。あるいは、2つの帯状の線路を平行させて構成する伝送線路の線路の間隔を可変にして構成することができる。
<第7の実施形態>
第7の実施形態の誘導電力伝送システムは、図20のように、第5の実施形態の第17(a)のアンテナのポート1あるいはポート2が接続するアンテナの給電点に並列に、例えば、13mm□のループ配線6を追加する。このループ配線6の配置は、そのポートからそのループ配線6に流れ込む電流がループ配線6を回転する方向が、それ以外のコイルの配線にそのポートから流れ込む電流がそのコイルを回転する方向と逆向きに回転するように配置する。このループ配線6を追加することで、共振周波数でアンテナのポートに誘起する誘導抵抗rは16Ωになった。この値は第5の実施形態の7Ωの誘導抵抗の約2倍になった。この誘導抵抗rは、アンテナ間の距離が近くなり結合係数mが増すと逆に小さくなる。このループ配線6の面積を大きくすることで誘導抵抗rを大きくでき、誘導抵抗rの値をループ配線6の面積により自由に変えて利用しやすい適度な大きさに設定することができる効果がある。
本発明の誘導電力伝送システムは、ディスプレイ装置等に、家屋の壁を隔てて誘導エネルギーを供給する用途に適用できる。また、生体への非侵襲なシステム構成で、生体内に埋め込んだ電子装置にエネルギーを供給する用途に適用できる。また、半導体集積回路内で集積回路の配線層間で電力を非接触で伝送する用途に適用できる。更に、車両などに電力供給設備から非接触で電力を供給する用途に適用できる。
本発明の第1の実施形態の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図である。 本発明の誘導電力給電回路の回路図である。 本発明の第1の実施形態の電力伝送効率PeをSパラメータ(S21)であらわしたグラフである。 本発明の第1の実施形態のアンテナ間隔hによる誘導抵抗rのグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例2から変形例4の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図である。 本発明の第1の実施形態の変形例2のアンテナ間隔hによる誘導抵抗rのグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例2のアンテナ間隔hによる電力伝送効率Peのグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例3の電源回路と負荷回路のインピーダンスZによる電力伝送効率のグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例4のアンテナのずれ距離dによる誘導抵抗rのグラフである。 本発明の第1の実施形態の変形例4のアンテナのずれ距離dによる電力伝送効率Peのグラフである。 本発明の第2の実施形態の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図と電力伝送効率Peの周波数特性のグラフである。 本発明の第2の実施形態の変形例5の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図と電力伝送効率の周波数特性のグラフである。 本発明の第2の実施形態と変形例5の電力伝送効率の周波数特性のグラフである。 (a)本発明の第2の実施形態の変形例6のアンテナ間隔hによる誘導抵抗rのグラフである。(b)本発明の第2の実施形態の変形例6のアンテナ間隔hによる電力伝送効率Peのグラフである。 (a)本発明の第2の実施形態の変形例7のアンテナ間隔hによる誘導抵抗rのグラフである。(b)本発明の第2の実施形態の変形例7のアンテナ間隔hによる電力伝送効率Peのグラフである。 (a)本発明の第4の実施形態のアンテナの平面図である。(b)本発明の第4の実施形態の電力伝送効率の周波数特性のグラフである。 (a)本発明の第5の実施形態の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図である。(b)本発明の第5の実施形態の電力伝送効率の周波数特性のグラフである。 本発明の第5の実施形態の変形例12におけるアレイアンテナ構造のアンテナを用いた場合の電力伝送効率の周波数特性のグラフである。 (a)本発明の送信アンテナと受信アンテナを示す平面図である。(b)本発明の第6の実施形態のインピーダンス変換回路を示す平面図である。 本発明の第7の実施形態の送信アンテナと受信アンテナの平面図および側面図である。
符号の説明
1・・・送信アンテナ
2・・・受信アンテナ
3・・・電源回路
4・・・負荷回路
5・・・インピーダンス変換回路
6・・・ループ配線
C1、C2・・・容量
d・・・ずれ距離
D・・・送信アンテナ径
G・・・受信アンテナ径
h・・・アンテナ間隔
I1、I2・・・アンテナ電流
L1、L2・・・自己インダクタンス
r、r1、r2、r3・・・誘導抵抗
Z1、Z2・・・インピーダンス

Claims (2)

  1. 電源回路に接続した送信アンテナから、受信アンテナに接続した負荷回路まで空間を経由して電力を伝送するシステムにおいて、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナがコイル状の配線の両端を結ぶ容量を有し、前記容量と前記コイル状の配線のインダクタンスで共振回路を構成し、前記送信アンテナと前記受信アンテナのコイルを、両アンテナのコイルの直径の2倍以下の距離を隔てて配置し、前記コイル状の配線の中間に直列に前記電源回路及び前記負荷回路を接続し、前記送信アンテナに誘導される抵抗に前記電源回路の出力インピーダンスを整合させ、前記受信アンテナに誘導される抵抗に前記負荷回路の入力インピーダンスを整合させて前記電源回路から前記負荷回路まで電力を伝送することを特徴とする誘導電力伝送システム。
  2. 請求項1に記載の誘導電力伝送システムにおいて、前記電源回路あるいは前記負荷回路に、1つの回路パラメータを可変にすることで整合インピーダンスを可変にしたインピーダンス整合手段を設置したことを特徴とする誘導電力伝送システム。
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