JP2009265346A - 接合光学部品とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2個以上の光学材料が接着剤を用いることなく接合された接合光学部品とその製造方法を提供すること。
【解決手段】2個以上の光学材料(Nd:YAG結晶とYAG結晶)1とこれ等光学材料間に設けられ材料間の反射を防止する誘電体多層膜2とを具備した特定波長域を透過させる接合光学部品であって、光学材料とその両面に原子層堆積(ALD)法により成膜された両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜とで構成される2個以上の誘電体多層膜構造体10がその誘電体多層膜を介し直接接合されて成ることを特徴とする。また、接合光学部品の製造方法は、光学材料の両面にALD法により両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜を同時に成膜して誘電体多層膜構造体を製造し、得られた2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜を介し直接接合して接合光学部品を製造することを特徴とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、2個以上の光学材料とこれ等光学材料間に設けられる誘電体多層膜とを具備した特定波長域を透過させる接合光学部品に係り、特に、2個以上の光学材料が接着剤を用いることなく接合された接合光学部品とその製造方法に関するものである。
レーザプリンタ、バーコードリーダ、カメラ、望遠鏡、顕微鏡等多くの光学部品においては、反射防止膜やミラー等が用いられている。その中でも、反射防止膜はもっとも一般的に使用されており、特定波長域の反射を低減させるため誘電体多層膜で構成されている場合が多い。
ところで、光学部品の中には2個以上の光学材料(レンズ、光学結晶等単体で構成される光学材料と、結晶基板とこの基板面上にエピタキシャル成長させた他の結晶とで構成される光学材料等が例示される)を接合して使用する接合光学部品が多くある。
代表的な接合光学部品の例として、カメラレンズの色収差を補正するために屈折率の波長分散が異なる複数のレンズを貼り合わせて構成した接合レンズ、レーザ結晶(YAG)と第二次高調波結晶(KTP)を接合させた一体型接合グリーンレーザ素子、CCD撮像素子のモアレを除去するために光線を分離する2枚の水晶板を貼り合わせて構成した接合波長板、ファラデー回転角の温度特性が異なる2枚のファラデー回転子を貼り合わせて構成した温度安定型光アイソレータ等が知られている。
また、2個以上の光学材料の接合には、同じ光学材料を接合する場合と、異なった光学材料を接合する場合があり、これ等光学材料の接合により光学的機能を向上させたり、全く新しい機能を持たせたりすることができる。
ところで、2個以上の光学材料を接合する場合、光学材料界面の反射損失を低減させる方法を考慮する必要がある。
そして、例えば、接合させる2個の光学材料の使用波長における屈折率が等しければ、これ等光学材料と同じ屈折率の接着剤を用いて接着することにより反射損失を低減させることができる。
また、2個の光学材料の使用波長における屈折率が異なる光学材料を接合させる場合には、接合させる光学材料の中間屈折率を有する接着剤を使用する方法がある。しかし、この方法においては、光学材料と接着剤の界面に屈折率差が生じるため、反射損失を極端に低減させることはできない。もう一つの方法は、接合に用いる接着剤の屈折率に対する反射防止膜を光学材料の接合側面に成膜してから、接着剤を用い接合する方法である。この方法であれば、反射防止膜の作用により反射損失を極端に低減させることが可能となる。
尚、接合させる光学材料の屈折率がほとんど同じでかつ熱圧着可能な場合には、例外的に接着剤を用いることなく直接熱圧着する方法もある。しかし、この方法は光学材料の熱膨張係数や表面状態、結晶格子間隔等の影響を受けるため、実用的な組み合わせはわずかしかない。
上記した中で最も多く用いられている接合方法は、接着剤を用いかつ接着剤に対する反射防止膜を光学材料に施して(通常の反射防止膜は空気に対する反射防止膜である)接着する方法である。
これ等の光学材料に施される反射防止膜は、上述したように誘電体多層膜で構成されている場合が多く、多層膜の成膜方法は、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法やスパッタリング法が一般的である。また、通常、光学材料(基板)の片面に上記多層膜が施されるが、近年、基板の両面に多層膜が施される場合も多い。
そして、特許文献1と特許文献2には、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法により光学フィルターの製造が可能であることが記載され、このALD法による成膜法では、基板両面同時に多層膜の成膜が可能であることが記載されている。
特開2002−277628号公報 特開2004−176081号公報
ところで、2個以上の光学材料と反射防止膜としての誘電体多層膜を具備した特定波長域を透過させる接合光学部品において、上記誘電体多層膜が施された2個以上の光学材料を上述したように接着剤で接合した場合、得られた接合光学部品が高温高湿といった過酷な環境条件に置かれると、接着剤として用いられている樹脂材料(有機材料)が変質してしまう問題があった。更に、接合光学部品がレーザ用光学部品の場合、上記接着剤の僅かな吸収によりダメージを受けてしまうこともあった。このような状況から、接着剤を用いない接合光学部品の開発が望まれている。
そこで、本発明の課題とするところは、2個以上の光学材料が接着剤を用いることなく接合された接合光学部品とその製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、上記課題を解決するため、広く利用されている真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法、スパッタリング法等の成膜方法に代えて、特許文献1や特許文献2に記載されている原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法を採用すると共に、光学材料の両面に両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜が成膜された2個以上の誘電体多層膜構造体を、接着剤を用いることなく誘電体多層膜を介し圧着させたところ、容易に接合されて接合光学部品が得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
接合される2個以上の光学材料とこれ等光学材料間に設けられ材料間の反射を防止する誘電体多層膜とを具備した特定波長域を透過させる接合光学部品において、
光学材料とその両面に原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法により成膜された両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜とで構成される2個以上の誘電体多層膜構造体が、その誘電体多層膜を介し直接接合されて成ることを特徴とするものである。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の接合光学部品の製造方法において、
光学材料の両面に原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法により両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜を同時に成膜して2個以上の誘電体多層膜構造体を製造し、得られた2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜を介し直接接合して接合光学部品を製造することを特徴とする。
次に、請求項3に係る発明は、
請求項2に記載の発明に係る接合光学部品の製造方法において、
上記光学材料の材質が、ガラス、セラミック、石英、結晶のいずれかであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項2または3に記載の発明に係る接合光学部品の製造方法において、
ALD装置内において、2個以上の誘電体多層膜構造体を、その誘電体多層膜の成膜直後に接合することを特徴とするものである。
本発明に係る接合光学部品によれば、光学材料の両面に設けられた両面対称構造を有する誘電体多層膜がALD法により成膜されているため、成膜された誘電体多層膜表面の平滑性が極めて高い。
従って、表面平滑性に優れた誘電体多層膜を光学材料両面に有する2個以上の誘電体多層膜構造体を圧着することにより、接着剤を用いることなくこれ等誘電体多層膜構造体を容易に接合させることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
光学材料と誘電体多層膜を具備した特定波長域を透過させる本発明に係る接合光学部品は、光学材料の両面に両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜がALD法により成膜された誘電体多層膜構造体を、その誘電体多層膜を直接介し2個以上接合させて構成されている。
また、この接合光学部品を得るには、両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜をALD法により光学材料両面に同時に成膜して誘電体多層膜構造体を製造し、得られた2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜を直接介し接合して製造することができる。
そして、ALD法による成膜では光学材料両面への同時成膜が可能である。すなわち、ALD法は単原子(単分子)層ずつ堆積する方法で、光学材料両面に対して均一な成膜が可能である。
1.ALD法
原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法は、真空容器(成膜装置)中に光学材料を配置する共に、分子層を構成する元素が含まれる原料ガスを交互に真空容器内に導入して、光学材料表面側に吸着された分子と次に導入される原料ガスとの反応により分子層を形成するもので、分子層の膜厚を原子層レベルで制御できる方法である。従って、ALD法で用いられる成膜装置(原子層堆積装置)においては、PVD法やCVD法で用いられる成膜装置に必要であった高価な部品ユニットや高速回転機構等が不要となり、従来の成膜方法と比べて成膜コストの低減が図れる。
そして、ALD法による光学多層膜の製造方法では、光学特性に関係する物性値の異なる複数種類の物質それぞれの分子層を光学材料に積層し、所望の複合的な物性値を有する薄膜が形成される基本工程を複数回繰り返すことにより複数の薄膜から成る光学多層膜を形成するものである。各薄膜の形成にあたっては、分子層を構成する元素のそれぞれが含まれる原料ガスを交互に真空容器(成膜装置)内に導入し、原料ガスの入れ替え回数を調整することにより各薄膜の複合的な物性値を連続的に変化させる。
ALD法では、SiO、Al、Ta、TiO等多くの酸化物層や窒化物層の成膜が可能である。また、異なった物質を数原子層ずつ堆積して、新たな光学的特性(屈折率、消衰係数)を有する層を作り出すこともできる。
ALD法を用いて、例えばAlの単原子(単分子)層を形成する場合、下記4工程で完成する。
(1)水分子を導入して光学材料の表面若しくは既に成膜が行われた面にOH基を吸着させる。
(1層目以降の反応)
2HO+:O−Al(CH → :Al−O−Al(OH)+2CH
(2)余剰水分子をパージ排気する。
(3)Al膜の原料ガスであるTMA[Trimethyl Aluminum:Al(CH]ガスを導入する。TMA分子がOH基と反応してCHガスが発生する。
(1層目の反応)
Al(CH+:O−H → :O−Al(CH+CH
(1層目以降の反応)
Al(CH+:Al−O−H → :Al−O−Al(CH+CH
(4)CHガスをパージ排気する。
この4工程で約0.1nmのAl膜が形成されるので、要求する膜厚に到達するまで上記4工程を繰り返して膜厚を増加させる。
また、ALD法によってTiOの単原子(単分子)層を形成するには、TiO膜の原料ガスにTi(OC(Ti-ethaoxide)ガスを用いることにより同様に形成することができる。上記4工程で約0.04nmのTiO膜が形成されるので、所望の膜厚に到達するまで上記4工程を繰り返して膜厚を増加させる。
次に、ALD法によってSiOの単原子(単分子)層を形成するには、SiO膜の原料ガスにSiClガスを用いることにより同様に形成することができる。この場合、上記SiClガスの導入後と水分子の導入後のそれぞれに、CN(Pyridine)を導入することで、CNの触媒作用により反応を促進させることができる。そして、この2工程が追加された6工程で約0.05nmのSiO膜が形成されるので、所望の膜厚に到達するまでこの工程を繰り返して膜厚を増加させる。
次に、例えば、TiOから成る分子層と、Alから成る分子層とで光学多層膜を構成する場合について説明する。これ等2種類の分子層を形成する場合、例えばTiOの原料ガスとしてTiを含むTiClガスとOを含むHOガスが採用され、Alの原料ガスとしてAlを含む上記TMA(トリメチルアルミニウム)ガスを用いることができる。他の種類の分子層を形成する原料ガスとして、ALD用若しくはCVD用として市販されているものが利用でき、原子層堆積により自己精製効果があるため、特に高純度の原料ガスを用いる必要はない。また、欠陥の少ない光学多層膜を得るためには、固体原料を加熱して得る原料ガスより液体原料の原料ガスを使用することが望ましい。
ここで、ALDの成膜装置において、TiClガスの供給路に配設されたバルブをLV1、HOガスの供給路に配設されたバルブをLV2、TMAガスの供給路に配設されたバルブをLV3、上記成膜装置(真空容器)の真空引きを行う真空ポンプの排気経路に配設されたゲートバルブをGVとすると、まず、真空ポンプにより成膜装置(真空容器)内を所定圧力(例えば、10−3Pa)以下に減圧した状態でゲートバルブGVを閉め、その後、バルブLV2を開いて光学材料が配置された成膜装置(真空容器)内にHOガスを導入し上記光学材料両面にOH基を1層だけ吸着させてから、上記ゲートバルブGVを開いて成膜装置(真空容器)内に残留しているHOガスを排気しかつ所定圧力以下に到達するように調整する。次に、ゲートバルブGVを閉じると共に、バルブLV1を開いて成膜装置(真空容器)内にTiClガスを導入することによりTiの吸着物と分解反応させて1層のTiO層を形成し、その後、ゲートバルブGVを開いて成膜装置(真空容器)内に残留しているTiClを排気しかつ所定圧力以下に到達するように調整してゲートバルブGVを閉じる。これ等工程がTiOの1原子層(1分子層)を成膜する1サイクルになり、膜厚はこのサイクル数で決定される。尚、この成膜装置(真空容器)においては、上記原料ガスの入れ替え回数がカウントされるようになっている。
次に、Alから成る分子層についても、TiOから成る分子層の場合と同様、成膜装置(真空容器)内のバルブLV3とバルブLV2を開閉して上記TMAガスとHOガスを交互に供給し、原料ガスの入れ替え回数を調整することにより原子層レベルで膜厚を制御することができる。但し、各分子層の種類によって成膜速度が異なっており、事前に成膜速度を確認した上で条件を設定する必要がある。
ところで、高温成膜ではTiO層が結晶化して散乱原因になる場合があるため、高温でも結晶化し難いAl等の層で上記TiO層を挟み込むことによりTiO層の結晶化を防止することができる。また、反応を促進させるためには基板加熱が必要であり、酸化物膜の場合、200〜400℃で光学材料の加熱を行うことが好ましい。また、成膜装置(真空容器)内において、光学材料の向きが水平方向となるように保持した場合、光学材料の自重により反り(中央部の凹み)を生ずることがある。このような反りを低減させるには、光学材料の向きが鉛直方向となるように保持した状態(すなわち、光学材料を鉛直方向に保持した状態)で成膜すればよい。

2.接合光学部品の製造方法
本発明に係る接合光学部品を得るには、上述したように両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜を原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法により光学材料両面に同時に成膜して誘電体多層膜構造体を製造し、得られた2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜を直接介し接合して製造することができる。
すなわち、ALD装置内においてALD法により光学材料1の両面に一対の誘電体多層膜2を同時に成膜して複数の誘電体多層膜構造体10を製造する共に、図4(A)に示すようにALD装置内において例えば2個の誘電体多層膜構造体10を基板ホルダー3により保持し、かつ、図4(B)に示すように基板ホルダー3を移動させて2個の誘電体多層膜構造体10を接触させ、更に、図4(C)に示すようにプレス治具4により上下方向から圧力を加えて2個の誘電体多層膜構造体10を接合させる。そして、図5(A)に示すように上側のプレス治具4を上方向へ移動させて圧力を解除すると共に、図5(B)に示すように下側のプレス治具4も上方向へ移動させて接合光学部品を取り出し、本発明に係る接合光学部品を得ることができる。
尚、ALD法により成膜された誘電体多層膜2は原子層毎に堆積していることから表面の平滑性が高いため、2個の誘電体多層膜構造体10を圧着することにより容易に貼り付けることが可能である。このため、上記誘電体多層膜構造体10の接合は、表面が活性状態にある誘電体多層膜2の成膜直後にALD装置内で連続的に行うことが望ましい。但し、光学材料1に凸凹が存在すると、ALD法による成膜では光学材料1の凸凹を反映した誘電体多層膜2が成膜されてしまうため、誘電体多層膜構造体10表面も凸凹になってしまい接合することが困難となる。従って、凸凹が存在しない光学材料を適用することが好ましい。
そして、例えば2個の誘電体多層膜構造体10が接合して得られる図5(B)の接合光学部品においては、各光学材料1両面に設けられた誘電体多層膜2の接合により光学材料1間に存在する誘電体多層膜の膜層数が2倍に増えるため、反射防止膜として作用する膜層数の誘電体多層膜を容易に形成できる利点を有しており、更に、接合された誘電体多層膜構造体10の内側に存在する誘電体多層膜2は、各光学材料1に囲まれる構造になるため劣化し難い特徴も有している。
本発明に係る接合光学部品に適用できる光学材料の材質としては、ALD法による成膜中の温度変化に耐えることが可能で、成膜される誘電体多層膜と熱膨張係数がほぼ等しいガラス、セラミック、石英、結晶から選ばれるいずれかであることが好ましい。また、上記光学材料は、上述したように単一の材料で構成されるものに限らず、例えば、結晶基板上に他の結晶をエピタキシャル成長させた光学材料が挙げられる。
また、光学材料の自重による反り(中央部の凹み)を低減させるため、ALD装置内において光学材料を垂直に保持する方法を採ることも可能である。
そして、本発明は、接合させる光学材料の熱膨張係数が極端に異なり熱圧着による接合が困難な場合、熱圧着では接合強度が不十分である場合、接着剤を用いることができない環境下で使用される場合等に特に有効である。
但し、本発明においては、2以上の光学材料のすべての面に同時に誘電体多層膜をALD法により成膜するため、接合させる各光学材料の使用波長に対する屈折率が互いに極端に異なる場合、同じ誘電体多層膜では各光学材料に対して反射防止膜として機能しなくなることが考えられる。このため、本発明においては、接合させる各光学材料の使用波長に対する屈折率が互いに近い方が望ましい。
そして、レーザ結晶(YAG)と第二次高調波結晶(KTP)を接合した一体型接合グリーンレーザ素子、CCD撮像素子のモアレを除去するために光線を分離する2枚の水晶板を貼り合わせて構成される接合波長板、ファラデー回転角の温度特性が異なる2枚のファラデー回転子を貼り合わせて構成される温度安定型光アイソレータ等は、接合させる各光学材料の使用波長に対する屈折率が等しいか、非常に近いため、特に適している。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
固体レーザ素子であるNd:YAG結晶(光学材料)とアンドープのYAG結晶(光学材料)との接合を行った。レーザ発振に寄与するNd:YAG結晶に、熱伝導に優れるYAG結晶を接合することで、ビーム品質に優れるヒートシンク付の固体レーザ素子を製作することができる。両結晶の屈折率は、Nd:YAGレーザの発振波長の1064nmにおいて、約1.82である。
はじめに、反射防止膜として機能する誘電体多層膜の設計を行った。上述したようにALD法による成膜は両面同時成膜(正確にはすべての面が同時成膜)となるため両面対称構造の膜構造になる。
反射防止膜として機能する誘電体多層膜の膜構造を設計する場合、要求光学特性を設定し、光学薄膜の計算結果が要求光学特性になるように膜層数を増減させ、あるいは膜厚を増減させる最適化を行う。これにはSimplex法やNeedle法等の多くの最適化手法が用いられている。但し、本発明で適用するALD法による成膜では両面対象構造にしなければならないため、最適化の際、両面のn層目は同じ膜厚になるような制限を設定することが必要になる(カップリングあるいはペアリングと呼ばれる)。更に、誘電体多層膜同士を接合させた状態でも反射防止膜として機能する膜構造を設計する必要がある。
この実施例では、低屈折率層にSiO、高屈折率層にTiOを採用して、反射防止膜として機能する誘電体多層膜の膜構造を設計した。
そして、両面対象構造を有する実施例に係る誘電体多層膜構造体の構成を以下の表1に示す。但し、光学的膜厚(nd)は、屈折率(n)×物理的膜厚(d)、λは設計中心波長1064nm(Nd:YAGレーザの発振波長)である。また、A面は3層、B面も3層の両面対称構造である。
Figure 2009265346
接合するための上記誘電体多層膜構造体における分光透過特性のシミュレーション結果を図1に示す。波長1064nmにおける透過率は約99.9%以上に達している。反射防止膜として機能する誘電体多層膜を有する誘電体多層膜構造体(Nd:YAG結晶とYAG結晶)を2個接合すると、以下の表2に示すような膜構成になる。
Figure 2009265346
2個の誘電体多層膜構造体(光学材料がNd:YAG結晶とYAG結晶)を接合して得られる実施例に係る接合光学部品における分光透過特性のシミュレーション結果を図2に示す。波長1064nmにおける透過率は約99.9%以上を維持している。
この実施例に用いたNd:YAG結晶(光学材料)とYAG結晶は、共に直径1インチ(約25.4mm)、厚さ5mmである。
図4(A)に示すように2個の光学材料(Nd:YAG結晶とYAG結晶)1を基板ホルダー3にそれぞれ水平に固定してALD装置内にセットし、その後、チャンバ(真空容器)を133Pa(1Torr)まで排気し、光学材料1を300℃に加熱した。
そして、表1に示す膜構成に従って、1層目のSiO層の要求膜厚になるまで上述した原子層の堆積サイクルを行い、次いで、2層目のTiO層目の要求膜厚になるまで同様に原子層の堆積サイクルを行い、以下、これ等堆積サイクルを交互に繰り返すことにより片面3層の両面対称構造を有する誘電体多層膜構造体10を製造した。
そして、ALD装置内において、基板ホルダー3を移動させて2個の誘電体多層膜構造体10を図4(B)に示すように接触させ、更に、プレス治具4により図4(C)に示すように上下から約100g/cmの圧力を加えて2個の誘電体多層膜構造体10を接合させ、実施例に係る接合光学部品を製造した。
尚、図5(A)に示すように上側のプレス治具4を上方向へ移動させて圧力を解除し、接合光学部品の光学材料1を室温付近まで冷却し、チャンバ(真空容器)をベント(大気開放)した後、図5(B)に示すように下側のプレス治具4を上方向へ移動させ、接合光学部品を取り出して実施例に係る接合光学部品を得た。

[比較例]
2個の光学材料(Nd:YAG結晶とYGA結晶)を上記ALD装置内にセットし、その後、チャンバ(真空容器)を133Pa(1Torr)まで排気し、光学材料1を300℃に加熱した。
そして、上記表1に示す膜構成に従って、1層目のSiO層の要求膜厚になるまで上述した原子層の堆積サイクルを行い、次いで、2層目のTiO層目の要求膜厚になるまで同様に原子層の堆積サイクルを行い、以下、これ等堆積サイクルを交互に繰り返すことにより片面3層の両面対称構造を有する誘電体多層膜構造体を2個製造した。
次に、得られた2個の誘電体多層膜構造体を接合させることなく室温付近まで冷却し、チャンバ(真空容器)をベント(大気開放)した後、これ等の誘電体多層膜構造体を取り出した。
そして、光学材料(Nd:YAG結晶とYGA結晶)両面に片面3層の両面対称構造を有する誘電体多層膜が形成された2個の誘電体多層膜構造体を、0.1mmの間隔(エアーギャップ)で平行に配置して固定し、比較例に係る光学部品を得た。もちろん、Nd:YAG結晶とYGA結晶は接合されていないので、YAG結晶はヒートシンクとして機能しない。
「評 価」
実施例に係る誘電体多層膜構造体および2個の誘電体多層膜構造体を接合して得られた実施例に係る接合光学部品の各分光透過特性と、0.1mmの間隔(エアーギャップ)で平行に配置し固定した比較例に係る光学部品の分光透過特性をそれぞれ自記分光光度計により測定した。
測定結果を図3にまとめて示す。
そして、接合前の実施例に係る誘電体多層膜構造体および接合後の実施例に係る接合光学部品の各分光透過特性と、0.1mmの間隔(エアーギャップ)で平行に配置し固定した比較例に係る光学部品の分光透過特性は、図3に示すように設計中心波長である波長1064nm付近においてほとんど変わらない特性を示している。
そして、図3に示す接合後の実施例に係る接合光学部品の分光透過特性から、樹脂材料(有機材料)で構成された接着剤を用いることなく、反射防止層として作用する誘電体多層膜を備えた2個の光学材料(Nd:YAG結晶とYAG結晶)を簡単な操作により一つに接合できたことが確認される。
この結果、接合光学部品が高温高湿といった過酷な環境条件に置かれた場合に、接着剤として用いられている樹脂材料(有機材料)が変質するという問題が解消され、更に、レーザ用接合光学部品の場合に、接着剤の僅かな吸収によりダメージを受けるという問題も解消することが可能になった。
この接合光学部品を数mm角にダイシングすることにより、ヒートシンクを持つ小型レーザ素子としてレーザ加工機等に用いることができる。
また、同様な手法で、2つの光学材料の屈折率がほとんど等しいレーザ結晶(YAG)と第二次高調波結晶(KTP)を接合した一体型接合グリーンレーザ素子、CCD撮像素子のモアレを除去するために光線を分離する2枚の水晶板を貼り合わせる接合波長板、ファラデー回転角の温度特性が異なる2枚のファラデー回転子を貼り合わせた温度安定型光アイソレータも製作することができる。
本発明に係る接合光学部品によれば、反射防止層として作用する誘電体多層膜をそれぞれ備えた2個以上の光学材料が接着剤を用いることなく接合されているため、接着剤に起因した従来の問題を解消することが可能となる。従って、レーザプリンタ、バーコードリーダ、カメラ、望遠鏡、顕微鏡等に組み込まれる接合光学部品として用いられる産業上の利用可能性を有している。
実施例に係る接合光学部品の構成部品である誘電体多層膜構造体における分光透過特性のシミュレーション結果を示すグラフ図。 実施例に係る接合光学部品における分光透過特性のシミュレーション結果を示すグラフ図。 実施例に係る誘電体多層膜構造体(実施例の接合前)および2個の誘電体多層膜構造体を接合して得られた実施例に係る接合光学部品(実施例の接合後)の各分光透過特性と、0.1mmの間隔(エアーギャップ)で平行に配置し固定した比較例に係る光学部品の分光透過特性をそれぞれ自記分光光度計により測定した結果を示すグラフ図。 図4(A)〜(C)は本発明に係る接合光学部品の製造工程を示す工程説明図。 図5(A)〜(B)は本発明に係る接合光学部品の製造工程を示す工程説明図。
符号の説明
1 基板
2 誘電体多層膜
3 基板ホルダー
4 プレス治具
10 誘電体多層膜構造体

Claims (4)

  1. 接合される2個以上の光学材料とこれ等光学材料間に設けられ材料間の反射を防止する誘電体多層膜とを具備した特定波長域を透過させる接合光学部品において、
    光学材料とその両面に原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法により成膜された両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜とで構成される2個以上の誘電体多層膜構造体が、その誘電体多層膜を介し直接接合されて成ることを特徴とする接合光学部品。
  2. 請求項1に記載の接合光学部品の製造方法において、
    光学材料の両面に原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法により両面対称構造を有する一対の誘電体多層膜を同時に成膜して2個以上の誘電体多層膜構造体を製造し、得られた2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜を介し直接接合して接合光学部品を製造することを特徴とする接合光学部品の製造方法。
  3. 上記光学材料の材質が、ガラス、セラミック、石英、結晶のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の接合光学部品の製造方法。
  4. ALD装置内において、2個以上の誘電体多層膜構造体をその誘電体多層膜の成膜直後に接合することを特徴とする請求項2または3に記載の接合光学部品の製造方法。
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