JP2009227771A - 有機無機複合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】無機成分を分散させた有機無機複合体を簡単に得る方法を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸ハライド、ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(a)及びジアミン(b)を含有する、有機溶剤溶液(1)と、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)とを、前記有機溶剤溶液(1)を加温することで前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)とを一部反応させた後に混合し、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させ、モノマー(a)とジアミン(b)との反応をさらに進行させると同時に無機成分を析出させる有機無機複合体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタンをマトリクスポリマーとする有機無機複合体の製造方法に関する。
有機ポリマーがもつ加工性、柔軟性等の特性と、無機材料が持つ耐熱性、耐摩耗性等、表面硬度等の特性を付与することを目的として、無機微粒子を有機ポリマー内に分散、複合化することにより有機無機複合体を作り出す検討が広く行われている。
例えば、無機材料固有の特性を生かすような有機無機複合体の設計は、極力小さい粒径の無機微粒子を高い充填率で複合化することで、より高い複合化効果を期待することができる。粒径が小さいほど無機微粒子の重量当たりの表面積が大きくなり、有機ポリマーと無機材料との界面領域が広くなるためである。更に、無機微粒子の充填率が高くなると、無機材料の特性を強く出せることとなる。
ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン等のポリマーをマトリクスポリマーとしナノサイズの無機微粒子を高い充填率で含む有機無機複合体を合成することができる例が開示されている。例えば特許文献1には水にジアミンと珪酸アルカリを溶解させた水溶液を、有機溶媒に溶解させたジカルボン酸ハライドを反応させる方法によるシリカとポリアミドの有機無機複合体の製造方法が記載されている。また特許文献2には、水にジアミンとアルカリ金属含有の複合酸化物類を溶解させた水溶液を、有機溶媒に溶解させたジカルボン酸ハライドやジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物と反応させる方法による金属酸化物とポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン等有機無機複合体の製造方法が記載されている。
これらの方法は皆、ジアミンの水溶液と、ジカルボン酸ハライド等の有機溶液とを界面重縮合法により反応させる方法であり、従って原料であるジアミンは完全に水に溶解させる必要がある。
例えば特許文献2の段落0022には、ジアミンの例としてフェニレンジアミン、ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミンが記載されている。しかしながら芳香族ジアミンは、水に対する溶解度が著しく低い化合物が多いため、前記方法ではポリマー重合に必要なモノマーを十分に合成系内に供給できない上、水中のモノマー濃度が低くなるため反応が思うように進行せず、得られる有機無機複合体の有機成分の分子量が非常に低いという問題があった。複数の芳香環部位を持つジアミンを原料とするポリアミドは高い耐熱性を有しエンジニアリングプラスチックとして需要の高いポリマーであるが、該ポリマーをマトリクスとする有機無機複合体は、前記方法では所望するものを得ることができない。
また、前記方法は、ポリマー原料を水溶液と有機溶液とに分けて存在させ、両溶液を接触させることでポリマー合成と無機析出とを開始する反応である。そのため、ポリマー合成反応速度と無機析出速度とが近い場合には、ポリマー中に無機成分が微粒径で分散されるが、双方の反応速度が異なる場合には、反応速度の速い成分の固体化が進行することで、微粒径での複合化がうまくいかずに、析出する無機が粗大化する問題があった。特に無機析出速度が速すぎる場合、あるいはポリマー合成速度が遅すぎる場合はこの問題が顕著となる。しかしながら前記方法では、これらの反応速度をコントロールするには、使用する無機材料とポリマー原料とを上手く組み合わせる以外に有効な方法がなく、得られる有機無機複合体の組成は限定されるものとなる。
一方、ポリアミドを融点以上で無機粒子をエクストリューダ等で溶融混練する手法も知られている。しかしながらナノサイズの無機粒子を溶融混練する方法は、混練中に2次凝集を生じる上、芳香族ポリアミドの場合には融点が350℃以上と高い構造が多く混練温度が非常に高くなり、溶融混練が困難、且つ仮に溶融混練が可能であっても製造に多量のエネルギーを必要とする問題があった。
特開平10−176106号公報 特開2005−036211号公報
本発明が解決しようとする課題は、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン等のポリマーをマトリクスとし、無機成分を好ましくは100nm以下の粒径で分散させた有機無機複合体を、モノマー原料や無機原料の組み合わせを限定することなく、且つ簡便に得る方法を提供することにある。
本発明者は、ジカルボン酸ハライド等とジアミンとを、各々が未反応または殆ど反応が進まない状態で有機溶媒中に共存させて均一な有機溶剤溶液とし、更に該有機溶剤溶液を加温することで、ジカルボン酸ハライド等とジアミンとの反応をある程度進行させオリゴマー化(予備重合)した後、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物や、珪酸アルカリを含有する水溶液と混合させることで、前記課題を解決できることを見出した。
ジカルボン酸ハライド等とジアミンとを予めオリゴマー化しておくことで、無機析出反応が進行しすぎることを防ぎ、その後両溶液を接触させた後の両反応速度を(見た目)ほぼ一定化させることによりそれぞれの反応終点時間を近づけることが可能となる。またオリゴマー鎖により、無機成分の粗大析出を防ぐことが可能となる。
即ち本発明は、ジカルボン酸ハライド、ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(a)及びジアミン(b)を含有する、有機溶剤溶液(1)と、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)とを、前記有機溶剤溶液(1)を加温することで前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)とを一部反応させた後に混合し、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させ、モノマー(a)とジアミン(b)との反応をさらに進行させると同時に無機成分を析出させる有機無機複合体の製造方法を提供する。
本発明により、芳香族ジアミンを原料とするポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタン等の耐熱性が高いポリマーをマトリクスポリマーとし、該マトリクスポリマー中に無機成分が100nm以下の微小な粒径で分散した有機無機複合体を、簡便に得ることができる。
本発明においては、モノマー原料や無機原料の組み合わせを限定することがないので、様々な組み合わせの有機無機複合体を得ることが可能となる。また、本発明の製造方法は、汎用の攪拌装置を用いて常温常圧下、短時間の1ステップで行うことが可能である。
更に本発明の製法方法は、水に難溶な芳香族ジアミンを原料とする有機無機複合体も簡便に得ることが可能である。
(有機溶剤溶液(1))
本発明で使用する有機溶剤溶液(1)は、ジカルボン酸ハライド、ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(a)とジアミンと有機溶剤とを含有する。
(モノマー(a) ジカルボン酸ハライド)
前記ジカルボン酸ハライドとしては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物、あるいはこれら芳香環の水素をハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基などで置換した芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物や、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等複数の芳香環からなるジカルボン酸の酸ハロゲン化物などが例として挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも芳香族ジカルボン酸のハロゲン化物は、ジアミンとの反応性が脂肪族ジカルボン酸のハロゲン化物よりも低く、ジアミンと共に有機溶媒に溶解させた状態で長時間保持しやすいので特に好ましく用いられる。
(モノマー(a) ジクロロホーメート化合物)
前記ジクロロホーメート化合物としては、1,2−エタンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、1,8−オクタンジオ−ル等の脂肪族ジオ−ル類、1個または2個以上の芳香環に水酸基を2個持つレゾルシン(1,3−ジヒドロキシベンゼン)、ヒドロキノン(1,4−ジヒドロキシベンゼン)、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2’−ビフェノ−ル、ビスフェノ−ルS、ビスフェノ−ルA、テトラメチルビフェノ−ル等の2価フェノ−ル類の水酸基を全てホスゲン化処理によりクロロホーメート化したものを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、芳香環を有する化合物が、ジアミンとの反応性が脂肪族の化合物よりも低く、ジアミンと共に有機溶媒に溶解させた状態で長時間保持しやすいので特に好ましく用いられる。
(モノマー(a) ホスゲン系化合物)
前記ホスゲン系化合物としてはホスゲン、ジホスゲン及びトリホスゲンを挙げることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前記ジカルボン酸ハライドや前記ジクロロホーメート化合物とを組み合わせて用いても良い。
前記モノマー(a)としてジカルボン酸ハロゲン化物を用いた場合は、得られる有機無機複合体のマトリクスポリマーはポリアミドとなる。またジクロロホーメート化合物を用いた場合は、得られる有機無機複合体のマトリクスポリマーはポリウレタンとなる。またホスゲン系化合物を用いた場合は、得られる有機無機複合体のマトリクスポリマーはポリ尿素となる。
(ジアミン(b))
本発明で使用するジアミン(b)は、後述の有機溶剤に一定以上溶解させることができれば特に限定はないが、芳香族ジアミンが本発明の効果を最も発揮できることから好ましい。具体的にはメタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン等の一つの芳香環を有するジアミン、トルイレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4´−チオジアニリン、4,4´−ジアミノベンズアニリド、1,5−ナフチレンジアミン、1,6−ナフチレンジアミン等の芳香環を複数有するジアミン等があげられる。これらの芳香族ジアミンをモノマーとするポリマーは耐熱性が高い等基本特性に優れるものが多く、且つ、水に対する溶解性が低いために前記特許文献に示した方法では所望のポリマーが得られることが困難であるが、本願の方法であれば容易にポリマー化することができる。特に、本発明においては、水に対する20℃での溶解度が5質量%以下であるジアミン(b)でも効率よく反応させることができ好ましい。
また、前記例示したジアミンに限らず、有機溶媒中で前記モノマー(a)と安定に共存できるジアミンであれば使用することが可能である。例えば、含側鎖脂肪族ジアミン、脂環族ジアミンが挙げられる。含側鎖脂肪族ジアミンとしては1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が例示できる。また、脂環族ジアミンとしては1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4´−ジアミノジシクロヘキサンメタン等が例示できる。一方、直鎖脂肪族ジアミンのように反応性の高いジアミンは、有機溶媒中で前記モノマー(a)と安定に共存させることができない場合がある。
本発明で、特に好ましく使用できるジアミン(b)の指標として、ジアミンの第一及び第二の解離段の酸解離定数(pKa)を用いることができる。ジアミンのpKaが高いと溶液中での塩基性が高いため、ジアミン自身が酸除去剤として作用し、前記前記有機溶剤溶液(1)単独でポリマーの合成反応が進行してしまう恐れがある。そのため、ジアミン(b)のpKaは第一、第二の両方の解離段とも7以下、特に好ましくは5以下である。ほぼ全ての全芳香族ジアミンの解離定数はこの範囲内に存在する。
(有機溶剤)
本発明では、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素等のマトリクスポリマーが合成反応に伴い析出することで、同時に析出する無機成分をナノ粒径で保持することにより無機微粒子化を達成している。従って、本発明で使用する有機溶剤は、前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)とを反応させずに溶解させることができると同時に、合成されたポリマーに対する溶解度は低いものが好ましい。一方、ポリアミドやポリウレタンやポリ尿素は構造により有機溶剤に対する溶解性は大きく異なることから、得られるポリマーの溶解性までを加味して適宜選択することが好ましい。また、珪酸アルカリ(c−2)等の脱酸剤としての機能を持つ材料が無い状況でモノマー(a)とジアミン(b)とを一定量反応させる必要があるため、重合反応を阻害しうるプロトン性溶媒以外の溶媒であることが好ましい。なかでも、含窒素の酸受容性の非プロトン性溶媒は予備重合の進行を一定量進行させることが出来るために好ましい。本発明で用いられる有機溶剤の具体的な例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジメチルエ−テル、ジエチルエ−テル、ジブチルエ−テル、アニソ−ル等のエ−テル類、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸アルキル、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、n−メチルピロリドン、N−N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶媒、炭酸プロピレン、ジメチルスルホキシド等を例示することができる。これらは、モノマー(a)とジアミン(b)とを良好に溶解させるために複数を組み合わせて用いても良い。
(モノマー濃度)
有機溶剤溶液(1)中の前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)のモノマー濃度としては、重合反応が十分に進行すれば特に制限されないが、各々のモノマー同士を良好に接触させる観点から、各々0.01〜3モル/Lの濃度範囲、特に0.05〜1モル/Lが好ましい。
(予備重合条件)
前記有機溶剤溶液(1)は、前記モノマー(a)やジアミン(b)を配合するときから冷却しておくことが好ましい。冷却温度は常温以下が好ましく、−30〜15℃程度が好ましい。モノマーの種類、組み合わせによっては、モノマー(a)やジアミン(b)の混合と同時にオリゴマー合成に伴う発熱が生じる場合がある。温度制御を行わない場合一旦発熱により合成系内の温度上昇が生じると反応の制御ができなくなり一気に分子量が上がることもあり得るので、こうした状態を防ぐためにも冷却の実施が好ましい。
前記冷却した有機溶剤溶液(1)をゆっくりと加温して、前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)とを一部反応(以後予備重合反応と称する)させ、オリゴマー化させる。このときの昇温速度は特に限定はないが、あまり急激な加温は反応速度を必要以上に促進させるので、具体的には1〜20℃/分位が好ましい。また、加温(反応温度)は25〜60℃の範囲が好ましい。加温が25℃未満であると重合反応が十分に進行しないのでオリゴマーとならず本発明の効果がでにくくなるおそれがある。一方加温が60℃を超えると、重合反応が進行しすぎてポリマーとなってしまい、以後の無機析出反応において無機成分を微粒化状態で複合化しにくくなるおそれがある。このときの加温保持時間は、30分〜3時間が、予備重合の状態と製造速度とのバランスが取れるために好ましいが、これらの加温温度や加温保持時間は、使用するモノマーの種類や組み合わせにより適宜調整してもよい。
一方、該予備重合反応により発生したハロゲン化水素は、有機溶剤溶液(1)中に蓄積され、更なる重合によるポリマー化を防ぐ効果を有するので、これによってもオリゴマー状態で維持することができる。
また、一般に有機溶剤中での重縮合の脱酸剤として用いる材料をポリマー合成に必要とされる量よりも少量機溶剤溶液(1)中に添加する方法によっても、オリゴマー化が可能である。脱酸剤は添加量に応じて重縮合反応が生じるので、これにより分子を調整することが可能となる。脱酸剤としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性無機化合物や、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等のアミン系化合物があげられる。
脱酸剤の添加量としては、原料とするモノマー種にもよるが、一般に通常のポリマー合成に必要とする量の1〜30%の範囲内適宜調整することが好ましい。また、脱酸剤を、前記加温による予備重合法と併用しても良い。
また、分子量の目安としては、重合度に換算して、繰り返し単位数nの平均値が1〜15程度までオリゴマー化していることが好ましい。
nが1未満であると予備重合反応が不十分であるため、無機粒子を微粒化する効果が不十分となるおそれがある。一方nが15より大きいと、前記有機溶剤(1)中に重合物が析出しやすくなり、以後の無機析出反応において無機粒子を微粒径で分散できなくなるおそれがある。分子量範囲としては使用するモノマーの種類により変化するが、およそ数平均分子量に換算して400〜5000の範囲が好ましい。
(水溶液(2))
本発明における有機無機複合体の無機成分の原料は、無機化合物のアルカリ金属塩である。具体的には、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)(以下金属化合物(c−1)と略す)、又は珪酸アルカリ(c−2)が、入手が容易であり安価であり好ましい。金属化合物(c−1)を原料とした場合はアルカリ金属以外の金属元素を有する金属化合物が析出し、珪酸アルカリ(c−2)を原料とした場合はシリカ(酸化ケイ素)が析出する。(以下、「金属化合物(c−1)又は珪酸アルカリ(c−2)」を略して、「化合物(c)」とする場合がある)
(金属化合物(c−1))
本発明で使用する金属化合物(c−1)は、具体的には、下記一般式(1)で表される。
Figure 2009227771
前記一般式(1)において、Aはアルカリ金属元素を表し、Mはアルカリ金属以外の金属元素を表し、Bは酸素原子、カルボキシ基、またはヒドロキシ基を表す。x、y、及びzは各々独立してA、MとBの結合を可能とする数である。(複合酸化物系の無機材料には不定比化合物(例えばNa1.6Al0.92.8 のような類が多いために、xyzともに整数とも小数とも定義できない。そのため、安定して存在しえる数を指す。)
前記一般式(1)で表される化合物は、水に完全または一部溶解し塩基性を示すものが好ましい。且つ、析出する金属化合物が、水に殆どまたは全く溶解しない化合物であることが好ましい。
前記一般式(1)におけるBが酸素原子である化合物としては、例えば、亜鉛酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、亜クロム酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、スズ酸ナトリウム、タンタル酸ナトリウム、亜テルル酸ナトリウム、チタン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、ジルコン酸ナトリウム等のナトリウム複合酸化物や、亜鉛酸カリウム、アルミン酸カリウム、亜クロム酸カリウム、モリブデン酸カリウム、スズ酸カリウム、マンガン酸カリウム、タンタル酸カリウム、亜テルル酸カリウム、鉄酸カリウム、バナジン酸カリウム、タングステン酸カリウム、金酸カリウム、銀酸カリウム、ジルコン酸カリウム等のカリウム複合酸化物、アルミン酸リチウム、モリブデン酸リチウム、スズ酸リチウム、マンガン酸リチウム、タンタル酸リチウム、チタン酸リチウム、バナジン酸リチウム、タングステン酸リチウム、ジルコン酸リチウム等のリチウム複合酸化物のほかルビジウム複合酸化物が挙げられる。
前記一般式(1)におけるBがカルボキシ基及びヒドロキシ基の両方を含む金属化合物(c−1)としては、例えば、炭酸亜鉛カリウム、炭酸ニッケルカリウム、炭酸ジルコニウムカリウム、炭酸コバルトカリウム、炭酸スズカリウム等が挙げられる。
前記金属化合物(c−1)は、水に溶解させて用いるために水和物であっても良い。また、各々を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
前記金属化合物(c−1)の中でも、特に、アルミン酸アルカリ、スズ酸アルカリ、亜鉛酸アルカリ、炭酸ジルコニウムアルカリが特に好ましく用いられる。これらの金属化合物は、水溶性が高く溶解させた際の塩基性が強いため、前記マトリクスとなるポリマーの縮重合反応を進行させやすい。中でもアルミン酸アルカリは特に水溶性が高い上安価であるため最も好ましく用いられる。
(珪酸アルカリ(c−2))
本発明で使用する珪酸アルカリ(c−2)は、例えば、珪酸ナトリウム(水ガラス)1号、2号、3号、4号が例となるMO・nSiOの組成式で、Mがアルカリ金属、nの平均値が1.8〜4のものが挙げられる。また、nの平均値が1.8以下でありMがナトリウムであるオルト珪酸ナトリウムやメタ珪酸ナトリウム、前記の珪酸ナトリウムのナトリウムが他のアルカリ金属に変更された、珪酸リチウム、珪酸カリウム、珪酸ルビジウム等も用いることができる。
(水溶液(2)の溶媒)
前記化合物(c)は、水に溶解させ水溶液(2)として使用する。また、前記有機溶剤溶液との反応を相溶した状態で行う場合には、アセトンやテトラヒドロフラン、N―メチルピロリドン等の極性有機溶剤を水溶液(2)の30質量%程度を上限にして混合し、溶解度を調節してもよい。極性有機溶媒の添加は水溶液(2)の凝固防止にも効果がある。また、水溶液(2)には有機ポリマーの合成を促進するために、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ等の塩基性物質を溶解させてもよい。また、有機溶剤溶液(1)との混合性を高めるために界面活性剤等の添加剤を含有していても良い。さらに、水に膨潤、分散時にアルカリ性を呈する粘土鉱物(アルカリ含有粘土等)を一部混合することで、ポリマー合成の促進と粘土成分の複合化とを行っても差し支えない。
複数の無機成分(なお、本発明において「無機成分」とは、本発明の有機無機複合体の製造方法によって析出したアルカリ金属を含まない無機化合物を指す。また前記化合物(c)を原料として得た無機成分は「無機成分(c)」とする。)を有機無機複合体に含有させたい場合には、前記金属化合物(c−1)、又は前記珪酸アルカリ(c−2)を併用しても良い。ただし該組み合わせによっては、水溶液(2)中で無機成分(c)がゲル化したり析出したりする場合があり無機成分(c)を微粒子状態で複合化できなくなる場合があるので特にその組み合わせには注意を要する。
(無機化合物その他の成分 金属化合物(c−3))
前記水溶液(2)に、塩基性水溶液に溶解し且つ中性溶液では析出する金属化合物(c−3)を添加することにより、有機無機複合体の無機成分を多様化して更なる機能を付与できる方法がある。この方法は、前記ポリマーの合成反応に伴い、水溶液のpHが塩基性から中性に変化することを利用する。即ち、ポリマー生成反応初期では水溶液が塩基性であるために、析出する無機成分は前記無機成分(c)のみであり金属化合物(c−3)は溶解状態のままであるが、有機無機複合化反応が進み水溶液が中性に近づくと、金属化合物(c−3)は析出する。このように金属化合物(c−3)は前記化合物(c)とは異なり、そのままの組成で複合化される。従って得られる有機無機複合体は、ポリマーマトリックス中に無機成分(c)が均一に分散し、その最外表面の無機主成分上に金属化合物(c−3)が担持的に存在する構造を有する。
本発明で使用する金属化合物(c−3)の塩基性溶液への溶解量は、pH13の常温下の塩基性溶液に100mg/L以上が目安となる。
この量よりも溶解量が小さいと、金属化合物が持つ機能を十分に発揮させうる量を該複合体上に微粒子状に担持することができない。
また、本発明に用いる金属化合物(c−3)の中性溶液への溶解量は、pH6〜8の常温下の中性水溶液に30mg/L以下が目安となる。この量よりも溶解量が大きい場合には、該複合体の合成後のろ過や水洗の工程で金属化合物が流出し、担持効率が低くなり、目的とする担持量が得られにくくなる場合がある。
本発明で使用する金属化合物(c−3)の金属種は、上記の溶解特性を示す化合物を有するものであればいずれの金属も用いることができる。リチウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、モリブデン、タングステン、パラジウム、ルテニウムなどの遷移金属、アルミニウム、亜鉛、インジウム、スズ、鉛、アンチモン等の典型金属を例示することができる。中でも、周期表第3〜第12族の遷移金属元素又は周期表第13〜16族の典型金属元素の物が好ましく使用される。また、金属元素が2種以上含まれる複合化合物を用いることもできる。また、化合物種としては上記溶解特性を満たすものであれば酸化物、ハロゲン化物、水酸化物や、各種金属のシュウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等を制限なく用いることができる。そのため、本発明では極めて多種多様の金属酸化物を容易に担持することができる。
本発明で使用する金属化合物(c−3)として、好適に用いられる金属化合物を例示すると、リン酸リチウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属化合物、酸化タングステン(VI)、酸化バナジウム(V)、酸化コバルト(II) 、水酸化コバルト(II) 、シュウ酸コバルト(II)、酸化ニオブ(II)、水酸化鉄(II)、酸化ニオブ(V)、酸化モリブデン(VI)、水酸化マンガン(II)、酸化金(III)、水酸化金(III)、ヨウ素酸銀(I)、炭酸銀(I)、酸化銀(I)、硫化銀(I)、酸化銅(I)、水酸化銅(II)、塩基性炭酸銅(II)、酸化銅(II)、リン酸銅(II)、シュウ酸銅(II)、酸化レニウム(VI)、水酸化パラジウム(II)、水酸化ルテニウム(IV)等の遷移金属化合物、酸化スズ(II)、水酸化スズ(II)、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化インジウム(III)、シュウ酸ニッケル(II)、酸化亜鉛(II)、水酸化亜鉛(II)、シュウ酸亜鉛(II)、酸化アンチモン(III)、酸化ガリウム(III)、酸化鉛(II) 、酸化鉛(IV)、リン酸鉛(II)、 水酸化鉛(II)等の典型金属化合物が挙げられる。これら金属化合物は水に溶解させて用いるため、水和物であっても良い。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
(製造方法)
本発明の有機無機複合体の製造方法は、前述のモノマー(a)及びジアミン(b)を含有し、その一部を予備重合させた有機溶剤溶液(1)と、前述の化合物(c)を含有する水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させることでモノマー(a)とジアミン(b)とを反応させると同時に無機成分を析出させることが特徴である。これにより、モノマー(a)とジアミン(b)とのポリマー重合反応速度と、無機成分の析出速度を見かけ上ほぼ一定化させることによりそれぞれの反応終点時間を近づけることが可能となり、両成分がよく分散しあい、無機粒径がより小さい有機無機複合体を合成することができる。
本発明の製造方法は、特に、反応性の低いポリマー種と無機析出反応の速い無機原料との組み合わせた有機無機複合体を得る場合等に効果的である。
反応性の低いポリマー種としては、例えば、全芳香族ジカルボン酸ハライド、全芳香族ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物等があげられる。また、析出反応の速い無機原料としては、酸化スズや酸化ジルコニウム等のゾルゲル反応速度が速い材料があげられる。
金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)に含まれるアルカリ金属化合物により、前記モノマー(a)とジアミン(b)との間の脱酸(脱ハロゲン化水素)を伴う重縮合反応が促進され、ポリアミド、ポリウレタンやポリ尿素のポリマーが生じる。
一方、ポリマーの重縮合により発生したハロゲン化水素は(前述の、前記モノマー(a)とジアミン(b)との予備重合により発生したハロゲン化水素も含め)、無機原料中のアルカリ金属化合物と反応し、NaCl等のハロゲン化アルカリが発生する。こうして、ハロゲン化水素が合成系内に蓄積することなく、重合反応は次々と進行し有機成分はポリマー化することができる。一方、発生したハロゲン化アルカリは合成系中の水や洗浄工程での水に溶解することで、合成系外に排出される。
(無機成分の析出反応)
一方、アルカリ金属が抜けた前記金属化合物(c−1)や前記珪酸アルカリ(c−2)は水や有機溶剤に対する溶解性が著しく低下するので、無機成分として析出する。例えば珪酸ナトリウムを使用した場合では、前記脱酸反応時に、−Si−ONaがシラノール基(−Si−OH)となる。生成したシラノール基が複数会合して脱水重縮合反応を生じて(−Si−O−Si−)の結合が生成する。このゾルゲル反応によりシリカが固体化して析出する。金属化合物(c−1)としてスズ酸ナトリウムを使用した場合は、酸化スズが、アルミン酸ナトリウムを使用した場合は酸化アルミニウムが生成する。
前記ポリマーの合成反応と無機化合物の析出反応は、それぞれの反応がもう一方の反応を促進する作用を持つ。従って、どちらか一方の反応のみが一方的に生じることはなくほぼ同時に進行するものと考えられる。ポリマーが合成しながら同時に無機化合物を析出させるので、該ポリマー中に微細な無機化合物を均一に分散させた複合体を、簡易な合成操作で得ることができる。
(有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)の共存方法)
前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させるには、有機溶剤溶液(1)と水溶液(2)とが接触する環境があれば特に限定はなく、通常は、攪拌翼を有する1つの反応釜に前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを同時に仕込めばよい。反応温度は有機溶剤溶液(1)の加温後温度付近が好ましく具体的には25℃〜60℃の範囲が望ましい。また、加圧や減圧は特に必要としない。有機無機複合体の合成反応は、用いるモノマー種や反応装置、スケールにもよるが、通常60分以下の短時間で完結する。
(製造装置)
本発明で用いる製造装置としては、有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを良好に接触反応させることができる製造装置であればとくに限定されず連続式、バッチ式のいずれの方式でも可能であるが、接触反応時間を調整でき、温度制御も容易である観点からはバッチ式がより好ましい。連続式の具体的な装置としては大平洋機工株式会社製「ファインフローミルFM−15型」、同社製「スパイラルピンミキサSPM−15型」、あるいは、インダク・マシネンバウ・ゲーエムベー(INDAG Machinenbaugmb)社製「ダイナミックミキサDLM/S215型」などが挙げられる。また、バッチ式の場合は有機溶液と水溶液の接触を良好に行わせる必要があるので、アンカー翼やマックスブレンド翼やファウドラ−翼等の攪拌力が強い攪拌装置を用いるのが好ましい。
(有機無機複合体の無機成分)
本発明の製造方法により得られる有機無機複合体の無機成分は、使用する金属化合物(c−1)や珪酸アルカリ(c−2)により得られる形状、性質が異なるので、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、金属化合物(c−1)を用いた場合には、無機成分は、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムの金属酸化物類が得られ、該金属酸化物の原料であるアルミン酸アルカリ、スズ酸アルカリ、亜鉛酸アルカリ、炭酸ジルコニウムアルカリは安価である。また珪酸アルカリ(c−2)を使用した場合には無機成分としてシリカが得られ、無機粒径の小さい有機無機複合体が得られる。また本発明の製造方法は、得られる無機成分の粒径が小さいことも特徴の1つであり、平均粒径が100nm以下の有機無機複合体を得ることができる。
(有機無機複合体全量100質量%に対する無機主成分の含有率)
本発明で得られる有機無機複合体の、金属化合物(c−1)あるいは珪酸アルカリ(c−2)に由来する無機主成分は、無機材料が持つ耐熱性、耐摩耗性等、表面硬度、放熱特性等の特性を付与する。更に金属化合物(c−3)を併用する場合には、該金属化合物(c−3)を担持する役割も有する。
従って、該無機主成分の有機無機複合体全量100質量%に対する含有率は一定以上であることが好ましく、好ましくは10〜80質量%であり、更に好ましくは20〜70質量%であり、最も好ましくは30〜60質量%である。該含有率が多くなりすぎると、シ−ト化や積層板等への加工性、あるいは他の樹脂への混練性が損なわれる場合がある。
一方、前記金属化合物(c−1)や珪酸アルカリ(c−2)と、前記金属化合物(c−3)を併用する場合、前記金属化合物(c−3)は合成の反応機構より、得られる有機無機複合体の最外表面の無機主成分上に担持的に存在する。従って前記金属化合物(c−3)量は前記無機主成分よりも少ない量が現実的である。具体的には、有機無機複合体全量100質量%に対して最大量15質量%程度担持されているのが好ましい。金属化合物(c−3)はナノサイズで担持されている結果がでているため担持効果が高く、用途によっては0.01質量%以上担持すれば機能する。特に好ましい範囲は0.1質量%〜10質量%である。金属化合物(c−3)の担持量は前記水溶液(2)への溶解量が支配する。例えば担持量を増やしたい場合には、使用する金属化合物(c−3)として水への溶解度の高い金属を選択し、多量に水溶液(2)中に溶解させて有機無機複合体の合成を行えばよい。
以下に具体例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜7に、無機成分1成分系を含有する有機無機複合体の製造法を示す。
(実施例1)
(ポリアミド/酸化アルミニウム複合体の合成法−1)
N−N−ジメチルアセトアミド19gを有機溶剤として、本有機溶剤にモノマー(a)のジカルボン酸ハライドとしてテレフタル酸クロライド2.84gを50cmの三口フラスコにいれ窒素気流下室温でアンカー翼により攪拌し溶解したのち、フラスコ外周を氷水により0℃に冷却した。次に、0℃に予め冷却したN−N−ジメチルアセトアミド19gにジアミン(b)として4,4―チオジアニリン3.133gを溶解した有機溶剤を前記の三口フラスコに添加した。有機溶媒溶液(1−1)はジカルボン酸ハライドとジアミンとを同時に溶解させたが析出物等のポリマー化を示す現象は見られなかった。
前記有機溶媒溶液(1−1)を攪拌しつつ30℃まで2℃/分の昇温速度で加温を行いこの温度状態を保持したまま150rpmの回転速度で1時間攪拌をおこなったが、合成反応物と見られる析出物は発生しなかった。この状態で0.1gの液をサンプリングして、後述の(測定1)の方法で分子量分布を測定したところ、有機溶剤溶液(1−1)は分子量約1500にピークを持つオリゴマー(繰り返し単位換算でn=約4)となっていることが解った。次に、イオン交換水35gに金属化合物(c−1)として浅田化学工業(株)製粉末アルミン酸ナトリウムP−100の2.504gを入れ常温下で10分間攪拌することにより透明淡黄色の水溶液(2−1)を得た。
この水溶液(2−1)を10秒間かけて前記三口フラスコ中に滴下した。水溶液(2−1)の滴下に伴い淡黄色析出物が徐々に析出した。水溶液の滴下が終了した時点で攪拌回転数を200rpmに上げ、温度制御を維持した状態で30分間攪拌を継続することで粉末状複合体を含有するスラリーを得た。
(複合体の洗浄処理)
このスラリーを95mmφのヌッチェ上に目開き4μmの濾紙を設置し0.015MPaで減圧濾過することによりペースト状の含液有機無機複合体を得た。この粉体をメタノール200g中に分散させ常温下で30分間攪拌することによりメタノール洗浄を行いその分散液を、上記と同様な方法で濾過することで含メタノール有機無機複合体を得た。これを引き続き蒸留水250g中に分散させ常温下で30分間攪拌することにより水洗浄を行いその分散液を、上記と同様な方法で濾過することで含水有機無機複合体を得た。これを150℃で5時間熱風乾燥することにより、乾燥有機無機複合体を得た。
(実施例2)
(ポリアミド/酸化アルミニウム複合体の合成法−2)
N−メチルピロリドン19gを有機溶媒として本有機溶剤にモノマー(a)としてテレフタル酸クロライド2.84gを50cmの三口フラスコにいれ窒素気流下室温で攪拌し溶解したのち、フラスコ外周を氷水により0℃に冷却した。次に、0℃に予め冷却してN−メチルピロリドン19gにジアミン(b)としてパラフェニレンジアミン1.514gを溶解した有機溶剤を前記三口フラスコに添加して攪拌を続け有機溶媒溶液(1−2)を得た。有機溶媒溶液(1−2)はジカルボン酸ハライドとジアミンとを同時に溶解させているがこの組み合わせに於いても析出物等の発生は見られなかった。
この有機溶媒溶液(1−2)を攪拌しつつ30℃まで2℃/分の昇温速度で加温を行いこの温度状態を保持したまま150rpmの回転速度で1時間攪拌(予備反応)をおこなったが、合成反応物と見られる析出物は発生しなかった。
次に、実施例1と同様な水溶液(2−2)を用い、同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例3)
(ポリアミド/酸化ジルコニウム複合体の合成法)
水溶液(2−3)としてイオン交換水30gに金属化合物(c−1)として日本軽金属(株)製炭酸ジルコニウムカリウム水溶液「ジルメル1000」の9.189gを入れ常温下で10分間攪拌することにより得た無色透明の水溶液を用いた以外は実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例4)
(ポリアミド/シリカ複合体の合成法)
水溶液(2−4)としてイオン交換水30gに珪酸アルカリ(c−2)として水ガラス(珪酸ナトリウム)3号9.737gを入れ常温下で10分間攪拌することにより得た無色透明の水溶液を用いた以外は実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例5)
(ポリアミド/酸化スズ複合体の合成法)
水溶液(2−5)としてイオン交換水40gに金属化合物(c−1)としてスズ酸ナトリウム・3水和物(NaSnO・3HO)3.450gを入れ常温下で10分間攪拌することにより得た無色透明の水溶液を用いた以外は実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例6)
(ポリ尿素/酸化アルミニウムの合成法)
トルエン19gを有機溶剤として、本有機溶剤にモノマー(a)としてホスゲン系化合物であるトリホスゲン1.435gを50cmの三口フラスコにいれ窒素気流下で冷却水を用いて15℃に冷却しつつ攪拌し溶解した。次に、4,4−ジアミノジフェニルメタン3.104gをトルエンに溶解した有機溶剤を15℃に冷却した後三口フラスコに添加して攪拌を続け有機溶媒溶液(1−6)を得た。有機溶媒溶液(1−6)はホスゲン系化合物とジアミンとを同時に溶解させているが析出物等の発生は見られなかった。次にこの有機溶媒溶液(1−6)を攪拌しつつ55℃まで2℃/分の昇温速度で加温を行いこの温度状態を保持したまま150rpmの回転速度で1時間攪拌(予備反応)をおこなったが、合成反応物と見られる析出物は発生しなかった。次に、実施例1と同様な水溶液(2−6)を用い、同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例7)
(ポリウレタン/シリカ複合体の合成法)
アセトン18gを有機溶剤として、本有機溶剤にモノマー(a)としてクロロホーメート化合物である、2,2−ビス(4−クロロホーメロキシルフェニル)プロパン4.943gを50cmの三口フラスコにいれ窒素気流下室温で攪拌し溶解したのち、フラスコ外周を冷却水により15℃に冷却した。次に、パラフェニレンジアミン1.514gをアセトン18gに溶解した有機溶剤を15℃に冷却した後、三口フラスコに添加して攪拌を続け有機溶媒溶液(1−7)を得た。有機溶媒溶液(1−7)はクロロホーメート化合物とジアミンとを同時に溶解させているが析出物等の発生は見られなかった。次にこの有機溶媒溶液(1−7)を攪拌しつつ45℃まで2℃/分の昇温速度で加温を行いこの温度状態を保持したまま150rpmの回転速度で1時間攪拌(予備反応)をおこなったが、合成反応物と見られる析出物は発生しなかった。次に、イオン交換水30gに珪酸ナトリウム(c−2)として水ガラス1号5.138gを入れ常温下で10分間攪拌することにより均一な水溶液(2−7)を得た。三口フラスコ中の有機溶媒溶液(1−1)を攪拌翼用いて150rpmで攪拌しつつ、水溶液(2−7)を10秒間で滴下した。水溶液(2−7)の滴下に伴い析出物が徐々に析出した。水溶液の滴下が終了した時点で攪拌回転数を200rpに上げこの状態で30分間攪拌を継続することで淡黄色の粉末状複合体を含有するスラリーを得た。この後、実施例1と同様な洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
実施例8〜9に、無機成分2成分を含有する有機無機複合体の製造法を示す。
(実施例8)
(ポリアミド/酸化アルミニウム/水酸化亜鉛複合体の合成法:実施例1への無機第2成分の担持)
実施例1で用いたのと同一の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−8)を調整した。実施例1と同様な昇温速度で加温し30℃下での攪拌操作を1時間行うことで有機溶剤溶液(1−8)中モノマーの予備重合反応を行った。次に、イオン交換水35gに金属化合物(c−1)として浅田化学工業(株)製粉末アルミン酸ナトリウムP−100の2.504gを入れ常温下で10分間攪拌することにより得た透明淡黄色の水溶液に、金属化合物(c−3)として水酸化亜鉛0.126gを入れ室温で20分間攪拌することで均一透明な水溶液(2−8)とした。これらを用いた以外は実施例1と同様な合成操作により有機無機複合体スラリーを得た。本実施例に関しては得られた複合体スラリーを濾別した際に発生した濾過液を回収し150℃、5時間熱風乾燥を行い、残留した粉末を後述の蛍光X線測定に供した。これ以外は実施例1と同様な、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例9)
(ポリアミド/シリカ/酸化タングステン複合体の合成法:実施例4への無機第2成分の担持)
実施例1で用いたのと同一の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−9)を調整した後、実施例1と同様な加熱による予備重合を行った。次にイオン交換水30gに珪酸アルカリ(c−9)として水ガラス(珪酸ナトリウム)3号を9.737gを入れ常温下で10分間攪拌することにより得た無色透明の水溶液を60℃に加温し金属化合物(c−3)として酸化タングステン0.126gを入れ室温で20分間攪拌することで均一透明な水溶液を得た。これを0℃にまで冷却し、水溶液(2−9)とした。これらを用いた以外は実施例9と同様な合成操作、濾液回収、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(比較例1:溶融混練法による有機無機複合体の作製、実施例2の比較に相当)
樹脂溶融混練装置である、ラボプラストミルCタイプ、KF−15ミキサー((株)東洋精機製作所社製)を用いて以下の条件で溶融混練法により全芳香族ポリアミド粉末と酸化アルミニウム(アルミナ)微粒子とを混練する試験を行った。本比較例は実施例2の比較試験に相当する組成である。
加熱温度350℃(ミキサー使用可能最高温度)に加熱した混練室にミキサー回転数10rpmで混練刃を回転させつつ、混合試験物:ケブラー(芳香族ポリアミド)樹脂粉末8.0g、ナノアルミナ微粒子(シーアイ化成製、平均粒径31nm)2.0gをドライブレンドし導入したが、ケブラーの融点が加熱温度よりも遥かに高い500℃以上であるため、樹脂が溶融せず溶融混練操作自体が不可能であった。また、ケブラーの熱分解点は450℃と融点より低いため仮により高温で混練できる装置があったとしても、溶融混練操作で本ポリマー成分を持つ有機無機複合体を作製することは不可能であると結論づけた。
(参考例1:実施例1対応実験)
(加熱予備重合を行わない ポリアミド/酸化アルミニウム複合体の合成法)
実施例1と同様な組成の有機溶剤溶液である0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S1)を得て、ただちに0.1gの液をサンプリングし、後述(測定1)の方法で分子量分布を測定に供した。次に、予め準備した実施例1と同一の組成の水溶液を0℃に冷却した水溶液(2−S1)を用い、これらの原料溶液を用いた以外は実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。尚、有機溶剤溶液(1−S1)中には、分子量分布測定の結果分子量300以上の材料は検出されず、オリゴマー化反応は進行していないことが判った。
(参考例2:実施例2対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリアミド/酸化アルミニウム複合体の合成法)
実施例2と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S2)を得た後、参考例1と同様に加温処理を行わなかった。次に、予め準備した実施例2と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S2)を用い、これらの原料溶液を用いた以外は実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(参考例3:実施例3対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリアミド/酸化ジルコニウム複合体の合成法)
実施例3と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S3)を得た。これと、予め準備した実施例3と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S3)とを用い実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(参考例4:実施例4対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリアミド/シリカ複合体の合成法)
実施例4と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S4)を得た。これと、予め準備した実施例4と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S4)とを用い実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(実施例5:実施例5対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリアミド/酸化スズ複合体の合成法)
実施例5と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S5)を得た。これと、予め準備した実施例5と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S5)とを用い実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(参考例6:実施例6対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリ尿素/酸化アルミニウムの合成法)
実施例6と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S6)を得た。これと、予め準備した実施例6と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S6)とを用い実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(参考例7:実施例7対応実験)
(加熱予備重合を行わないポリウレタン/シリカ複合体の合成法)
実施例7と同様の組成の0℃冷却した有機溶剤溶液(1−S7)を得た。これと、予め準備した実施例7と同一の組成の水溶液を得た後0℃に冷却した水溶液(2−S7)とを用い実施例1と同様な合成操作、洗浄処理、乾燥処理を行うことで有機無機複合体を得た。
(測定1)有機溶剤溶液(1)中材料の分子量測定
実施例1及び比較例1で水溶液(2)を混合する直前に採取した0.1gの有機溶剤溶液(1)をN−N−ジメチルアセトアミド30gで希釈した。これを分子量分布測定装置(GPC)である日本ウオーターズTYPE2487及び2414検出器にN−N−ジメチルアセトアミドを溶媒として導入することによりポリスチレン換算分子量分布の測定を行った。
次に、上記各実施例、参考例で得られた有機無機複合体について以下の項目の測定、試験を行なった。尚、各比較例については評価に供することが出来る試料は得られなかった。
(測定2)無機化合物の含有率の測定法
有機無機複合体を絶乾後に精秤(複合体質量)し、これを空気中、600℃で2時間焼成しポリマー成分を完全に焼失させ、焼成後の質量を測定し灰分質量とした。下式により灰分含有率を算出した。
Figure 2009227771
この時、金属化合物(c−3)は後述の濾液中の金属化合物(c−3)由来の金属化合物の分析により収率がほぼ100%であることより複合体中の存在量は金属化合物(c−3)の量より既知である。従って、
Figure 2009227771
が成り立つ。
(測定3)無機成分の検証
(蛍光X線での測定)
有機無機複合体粉末約1gを開口部が直径10mmの測定用ホルダ−にセットし測定用試料とした。該試料を理化学電気工業株式会社製蛍光X線分析装置「ZSX100e」を用いて全元素分析を行った。得られた全元素分析の結果を用い、測定用試料の試料データ(与えたデータは、試料形状;フィルム、補正成分;セルロース、実測した試料の面積当たりの質量値)を装置に与えることにより、FP法(Fundamental Parameter法;試料の均一性、表面平滑性を仮定し装置内の定数を用いて補正を行い成分の定量を行う方法)にて該複合体中の元素存在割合を算出した。
いずれの実施例で得られた有機無機複合体も、金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)に由来する無機元素(アルミン酸ナトリウムの場合はアルミニウム、炭酸ジルコニウムカリウムの場合はジルコニウム、スズ酸ナトリウムの場合はスズ、珪酸ナトリウム(水ガラス)の場合はケイ素)が検出され、目的とする無機化合物の複合化がされていることが示された。また、実施例8、9では金属化合物(c−3)由来の金属(Zn、W)も検出された。いずれの実施例で得られた試料でも、本方法で得られた金属化合物(c−3)の量は、0.1質量%の誤差範囲内で水溶液(2)への金属化合物(c−3)の仕込み量から算出した予測値と一致した。
一方、無機原料である金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)に由来するアルカリ金属元素(珪酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、スズ酸ナトリウムの場合はナトリウム、炭酸ジルコニウムカリウムの場合はカリウム)は、痕跡程度しか検出されなかった。従って、(測定2)の無機化合物微粒子の測定方法で得られた灰分(すなわち無機物質)はアルカリ金属を実質的に含有しておらず、本発明では金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)からのアルカリ金属除去及び固体化反応が予測された反応機構の通り行われていることが明らかとなった。
加えて、実施例8、9の濾過液の乾燥物からは、反応副生成物であるNaClのほかはFe等の不純物元素のみが検出され、金属化合物(c−3)に相当する金属元素は検出されなかった。このことから、金属化合物(c−3)は本複合体の合成操作により、複合体上に担持したことが明らかとなった。
(測定4)ポリマー成分の検証
(フ−リエ変換型赤外分光分析:FT−IRの測定)
得られた有機無機複合体の粉末をKBr粉末と混合粉砕した試料を作製しKBrディスク法により、FT−IR(日本分光(株)製FT/IR−550)による測定を行った。
いずれの実施例でも、目標とするポリマーに相当する吸収ピーク(例えばポリアミドでは1800cm−1付近のC=O伸縮振動、1540cm−1付近のN−H伸縮に相当するピーク)が明確に現れ、有機成分の合成が良好に行われていることが確認できた。
(透過型電子顕微鏡(TEM)観察および元素マッピング)
有機無機複合体を170℃、20MPa/cmの条件で2時間熱プレスを行い、厚さ約1mmの有機無機複合体からなる薄片を得た。これを収束イオンビーム装置を用いて厚さ75nmの超薄切片とした。得られた切片をTEM観察と同時にEDS元素分析による元素マッピングが可能なエネルギーフィルターTEMである「JEM−2010EFE」(日本電子株式会社製)を用いて、各々50万倍のTEM写真をベースにして元素マッピングを行った。マッピングにより示された元素種類より実施例1〜8については無機主成分の確認を行った。また、実施例9、10では無機主成分と金属化合物(c−3)とを判別した。本元素マッピングにより後述(測定4)の無機主成分の測定、金属化合物(c−3)の粒径測定及び、後述(測定5)の金属化合物(c−3)の無機主成分への担持状態の観察を行った。
(測定5)無機主成分の粒径測定
無機主成分、又は金属化合物(c−3)の粒径は、TEM写真より100個の粒径を測定し、その平均値を平均粒径とした。尚、粒子形状により粒径の測定方法を下記の通りに行った。
粒子が略球状の場合:任意の1辺の長さをその粒子の粒径とした。無機主成分が酸化ジルコニウム、酸化スズ、シリカの場合と、実施例8、9の金属化合物(c−3)は、この方法により測定した。
粒子が2以上のアスペクト比を持つ粒子の場合:粒子の長軸と短軸の長さをそれぞれ測定し、(長軸+短軸)/2の数値をその粒子の粒径とした。無機主成分が酸化アルミニウムの場合は、この方法で測定した。
(測定6)金属化合物(c−3)の表面での凝集物の有無の確認
各実施例及び、比較例での有機無機複合体粒子に炭素を10nmの厚さで蒸着して得た試料を、日立社製電解放射型走査電子顕微鏡「SEM−EDX」を用いて金属化合物(c−3)を対象とした元素マッピングを行い、担持させた金属の分散状態を測定した。なお、本測定法での金属の大きさの分解能は1μmである。1μm以上の粗大な粒子が生じていた場合は凝集物有り、なければ凝集物無しとした。
以下、表1に実施例1〜7の結果を、表2に実施例8〜9の、表3には参考例1〜7の上記の測定結果をまとめた。
Figure 2009227771
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本発明では、25℃以下の温度でジアミンとモノマー(a)を反応が殆ど生じない状態で有機溶媒中に共存させた後、重合反応が一定量のみ進行するように保持しオリゴマー化した後、これらの重合反応を水に溶解させたアルカリ金属を含有する無機原料を添加することにより促進することで、ボトムアップ型に有機無機複合体を合成することができた。また、得られた有機無機複合体は表1に示した通り、(即ち、実施例1〜8で得た有機無機複合体)ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタンに無機化合物が80nm以下のサイズかつ、20質量%以上の高い含有率で分散していた上、無機成分原料由来のアルカリ金属は殆ど検出されなかった。
有機溶剤溶液(1)の加熱による予備重合の効果は、表3に示した各参考例での粒径との比較で明確化できる。いずれの実施例でも参考例に比して無機粒径が小さくすることができた。特に、参考例にて粒径が100nmを超えた無機成分(ZrO、SnO)の場合に本予備重合の効果が高かった。ZrO、SnOともSiOに比べ無機析出反応が早いことが知られており、これらの一方的な凝集を妨げることができたために本発明では微粒化を達成できたと考えられる。また、予備重合の有無による無機含有率の差は殆ど見られなかった。
本発明で得られた有機無機複合体はプレス成形等の処理で加工が可能であり、各種構造材料として使用することができる。また、得られた有機無機複合体を他の樹脂に溶融混練、添加することにより、該樹脂に対して本複合体中の無機主成分による強度、弾性率、耐衝撃性、電子伝導性、帯電防止特性等の性質を付与することができる。この時、無機粒径が極めて小さいため高い添加効果が期待できる。加えて、無機第二成分である金属化合物(c−3)による触媒特性、抗菌防カビ特性等の少量でも有効に作用しうる機能を同時に付与することもできる。

Claims (4)

  1. ジカルボン酸ハライド、ジクロロホーメート化合物、ホスゲン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(a)及びジアミン(b)を含有する、有機溶剤溶液(1)と、
    金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ金属を含む2つ以上の金属元素を有する金属化合物(c−1)、珪酸アルカリ(c−2)を含有する水溶液(2)とを、
    前記有機溶剤溶液(1)を加温することで前記モノマー(a)と前記ジアミン(b)とを一部反応させた後に混合し、前記有機溶剤溶液(1)と前記水溶液(2)とを、少なくとも一部が相溶した状態に保ち又は分離した状態で共存させ、モノマー(a)とジアミン(b)との反応をさらに進行させると同時に無機成分を析出させることを特徴とする有機無機複合体の製造方法。
  2. 前記有機溶剤溶液(1)の加温前の温度が−30℃〜15℃の範囲であり、且つ、加温後の温度が25℃〜60℃の範囲である請求項1に記載の有機無機複合体の製造方法。
  3. 前記ジアミン(b)が芳香族ジアミンである請求項1又は2に記載の有機無機複合体の製造方法。
  4. 前記水溶液(2)の中に塩基性水溶液に溶解し且つ中性溶液では析出する金属化合物(c−3)を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の有機無機複合体の製造方法。
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