JP2009194308A - 熱拡散性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】面内方向に極めて熱伝導率が高く、面内方向への熱拡散性、熱輸送性に優れた熱拡散性シートを簡易かつ高生産性のプロセスで実現する。
【解決手段】マトリクス材料(a)100体積部および、メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径5〜20μm、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%、平均アスペクト比が2〜10000であって、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察においてグラフェンシートが閉じている黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)10〜300体積部とからなり、層の面内の少なくとも一つの方向における面内方向熱伝導率が20W/(m・K)以上であり、面内方向熱伝導率と層厚との積が1000W・μm/(m・K)以上となる層厚を有する熱拡散層を、少なくとも構成要素の一つとして含む事を特徴とする熱拡散性シート。
【選択図】なし

Description

本発明の熱拡散性シートは、特に面内方向に高効率な熱拡散、熱輸送が可能なシート材料に関する。
熱拡散性シートは、温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が出るCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード、各種電池(リチウムイオン電池などの各種2次電池、各種燃料電池、キャパシタ、アモルファスシリコン、結晶シリコン、化合物半導体、湿式太陽電池等の各種太陽電池など)等の各種の電気デバイス周りや、熱の有効利用が求められる暖房機器の熱源周り、熱交換器や床暖房装置の熱配管周りなどにおいて、好適に用いられる。このような電気デバイス周りの放熱技術としては、例えば以下のようなものがこれまでに開示されている(特許文献1〜4)。
しかしながら特許文献1〜3に開示されるヒートシンク、ヒートパイプをデバイスに接触させて放熱性を高める手法では、ヒートシンク、ヒートパイプの体積が一般に大きい為、放熱システムに大きな体積を必要とし、実装密度を高めにくい問題があった。また特許文献4に開示される手法では、基板の厚み方向に貫通した高熱伝導性の層を設ける手法を取るため構成や製造技術が複雑になる等の問題があった。
また熱伝導性に優れたシートに関しては、例えば特許文献5〜6のようなものがこれまでに開示されているが、特許文献5および6に開示される手法は、シート面内方向への熱伝導性を高める技術の提案であるが、マトリックス樹脂がシリコーン系のものであり、さらに十分な熱伝導性能を有する熱拡散性シートを、より簡便な工程で得ることが求められている。
特開2003−273300号公報 特開2004−071643号公報 特開2005−259794号公報 特開平11−354819号公報 特開2001−160607号公報 特開2001−261851号公報
本発明は高効率な熱拡散、十分な熱伝導性能を有し、より簡便な工程で製造可能な熱拡散性シートを提供することを目的とする。
本発明は、マトリクス材料(a)100体積部および、メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径5〜20μm、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%、平均アスペクト比が2〜10000であって、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察においてグラフェンシートが閉じている黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)10〜300体積部とからなり、層の面内の少なくとも一つの方向における面内方向熱伝導率が20W/(m・K)以上であり、該面内方向熱伝導率と層厚との積が1000W・μm/(m・K)以上となる層厚を有する熱拡散層を、少なくとも構成要素の一つとして含む事を特徴とする熱拡散性シート、およびその製造方法である。
本発明は熱拡散層に電気絶縁層を積層した熱拡散性シートを包含する。また本発明は該熱拡散性シートを構成要素として含むデバイス放熱用部材、放熱性電子実装基板用部材、および加熱冷却装置用部材も包含する。
本発明の熱拡散性シートは面内方向に熱を効率的に拡散、輸送する機能に優れ、また柔軟性に富んだ形態でも提供可能なため、前記例示のデバイス、熱源、熱配管等に積層、接着した形で好ましく用いられ、デバイスの放熱、熱利用の効率化を図ることができる。
次に、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
[マトリクス材料(a)]
本発明の熱拡散性シートはその応用用途においてデバイスや熱源、熱配管等におおよそ70〜300℃前後の温度で熱的に融着させて好ましく用いられるものである。したがって、本発明におけるマトリクス材料(a)は上記温度域で熱融着が可能な樹脂材料とする事が好ましい。樹脂としては、特に大きな限定はなく、各種のものを用いる事が可能であるが、その中でも特に好ましくは、溶融押し出し等によるシート成形性や、熱プレスによる厚み方向への圧着性、もしくは熱延伸による面内方向への伸張性に優れた熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマー樹脂が好ましく挙げられる。
これら熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性エラストマーとしては、例えばポリオレフィン系樹脂及びその共重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体など)、ポリ乳酸系樹脂、ポリエステル系樹脂及びその共重合体(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、液晶性ポリマーなど)、脂肪族ポリアミド類及びその共重合体、芳香族ポリアミド類及びその共重合体等を挙げることができる。さらに、ポリイミド類及びその共重合体、ポリアミドイミド類及びその共重合体、ポリメタクリル酸類及びその共重合体(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステルなど)、ポリアクリル酸類及びその共重合体、ポリアセタール類及びその共重合体、フッ素樹脂類及びその共重合体(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリスチレン類及びその共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂など)、ポリアクリロニトリル類及びその共重合体、ポリフェニレンエーテル(PPE)類及びその共重合体(変性PPE樹脂なども含む)、ポリカーボネート類及びその共重合体、ポリフェニレンスルフィド類及びその共重合体、ポリサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルサルホン類及びその共重合体、ポリエーテルニトリル類及びその共重合体、ポリエーテルケトン類及びその共重合体、ポリエーテルエーテルケトン類及びその共重合体、ポリケトン類及びその共重合体等が挙げられる。
熱拡散層の樹脂マトリクス材料としては、場合によっては、架橋性、硬化性の樹脂材料も利用が可能であるが、これらの中でも熱延伸性、熱圧縮/圧着性等に優れる材料が好ましく選択される。これらの樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、熱硬化型変性PPE系樹脂、および熱硬化型PPE系樹脂、ポリブタジエン系ゴム及びその共重合体、アクリル系ゴム及びその共重合体、シリコーン系ゴム及びその共重合体、天然ゴム、不飽和ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
[黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)]
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径5〜20μm、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%、平均アスペクト比が平均2〜10000であって、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察においてグラフェンシートが閉じている黒鉛化炭素短繊維フィラーである。
黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の原料となる材料としては、ナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物、石油系ピッチや石炭系ピッチといった縮合複素環化合物等が例示できる。その中でもナフタレンやフェナントレンといった縮合多環炭化水素化合物が好ましく、特にメソフェーズピッチが好ましい。メソフェーズピッチのメソフェーズ率としては少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。なお、メソフェーズピッチのメソフェーズ率は、溶融状態にあるピッチを偏向顕微鏡で観察することで確認出来る。更に、原料ピッチの軟化点としては、230℃以上340℃以下が好ましい。不融化処理は、軟化点よりも低温で処理する必要がある。このため、軟化点が230℃より低いと、少なくとも軟化点未満の低い温度で不融化処理する必要があり、結果として不融化に長時間を要するため好ましくない。一方、軟化点が340℃を超えると、紡糸に340℃を超える高温が必要となり、ピッチの熱分解を引き起こし、発生したガスで糸に気泡が発生するなどの問題を生じるため好ましくない。軟化点のより好ましい範囲は250℃以上320℃以下、更に好ましくは260℃以上310℃以下である。なお、原料ピッチの軟化点はメトラー法により求めることが出来る。原料ピッチは、二種以上を適宜組合せて用いてもよい。組合せる原料ピッチのメソフェーズ率は少なくとも90%以上であり、軟化点が230℃以上340℃以下であることが好ましい。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、光学顕微鏡で観測した平均繊維径(D1)が5〜20μmである。D1が5μmを下回る場合、ハンドリングが困難になる。逆にD1が20μmを超えると、加熱により皮膜を形成する際に、隙間ができ、皮膜の付着強度が不十分になる。D1の好ましい範囲は5〜15μmであり、より好ましくは7〜13μmである。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、光学顕微鏡で観測したピッチ系炭素短繊維フィラーにおける繊維径分散(S1)のD1に対する百分率(CV値)は5〜20である。CV値は小さい程、工程安定性が高く、製品のバラツキが小さいことを意味している。CV値が5より小さい時、繊維径が極めて揃っているため、フィラーの間隙に他のフィラーが入り込める余地が少なくなり、樹脂材料と複合する際に多量のフィラーを添加するのが困難になり、熱拡散層の熱伝導率を高める上で好ましくない。逆にCV値が20より大きい場合には樹脂との複合の際の分散性が悪くなって、熱拡散層の性能均一性が低下する傾向にある。CV値は好ましくは、5〜15である。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の平均繊維長(L1)は少なくとも20μm以上であることが好ましい。ここで、平均繊維長は個数平均繊維長とし、光学顕微鏡下で測長器を用い、複数の視野において所定本数を測定し、その平均値から求めることができる。L1が20μmより小さい場合は、フィラー同士が接触しにくくなり、効果的な熱伝導経路の形成が期待しにくくなる。
一方、平均繊維長の上限については特に大きな制限はない。ただ実際上は、樹脂への複合方法にも依存するが、安定した製造が可能となる範囲で決められる。一般的には平均繊維長が100mm(100000μm)を超えると安定製造はかなり難しくなる傾向にある。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の平均アスペクト比は2〜10000、好ましくは3〜1000、より好ましくは4〜100、更に好ましくは5〜50である。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズが30nm以上であり、さらに六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズが50nm以上であることが好ましい。結晶子サイズは六角網面の厚み方向、六角網面の成長方向のいずれも、黒鉛化に対応するものであり、熱物性を発現するためには、一定サイズ以上が必要である。六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズ及び六角網面の成長方向の結晶子サイズは、X線回折法で求める事ができる。測定手法は集中法とし、解析手法としては、学振法を用いた。六角網面の厚み方向の結晶子サイズは、(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向の結晶子サイズは、(110)面からの回折線を用いてそれぞれ求めることができる。
また本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の真密度は少なくとも1.9以上である事が好ましく、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.15以上、最も好ましくは2.2以上である。
更に本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の繊維軸方向の熱伝導率は少なくとも300W/(m・K)以上である事が好ましく、より好ましくは400W/(m・K)以上、更に好ましくは500W/(m・K)以上、もっとも好ましくは600W/(m・K)以上である。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平坦であることを特徴とする。ここで、実質的に平坦であるとは、フィブリル構造のような激しい凹凸をピッチ系炭素短繊維フィラー表面に有しないことを意味する。ピッチ系炭素短繊維フィラーの表面に激しい凹凸のような欠陥が存在する場合には、マトリクス樹脂との混練に際して表面積の増大に伴う粘度の増大を引き起こし、成形性を悪化させる。よって、表面凹凸のような欠陥はできるだけ小さい状態が望ましい。より具体的には、走査型電子顕微鏡において1000倍で観察した像での観察視野に、凹凸のような欠陥が10箇所以下であることとする。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、透過型電子顕微鏡でのフィラー端面の観察表面は、グラフェンシートが閉じた構造になっていることを特徴とする。フィラーの端面がグラフェンシートとして閉じている場合には、余分な官能基の発生や、形状に起因する電子の局在化が起こらないので、フィラーが活性点を持たなくなる様になる。結果、熱硬化性樹脂の触媒活性低下による硬化阻害を抑制することができる。更には、水などの吸着を低減することができ湿熱耐久性能向上をもたらすことができる。特に、本発明の短繊維状のフィラーにおいては、フィラー表面積に占める端面の割合が高くなることから、グラフェンシートが閉じている構造が特に好ましい。なお、グラフェンシートが閉じているとは、フィラーを構成するグラフェンシートそのものの端部がフィラー端部に露出することなく、グラファイト層が略U字上に湾曲し、湾曲部分がフィラー端部に露出している状態である。このような状態が端面全体の80%以上を占めているときに、殊更にこれらの効果は顕在化される。
[熱拡散層黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の製造方法]
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の好ましい作製方法を以下に示す。
原料ピッチは溶融法により紡糸され、その後不融化、焼成、ミリング、黒鉛化によってピッチ系炭素短繊維フィラーとなる。場合によっては、ミリングの後、分級工程を入れることもある。本発明のピッチ系炭素短繊維フィラーは透過型電子顕微鏡によるフィラー端面観察においてグラフェンシートが閉じていることを特徴とするが、このようなピッチ系炭素短繊維フィラーは、ミリングを行った後に黒鉛化処理を実施することによって、好ましく得ることができる。これは、黒鉛化後にミリングを行うと、黒鉛化に伴い生成したグラフェンシートが切断端面にて開いたままになるのに対して、炭化ピッチ繊維ウェブをミリングしピッチ系炭化短繊維とした後で黒鉛化を行うと、ピッチ系炭化短繊維端面のグラフェンシートがループ状に閉じるという黒鉛の成長過程を用いたものである。以下各工程の好ましい態様について説明する。
紡糸方法には、特に制限はないが、所謂溶融紡糸法を好ましく挙げることができる。具体的には、口金から吐出した原料ピッチをワインダーで引き取る通常の紡糸延伸法、熱風をアトマイジング源として用いるメルトブロー法、遠心力を利用して原料ピッチを引き取る延伸紡糸法などが挙げられる。中でもピッチ繊維の形態の制御、生産性の高さなどの理由からメルトブロー法を用いることが望ましい。このため以下本発におけるピッチ系炭素短繊維フィラーの製造方法に関してはメルトブロー法について記載する。
本発明においては、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の原料となるピッチ繊維を形成するための紡糸ノズルの形状については特に制約はない。通常真円状のものが使用されるが、適時楕円などの異型形状を用いても何ら問題ない。ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)としては2〜20の範囲が好ましい。LN/DNが20を超えると、ノズルを通過する原料ピッチに強いせん断力が付与され、繊維断面にラジアル構造が発現する。ラジアル構造の発現は、黒鉛化の過程で繊維断面に割れを生じることがあり、機械特性の低下を引き起こすことがあり好ましくない。一方、LN/DNが2未満では、原料ピッチにせん断を付与することが出来ず、結果として黒鉛の配向が低い繊維となる。このため、黒鉛化しても黒鉛化度が十分に上がらず熱伝導性を向上させ難くなり好ましくない。機械強度と熱伝導性の両立を達成するためには、原料ピッチに適度のせん断を付与する必要がある。このため、ノズル孔の長さ(LN)と孔径(DN)の比(LN/DN)は2〜20の範囲が好ましく、更には3〜12の範囲が特に好ましい。
紡糸時のノズルの温度についても特に制約はなく、安定した紡糸状態が維持できる温度、即ち、原料ピッチの粘度を1〜100Pa・sの範囲にせしめる温度が好ましい。原料ピッチの粘度が1Pa・s未満の状態では、粘度が低すぎて糸形状を維持することが出来ないため好ましくない。一方、原料ピッチの粘度が100Pa・sを超えると、ノズルを通過する際に強いせん断力が付与され、生成されるピッチ繊維断面にラジアル構造が発現するため好ましくない。せん断力を適切な範囲にせしめ、かつ繊維形状を維持するためには、原料ピッチの粘度を適切に制御する必要がある。このため、原料ピッチの粘度は1〜100Pa・sの範囲が好ましく、更には3〜30Pa・sが好ましく、5〜25Pa・sがより好ましい。
本発明における黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、平均繊維径(D1)が5〜20μmであることを特徴とするが、フィラーの繊維径の制御方法は、ノズルの孔径を変更する、あるいはノズルからの原料ピッチの吐出量を変更する、あるいはドラフト比を変更することで可能である。ドラフト比の変更は、100〜400℃に加温された毎分100〜10000mの線速度のガスを細化点近傍に吹き付けることによって達成することができる。吹き付けるガスに特に制限は無いが、コストパフォーマンスと安全性の面から空気が望ましい。
紡糸されたピッチ繊維は、金網等のベルトに捕集されピッチ繊維ウェブとなる。その際、ベルト搬送速度により任意の目付量に調整できるが、必要に応じ、クロスラップ等の方法により積層させてもよい。ピッチ繊維ウェブの目付量は生産性及び工程安定性を考慮して、150〜1000g/mが好ましい。
このようにして得られたピッチ繊維ウェブは、公知の方法で不融化処理し、不融化ピッチ繊維ウェブにする。不融化は、空気、或いはオゾン、二酸化窒素、窒素、酸素、ヨウ素、臭素を空気に添加したガスを用いた酸化性雰囲気下で実施できるが、安全性、利便性を考慮すると空気中で実施することが望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すると連続処理が望ましい。不融化処理は150〜350℃の温度で、一定時間の熱処理を付与することで達成される。より好ましい温度範囲は、160〜340℃であり、さらに好ましくは、170〜330℃の範囲である。昇温速度は1〜10℃/分が好適に用いられ、連続処理の場合は任意の温度に設定した複数の反応室を順次通過させることで、上記昇温速度を達成できる。昇温速度のより好ましい範囲は、生産性及び工程安定性を考慮して、3〜8℃/分であり、さらに好ましくは4〜6℃/分である。
不融化ピッチ繊維ウェブは、500〜1500℃の温度で、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気中で焼成処理され、炭化ピッチ繊維ウェブになる。焼成処理は、コスト面を考慮して、常圧かつ窒素雰囲気下での処理が望ましい。また、バッチ処理、連続処理のどちらでも処理可能であるが、生産性を考慮すれば連続処理が望ましい。
焼成処理された炭化ピッチ繊維ウェブは、所望の繊維長にするために、切断、破砕・粉砕等の処理が実施される。また、場合によっては、分級処理が実施される。処理方式は所望の繊維長に応じて選定されるが、切断にはギロチン式、回転式等のカッター、1軸、2軸及び多軸回転刃式等が好適に使用され、破砕、粉砕には衝撃作用を利用したハンマ式、ピン式、ボール式、ビーズ式及びロッド式、粒子同士の衝突を利用した高速回転式、圧縮・引裂き作用を利用したロール式、コーン式及びスクリュー式等の破砕機・粉砕機等が好適に使用される。所望の繊維長を得るために、切断と破砕・粉砕を多種複数機で構成してもよい。処理雰囲気は湿式、乾式のどちらでもよい。分級処理には、振動篩い式、遠心分離式、慣性力式、濾過式等の分級装置等が好適に使用される。所望の繊維長は、機種選定のみならず、ロータ・回転刃等の回転数、供給量、刃間クリアランス、系内滞留時間等を制御することによっても得ることができる。また、分級処理を用いる場合には、所望の繊維長は篩い網孔径等を調整することによっても得ることができる。
上記の切断、破砕・粉砕処理、場合によっては分級処理を併用して作成したピッチ系炭化短繊維は、2500〜3500℃に加熱し黒鉛化して最終的なピッチ系炭素短繊維フィラーとする。黒鉛化は、アチソン炉、電気炉等にて実施され、真空中、或いは窒素、アルゴン、クリプトン等の不活性ガスを用いた非酸化性雰囲気下等で実施される。
このようにして製造されるフィラーは、繊維の内部および表面において、非常に炭素の純度が高くなっている。つまり反応性の有機官能基や、金属、金属化合物等の不純物の含有量が極めて少ない。
また前述のように、炭素繊維切断断面においてグラフェンシートが閉じており、高い反応活性を有する結晶エッジ面が殆ど露出していない特徴も有す。
これらの事は、一般に、有機官能基、結晶エッジ面その他の反応活性部位、金属性不純物等を基点として発生する樹脂マトリクス材料の分解劣化反応の抑制に関して非常に好ましい特徴である。また架橋性、硬化性を有する樹脂材料(ゴム等も含む)をマトリクスとした場合にも架橋反応、硬化反応の阻害を全く引き起こさないとの好ましい結果が得られ、これも好ましい特徴である。
むろん、もし必要がある場合には、樹脂との親和性、分散性、接着性を高める目的にて、各種の表面処理やサイジング処理をしても良い。また、必要に応じて表面処理した後にサイジング処理をしても良い。表面処理の方法として特に限定は無いが、具体的にはオゾン処理、プラズマ処理、酸処理などが挙げられる。サイジング処理に用いるサイジング剤に特に限定は無いが、具体的にはエポキシ化合物、水溶性ポリアミド化合物、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、酢酸ビニル、水、アルコール、グリコールを単独又はこれらの混合物で用いることができる。サイジング剤はフィラーに対し0.01〜10重量%、付着させても良い。しかし、サイジング剤付着黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は活性点を持つ可能性もあることから、サイジング処理は極力少ない事が好ましい。好ましい付着量は0.1〜2.5重量%である。
[熱拡散層の構成]
本発明における熱拡散層は、マトリクス材料(a)100体積部および、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)10〜300体積部とからなる。マトリクス材料(a)100体積部に対してフィラーが10体積部未満では十分に高い面内方向熱伝導率が得られない場合が多い。またフィラーが300体積部を超えると、マトリクス内へのフィラーの均一分散が困難になると同時に、熱拡散層の成形性が大きく低下するので好ましくない。
これらを加味した、好ましい複合割合はマトリクス材料(a)100体積部に対し、20〜200体積部、更に好ましいは30〜150体積部、最も好ましくは40〜100体積部である。
黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)は、熱伝導性フィラーとして用いた場合、フィラー自身の特性として数百W/(m・K)を超える極めて高い熱伝導率を有しているが、フィラーが短繊維形状であるため、樹脂マトリクス内で少ない添加量で効率的に熱伝導経路を形成できる。
さて熱拡散層は、その製造工程において、層の平面方向に伸張される工程を含んで製造されることが好ましい。このような工程としては、例えば、溶融ダイ押し出し工程でのせん断力に基づいて層を伸張させる方法や、溶融樹脂をロール上にキャストする工程での層の急速冷却に伴って発生する層の面内伸張力を利用する方法や、ロールプレス等による熱圧縮/熱圧着の工程や、熱延伸の工程等を通じて付与する事ができる。
この中で、ロールプレス等による熱圧縮/熱圧着の工程、熱延伸の工程が、倍率その他の制御性に優れた層の伸張方法であるので特に好ましく、なかでも、面内方向の少なくとも一方方向に対して熱的に伸張を行う動作、すなわち熱延伸の工程を含んで製造される事が最も好ましい。
こうした熱延伸としては例えば公知のロール間一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、ブロー延伸等の方法が使用できる。延伸倍率については特に大きな制限はないが、フィラーの配向効果を高める上では、一方向に対する延伸倍率として少なくとも1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2倍以上、最も好ましくは3倍以上である。熱拡散層が、少なくとも面内の一方方向に1.2倍以上の倍率で熱延伸を施す工程を含んで製造されたものであることが本発明の好ましい態様の一つである。
さて黒鉛化炭素短繊維フィラーとマトリクス材料を含んだ熱拡散層の形成材料の混合に際しては、以下の方法を用いる事が好ましい場合が多い。
すなわちマトリクス材料は、パウダー状もしくはあらかじめパウダー状に粉砕してなる形態で用い、黒鉛化炭素短繊維フィラーとパウダー状態でまず均一に混合した後に、マトリクス材料のパウダーが熱変形可能であるが、実質的には流動性を持たないような温度域に加熱するようにする。この過程では必要に応じ、混合槽内に外部から圧力を制御しながら加えても良く、熱変形可能なパウダー状態のマトリクス材料に、黒鉛化炭素短繊維フィラーが融合、一体化するようにする。
この理由は以下の通りである。すなわちマトリクス材料と黒鉛化炭素短繊維フィラーとを加熱溶融して混合する過程において、両者の均一混合前にマトリクス材料の流動性が高くしすぎると、マトリクス材料の表面張力の作用により、マトリクス材料と黒鉛化炭素短繊維フィラーが相分離状になって、黒鉛化炭素短繊維フィラーが凝集体を作りやすい。この場合、フィラーの分散性が悪い状態となるので、均一混合を得る為には別途、強いせん断力による混練を行う必要が生ずる。
一般にせん断力の強い混練を行う事は、フィラー材料の破壊、特に繊維状フィラーの場合には繊維の切断等を起こしやすくなり、熱拡散層に求められる高い熱伝導率を得る上で好ましくない。
一方、熱変形可能なパウダー状態のマトリクス材料と黒鉛化炭素短繊維フィラーとを、フィラーの周囲をマトリクス材料が取り囲んだような形で融合、一体化させる工程を一度行った後、マトリクス材料が高い流動性を有する温度域まで上昇させた場合には、前述のような表面張力による相分離等も抑制され、均一性の高い混合体を得る事ができる。
すなわち後段の工程で、強いせん断力をかける必要なく、均一性の高い混合体が得られる事から、本発明の熱拡散層に好適な極めて高い熱伝導率を実現できる好ましい方法である。
[熱拡散層]
このように本発明を構成する熱拡散層は、層の面内の少なくとも一つの方向において20W/(m・K)以上の面内方向熱伝導率を有し、25W/(m・K)以上、もしくは30W/(m・K)を超える熱拡散層とする事もできる。
また本発明を構成する熱拡散層は、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の製造方法特有の特徴として、樹脂マトリクスの分解劣化反応の抑制、架橋硬化を阻害しない等の特長を有しており、諸特性に優れた熱拡散層を提供できる。本発明を構成する熱拡散層は、特に層の面内方向に対して非常に高い熱拡散/熱輸送能力を有するものである。ここで熱拡散/熱輸送の能力は面内方向熱伝導率と層厚との積により主に決定される。
本発明を構成する熱拡散層は、面内方向熱伝導率と層厚との積が少なくとも1000W・μm/(m・K)以上である。これによりデバイス放熱用部材、放熱性電子実装基板用部材、および加熱冷却装置用部材等の用途において十分な熱拡散/熱輸送の効果を得ることができる。面内方向熱伝導率と層厚との積の値は大きければ大きいほど高い効果が望めるので好ましく、好ましくは2000W・μm/(m・K)以上、より好ましくは3000W・μm/(m・K)以上、更に好ましくは4000W・μm/(m・K)以上、最も好ましくは5000W・μm/(m・K)以上である。これらの値は単に層厚を大きくするだけでも達せられる可能性があるが、層厚の大きな増加は、各種用途における薄型軽量化の要求やシート自身の生産性の観点を考慮すると決して好ましいものではなく。層厚の好適範囲は20〜2000μm程度、より好ましくは20〜800μm、更に好ましくは20〜500μm、最も好ましくは20〜300μmである。
本発明を構成する熱拡散層は、層の面内の少なくとも一つの方向における面内方向熱伝導率が20W/(m・K)以上である。熱拡散層の層厚は本質的に低減する事が求められる事を考慮するならば、前述の熱拡散層の熱拡散性、熱輸送能力を高める目的には、面内方向の熱伝導率をできるだけ高める事こそが最も重要であるといえる。
面内方向熱伝導率は好ましくは25W/(m・K)以上、より好ましくは30W/(m・K)以上、更に好ましくは35W/(m・K)以上である。
本発明では樹脂マトリクス材料とピッチ系短繊維フィラーを複合し、好ましくは層を面内方向に伸張する工程を含んで製造される熱拡散層としているのでこのように高い面内方向熱伝導率を提供できる。また一方、熱拡散層の厚み方向の熱伝導率に関しても、デバイス等から熱拡散層内部への熱の移動をスムーズに行うとの点で、高い値を持つ事が好ましい。熱拡散層の厚み方向の熱伝導率は少なくとも0.5W/(m・K)以上である事が好ましく、より好ましくは1W/(m・K)以上、更に好ましくは1.5W/(m・K)以上、最も好ましくは2W/(m・K)以上である。
また熱拡散層は層の面内の少なくとも一つの方向における熱膨張率が30ppm/K以下であることが好ましい。熱拡散層は、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)を複合することにより、熱拡散層の熱膨張率を著しく低減する事ができる。これは炭素短繊維フィラーの熱膨張率が数ppm/Kの非常に小さい値を有していることに起因している。 このように層の熱膨張率の著しい低減効果を有するという事は、すなわち各種用途において好ましい熱膨張率の値にコントロール可能であるという事を意味する。すなわちフィラーの平均繊維長、複合割合、層の延伸割合その他を制御因子として、面内方向熱膨張率として、少なくとも30ppm/K以下、必要に応じて、20ppm/K以下、更には10ppm/K以下にコントロールする事が可能である。これは本発明の熱拡散性シートが、各種半導体デバイス、セラミック基板、金属基板・成形体等の周辺部材として用いられる事を想定しており、これらの熱膨張率である概ね2〜30ppm/K前後の値である事から、これに近い熱膨張率を有する事を意図したものである。
すなわちマトリクスとして用いられる樹脂材料の熱膨張率は一般に40〜100ppm/K前後の値を取るが、そのままであると、熱膨張率差が大きいため、素子劣化の原因ともなる熱応力、歪、撓み等の発生や熱寸法安定性の低下等の問題を生じ易くなる。これに対し、本発明の熱拡散層では、樹脂マトリクス材料とピッチ系炭素短繊維フィラーとの複合により、層の面内方向熱膨張率を効率的に低減可能である。
[その他の熱伝導性フィラー]
本発明における熱拡散層を構成する熱伝導性フィラーとして、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)に加え金属化合物フィラーを用いても良い。金属化合物フィラーとしては、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、金属合金、等が挙げられる。中でも、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英、炭化珪素、酸化珪素、および窒化珪素からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。
またこれらの他、熱伝導性フィラーとしては天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ダイヤモンドなどの炭素材料などを適宜用いることもできる。
尚、これらのフィラーを併用した場合、特に熱拡散層の厚み方向の熱伝導率を向上する事が可能であり、必要に応じて好ましく用いられる。
[熱伝導率]
ところで熱伝導率の値は一般に、プローブ法、ホットディスク法、レーザーフラッシュ法等の方法によって測定できるが、本発明においてはレーザーフラッシュ法を採用した。熱伝導率は測定法によってその値が大きく相違する場合もある。したがって本発明と従来技術との比較においては同様の測定された熱伝導率の値にて比較検討が為されるべきである。
本発明の熱拡散層の熱伝導率については、その面内方向の値を採用する。これは本発明において熱拡散層には主に面内方向の熱拡散、熱輸送を担う事を期待しているからである。
面内方向熱伝導率の測定法としては、熱伝導層を面内方向に垂直な方向で切り出し、切り出したサンプルの切断断面の一方にレーザー光を照射して昇温させ、そこから他方に流れる熱流の熱拡散率を測定し、別途測定したサンプルの比重、比熱の値とともに公知の方法で熱伝導率を計算するものである。
[熱拡散層を含む熱拡散性シート]
本発明の熱拡散性シートは上述の熱拡散層を、少なくとも構成要素の一つとして含む事を特徴とする。さらに必要に応じて、熱拡散層に電気絶縁層を積層したり、補強基板を積層したりする事も好ましく行われる。すなわち本発明は熱拡散層に電気絶縁層を積層した熱拡散性シート、および熱拡散層に補強基板を積層した熱拡散性シートを包含する。
電気絶縁層は、以下において詳述するが、応用用途において熱拡散層の電気絶縁性を向上させる必要がある場合に積層される。
また補強基板は、以下において詳述するが、応用用途において熱拡散層の機械的特性(剛性、強度等)を高めたり、耐熱性、寸法安定性等の特性を高める必要がある場合に積層される。
電気絶縁層、補強基板はそれぞれ、用途での必要に応じ、熱拡散層の片面側に積層されても、両面側に積層されても良い。また必要によっては、熱拡散層の片面側に電気絶縁層、他面側に補強基板を積層しても良い。
尚、電気絶縁層、補強基板のほかにも、用途での必要に応じて、別の機能を有する層を積層することも可能である。例えば、ガスや水分の透過を防ぐ機能を有するガスバリヤ層、電磁波の透過を抑制する電磁波遮断層、外観の色相を高めるための着色層、光反射層、可視光、紫外光、赤外光の透過を低減する層、撥水撥油層、親水親油層、動摩擦/静摩擦係数を低下させ、すべり性を高めるための層、動摩擦/静摩擦係数を上昇させ、すべりにくくするための層、層間の接着性を高め、層間剥離を抑制するための接着層等が好ましく挙げられる。
またこれらの層の積層方法に関しては、熱プレス、ラミネート、各種コーティング等の方法によっても良いが、より好ましくは層の成形工程内で複数の層の一体化が可能である公知の共押し出し成型法の利用が挙げられる。熱拡散層と電気絶縁層が、共押し出し成形法により一体積層される事が本発明の好ましい態様の具体例である。
ただし共押し出し成形法を利用する場合には、層のマトリクス材料として、少なくとも溶融押し出し用ダイからの材料の安定吐出を可能とするため、熱溶融性およびまたは熱流動性を有し、かつ、異種層の一体化積層のための熱融着性を有する材料を用いる事が好ましい。こうした材料としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられるが、前記特性を有するものであれば、必ずしもこれに限定されるものではない。
尚、これら異種層間の接着力を高める上では、それぞれの層の樹脂マトリクス材料として、比較的類似した化学構造の部位を有し、異種材料間の界面張力が小さく(濡れ易く)、相溶性に優れた材料系を選択する事も好ましい。
尚、熱拡散層および/または熱拡散層以外の層には、必要に応じ、各種の耐候安定剤、難燃剤を適量添加しても構わない。
[電気絶縁層]
前述の通り、用途上の必要において、熱拡散層の電気絶縁性を高める必要がある場合には熱拡散層に電気絶縁層を積層する事が好ましい。
尚、用途にもよるが、熱拡散層が以下の用件を満足した場合には、電気絶縁層を必ずしも積層する必要がないケースもある。
1)熱拡散層上の面内方向に所定の距離を隔てて電極を設けて測定した体積抵抗の値として、少なくとも1×10E6(Ω・cm)以上、より好ましくは1×10E9(Ω・cm)以上、更に好ましくは1×10E12(Ω・cm)以上、最も好ましくは1×10E15(Ω・cm)である事。
2)熱拡散層の面内方向に0.5mmの距離を隔てて長さ5cmの平行電極を設け、両電極間に少なくとも50V、より好ましくは100V、更に好ましくは300V、最も好ましくは500Vの直流電圧を1分間印加した後に、絶縁破壊現象もしくは電気的短絡現象の発生が観られない事。
さて電気絶縁層は各種用途で必要とされるレベルの電気絶縁性を有する事が好ましく、例えば体積比抵抗値として、少なくとも10E6(Ω・cm)以上、好ましくは10E9(Ω・cm)以上、更に好ましくは10E12(Ω・cm)以上、最も好ましくは10E14(Ω・cm)以上である。
電気絶縁層の厚みは、およそ5〜300μm前後の範囲にある事が好ましく、より好ましくは10〜200μm、更に好ましくは20〜100μm、最も好ましくは20〜50μmである。5μm未満では電気絶縁性の十分な確保が難しく、300μmを超えると層の熱抵抗が大きくなり、熱の流れを阻害するようになるので好ましくない。
これら電気絶縁層のマトリクス材料としては、特に大きな限定はないが、本発明においては熱拡散層に用いられるものと同じマトリクス材料や、その共重合材料および/または変性材料が最も好適である。
尚、電気絶縁層は、より好ましくは層の厚み方向への熱伝導率の高い層である事が好ましく、層の熱伝導性を高める目的で、樹脂材料中に酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウムその他のセラミクス材料等の電気絶縁性で熱伝導性のフィラーを添加する事も好ましく行われる。
ここで電気絶縁層の厚み方向熱伝導率は、0.5W/(m・K)以上である事が好ましく、より好ましくは1W/(m・K)以上、更に好ましくは1.5W/(m・K)以上、最も好ましくは2W/(m・K)以上である。
[補強基板]
前述の通り、用途上の必要において、熱拡散層の機械的特性(剛性、強度)や耐熱性、寸法安定性等を高める必要がある場合には熱拡散層に補強基板を積層する事が好ましい。
補強基板は、機械的補強の観点から、剛性の高い層である事が好ましく、引張弾性率が少なくとも1GPa以上の樹脂材料からなる層である事が好ましい。
引張弾性率はより好ましくは2GPa以上、更に好ましくは3GPa以上、最も好ましくは4GPa以上である。
補強基板の厚みは機械的補強効果の観点より少なくとも5μm以上である事が好ましい。5μm未満であると十分な機械的補強効果は得られにくく、好ましくない。厚みの上限については大きな制約はなく、用途の必要に応じて好ましい値が選ばれるが、薄型軽量化の観点より概ね5000μm以下であることが望ましい。
補強基板の厚みはより好ましくは10〜1000μm、更に好ましくは20〜300μm、最も好ましくは30〜200μmである。
また補強基板は好ましくは熱拡散層や電気絶縁層よりも熱変形温度の高い層である事が好ましい。これによって、熱拡散性シートがその用途において、熱圧着、熱ラミネート等される場合に、熱拡散層もしくは電気絶縁層の熱融着が為される温度において、補強基板が殆ど熱変形せずに支持体として機能させることが可能になる。
また更には熱拡散性シート上に何がしかの加工(電気配線のパターニング、デバイス実装時のハンダ浴など)を施す工程で、熱拡散層もしくは電気絶縁層が工程で用いられる温度に伴い熱変形が起こる場合でも、最外面に熱変形温度の高い補強基板が積層されている事により、これら工程実施への適性を得る事ができる。
また補強基板は熱的な寸法安定性を有していることが好ましく、面内方向の熱収縮率の値が低いことが好ましい。これは補強基板の熱収縮率が低い場合、補強基板と積層される熱拡散層や電気絶縁層の熱収縮が抑制されるとの効果が得られるためである。
補強基板の面内方向の熱収縮率はその一方向について、自由収縮、250℃5分間の測定条件において、少なくとも3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である事が好ましい。
補強基板の材料については、特に大きな制約はないが、熱拡散層に用いられる樹脂マトリクス材料と類似の化学構造部位を持った樹脂材料や、その共重合材料および/または変性材料が最も好適である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、各種オレフィン(ポリプロピレン他)等によるフィルム、シートが好ましく例示され、必要に応じ、機械的強度や熱的な寸法安定性を高めるための1軸もしくは2軸の熱延伸や熱固定等の工程を施したものが好ましく用いられる。
尚、これら熱延伸、熱固定等の工程は、熱拡散層および/または熱拡散層と電気絶縁層等と積層一体化を行った後に行うことも可能であり、生産性の観点においてより好ましい。
[熱拡散性シートの用途]
本発明の熱拡散性シートは面内方向に高効率な熱拡散、熱輸送が可能なシート材料であり、その用途について特に大きな制限はないが、例えば以下のようなものが好ましく例示される。
1)各種デバイスに直接的に積層もしくは貼り合わせて用い、デバイスの熱を面内方向に広く拡散、散逸させ、デバイスの温度上昇を抑制する機能を有する放熱シート。特に温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が出る事の多いCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード、各種電池(リチウムイオン電池などの各種2次電池、各種燃料電池、キャパシタ、アモルファスシリコン、結晶シリコン、化合物半導体、湿式太陽電池等の各種太陽電池など)等の各種電気、電子デバイス用の放熱シートとして好適である。
2)放熱性電子実装基板用部材。各種デバイスが実装される積層基板を構成する層(カバーレイを含む)の少なくとも一層として用いられ、デバイスの熱を基板面内方向に拡散、散逸する事により、デバイスの温度上昇を抑制する機能を有する放熱性電子実装基板用部材として好適である。
3)加熱冷却装置用部材。工業用の加熱冷却装置(各種ヒーター、ペルチェ素子、ヒートパイプ等)や冷暖房用等の加熱冷却装置(床暖房用の温水配管、電気ヒーター等)の部材として用いられ、局所的に設けられた熱源の熱を広い面積に熱拡散、熱輸送する事により、熱の有効利用を促進する機能を有する加熱冷却装置用部材として好適である。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(1)黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の平均繊維径及び繊維径分散:
黒鉛化を経た炭素短繊維フィラーをJIS R7607に準じ、光学顕微鏡下でスケールを用いて60本測定し、その平均値から求めた。
(2)黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の平均繊維長:
平均繊維長は、個数平均繊維長であり、黒鉛化を経た炭素短繊維フィラーを光学顕微鏡下で測長器で2000本以上測定し、その平均値から求めた。倍率は繊維長に応じて適宜調整した。
(3)結晶サイズ:
X線回折法にて求め、六角網面の厚み方向に由来する結晶子サイズは(002)面からの回折線を用いて求め、六角網面の成長方向に由来する結晶子サイズは(110)面からの回折線を用いて求めた。また、求め方は学振法に準拠して実施した。
(4)黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)の熱伝導率:
粉砕工程以外を同じ条件で作製した、黒鉛化後のピッチ系炭素繊維ウェブから糸を抜き出し抵抗率を測定し、特開平11−117143号公報に開示されている熱伝導率と電気比抵抗との関係を表す下記式(1)より求めた。
K=1272.4/ER−49.4 (1)
ここで、Kは熱伝導率W/(m・K)、ERは電気比抵抗μΩmを表す。
(5)黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)のグラフェンシートの端面微細構造:
炭素短繊維フィラーを透過型電子顕微鏡にて50,000倍で観察した像の視野中の閉じているグラフェンシートの数を計測した。
(6)実質的に平坦な表面の確認:
黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)を走査型電子顕微鏡にて1000倍で観察した像に、凹凸のような欠陥が何箇所あるかを数えた。10箇所以下の場合平滑とした。
(7)熱伝導率:
直径10mm、厚み2mmに切り出したサンプルを用い、公知のレーザーフラッシュ法を用い、周囲温度25℃にて測定を行った。レーザーフラッシュ測定装置としては、真空理工製熱定数測定装置TC−7000型を用いた。
尚、面内方向熱伝導率の測定は、実施例と同条件を用いて作成したフィルム状のサンプルを、10mm厚みになるように複数層を積層一体化したサンプルを別途作成した上で、サンプル面に2mmの間隔で平行な切れ目を入れて切り出してなるフィルムを直径10mmに切り抜いたものを用いて測定を行った。
また厚み方向熱伝導率の測定は、実施例と同条件を用いて作成したフィルム状のサンプルを、2mm厚みになるように複数層を積層一体化したサンプルを作成した上で、サンプル面で直径10mmに切り抜いたものを用いて測定を行った。
尚、積層一体化は熱圧着法もしくは層間に接着剤を薄膜形成する事によって実施した。
(8)電気比抵抗:
ダイヤインスツルメント社製の電気抵抗測定装置「ロレスタEP」を用いて、測定を行った。
(9)熱膨張率:
サンプルを所定の形状に切り出した後、TAインスツルメント社製の熱機械分析装置(TMA)を用いて測定を行った。測定温度範囲は40〜60℃、昇温レートは1℃/分とした。尚、必要に応じてサンプルは前記熱伝導率測定時同様の方法で複数層を積層一体化して測定サンプルとした。
[参考例1](ピッチ系黒鉛化炭素繊維の作成)
縮合多環炭化水素化合物よりなるピッチを主原料とした。光学的異方性割合は100%、軟化点が285℃であった。直径0.2mmの孔径の紡糸口金を使用し、スリットから加熱空気を毎分5000mの線速度で噴出させて、溶融ピッチを牽引して平均繊維径が15μmのピッチ系炭素繊維を製糸した。紡出された繊維をベルト上に捕集してマットとし、さらにクロスラッピングにより目付320g/mのピッチ系炭素繊維からなるウェブとした。
このウェブを空気中で175℃から280℃まで平均昇温速度7℃/分で昇温して不融化を行った。不融化したウェブを窒素雰囲気中800℃で焼成した後、カッティング、ミリング等を行って、平均繊維長が約50μmの繊維(以下、炭素繊維Aとする)、平均繊維長が約150μmの繊維(以下、炭素繊維Bとする)に篩い分けを行った。その後、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理して黒鉛化を施した。黒鉛化後の炭素繊維の平均繊維径は10.3μmであり、繊維径分散の平均繊維径に対する百分率は約14%であった。また真密度は2.19g/ccであった。
透過型電子顕微鏡を用い、100万倍の倍率でこのピッチ系黒鉛化炭素繊維を観察し、400万倍に写真上で拡大した。ピッチ系黒鉛化炭素繊維の端面においてグラフェンシートは概ねすべて閉じていることを確認した。また、走査型電子顕微鏡で4000倍の倍率で観察したピッチ系黒鉛化炭素繊維の表面には、大きな凹凸はなく、平滑であった。
本ピッチ系黒鉛化炭素繊維の、X線回折法によって求めた黒鉛結晶の六角網面の厚み方向に由来する結晶サイズ(c軸方向の結晶子サイズ)は35nmであった。また黒鉛結晶の六角網面の成長方向に由来する結晶サイズ(ab軸方向の結晶子サイズ)は70nmであった。
また焼成までを同じ工程で作製し、ミリングを実施しなかったウェブを、非酸化性雰囲気とした電気炉にて3000℃で熱処理した黒鉛化ウェブより、単糸を抜き取り、電気比抵抗を測定したところ、約1.7μΩ・mであった。下記式(1)を用いて求めた熱伝導度は670W/m・Kであった。
C=1272.4/ER−49.4 (1)
(ERは電気比抵抗を示し、ここでの単位はμΩ・mである)
[実施例1]
熱拡散層のマトリクス材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、すなわち、酢酸ビニル含有量15%、融点約93℃でパウダー状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ダウケミカル日本社製PES410)を用いた。尚、本パウダーはペレット状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ダウケミカル日本社製NUC3758)を粉砕して得られるパウダーでも代用可能である。
黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)としては、参考例1記載の炭素繊維Aを単体で用いた。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100体積部に対して、炭素繊維A67体積部を均一に粉体混合した後、T型ダイを有する溶融押し出し装置に投入し、約230℃でT型ダイから押し出した後、冷却ローラーにキャストして、厚み約800μmの固化したシートを得た。
尚、ここで両粉体は粉体混合後、まず80〜120℃前後の温度領域において外力下で融合、一体化されて、一旦混合体を為した後、220〜240℃前後の温度で完全溶融され、Tダイから押し出される。また押し出し装置では1軸式のスクリューが用いられる。
次にこのシートを120〜130℃前後に加熱してロール軸延伸機により約2倍の縦延伸を施し、目的とした熱拡散性シートを得た。
この熱拡散性シートの厚みは約450μmで、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約21W/(m・K)、面内方向熱伝導率と層厚との積は約9500W・μm/(m・K)、厚み方向熱伝導率は約2.1W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約25ppmであった。
[実施例2]
熱拡散層のマトリクス材料としては、実施例1と同様のエチレン−酢酸ビニル共重合体、すなわち酢酸ビニル含有量15%、融点約93℃でパウダー状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ダウケミカル日本社製PES410)を用いた。
黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)としては、参考例1記載の炭素繊維Aと炭素繊維Bとを併用した。
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100体積部に対して、炭素繊維A18体積部重量%、B35体積部を均一に粉体混合した後、T型ダイを有する溶融押し出し装置に投入し、約240℃でT型ダイから押し出した後、冷却ローラーにキャストして、厚み約800μmの固化したシートを得た。
次にこのシートを110〜120℃前後に加熱してロール延伸機により約2倍の縦延伸を施し、目的とした熱拡散性シートを得た。
この熱拡散性シートの厚みは約430μmで、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約26W/(m・K)、面内方向熱伝導率と層厚との積は約11200W・μm/(m・K)、厚み方向熱伝導率は約1.9W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約20ppmであった。
[実施例3]
熱拡散層のマトリクス材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(三菱化学社製プリマロイA1600N、融点160℃)を用い、ペレットを粉砕してパウダー状として使用した。
また黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)としては、参考例1に記載の炭素繊維Aを単体で用いた。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー樹脂100体積部に対して、炭素繊維A67体積部を均一に粉体混合した後、T型ダイを有する溶融押し出し装置に投入し、約310℃でT型ダイから押し出した後、冷却ローラーにキャストして、厚み約600μmの固化したシートを得た。
尚、ここで両粉体は粉体混合後、まず150〜190℃前後の温度領域において外力下で融合、一体化されて、一旦混合体を為した後、270〜310℃前後の温度で完全溶融され、Tダイから押し出される。また押し出し装置内では1軸式のスクリューが用いられる。
次にこのシートを175〜185℃前後に加熱してロール延伸機により約2倍に縦延伸を施し、目的とした熱拡散性シートを得た。
この熱拡散性シートの厚みは約340μmで、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約21W/(m・K)、面内方向熱伝導率と層厚との積は約7100W・μm/(m・K)、厚み方向熱伝導率は約2.0W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約16ppmであった。
[実施例4]
熱拡散層は、実施例1と同様のものを用い、熱拡散層と電気絶縁層が積層された熱拡散性シートを作成した。
すなわち電気絶縁層のマトリクス材料としては、酢酸ビニル含有量25%、融点約74℃のペレット状のエチレン−酢酸ビニル共重合体(ダウケミカル日本社製NUC−3195)を用いた。
複数のルーダー、フィードブロックを組み合わせてなり、Tダイを有する共押し出し装置を用い、熱拡散層の材料と電気絶縁層の材料を個別のルーダーで溶融後、フィードブロックにおいて溶融状態で積層一体化して、Tダイから押し出し、冷却ロールにキャストして、固化した積層シートを得た。尚、溶融押し出しの温度は約220℃とした。
積層シートの厚みは熱拡散層が約630μm、電気絶縁層が約120μmとした。
次にこのシートを110〜120℃前後に加熱してロール延伸機により約2倍に縦延伸を施し、目的とした熱拡散性シートを得た。
この熱拡散性シートの厚みはトータルで約420μmで、熱拡散層の厚みは350μm、電気絶縁層の厚みは約70μmであった。熱拡散層は延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約22W/(m・K)、面内方向熱伝導率と層厚との積は約7700W・μm/(m・K)、厚み方向熱伝導率は約2.0W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約26ppmであった。また電気絶縁層は、体積抵抗が5×10E12(Ω・cm)であった。尚、これら測定は熱拡散層、電気絶縁層を、前記同様の溶融押し出し/延伸条件下でそれぞれ単体でTダイから押し出し、シート化したものを測定サンプルとした。
[実施例5]
実施例2において、黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)とエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を均一に粉体混合した後、内寸が約400mm角、高さが約200mmの直方体の圧力容器内に移し、高さ方向にゆっくり圧力をかけながら、80〜120℃に徐々に温度を上昇させながら、多少パウダーの形状を保った状態のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂と黒鉛化炭素短繊維フィラーとを融合、一体化させた混合体を得た。その後、更にゆっくりと温度を上昇し、混合体を溶融流動させて、容器内に完全充填させた後に、室温に冷却して、縦横約400mm角、高さが約27mmの直方体状の成形体を得た。
この直方体状の成形体の面内方向(圧力をかけた方向に垂直の方向)の熱伝導率は、約23W/(m・K)であり、面内方向熱膨張率は約25ppmであった。
次に、この直方体を高さ方向に対して約2mmの厚みでスライスした後、シートを110〜120℃前後に加熱してロール延伸機により約2倍の縦延伸を施し、厚み約1000μmの目的とした熱拡散性シートを得た。
この熱拡散性シートの、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は、約28W/(m・K)であり、面内方向熱伝導率と層厚との積は約28000W・μm/(m・K)、厚み方向熱伝導率は約1.6W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約22ppmであった。
[比較例1]
実施例1において用いた熱伝導性フィラーを、炭素繊維Aに代えて、平均粒径約3μmの酸化アルミニウム微粒子(株式会社マイクロン製「AX−3」)と、平均粒径6μmの窒化硼素微粒子(電気化学工業製「HGP」)とを組み合わせて用いた以外は、実施例1とほぼ同様にして熱拡散性シートを作成した。
尚、ここではエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂100体積部に対して、酸化アルミニウム微粒子47体積部、窒化硼素微粒子20体積部を均一に粉体混合して用いた。
この熱拡散性シートの厚みは約430μmで、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約3.8W/(m・K)、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約58ppmであった。
[比較例2]
実施例3において用いた熱伝導性フィラーを、炭素繊維Aに代えて、平均粒径約3μmの酸化アルミニウム微粒子(株式会社マイクロン製「AX−3」)と、平均粒径6μmの窒化硼素微粒子(電気化学工業製「HGP」)とを組み合わせて用いた以外は、実施例1とほぼ同様にして熱拡散性シートを作成した。
尚、ここではポリエステル系エラストマー樹脂100重量部に対して、酸化アルミニウム微粒子50体積部、窒化硼素微粒子17体積部を均一に粉体混合して用いた。
この熱拡散性シートの厚みは約320μmで、延伸方向に平行な面内方向熱伝導率は約3.5W/(m・K)、、延伸方向に平行な面内方向熱膨張率は約45ppmであった。
本発明の熱拡散性シートは、特に面内方向に高効率な熱拡散、熱輸送が可能なシート材料であり、温度によって素子動作の効率や寿命等に悪影響が出るCPU、MPU、パワートランジスタ、LED、レーザーダイオード、各種電池(リチウムイオン電池などの各種2次電池、各種燃料電池、キャパシタ、アモルファスシリコン、結晶シリコン、化合物半導体、湿式太陽電池等の各種太陽電池など)等の各種の電気デバイス周りや、熱の有効利用が求められる暖房機器の熱源周り、熱交換器や床暖房装置の熱配管周りなどにおいて、特に好適に用いられる。

Claims (12)

  1. マトリクス材料(a)100体積部および、メソフェーズピッチを原料とし、平均繊維径5〜20μm、平均繊維径に対する繊維径分散の百分率(CV値)が5〜20%、平均アスペクト比が2〜10000であって、走査型電子顕微鏡での観察表面が実質的に平滑であり、かつ透過型電子顕微鏡での端面観察においてグラフェンシートが閉じている黒鉛化炭素短繊維フィラー(b)10〜300体積部とからなり、層の面内の少なくとも一つの方向における面内方向熱伝導率が20W/(m・K)以上であり、該面内方向熱伝導率と層厚との積が1000W・μm/(m・K)以上となる層厚を有する熱拡散層を、少なくとも構成要素の一つとして含む事を特徴とする熱拡散性シート。
  2. 熱拡散層の面内の少なくとも一つの方向における熱伝導率が25W/(m・K)以上である事を特徴とする請求項1に記載の熱拡散性シート。
  3. 熱拡散層の面内の少なくとも一つの方向における熱膨張率が30ppm/K以下である事を特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱拡散性シート。
  4. 熱拡散層に層の電気抵抗が体積抵抗として少なくとも1×10E6(Ω・cm)以上である電気絶縁層が積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱拡散性シート。
  5. 熱拡散層のマトリクス材料(a)が熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱拡散性シート。
  6. 電気絶縁層のマトリクス材料(a)が熱可塑性樹脂および/または熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項4〜5のいずれかに記載の熱拡散性シート。
  7. 熱拡散層を、少なくとも面内の一方方向に1.2倍以上の倍率で熱延伸を施す工程を含んで製造する事を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートの製造方法。
  8. 熱拡散層と電気絶縁層とを、共押し出し成形法により一体積層する事を特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートの製造方法。
  9. 熱拡散層と電気絶縁層とが、一体積層された状態で、少なくとも面内の一方方向に1.2倍以上の倍率で熱延伸を施す工程を含んで製造される事を特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートの製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートを構成要素として含むデバイス放熱用部材。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートを構成要素として含む放熱性電子実装基板用部材。
  12. 請求項1〜6のいずれかに記載の熱拡散性シートを構成要素として含む加熱冷却装置用部材。
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