JP2009185324A - プレス加工用Cu−Cr−Sn−Zn系合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料特性への影響が少ない新たな手段によって耐金型磨耗性が良好なCu−Cr−Sn−Zn系合金を提供する。
【解決手段】Crを0.1〜0.4質量%、Snを0.1〜0.3質量%、Znを0.1〜0.3質量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Cr−Sn−Zn系合金であって、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であり、表面酸化層の下に形成されるCr欠乏層の厚みが0.2〜1μm以内であるCu−Cr−Sn−Zn系合金。
【選択図】図1A
【解決手段】Crを0.1〜0.4質量%、Snを0.1〜0.3質量%、Znを0.1〜0.3質量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Cr−Sn−Zn系合金であって、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であり、表面酸化層の下に形成されるCr欠乏層の厚みが0.2〜1μm以内であるCu−Cr−Sn−Zn系合金。
【選択図】図1A
Description
本発明は、電気・電子部品に用いられるCu−Cr−Sn−Zn系合金に関し、より詳細には、電気・電子部品をプレス加工により製造するのに好適なCu−Cr−Sn−Zn系合金に関する。
一般に、端子、コネクタ、リードフレーム等の電気・電子部品には機械的強度及び電気伝導性、さらには半田付け性やめっき性等の観点から銅合金が用いられている。これら銅合金は熱間圧延、冷間圧延及び熱処理の組み合わせにより、板材に加工され、金型を用いたプレス加工で所望の電気・電子部品が製造される。
近年、りん青銅や黄銅に代表される固溶強化型銅合金に代わって、時効硬化型銅合金の使用量が増加している。時効硬化型銅合金は、析出を利用して高強度と高導電性を両立した銅合金であり、コルソン合金やCu−Cr−Sn−Zn系合金等が代表的である。なかでも、Cu−Cr−Sn−Zn系合金は導電率が70%程度と高く、リードフレーム等に多く用いられている。
近年の電子部品の小型化・薄肉化により、プレス加工にはこれまで以上の精度が要求され、従来のCu−Cr−Sn−Zn系合金ではプレス加工(とりわけ打抜き加工)時に金型磨耗が比較的大きく、バリも高くなるので、金型寿命や寸法精度の観点から改善が求められていた。そこで、金型磨耗を抑制する方法としてこれまで、被加工材の組成や結晶方位の制御による検討がなされてきた。
特開2001−181757号公報(特許文献1)では「添加したCrは析出硬化のみならず、打抜加工性の改善効果も有する」(段落0013)に鑑みて、その成分範囲を子細に限定することによって打抜き加工性の向上を図っている。具体的には、「Cuマトリックス中に、打抜加工性を改善するための各々の最大径が0.1〜10μmの粗大なCrまたはCr化合物の析出相Aと、強度を確保するための各々の最大径が0.001〜0.030μm(1nm〜30nm)の微細なCrまたはCr化合物の析出相Bを共存させること」(段落0012)が記載されている。
特開2000−328158号公報(特許文献2)では「結晶方位の集積度を制御することによりプレス打抜き性を向上できる」(段落0004)ことを見出し、板表面における{200}面からのX線回折強度をI{200}、{311}面からのX線回折強度をI{311}、{220}面からのX線回折強度をI{220}としたとき、次式:[I{200}+I{311}]/I{220}<0.4を満たすことを特徴とするプレス打抜き性が優れた銅合金板を開示している。
また、Cu−Cr−Sn−Zn系合金に関する技術ではないが、銅合金の表面粗さ、酸化皮膜の厚さ及び組成等を制御することによって金型磨耗を低減する技術が特開2004−2989号公報(特許文献3)に開示されている。該文献には、「素材プレス時に、プレス油の皮膜の介在が不十分であると、金型磨耗の進行が早くなる。上記現象を抑制するには、素材表面にある程度の凹凸を作り込めば凹部にプレス油が入り、油持ちがよくなる。そこで、粗さのパラメータ、詳しくはRaおよびRyで規定する」(段落0014)と記載されている。また、「素材表面の酸化皮膜厚さが3nm未満だとプレス時に金型と接触した際の凝着による金型磨耗が生じ易くなり、80nmを超えるとプレス油の濡れ性が悪くなり金型磨耗が生じ易くなる。酸化皮膜中のCu以外の合金元素の酸化物が10原子%を下回るとCuO濃度が高くなり、プレス油の濡れ性が悪くなり金型磨耗が生じ易くなる。」(段落0017)と記載されている。
特開2001−181757号公報
特開2000−328158号公報
特開2004−2989号公報
従来技術によってもCu−Cr−Sn−Zn系合金のプレス加工時の耐金型磨耗性を改善することは可能であるが、耐金型磨耗性を改善する余地は未だに残っている。特に、組成や結晶方位の制御は強度及び導電率に大きな影響を与え、耐金型磨耗性と所望の強度及び導電性の両立を難しくする面もあることから、組成や結晶方位の制御とは異なる材料特性への影響が少ない手段によってCu−Cr−Sn−Zn系合金の耐金型磨耗性を改善することができれば有利であろう。
そこで、本発明は材料特性への影響が少ない新たな手段によって耐金型磨耗性が良好なCu−Cr−Sn−Zn系合金を提供することを目的とする。
そこで、本発明は材料特性への影響が少ない新たな手段によって耐金型磨耗性が良好なCu−Cr−Sn−Zn系合金を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に対処すべく検討を行った結果、Cu−Cr−Sn−Zn系合金の表面酸化層とその下に形成されるCr欠乏層の厚みが耐金型磨耗性と相関がある事を見出し、冷間圧延時の圧延条件で表面粗さを、高温熱処理時の熱処理条件で表面酸化層およびCr欠乏層の厚みを制御する事で耐金型磨耗性を改善出来ることを見出した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたもので、一側面において、Crを0.1〜0.4質量%、Snを0.1〜0.3質量%、Znを0.1〜0.3質量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Cr−Sn−Zn系合金であって、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であり、表面酸化層の下に形成されるCr欠乏層の厚みが0.2〜1μm以内であるCu−Cr−Sn−Zn系合金である。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金は一実施形態において、十点平均粗さが0.1〜0.6μmである。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金は別の一実施形態において、更にSiを最大0.07質量%まで含有する。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金は更に別の一実施形態において、バルクCr濃度に対するCr欠乏層中のCr濃度下限値の比が0.2〜0.7である。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金は更に別の一実施形態において、Cr欠乏層におけるCr濃度の下限値が0.1質量%以下である。
本発明は別の一側面において、上記Cu−Cr−Sn−Zn系合金をプレス加工することによって作製した電気・電子部品である。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金は合金組成や結晶方位ではなく、合金の表面状態を制御することによって耐金型磨耗性の向上を図ったものであり、強度や導電性に大きな影響を与えることなく金型寿命を延ばすことが可能となる。本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金はプレス加工により成型される電気・電子部品の材料として好適である。
(1)Cr
Crは、時効処理を行なうことにより、銅中で析出し、合金の強度を向上させ、更に電気伝導性も上昇する。Cr濃度が0.1%未満では、十分な析出硬化が得られないため、所望の強度が得られず、0.4%を超えると導電性が低下し、更には金型磨耗を促進する。従って、Cr添加濃度は0.1〜0.4質量%の範囲とする。金型磨耗と強度のバランスからCr添加濃度は好ましくは0.2〜0.3質量%の範囲である。
Crは、時効処理を行なうことにより、銅中で析出し、合金の強度を向上させ、更に電気伝導性も上昇する。Cr濃度が0.1%未満では、十分な析出硬化が得られないため、所望の強度が得られず、0.4%を超えると導電性が低下し、更には金型磨耗を促進する。従って、Cr添加濃度は0.1〜0.4質量%の範囲とする。金型磨耗と強度のバランスからCr添加濃度は好ましくは0.2〜0.3質量%の範囲である。
(2)Sn、Zn
Sn及びZnは銅中に固溶し、合金の強度を上昇させるが、固溶のため導電性が低下する。それぞれ、0.1%未満では強度上昇への寄与が小さく、所望の強度が得られない。一方、それぞれ0.3質量%を超えると導電性が著しく低下する。従って、Sn添加濃度は0.1〜0.3質量%、Zn添加濃度は0.1〜0.3質量%の範囲とする。Snの添加濃度は典型的には0.15〜0.25質量%、Zn添加濃度は典型的には0.15〜0.25質量%の範囲である。
Sn及びZnは銅中に固溶し、合金の強度を上昇させるが、固溶のため導電性が低下する。それぞれ、0.1%未満では強度上昇への寄与が小さく、所望の強度が得られない。一方、それぞれ0.3質量%を超えると導電性が著しく低下する。従って、Sn添加濃度は0.1〜0.3質量%、Zn添加濃度は0.1〜0.3質量%の範囲とする。Snの添加濃度は典型的には0.15〜0.25質量%、Zn添加濃度は典型的には0.15〜0.25質量%の範囲である。
(3)Si
Siは熱間加工性を改善し、さらにCr化合物として析出して、プレス金型磨耗性をも改善するため、Cr、Sn、Znに加えて添加してもよい。但し、0.07質量%を超えると導電性が著しく低下するので、最大でも0.07質量%となるように添加する。また、Siの添加濃度が低すぎると添加の効果が十分得られないので0.01%以上とするのが好ましい。従って、Si添加濃度は最大0.07質量%であり、典型的には0.01〜0.07質量%の範囲であり、より典型的には0.01〜0.05質量%の範囲である。
Siは熱間加工性を改善し、さらにCr化合物として析出して、プレス金型磨耗性をも改善するため、Cr、Sn、Znに加えて添加してもよい。但し、0.07質量%を超えると導電性が著しく低下するので、最大でも0.07質量%となるように添加する。また、Siの添加濃度が低すぎると添加の効果が十分得られないので0.01%以上とするのが好ましい。従って、Si添加濃度は最大0.07質量%であり、典型的には0.01〜0.07質量%の範囲であり、より典型的には0.01〜0.05質量%の範囲である。
(4)Cr欠乏層
Crは金型に使用される工具鋼中の炭素と親和性が高く、凝着磨耗による金型磨耗の要因となる。表面酸化層は合金中に含まれる酸素と親和性の高い元素の酸化物で構成されるところ、Cr、Sn、Zn及び場合によってはSiの中でもCrは酸素と親和性が高いので表面酸化層はCr酸化物が主体となっている。Crが酸化物として存在していれば、工具鋼中の炭素に凝着する可能性は極端に低下するが、表面酸化層より内側の母材中のCrには単体で固溶又は析出した状態のものもあり、このようなCrは凝着磨耗を引き起こす。このため、金型磨耗を低減するには、母材中のCrと金型との接触を妨げる事が必要となる。
Crは金型に使用される工具鋼中の炭素と親和性が高く、凝着磨耗による金型磨耗の要因となる。表面酸化層は合金中に含まれる酸素と親和性の高い元素の酸化物で構成されるところ、Cr、Sn、Zn及び場合によってはSiの中でもCrは酸素と親和性が高いので表面酸化層はCr酸化物が主体となっている。Crが酸化物として存在していれば、工具鋼中の炭素に凝着する可能性は極端に低下するが、表面酸化層より内側の母材中のCrには単体で固溶又は析出した状態のものもあり、このようなCrは凝着磨耗を引き起こす。このため、金型磨耗を低減するには、母材中のCrと金型との接触を妨げる事が必要となる。
本発明者らは、歪取焼鈍条件と表面酸化層の相関を検討する過程で表面酸化層の下、典型的には直下にCr濃度が周囲の層よりも低い層(以下「Cr欠乏層」という。)が形成され得る事を見出し、これが金型磨耗改善につながることを突き止めた。Cr欠乏層はそれよりも内側の母相中のCrが金型と直接接触することを防止する障壁の役割を果たし、このCr欠乏層の厚みを制御することで耐金型磨耗性を改善することができる。なお、Sn及びZnも炭化物を形成することはできるので、Sn又はZnの欠乏層を制御することも考えられるが、炭素との親和性が強いのはCrなので、金型磨耗に与える影響は微弱である。
Cr欠乏層は厚みが0.2μm未満であると、所望のバリア効果が得られない。一方、1μmを超えると、バリア効果は得られるが、所望の合金特性(例:強度や導電性)に悪影響を与えやすい。そこで、Cr欠乏層の厚みは0.2〜1μmと規定する。Cr欠乏層の厚みは典型的には0.3〜0.8μmである。
本発明においてはCr欠乏層の厚みは、グロー放電発光分光分析法(GDS)により得られる合金表面から深さ方向へのCr濃度プロファイルからみて、Cr濃度が平衡に達している深さ範囲のCr濃度をバルクCr濃度として、バルクCr濃度よりも濃度が低下している深さ範囲とする。バルクCr濃度はほぼCrの平均含有濃度に等しい。
また、バルクCr濃度に対するCr欠乏層中のCr濃度下限値の比(以下、「欠乏層Cr/バルクCr比」という)が小さくなり、GDSによるCrの深さ方向の濃度プロファイルで、Crの谷が相対的に深くなるほどバリア効果が大きくなると考えられる。本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金では欠乏層Cr/バルクCr比は一般に0.2〜0.7であり、典型的には0.4〜0.6である。
また、Cr欠乏層のバリア効果はCr欠乏層におけるCr濃度の下限値にも左右される。すなわち、Cr欠乏層におけるCr濃度の下限値の絶対値が低ければバリア効果が大きくなると考えられる。そこで、欠乏層Cr/バルクCr比を上記範囲に設定した上で、更にCr欠乏層におけるCr濃度の下限値を0.1質量%以下とするのが好ましく、0.08質量%以下とするのがより好ましく、典型的には0.04〜0.08質量%である。
(5)表面酸化層の厚さ
酸化物は母材の銅合金に比べ硬く、金型磨耗が起こりやすい。また、酸化皮膜は脆いため、打抜きの際に母材から剥離して金属粉が発生し金型の間隙に入り込んで悪影響を及ぼす。このため、表層の酸化膜を薄くする事で、金型磨耗が低減され、金属粉の発生も低減される。調査の結果、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であれば、耐金型磨耗性に大きな悪影響を与えないことが分かった。一方、表面酸化層の厚みが0.6μmを超えると、耐金型磨耗性が有意に劣化する。従って、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みを0.6μm以内とした。O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みは好ましくは0.3μm以内であり、より好ましくは0.2μm以内である。
O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みは、グロー放電発光分光分析法(GDS)により得られる合金表面からのOの深さ方向の濃度プロファイルから測定することができる。
酸化物は母材の銅合金に比べ硬く、金型磨耗が起こりやすい。また、酸化皮膜は脆いため、打抜きの際に母材から剥離して金属粉が発生し金型の間隙に入り込んで悪影響を及ぼす。このため、表層の酸化膜を薄くする事で、金型磨耗が低減され、金属粉の発生も低減される。調査の結果、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であれば、耐金型磨耗性に大きな悪影響を与えないことが分かった。一方、表面酸化層の厚みが0.6μmを超えると、耐金型磨耗性が有意に劣化する。従って、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みを0.6μm以内とした。O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みは好ましくは0.3μm以内であり、より好ましくは0.2μm以内である。
O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みは、グロー放電発光分光分析法(GDS)により得られる合金表面からのOの深さ方向の濃度プロファイルから測定することができる。
理解を容易にするため、図1AにGDSによって得られる深さ方向のO及びCrの濃度プロファイルの模式図、図1BにGDSによって得られる深さ方向のOの濃度プロファイルの模式図をそれぞれ示す。
(6)十点平均粗さ
表面粗さを適切な値に制御することで、プレス打抜き時に表面の凹凸部から被加工材と金型間に潤滑油が流動し、金型磨耗が低減される。十点平均粗さが0.1μm未満だと金型磨耗の低減効果が十分に得られないので、十点平均粗さは0.1μm以上とするのが好ましい。一方、十点平均粗さが0.6μmを超えると凹凸を作り込む圧延や研磨の際に金属粉が発生して合金表面に付着し、金型磨耗の原因となる。よって、十点平均粗さは潤滑油が十分に流動出来る範囲で高めの値が望ましく、具体的には0.1〜0.6μmの範囲とするのが好ましく、0.4〜0.6μmとするのがより好ましい。
表面粗さを適切な値に制御することで、プレス打抜き時に表面の凹凸部から被加工材と金型間に潤滑油が流動し、金型磨耗が低減される。十点平均粗さが0.1μm未満だと金型磨耗の低減効果が十分に得られないので、十点平均粗さは0.1μm以上とするのが好ましい。一方、十点平均粗さが0.6μmを超えると凹凸を作り込む圧延や研磨の際に金属粉が発生して合金表面に付着し、金型磨耗の原因となる。よって、十点平均粗さは潤滑油が十分に流動出来る範囲で高めの値が望ましく、具体的には0.1〜0.6μmの範囲とするのが好ましく、0.4〜0.6μmとするのがより好ましい。
(7)製法
Cu−Cr−Sn−Zn系合金は一般に以下のような工程により製造することができる。
(i)電気銅を主原料として、これに所定量のCr、Sn、Zn及び場合によってSiを大気溶解炉中に投入し、溶湯温度(1150〜1280℃)で出湯しインゴットを得る。
(ii)次にこのインゴットを900℃以上に加熱後、熱間圧延し、所定の厚さの板に加工した後、水冷する。
(iii)表層の酸化スケールを除去し、冷間圧延により更に板厚を薄くする。
(iv)300〜550℃×3〜20hの時効処理を行なう。この時効処理により、合金に微細な析出物が均一に分散し、合金の強度が高くなり、銅中の固溶元素量が減少して電気伝導性が向上する。
(v)時効後の板表面を酸洗し、表層の酸化スケールおよびキズ、よごれ等を除去する。
(vi)製品板厚まで冷間圧延を行なう。
(vii)歪取焼鈍を実施する。
Cu−Cr−Sn−Zn系合金は一般に以下のような工程により製造することができる。
(i)電気銅を主原料として、これに所定量のCr、Sn、Zn及び場合によってSiを大気溶解炉中に投入し、溶湯温度(1150〜1280℃)で出湯しインゴットを得る。
(ii)次にこのインゴットを900℃以上に加熱後、熱間圧延し、所定の厚さの板に加工した後、水冷する。
(iii)表層の酸化スケールを除去し、冷間圧延により更に板厚を薄くする。
(iv)300〜550℃×3〜20hの時効処理を行なう。この時効処理により、合金に微細な析出物が均一に分散し、合金の強度が高くなり、銅中の固溶元素量が減少して電気伝導性が向上する。
(v)時効後の板表面を酸洗し、表層の酸化スケールおよびキズ、よごれ等を除去する。
(vi)製品板厚まで冷間圧延を行なう。
(vii)歪取焼鈍を実施する。
本発明において、耐金型磨耗性を改善するために重要な工程は仕上げ圧延工程(vi)及び歪取焼鈍工程(vii)である。
表面粗さの制御は当業者に知られた任意の方法で実施することができ、例えば圧延条件の調整で行うことができる。また、圧延後の機械研磨によっても実施することもできる。しかしながら、仕上げ圧延後に機械研磨するよりは仕上げ圧延条件を調整する方が表面粗さを制御しやすい。
圧延時の表面粗さ制御は、圧延ロールの表面粗さを調整することにより実施するのが基本である。また、仕上げ圧延工程における材料の通板速度が増加すると、表面粗さは上昇する傾向を示すため、圧延条件を調整する事で、表面粗さを微調整することができる。表面粗さを本発明で規定する範囲に収めるには、通板速度を40〜130m/minとするのがよい。但し、生産性の面からは通板速度が速い方が望ましいので、通板速度は好ましくは80〜130m/min、より好ましくは100〜130m/minである。
歪取焼鈍工程においては、雰囲気中の酸素と母相中のCrが結合し、Cr酸化物が表面に形成され、表面酸化層が成長していく。表面酸化層の成長に伴い、母相からCrが拡散して供給されるので、表面酸化層の下にはCr欠乏層が生じることとなる。
一般にCrの拡散速度は高温ほど大きくなるため、焼鈍温度を高くするほどCr欠乏層の厚みが早く大きくなる。同一温度では焼鈍時間が長いほどCr欠乏層が厚くなる。しかしながら、Cr欠乏層の成長と共に表面酸化層まで成長してしまうと本発明で規定するような表面酸化層とCr欠乏層の厚みの関係は得られない。本発明者はCr欠乏層の成長が雰囲気中の酸素濃度と歪取焼鈍の温度及び焼鈍時間に強く依存することを見出し、歪取焼鈍工程における雰囲気中の酸素濃度を低くすることで、表面酸化層を薄くしながら、Cr欠乏層を成長させることに成功した。
具体的には、表面酸化層及び合金元素のCr欠乏層を所望の厚みに制御するには、還元性条件下(例えば、アンモニア分解ガス下)の連続ラインにおいて、歪取焼鈍時の酸素濃度を0.02〜0.08体積%とするのがよい。酸素濃度は典型的には0.02〜0.05体積%である。歪取温度は400〜550℃がよい。焼鈍時間は15〜120秒、好ましくは15〜60秒に制御するのが良い。
表面粗さの制御は当業者に知られた任意の方法で実施することができ、例えば圧延条件の調整で行うことができる。また、圧延後の機械研磨によっても実施することもできる。しかしながら、仕上げ圧延後に機械研磨するよりは仕上げ圧延条件を調整する方が表面粗さを制御しやすい。
圧延時の表面粗さ制御は、圧延ロールの表面粗さを調整することにより実施するのが基本である。また、仕上げ圧延工程における材料の通板速度が増加すると、表面粗さは上昇する傾向を示すため、圧延条件を調整する事で、表面粗さを微調整することができる。表面粗さを本発明で規定する範囲に収めるには、通板速度を40〜130m/minとするのがよい。但し、生産性の面からは通板速度が速い方が望ましいので、通板速度は好ましくは80〜130m/min、より好ましくは100〜130m/minである。
歪取焼鈍工程においては、雰囲気中の酸素と母相中のCrが結合し、Cr酸化物が表面に形成され、表面酸化層が成長していく。表面酸化層の成長に伴い、母相からCrが拡散して供給されるので、表面酸化層の下にはCr欠乏層が生じることとなる。
一般にCrの拡散速度は高温ほど大きくなるため、焼鈍温度を高くするほどCr欠乏層の厚みが早く大きくなる。同一温度では焼鈍時間が長いほどCr欠乏層が厚くなる。しかしながら、Cr欠乏層の成長と共に表面酸化層まで成長してしまうと本発明で規定するような表面酸化層とCr欠乏層の厚みの関係は得られない。本発明者はCr欠乏層の成長が雰囲気中の酸素濃度と歪取焼鈍の温度及び焼鈍時間に強く依存することを見出し、歪取焼鈍工程における雰囲気中の酸素濃度を低くすることで、表面酸化層を薄くしながら、Cr欠乏層を成長させることに成功した。
具体的には、表面酸化層及び合金元素のCr欠乏層を所望の厚みに制御するには、還元性条件下(例えば、アンモニア分解ガス下)の連続ラインにおいて、歪取焼鈍時の酸素濃度を0.02〜0.08体積%とするのがよい。酸素濃度は典型的には0.02〜0.05体積%である。歪取温度は400〜550℃がよい。焼鈍時間は15〜120秒、好ましくは15〜60秒に制御するのが良い。
Cr欠乏層におけるCr濃度を下げるにはバルクCr濃度自体を下げることが有効である。また、歪取焼鈍の条件を高温にするか、連続焼鈍ラインでは、通板速度を低速にし、焼鈍時間を長くする事でCrの拡散を促進させることでもCr欠乏層におけるCr濃度を低下させることができ、この場合、欠乏層Cr/バルクCr比を下げることも可能となる。(特に温度上昇の効果が高い。)
時効処理は著しい表面酸化の進行を抑えるため、不活性ガス雰囲気中(例えば、ArガスまたはN2ガス雰囲気下)で行なうのが望ましい。
表面酸化層の厚さ制御は酸洗や研磨によっても行なうことができるが、その場合は規定される表面粗さを満たす様に酸洗や研磨を行なうため、相当の注意が必要となる。
本発明に係るCu−Cr−Sn−Zn系合金をプレス加工することによって種々の電気・電子部品、例えば端子、コネクタ、リードフレーム、スイッチ、リレー等を作製することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは例示のためであって本発明を限定することを意図するものではない。実施例の実験は次の2種類の合金を用いて行なった。
合金A:Cu−0.2%Cr−0.2%Sn−0.2%Zn
合金B:Cu−0.2%Cr−0.2%Sn−0.2%Zn−0.04%Si
合金A:Cu−0.2%Cr−0.2%Sn−0.2%Zn
合金B:Cu−0.2%Cr−0.2%Sn−0.2%Zn−0.04%Si
銅合金板の製造
電気銅を溶解し、添加元素を大気溶解炉中に所定量投入し、溶湯を攪拌した。その後、鋳込み温度1250℃で鋳型に出湯し、インゴットを得た。次にこのインゴットを950℃×3h加熱後、厚さ10mmまで熱間圧延し、水冷した。表層の酸化スケールを面削により除去した後、冷間圧延により厚さ1mmの板を作製し、この板材をAr雰囲気下450℃×10hの条件で時効した。酸洗後、表1に示す通板速度で冷間圧延を実施し、板厚を0.15mmとした。その後、連続焼鈍炉を用いて、アンモニア分解ガス中で、表1に示す温度、焼鈍時間及び酸素濃度(体積%)の条件で歪取り焼鈍を実施し、各銅合金板を得た。これらについて以下の特性を評価した。
電気銅を溶解し、添加元素を大気溶解炉中に所定量投入し、溶湯を攪拌した。その後、鋳込み温度1250℃で鋳型に出湯し、インゴットを得た。次にこのインゴットを950℃×3h加熱後、厚さ10mmまで熱間圧延し、水冷した。表層の酸化スケールを面削により除去した後、冷間圧延により厚さ1mmの板を作製し、この板材をAr雰囲気下450℃×10hの条件で時効した。酸洗後、表1に示す通板速度で冷間圧延を実施し、板厚を0.15mmとした。その後、連続焼鈍炉を用いて、アンモニア分解ガス中で、表1に示す温度、焼鈍時間及び酸素濃度(体積%)の条件で歪取り焼鈍を実施し、各銅合金板を得た。これらについて以下の特性を評価した。
[十点平均粗さ(μm)]
各銅合金板の表面に対して小坂研究所社製SurfcoderSE−3400を用いて、速度0.1mm/秒で距離2mmの粗さ曲線を採取し、JISB0601:1982に基づいて、十点平均粗さを求めた。
各銅合金板の表面に対して小坂研究所社製SurfcoderSE−3400を用いて、速度0.1mm/秒で距離2mmの粗さ曲線を採取し、JISB0601:1982に基づいて、十点平均粗さを求めた。
[表面酸化層の厚みおよびCr欠乏層の厚みの測定(μm)]
グロー放電発光分光分析法(GDS)により各銅合金板表面から深さ方向の酸素量を分析し、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みを測定した。測定は、JOBIN−YVON社JY5000RF−PSS型GDSにおいて、電力40W、Arガス圧力775Paで測定した。また、同一の装置及び測定条件で各銅合金板表面から深さ方向のCr量を分析し、Cr欠乏層の厚みを測定した。
グロー放電発光分光分析法(GDS)により各銅合金板表面から深さ方向の酸素量を分析し、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みを測定した。測定は、JOBIN−YVON社JY5000RF−PSS型GDSにおいて、電力40W、Arガス圧力775Paで測定した。また、同一の装置及び測定条件で各銅合金板表面から深さ方向のCr量を分析し、Cr欠乏層の厚みを測定した。
[Cr欠乏層におけるCr濃度下限値(質量%)]
Cr欠乏層の厚み測定時に得られる濃度プロファイルより、Cr欠乏層におけるCr濃度の下限値を求めた。
Cr欠乏層の厚み測定時に得られる濃度プロファイルより、Cr欠乏層におけるCr濃度の下限値を求めた。
[欠乏層Cr/バルクCr比]
Cr欠乏層の厚み測定時に得られる濃度プロファイルより、バルクCr濃度に対するCr欠乏層中のCr濃度下限値の比を求めた。
Cr欠乏層の厚み測定時に得られる濃度プロファイルより、バルクCr濃度に対するCr欠乏層中のCr濃度下限値の比を求めた。
[プレス打抜き時のバリ高さ]
連続プレス機を用いて、打抜き型金型磨耗試験を実施した。試験評価は直径3mmの円形チップを100万個打抜いた直後の断面観察により最大の「バリ高さ」を求めた。打抜きによる金型の磨耗が大きいほど、バリ高さは大きくなる。バリ高さが10μm未満の時、耐金型磨耗性が良好と判定した。
連続プレス機を用いて、打抜き型金型磨耗試験を実施した。試験評価は直径3mmの円形チップを100万個打抜いた直後の断面観察により最大の「バリ高さ」を求めた。打抜きによる金型の磨耗が大きいほど、バリ高さは大きくなる。バリ高さが10μm未満の時、耐金型磨耗性が良好と判定した。
[引張強さ/MPa]
各銅合金板について、圧延方向に平行な方向に引張り試験を行い、JISZ2241に準拠して求めた。
各銅合金板について、圧延方向に平行な方向に引張り試験を行い、JISZ2241に準拠して求めた。
[導電率/%IACS]
各銅合金板について、JISH0505に準拠して、ダブルブリッジ装置を用いた4端子法によって求めた体積抵抗率から%IACSを算出した。
各銅合金板について、JISH0505に準拠して、ダブルブリッジ装置を用いた4端子法によって求めた体積抵抗率から%IACSを算出した。
表1に合金A、表2に合金Bについての製造条件及び試験結果を示す。
合金Aについては、発明例1A〜6Aにおいては、圧延通板速度、歪取時の酸素濃度および歪取焼鈍条件が好適な範囲内であるため、十点平均粗さ、表面酸化層厚みおよびCr欠乏層を規定範囲内に制御でき、せん断バリ高さは5μm以内となり、金型磨耗が抑制された。発明例7A〜8Aにおいては、歪取時の酸素濃度および歪取通板条件は好適であるものの、圧延通板速度が発明例1A〜6Aよりも遅いため、十点平均粗さが0.1μm未満となり、十分な潤滑油の流動が得られず、発明例1A〜6Aに比べ、金型磨耗性は若干劣化した。また、発明例9A〜10Aにおいては、歪取時の酸素濃度および歪取通板条件は好適な範囲内であるものの、圧延通板速度が発明例1A〜6Aよりも速いため、十点平均粗さが0.6μmを超え、発明例1A〜6Aに比べ、金型磨耗性は若干劣化した。しかし、発明例7A〜10Aは歪取時の酸素濃度および歪取焼鈍条件により、表面酸化層厚みおよびCr欠乏層厚みを規定範囲内に制御したため、比較例に比べバリ高さが低く、金型磨耗の抑制効果が見られた。
比較例11Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件に比べて低いため、表面酸化層厚みは規定範囲内であるものの、Cr欠乏層が十分に成長出来ず、バリア効果が得られない事から発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例12Aは、歪取焼鈍の焼鈍時間が発明例の条件より短いため、Cr欠乏層が十分に成長出来ず、バリア効果が得られない事から、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例13Aは歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、表面酸化層が厚くなり、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例14Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、歪取焼鈍の焼鈍温度は発明例の条件より低いため、Cr欠乏層が十分に成長出来ないばかりか、表面酸化層の厚みも厚くなり、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例15Aは、歪取焼鈍の焼鈍温度が発明例の条件より高く、表面酸化層厚みが規定範囲を超え、耐金型磨耗性は劣化した。比較例16Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、歪取焼鈍時間が発明例の条件より長いため、表面酸化層厚みが厚くなり、耐金型磨耗性は劣化した。また、Cr欠乏層厚みが規定範囲より厚くなり、引張強さ及び導電性が低下した。比較例17Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取焼鈍温度は発明例の条件より低く、歪取焼鈍時間は発明例の条件より短かったため、十点平均粗さは規定範囲を超えて大きくなり、Cr欠乏層は十分に成長出来ず、耐金型磨耗性が劣化した。比較例18Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、表面酸化層厚みも規定範囲を超えた事から耐金型磨耗性が劣化した。比較例19Aは、圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、さらに表面酸化層厚みも規定範囲を超えて耐金型磨耗性が劣化した。また、歪取焼鈍温度が低めで、低歪取焼鈍時間も短めであったため、Cr欠乏層も十分に発達しなかった。比較例20Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高く、さらに歪取時の焼鈍時間が規定範囲より長かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、さらに表面酸化層厚みも規定範囲を超えたため、耐金型磨耗性が劣化した。また、Cr欠乏層が規定範囲より厚くなり、引張強さ及び導電性が低下した。
合金Bについては、1B〜20Bの製造条件が1A〜20Aの製造条件とそれぞれ対応しており、合金Aと同様の傾向を示した。合金Bは合金Aに比べると0.04%のSi添加の影響でせん断バリ高さが合金Aに比べ小さかった。
比較例11Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件に比べて低いため、表面酸化層厚みは規定範囲内であるものの、Cr欠乏層が十分に成長出来ず、バリア効果が得られない事から発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例12Aは、歪取焼鈍の焼鈍時間が発明例の条件より短いため、Cr欠乏層が十分に成長出来ず、バリア効果が得られない事から、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例13Aは歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、表面酸化層が厚くなり、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例14Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、歪取焼鈍の焼鈍温度は発明例の条件より低いため、Cr欠乏層が十分に成長出来ないばかりか、表面酸化層の厚みも厚くなり、発明例に比べ耐金型磨耗性は劣化した。比較例15Aは、歪取焼鈍の焼鈍温度が発明例の条件より高く、表面酸化層厚みが規定範囲を超え、耐金型磨耗性は劣化した。比較例16Aは、歪取時の酸素濃度が発明例の条件より高く、歪取焼鈍時間が発明例の条件より長いため、表面酸化層厚みが厚くなり、耐金型磨耗性は劣化した。また、Cr欠乏層厚みが規定範囲より厚くなり、引張強さ及び導電性が低下した。比較例17Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取焼鈍温度は発明例の条件より低く、歪取焼鈍時間は発明例の条件より短かったため、十点平均粗さは規定範囲を超えて大きくなり、Cr欠乏層は十分に成長出来ず、耐金型磨耗性が劣化した。比較例18Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、表面酸化層厚みも規定範囲を超えた事から耐金型磨耗性が劣化した。比較例19Aは、圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、さらに表面酸化層厚みも規定範囲を超えて耐金型磨耗性が劣化した。また、歪取焼鈍温度が低めで、低歪取焼鈍時間も短めであったため、Cr欠乏層も十分に発達しなかった。比較例20Aは圧延通板速度が発明例の条件より速く、歪取酸素濃度が発明例の条件より高く、さらに歪取時の焼鈍時間が規定範囲より長かったため、十点平均粗さは規定範囲を超え、さらに表面酸化層厚みも規定範囲を超えたため、耐金型磨耗性が劣化した。また、Cr欠乏層が規定範囲より厚くなり、引張強さ及び導電性が低下した。
合金Bについては、1B〜20Bの製造条件が1A〜20Aの製造条件とそれぞれ対応しており、合金Aと同様の傾向を示した。合金Bは合金Aに比べると0.04%のSi添加の影響でせん断バリ高さが合金Aに比べ小さかった。
Claims (6)
- Crを0.1〜0.4質量%、Snを0.1〜0.3質量%、Znを0.1〜0.3質量%含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Cr−Sn−Zn系合金であって、O濃度が1質量%以上である表面酸化層の厚みが0.6μm以内であり、表面酸化層の下に形成されるCr欠乏層の厚みが0.2〜1μm以内であるCu−Cr−Sn−Zn系合金。
- 十点平均粗さが0.1〜0.6μmである請求項1記載のCu−Cr−Sn−Zn系合金。
- 更にSiを最大0.07質量%まで含有する請求項1又は2記載のCu−Cr−Sn−Zn系合金。
- バルクCr濃度に対するCr欠乏層中のCr濃度下限値の比が0.2〜0.7である請求項1〜3何れか一項記載のCu−Cr−Sn−Zn系合金。
- Cr欠乏層におけるCr濃度の下限値が0.1質量%以下である請求項4記載のCu−Cr−Sn−Zn系合金。
- 請求項1〜5何れか一項記載のCu−Cr−Sn−Zn系合金をプレス加工することによって作製した電気・電子部品。
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JP2008025300A JP2009185324A (ja) | 2008-02-05 | 2008-02-05 | プレス加工用Cu−Cr−Sn−Zn系合金 |
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-
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- 2008-02-05 JP JP2008025300A patent/JP2009185324A/ja not_active Withdrawn
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