JP2009173029A - 表面保護用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】フィッシュアイが非常に少なく、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用のフィルムとして好適なプロピレン系樹脂製の表面保護用フィルムの提供。
【解決手段】プロピレン系樹脂からなる基材層の一方の面に粘着剤層が形成された表面保護用フィルムにおいて、プロピレン系樹脂がメタロセン触媒を用いて重合され、かつ特定のMFR、融解ピーク温度、(Mw/Mn)、TREFで測定した(S40)を有するプロピレン単独重合体等であり、粘着剤層がメタロセン触媒を用いて重合され、特定の密度、(Mw/Mn)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体と特定のスチレン含量を有する熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物とを含有し、かつ特定の条件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体組成物からなることを特徴とする表面保護用フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面保護用フィルムに関し、詳しくは、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用として好適に使用される表面保護用フィルムに関する。
合成樹脂板等の建築部材や、光学機器部材の液晶表示部等は、加工時や輸送運搬時等の表面の傷つきや汚れ防止の観点から、表面保護フィルムが貼り付けられ、加工後又は輸送運搬後に係る表面保護フィルムを剥がして使用することが一般的である。
従来、表面保護フィルムとしては、エチレン系樹脂を主成分とした表面保護フィルムがある。例えば、メタロセン触媒より重合され、組成分布及び、分子量分布が狭く、フィッシュアイの存在しないエチレン系樹脂製の表面保護用フィルムが記載されている(例えば、特許文献1参照。)。また、特定の低密度ポリエチレン50〜90重量%と、重量平均分子量/数平均分子量との比が9〜15の特定の高密度ポリエチレン10〜50重量%とからなるポリエチレンと、エチレン−不飽和エステル共重合体からなる粘着剤層とを共押出しした積層フィルムが記載されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、上記特許文献に記載の表面保護フィルムにおいては、ポリエチレンが主成分であるため、フィルム製膜時に成形機押出機等の内部に滞留が生じ、エチレン成分の劣化によるゲル化が起こり、フィルム中にフィッシュアイが発生するため、被保護物に貼付けた後、そのままの状態で段積み保管した場合、上記フィッシュアイの存在により、被保護物に凹みが生じる。したがって、たとえば液晶表示材として使用される偏光板や位相差板として上記積層フィルムを使用しようとしても、凹みがあることにより画像に歪みが生じるので、適用できないという問題があった。
また、ポリエチレンの耐熱性や耐傷つき性、剛性の問題点を鑑み、かつ、塩素イオンの影響による金属薄膜層の点状欠陥を改良した塩素含有量が5重量ppm以下であるポリプロピレンからなることを特徴とするプロピレン系樹脂を主成分にした表面保護フィルムも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、該特許文献に記載のプロピレン系樹脂においても、ポリエチレンのようなゲル化は起こらないものの、分子量分布が広く、つまり分子量の小さい低分子量のものと、分子量の大きい高分子量のものとが混在しているため、高分子量成分が、フィルムを成形する際に、未溶融の微細なかたまりがフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまい、被保護物に凹みが生じる結果となる。
さらに、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂とも結晶性分布を有するが、結晶性分布が広く、低結晶成分の存在が多いと、被保護物が汚染されるという問題点がある。また、ポリマーを製造する過程において、低結晶成分のベタツキにより重合槽等でポリマー付着が発生し、滞留によるポリマーの劣化が起こり、結果としてポリマー劣化物由来のフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまい、被保護物に凹みが生じる結果となり、表面保護用フィルムとして適用できないという問題が生じている。また、結晶性分布が広いと結晶性の低い成分と結晶性の高い成分との相溶性が不均一となり結晶性の高い成分が未溶融の微細なかたまりとなりフィッシュアイとなって存在しやすくなるため同様に表面保護用フィルムとして適用できないという問題がある。
また、表面粗度の粗い建築部材等の保護を目的として、ポリオレフィン系樹脂を含有する基材層と粘着層とが共押出しによって成膜されている表面保護シートであって、粘着層が、特定のプロピレン系共重合体と、特定のスチレン系熱可塑性エラストマーとを含有することを特徴とする表面保護シートが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、透明性が悪いため、被粘着体に貼り付けたあと、被粘着体に傷があった場合の確認が困難であった。
特開平9−111208号公報 特開昭54−133578号公報 特開2006−282761号公報 特開2004−2624号公報
本発明は、前述した従来の技術の問題点に鑑み、フィッシュアイが非常に少なく、好ましくは剥離力の制御と繰り出し性能が改良され、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護用の透明性に優れた、フィルムとして好適なプロピレン系樹脂製の表面保護用フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため種々の研究を重ねた結果、特定のメルトフローレート、示差熱走査熱量計による融解ピーク温度、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた重量平均分子量と数平均分子量との比、昇温溶離分別法で測定した40℃以下の可溶分量を有するポリプロピレン系樹脂を用いることにより、フィッシュアイが少ない表面保護用フィルムが得られ、さらに粘着剤層として特定のエチレン・α−オレフィン共重合体と特定の熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物を用いて組み合わせることにより、剥離力の制御と繰り出し性能が改良され、透明性に優れた、表面保護用フィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系樹脂からなる基材層の一方の面に粘着剤層が形成された表面保護用フィルムにおいて、
前記プロピレン系樹脂が、メタロセン触媒を用いて重合され、かつ下記(A1)〜(A4)の特性を有するプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であり、
粘着剤層が、メタロセン触媒を用いて重合され、下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜95重量%と下記(C1)の特性を有する熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物(成分(C))5〜95重量%とを含有し、かつ、条件(a)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体組成物からなることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(A1)メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜50g/10分
(A2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tmp)が120〜170℃
(A3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
(A4)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%以下
(B1)密度[d]が0.860〜0.918g/cm
(B2)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以下
(C1)スチレン含量[St]が5〜60重量%
条件(a):成分(B)の密度[d](g/cm)と成分(C)のスチレン含量[St](重量%)が下記式(1)を満たす。
640[d]−561.2<[St]<640[d]−539.2 …(1)
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂が、さらに下記(A5)の特性を有することを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
(A5)昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)が30℃以下
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、基材層の一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に剥離処理層が形成されたことを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用に使用されることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護に使用されることを特徴とする表面保護用フィルムが提供される。
本発明の表面保護用フィルムは、特定のプロピレン系樹脂製のものであり、樹脂の結晶性分布が狭く、低結晶成分の溶出量が少なく、かつ分子量分布が狭く、高分子量成分が少ないことから、フィルム成形時に未溶融のフィッシュアイが非常に少ない。このため、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがない。また、本発明の表面保護用フィルムは、アンチブロッキング剤を用いることなくブロッキング性にすぐれ、かつ透明性に優れている。さらに、粘着剤層として、メタロセン触媒を用いて重合された特定のエチレン・α−オレフィン共重合体と、特定のスチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物を用いることにより、基材層と粘着層の少なくとも一方が溶融状態で積層するときは強固に接着し、粘着層と基材層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれるという特性を有する表面保護用フィルムとすることができる。
本発明は、基材層と基材層の一方の面に粘着剤層が形成され、さらに必要に応じて、粘着剤層と他方の面に剥離処理層を有する表面保護用フィルムであって、該基材層は、メタロセン触媒を用いて重合され、特性(A1)〜(A4)、必要に応じて、さらに特性(A5)を有するプロピレン単独重合体、または、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であるプロピレン系樹脂からなり、該粘着剤層は、メタロセン触媒を用いて重合され、特性(B1)〜(B2)、必要に応じて、さらに特性(B3)〜(B4)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜95重量%と特性(C1)の特性を有する熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物(成分(C))5〜95重量%とからなり、かつ、条件(a)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体組成物からなる表面保護用フィルムである。以下、本発明の表面保護用フィルムの各層の構成成分、表面保護用フィルムの製造法について詳細に説明する。
1.基材層
本発明の表面保護用フィルムにおける基材層は、プロピレン系樹脂から構成される。プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、またはプロピレンとα−オレフィンとの共重合体のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を使用することができる。ここで、共重合成分のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
本発明で用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。好ましくは、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体等が挙げられる。更に好ましくはプロピレン・エチレンランダム共重合体が挙げられる。
本発明で用いるプロピレン系樹脂は、下記の特性(A1)〜(A4)を有し、必要に応じて、さらに特性(A5)を有する。
(A1)メルトフローレート
本発明で用いるプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1〜50g/10分であり、好ましくは2〜30g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分であり、最も好ましくは7〜15g/10分である。
MFRが1g/10分未満では押出特性が悪化し、生産性が低下するため好ましくなく、また、MFRが50g/10分を超えるとフィルム成形時の厚み精度が悪化しやすくなるため好ましくない。MFRは、重合時の水素の量で調整することができる。例えば、水素の量を増やすとMFRは高くなる。
なお、本発明において採用しているメルトフローレート(MFR:単位g/10分)は、JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定する値である。
(A2)融解ピーク温度
本発明で用いるプロピレン系樹脂の融解ピーク温度(Tmp)は、120〜170℃であり、好ましくは120〜165℃であり、さらに好ましくは120〜160℃であり、最も好ましくは120℃〜150℃である。融解ピーク温度が120℃未満では、耐熱性が劣り、熱をかけて表面保護用フィルムを被保護物に貼り付ける加工工程時に表面保護用フィルムが変形し易くなる。融解ピーク温度が170℃より高いと、衝撃強度が劣り、表面保護用フィルムを被保護物に貼り付ける際に裂けが生じる恐れがある。融解ピーク温度(Tmp)は、用いるα−オレフィンの量で調整することができる。例えば、α−オレフィンの量が増えれば融解ピーク温度(Tmp)は低下する。
なお、本発明において採用している融解ピーク温度(Tmp:単位℃)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tmp)を測定する値である。
(A3)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比
本発明で用いるプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5〜3.5であり、好ましくは1.7〜3.2であり、さらに好ましくは2.0〜3.0であり、最も好ましくは、2.3〜2.8である。(Mw/Mn)が1.5未満であると、溶融樹脂粘度が高くなって溶融流動性が悪くなり、押出成形が困難となる。一方、(Mw/Mn)が3.5を超えると、分子量の小さい分子および分子量の大きい分子の存在比率が高くなり、高分子量分はフィルム成形時に未溶融のフィッシュアイとなり、被保護物に貼付けた後、そのままの状態で段積み保管すると、被保護物に凹みを生じることになる。
(Mw/Mn)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒の種類を変更することによって、調整することができる。
なお、本発明において採用している重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で行う。測定条件は、次の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN社製 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本(カラムの較正は東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量はポリスチレンとポリプロピレンの粘度式を用いてポリプロピレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数はα=0.723、logK=−3.967であり、ポリプロピレンはα=0.707、logK=−3.616である。)
測定温度:140℃
濃度:20mg/10mL
注入量:0.2ml
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
粘度式:log[η]=logK+α×logM
(A4)昇温溶離分別(TREF)法による40℃以下の可溶分(S40
本発明で用いるプロピレン系樹脂の昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)は、10重量%以下であり、好ましくは8重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、最も好ましくは4重量%以下である。
昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%より多いと低結晶成分のベタツキ成分により被保護物が汚染されるという問題点がある。また、ポリマーを製造する過程において、低結晶成分のベタツキにより重合槽等でポリマー付着が発生し、滞留によるポリマーの劣化が起こり、結果としてポリマー劣化物由来のフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまう。
40℃以下の可溶分(S40)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒およびα−オレフィンの種類と量、組成を変更することによって調整することができる。
(A5)昇温溶離分別による(T100−T20
本発明で用いるプロピレン系樹脂の昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)は、30℃以下が好ましく、より好ましくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下、最も好ましくは15℃以下である。(T100−T20)が30℃を超えると、プロピレン系樹脂の中に結晶性の高い成分と結晶性の低い成分とが同時に存在することになり、結晶成分の大きさや質が不均一となって、溶融樹脂粘度にムラが存在し、未溶融の微細なかたまりがフィッシュアイとなってフィルム中に存在してしまうおそれがある。
昇温溶離分別による(T100−T20)は、製造時の重合条件(重合温度、重合圧力)、用いる触媒およびα−オレフィンの種類と量、組成を変更することによって調整することができる。
なお、本発明において採用している昇温溶離分別(TREF)法とは、以下に示す方法である。
すなわち、試料を140℃でオルトジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
上記条件に従って得た溶出曲線から40℃で溶出する成分の全量に対する割合(重量%)を算出する。また、20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)を算出する。用いるカラム、溶媒、温度等の条件は以下の通りである。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.2mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
このようなプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて重合されたものであることを必須条件とするメタロセン触媒により重合されたプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、結晶性分布及び、分子量分布が狭いため、前記記述どおり、フィッシュアイになる成分が少ないものとなる。
一方、マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とするいわゆるチーグラーナッタ触媒などのメタロセン触媒以外の触媒により重合されたプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いると、分子量分布が広く、高分子量成分が多く含まれるため、しかも、結晶分布も広く、低結晶成分が多い上、さらに、結晶性分布が不均一なため、フィルム中に未溶融の微細なかたまりが発生し、フィッシュアイとなって存在しやすくなる。
本発明で用いられるメタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。各成分について説明する。
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。特にアズレニル基を有するメタロセン化合物と粘土鉱物を組み合わせた触媒で得られる重合体は、製膜性、低フィッシュアイのバランスに優れている。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。
該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。本発明で用いるプロピレンを得る方法としては、例えば、重合温度やコモノマー量を調節して、分子量および結晶性の分布を適宜制御することにより、所望のポリマーを得ることができる。
かかるポリプロピレンは、メタロセン系ポリプロピレンとして市販されているものの中から適宜選択し使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ社製「ウィンテック」等を挙げることができる。
なお、本発明のプロピレン系樹脂は、前記特性を満足する限り一種類もしくは二種類以上の組み合わせからなっても良い。
2.粘着剤層
本発明の表面保護用フィルムは、上記プロピレン系樹脂よりなる基材層の一方の面に粘着剤層が形成される。粘着剤層としては、下記エチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))と下記熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物(成分(C))とを含有するエチレン・α−オレフィン共重合体組成物からなる。
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))
本発明の粘着剤層で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いて重合され、下記(B1)〜(B2)の特性、さらに必要に応じて(B3)〜(B4)の特性を有する。粘着剤層にこのエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることにより、基材層と粘着剤層の少なくとも一方が溶融状態で積層するときは強固に接着し、粘着剤層と基材層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれるという特性を有する表面保護用フィルムとすることができ、表面保護フィルム製造工程において基材層との剥離強度が向上するとともに、表面保護フィルム使用時には繰り出し性が向上する。
エチレン・α−オレフィン共重合体において、エチレンと共重合されるα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が挙げられ、特に、プロピレン、ブテン−1、もしくはヘキセン−1が好ましい。また、エチレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも2種類以上でもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体中のエチレン含量は、50重量%以上が好ましい。エチレン含量が低いと粘着力が弱くなる傾向があるため粘着剤層としての効果が劣ることがある。α−オレフィンの含有量は求められる密度に応じ適宜調整される。
(B1)密度[d]
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度[d]は、0.860〜0.918g/cm、好ましくは0.865〜0.905g/cm、より好ましくは0.870〜0.898g/cmである。密度が0.860g/cm未満では粘着力が高くなりすぎて、基材層から剥離し被保護物に跡が残る問題がある。また、密度が0.918/cmを超えるものは、粘着力が弱くなり過ぎて粘着層としての効果が得られない。
なお、密度は、JIS−K6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して測定する値である。
(B2)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)
エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、3.5以下、好ましくは1.5〜3.0であり、より好ましくは2.0〜2.5である。上記範囲であれば、べたつきの発生もなく好ましい。
ここで、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。Mw/Mnの測定方法は、以下の通りである。
装置:ウオーターズ社製GPC 150C型
検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリ スチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.723、logK=−3.407である。
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
(B3)メルトフローレート
エチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR:190℃、21.18N荷重)は、0.1〜50g/10分が好ましく、より好ましくは1〜30g/10分であり、特に好ましくは2〜15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満のものは、押出特性が悪化しやすく、本発明のプロピレン系樹脂製の基材フィルムとの界面荒れが発生し問題がある。50g/10分を超えるものは厚みムラの原因になる。
なお、MFRは、JIS−K6922−2:1997付属書(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
(B4)(TREF)測定において、20℃以下の溶出量
エチレン・α−オレフィン共重合体のオルトジクロロベンゼンを溶媒とした昇温溶離分別(TREF)測定おける20℃以下の溶出量は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、特に好ましくは15重量%以下である。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体の昇温溶離分別(TREF)による65℃以上の溶出量は、0.3重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上、さらに好ましくは、5.0重量%以上である。上記範囲であれば、良好な粘着強度が維持できるので好ましい。
ここで、TREFによる溶出量の測定は、結晶性分別を行う昇温溶離分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る下記のクロス分別クロマトグラフ(CFC)方法による。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。測定条件を以下に示す。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
データ解析:測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムは、装置付属のデータ処理プログラムにより処理され、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。得られた溶出曲線から20℃以下の溶出量と65℃以上の溶出量を求める。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスでエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させて製造することができ、特にメタロセン触媒を用いて高圧法、もしくは溶液法で製造されたものが分子量分布、結晶性分布とも狭いため好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体の製造において、密度、Mw/Mn、MFR、TREF20℃以下の溶出量は、製造時の重合温度、重合圧力、用いる触媒およびエチレンとα−オレフィンの種類と組成を変更することによって、容易に調整することができる。
例えば、密度は、α−オレフィンの供給量を減らす、重合温度を上昇させると大きくなる傾向にある。また、TREF20℃以下の溶出量は、α−オレフィンの供給量を増やす、重合温度を下降させると大きくなる傾向にある。さらに、MFRは、重合圧力を上げると下がる傾向にある。
メタロセン触媒を用いたエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、日本ポリエチレン(株)製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、(株)プライムポリマー製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のエクセレンGMHシリーズ、エクセレンFXシリーズが挙げられる。
(2)熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物(成分(C))
本発明の粘着剤層で用いる熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物は、下記(C1)の特性を有する。
(C1)スチレン含量[St]
熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物のスチレン含量[St]は、5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%である。スチレン含量が5重量%未満であると、透明性改良効果が顕著に見られず好ましくない。また、60重量%を超えると、プロピレン系樹脂との親和性が著しく低下するので、分散性が低下したり、柔軟性が著しく低下するため好ましくない。
なお、スチレン含量は、699〜720cm−1のスチレンのベンゼン核の平面に対するC−H結合の面外変角振動に基づく吸収を基に赤外分析法により測定されるものである。
熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物とは、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体を水添したものである。熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。好ましくはブロック共重合体である。
上記熱可塑性スチレン−ジオレフィンブロック共重合体水素添加物においては、スチレンブロックをSTY、ジオレフィンブロック水素添加物をDENと表すと、STY−DEN、STY−DEN−STY、DEN−STY−DEN−STY、STY−DEN−STY−DEN−STYなどの構造を有する共重合体が挙げられる。
ジオレフィンの水素添加物ブロックを構成する単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ビニル化ポリイソプレンの水素添加物等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
スチレンブロックとジオレフィンブロックとのブロック共重合体の水素添加物の具体例としては、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物は、クレイトンポリマージャパン(株)より「クレイトンG」として、また、旭化成工業(株)より「タフテック」の商品名で販売されている。スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物は、(株)クラレより「セプトン」の商品名で販売されている。スチレン−ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物は、(株)クラレより「ハイブラー」の商品名で販売されている。これらの商品群より適宜選択して用いてもよい。
上記熱可塑性スチレン−ジオレフィンランダム共重合体の水素添加物において、ジオレフィンの水素添加物ブロックを構成する単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ビニル化ポリイソプレン等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
スチレンとジオレフィンとのランダム共重合体の水素添加物の具体例としては、スチレンブタジエンランダム共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレンランダム共重合体の水素添加物、スチレン−ビニル化ポリイソプレンランダム共重合の水素添加物が挙げられ、これらは、単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物は、JSR(株)より「ダイナロン」の商品名で販売されている。
さらに、熱可塑性スチレン−ジオレフィンブロック共重合体の水素添加物と熱可塑性スチレン−ジオレフィンランダム共重合体の水素添加物を混合して使用することもできる。
(3)エチレン・α−オレフィン共重合体と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物との関係
本発明の粘着剤層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体組成物は、上記エチレン・α−オレフィン共重合体と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物と含む組成物であるが、次の条件(a)を満たす必要がある。
条件(a):エチレン・α−オレフィン共重合体の密度[d](g/cm)と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物のスチレン含量[St](重量%)が下記式(1)の関係を満たし、
640[d]−561.2<[St]<640[d]−539.2 …(1)
好ましくは、式(1)’を満たし、
640[d]−558.2<[St]<640[d]−539.2 …(1)’
より好ましくは、式(1)”を満たす。
640[d]−555.2<[St]<640[d]−541.2 …(1)”
スチレン含量[St](重量%)が式(1)の関係を外れると、十分な透明改良効果が見られない。
なお、式(1)は経験的に導かれたもので、理論的意味合いは明らかとされてはいないが、式(1)の範囲内となるエチレン・α−オレフィン共重合体と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物との組合せにおいては、両成分の親和性が増し、組成物としたときの分散性が高まることや、各成分の屈折率が近づき散乱が減少するためと考えられる。
(4)エチレン・α−オレフィン共重合体と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物の配合割合
本発明の粘着剤層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体と熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体の配合割合は、エチレン・α−オレフィン共重合体5〜95重量%に対して、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物が5〜95重量%となるようにする。好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体20〜90重量%に対して、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物が10〜80重量%である。より好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体40〜85重量%に対して、熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物が15〜60重量%である。エチレン・α−オレフィン共重合体が95重量%を超過すると、粘着力が弱くなり過ぎて粘着層としての効果が得られない。熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物が95重量%を超過すると、粘着力が高くなりすぎて、表面保護フィルムから剥離し被保護物に剥離跡が残る問題がある。
なお、これら粘着剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
3.剥離処理層
本発明の表面保護フィルムは、上記プロピレン系樹脂よりなる基材層の一方に形成される粘着層の他方の面に剥離処理層が形成されていてもよい。剥離処理層としては、シリコーン系又は長鎖アルキル系剥離処理剤などの剥離処理剤にて形成した層、フィルム表面を荒らして凹凸を形成させた層等を挙げることができる。
シリコーン系又は長鎖アルキル系剥離処理剤にて形成した層を用いることにより、粘着層と剥離処理層の両方が固体状態で接するロール巻状態から、ロールを解くときにはスムースにはがれ、使用時には繰り出し性が向上するという特性を有する表面保護用フィルムとすることができる。また、剥離処理層の表面を荒らすことなく繰り出し性を向上させることができるため、優れた透明性を維持したままの表面保護フィルムとすることができる。
シリコーン系剥離処理剤としては、ジメチルポリシロキサンを主体とする通常用いられるシリコーン系剥離処理剤も使用可能である。上記シリコーン系剥離処理剤に3次元化オルガノポリシロキサンを含有させたものも使用可能である。具体的には、オルガノポリシロキサンを主成分とし、これにメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体やアルキッド樹脂等を配合したシリコーン系剥離処理剤が好適に使用される。セルロース誘導体やアルキッド樹脂等を配合することにより、シリコーン系離型剤の離型性をコントロールすることができる。セルロース誘導体やアルキッド樹脂は、シリコーン系剥離処理剤中、好ましくは5〜50重量%配合される。
オルガノポリシロキサンの硬化反応(架橋反応)の形式により、縮合反応型と付加反応型に大別されるが、本発明においては、いずれの反応型であってもよい。
例えば、縮合反応型シリコーン系離型剤としては、例えば、分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンに、セロルース誘導体やアルキッド樹脂を配合したシリコーン系離型剤が挙げられる。ここで分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンとしては、側鎖の官能基としてメチル基やエチル基等のアルキル基やフェニル基が導入されたポリシロキサン(例えば、ジメチル・ジフェニルポリシロキサン)を使用することが好ましく、これにより、セルロース誘導体やアルキッド樹脂との相溶性が良好となり、剥離特性が安定した離型剤を得ることができる。またこの分子末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンには、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサン等の架橋剤や、ジブチルすずジラウレート、ジブチルすずジアセテート、ジブヂルすずジオクテート、オクチル酸亜鉛等の触媒を適宜配合してもよい。また必要に応じて第三成分としてアクリル樹脂等の樹脂も適宜配合できる。シリコーン系離型剤中、上記架橋剤は、好ましくは4〜20重量%、触媒は、好ましくは5〜10重量%、第3成分としての樹脂は好ましくは5〜26重量%配合される。
付加反応型シリコーン系離型剤としては、例えば、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基等のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンに、セロルース誘導体やアルキッド樹脂を配合したシリコーン系離型剤が挙げられる。ここで上記のオルガノポリシロキサンとしては、側鎖の官能基として、メチル基やエチル基等のアルキル基やフェニル基が導入されたオルガノポリシロキサンを使用することが好ましく、これにより、セルロース誘導体やアルキッド樹脂との相溶性が良好となり、剥離特性が安定した離型剤を得ることができる。また上記オルガノポリシロキサンには、オルガノハイドロジエンポリシロキサン等の架橋剤や、塩化第一白金酸等の白金系化合物等の触媒を適宜配合してもよい。
上記のシリコーン系剥離処理剤は、市販されているものの中から適宜選択して使用することができ、例えば、縮合反応型シリコーン系離型剤としては、信越化学工業(株)から入手できる、KS−723A/B(ジメチル・ジフェニルポリシロキサン、メトキシシリコーンおよびエチルセルロースからなる)が、付加反応型シリコーン離型剤としては、信越化学工業(株)から入手できる、X−62−9201A/Bを使用することができる。
また、長鎖アルキル系剥離処理剤としては、炭素数12以上の長鎖アルキルアクリレートの重合物や、長鎖アルキルアクリレートと他のビニルモノマーとの共重合物、あるいはポリビニルアルコールに長鎖アルキルイソシアネートなどの長鎖アルキル成分を反応させて得られる反応物等から得られる離型剤が挙げられる。
例えば、日東電工株式会社製BPタイプ、アシオ産業株式会社製アシオレジン、一方社油脂株式会社製ピーロイルなどを用いることができる。
剥離処理層は、シリコーン系又は長鎖アルキル系剥離処理剤を塗布して剥離処理層を形成する方法が挙げられるが、基材層との密着性を考慮し、プロピレン系樹脂に剥離処理剤を配合し剥離処理層として使用することができる。プロピレン系樹脂に上記剥離処理剤を配合して使用する場合、プロピレン系樹脂および剥離処理剤の合計を100重量%としたとき、プロピレン系樹脂の含有量が99〜99.95重量%であり、剥離処理剤の含有量が1〜0.05重量%である。
フィルムの剥離処理層側表面を荒らして凹凸を形成し剥離性を向上させた層は、剥離処理層表面の中心面平均粗さ(Ra)が下記の測定条件(c1)〜(c6)において好ましくは0.2〜1.5μmの範囲内であれば、使用される樹脂は特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂、またはそれらの混合物でもよい。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂からなる層がよい。具体的には、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体単独、あるいは、プロピレン単独重合体にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を配合したもの、あるいは、低密度ポリエチレン単独、高密度ポリエチレン単独、あるいは、低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン単独重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体に低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したもの、あるいは、これらポリオレフィン系樹脂を2種以上配合したもの、あるいはこれらポリオレフィン系樹脂に相溶性の異なる熱可塑性樹脂などを配合したものを挙げることができる。さらに好ましくは、本発明の基材層に用いられるプロピレン系樹脂にプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、または低密度ポリエチレン、または高密度ポリエチレンを配合したものがフィッシュアイおよび層間剥離性の観点からもよい。
(c1)触針先端曲率半径が5μm
(c2)カットオフ波長が0.80mm
(c3)カットオフ種別が2CR(位相補償)
(c4)測定速度が0.3mm/秒
(c5)測定方向がフィルムのMD方向
(c6)測定長さが2mm
フィルム表面を荒らして凹凸を形成し剥離性を向上させるには、フィルム表面の凹凸は、中心面平均粗さ(Ra)で好ましくは0.2〜1.5μmである。より好ましくは0.3〜1.2μm、さらに好ましくは0.5〜1.0μm、もっとも好ましくは0.8〜1.0μmである。上記範囲は剥離性能と、粘着層への凸凹の転写防止の観点から好ましい。
ここで、中心面平均粗さ(Ra)の測定法は、測定方法や測定条件によって得られる値が異なるので、本発明では、JIS−B−0651(1976)で規定されている触針式表面粗さ測定器で測定する。測定器の測定条件は、触針先端曲率半径を5μm、カットオフ波長を0.80mm、カットオフ種別を2CR(位相補償)、測定速度を0.3mm/秒、測定方向をフィルムMD方向、測定長さを2mmとし、得られた値で表面粗度の範囲を規定した。測定方向であるMD方向とは、プロピレン−エチレンブロック共重合体を主成分とする樹脂組成物を押出し成形するときのフィルムの送り方向、すなわちフィルムの長手方向と平行な方向をいう。
剥離処理層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体等のプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂が挙げられる。
プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体は、一般的にチーグラー触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、それら触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等の重合法で製造される。また、共重合成分のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。α−オレフィンは単独で使用してもよいが2種類以上を併用して使用してもかまわない。
高密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンまたはエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンは、パーオキサイドなどのラジカル発生剤を重合開始剤として、高圧ラジカル重合法等のプロセスで、エチレン又はエチレンと少量のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを(共)重合させて製造される。
直鎖状低密度ポリエチレンは、一般的にチーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスでエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合させて製造される。α−オレフィンは単独で使用してもよいが2種類以上を併用して使用してもかまわない。
低密度ポリエチレンは、成形性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンを使用することが好ましい。
また、剥離処理層に用いられるポリオレフィン系樹脂は、単独または、ポリオレフィン系樹脂を二種以上組み合わせた樹脂組成物を好ましく用いることができ、その配合量および樹脂の基本物性は、本発明のフィルムの剥離処理層表面の中心面平均面粗さ(Ra)が0.2〜1.5μmの範囲内にすることが好ましく、ポリエチレン系樹脂同士の組み合わせでは、好ましくは、低密度ポリエチレン100〜5重量%、高密度ポリエチレン0〜95重量%、より好ましくは、低密度ポリエチレン100〜20重量%、高密度ポリエチレン0〜80重量%、さらに好ましくは、低密度ポリエチレン100〜50重量%、高密度ポリエチレン0〜50重量%を含むポリエチレン樹脂組成物である。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS−K6922−2:1997に準拠し、190℃、21.18N荷重で測定する値)は0.1〜40g/10分であり、好ましくは0.3〜25g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
また、プロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を混合して剥離処理層として使用する場合、好ましくは、プロピレン系樹脂95〜50重量%、ポリエチレン系樹脂5〜50重量%、より好ましくは、プロピレン系樹脂95〜70重量%、ポリエチレン系樹脂5〜30重量%を含む樹脂組成物である。
また、プロピレン系樹脂同士の組み合わせでは、好ましくは、プロピレン単独重合体95〜0重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜100重量%、より好ましくは、プロピレン単独重合体95〜50重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜50重量%を含む樹脂組成物である。また、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体95〜0重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜100重量%、より好ましくは、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体95〜50重量%、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体5〜50重量%を含む樹脂組成物である。
剥離処理層に用いられるプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定する値)は基材層との界面荒れを抑制するため基材層に使用されるプロピレン系樹脂に近いメルトフローレート(MFR)が好ましく、メルトフローレート(MFR)は、1〜50g/10分であり、好ましくは2〜30g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分であり、最も好ましくは7〜15g/10分である。また、剥離処理層に用いられるプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の組み合わせでは、プロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)とポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR;JIS−K6922−2:1997に準拠し、190℃、21.18N荷重で測定する値)はそのMFRに差がありすぎると相溶性が極端に悪くなり、フィッシュアイの原因となるため、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.1〜40g/10分であり、好ましくは0.3〜25g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
なお、低密度ポリエチレンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4.0〜8.0であることが好ましい。Mw/Mnが4.0〜8.0であると、外層−粘着層間剥離性に優れる。
特に、剥離処理層に用いられるポリエチレン樹脂等は、輸送運搬時にフィルム表面の傷つきを防ぐために、D硬度は50以上のものが好ましい。
ここで、D硬度は、JIS K7215に準拠して測定する値である
ポリオレフィン系樹脂のD硬度は、ポリオレフィン系樹脂メーカーやポリオレフィン系樹脂販売会社作成の商品パンフレットに掲げられているので、それら市販品の中から選択することが可能である。ポリオレフィン系樹脂を二種以上組み合わせた樹脂組成物のD硬度は、各ポリオレフィン系樹脂のD硬度と組成割合から加成則計算で予測することができる。一般に、D硬度はポリオレフィン系樹脂の結晶化度に応じて変化すると考えられる。ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂では高密度ポリエチレンが高く、密度が小さくなるにつれて低くなる傾向がある。また、プロピレン系樹脂ではプロピレン単独重合体が高く、共重合成分の量が増加するにつれて低くなる。
本発明においては、D硬度が50以上を満たす範囲内で、他の性能(成形性、中間層との層間強度等)を勘案しつつ選ぶことが好ましい。成形加工性の点から高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン5〜100重量%、高密度ポリエチレン0〜95%を含む樹脂組成物であることが好ましい。成形性が優れる高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンと高いD硬度の高密度ポリエチレンとのブレンドにより、成形性が良好な硬度の高い外層とすることができる。その他の好ましい態様としては、密度が0.925g/cm以上の直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。その利点はフィルム強度が強くなることである。
4.各層で用いることのできる樹脂配合剤
本発明における基材層、粘着剤層および必要に応じて用いられる剥離処理層には、フィルムの製膜安定性、2次加工時の取り扱い及び表面保護用フィルムとしての品質維持から、本発明の目的が損なわれない範囲で、公知の樹脂配合剤として使用される各種添加剤、例えば、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、核剤、中和剤、光安定剤、帯電防止剤、粘着付与剤等を含有していてもよい。各種添加剤について以下に詳しく述べる。
(1)酸化防止剤
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどを挙げることができる。
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)などを挙げることができる。
これら酸化防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
酸化防止剤の配合量は、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。酸化防止剤の配合量が前記範囲内では熱安定性が向上し、フィッシュアイの原因となる樹脂の劣化が抑制される。
(2)アンチブロッキング剤
アンチブロッキング剤の平均粒子径は1〜7μm、好ましくは1〜5μm、さらに好ましくは、1〜4μmである。平均粒子径が1μm未満では、得られるフィルムの滑り性、開口性が劣り好ましくない。一方、7μmを越えると、透明性、傷つき性が著しく劣り好ましくない。ここで平均粒子径は、コールターカウンター計測による値である。
アンチブロッキング剤の具体例としては、たとえば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
また、有機系としては、ポリメチルメタクリレート、ホリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に合成シリカ、ポリメチルメタクリレートが分散性、透明性、耐ブロッキング性、傷つき性のバランスから好適である。
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものを用いてもよく、表面処理剤としては、界面活性剤、金属石鹸、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩等を用いることができ、特に有機酸処理なかでもクエン酸処理されたものが好適である。処理方法は特に限定されるものではなく、表面噴霧、浸漬等公知の方法を採用することができる。
アンチブロッキング剤はいかなる形状であってもよく球状、角状、柱状、針状、板状、不定形状等任意の形状とすることができる。
これらアンチブロッキング剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
アンチブロッキング剤の配合量は、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。アンチブロッキング剤の配合量が前記範囲内ではブロッキング性が向上し、繰り出し性が向上する。
(3)スリップ剤
スリップ剤としては、モノアマイド類、ビスアマイド類等が挙げられ、これらは置換されたものであってもよい。これらのうち1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
モノアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸モノアマイドとしては、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
モノアマイドのうち置換アマイド類の具体例としては、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−オレイルオレイン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類の具体例としては、飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイドなどが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとしては、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
これらの中では、特に、脂肪酸アマイドのうち、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ベヘニン酸アマイドが好適に使用される。
ビスアマイドのうち置換アマイド類の具体例としては、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセパシン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセパシン酸アマイド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アマイドなどが挙げられる。
スリップ剤の配合量としては、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部、より好ましくは0.1〜0.4重量部である。スリップ剤の配合量が前記範囲内では滑り性が向上し、繰り出し性が向上する。
(4)核剤
核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物((株)ADEKA製、商品名NA21)等が挙げられる。
上記核剤の配合量としては、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.0005〜0.5重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.05重量部である。核剤の配合量が前記範囲内では結晶化速度が速くなり、透明性が向上する。
また、上記以外の核剤として高密度ポリエチレン樹脂を挙げることができる。高密度ポリエチレン樹脂としては、密度が、0.94〜0.98g/cm、好ましくは、0.95〜0.97g/10cmである。密度がこの範囲を外れると透明性改良効果が得られない。高密度ポリエチレン樹脂の190℃メルトフローレイト(MFR)は、5g/10分以上、好ましくは7〜500g/10分、さらに好ましくは、10〜100g/10分である。MFRが5g/10分より小さいときは高密度ポリエチレン樹脂の分散径が充分に小さくならず、それ自体が異物となってフィッシュアイの原因となり好ましくない。また、高密度ポリエチレン樹脂が微分散するためには好ましくは高密度ポリエチレン樹脂のMFRが本発明のプロピレン系樹脂のMFRより大きい方がよい。
核剤として使用される高密度ポリエチレン樹脂の製造は、目的の物性を有する重合体を製造し得る限りその重合方法や触媒について特に制限はない。触媒については、チーグラー型触媒(すなわち、担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組み合わせに基づくもの)、カミンスキー型触媒(すなわち、担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。高密度ポリエチレン系樹脂の形状については制限がなく、ペレット状であってもよく、また、粉末状であってもよい。
核剤として使用される高密度ポリエチレンの配合量としては基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。高密度ポリエチレンの配合量が前記範囲内では結晶化速度が速くなり、透明性が向上する。また、共押出成形の場合、スイーパーロールの転写がなくなる。
(5)中和剤
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学工業(株)製)などを挙げることができる。
中和剤の配合量は、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部、より好ましくは0.05〜0.1重量部である。中和剤の配合量が前記範囲内では内部滑剤としての効果が向上し、押出機内部の劣化物の掻き出しを抑制する。
(6)光安定剤
光安定剤としては、ヒンダードアミン系安定剤が好適に使用され、従来公知のピペリジンの2位および6位の炭素に結合しているすべての水素がメチル基で置換された構造を有する化合物が特に限定されることなく用いられるが、具体的には以下のような化合物が用いられる。
具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジなどを挙げることができる。
これらのヒンダードアミン系安定剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系安定剤の配合量は、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.05〜0.5重量部とするのが望ましい。
ヒンダードアミン系安定剤の含有量が、前記範囲内では耐熱性、耐老化性等の安定性が向上する。
(7)帯電防止剤
帯電防止剤としては、従来から静電防止剤または帯電防止剤として使用されている公知のものであれば特に限定されることなく使用でき、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
上記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸またはロジン酸セッケン、N−アシルカルボン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミン塩等のカルボン酸塩;スルホコハク酸塩、エステルスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩等のスルホン酸塩;硫酸化油、硫酸エステル塩、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、硫酸エーテル塩、硫酸アミド塩等の硫酸エステル塩;リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、リン酸エーテル塩、リン酸アミド塩等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩等のアミン塩;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、テトラアルキルアンモニウム塩、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム塩、N−アルキルアルカンアミドアンモニウムの塩等の第4級アンモニウム塩;1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−1−アルキル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体;イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、イソキノリニウム塩などが挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤としては、アルキルポリオキシエチレンエーテル、p−アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル等のエーテル形;脂肪酸ソルビタンポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸ソルビトールポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸グリセリンポリオキシエチレンエーテル等のエーテルエステル形;脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、2価アルコールエステル、ホウ酸エステル等のエステル形;ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミド、アルカノールアミンエステル、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルカンアミン、アミンオキシド、アルキルポリエチレンイミン等の含窒素形などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、モノアミノカルボン酸、ポリアミノカルボン酸等のアミノ酸形;N−アルキルアミノプロピオン酸塩、N,N−ジ(カルボキシエチル)アルキルアミン塩等のN−アルキル−β−アラニン形;N−アルキルベタイン、N−アルキルアミドベタイン、N−アルキルスルホベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン形;1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシ−1−ヒドロキシエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン、1−スルホエチル−2−アルキル−2−イミダゾリン等のアルキルイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
これらの中では、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好ましく、中でもモノグリセリド、ジグリセリド、ホウ酸エステル、ジアルコールアルキルアミン、ジアルコールアルキルアミンエステル、アミド等のエステル形または含窒素形の非イオン性界面活性剤;ベタイン形の両性界面活性剤が好ましい。
なお、帯電防止剤としては、市販品を使用することができ、例えば、エレクトロストリッパーTS5(花王(株)製、商標、グリセリンモノステアレート)、エレクトロストリッパーTS6(花王(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA(花王(株)製、商標、ラウリルジエタノールアミン)、エレクトロストリッパーEA−7(花王(株)製、商標、ポリオキシエチレンラウリルアミンカプリルエステル)、デノン331P(丸菱油化(株)製、商標、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート)、デノン310(丸菱油化(株)製、商標、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル)、レジスタットPE−139(第一工業製薬(株)製、商標、ステアリン酸モノ&ジグリセリドホウ酸エステル)、ケミスタット4700(三洋化成(株)製、商標、アルキルジメチルベタイン)、レオスタットS(ライオン(株)製、商標、アルキルジエタノールアミド)などが挙げられる。
帯電防止剤の配合量は基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、さらに好ましくは0.1〜0.8重量部、もっとも好ましくは0.2〜0.5重量部である。これら帯電防止剤は、本目的の効果を損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。帯電防止剤の配合量が、前記範囲内では帯電を防止し埃等の付着物を抑制することができる。
(8)粘着付与剤
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5系石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、タッキファイヤー等が挙げられ、これらは、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
粘着性付与剤の配合量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、基材層、粘着剤層および剥離処理層の各層に用いられる各々の樹脂100重量部に対し、0.0001〜200重量部である。好ましくは0.01〜150重量部、さらに好ましくは1〜150重量部、もっとも好ましくは10〜100重量部である。粘着性付与剤の配合量が前記範囲内では粘着力が向上する。
(9)その他
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、柔軟性を付与する成分としてエラストマーを配合したり、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックスなどを配合することができ、その配合割合は適宜量である。
上記の各種添加剤の配合は、重合により得られた本発明のプロピレン系樹脂中に直接添加し溶融混練して使用することも可能であるし、溶融混練中に添加してもよい。さらには溶融混練後に直接添加、或いは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
一般的には、酸化防止剤や中和剤などの添加剤を配合して、混合、溶融、混練された後、製品に成形され使用される。成形時に本発明の効果を著しく損なわない範囲で他樹脂、或いは、その他の付加的成分(マスターバッチを含む)を添加し使用することも可能である。
上記の混合、溶融、混練は、従来公知のあらゆる方法を用いることができるが、通常、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことが好ましい。
5.表面保護用フィルムの製造
本発明の表面保護用フィルムは、公知の積層フィルムの製造方法で製造することができる。
例えば、Tダイキャスト法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法等の公知の技術によって製造する。
なかでも、Tダイキャスト法としては、押出機で溶融混練された樹脂がTダイから押し出され、水等の冷媒を通したロールに接触させられることにより冷却されてフィルムを製造するTダイキャスト法が、一般に透明性が良く、厚み精度の良いフィルムを製造することができる。この様な方法はフィルムにとって好ましい製造方法である。
ここで、表面保護用フィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜500μm、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μm、もっとも好ましくは40〜80μmである。厚みがこの範囲外では加工が困難となる。
粘着剤層を積層により得る方法として、押出機により、粘着剤を加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に押し出し、基材層の片面に積層する方法、あるいは、押出機により、基材層及び粘着剤を加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
粘着剤層の厚さは、用途により粘着強度が異なることから、特に限定されないが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm、最も好ましくは10〜20μmである。
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層とは他方の面に設ける剥離処理層の形成手段としては、塗布、硬化、積層などの公知の方法を挙げることができる。
剥離処理層を塗布により得る方法としては、基材層の片面に対し、トルエン溶液等の有機溶剤に溶かした剥離処理剤をロールコーター等により塗布後、乾燥して剥離処理剤を硬化させて剥離処理層を形成する方法を挙げることができる。その際、基材層と剥離処理層との親和力を向上させるため、基材層の片面(剥離処理層との接着面)に、従来公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー処理などが施されていてもよい。
また、剥離処理層を積層により得る方法としては、押出機により、ポリオレフィン系樹脂に剥離処理剤を配合して加熱溶融させて、Tダイよりフィルム状に、基材層の片面に積層する方法、あるいは、押出機により、基材層及びポリオレフィン系樹脂に剥離処理剤を配合させた剥離処理層を加熱溶融させて、基材層と共にTダイよりフィルム状に共押出しする方法などを挙げることができる。
本発明では、剥離処理層の表面を荒らして凹凸を形成し、剥離性を付与する方法を採用すると、汚染性の問題、経済上の点で有利であるため、該剥離処理層の製造に適した、Tダイにより共押出し、積層する方法が好ましい。
後工程で剥離処理層を塗布する方法の場合、剥離処理剤の塗布量は、通常、シリコーン系の場合、0.01〜10g/m、好ましくは0.1〜3g/mである。また長鎖アルキル系の場合、0.005〜10g/m、好ましくは0.02〜0.3g/m、特に好ましくは0.01〜0.1g/mが好ましい。
また、押出機により加熱溶融させて積層する方法の場合、剥離処理層の厚さは、特に限定されないが、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm、最も好ましくは10〜20μmである。
6.表面保護用フィルムの用途
本発明の表面保護用フィルムは、被着体の表面に粘着剤層が接するように貼着される。被着体としては、建築部材、液晶表示の構成部材等が挙げられる。建築部材としては、合成樹脂版板、化粧板、金属板、ガラス板などが挙げられる。また液晶表示の構成部材としては、偏光板や位相差板などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた物性測定法、特性評価法、樹脂材料は以下の通りである。
1.物性測定法、特性評価法
(1)MFR:プロピレン系樹脂は、JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18N荷重で測定し、エチレン・α−オレフィン共重合体は、JIS K−6922−2:1997付属書に準拠し、190℃、荷重21.18N荷重で測定した。
(2)密度:JIS K−6922−2:1997付属書(23℃)に準拠して測定した。
(3)融解ピーク温度:示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度(Tmp)を測定した。
(4)重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn):上述の方法で測定した。
(5)昇温溶離分別法:上述の方法で測定した。
(6)n−デカン可溶分量:サンプル5gにn−デカン200mlを加え、撹拌しながら加熱して試料を完全に溶解させた。約3時間かけて、20℃まで冷却させ、30分間放置した。その後、析出物をろ別した。ろ液を1000mlのアセトン中に入れ、n−デカン中に溶解していた成分を析出させた。析出物とアセトンをろ別し、析出物を乾燥した。なお、ろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。n−デカン可溶分量は、以下の式によって求めた。
n−デカン可溶分量(重量%)=[析出物重量/サンプル重量]×100
(7)ヘイズ:フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下にて24時間状態調整した後、JIS−K7136−2000に準拠してヘイズメーターで測定した。得られた値が小さいほど透明性がよい。
(8)引張弾性率:フィルムをISO527に準拠し、下記の条件にて、フィルムの流れ方向(MD)についての引張弾性率を測定した。
得られた数値が高い方がフィルムの剛性が高く、表面保護用のフィルムとして取り扱いやすい。
サンプル長さ:150mm
サンプル幅:10mm
チャック間距離:100mm
クロスヘッド速度:25mm/min
(9)フィッシュアイ:フィルムの面積1mよりフィッシュアイの個数を数えた。得られたフィッシュアイを目視にて長径で0.4mm以上(≧0.4mm)、0.4mmより小さく0.2mm以上(<0.4mm〜≧0.2mm)、0.2mmより小さく0.1mm以上(<0.2mm〜≧0.1mm)の各サイズに分類し、それぞれの個数を分けた(単位:個/m)。
フィッシュアイの数が少ない方が、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがなく表面保護フィルムとして良好である。
(10)粘着性:フィルムのタテ方向を長手方向にとり、幅25mm、長さ20cmに切断し、予め60℃に加温したアクリル樹脂板(鏡面状のアクリル板(三菱レイヨン(株)製『アクリライトL001』3mm板)に貼りつけた。貼りつけたフィルムを温度23℃湿度50%の中で12時間エージングした後、JIS Z0237に準拠して引張速度300mm/min、引きはがし角度180℃にて25mm幅あたりの粘着強度を測定した。
数値が高ければ粘着強度が高い。粘着強度は被着体により目標の強度は異なるが、一般的には1〜400g/25mmの範囲で使用される。粘着強度低すぎると、被着体への貼りあわせができない。また、粘着強度が高すぎると被着体から容易に剥離することができない。
(11)外層−粘着層間剥離性:通常表面保護フィルムは、剥離処理層と粘着層が接した形で紙管に巻き取られ、繰り出されて製品に接着して使用される。繰り出し性の評価として、成形したフィルムを3インチの紙管に外層と粘着層が接した形で巻き取り、繰り出し機に取り付け20m/分で繰り出した際にシワ、たるみ等入らずに滑らかに繰り出せるかを目視で確認し、滑らかに繰り出せるものを○、滑らかに繰り出せないものを×とした。
(12)層間剥離(打抜衝撃強度):東洋精機製の「パンクチャーテスター」試験機を用い、1/2インチの半球ヘッドを用いて打ち抜きを行い、目視で確認し、剥離しないものを○、剥離の有るものを×とした。
2.樹脂材料
(1)プロピレン系樹脂
プロピレン系樹脂として、メタロセン触媒によるプロピレン・エチレンランダム共重合体(ウィンテックWFX4(日本ポリプロ(株)製)、ウィンテックWFW4(日本ポリプロ(株)製)、チーグラー触媒によるプロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体(ノバテックPP FW4B(日本ポリプロ(株)製))、チーグラー触媒によるプロピレン・エチレンランダム共重合体(ノバテックPP FX3A(日本ポリプロ(株)製))を用いた。表1に物性を示す。
Figure 2009173029
メタロセン触媒を用いて重合したプロピレン系樹脂として、WFX4、WFW4、FX3A、FW4Bを原料とし、口径35mmφの押出機、幅330mmTダイス、エアナイフおよび冷却ロールを具備したTダイ法フィルム製造装置を用いて、Tダイのリップクリアランスを0.8mm、押出機のシリンダーの設定温度を230℃、冷却ロール温度を35℃の条件において、製膜引取速度10m/minで成形し、フィルム厚さ40μmのフィルムを得た。得られたフィルムからプロピレン系樹脂フィルム(基材層)の特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2009173029
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体
エチレン・α−オレフィン共重合体として、メタロセン触媒による下記製造例1〜3で得られたエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(PE−1〜3)を用いた。表3に物性を示す。
(製造例1)
触媒の調製は、特表平7−508545号公報に記載された方法で実施した。即ち、錯体ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジメチル2.0ミリモルに、トリペンタフルオロフェニルホウ素を上記錯体に対して等倍モル加え、トルエンで10リットルに希釈して触媒溶液を調製した。内容積1.5リットルの撹拌式オートクレーブ型連続反応器を反応器内の圧力を130MPaに保ち、エチレンと1−ヘキセンとの混合物を1−ヘキセンの組成が73重量%となるように40kg/時の割合で連続的に供給した。また、重合温度が127℃を維持するように触媒供給量を調整した。1時間あたりのポリマー生産量は約2.1kgであった。反応終了後、MFRが3.5g/10分、密度が0.880g/cm、Mw/Mnが2.0、TREFの20℃以下の溶出量が12.3重量%のエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE1)を得た。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE1)を、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、粘着剤樹脂(PE−1)を得た。
(製造例2)
製造例1において、重合温度が144℃、エチレンと1−ヘキセンとの混合物中の1−ヘキセンの組成が63重量%となるように条件を変更して、エチレン・1−ヘキセン共重合体(PE2)を得た。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE2)を、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、粘着剤樹脂(PE−2)を得た。表3に物性を示す。
(製造例3)
製造例1において、重合温度が156℃、エチレンと1−ヘキセンとの混合物中の1−ヘキセンの組成が54重量%となるように条件を変更して、エチレン・1−ヘキセン共重合体(PE3)を得た。得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体(PE3)を、50mmφ単軸押出機を用い、押出温度230℃にてペレット化し、粘着剤樹脂(PE−3)を得た。表3に物性を示す。
Figure 2009173029
(3)熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物
熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物として、表4に示すスチレンブロック−ブタジエンブロック−スチレンブロック共重合体水添物(SEBS−1)〜(SEBS−3)を用いた。
Figure 2009173029
(実施例1)
35mmφの押出機及び20mmφの押出機、幅300mmのTダイス、エアナイフおよび冷却ロールを具備したTダイ法2層共押出フィルム製造装置を用い、35mmφの押出機に基材層用原料としてプロピレン系樹脂(WFX4)を使用、20mmφの押出機に粘着剤層用原料としてPE−1:80重量%とSEBS−3:20重量%の混合物を使用し、Tダイのリップクリアランスを0.8mm、押出機のシリンダーの設定温度を230℃、冷却ロール温度を35℃の条件において、製膜引取速度10m/minで、基材層厚み40μm、粘着層厚み10μmになるように共押出して2層の未延伸フィルムからなる保護用フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表5に示す。
(実施例2)
基材層に用いるプロピレン系樹脂としてWFW4を用いた以外は実施例1と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表5に示す。
(実施例3)
粘着剤層としてPE−2:80重量%とSEBS−1:20重量%の混合物を用いた以外は実施例2と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表5に示す。
(実施例4)
粘着剤層としてPE−2:80重量%とSEBS−2:20重量%の混合物を用いた以外は実施例2と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表5に示す。
(実施例5)
粘着剤層としてPE−1:50重量%とSEBS−3:50重量%の混合物を用いた以外は実施例2と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表5に示す。
(比較例1)
粘着剤層としてPE−3:80重量%とSEBS−3:20重量%の混合物を用いた以外は実施例2と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表6に示す。このものは、透明性に劣る。
(比較例2)
粘着剤層としてPE−1:80重量%とSEBS−1:20重量%の混合物を用いた以外は実施例2と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表6に示す。このものは、透明性に劣る。
(比較例3)
基材層に用いるプロピレン系樹脂としてFX3Aを用いた以外は実施例1と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表6に示す。このものは、層間剥離性に劣る。
(比較例4)
基材層に用いるプロピレン系樹脂としてFW4Bを用いた以外は実施例1と同様の条件にて表面保護フィルムを成形した。得られた表面保護用フィルムの評価結果を表6に示す。このものは、層間剥離性に劣る。
Figure 2009173029
Figure 2009173029
表5、6の結果から本発明の表面保護用フィルムは、透明性の特性を有することがわかり、特に、粘着剤層に、特定物性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることによって得られる表面保護フィルムは、透明性、剛性に優れ、粘着層の密度を調整することにより目的の粘着強度を付与することができ、さらに、繰り出し性に優れ、層間剥離の無いまたは少ない表面保護用フィルムになることがわかる(実施例1〜5)。
本発明の表面保護用フィルムは、特定のプロピレン系樹脂製のものであり、樹脂の結晶性分布が狭く、低結晶成分の溶出量が少なく、かつ分子量分布が狭く、高分子量成分が少ないことから、フィルム成形時に未溶融のフィッシュアイが非常に少ない。このため、表面保護フィルムを被保護物に貼付けて段積み保管しても、被保護物に凹みが生じることがない。したがって、合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用、偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の透明性に優れた表面保護のフィルムとして好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. プロピレン系樹脂からなる基材層の一方の面に粘着剤層が形成された表面保護用フィルムにおいて、
    前記プロピレン系樹脂が、メタロセン触媒を用いて重合され、かつ下記(A1)〜(A4)の特性を有するプロピレン単独重合体、またはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であり、
    粘着剤層が、メタロセン触媒を用いて重合され、下記(B1)〜(B2)の特性を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(B))5〜95重量%と下記(C1)の特性を有する熱可塑性スチレン−ジオレフィン共重合体水素添加物(成分(C))5〜95重量%とを含有し、かつ、条件(a)を満たすエチレン・α−オレフィン共重合体組成物からなることを特徴とする表面保護用フィルム。
    (A1)メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜50g/10分
    (A2)示差熱走査熱量計(DSC)による融解ピーク温度(Tmp)が120〜170℃
    (A3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5〜3.5
    (A4)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分(S40)が10重量%以下
    (B1)密度[d]が0.860〜0.918g/cm
    (B2)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.5以下
    (C1)スチレン含量[St]が5〜60重量%
    条件(a):成分(B)の密度[d](g/cm)と成分(C)のスチレン含量[St](重量%)が下記式(1)を満たす。
    640[d]−561.2<[St]<640[d]−539.2 …(1)
  2. プロピレン系樹脂が、さらに下記(A5)の特性を有することを特徴とする請求項1に記載の表面保護用フィルム。
    (A5)昇温溶離分別(TREF)法により20重量%溶出したときの温度(T20)から100重量%溶出終了したときの温度(T100)の幅(T100−T20)が30℃以下
  3. 基材層の一方の面に粘着剤層が形成され、他方の面に剥離処理層が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護用フィルム。
  4. 合成樹脂板、化粧板、金属板、ガラス板などの建築部材の表面保護用に使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
  5. 偏光板や位相差板などの液晶表示の構成部材の表面保護に使用されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護用フィルム。
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