JP2009155363A - 長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガス焼けやモールドデポジッドなどの成形不良が少ない長繊維強化熱可塑性樹脂材料を高い生産性で得られる製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維束である構成要素(A)と、重量平均分子量200〜10,000で構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である構成要素(B)と、重量平均分子量が10,000以上である熱可塑性樹脂である構成要素(C)とを含み、構成要素(A)と構成要素(B)とを含む複合体に構成要素(C)が接するように配置されてなる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法であって、
構成要素(B)の溶融粘度が10Pa・s以下になり、且つ、1分間加熱した際の重量保持率が95%以上となる温度で加熱溶融された構成要素(B)を構成要素(A)へ含浸させて複合体を形成する第一工程、前記複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、次いで溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を含むことを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】強化繊維束である構成要素(A)と、重量平均分子量200〜10,000で構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である構成要素(B)と、重量平均分子量が10,000以上である熱可塑性樹脂である構成要素(C)とを含み、構成要素(A)と構成要素(B)とを含む複合体に構成要素(C)が接するように配置されてなる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法であって、
構成要素(B)の溶融粘度が10Pa・s以下になり、且つ、1分間加熱した際の重量保持率が95%以上となる温度で加熱溶融された構成要素(B)を構成要素(A)へ含浸させて複合体を形成する第一工程、前記複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、次いで溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を含むことを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、連続繊維と熱可塑性樹脂から製造される長繊維強化樹脂材料に関する。さらに詳しくは、射出成形などによって成形を行う際に、強化繊維の成形品中への分散が容易であり、さらにモールドデポジットなどの成形不良が少ない長繊維強化樹脂材料の製造方法に関する。
連続繊維束に熱可塑性樹脂を効率的に含浸させた長繊維強化熱可塑性樹脂材料は、熱可塑性樹脂の物性を飛躍的に向上させるとともに、樹脂としての活用範囲を飛躍的に拡大させた。長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法は、溶融樹脂中に浸漬した繊維束の開繊やしごきを加えたり、さらに樹脂に圧力を加えるなどしたりすることで、繊維間に溶融樹脂を機械的に含浸させるプルトルージョン法が一般的に使用されている。しかしながら、高い機械物性を発現する高粘度の熱可塑性樹脂を連続繊維束に良好に含浸させようとすると、プルトルージョン法では繊維引取速度を非常に遅い速度にする必要があるため、生産性が低くなることが問題となっている。この他、熱可塑性樹脂を溶媒で希釈して低粘度化した溶液を連続繊維束に含浸させて次工程で溶媒を除去する方法や、熱可塑性樹脂をエマルジョン化、ディスパージョン化したものを連続繊維束に含浸させた後に溶媒を除去する方法などの製造法が提案されているが、いずれもプルトルージョン法より生産性を向上させるには至っていない。
このような状況に対して、繊維表面を改質させることにより、熱可塑性樹脂の含浸性を改善させる手法が提案されている。特許文献1では、繊維表面上に、高分子量の熱可塑性樹脂と相溶性のある低分子量で且つ溶融粘度が低い熱可塑性重合体を配置した後、高分子量の熱可塑性樹脂を含浸させる方法が記載されている。この方法によれば、前述した製造方法より生産効率を高められるとともに、高い機械物性の樹脂材料を得ることができる。しかしながら、この方法で得られた樹脂材料を射出成形などで成形する際、熱可塑性重合体に含まれる低分子量体が可塑化装置内および/または金型内部で気化し、成形品表面にガス焼けが生じたり、金型内部にモールドデポジットを発生させたりするなど、成形不良をしばしば発生させていた。
特開平10−138379号公報
本発明の目的は、高い生産性にて、高い機械物性で高い品質の成形品が得られる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法を提供することにある。詳しくは、射出成形などによって成形を行う際に、強化繊維の成形品中への分散が容易であり、さらにモールドデポジットなどの成形不良を起こしにくい長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、次の製造方法により達成できることを見出した。すなわち上記課題は、
(1)強化繊維束である構成要素(A)と、重量平均分子量200〜10,000で構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である構成要素(B)と、重量平均分子量が10,000以上である熱可塑性樹脂である構成要素(C)とを含み、構成要素(A)と構成要素(B)とを含む複合体に構成要素(C)が接するように配置されてなる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法であって、
構成要素(B)の溶融粘度が10Pa・s以下になり、且つ、1分間加熱した際の重量保持率が95%以上となる温度で加熱溶融された構成要素(B)を構成要素(A)へ含浸させて複合体を形成する第一工程、前記複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、次いで溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を含むことを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
により解決が達成される。
(1)強化繊維束である構成要素(A)と、重量平均分子量200〜10,000で構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である構成要素(B)と、重量平均分子量が10,000以上である熱可塑性樹脂である構成要素(C)とを含み、構成要素(A)と構成要素(B)とを含む複合体に構成要素(C)が接するように配置されてなる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法であって、
構成要素(B)の溶融粘度が10Pa・s以下になり、且つ、1分間加熱した際の重量保持率が95%以上となる温度で加熱溶融された構成要素(B)を構成要素(A)へ含浸させて複合体を形成する第一工程、前記複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、次いで溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を含むことを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
により解決が達成される。
また、本発明の好ましい形態によれば、以下の発明が含まれることも好ましい態様である。
(2)構成要素(B)がフェノール系樹脂であることを特徴とする前記(1)に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
(3)構成要素(A)が炭素繊維束であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
(4)構成要素(C)がポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、スチレン系重合体から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
本発明により、高い生産性にて、高い機械物性で高い品質の長繊維強化熱可塑性樹脂材料を得ることが可能となる。
以下に、本発明について具体的に説明するが、まず本発明にかかる構成要素について説明する。
構成要素(A)は強化繊維束である。強化繊維は、一般に強化繊維と呼ばれているものであれば特に限定されないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アラミド繊維またはこれらの組み合わせが使用できる。また、ロービング、ヤーン等の連続繊維を、連続した強化繊維束として使用することが好ましい。この中で、軽量・高剛性である炭素繊維が、本発明で得られる樹脂材料の物理的特性および力学的特性の観点から好ましく使用される。
構成要素(A)は、製造される長繊維強化熱可塑性樹脂材料100重量%に対して、5〜50%の範囲で配合されるのが好ましい。5重量%未満では、本発明で得られる樹脂材料の機械強度の向上が小さいことがあり、50%を超えると樹脂材料の流動性が悪くなることがある。
構成要素(B)は重量平均分子量200〜10,000で、構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である。構成要素(B)が構成要素(A)と複合体を形成させて製造することにより、樹脂材料の高い生産性と高い機械物性が達成される。構成要素(B)の重量平均分子量が200未満では、耐熱性が低いため本発明の製造方法において容易に気化・放散してしまい、樹脂材料を成形する際に、繊維の分散性が低くなることがある。また、重量平均分子量10,000以上では、溶融粘度が高くなるため、繊維束への含浸が困難になることがある。より好ましい重量平均分子量は200〜5,000である。
本発明で記す重量平均分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LALLS)を使用する。また、溶融粘度の関係は、樹脂材料を成形する際の温度において構成要素(B)の溶融粘度が構成要素(C)の溶融粘度より小さければ良い。本発明で記す溶融粘度は、測定する物質のビカット軟化温度+30℃、あるいは融点+30℃における温度での粘度である。物質が結晶性であって明確な融点を持つ場合には融点+30℃の条件を採用し、それ以外は軟化温度+30℃の条件を用いる。粘度は、キャピラリーレオメーターを用いてJIS K7199(1999)試験法により測定する。測定におけるせん断速度は103s-1とする。なお、ビカット軟化温度は、JIS K7206(1999)試験法にしたがって測定する。融点は、JIS K7121(1987)に従って示差走査熱量計(DSC)により測定する。
構成要素(B)は極性基を有することも好ましい。極性基としては、例としてアミノ基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。また、極性基とともに、極性の低い脂肪族炭化水素の部分もあわせて有していることも好ましい。構成要素(B)は、構成要素(A)と構成要素(C)の界相に配置されるため、このような極性の高い部分と低い部分をあわせ持たせると、界面活性剤としての働きも有することとなり、特に成形時において樹脂内への繊維の分散性の向上に寄与する点で好ましい。
特に構成要素(B)として優れている熱可塑性重合体としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などのフェノール系樹脂が挙げられる。また、構成要素(B)には、要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。
構成要素(B)は製造される長繊維強化熱可塑性樹脂材料100重量%に対して、0.5〜30重量%の範囲で配合されるのが好ましい。0.5重量%未満では、樹脂材料の生産性や樹脂材料を成形する際の繊維の分散性が低下することがあり、30重量%を超えると樹脂材料の機械特性が低下することがある。より好ましくは、2〜15重量%の範囲で使用できる。
構成要素(C)は重量平均分子量が10,000以上の熱可塑性樹脂である。重量平均分子量が10,000未満では得られる樹脂材料の力学特性が低くなることがある。構成要素(C)は重量平均分子量が10,000以上であれば特に限定されないが、溶融粘度は50Pa・s以上1,000Pa・s以下であることも好ましい。
構成要素(C)の熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド66樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスチレン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ABS樹脂やAS樹脂などのスチレン系重合体等を用いることができる。これらの混合物でもよい。また、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。これらの中で、機械特性、成形性、成形品外観などの観点から、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、スチレン系重合体が特に好ましく使用できる。さらに得たい成形品の要求特性に応じて、構成要素(C)には難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。
次に、本発明にかかる長繊維強化熱可塑性樹脂の製造方法について説明する。
本発明にかかる長繊維強化熱可塑性樹脂は、構成要素(B)を、構成要素(A)に含浸させて複合体を得る第一工程と、前記複合体を、構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を経て製造されるものである。各工程について以下に説明する。
本発明にかかる第一工程は、構成要素(B)を10Pa・s以下の溶融粘度にするとともに、且つ、1分間の加熱重量保持率が95%以上である温度で加熱溶融した含浸装置の中に、後述する付与方法を用いて構成要素(A)を含浸させて複合体を形成する工程である。本工程により、構成要素(A)にほぼ満遍なく構成要素(B)が行き渡った複合体の形成が可能となる。
ここで、構成要素(B)の溶融粘度は、溶融粘度が10Pa・sより高くなるような温度で含浸させた場合、構成要素(B)の流動性が極端に悪くなるため、構成要素(A)の繊維間への含浸が困難となって樹脂材料の生産性が低下することがある。より好ましくは、2Pa・s以下になる温度にまで加温すると、繊維間へ樹脂を含浸しやすくなる点でさらに好ましい態様である。
また、構成要素(B)を1分間加熱し続けた際の重量保持率が95%未満(すなわち1分間加熱した際の重量減量が5%を超える場合)になる温度まで加温すると、構成要素(A)へ含浸させる前に構成要素(B)中の低分子量体が気化・放散しやすくなる。
構成要素(B)のうち、低分子量体は動粘度が低いため繊維間へ含浸しやすい特性を有する。そのため、構成要素(A)には低分子量体から高分子量体へと順に含浸が進むと考えられている。このようにして構成要素(A)と構成要素(B)とから複合体を形成する際に、低分子量体が気化・放散すると、構成要素(A)にほぼ満遍なく構成要素(B)が行き渡った複合体の形成が不十分になるため、後述する樹脂材料を成形する際、構成要素(A)の分散性を低下させる恐れがある。
なお、加熱した際の重量保持率は、JIS K7120(1987)試験法に従って熱重量分析計(TGA)により測定した値である。
第一工程における構成要素(A)への構成要素(B)の付与方法は、繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するなどといった方法を用いることができる。より具体的な例としては、加熱した回転ロールの表面に、溶融した構成要素(B)を一定厚みの被膜として形成させ(コーティング)、このロール表面に構成要素(A)を接触させながら移動させることで、構成要素(A)に所定量の構成要素(B)を付着させる方法が挙げられる。ロール表面への構成要素(B)のコーティングに関しては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレー、カーテン、押出などの公知のコーティング装置の概念を応用することで実現できる。上記温度において、構成要素(B)の付着した構成要素(A)に対して、バーでしごきを加える、拡幅・集束を繰り返す、圧力や振動を加える、などの操作により、構成要素(B)を構成要素(A)である繊維束内部まで含浸するようにする。より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に繊維束を接触するように通して拡幅などを行う方法を挙げられる。
本発明にかかる第二工程は、第一工程で得られる複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する工程である。本工程により、構成要素(A)にほぼ満遍なく構成要素(B)が行き渡った前記複合体から、余分な構成要素(B)の低分子量体を除去することが可能となり、得られる樹脂材料の品質向上が可能となる。本発明で記す構成要素(C)の溶融温度とは、熱可塑性樹脂が結晶性であって明確な融点を持つ場合には融点、それ以外はビカット軟化温度を指す。
構成要素(C)の溶融温度より50℃未満で加熱処理した場合、構成要素(B)の低分子量体が十分に気化・放散しない。そのため、得られる樹脂材料を射出成形などによって成形品に加工する際に、成形品へのガス焼けや金型へのモールドデポジット発生などの成形不良を発生させることがある。また、150℃より高い温度で加熱処理した場合、低分子量体に併せて中分子量体までも気化・放散することがあり、樹脂材料を成形する際の構成要素(A)の分散性が低下する恐れがある。より好ましくは、構成要素(C)の溶融温度より60〜120℃高い温度で加熱処理するものである。
本発明の第二工程の加熱処理を行う際には、第一工程と同様に、前記複合体をバーでしごく、拡幅・集束を繰り返す、圧力や振動を加える、などの操作を加えることも好ましい。
本発明の第三工程は、溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置するものである。より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合体の周囲に構成要素(C)を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から、押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の構成要素(C)を配置し、ロールなどで一体化させる方法を挙げることができる。
このような工程を経て得られた樹脂材料は、一般の成形加工法により最終的な形状の製品に加工できる。成形加工法は特に限定されないが、例えば、プレス成形、トランスファー成形、射出成形や、これらの組合せ等が挙げられ、目的とする種々の成形品内部に、構成要素(A)がほぼ均一に分散され、ガス焼けやモールドデポジットなどによる成形不良の発生頻度が低下した成形品を得ることができる。この中で、射出成形に用いる場合には、樹脂材料をペレタイザーやストランドカッターなどの装置で一定長に切断してペレットにしても良い。ペレットの長さは、成形加工を容易にできる1〜50mmの範囲が好ましく、さらには3〜12mmがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例のみ限定されるものではない。
[実施例1]第一工程として、130℃に加熱されたロール上に、テルペンフェノール重合体(ヤスハラケミカル(株)製YP90L、重量平均分子量460)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためキスコーターを用いた。このロール上を連続した炭素繊維束(東レ(株)製T300、繊維系7μm、炭素繊維本数12,000本)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のテルペンフェノール重合体を付着させた。
[実施例1]第一工程として、130℃に加熱されたロール上に、テルペンフェノール重合体(ヤスハラケミカル(株)製YP90L、重量平均分子量460)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためキスコーターを用いた。このロール上を連続した炭素繊維束(東レ(株)製T300、繊維系7μm、炭素繊維本数12,000本)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のテルペンフェノール重合体を付着させた。
重合体を付着させた炭素繊維を、130℃に加熱された、ベアリングで自由に回転する、一直線上に配置された8本の直径50mmのロールの上下を交互に通過させた。この操作により、重合体を繊維束の内部まで含浸させ、炭素繊維とテルペンフェノール重合体よりなる連続した複合体を形成した。この段階で、複合体全体に対する重合体の量は15重量%であった。130℃におけるYP90Lの、せん断速度103s−1における溶融粘度は、キャピラリーレオメーターによる測定で約1Pa・sであった。また、130℃における1分間のYP90Lの加熱重量保持率は、熱重量分析計による測定で98%であった。
次に第二工程として、この複合体を、290℃に加熱され、ベアリングで自由に回転し、一直線上に配置された直径50mmのロール6本の上下を交互に通過させた。ここで、290℃の温度は、次工程で被覆するナイロン6樹脂の示差走査熱量計により測定された融点220℃に対して70℃高い温度に設定したものである。この操作により、低分子量体が除去されたテルペンフェノール重合体と炭素繊維よりなる連続した複合体を形成した。この段階で、複合体全体に対する重合体の量は13重量%であった。
次に第三工程として、この連続した複合体を、直径40mmの単軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ中に240℃で溶融させたナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1017、重量平均分子量18,600)を吐出させて、複合体の周囲を被覆するようにナイロン6樹脂を連続的に配置した。240℃におけるナイロン6の、せん断速度103s−1における溶融粘度は、キャピラリーレオメーターによる測定で約200Pa・sであった。
この複合体をナイロン6で被覆した樹脂材料を常温近くまで冷却後、ストランドカッターにより長さ7mmのペレットとした。ここまでの成形材料製造は連続した工程によりなされ、炭素繊維束の引き取り速度は30m/分であった。また、この樹脂材料の組成比は、炭素繊維:テルペンフェノール重合体:ナイロン6樹脂=33:5:62であった。
このペレットを用いて、型締め力100tの射出成形機により、外形が80mm×80mm、厚み1mmの平板成形品を得た。この成形の際、シリンダ温度はノズル近くで260℃に設定し、金型温度は80℃とした。成形品の表面は平滑で、成形品中の繊維の分散性に問題はなく、ガス焼けの成形不良も認められなかった。また、成形を連続的に繰り返し行ったが、1,000ショット繰り返してもモールドデポジットの発生は認められなかった。
なお、この成形品のアイゾット衝撃値(ノッチ有)(JIS K7110(1999)に準拠)は20kJ/m2であった。
[比較例1]実施例1の第二工程を180℃に加熱して行った以外は、実施例1と同様に製造して、樹脂材料のペレットを得た。この樹脂材料の組成比は、炭素繊維:テルペンフェノール重合体:ナイロン6樹脂=33:6:61であった。
このペレットを用いて、型締め力100tの射出成形機により、外形が80mm×80mm、厚み1mmの平板状成形品を得た。成形品中の繊維の分散性は問題なかったが、流動末端部分に僅かなガス焼けが認められた。また、成形を連続的に繰り返し行ったところ、約500ショットでモールドデポジットの発生が認められた。
なお、この成形品のアイゾット衝撃値(ノッチ有)(JIS K7110(1999)に準拠)は20kJ/m2であった。
本発明によれば、前記樹脂材料を使用して成形加工をし続けても、成形不良が起こりにくく、高品質な成形品を製造することができる。
Claims (4)
- 強化繊維束である構成要素(A)と、重量平均分子量200〜10,000で構成要素(C)よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である構成要素(B)と、重量平均分子量が10,000以上である熱可塑性樹脂である構成要素(C)とを含み、構成要素(A)と構成要素(B)とを含む複合体に構成要素(C)が接するように配置されてなる長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法であって、
構成要素(B)の溶融粘度が10Pa・s以下になり、且つ、1分間加熱した際の重量保持率が95%以上となる温度で加熱溶融された構成要素(B)を構成要素(A)へ含浸させて複合体を形成する第一工程、前記複合体を構成要素(C)の溶融温度より50〜150℃高い温度で加熱処理する第二工程、次いで溶融した構成要素(C)を前記複合体に接するように配置する第三工程、を含むことを特徴とする長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。 - 構成要素(B)がフェノール系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
- 構成要素(A)が炭素繊維束であることを特徴とする請求項1または2に記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
- 構成要素(C)がポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、スチレン系重合体から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維強化熱可塑性樹脂材料の製造方法。
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JP2014122438A (ja) * | 2012-12-20 | 2014-07-03 | Teijin Ltd | 補強用炭素繊維束の製造方法およびそれを用いた炭素繊維複合材料 |
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