JP2009149500A - 炭化珪素質多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属珪化物を1〜30質量%含有し、気孔率が38〜80%の炭化珪素質多孔体である。
【選択図】なし
Description
本発明の炭化珪素質多孔体の一実施形態は、金属珪化物を1〜30質量%含有し、気孔率が30〜80%のものである。以下、その詳細について説明する。
金属珪化物(以下、「金属シリサイド」ともいう)とは、金属とシリコン(Si)の反応生成物である。本発明の炭化珪素質多孔体には、この金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示す。また、後述する製造方法に従って本発明の炭化珪素質多孔体を製造すると、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、連通性の高い気孔構造を有する炭化珪素質多孔体を形成することができるものと考えられる。
本発明の炭化珪素質多孔体は、炭化珪素をその主成分とするものである。炭化珪素にはα−SiC、β−SiCという多形が存在するが、本発明の炭化珪素質多孔体に含まれる炭化珪素は、(1)そのすべてがβ−SiCである場合、及び(2)α−SiCとβ−SiCが含有されている場合があり、いずれの場合も好ましい。炭化珪素にα−SiCとβ−SiCが含有されている場合(即ち、前記(2)の場合)には、α−SiCとβ−SiCの合計に対する、β−SiCの含有割合が5〜100質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることが更に好ましく、15〜50質量%であることが特に好ましい。β−SiCの含有割合が上記数値範囲内であると、強度を十分なものとすることができる。なお、β−SiCの含有割合が5質量%未満であると、強度が不十分となる傾向にある。
後述する製造方法に従って製造される炭化珪素質多孔体は、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は、開気孔となり易い。また気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受け易い。本発明の炭化珪素質多孔体の気孔率は広い範囲で制御可能であり、具体的には、38〜80%であり、好ましくは40〜75%、更に好ましくは45〜70%である。気孔率が30%未満であるとガス透過係数が小さくなり、ガスを透過させる場合において生ずる圧力損失が大きくなる。一方、気孔率が80%超であると強度が低下する。なお、本明細書にいう「気孔率」とは、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した値をいう。
本発明の炭化珪素質多孔体は、ガスを透過させる場合において生ずる圧力損失が小さく、ガス透過係数が大きいものである。具体的に、本発明の炭化珪素質多孔体のガス透過係数は、好ましくは1×10−13〜5×10−10m2、更に好ましくは5×10−13〜1×10−10m2、特に好ましくは1×10−12〜5×10−11m2である。ガス透過係数が1×10−13未満であると、圧力損失が増大する傾向にある。一方、ガス透過係数が5×10−10m2超であると、それに伴って気孔率も増大して強度が低下する傾向にある。
本発明の炭化珪素質多孔体は、金属シリサイドが所定の割合で含有されているために熱伝導率が高く、優れた耐熱衝撃性を示すものである。具体的に、本発明の炭化珪素質多孔体の熱伝導率は、好ましくは10〜50W/mK、更に好ましくは12〜45W/mK、特に好ましくは14〜40W/mKである。熱伝導率が10W/mK未満であると、耐熱衝撃性が低下する傾向にある。一方、熱伝導率が50W/mK超であると、特に問題はないが、実質的には製造が困難である。
次に、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法について説明する。本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法の一実施形態は、金属、珪素、及び炭素を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、金属珪化物を1〜30質量%含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得るものである。以下、その詳細について説明する。
金属は、珪素(シリコン(Si))と反応して金属シリサイドを生成し得る成分である。また、原料混合物に金属を含有させることによって、珪素と炭素の反応によって炭化珪素が形成される過程で、金属がその反応に作用し、反応により生成する炭化珪素の粒径や形状等に影響を与えると推測される。このため、結果として形成される気孔は開気孔となり易い。また、気孔率は調合組成(特に、珪素の割合)に影響を受ける。このため、本発明の炭化珪素質多孔体の製造方法によれば、広い範囲で気孔率を制御可能である。
珪素(シリコン(Si))は、前述の金属と反応して金属シリサイドを生成し得る成分である。シリコン(Si)は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状のシリコン(シリコン粉末)を用いる場合、金属との反応性の観点から、シリコン粉末の粒径は1〜100μmであることが好ましく、3〜80μmであることが更に好ましい。
炭素(C)は、前述のシリコン(Si)と反応して炭化珪素を生成し得る成分である。炭素(C)は、通常、粉末状(粒子状)のものを用いる。粉末状の粉末状の炭素(炭素粉末)を用いる場合、シリコン(Si)との反応性の観点から、炭素粉末の粒径は5nm〜50μmであることが好ましく、10nm〜30μmであることが更に好ましい。
原料混合物には、α−SiC原料を更に含有させることができる。α−SiC原料としては、粒子状のα−SiCを好適に用いることができる。粒子状のα−SiCの平均粒子径は、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることが更に好ましい。粒子状のα−SiCの平均粒子径が5μm未満であると、熱伝導率等の熱特性が低下する傾向にある。一方、粒子状のα−SiCの平均粒子径が100μm超であると、特に問題はないが、成形し難い場合がある。なお、本明細書にいう「平均粒子径」は、JIS R 1629に準拠したレーザー回折散乱法によって粒度分布測定した値であり、体積基準の平均粒子径である。
原料混合物に配合する成分としては、上述した金属、珪素、炭素、及びα−SiC原料以外にも、例えば、有機又は無機バインダー、造孔材、界面活性剤(或いは分散剤)、及び水等を挙げることができる。有機又は無機バインダーの具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
次に、本発明のハニカム構造体について説明する。図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態のハニカム構造体11は、多孔質の隔壁16で区画形成された複数のセル15を有するものである。セル15は、気体、液体等の各種流体の流路となる部分である。なお、図1中、符号10はハニカム構造体1の外壁を示す。本実施形態のハニカム構造体11は、前述の炭化珪素質多孔体によって構成されたものである。このため、本実施形態のハニカム構造体11は、高気孔率でありながらも高強度であり、熱伝導率が高く耐熱衝撃性に優れたものである。また、比較的低温で焼結させることで製造可能なものである。
ガス透過係数 K=(μ・L・Q)/(ΔP・A) ・・・(2)
(前記式(2)中、μは粘性係数、Lはサンプル厚さ、Qはガス流量、ΔPは圧力損失、及びAはサンプル面積をそれぞれ示す)
ニッケル(Ni)粉末(♯350)0.6質量%、シリコン(Si)粉末(粒径:78μm)29.7質量%、カーボンブラック9.7質量%、及びα−SiC粉末(粒径:12μm)60質量%を含有する混合物の100質量部に対して、1質量部の界面活性剤を加え、更に適量の水を加えて原料混合物を得た。得られた原料混合物を、一軸加圧成形にて25×50×10mmの寸法形状に成形した後、室温及び120℃の温度条件下で乾燥して乾燥成形体を得た。得られた乾燥成形体を、大気雰囲気下、350℃で5時間仮焼した後、Ar不活性雰囲気下、1450℃で焼成して板状の炭化珪素質多孔体(実施例1)を得た。得られた炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi2」で表されるものであり、その含有割合は1質量%であった。また、β−SiCの粒径は2μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は38質量%であった。更に、気孔率は45%、ガス透過係数は0.10×10−12m2、及び熱伝導率は30W/mKであった。
表1に示す配合とすること以外は、前述の実施例1の場合と同様にして板状の炭化珪素質多孔体(実施例2〜16、比較例1〜3)を得た。得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合を表2に示す。また、得られたそれぞれの炭化珪素質多孔体の気孔率、ガス透過係数、及び熱伝導率を表2に示す。
表1に示す「バッチNo.1」の配合に対して、8質量%となるように有機バインダーを添加して混合物を得、得られた混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm2(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。大気雰囲気中、350℃で5時間脱脂した後、Ar不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(実施例17)を得た。得られたハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相は化学式「NiSi2」で表されるものであり、その含有割合は1質量%であった。また、β−SiCの粒径は2μmであり、α−SiCとβ−SiCの合計を100質量%とした場合におけるβ−SiCの含有割合は38質量%であった。更に、気孔率は56%、ガス透過係数は0.24×10−12m2、及び熱伝導率は25W/mKであった。
表3に示す配合とすること以外は、前述の実施例17の場合と同様にして多孔質のハニカム構造体(実施例18〜22)を得た。得られたそれぞれのハニカム構造体に含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合を表3に示す。また、得られたそれぞれのハニカム構造体の気孔率、ガス透過係数、及び熱伝導率を表3に示す。
表1に示す「バッチNo.1」の配合に対して、5質量%となるように造孔材、及び8質量%となるように有機バインダーを添加して混合物を得、得られた混合物に適量の水を加えて混合・混練し、可塑性の坏土を作製した。作製した坏土を押出成形した後に乾燥して、隔壁の厚さが310μm、セル密度が約46.5セル/cm2(300セル/平方インチ)、流路(セル)に直交する断面の形状が、一辺の長さが35mmの正四角形、全長が152mmのハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体のセルの両端部を、隣接するセルどうしが反対側の端部で封じられるように、前述の坏土と同様の材料で目封止した。乾燥後、大気雰囲気中、350℃で5時間脱脂し、次いでAr不活性雰囲気下、約1450℃で焼成して、多孔質のハニカム構造体(ハニカムセグメント)を得た。得られたハニカムセグメントの外壁面に接合材(セラミックス系セメント)を塗布して厚さ約1mmの接合材層を形成し、形成した接合材層上に別のハニカムセグメントを載置する工程を繰り返し、16個(4×4)のハニカムセグメントからなる積層体を作製した。適宜加圧して全体を接合させた後、140℃、2時間乾燥して接合体を得た。得られた接合体の外周を円筒状に切削加工した後、外周面(切削加工面)にコーティング材(セラミックス系セメント(接合材に準ずる))を塗布し、700℃で2時間乾燥して硬化させ、ハニカム構造体(DPF)(実施例23)を得た。
表3に示す配合とすること以外は、前述の実施例23の場合と同様にしてDPF(実施例24〜29、比較例4)を得た。得られたそれぞれのDPFに含まれる金属シリサイドの結晶相の種類とその含有割合、β−SiCの粒径とその含有割合を表4に示す。また、得られたそれぞれのDPFの気孔率、ガス透過係数、及び熱伝導率を表4に示す。
Claims (16)
- 金属珪化物を1〜30質量%含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体。
- 炭化珪素を主成分として含有し、
前記炭化珪素のすべてが、β−SiCである請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。 - α−SiCとβ−SiCを含有し、
前記α−SiCと前記β−SiCの合計に対する、前記β−SiCの含有割合が、5〜100質量%である請求項1に記載の炭化珪素質多孔体。 - 前記β−SiCの少なくとも一部の形状が、その粒子径が0.5μm以上の粒子状である請求項2又は3に記載の炭化珪素質多孔体。
- ガス透過係数が、1×10−13〜5×10−10m2である請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
- 前記金属珪化物が、ニッケルシリサイドである請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
- 前記ニッケルシリサイドが、NiSi2の化学式で表される請求項6に記載の炭化珪素質多孔体。
- 熱伝導率が、10〜50W/mKである請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体からなる、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状のハニカム構造体。
- ディーゼル排ガス浄化用のフィルターとして用いられる請求項9に記載のハニカム構造体。
- 前記セルを有するハニカムセグメントの複数が接合された構造を有するとともに、
前記セルの一方の開口端部と他方の開口端部が交互に目封止されている請求項10に記載のハニカム構造体。 - 金属、珪素、及び炭素を含む原料混合物を所定形状に成形し、脱脂、及び焼成して、
金属珪化物を1〜30質量%含有し、気孔率が38〜80%である炭化珪素質多孔体を得る炭化珪素質多孔体の製造方法。 - 前記原料混合物が、α−SiC原料を更に含むものである請求項12に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 1250〜1800℃で焼成する請求項12又は13に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 前記α−SiC原料の平均粒子径が、5〜100μmである請求項13又は14に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
- 前記原料混合物を、隔壁で区画された複数のセルを有するハニカム形状に成形する請求項12〜15のいずれか一項に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法。
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