JP2009121646A - 鋼板接合方法、及び、該方法に用いるボルト仮固定ナット - Google Patents
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Abstract
【課題】 ボルト孔に予め保持させたボルトがナット締付け時に共回りしないようにする。
【解決手段】 底鋼板1のボルト孔3よりもやや大径の外径寸法を有するボルト仮固定ナット13を、ボルト5の軸部5aにねじ込む。ボルト仮固定ナット13をボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3に強制的に押し込んで、ボルト仮固定ナット13を、ボルト孔3の内周面とボルト5との隙間で径方向に圧縮された状態からの復元力によりボルト孔3の内側に密着させて固定する。次に、ボルト5をボルト仮固定ナット13に締め込み、締付け軸力によりボルト5を回転しないよう仮固定する。その後、底鋼板1に添接板2を載置した後、ボルト5にナット6を締め込んで、底鋼板1と添接板2を接合させる。
【選択図】図1
【解決手段】 底鋼板1のボルト孔3よりもやや大径の外径寸法を有するボルト仮固定ナット13を、ボルト5の軸部5aにねじ込む。ボルト仮固定ナット13をボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3に強制的に押し込んで、ボルト仮固定ナット13を、ボルト孔3の内周面とボルト5との隙間で径方向に圧縮された状態からの復元力によりボルト孔3の内側に密着させて固定する。次に、ボルト5をボルト仮固定ナット13に締め込み、締付け軸力によりボルト5を回転しないよう仮固定する。その後、底鋼板1に添接板2を載置した後、ボルト5にナット6を締め込んで、底鋼板1と添接板2を接合させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、鋼板同士の重ね合せ部をボルトを用いて接合するために用いる鋼板接合方法、及び、該方法に用いるボルト仮固定ナットに関するものである。
近年、橋梁を構成するための床版としては、床版のコンクリート層の下面を形成する型枠をパネル状の底鋼板として、該底鋼板の内側にコンクリートを直接打設することで、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に結合させるようにした形式の合成床版が用いられるようになってきている。
この種の合成床版を架設するには、先ず、主桁上に底鋼板を径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板同士の連結作業が必要となる。
上記隣接する底鋼板同士を連結する場合、通常は、図9に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に添接板2を重ねて配置した状態にて、上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部に穿設してあるボルト孔3,4に対し、底鋼板1の下面側からボルト(高力ボルト)5を挿通させる。その後、上記添接板2の上側に突出する上記ボルト5の先端部に、ワッシャ7を嵌めてから、ナット6を螺着させて締め込むことで、鋼板同士の重ね合わせ部としての上記各底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合し、これにより、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士を、上記添接板2を介して連結させるようにしてある。
上記のようにしてボルト5を用いて底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を接合する際には、底鋼板1の下面側から上記ボルト孔3,4に挿通させたボルト5が脱落(落下)しないように保持した状態で、添接板2の上側からナット6を螺着させて締め込む必要が生じていた。
そこで、上記合成床版の底鋼板1の架設現場における底鋼板の下面側からの作業を解消できるようにするための手法として、上記底鋼板1のボルト孔3に下方より挿通させたボルト5を、所要の治具を介して上記ボルト孔3の部分に脱落しないように保持させることが考えられてきている。
図10(イ)(ロ)(ハ)は上記底鋼板1のボルト孔3にボルト5を脱落しないよう保持させるための治具の一例として、従来提案されている引っ掛けリング8を示すものである。
上記引っ掛けリング8は、底鋼板1に穿設してあるボルト孔3よりもやや大きい外径寸法を有し、且つ軸心方向の長さ寸法(高さ寸法)を、上記添接板2の板厚よりも小さい寸法としたリング形状の部材の内周面に、上記ボルト5の軸部5aに螺着させるための雌ねじ部(図示せず)を設けた構成としてある。これにより、図10(イ)に示す如く、隣接する底鋼板1の突合せ端部に設けてあるボルト孔3に、ボルト5を下方からそれぞれ挿通させた後、該各ボルト5の軸部5aに、上記引っ掛けリング8を上方からねじ結合により嵌めて、該引っ掛けリング8を上記各底鋼板1のボルト孔3の周りに当てることで、予め、上記各底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を、落下を防止した状態で保持させることができるようにしてある。
したがって、その後は、図10(ロ)に示すように、上記各底鋼板1の突合せ端部の上側に、上記引っ掛けリング8が通過できる大きさのボルト孔4を穿設してなる添接板2を、該ボルト孔4に上記各底鋼板1のボルト孔3に保持させてあるボルト5を挿通させるようにして上方から載置した後、図10(ハ)に示すように、上記ボルト5に、ワッシャ7を介してナット6を上方から嵌めて添接板2の上側から締め込むことで、各底鋼板1に対する添接板2の接合作業、すなわち、該添接板2を介した上記底鋼板1同士の連結作業を、底鋼板1の上側からの作業のみで実施できるようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
又、図11(イ)(ロ)に示す如く、合成床版を構成するためのハンチプレート9に設けた孔10に、図示しない底鋼板の結合に用いるボルト12を予め保持させると共に脱落を防止するための仮止め用脱落防止体11として、ボルト12が挿入される側である一方の側に設けられた第1の内径部11a、及び、この第1の内径部11aと連続すると共に、他方の側の端部が上記ボルト12のねじ部より小径をなすように中心部に傾斜している第2の内径部11bを備えて、挿入された上記ボルト12を密着保持するようにしてある内径部と、上記一方の側と他方の側の両端に上記ハンチプレート9の孔10の外に突き出すように形成されたフランジ状の端部11c,11d、及び、この両端のフランジ状の端部11cと11dの中央部に形成された上記ハンチプレート9の孔10に差し込まれるようにしてある外形中央部11eを備えて、上記ハンチプレート9に密着保持可能な外形部とからなる略筒状の弾性体からなる構成の仮止め用脱落防止体11が従来提案されている。かかる仮止め用脱落防止体11によれば、該仮止め用脱落防止体11を、ハンチプレート9の孔10に上記他方のフランジ状の端部11d側から挿入した後、ボルト12を一方の側から内径部11aと11bに挿入すると、中心部に傾斜させてある内径部11bが上記ボルト12により内側から押されることで、他方のフランジ状の端部11dが一方の側に弾性変形して、上記一方の側のフランジ状の端部11cと共働して上記ハンチプレート9を挟み込み、これにより、上記ボルト12の空回りを防止することができるとされている(たとえば、特許文献2参照)。
ところで、図9に示した如き合成床版の裏面となる底鋼板1の下面側の防錆処理としては、当初は亜鉛溶射が考えられていたが、近年では、上記底鋼板1の下面側に、全面に亘り塗装することが多くなってきている。
そのために、本出願人は、上記底鋼板1の架設現場における底鋼板1の下面側からの塗装作業を不要にできるようにするために、工場等において、上記底鋼板1のボルト孔3にボルト5を挿通させて保持させた状態で、ボルト5の頭部を含む該底鋼板1の下面の全面に亘り先行塗装を行うようにすること考えている。
ところが、特許文献1に示されたように、引っ掛けリング8を用いて、底鋼板1のボルト孔3に、予めボルト5を脱落を防止した状態で保持させるために提案されている手法では、上記底鋼板1の架設現場にてボルト孔3に保持させてある上記ボルト5にナット6を締め込むときに、該ボルト5に共回りが生じる虞がある。
すなわち、一般に、ボルト孔3の内径は、ボルト5の軸部5aの直径に対してやや余裕を持たせるようにしてある。このため、上記ボルト5の軸部5aにねじ結合によって嵌合させるようにしてある上記引っ掛けリング8は、その下端面の外周縁部のみで、上記底鋼板1の上面におけるボルト孔3の上端部の周縁に接触するようになるので、該引っ掛けリング8の下面と、底鋼板1の上面との接触面積が小さく制限されている。
したがって、上記底鋼板1と引っ掛けリング8との間の摩擦力を大きくすることが難しいために、上記底鋼板1のボルト孔3に保持させてあるボルト5にナット6を螺着させて締め付けるときに、上記ボルト5に共回りが発生する虞が懸念されるというのが実状である。
そのため、工場等にて、上記底鋼板1のボルト孔3に、ボルト5を上記引っ掛けリング8を用いて脱落を防止した状態で保持させた後、上記ボルト5の頭部を含めた底鋼板1の下面の全面に、先行塗装を行っても、上記ボルト5に対するナット6の締付けの際にボルト5の共回りが発生してしまうと、塗膜が割れたり、剥離が生じることから、従来は、上記底鋼板1の下面の全面に先行塗装を行うことは困難であった。
したがって、従来は、工場等にて、上記底鋼板1の下面におけるボルト孔3の周辺部を除く領域のみに先行塗装を行っておき、底鋼板1の架設現場では、上述したような隣接する各底鋼板1の突合せ端部に対する添接板2のボルト5を用いた接合作業を行って、底鋼板1同士を連結した後、上記底鋼板1の下面におけるボルト孔3の周辺部の未塗装部分と上記ボルト5の頭部に塗装を行う必要が生じていた。
更に、上記特許文献1に示された手法では、底鋼板1のボルト孔3にボルト5を下方から挿通させて頭部5bを保持した状態で、底鋼板1の上方にて該ボルト5の軸部5aに対し引っ掛けリング8を掛けてねじ込む作業が必要になる。この際、上記ボルト5の頭部5bと引っ掛けリング8が共回りしないように、該ボルト5の頭部5bと引っ掛けリング8の両方を押さえる必要があるため、上記底鋼板1を挟んで上下作業を同時に行う必要があり、人手が必要とされる。しかも、上記底鋼板1に設けてある多数のボルト孔3の位置で、該各ボルト孔3にそれぞれ挿通させたボルト5の軸部5aに対する上記引っ掛けリング8のねじ込み作業を個別に行う必要があるため、作業効率が低いというのが実状である。
なお、特許文献2に示された手法によれば、ハンチプレート9の孔10へボルト12を脱落しないように仮止めする作業は、先ず、ハンチプレート9の孔10に、該ハンチプレート9の一側面側(図では下面側)から、仮止め用脱落防止体11を、他方のフランジ状の端部11d側より挿入し、次いで、ハンチプレート9に対して同じ側から、上記仮止め用脱落防止体11の内径部11a,11bに、ボルト12を挿入することで実施できるため、上記ハンチプレート9の両面側での同時作業は不要にすることができる。
しかし、上記特許文献2に示された仮止め用脱落防止体11は、弾性体としてある該仮止め用脱落防止体11の弾性によって上記ボルト12の外周に密着することで該ボルト12を保持するものであって、ボルト12に対し螺合しているものではないため、該ボルト12の仮止めは、その締付け軸力に基いたものではなく、よって、ハンチプレート9の孔12に仮止めされたボルト12の回転方向及び軸心方向の変位を確実に防止できるようにはなっていない。
したがって、上記特許文献2に示された手法は、ボルトを仮固定した状態で該ボルトの頭部とその周囲を先行塗装する工法を実施するためのボルトの仮固定方法としては採用し得ないものである。
そこで、本発明は、2枚の鋼板同士の重ね合わせ部をボルトを用いて接合する際、一方の鋼板のボルト孔に対し、該一方の鋼板の両面側での同時作業を要することなくボルトを脱落しないよう保持させることができると共に、ナット締付け時にも該ボルトに共回りが生じる虞を未然に防止できるようにし、更には、上記鋼板の重ね合わせ部を接合するために用いるボルトの頭部を、該ボルトの頭部の周りの鋼板表面と一緒に先行塗装することができる鋼板接合方法、及び、該方法に用いるボルト仮固定ナットを提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法とする。
又、請求項2に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次に、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法とする。
更に、請求項3に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法とする。
更に又、請求項4に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法とする。
又、請求項5に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、上記一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒状とすると共に、内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとする。
更に、上記構成のボルト仮固定ナットにおいて、外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とする。
又、請求項7に対応して、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、軸心方向の一方の端部の外径を上記一方の鋼板のボルト孔よりも小径とすると共に、軸心方向の中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備え、且つ内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に一側面側より係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込むことにより、上記ボルト孔に係止用突出部を係止させて固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとする。
上記構成のボルト仮固定ナットにおいて、係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とする。
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法、又は、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法としてあるので、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業を、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定するための作業現場とは異なる場所で実施できる。よって、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業の作業効率を高いものとすることができる。又、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。これにより、手間及び人手の削減化を図る効果が期待できる。
(2)ボルト仮固定ナットに対する大きな締付け軸力により、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを、回転を防止した状態で仮固定することができる。よって、上記ボルト孔にボルトが仮固定してある一方の鋼板の他側面側からの作業のみで、上記一方の鋼板に対する他方の鋼板の接合作業を実施できる。しかも、上記一方の鋼板のボルト孔に仮固定してあるボルトに対して、ナットを螺着させて締め込むときに、該ボルトに共回りが生じる虞を未然に防止することができる。
(3)上記(1)の鋼板接合方法において、ボルトを一方の鋼板に予め仮固定した後、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、他方の鋼板を接合するようにすることにより、上記一方の鋼板の一側面側に施してある先行塗装に割れや剥離が生じる虞を未然に防止しながら、一方の鋼板の他側面側からの作業のみで、上記一方の鋼板に他方の鋼板を接合する作業を実施できる。
(4)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、上記一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒状とすると共に、内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとすることにより、ボルト仮固定ナットを螺着させてなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側からボルト孔に押し込むことで、該一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを落下しないように保持させることができ、又、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを行うことで、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを回転を防止した状態で仮固定でき、更に、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施でき、以上により、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできるという効果を発揮可能なボルト仮固定ナットを実現できる。
(5)外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込む際、ボルト仮固定ナットの外周面にて隣接する溝同士の間に形成される鍔状の突部を、上記一方の鋼板の一側面側にめくれるように弾性変形させることができ、その後、上記ボルト仮固定ナットに対して上記ボルトの締め込みを行うときには上記ボルト仮固定ナットの外周面の各鍔状の突部に対して、上記ボルト孔への押し込み時にめくれた方向に沿って圧縮力を作用させることができるため、該ボルト仮固定ナットを上記ボルト孔の内側により確実に固定することができる。
(6)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、軸心方向の一方の端部の外径を上記一方の鋼板のボルト孔よりも小径とすると共に、軸心方向の中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備え、且つ内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に一側面側より係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込むことにより、上記ボルト孔に係止用突出部を係止させて固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを、上記係止用突出部が他側面側に出るまで押し込むことで、該一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを落下しないように保持させることができ、更に、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを行うことで、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを回転を防止した状態で仮固定できるという効果を発揮可能なボルト仮固定ナットを実現できる。
(7)係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込んで、該ボルト仮固定ナットを上記係止用突出部が他側面側に出るように配置した状態にて、ボルト仮固定ナットの自由な回転を防止できる。よって、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施できることから、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。
(1)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法、又は、ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合する鋼板接合方法としてあるので、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業を、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定するための作業現場とは異なる場所で実施できる。よって、ボルトにボルト仮固定ナットを螺着する作業の作業効率を高いものとすることができる。又、上記一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。これにより、手間及び人手の削減化を図る効果が期待できる。
(2)ボルト仮固定ナットに対する大きな締付け軸力により、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを、回転を防止した状態で仮固定することができる。よって、上記ボルト孔にボルトが仮固定してある一方の鋼板の他側面側からの作業のみで、上記一方の鋼板に対する他方の鋼板の接合作業を実施できる。しかも、上記一方の鋼板のボルト孔に仮固定してあるボルトに対して、ナットを螺着させて締め込むときに、該ボルトに共回りが生じる虞を未然に防止することができる。
(3)上記(1)の鋼板接合方法において、ボルトを一方の鋼板に予め仮固定した後、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、他方の鋼板を接合するようにすることにより、上記一方の鋼板の一側面側に施してある先行塗装に割れや剥離が生じる虞を未然に防止しながら、一方の鋼板の他側面側からの作業のみで、上記一方の鋼板に他方の鋼板を接合する作業を実施できる。
(4)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、上記一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒状とすると共に、内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとすることにより、ボルト仮固定ナットを螺着させてなるボルトを、上記一方の鋼板の一側面側からボルト孔に押し込むことで、該一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを落下しないように保持させることができ、又、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを行うことで、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを回転を防止した状態で仮固定でき、更に、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施でき、以上により、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできるという効果を発揮可能なボルト仮固定ナットを実現できる。
(5)外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込む際、ボルト仮固定ナットの外周面にて隣接する溝同士の間に形成される鍔状の突部を、上記一方の鋼板の一側面側にめくれるように弾性変形させることができ、その後、上記ボルト仮固定ナットに対して上記ボルトの締め込みを行うときには上記ボルト仮固定ナットの外周面の各鍔状の突部に対して、上記ボルト孔への押し込み時にめくれた方向に沿って圧縮力を作用させることができるため、該ボルト仮固定ナットを上記ボルト孔の内側により確実に固定することができる。
(6)ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、軸心方向の一方の端部の外径を上記一方の鋼板のボルト孔よりも小径とすると共に、軸心方向の中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備え、且つ内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に一側面側より係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込むことにより、上記ボルト孔に係止用突出部を係止させて固定できるようにしてなる構成を有するボルト仮固定ナットとすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを、上記係止用突出部が他側面側に出るまで押し込むことで、該一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを落下しないように保持させることができ、更に、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを行うことで、上記一方の鋼板のボルト孔に、上記ボルトを回転を防止した状態で仮固定できるという効果を発揮可能なボルト仮固定ナットを実現できる。
(7)係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした構成とすることにより、一方の鋼板のボルト孔に、一側面側よりボルトの軸部に螺着したボルト仮固定ナットを押し込んで、該ボルト仮固定ナットを上記係止用突出部が他側面側に出るように配置した状態にて、ボルト仮固定ナットの自由な回転を防止できる。よって、上記ボルト仮固定ナットに対するボルトの締付けを、上記一方の鋼板のいずれか一方の側面側から実施できることから、一方の鋼板のボルト孔にボルトを仮固定する作業の際、該一方の鋼板の両面側での同時作業を不要にできる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3は本発明の鋼板接合方法、及び、該方法に用いるボルト仮固定ナットの実施の一形態として、2枚の重ね合わせ鋼板として、図9に示したと同様の合成床版の底鋼板1と添接板2との接合部に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
すなわち、本発明のボルト仮固定ナット13は、図3に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5を仮固定すべき対象である底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きい外径寸法を有する円筒形状として、内周面に上記ボルト5の軸部5aに螺着させるための雌ねじ部14が設けてある。具体的には、上記ボルト仮固定ナット13は、その外径を、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも、たとえば、0.5mm程度大きい寸法に設定してある。上記底鋼板1のボルト孔3の内径が25mmである場合は、ボルト仮固定ナット13の外径を25.5mm程度に設定するようにしてある。
又、ボルト仮固定ナット13の外周面には、軸心方向所要間隔位置に、リング状の溝15を、該溝15の内側での直径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さくなるような深さ寸法で複数設けて、隣接する溝15同士の間に鍔状の突部16が形成してある。
なお、上記ボルト仮固定ナット13の雌ねじ部14は、上記ボルト5の頭部5b近傍の首下部にねじが刻設されていない領域が存在していたり、又は、首下部に不完全なねじ山が存在している場合であっても、該ボルト5の軸部5aに螺着させるボルト仮固定ナット13を、ボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部が、ボルト5の頭部5bより所要寸法の隙間を隔てた位置、たとえば、2〜3mm程度離れた位置までねじ込めるように設けてあるものとする。
上記ボルト仮固定ナット13の軸心方向寸法は、少なくとも、内周面の雌ねじ部14の軸心方向に、後述するように上記ボルト5の仮固定を行うための十分な締付け軸力を確保するために必要とされる数のねじ山を配列できるように設定してある。又、該ボルト仮固定ナット13を上記したようにボルト5の軸部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、該ボルト仮固定ナット13における反ボルト頭部5b側の軸心方向他端部の上記ボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚の和以下の寸法となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際に上記ボルト5に嵌めるワッシャ7として、ボルト仮固定ナット13の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、ボルト仮固定ナット13を上記したようにボルト5の軸部5aに頭部5bより所定寸法離れた位置までねじ込んだ状態で、該ボルト仮固定ナット13の軸心方向他端部の上記ボルト頭部5bからの距離が、上記底鋼板1の板厚と添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように、ボルト仮固定ナット13の軸心方向寸法を設定すればよい。
更に又、上記ボルト仮固定用ナット13は、所要の弾性変形を許容できるように、たとえば、合成樹脂製、あるいは、黄銅、銅、アルミニウム等、上記底鋼板1及びボルト5に比して柔らかい金属製としてある。これにより、上記ボルト仮固定ナット13を、上記したようにボルト5の軸部5aにおける所定位置に螺着させた状態にて、上記底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5と一緒にボルト仮固定ナット13を強制的に押し込むことができるようにしてあると共に、上記ボルト仮固定ナット13における底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に強制的に押し込まれた部分に生じる径方向の圧縮弾性変形の復元力によって、該ボルト仮固定ナット13の外周面を、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させて、該ボルト孔3の内側に、ボルト仮固定ナット13を固定できるようにしてある。
上記ボルト仮固定ナット13の軸心方向他端部の外周部には、角部を面取りした形状のテーパ部17を設けて、軸心方向他端側部の外径を、上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも細くしてある。これにより、上記したようにボルト仮固定ナット13を、ボルト5の軸部5aに取り付けた状態で該ボルト5と一緒に上記底鋼板1のボルト孔3に押し込むときの作業性を高めることができるようにしてある。
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット13を用いて2枚の重ね合わせ鋼板としての上記合成床版の底鋼板1と添接板2を接合して、図9に示したと同様に隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の添接板2を介した連結を行う場合は、先ず、工場等にて、図1(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5、たとえば、トルシア型のボルト(高力ボルト)5の軸部5aに、上記ボルト仮固定ナット13を螺着させて、該ボルト仮固定ナット13におけるボルト頭部5b寄りの軸心方向一端部と、ボルト頭部5bとの距離が2〜3mm程度となる位置までねじ込むようにする。
次に、図1(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット13と一緒に、ボルト頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで強制的に押し込む。これにより、該ボルト5と底鋼板1のボルト孔3との間で径方向に圧縮弾性変形される上記ボルト仮固定ナット13の復元力により、該ボルト仮固定ナット13の外周面が、上記底鋼板1のボルト孔3の内周面に密着させられて、該ボルト孔3の内側に上記ボルト仮固定ナット13が固定される。よって、この底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット13と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。
次いで、上記ボルト5を締付け方向へ回転させる。具体的には、上記底鋼板1の上側にて、ボルト孔3に下方より挿通させてあるトルシア型のボルト5の先端チップを、汎用のボックスレンチ等を使用して、ボルト5の締め込み方向へ回転させて、該ボルト5を、上記底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されている上記ボルト仮固定ナット13に対して締め付ける。なお、上記ボルト5が通常の六角ボルト(高力ボルト)である場合には、上記底鋼板1の下側からの作業により、ボルト5の頭部を締め込み方向へ回転させるようにすればよい。
上記図1(ロ)の工程における上記ボルト仮固定ナット13の挙動について詳述すると、先ず、ボルト仮固定ナット13がボルト5に螺着された状態で底鋼板1のボルト孔3に押し込まれるときには、図2(イ)に示す如く、内周面の雌ねじ部14が、該雌ねじ部14に螺合しているボルト5の軸部5aによって上方へ押される一方、ボルト仮固定ナット13の外周面と底鋼板1のボルト孔3の内周面との間に摩擦が作用するため、ボルト仮固定ナット13の外周面に設けてある各鍔状の突部16が、外周部が下方へめくれる(傾く)ように変形させられる。その後、上記ボルト仮固定ナット13に対して上記ボルト5の締め込みを行うと、図2(ロ)に示す如く、頭部5bが底鋼板1の下面に当接することで上方への変位が阻止されるボルト5の軸部によって、上記ボルト仮固定ナット13の内周面の雌ねじ部14に対して下方への力が作用するため、上記ボルト仮固定ナット13の外周面の各鍔状の突部16に対しては、上記ボルト孔3への押し込み時にめくれた方向(傾いた方向)に沿って圧縮力が作用するようになり、このため、該ボルト仮固定ナット13の各鍔状の突部16の外周面の上記ボルト孔3の内周面に対する密着性が増して、該ボルト孔3の内側に、上記ボルト仮固定ナット13がより確実に固定されるようになる。よって、このボルト仮固定ナット13に対して締め込むことにより生じる強い締付け軸力により、上記ボルト5は、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定されるようになる。
上記のようにしてボルト5の仮固定を行った後は、必要に応じて、工場等にて、図1(ロ)に二点鎖線で示す如く、上記ボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット13を介してボルト5を仮固定してなる底鋼板1の下面側に、上記ボルト5の頭部5bを含めて全面に亘り先行塗装を施すようにする。18は塗膜である。
その後、上記ボルト孔3にボルト5を仮固定し且つ下面側に先行塗装を施してなる底鋼板1を、施工現場へ搬入して、該底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設した後、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に、図1(ハ)に示す如く(図1(ハ)では片方の底鋼板1のみを示してある)、該各底鋼板1のボルト孔3と対応する位置に上記ボルト仮固定ナット13の外径よりも所要寸法大きなボルト孔4を穿設してなる添接板2を上方から載置して、該添接板2のボルト孔4に、上記底鋼板1のボルト孔3に仮固定してあるボルト5を、それぞれ挿通させるようにする。
しかる後、上記添接板2の上方へ突出している上記各ボルト5の軸部5aに、ワッシャ7を介してナット6を嵌めて、該ナット6をボルト5に対して締め込むことで、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合する。
なお、一般に、雄ねじと雌ねじを螺合させる場合、ねじ山とねじ溝の間には多少の遊びが設けてある。したがって、上記ボルト5に対するナット6の締め込みの際にボルト5の軸部が多少伸びても、図2(ハ)に示すように、ボルト5の軸部5aのねじ山が、底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されているボルト仮固定ナット13の雌ねじ部14のねじ溝の遊びの内側で変位するので、上記ボルト5の伸びを何ら拘束しない。これにより、上記ボルト5とナット6による底鋼板1と添接板2の接合は、所定の締付け軸力により確実に行なわれるようになる。よって、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士が、上記添接板2を介して連結されるようになる。
このように、本発明の鋼板接合方法によれば、ボルト5に対するボルト仮固定ナット13のねじ込み作業は、底鋼板1に対するボルト5の仮固定作業を行う現場とは異なる場所で実施できるため、このボルト5に対するボルト仮固定ナット13のねじ込み作業の作業効率を高いものとすることができる。
又、上記ボルト仮固定ナット13をねじ込んだボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に、ボルト仮固定ナット13と一緒に押し込むことで、該ボルト5を上記ボルト仮固定ナット13を介して底鋼板1のボルト孔3に落下しないよう保持させることができる。更に、上記底鋼板1のボルト孔3に固定されたボルト仮固定ナット13に対する上記ボルト5の締め込みは、該ボルト5がトルシア型の場合は先端チップを、又、六角ボルトの場合には頭部を、ボルト5の締め込み方向へ回転させるのみでよい。よって、底鋼板1の上下両側での同時作業が不要になり、手間及び人手を削減することができる。
更に、上記底鋼板1のボルト孔3の内側に固定されたボルト仮固定ナット13に対する大きな締付け軸力により、該底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5を、回転を防止した状態で仮固定することができる。
したがって、上記底鋼板1の架設現場にて、底鋼板1のボルト孔3に仮固定してある上記ボルト5に、添接板2の上側からナット6を締め込むときにも、上記ボルト5に共回りが発生する虞を未然に防止することができる。このため、上記したように、工場等で上記底鋼板1の下面側に、上記ボルト孔3に取り付けてあるボルト5の頭部5bを含めて先行塗装を施すことができるようになることから、上記底鋼板1の設置後における該底鋼板1の下面側からの塗装作業を不要にすることができて、底鋼板1の下側に足場を必要とする作業や、高所作業車を用いて行う作業をなくすことが可能となる。
次に、図4は本発明の実施の他の形態として、ボルト仮固定ナットの別の例を示すもので、図3に示したボルト仮固定ナット13と同様の構成において、外周面の溝15を省略して、外周面を軸心方向にフラットな円筒面としてなるボルト仮固定ナット13aとしたものである。
なお、上記構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット13aでは、ボルト5の軸部5aにねじ込んで取り付けた状態で、該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3へ強制的に押し込む際に、図3に示したボルト仮固定ナット13における鍔状の突部16のように撓んで変形可能な部分がない。よって、本実施の形態のボルト仮固定ナット13aは、外径の寸法を、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも大きい寸法となる範囲で、図3に示したボルト仮固定ナット13の外径寸法よりもやや小さく設定するか、あるいは、該ボルト仮固定用ナット13aの材質を、図3に示したボルト仮固定ナット13に比して弾性変形の許容量がやや大きな材質とするようにすればよい。
その他の構成は図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
以上の構成としてある本実施の形態のボルト仮固定ナット13aによっても、図1(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様の手順により、底鋼板1のボルト孔3に押し込まれて固定されたボルト仮固定ナット13aを介した底鋼板1のボルト孔3へのボルト5の仮固定と、その後のボルト5とナット6による底鋼板1と添接板2の接合を実施することができる。
よって、本実施の形態によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
又、ボルト仮固定ナット13aをシンプルな構成にできるため、該ボルト仮固定ナット13aの製造コストの低減化を図る効果が期待できる。
又、ボルト仮固定ナット13aをシンプルな構成にできるため、該ボルト仮固定ナット13aの製造コストの低減化を図る効果が期待できる。
次いで、図5(イ)(ロ)(ハ)及び図6は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、以下のようにしてある。
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット19は、図6に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有する円筒部材20の内周面に、ボルト5の軸部5aに螺着させるための雌ねじ部14が設けてある。
上記円筒部材20の外周面における軸心方向の中間部には、ボルト軸部5aへのねじ込み時に該軸部5aの先端寄りとなる軸心方向の一方からボルト頭部5b寄りとなる軸心方向の他方へ向けて徐々に拡径して、軸心方向他端部における外径が上記底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法太径となるテーパ状の係止用突出部21を設ける。
更に、該係止用突出部21の軸心方向他端側には、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法を有する円筒部22を、上記円筒部材20の軸心方向他端部側へ所要寸法延びるように取り付け、上記係止用突出部21の軸心方向他端部と、上記円筒部22との間に、軸心方向に垂直か、又は、わずかにテーパした段差部23を設けた構成としてある。なお、上記テーパ状の係止用突出部21の軸心方向他端寄り部分、及び、上記円筒部22の内周面と上記円筒部材20の外周面との間には、径方向に所要幅の空間部22aを設けて、上記係止用突出部21の軸心方向他端寄り部分と上記円筒部22の軸心側への弾性変形を許容できるようにしてある。
上記ボルト仮固定ナット19の軸心方向寸法は、上記段差部23より円筒部材20の軸心方向一端部までの長さ寸法が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してあるものとする。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット19の円筒部材20の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、ボルト仮固定ナット19の段差部23より円筒部材20の軸心方向一端部までの長さ寸法が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
上記ボルト仮固定用ナット19の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3の実施の形態におけるボルト仮固定ナット13と同様の材質とするようにしてある。
その他、図5(イ)(ロ)(ハ)及び図6において、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット19を用いて2枚の重ね合わせ鋼板としての上記合成床版の底鋼板1と添接板2を接合して、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の添接板2を介した連結を行う場合は、先ず、工場等にて、図5(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト(高力ボルト)5の軸部5aに、上記ボルト仮固定ナット19を螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に、上記円筒部22が配されるようになるまでねじ込むようにする。
次に、図5(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット19と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット19は、上記円筒部20が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれ、この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって一旦軸心側へ弾性変形させられた上記テーパ状の係止用突出部21が、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに開くように形状が復元されるようになる。よって、この係止用突出部21と、底鋼板1のボルト孔3の内側に配されている円筒部22との間に設けてある段差部23が、該底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット19と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット19の円筒部22の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接することで、該ボルト仮固定ナット19の自由な回転も制限される。
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部21の軸心方向他端側に設けてある段差部23によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット19に対してボルト5の締付けが行われる。これにより、該ボルト5は、上記ボルト仮固定ナット19に対して生じる強い締付け軸力により、上記底鋼板1のボルト孔3に、回転が防止された状態で仮固定される。
上記のようにして底鋼板1のボルト孔3に対するボルト5の仮固定を行った後は、図1(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同様の手順により、必要に応じて、図5(ロ)に二点鎖線で示す如く、上記ボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット19を介してボルト5を仮固定してなる底鋼板1の下面側に、上記ボルト5の頭部5bを含めて全面に亘り先行塗装を施した後、底鋼板1を、施工現場へ搬入して、該底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設する。その後、図5(ハ)に示す如く、上記ボルト仮固定ナット19の係止用突出部21の外径よりも所要寸法大きなボルト孔4を穿設してなる添接板2を上方から載置して、該添接板2のボルト孔4に、上記底鋼板1のボルト孔3に仮固定してあるボルト5を、それぞれ挿通させた後、上記ボルト5の軸部5aに、ワッシャ7を嵌めてからナット6を締め込むことで、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合して、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士を、上記添接板2を介して連結させるようにする。
本実施の形態によっても、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図7(イ)(ロ)(ハ)及び図8は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、以下のようにしてある。
すなわち、本実施の形態におけるボルト仮固定ナット24は、図8に示す如く、底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法小さい外径寸法を有する円筒部材25の内周面に、ボルト5の軸部5aに螺着させるための雌ねじ部14が設けてある。
上記円筒部材25の軸心方向の一端側には、軸心方向の中間部にて径方向外向きに屈曲する断面形状山型のリング形状を有し且つ頂部の外径寸法が底鋼板1のボルト孔3の内径よりも所要寸法大きくなるようにしてある係止用突出部26を一体に取り付ける。
更に、上記係止用突出部26の軸心方向一端側に、上記底鋼板1のボルト孔3の内径と同径か、又は、わずかに大きな外径寸法で軸心方向に所要寸法延びる円筒部27を一体に取り付けてなる構成としてある。
上記ボルト仮固定ナット24の軸心方向寸法は、後述するように、上記係止用突出部26によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止される該ボルト仮固定ナット24に対して底鋼板1の下面側からボルト5の締付けを行った状態のときに、上記円筒部材25の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚の寸法以下となるように設定してある。なお、上記底鋼板1と添接板2を接合する際にボルト5に嵌めるワッシャ7として、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部材25の外径よりも大きな寸法の内径を有するワッシャ7を使用する場合には、上記ボルト5の締付けを行った状態での円筒部材25の軸心方向他端部の底鋼板1の上面からの突出量が、添接板2の板厚とワッシャ7の厚み寸法の和以下の寸法となるように設定すればよい。
上記ボルト仮固定用ナット24の材質は、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3の実施の形態におけるボルト仮固定ナット13と同様の材質とするようにしてある。
その他、図7(イ)(ロ)(ハ)及び図8において、図1(イ)(ロ)(ハ)及び図3に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
以上の構成としてあるボルト仮固定ナット24を用いて2枚の重ね合わせ鋼板としての上記合成床版の底鋼板1と添接板2を接合して、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の添接板2を介した連結を行う場合は、先ず、工場等にて、図7(イ)に示す如く、上記底鋼板1と添接板2の接合に用いるボルト5の軸部5aに、上記ボルト仮固定ナット24を軸心方向の一端側から螺着させて、ボルト頭部5bから底鋼板1の板厚寸法分離れた位置に上記円筒部27が配されるようになるまでねじ込むようにする。
次に、図7(ロ)に示す如く、底鋼板1のボルト孔3に、下方より上記ボルト5を、予め螺着させてある上記ボルト仮固定ナット24と一緒に、ボルト5の頭部5bが上記底鋼板1の下面に当る位置まで押し込む。これにより、上記ボルト仮固定ナット24は、上記円筒部27が底鋼板1のボルト孔3の上端部の内側に配される位置まで押し込まれる。この際、上記底鋼板1のボルト孔3に押し込まれることによって、上記断面形状山型としてある係止用突出部26が一旦軸心側へ押しつぶされるように弾性変形させられた後、上記底鋼板1のボルト孔3を通過した時点で、上記弾性変形していた係止用突出部26の形状が、該底鋼板1の上方にて径方向外向きに突出するように復元されるようになる。よって、この係止用突出部26が、底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されるようになることから、該ボルト仮固定ナット24と螺着してある上記ボルト5は、底鋼板1のボルト孔3に挿通された状態で落下することなく保持されるようになる。又、この際、上記ボルト仮固定ナット24の円筒部27の外周面が、底鋼板1のボルト孔3の内周面に接するため、該ボルト仮固定ナット24の自由な回転も制限される。
次いで、上記ボルト5を締め込み方向へ回転させると、上記自由な回転が制限され且つ係止用突出部26によって底鋼板1の上面におけるボルト孔3の周縁部に係止されている上記ボルト仮固定ナット24に対してボルト5の締付けが行われて、上記底鋼板1のボルト孔3とボルト5との隙間に上記係止用突出部26が多少食い込まされることで固定される上記ボルト仮固定ナット24に対して生じる強い締付け軸力により、底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト5が回転が防止された状態で仮固定される。
上記のようにしてボルト5の仮固定を行った後は、図1(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同様の手順により、必要に応じて、図7(ロ)に二点鎖線で示す如く、上記ボルト孔3に上記ボルト仮固定ナット24を介してボルト5を仮固定してなる底鋼板1の下面側に、上記ボルト5の頭部5bを含めて全面に亘り先行塗装を施した後、図7(ハ)に示す如く、上記底鋼板1のボルト孔3に予め仮固定してなるボルト5と、ナット6を用いて、底鋼板1とその上に載置する添接板2との重ね合わせ部を接合させることで、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士を、上記添接板2を介して連結させるようにすればよい。
本実施の形態によっても、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3に示した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3の実施の形態、及び、図4の実施の形態におけるボルト仮固定ナット24の外径寸法は、ボルト5にねじ込んだ状態で該ボルト5と一緒に底鋼板1のボルト孔3に押し込むことで、該ボルト孔3の内側に固定できるようにしてあれば、その材質や、ボルト5を仮固定する対象となる底鋼板1のボルト孔3の径寸法等に応じて、底鋼板1のボルト孔3より径を大きく設定する割合を0.5mmから増減させてもよい。
又、図1(イ)(ロ)(ハ)乃至図3の実施の形態におけるボルト仮固定ナット13の外周面に設ける溝15や、隣接する溝15同士の間に形成させる鍔状の突部16の幅寸法、軸心方向の配列間隔、配列数、深さ寸法等は、該ボルト仮固定ナット13のサイズ等に応じて適宜変更してもよい。
なお、上記各実施の形態においては、ボルト孔3に仮固定するボルト5の頭部5bを含む底鋼板1の下面側に、先行塗装を行うことを想定して、いずれも上記底鋼板1のボルト孔3へのボルト5のボルト仮固定ナット13,13a,18,24を介した仮固定作業を工場等にて行う場合の手順について説明したが、上記のような先行塗装が必要ない場合には、底鋼板1の架設現場となる現地において、地上で該底鋼板1のボルト孔3に、上記ボルト仮固定ナット13,13a,18,24を介したボルト5の脱落を防止した状態での保持や、仮固定を行い、次いで、底鋼板1を主桁上に径間方向に並べて配設し、隣接する底鋼板1の突合せ端部同士の上側に添接板2を上方から載置して、該添接板2のボルト孔4に、上記底鋼板1のボルト孔3に保持又は仮固定してあるボルト5をそれぞれ挿通させてから、上記添接板2の上方へ突出している上記各ボルト5の軸部5aに、ワッシャ7を介してナット6を嵌めて、該ナット6をボルト5に対して締め込むことで、上記底鋼板1と添接板2の重ね合わせ部を、ボルト5によりそれぞれ接合するようにしてもよい。この場合には、高所での底鋼板1のボルト孔3に対するボルト5の挿入作業を省略できるという効果が期待できる。
本発明の鋼板接合方法は、底鋼板1の下面側に塗装を必要としない場合における該底鋼板1と添接板2との接合個所に適用してもよい。更には、2枚の鋼板をボルトを用いて接合する際、一方の鋼板に設けたボルト孔に予めボルトを脱落しないよう取り付けておくことが望まれる個所であれば、上記底鋼板1と添接板2以外のいかなる鋼板同士の接合個所にも適用してよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
1 底鋼板(一方の鋼板)
2 添接板(他方の鋼板)
3 ボルト孔
4 ボルト孔
5 ボルト
5a 軸部
5b 頭部
6 ナット
13,13a ボルト仮固定ナット
14 雌ねじ部
15 溝
19 ボルト仮固定ナット
21 係止用突出部
22 円筒部
24 ボルト仮固定ナット
26 係止用突出部
27 円筒部
2 添接板(他方の鋼板)
3 ボルト孔
4 ボルト孔
5 ボルト
5a 軸部
5b 頭部
6 ナット
13,13a ボルト仮固定ナット
14 雌ねじ部
15 溝
19 ボルト仮固定ナット
21 係止用突出部
22 円筒部
24 ボルト仮固定ナット
26 係止用突出部
27 円筒部
Claims (8)
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合することを特徴とする鋼板接合方法。
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有するボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に一方の鋼板の一側面側より押し込んで、このボルト孔にボルト仮固定ナットを固定し、次いで、該ボルト孔の内側に固定されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次に、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合することを特徴とする鋼板接合方法。
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合することを特徴とする鋼板接合方法。
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に、該ボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する係止用突出部を具備してなるボルト仮固定ナットを螺着しているボルトを、該ボルト仮固定ナットと一緒に、一方の鋼板の一側面側より該ボルト仮固定ナットの係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込み、次に、上記係止用突出部によって上記一方の鋼板の他側面におけるボルト孔の外周縁部に係止されるボルト仮固定ナットに対して上記ボルトを締め込んで、該ボルトを、上記一方の鋼板に予め仮固定し、次いで、上記一方の鋼板の一側面における上記ボルトの頭部を含む領域を先行塗装し、しかる後、上記一方の鋼板の他側面側に、上記ボルト仮固定ナットの係止用突出部の外径よりも大きなボルト孔を穿設した他方の鋼板を配置して、その外側から上記ボルトにナットを螺着させて締め付けることにより、上記2枚の重ね合わせ鋼板を接合することを特徴とする鋼板接合方法。
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、上記一方の鋼板のボルト孔よりも所要寸法大きな外径を有する円筒状とすると共に、内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に押し込むことにより、該ボルト孔とボルトとの隙間で径方向に圧縮される弾性変形の復元力によって上記ボルト孔内に固定できるようにしてなる構成を有することを特徴とするボルト仮固定ナット。
- 外周面における軸心方向所要間隔の複数個所に、リング状の溝を設けるようにした請求項5記載のボルト仮固定ナット。
- ボルトを用いて接合するようにする2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔に通したボルトを該一方の鋼板に仮固定させるボルト仮固定ナットにおいて、軸心方向の一方の端部の外径を上記一方の鋼板のボルト孔よりも小径とすると共に、軸心方向の中間部に、上記一方の鋼板のボルト孔よりも大径で且つ軸心側へ弾性変形可能な係止用突出部を備え、且つ内周面に上記ボルトの軸部に螺着させるための雌ねじ部を有してなり、ボルトの軸部に螺着した状態で上記一方の鋼板のボルト孔に一側面側より係止用突出部が上記一方の鋼板のボルト孔を通過して他側面側に出るようになるまで押し込むことにより、上記ボルト孔に係止用突出部を係止させて固定できるようにしてなる構成を有することを特徴とするボルト仮固定ナット。
- 係止用突出部よりも軸心方向他方の端部側に、2枚の重ね合わせ鋼板のうちの一方の鋼板のボルト孔と同径か又はわずかに大きい円筒部を設けるようにした請求項7記載のボルト仮固定ナット。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007298906A JP2009121646A (ja) | 2007-11-19 | 2007-11-19 | 鋼板接合方法、及び、該方法に用いるボルト仮固定ナット |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2015031296A (ja) * | 2013-07-31 | 2015-02-16 | 東京電力株式会社 | 鉄塔のボルト接合部における補強方法 |
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2007
- 2007-11-19 JP JP2007298906A patent/JP2009121646A/ja active Pending
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