JP2009114471A - 高強度ステンレスパイプ - Google Patents

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Abstract

【課題】強度および耐食性が良好で、廉価に製造できる高強度ステンレスパイプを提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.04〜0.12%、Ni:0(無添加)〜5.0%、Cr:12.0〜17.0%、N:0(無添加)〜0.10%、Si:0.2〜2.0%、Mn:2.0%以下、Cu:0(無添加)〜2.0%、P:0.06%以下、S:0.006%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するステンレス鋼材を母材とする。また、母相をフェライト相またはマルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成する。この母材の端部を接合部として溶融溶接して造管する。母相は、結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出し、固溶C量が0.03質量%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、輸送機関用、機械構造用、建築用、装飾用などに用いられ、特に強度と耐食性が要求される用途に好適な高強度ステンレスパイプに関する。
ステンレス鋼材は、耐食性に優れ、また、強度、加工性、接合部特性なども良好であるので、このようなステンレス鋼材から形成されたステンレスパイプは、高耐食性や高強度の面から様々な用途に使用される。
さらに、近年では、低コスト化も要求されており、使用される高強度ステンレスパイプは、高価な元素を含有することなく耐食性および強度を向上させることが求められている。
そして、質量%で、12%Crマルテンサイト系ステンレス鋼材をベースとして、Crの含有量を増量するとともに、C、Nの含有量を低減し、さらに、Cr、Ni、Mo、Cuを適正量含有する組成とし、マルテンサイト相をベース相として、フェライト相および残留オーステナイト相から形成される複相組織とすることにより、強度と、熱間加工性と、耐食性と、溶接性とを向上させたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、質量%にて、Nの含有量を0.015%以下に低減し、マルテンサイト系ステンレス鋼材を溶接してステンレスパイプに造管した後、920〜1100℃でオーステナイト化し、水冷以上の冷却速度での冷却、焼き戻し処理、空冷以上の冷却速度での冷却をすることによりマルテンサイトを生成した高強度ステンレスパイプがある。この高強度ステンレスパイプは、炭酸ガス環境でも充分な耐食性を有し、さらに衝撃靭性および溶接性に優れたものである(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、金属組織について、オーステナイトの母相に適量のフェライト相を導入して、体積%で、フェライト相を5〜40%含有したオーステナイト主体の2相組織とすることにより、加工性および耐食性を向上させたものがある(例えば、特許文献3参照。)。
また、フェライト系ステンレス鋼材にMoとVとを複合して適性量含有することで、耐食性を向上させ、さらに、熱間圧延条件および冷間圧延条件を規制することでMoの含有による加工性の低下を抑制したものがある(例えば、特許文献4参照。)。
特開2005−336599号公報(第2−7頁、図1) 特開平4−268018号公報(第2,3頁) 特開2004−225075号公報(第2,3頁、図1) 特開2002−363712号公報(第2,3頁、図1)
しかしながら、特許文献1のステンレス鋼材では、引張強さが689MPa以下であり強度をより向上させることが好ましく、さらに比較的高価な元素であるMoが含有されているため、コストが高くなってしまう問題がある。
また、特許文献2のステンレス鋼材では、耐食性や衝撃靭性は良好であるが、強度をより向上させることが好ましく、さらに、比較的高価な元素であるCoを含有させているため、コストが高くなってしまう問題がある。
特許文献3および特許文献4のステンレス鋼材では、最終焼鈍後の状態で造管されて、造管後に熱処理を施さずに使用されるので、加工性は良好であるが、高強度が得られない問題がある。
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、強度および耐食性が良好で、廉価に製造できる高強度ステンレスパイプを提供する。
請求項1に記載された発明は、質量%で、C:0.04〜0.12%、Ni:0(無添加を含む)〜5.0%、Cr:12.0〜17.0%、N:0(無添加を含む)〜0.10%、Si:0.2〜2.0%、Mn:2.0%以下、Cu:0(無添加を含む)〜2.0%、P:0.06%以下、S:0.006%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されたステンレス鋼材を母材とし、この母材の端部を接合部として溶融溶接することにより造管されたものであって、前記母相は、結晶粒界および結晶粒内において炭化物が均一に析出されかつ固溶C量が0.03%以下に調整され、前記接合部は、溶融溶接による溶融組織を有する高強度ステンレスパイプである。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された高強度ステンレスパイプにおいて、母相および接合部は、析出した炭化物が造管後の熱処理により固溶されたものである。
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された高強度ステンレスパイプにおいて、熱処理後の母相および接合部は、マルテンサイト相の単相組織またはマルテンサイト相およびフェライト相の複相組織で構成されたものである。
請求項1に記載された発明によれば、成分組成を規定して、ステンレス鋼材の母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されることにより、造管後に、母相がマルテンサイト相を含んだ組織となり強度を向上できる。
また、通常のステンレス鋼材に用いられる元素のみで成分組成が構成されているので、廉価に製造できる。
ステンレス鋼材において、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出されることにより、炭化物が結晶粒界に局所的に析出し靭性が低下することによる造管時の加工性の低下を防止できる。また、結晶粒界での局所的な炭化物の析出によって固溶Cr量が減少して耐食性が低下することを防止できる。
母相の固溶C量が0.03質量%以下に調整されることにより、強度が過度に高くなることによる造管時の加工荷重の増大および表面の加工疵の発生を防止できる。また、固溶C量の増加により析出する炭化物が増加し、この析出する炭化物を形成するために固溶Cr量が減少して耐食性が低下することを防止できる。
請求項2に記載された発明によれば、母相および接合部に析出した炭化物が造管後の熱処理によって母相および接合部に固溶されるので、造管後の母相および接合部の強度および耐食性を向上できる。なお、熱処理前の造管時は、炭化物が析出した状態であるので、容易に造管できる。
請求項3に記載された発明によれば、造管し、熱処理した後の母相および接合部が、マルテンサイト相の単相組織またはマルテンサイト相およびフェライト相の複相組織であることにより、母相および接合部の強度を向上できる。なお、マルテンサイト相およびフェライト相の複相組織である場合は、マルテンサイト相の体積比率が高いほど高強度となる。
以下、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
この実施の形態の高強度ステンレスパイプの母材であるステンレス鋼材の各元素、および各元素の含有量について説明する。なお、各元素の含有量は、特に記載しない限り質量%とする。
[C:0.04〜0.12%]
Cは、強度を向上させる元素であり、特に、造管後の熱処理によって母相および接合部に固溶して強度が向上する重要な元素である。高強度ステンレスパイプの母材を構成するステンレス鋼として有効な強度を得るためには、0.04%以上含有させる必要がある。しかし、Cの含有量の増加にともなって、Cと炭化物を形成するCrの量も増加する。このため固溶Cr量が減少し、耐食性を低下させてしまう。さらに、Cの含有量が0.12%を超えると、炭化物が過剰に多くなり延性や靭性も低下し、造管時の加工性を悪化させてしまう。したがって、Cの含有量は、0.04〜0.12%とする。
[Ni:0〜5.0%]
Niは、CおよびNの一部を置換することにより、CおよびNの過剰量の含有による耐食性の低下を防止できる元素である。しかし、Niの含有量が5.0%を超えると、残留オーステナイト量の増加により強度を低下させてしまう。したがって、Niの含有量は5.0%を上限とする。なお、フェライト生成元素であるCrの含有量およびオーステナイト生成元素であるC、Nの含有量を調整することにより、ステンレス鋼材の母相をフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成できるので、Niは必ずしも含有させなくてもよい。
[Cr:12.0〜17.0%]
Crは、母相および接合部の耐食性を向上させる元素であり、高強度ステンレスパイプの母材を構成するステンレス鋼としての有効な耐食性を得るためには、12.0%以上含有させる必要がある。しかし、Crの含有量が17.0%を超えると、造管後の熱処理によってマルテンサイト相を得ることが困難になってしまう。また、オーステナイト生成元素の含有により成分調整を図っても、残留オーステナイトの増加により母相および接合部の強度が低下してしまう。したがって、Crの含有量は、12.0〜17.0%とする
[N:0〜0.10%]
Nは、Cと同様に、強度を向上させる元素であり、特に、造管後の熱処理によって母相へ固溶させて強度を向上できる。また、Cの一部をNで置換できるのでCの多量の含有による延性および靭性の低下を防止する。しかし、Nの含有量が0.10%を超えると、残留オーステナイトの増加により強度を低下させてしまう。したがって、Nの含有量は0.10%を上限とする。なお、Nは必ずしも含有させなくてもよい。
[Si:0.2〜2.0%]
Siは、固溶強化によって母相の強度を向上させる元素である。高強度ステンレスパイプの母材を構成するステンレス鋼としての有効な強度を得るためには、0.2%以上含有させる必要がある。しかし、Siの含有量が3.0%を超えると、固溶強化作用が飽和するとともに、δフェライト相の形成を助長されて延性および靱性を低下させてしまう。したがって、Siの含有量は0.2〜2.0%とする。
[Mn:2.0%以下]
Mnは、高温域でのβフェライト相の生成を抑制する。また、SをMnSとして補足し製造性を向上させる作用を有する。しかし、多量のMnの含有は焼鈍後の残留オーステナイト量を多くし、強度低下の原因となる。このため、Mnの含有量は2.0%を上限とする。なお、Mnの含有量は0.1〜1.2%であることが好ましい。
[Cu:0〜2.0%]
Cuは、高温域でのβフェライト相の生成を抑制するとともに、耐食性の向上に有効な元素である。ただし、Cuの含有量が2.0%を超えると母相または溶接部で、残留オーステナイトまたはβフェライトを生成し、強度低下の原因となる。したがって、Cuの含有量は2.0%を上限とする。なお、Cuは必ずしも含有させなくてもよい。
[P:0.06%以下]
Pは、耐食性を低下させる原因となる元素である。したがって、Pの含有量は、少ないほど望ましいが、Pの含有量を極端に低減させると製造コストが高騰するので、実質的に悪影響を及ぼさない範囲として、Pの含有量の上限を0.06%とする。
[S:0.006%以下]
Sは、熱間圧延時に粒界に偏析して熱間加工性を低下させて熱間加工割れや肌荒れなどを引き起こすとともに、中間焼鈍後の冷間圧延で耳切れを起こす原因となる元素である。また、多量のMnSが存在すると耐食性に悪影響を及ぼす。したがって、Sの含有量は少ないほど望ましいが、Sの含有量を極端に低減させると、製造コストが高騰するので、実質的に悪影響を及ぼさない範囲として、Sの含有量の上限を0.006%とする。
また、必要に応じて上述した元素に加えて、3.0%以下のMo、0.01%以下のB、0.5%以下のNb,Ti,Vを含有させてもよい。
[Mo:3.0%以下]
Moは、耐食性を向上させる元素である。しかし、Moの含有量が3.0%を超えると、熱間加工性を低下させてしまう。また、比較的高価な元素であるので、多量に含有させるとコストが高くなってしてしまう。したがって、Moの含有量は、3.0%を上限とする。
[B:0.01%以下]
Bは、微細な析出物を形成して結晶粒粗大化を抑制するとともに、熱間圧延温度域でのフェライト相とオーステナイト相との粒界における結合力を高めて熱間加工性を改善する元素である。しかし、Bの含有量が0.01%を超えると、低融点硼化物の形成を招き、熱間加工性を悪化させてしまう。このため、Bの含有量は0.01%を上限とする。
[Nb、Ti、V:0.5%以下]
Nb、Ti、Vは、結晶粒を微細化して、さらに、それぞれが析出物を生成して強度を向上させる元素である。しかし、Nb、Ti、Vそれぞれの含有量が0.5%を超えると、金属間化合物の生成により靭性が低下してしまう。したがって、Nb、Ti、Vそれぞれの含有量は、0.5%を上限とする。
上述の元素以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなり、このように成分組成が調整されることにより、母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されたステンレス鋼材となる。
ステンレス鋼材は、造管前に2回の熱処理が施されることにより、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出されかつ固溶C量が0.03質量%以下に調整されている。
なお、炭化物とは、Cとその他の元素1種以上が結合して形成されたものであり、CとNとその他の元素とが結合した炭窒化物も含まれる。
また、結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出された状態とは、透過型電子顕微鏡を用いて10万倍で観察される1μm四方の視野において、観察場所による炭化物の面積率の偏差が80%以下である状態である。なお、結晶粒界または結晶粒内で炭化物が連なって析出している状態は除外する。
ステンレス鋼材は、まず、材料温度600〜850℃、均熱時間0〜24hで一回目の熱処理が施されることによって、固溶Cを略全量炭化物として析出される。
ここで、炭化物は、結晶粒内より結晶粒界に析出し易く、1回目の熱処理後は炭化物が結晶粒界に優先析出している。結晶粒界に炭化物が優先析出した状態では、靭性が低下し、加工性が悪化する。また、析出する炭化物には、CとCrとが結合して形成される炭化クロムが含まれるので、炭化物が結晶粒界に局所的に優先析出すると、局所的な炭化物の形成により固溶Cr量が減少し、Cr欠乏層が形成される。
なお、Cr欠乏層とは、例えば炭化クロムの形成などにより母相のCr量に対して、Cr量が2質量%以上低い領域であり、耐食性が低下してしまうので、形成されないことが望ましい。
さらに、デスケール後、圧延率20%以上で冷間圧延を行い、冷間ひずみを導入する。
そして、1回目の熱処理温度からの温度差が材料温度で50℃以内にて、均熱時間0〜1hで2回目の熱処理が施される。この2回目の熱処理により、炭化物が母相の結晶粒界および結晶粒内に均一に析出する。
また、2回目の熱処理により、母相の固溶C量が0.03質量%以下に調整される。固溶C量が多いほどステンレス鋼材の強度が高くなり、固溶C量が0.03質量%を超えると、強度が過度に高くなって造管時の加工荷重が増大するとともに、加工性が悪化し、表面疵が生成され易くなる。さらに、造管時の冷却過程で、接合部の固溶Cが炭化物を形成して析出するので、固溶C量が0.03質量%を超えると、炭化物の一つである炭化クロムを形成するCrの量が過度に増加し、Cr欠乏層が形成され易くなる。したがって、固溶C量は0.03質量%を上限とする。
このようにステンレス鋼材では、靭性や耐食性や造管時の加工性の面から、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出され、固溶C量が0.03質量%以下に調整される必要があり、さらにCr欠乏層が存在しない状態が望ましい。
なお、高強度ステンレスパイプの母材を構成するステンレス鋼材が、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出され、母相の固溶C量が0.03質量%以下に調整されたの状態であれば、一回目の熱処理、冷間圧延および2回目の熱処理を施すことには限定されず、例えば異なる条件の熱処理等を施してもよい。
そして、このような母材の端部を接合部として、例えばTIG溶接、MIG溶接、高周波溶接等の溶融溶接によって溶接して造管する。
造管後の接合部は、溶融溶接によって母相とは異なる溶融組織が形成されている。
造管されたステンレスパイプは、材料温度950〜1100℃、均熱時間0〜1hで熱処理が施され、母相および接合部に析出していた炭化物が固溶し、母相および接合部は炭化物が固溶した状態となる。
このように、母相および接合部に析出した炭化物が、造管後の熱処理により母相および接合部に固溶されることにより、高強度ステンレスパイプの母相および接合部の強度および耐食性を向上できるので好ましい。
なお、析出した炭化物を母相および接合部に固溶する方法は、上述した熱処理には限定されず、例えば異なる条件の熱処理等でもよい。
造管前の母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されたステンレス鋼材を造管して、熱処理することにより、ステンレスパイプの母相および接合部がマルテンサイト相を含んだ組織となる。
このように、熱処理後の母相および接合部を構成する組織が、マルテンサイト相の単相組織またはマルテンサイト相およびフェライト相の複相組織であると、母相および接合部の強度が良好であるので好ましい。
マルテンサイト相およびフェライト相の複相組織である場合は、マルテンサイト相の体積比率が高いほど、強度が向上され、マルテンサイト相の体積比率が30体積%以上であることが望ましい。
なお、多少の残留オーステナイト量の含有は、高強度ステンレスパイプの強度にそれほど悪影響を及ぼさないが、オーステナイト相の体積比率は、20体積%以下であることが望ましい。
次に、上記実施の形態の作用および効果を説明する。
高強度ステンレスパイプの製造に際しては、規定された成分組成にて、母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されたステンレス鋼材を母材とする。
このような母材を、一回目の熱処理として材料温度600〜850℃、均熱時間0〜24hにて熱処理を施し、デスケール後、冷間圧延率20%以上で冷間圧延を施し冷間ひずみを導入する。さらに、2回目の熱処理として1回目の熱処理温度から材料温度差50℃以内の温度にて、均熱時間0〜1hにて熱処理を施すことにより、炭化物が母相の結晶粒界および結晶粒内に均一に析出され、母相の固溶C量が0.03質量%以下に調整される。
さらに、母材の端部を接合部として、例えばTIG溶接やMIG溶接、高周波溶接などの溶融溶接によって造管され、接合部には母相とは異なる溶融組織が形成される。
そして、造管後に、材料温度950〜1100℃、均熱時間0〜1hで熱処理が施されることにより、母相および接合部に析出した炭化物が母相および接合部に固溶し、高強度ステンレスパイプが形成される。
ステンレス鋼材の母相は、フェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織にて構成されることにより、造管後に、母相および接合部がマルテンサイト相を含んだ組織となるので、母相および接合部の強度を向上できる。
ここで、例えばステンレス鋼材の母相にオーステナイト相が含有されていると、造管後に、オーステナイト相が残留し易くなり、このオーステナイト相が多量に残留すると、強度を向上させ難くなる。
ステンレス鋼材が2回熱処理されて、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出されることにより、炭化物が結晶粒界に局所的に優先析出し、母相の靭性が低下することによる管時の加工性の低下を防止できる。
また、2回の熱処理によって、母相の固溶C量が0.03質量%以下に調整されることにより、固溶C量が多くなることでステンレス鋼材の強度が過度に高くなって加工性が悪化することによる造管時の加工荷重の増大およびステンレス鋼材表面の加工疵の発生を防止できる。また、固溶C量の増加により析出する炭化物が増加し、析出する炭化物を形成するために固溶Cr量が減少して耐食性が低下することを防止できる。
さらに、母相の結晶粒界および結晶粒内に炭化物が均一に析出し、母相の固溶C量が0.03質量%に調整されることにより、炭化物が結晶粒界に局所的に優先析出することによるCr欠乏層の形成や、造管時の冷却工程で炭化物が接合部に局所的に析出することによるCr欠乏層の形成を防止できる。
Cr欠乏層の形成を防止することにより、耐食性の低下を防止でき、母相の発銹を防ぎ、表面品質を損なうおそれを防止できる。
接合部は、溶融溶接によって溶融組織が形成されることにより、接合部同士を確実に接合でき、確実に造管できる。
母相および接合部では、析出した炭化物が造管後の熱処理によって固溶されるので、造管後は、母相および接合部にCが固溶している状態であり、母相および接合部の強度および耐食性を向上できる。また、熱処理前の造管時は、炭化物が母相および接合部に固溶していない状態であるので加工性が良好であり造管し易い。
さらに、造管後の熱処理によって母相および接合部に炭化物が固溶しているので、母相と接合部との硬さのばらつきを抑制でき、加工による寸法精度を向上できる。
造管し熱処理した後の母相および接合部が、マルテンサイト相の単相組織またはマルテンサイト相およびフェライト相の複相組織で構成されたことにより、母相および接合部の強度を向上できる。
なお、このように形成された高強度ステンレスパイプは、高価な元素を用いることなく、通常のステンレス鋼材に用いられる元素で成分組成を構成でき、さらに、特別な処理を行うことなく通常のステンレスパイプの製造工程に用いられる処理で製造できるので、廉価に製造できる。
表1は、本実施例、比較例および従来例としてのステンレス鋼材の成分組成が示される。
鋼種番号A〜Cは、規定した成分組成で形成されたステンレス鋼材で、本実施例である。また、鋼種番号Dは、規定した成分組成よりC含有量が少ない比較例である。さらに鋼種番号Eは、従来例のSUS430LXであり、鋼種番号Fは、従来例のSUS304である。
Figure 2009114471
表1に示される成分組成のステンレス鋼材について、それぞれ100kgの鋼塊から熱間圧延を経て板厚3.0mmの圧延板を作成した。
そして、これらの圧延板を表2に示される工程にて造り込みを行い、板厚1.0mmのステンレス鋼板とした。
さらに、これらのステンレス鋼材において、固溶C量を測定し、金属組織および炭化物の析出状態を確認した。
固溶C量の測定は、抽出残渣の分析により測定した。抽出残渣の採取は、10質量%CO(アセチルアセトン)+1質量%(CHCL(テトラメチルアンモニウムクロライド)+CHOH(メタノール)溶液を用い、溶解電圧を40〜70mVで行った。そして、採取した残渣について、重量測定およびEPMA(X線マイクロアナライザ)の定量分析を行うことにより残渣中のC含有量を求め、固溶C量を算出した。
また、金属組織および炭化物の析出状況の確認については、それぞれのステンレス鋼材を研磨し、その後、フッ酸、硝酸、グリセリンを容積比1:1:2で混合した混合液に浸漬してエッチングを行い、光学顕微鏡観察によって確認した。
表2には、表1のステンレス鋼材それぞれの製造工程、固溶C量、金属組織および炭化物の析出状態を示す。
Figure 2009114471
鋼種番号A1は本実施例であり、表1の鋼種番号Aの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度760℃、均熱時間12hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度790℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.017質量%であり、金属組織は、母相がフェライト相の単相組織で構成され、炭化物が均一に析出している。
鋼種番号B1は本実施例であり、表1の鋼種番号Bの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度770℃、均熱時間6hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度820℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.024質量%であり、金属組織は、母相がフェライト相の単相組織で構成され、炭化物が均一に析出している。
鋼種番号B2は本実施例であり、表1の鋼種番号Bの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度830℃、均熱時間6hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度780℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.018質量%であり、金属組織は、母相がフェライト相およびマルテンサイト相の複相組織で構成され、炭化物が均一に析出している。
鋼種番号C1は本実施例であり、表1の鋼種番号Cの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度710℃、均熱時間8hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度700℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.015質量%で、金属組織は、母相がマルテンサイト相の単相組織で構成され、炭化物が均一に析出している。
鋼種番号C2は比較例であり、表1の鋼種番号Cの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度720℃、均熱時間8hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、2回目の熱処理として材料温度1000℃、均熱時間60sで焼鈍を行った。さらに、材料温度700℃、均熱時間1hの熱処理を行い、炭化物を結晶粒界に析出させたものである。また、固溶C量は0.012質量%で、金属組織は、母相がマルテンサイト相の単相組織で構成され、炭化物が結晶粒界に優先析出している。
鋼種番号C3は比較例であり、表1の鋼種番号Cの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度720℃、均熱時間8hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度1000℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.081質量%で、金属組織は、マルテンサイト相の単相組織で母相が構成され、炭化物が略全量母相に固溶しており、炭化物はほとんど析出していない。
鋼種番号D1は比較例であり、表1の鋼種番号Dの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度710℃、均熱時間8hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度700℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、Cの含有量が少ないため固溶C量も0.009質量%と少なく、金属組織は、母相がマルテンサイト相の単相組織で構成され、炭化物はほとんど析出していない。
鋼種番号E1は比較例であり、表1の鋼種番号Eの成分組成のステンレス鋼材において、1回目の熱処理として材料温度920℃、均熱時間60hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度900℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、Cの含有量が少ないため固溶C量も0.006質量%と少なく、金属組織は、母相がフェライト相の単相組織で構成され、炭化物はほとんど析出していない。
鋼種番号F1は比較例であり、表1の鋼種番号Fの成分組成のステンレス鋼材において、SUS304の通常の製造工程と同様に、1回目の熱処理として材料温度1080℃、均熱時間60hで焼鈍を行い、板厚3mmのステンレス鋼材を板厚1mmに冷間圧延後、さらに2回目の熱処理として材料温度1090℃、均熱時間60sで焼鈍を行ったものである。また、固溶C量は0.068質量%で、金属組織は、母相がオーステナイト相の単相組織で構成され、炭化物はほとんど析出してない。
なお、表2中では省略したが、それぞれのステンレス鋼材において、焼鈍後は、酸洗によりスケールを除去した。
表2に示されるステンレス鋼材において、高周波溶接により接合部を接合して造管し、外径38.1mmのステンレスパイプを作成し、これらのステンレスパイプにおいて、加工性評価および耐食性評価を行った。
加工性評価については、各ステンレスパイプの、造管後に割れおよび表面疵の有無を目視にて確認し、確認されなかった場合を○とし、確認された場合を×とした。
耐食性評価については、接合部のスケールをグラインダにて除去後、JISのH8502のキャス試験方法に準じて、キャス試験を行って評価した。キャス試験の試験溶液は、5質量%NaCl(塩化ナトリウム水溶液)+0.268g/LCuCl(塩化銅)+CHCOOH(酢酸)をpH3.0〜3.1に調整したものを用い、試験温度を50±2℃とした。また、キャス試験では、各ステンレス鋼版の側定数を2とし、これらのステンレス鋼板を試験槽内にセットし、試験溶液を噴霧する。そして、200h後に母相および接合部における発銹の有無を目視にて確認し、確認されなかった場合を○とし、確認された場合を×とした。
表3には、加工性評価および耐食性評価の結果を示す。
Figure 2009114471
表3に示されるように、本実施例である鋼種番号A1,B1,B2,C1の高強度ステンレスパイプでは、いずれも造管後に割れおよび表面疵が確認されず、キャス試験後の発銹も確認されなかったので、加工性および耐食性が良好である。
一方、比較例であり、結晶粒界に炭化物を優先析出させた鋼種番号C2のステンレスパイプでは、割れの発生が確認されたので、加工性が不十分である。これは、炭化物が結晶粒界に優先析出しているため、靭性が低下し、加工性が悪化したと考えられる。また、母相および接合部に発銹が確認され、耐食性が不十分である。これは、炭化物が結晶粒界に局所的に析出したため、炭化物の周囲でCr欠乏層が形成され、耐食性が低下したと考えられる。
比較例であり、Cを母相に略全量固溶させた鋼種番号C3のステンレスパイプでは、造管時に高強度であったため、造管が困難であり、さらに表面疵が確認されたので、加工性が不十分である。これは、固溶C量が0.03質量%を超えていたため、強度が過度に高くなり加工性が悪化したと考えられる。また、接合部に発銹が確認されたので、耐食性が不十分である。これは、固溶C量が0.03質量%を超えていたため、造管時の冷却過程において、接合部に多量の炭化物が析出し、この炭化物の生成により接合部にCr欠乏層が形成されて、接合部の耐食性が低下したと考えられる。
比較例である鋼種番号D1,E1のステンレスパイプは、いずれも造管後に割れおよび表面疵が確認されず、キャス試験後の発銹も確認されなかったので、加工性および耐食性が良好である。
比較例であり、通常のSUS304である鋼種番号F1のステンレスパイプは、造管後に割れおよび表面疵が確認されなかったので、加工性が良好である。しかし、キャス試験後の接合部に発銹が確認されたので、耐食性は不十分である。これは、固溶C量が0.03質量%を超えていたため、造管時の冷却過程において、接合部に多量の炭化物が析出し、この炭化物生成によりCr欠乏層が形成されて、接合部の耐食性が低下したと考えられる。
表3の加工性評価および耐食性評価の結果が良好であった、鋼種番号A1,B1,B2,C1,D1,E1のステンレスパイプにて造管後の熱処理を施し、金属組織調査、炭化物の析出の有無調査、引張強さ測定、耐食性評価を行った。
鋼種番号A1−1は本実施例であり、表3の鋼種番号A1のステンレスパイプを造管後、材料温度980℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
鋼種番号A1−2は比較例であり、表3の鋼種番号A1のステンレスパイプに造管後の熱処理を行わず、炭化物が析出したままの状態のものである。
鋼種番号B1は本実施例であり、表3の鋼種番号B1のステンレスパイプを造管後、材料温度1030℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
鋼種番号B2は本実施例であり、表3の鋼種番号B2のステンレスパイプを造管後、材料温度1030℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
鋼種番号C1は本実施例であり、表3の鋼種番号C1のステンレスパイプを造管後、材料温度1050℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
鋼種番号D1は比較例であり、表3の鋼種番号D1のステンレスパイプを造管後、材料温度1030℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
鋼種番号E1は比較例であり、表3の鋼種番号E1のステンレスパイプを造管後、材料温度1000℃、均熱時間60sで熱処理を行ったものである。
金属組織および炭化物の有無の調査は、母相および接合部において、上述したステンレス鋼板における測定方法と同様の方法で行った。
引張強さ測定は、長さ300mmのステンレスパイプの両端部をチャッキングし、クロスヘッド速度3mm/minで引張試験を行って測定した。
耐食性評価は、より過酷な使用環境を考慮し、上述のキャス試験より厳しい条件である塩乾湿複合サイクル試験により評価した。塩乾湿複合試験とは、長さ150mmの試験片について、5質量%NaCl(塩化ナトリウム)を35℃で900s噴霧する塩水噴霧工程と、雰囲気温度60℃、湿度35%の環境で3.6ks保持する乾燥工程と、雰囲気温度50℃、湿度95%の環境で10.8ks保持する湿潤工程とを1サイクルとして、5サイクル繰返し、目視により発銹の有無を確認する試験方法である。
表4には、これら金属組織の有無調査、炭化物の析出の有無調査、引張強さ測定、耐食性評価結果が示される。
Figure 2009114471
表4に示されるように、本実施例である鋼種番号A1−1,B1,B2,C1の高強度ステンレスパイプは、引張強さが1200(N/mm)以上であり、強度が良好である。また、耐食性評価についても、発銹は確認されず、耐食性が良好である。
比較例である鋼種番号A1−2のステンレスパイプは、引張強さが610(N/mm)であり、強度が不十分である。また、耐食性評価においても発銹が認められ、耐食性が不十分である。これは、造管後の熱処理を行わなかったので、炭化物が析出した状態であり、さらに、母相および接合部がフェライト相の単相組織で構成されたため、強度および耐食性が不十分であったと考えられる。
比較例である鋼種番号D1のステンレスパイプは、耐食性は良好であるが、引張強さが865(N/mm)であり、強度が不十分である。これは、母材であるステンレス鋼材の成分組成について、Cの含有量が本発明で規定したCの含有量より少ないため、強度が不十分であると考えられる。
比較例である鋼種番号E1のステンレスパイプは、耐食性は良好であるが、引張強さが545(N/mm)であり、強度が不十分である。これは、母材であるステンレス鋼材として従来例であるSUS430LXを用い、Cの含有量が本発明で規定したCの含有量より少なく、さらに、母相および接合部が、フェライト相の単相組織で母相が構成されたため、強度が不十分であると考えられる。
以上のように、規定した成分組成のステンレス鋼材が、規定した造管前の状態および造管後の状態であることにより、高強度ステンレスパイプの加工性、強度、耐食性を向上できる。
表4に示される鋼種番号A1−1,A1−2,B1,B2,C1および表3に示される鋼種番号C3のステンレスパイプについて、造管後に熱処理を施し、真円度評価、扁平試験による割れ抵抗評価、曲げ加工後の寸法精度評価を行った。なお、鋼種番号A1−2,C3については、造管後に熱処理を施していない。
真円度評価は、パイプの軸周りに45°間隔の8点で直径を測定し、これら8点の直径の最大値と最小値との差が、0.2mm以内であれば真円度が良好であり○とし、0.2mmを超えた場合は真円度が不十分であり×とした。
扁平試験による割れ抵抗評価では、長さ300mmのステンレスパイプの溶接ビード部が圧縮方向に対して垂直となるようにステンレスパイプをセットし、パイプ径の半分の19.05mmまで圧縮した。そして、圧縮後、割れの有無を目視にて確認した。なお、割れが確認されなかった場合は○で、割れが確認された場合は×とする。
曲げ加工後の寸法精度評価は、溶接ビード部が曲げの外側となるように素管をセットし、設定曲げ角度を130°として測定回数30で回転引き曲げ加工を行った。そして、曲げ加工後、実際の角度をプロトラクターにて測定し、実際の角度のばらつきが1°以内であれば寸法精度が良好であり○とし、1°を超えた場合は寸法精度が不十分であり×とした。
表5には、これら真円度評価、割れ評価、寸法精度評価の結果を示す。
Figure 2009114471
表5に示されるように、本実施例である鋼種番号A1−1,B1,B2,C1ステンレスパイプは、いずれも真円度、割れ抵抗、寸法精度ともに良好であった。
一方、比較例である鋼種番号A1−2のステンレスパイプでは、寸法精度が不十分であった。これは、造管前は母相および接合部に炭化物が析出しており、造管時の溶融溶接により接合部にのみ炭化物が固溶し、造管後は熱処理を施していない。つまり、母相には炭化物が固溶しておらず、接合部には炭化物が固溶した状態となり、母相と接合部との硬さが不均一となったので、寸法精度が悪化したと考えられる。
また、比較例である鋼種番号C3のステンレスパイプでは、真円度が不十分であった。これは、2回目の熱処理により、母相および接合部にCを固溶させたため、高強度で造管が困難であったので造管後の真円度が不十分であったと考えられる。さらに、寸法精度も不十分であった。これは、造管前は母相および接合部にCが固溶しており、造管時の冷却工程で、接合部にのみ炭化物が析出した。そして、造管後に熱処理を行わなかったので、母相にはCが固溶し、接合部にはCが固溶していない状態となり、母相と接合部との硬さが不均一となったので、寸法精度が悪化したと考えられる。
以上のように、規定した成分組成のステンレス鋼材が、規定した造管前の状態および造管後の状態であることにより、高強度ステンレスパイプの加工性や寸法精度を向上できる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.04〜0.12%、Ni:0(無添加を含む)〜5.0%、Cr:12.0〜17.0%、N:0(無添加を含む)〜0.10%、Si:0.2〜2.0%、Mn:2.0%以下、Cu:0(無添加を含む)〜2.0%、P:0.06%以下、S:0.006%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、母相がフェライト相の単相組織、マルテンサイト相の単相組織、フェライト相およびマルテンサイト相の複相組織のいずれかで構成されたステンレス鋼材を母材とし、
    この母材の端部を接合部として溶融溶接することにより造管されたものであって、
    前記母相は、結晶粒界および結晶粒内において炭化物が均一に析出されかつ固溶C量が0.03%以下に調整され、
    前記接合部は、溶融溶接による溶融組織を有する
    ことを特徴とする高強度ステンレスパイプ。
  2. 母相および接合部は、析出した炭化物が造管後の熱処理により固溶された
    ことを特徴とする請求項1記載の高強度ステンレスパイプ。
  3. 熱処理後の母相および接合部は、マルテンサイト相の単相組織またはマルテンサイト相およびフェライト相の複相組織で構成された
    ことを特徴とした請求項2記載の高強度ステンレスパイプ。
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