JP2009108357A - マルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼及び熱間鍛造非調質鋼部品 - Google Patents

マルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼及び熱間鍛造非調質鋼部品 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間鍛造にて成型後の制御冷却により、その後の再加熱して焼入れ焼戻しの調質処理を行わずとも、鋼の主体組織がマルテンサイトとなり、高強度・高靱性で、かつ被削性に優れた鋼部品が得られる熱間鍛造用非調質鋼、および同鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.10〜0.50%、Mn:1.0〜3.0%、S:0.005〜0.80%、Cr:0.10〜1.50%、Al:0.0005〜0.003%、N:0.002〜0.01%を含有し、さらに、Ca:0.0003〜0.0050%、Mg:0.0003〜0.0050%、Zr:0.0005〜0.10%のうちの1種または2種以上を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼である。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や産業機械などの機械部品に加工される鋼のうち、特に熱間鍛造にて成型後の制御冷却により主体組織がマルテンサイトとなり、熱間鍛造後に焼入れ焼戻しの調質処理を施さなくとも、強度・靱性に加え被削性を向上させたマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼、及び、その鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品に関するものである。
旧来、自動車や産業機械などの機械部品の多くは、一般に中炭素鋼又は低炭素鋼からなる素材棒鋼から部品形状に熱間鍛造した後、再加熱し、焼入れ焼戻しの調質処理を施すことによって、高強度および高靭性を付与してきた。
しかし、この調質処理には多大な熱エネルギーが必要になると共に、処理工程が増加し、仕掛品の増大等のため、部品製造コストのうちで調質コストの占める割合が大きくなる。このため、このような構造部品を製造する上で製造工程を簡略化させ、調質コストを低減させるため、焼入れ焼戻しの調質処理を省略した熱間鍛造用非調質鋼が開発されてきた。
従来、非調質鋼を用いた熱間鍛造部品は、一度1200℃以上に加熱し、1000〜1200℃程度の高温で鍛造していた。しかしながら、1200℃以上で加熱することによってオーステナイト粒は粗大化し、1000〜1200℃程度の高温で鍛造することによって加工後に再結晶が進み、冷却過程で得られるフェライト−パーライト組織は粗くなる。そのため非調質鋼を用いた熱間鍛造非調質部品は、調質処理を施した鋼部品と比較すると一般に耐力比、衝撃値が小さくなる。
これらの問題点を解決するために、特許文献1では、機械構造用鋼のMn量を高めに更にVを少量添加することにより、また特許文献2では、機械構造用鋼に少量のVを添加することにより、更に特許文献3では、成分系の制御に加えて、鍛造後の冷却過程において1000〜550℃の間での温度範囲を0.7℃/sec以下の速度で冷却することにより、MnSを核とする粒内フェライトを多量分散し、その結果実質的に組織は細粒化し、靱性や疲労特性が向上することが記載されている。
しかしながら、この方法で得られるフェライト−パーライト組織はまだまだ粗く、組織微細化による衝撃値や強度の増加量は小さい。
最近、地球環境保護のため、自動車の低燃費化がますます求められており、自動車の低燃費化を達成するための有効な手段の一つは車両の軽量化であり、部品強度向上による部品の小型化が指向されている。しかし、現行のフェライト−パーライト型非調質鋼の強度の限界は、1000MPa程度であり、最近の高強度・高靱性の要求には対応できなくなってきている。
1000MPa以上の強さと高い靱性を両立させるためには、炭化物が微細分散するマルテンサイト組織あるいはベイナイト組織とすることが必要である。
熱間鍛造ままで、マルテンサイトあるいはベイナイト組織とする非調質鋼がこれまで多く開示されている。例えば、特許文献4では、比較的低炭素の0.04〜0.20%とすることによりMs点を高めてセルフテンパーの効果を狙い、またTi、Bなどの元素を添加して焼入れ性を大きくし、かつ鍛造後急冷する方法が示され、マルテンサイトまたはベイナイト、あるいはマルテンサイトとベイナイトの混合組織とすることにより、高強度とともに、良好な靱性が得られることが記載されている。
また特許文献5では、Ti、Bを添加しないでNを高め、Ar点以上から急冷することが記載されている。
しかしながら、これら特許文献4、5に開示されている高強度材では、Ca、TeやBi等の被削性向上元素を添加したとしても被削性向上の効果は小さい。
さらに、特許文献6では、適正量のMnとCuとを複合添加することにより、高い降伏強度および良好な靱性が得られ、適正量のTiとZrを添加し、Ti炭硫化物やZr炭硫化物を微細分散することにより、MnSの生成量を減少させ、ひいては鋼材の被削性が向上するという知見が開示されている。しかしながら、Ti炭硫化物やZr炭硫化物は硬質なので切削時に工具損傷の原因となり、工具摩耗を促進する場合がある。いずれによっても高強度・高靱性であり、かつ被削性に優れた鋼および機械部品を得ることは、容易ではない。
特開昭55−82749号公報 特開昭55−82750号公報 特開昭56−169723号公報 特開平1−129953号公報 特開昭63−130749号公報 特開2000−129393号公報
近年、車両軽量化による燃費向上の要請から、自動車用熱間鍛造非調質鋼部品のさらなる高強度化が求められている。これら非調質鋼部品の高強度化に伴う問題は、上述したように靭性および被削性の低下であるが、特許文献1〜6の開示技術では、強度・靱性等の機械的性質に加え、被削性を共に向上させるのは容易ではなかった。
そこで、本発明においては、これらの問題を解決するため、熱間鍛造にて成型後の制御冷却により、その後再加熱して焼入れ焼戻しの調質処理を行わずとも、鋼の主体組織がマルテンサイトとなり、強度・靱性等の機械的性質に加え、被削性を共に向上させた熱間鍛造用非調質鋼、及び同鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品を提供することを目的とする。
従来の焼入れ焼戻しの調質処理を行わず、熱間鍛造成型後の制御冷却により主体組織をマルテンサイトとし、マルテンサイト型非調質鋼の高靭性化、かつ良好な被削性を達成するため、本発明者らは最適な鋼成分および組織について種々検討を重ねた結果、鋼成分において特にAlを通常の熱間鍛造用鋼のAl量より少なく添加し、さらにCa、Mg、Zrのうち1種または2種以上添加することによる下記の知見を得て、マルテンサイト型非調質鋼において、冷却速度の広い範囲で、強度・靱性等の機械的性質に加え、被削性を共に向上させることを見出した。
(a)通常の熱間鍛造用鋼より少ないAl量に減らし、硬質なAlが多量に生成してしまうことを抑えることにより、切削時の工具損傷を抑え、高強度なマルテンサイト型非調質鋼の被削性を向上させることができる。
(b)さらにCa、Mg、Zrのうち1種または2種以上添加し、Mn硫化物を微細均一分散させることにより、破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制して高靱性を確保し、冷却速度が遅い場合でも、冷却中にMn硫化物を均一に微細析出させ、有効結晶粒の粗大化を抑制し、高強度であると共に、高靱性を確保することができる。
本発明は、これら知見に基づいて完成した高強度・高靭性で、かつ被削性を向上させたマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼、および、その鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品であって、その発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.10〜0.20%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:1.0〜3.0%、
S:0.005〜0.80%、
Cr:0.10〜1.50%、
Al:0.0005〜0.003%、
N:0.002〜0.01%、
を含有し、
さらに、
Ca:0.0003〜0.0050%、
Mg:0.0003〜0.0050%、
Zr:0.0005〜0.10%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
(2) さらに、質量%で、
B:0.0005〜0.0050%、
Ti:0.005〜0.030%、
を含有することを特徴とする上記(1)に記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
(3) さらに、質量%で、
Nb:0.05〜0.30%、
V:0.05〜0.30%、
Mo:0.05〜1.0%
のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品であって、鋼組織が実質的に、有効結晶粒径が15μm以下のマルテンサイト組織であることを特徴とする熱間鍛造非調質鋼部品。
本発明を適用したマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼及び熱間鍛造非調質鋼部品は、高強度・高靭性と被削性を向上させることができ、熱間鍛造にて成型後の制御冷却により、その後再加熱して焼入れ焼戻しの調質処理を行わずとも、鋼の主体組織をマルテンサイト化させることができることから、調質コストを低減させることが可能となる。
本発明は、鋼成分としては、熱間鍛造後の制御冷却によりマルテンサイト組織となることを期待するものであり、特に鋼成分として、Alは、通常の非調質鋼より低目の0.0005〜0.003%を添加することにより、硬質なAlを多量に生成することを抑え、高強度なマルテンサイト型非調質鋼の被削性が向上し、さらにCa、Mg、Zrのうち1種または2種以上添加し、Mn硫化物を微細均一分散により、破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制して高靱性を確保することを技術的特徴としている。
そして、本発明は、上記のような鋼成分とした上で、熱間鍛造後の制御冷却により有効結晶粒径が15μm以下のマルテンサイト組織を得て、しかも焼入れ焼戻しの調質処理を行わずに、高強度・高靭性で、かつ被削性を向上させた熱間鍛造用非調質鋼部品を得るものである。
まず、請求項1〜3に記載している鋼の合金成分の限定理由について以下に説明する。
本発明を適用した、請求項1に記載しているマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼は比較的小型ないし肉厚が薄くて焼きが十分入る部品、あるいは内部硬さが表面部ほど必要でない部品に適当であり、例えば自動車のエンジン等に使用されるクランクシャフトや、コンロッド、或いは自動車の足廻り等に使用されるナックル等の構造部品へ適用する際に特に好適である。
また請求項2に記載しているマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼は比較的大型ないし十分な焼入れ性を必要とする部品に適当である。請求項3に記載しているマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼は請求項1、2よりもさらに高強度・高靱性を必要とする部品に適当である。
〔請求項1で規定の成分〕
以下、組成における質量%は、単に%と記載する。
C:0.10〜0.20%
Cは、鋼の焼き入れ性とマルテンサイト鋼及び部品の強度を決定する最も基本的な元素である。鋼及び部品として十分な強度を得るために、下限を0.10%とする。一方、Ms点を高めて鍛造焼入れ過程で自己焼戻しを得るために、上限を0.20%とする。また0.20%超では、靱性が低下する点も、Cの上限を0.20%とした理由である。
Si:0.10〜0.50%
Siは、固溶強化による材料強度確保のため、また脱酸元素として有効な元素であり、Al、Caなどとともに軟質な複合酸化物を生成し、被削性が向上する。しかし、Siの含有量が0.10%未満ではその効果を十分に発揮させることができない。一方、Siの含有量が0.50%超では、硬質酸化物を生じて靱性および被削性を低下するなどの弊害も生じる。このため、Siの含有量は、0.10〜0.50%とした。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、固溶強化により鋼を強化するとともに、焼入れ性を高める元素であり、さらにマルテンサイトの生成を促進する上で有効な元素である。またZrまたはMg酸化物を晶出核として微細均一分散する効果があり、有効結晶粒の粗大化を抑制し高靱性を維持するために必要である。しかし、このMnが1.0%未満では、所期のマルテンサイト組織を得ることができないため、下限を1.0%とする。また、このMnは、Sによる熱間脆性を防止する有用元素であり、鋼中のSを硫化物として固定、分散させるために必要であるが、Mn量が大きくなると素地の硬さが大きくなり靱性や被削性を低下するので、上限を3.0%とする。
S:0.005〜0.8%
SはMnSを形成し、被削性を向上する元素であるが、0.005%未満では十分な効果は得られない。一方、Mn量にも依存するが、0.8%超では、MnSが粗大化し、これに伴ってMnSには鍛造時の異方性が生じるために、機械的性質の異方性が大きくなり、場合によっては割れの起点となって加工性を劣化させる。このため、Sの含有量を、0.005〜0.8%とした。
Cr:0.10〜1.50%
Crは焼入れ性を高め、また強度及び靭性を向上させる元素であり、0.10%未満ではその効果は得られない。また1.5%超では、その効果が飽和するばかりか、Cr炭化物を生成し、却って靱性が低下する。このため、Crの含有量を0.10〜1.50%とした。
Al:0.0005〜0.003%
Alは脱酸元素であり、0.003%以下ではSi、Caなどとともに軟質な複合酸化物を生成し、被削性を向上させることができる。しかし、Alの含有量が0.0005%未満では、その効果は発現しない。また、Alの含有量が、0.003%超では、軟質な複合酸化物を生成させることができず、かえって硬質なAl酸化物を生成するため、被削性が著しく低下してしまう。
N:0.002〜0.01%
Nは各種元素と窒化物を形成し、破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制し、高靭性を維持する効果がある。この十分な効果を得るために、下限0.0020%とする。しかし、このNを過剰に添加すると、固溶N量が増大し靭性の低下を招くと共に被削性を著しく低下する。従って、固溶Nを減らすために、上限0.01%とする。
Ca:0.0003〜0.0050%
Caは脱酸元素であり、AlまたはSiなどともに軟質な複合酸化物を生成し、被削性を向上させる。Ca酸化物はMn硫化物の晶出核になりMn硫化物を微細均一分散させる上で効果がある。したがってCaは破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制し、高靭性を維持するのに有効な元素である。またMn硫化物に固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造後、Mn硫化物形状の伸延を抑制する。したがって機械的性質の異方性の低減に有効な元素である。しかし、このCaの含有量が0.0003%未満ではこれら効果を発現させることができない。また、Caの含有量が0.0050%超では、かえって硬質な酸化物または硫化物を多量に生成し、被削性が低下してしまう原因にもなる。このため、Caの含有量を0.0003〜0.0050%とした。
Mg:0.0003〜0.0050%
Mgは脱酸元素であり、Mg酸化物を生成する。Mg酸化物はMn硫化物の晶出核になりMn硫化物を微細均一分散に効果がある。したがって破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制し、高靭性を維持するのに有効な元素である。0.0003%未満では、これら効果はなく、0.005%超では、歩留まりが極端に悪くなり効果が飽和する。
Zr:0.0005〜0.10%
Zrは脱酸元素であり、Zr酸化物を生成する。Zr酸化物はMn硫化物の晶出核になりMn硫化物の微細均一分散させる上で効果がある。したがってZrは破壊の単位である有効結晶粒の粗大化を抑制し、高靭性を維持するのに有効な元素である。このZrの含有量が0.0005%未満では、これら効果を発現させることができない。Zrの含有量が0.10%超では、硬質なZr酸化物または硫化物を多量に生成し、被削性が低下してしまう原因にもなる。このため、Zrの含有量を0.0005〜0.10%とした。
〔請求項2で規定の成分〕
B:0.0005〜0.0050%
Bは鋼中に固溶Bとして存在すると、焼入れ性向上の効果を高め、また靭性を向上させる効果もある。それらの効果を発揮するためには0.0005%以上必要であるが、0.0050%超では、その効果も飽和し、靱性を低下させる。このため、Bの含有量は、0.0005〜0.0050%とした。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、不可避的不純物として混入するNと結合することで、Ti窒化物を形成し、これによってBNの析出を抑制して固溶Bを増大させ、BがBNとなってBの焼入れ性向上効果が消失するのを防止し、Bによる焼入れ性向上の効果を向上させることができる。またTi窒化物を形成し、有効結晶粒の粗大化を抑制し高靱性を維持する効果がある。これら効果を発揮するためには0.005%以上必要である。しかし、0.030%超では、粗大なTi窒化物が形成し、かえって靱性を低下し、また被削性も低下する。このため、Tiの含有量は、0.0005〜0.0050%とした。
〔請求項3で規定の成分〕
以下のNb、V、Moのうちの1種または2種以上を含有する。
Nb:0.05〜0.30%
NbはNb炭窒化物を形成し、有効結晶粒の粗大化を抑制し、高靱性、高強度を維持する効果がある。また高温で鋼中に固溶し、焼入れ性を増大させる。これら効果を得るには、0.05%以上必要である。しかし、0.30%超では粗大なNb炭窒化物が形成し、かえって靱性を低下する。このため、Nbの含有量は、0.05〜0.30%とした。
V:0.05〜0.30%
VはNbと同様にV炭窒化物を形成し、有効結晶粒の粗大化を抑制し高靱性を維持する効果がある。また高温で鋼中に固溶し、焼入れ性を増大させる。これら効果を得るには、0.05%以上必要である。しかし、0.30%超では粗大なV炭窒化物が形成し、かえって靱性を低下する。このため、Vの含有量は、0.05〜0.30%とした。
Mo:0.05〜1.0%
Moは焼入れ性向上に寄与するとともに、炭化物による粒界強度の低下を有効に阻止する元素である。0.05%未満ではその効果は認められず、1.0%超を添加してもその効果が飽和する。このため、Moの含有量は、0.05〜1.0%とした。
また、上記で規定した鋼成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、Sn、Zn、Pb、Sb、REM等を含有させることができる。
〔請求項4の限定理由〕
次に、請求項4に記載している熱間鍛造非調質鋼部品の特徴の限定理由について以下に説明する。
請求項1〜3に記載しているマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼を用いて、熱間鍛造後、冷却する際、鍛造部品の肉厚や合金元素の添加量に応じて、水冷、油冷、空冷、あるいはこれらに相当する冷却能を有する冷却媒体で冷却し、鋼組織が、実質的に、有効結晶粒径15μm以下のセルフテンパーしたマルテンサイト組織となる。その鋼組織がマルテンサイト組織以外である場合、靭性が著しく低下する。ここで実質的にマルテンサイト組織とは、面積率で95%以上がマルテンサイト組織であり、残部はベイナイト、残留オーステナイト等である場合をいう。
ここで、有効結晶粒径とは、シャルピー試験後の脆性破面を観察し、擬劈開ないしは劈開によって形成された一つの平らな脆性破面の平均長さである。この破面単位と組織を詳細に観察したところ、本発明でいう有効結晶粒径はマルテンサイト組織のパケットの大きさとほぼ一致する。
鋼組織を有効結晶粒径が15μm以下のマルテンサイト組織とするのは、1100MPa以上の強さと高靭性を両立させるためである。
鋼組織を有効結晶粒径が15μm以下のマルテンサイト組織とするには、上記のとおり、熱間鍛造後の冷却速度を鋼成分や鍛造部品の肉厚によって適宜選択するものであるが、例えば、鋼成分が焼入れ性を向上させる元素が少ない請求項1を満足するマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼であり、鍛造部品の肉厚が40mm以上と厚い場合は、水冷を選択し、鋼成分が焼入れ性を向上させる元素が多い請求項2と3とを同時に満足するマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼であり、鍛造部品の肉厚が20mm以下と薄い場合は、空冷を選択してもよく、予め実験により適正条件を求めておくことができる。
本発明を実施例によって以下に詳述する。なお、これら実施例は本発明の技術的意義、効果を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
表1に示す化学成分を有する鋼150kgを真空溶解炉で溶製後、熱間圧延により直径50mmの棒鋼とした後、1250℃の温度条件下で熱間鍛造し、直径が20mmの円柱状に鍛伸し、本発明例No.10、No.12、比較例No.22、No.23を除いて残りすべてにつき、直ちに25℃の水を用いて冷却し、本発明例No.10、No.12、比較例No.22、No.23について、直ちに100℃の油(JIS1種1号)を用いて冷却した。即ち、このNo.10、No.12、No.22、No.23については冷却速度を遅くしている。そして、この本発明例および比較例の鋼材について、引張試験、衝撃試験、被削性試験を行い、その特性を評価した。なお、表1の下線部は本発明で規定した成分の範囲外条件である。No.16、17については、Cの含有量を、またNo.18についてはAlの含有量を、またNo.19についてはNの含有量を、No.20、22については、Caの含有量を、No.21、23については、Mg、Zrの含有量を、No.24についてはSiの含有量を、No.25、26については、Mnの含有量を、No.27については、Crの含有量を、No.28についてはTi、Bの含有量を、本発明において規定した成分の範囲内から逸脱させている。
Figure 2009108357
引張試験は、直径20mmの丸棒からJIS3号試験片を切り出し、引張強度を評価した。
衝撃試験片は鍛伸方向にJIS3号試験片を切り出し、JIS Z 2242に規定されている方法で、室温におけるシャルピー衝撃試験を実施した。その際、評価指標として単位面積あたりの吸収エネルギーを採用した。
被削性評価の指標としては、ドリル穿孔試験では累積穴深さ1000mmまで切削可能な最大切削速度VL1000(m/min)を採用した。ここでいうVL1000とは、1000mm長の孔あけが可能なドリルの切削速度で、数値が大きいほど被削性は良好であることを示す。
ドリル穿孔試験条件は表2に示す。
鋼組織は光学顕微鏡または走査型顕微鏡によって観察した。Mは主体組織がマルテンサイト組織を示す。Bは主体組織がベイナイト組織を示す。マルテンサイト面積率は全組織中のマルテンサイトの面積率であり、顕微鏡で撮影した組織写真を画像処理して判定した。
また、これら引張試験、衝撃試験、被削性評価結果を表3に示す。表3の評価結果内の横線はドリル穿孔試験において切削速度1m/min.で累積穴深さ1000mmまで切削できなかったことを表す。
図1は、表3の本発明例No.1〜15と比較例No.18〜23を横軸に引張強度、縦軸にVL1000の結果をプロットしたものである。
Figure 2009108357
Figure 2009108357
上記表3に示すNo.1〜15は本発明例、No.16〜28は比較例である。
表3に示すように、本発明例No.1〜15の鋼材では、評価指標である引張強度、吸収エネルギーおよびVL1000のすべてにおいて良好な値を示し、何れも同レベルの強度で見たときの被削性が、また同レベルの被切削性で見たときの強度が優れており、強度・靱性等の機械的性質に加え、被削性を共に向上させることができることが明らかとなった。
その一方で、比較例No.16〜28の鋼材では、評価指標3つのうちの少なくとも1つ以上の特性が、本発明例の鋼材と比較して劣っていた。
具体的には、比較例No.16は、本発明必須元素Cを必要量含んでいないため、強度が本発明材より劣っていた。
比較例No.17は、本発明必須元素Cを過剰に添加しているため、強度が本発明材より高く、靱性とともに被削性が極端に劣っていた。
比較例No.18〜23は、本発明必須元素のAl、N、Ca、Mg、Zrをいずれも過剰に添加または必要量含んでいないため、図1に示すように、同レベルの引張強度で見たときに、VL1000が本発明鋼材より極端に劣っていた。
No.20は、Caの含有量が0.0075%であり、本発明で規定した範囲を超えている。このため、硬質な酸化物または硫化物を多量に生成し、同レベルの引張強度からなる本発明例と比較して被削性が低下している。
またNo.21は、Zrの含有量が本発明で規定した0.10%を超えているため、硬質なZr酸化物または硫化物を多量に生成し、同レベルの引張強度からなる本発明例と比較して被削性が低下している。
中でもNo.22、23はいずれも組織は面積率95%以上のマルテンサイト組織であるが、冷却速度が遅く、Mn硫化物の微細均一分散による有効結晶粒の粗大化抑制効果が得られず、有効結晶粒径が何れも15μmを超えているために規定を外れ、靱性が本発明材より劣っていた。また、このNo.22、No.23と同レベルの強度を示す本発明鋼と比較しても、VL1000が低く、被削性が劣っていた。その一方で、このNo.22、No.23とTi、Bの含有量をほぼ同一条件下でコントロールした本発明例No.10、12は冷却速度が遅いにもかかわらず、Mn硫化物の微細均一分散による有効結晶粒の粗大化抑制効果が得られ、有効結晶粒が15μm以下で高靭性を確保しており、また被削性も優れていた。
比較例No.24は、本発明必須元素のSiを過剰に添加しているため、強度が本発明材より高く、靱性とともに被削性が極端に劣っていた。
比較例No.25は本発明必須元素のMnを必要量含んでいないため、焼入れ性が低下し、主体組織がベイナイトとなり、靱性が本発明材より極端に劣っていた。
比較例No.26〜28は本発明必須元素のMn、Cr、Ti、Bを過剰に添加しているため、靱性が極端に劣っていた。特にNo.26は、Mnの添加量が本発明で規定した範囲を超えているため、被削性も低下していた。
表3の本発明例No.1〜15と比較例No.18〜23の引張強度と被削性との関係を示す説明図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.20%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    S:0.005〜0.80%、
    Cr:0.10〜1.50%、
    Al:0.0005〜0.003%、
    N:0.002〜0.01%
    を含有し、
    さらに、
    Ca:0.0003〜0.0050%、
    Mg:0.0003〜0.0050%、
    Zr:0.0005〜0.10%
    のうちの1種または2種以上を含有し、残部が実質的にFeおよび不可避不純物からなることを特徴とするマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
  2. さらに、質量%で、
    B:0.0005〜0.0050%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    を含有することを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
  3. さらに、質量%で、
    Nb:0.05〜0.30%、
    V:0.05〜0.30%、
    Mo:0.05〜1.0%
    のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマルテンサイト型熱間鍛造用非調質鋼からなる熱間鍛造非調質鋼部品であって、鋼組織が実質的に、有効結晶粒径が15μm以下のマルテンサイト組織であることを特徴とする熱間鍛造非調質鋼部品。
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