JP2009103140A - 衝撃エネルギー吸収部材の製造方法および衝撃エネルギー吸収部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】発泡金属体を筒状体の中空部へ充填するという従来のプロセスのままで、筒状体の中空部内へ発泡金属体を確実に固定することができる衝撃エネルギー吸収部材の製造方法と衝撃エネルギー吸収部材を提供することを課題とする。
【解決手段】閉断面を有する金属製の筒状体1の中空部2の開口部側から、その中空部2の断面寸法より、その断面寸法が僅かに大きな発泡金属体3を、その発泡金属体3の表層部4のみを塑性変形させながら、圧入させることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】閉断面を有する金属製の筒状体1の中空部2の開口部側から、その中空部2の断面寸法より、その断面寸法が僅かに大きな発泡金属体3を、その発泡金属体3の表層部4のみを塑性変形させながら、圧入させることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、自動車、鉄道車両、船舶などの構造部材などに用いられ、衝突時に圧縮の衝撃荷重を受けた際に、変形して衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材の製造方法と、その製造方法によって製造される衝撃エネルギー吸収部材に関するものである。
自動車の衝突時等の衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材(クラッシュボックス)としては、従来から閉断面を有する鋼製の中空部材が汎用されている。この鋼製の中空部材は、軸方向や断面方向の圧縮の衝撃エネルギーを受けると潰れ変形して、その衝撃エネルギーを吸収する。この際、限られた変形量で、より大きなエネルギーを吸収するためには、部材の寸法や肉厚を大きくすることが有効である。しかし、これらを大きくすると鋼製中空部材の体積や重量の増加を招いてしまい、燃費が悪化したり、衝突時における衝突相手方に与えるダメージが大きくなってしまったりして好ましくはない。
また、軟鋼板に代えて高強度軟鋼板(ハイテン)を用いることで、鋼製中空部材の体積や重量の増加を抑制することも行われているが、高強度軟鋼板は成形性が劣るため、部材形状が制約を受けることや、成形工程が増加するといった不都合もある。
これに対し、近年では衝撃エネルギー吸収部材(クラッシュボックス)として、リサイクル性の良好な発泡アルミニウムなどの発泡金属が注目され実際に使用されている。このクラッシュボックスは、発泡アルミニウムなどの発泡金属を角柱状や円柱状等の形状としたものである。また、この衝撃エネルギー吸収部材は、その軸芯方向を衝突方向に一致させるように配置し、衝突時に圧縮応力を受けて潰れることにより衝突エネルギーを吸収し、乗員や構造体、衝突相手への衝撃を減少させるようにしたものである。
しかしながら、このような発泡アルミニウムなどの発泡金属を用いるだけでは、衝撃エネルギー吸収部材としての強度に問題があることも懸念されるため、断面形状が円形や矩形をなす金属製の筒状体の中空部に、発泡金属を充填したものが、特許文献1、2、3、4等として提案されている。
これら特許文献のうち、特許文献1に記載された衝撃エネルギー吸収部材は、中空状の構造部材の内部に発泡アルミニウムなどの多孔質金属(発泡金属)から成る成形体を充填したものであって、構造部材と多孔質金属を確実に結合するため、その構造部材と多孔質金属の隙間に発泡樹脂が充填され、発泡樹脂層が形成されている。
このように、発泡樹脂層を用いれば、中空状の構造部材の内部に発泡アルミニウムなどの多孔質金属から成る成形体を、確実に充填固定できると思われる。しかしながら、隙間の広狭による表面張力の差異や、中空状の構造部材の内部の温度分布の不均一によって、全ての部位で発泡率が必ずしも同じでない発泡樹脂層が形成されてしまう可能性がある。また、発泡率の差異により、構造部材と多孔質金属の軸芯がずれてしまう可能性もある。従って、衝撃エネルギー吸収部材として想定した性能を発揮できない可能性もあることが懸念される。更には、発泡樹脂という金属とは異なる材料を準備する必要があり、製造作業までの準備、製造自体に余計なプロセスを必要とし、製造に手間を要するという問題もある。
また、特許文献2に記載された衝撃エネルギー吸収部材は、断面形状が略円形あるいは多角形状をなす管体と、その管体の中空部に充填された発泡金属より構成されており、発泡金属に、管体が受ける軸方向圧縮力と垂直をなす面で互いに直交する2つの方向の圧縮力を加えることによる事前の圧縮成形を施したことを特徴とするものである。
この特許文献2の請求項9には、管体の中空部に発泡金属を充填した後、管体が受ける軸方向圧縮力と垂直をなす面で互いに直交する2つの方向の圧縮力を管体を介して加えて発泡金属に圧縮成形を施すとの記載があり、この構成であれば、管体の中空部に発泡金属を確実に充填固定できると思われる。しかしながら、管体の中空部に発泡金属を圧入した際の発泡金属は、管体の中空部内で不安定な状態であり、発泡金属は管体の中空部内で仮支持した状態で圧縮成形作業を行わねばならず、作業に非常に手間を要するという問題がある。
また、特許文献3、4にも、金属製の筒状体の中空部に、発泡金属体を充填して成る衝撃エネルギー吸収部材が記載されているが、発泡金属体の、金属製の筒状体の中空部への固定には特に注意が払われたものではなかった。
本発明は、上記従来の問題を解消せんとしてなされたもので、発泡金属体を金属製の筒状体の中空部へ充填するという従来の製造プロセスのままで、金属製の筒状体の中空部内へ発泡金属体を確実に固定することができる衝撃エネルギー吸収部材の製造方法を提供することを課題とするものである。また、金属製の筒状体の中空部内へ発泡金属体を確実に固定することができ、想定した性能を確実に発揮することができる衝撃エネルギー吸収部材を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、閉断面を有する金属製の筒状体の中空部に、発泡金属体を充填して成る衝撃エネルギー吸収部材の製造方法であって、前記筒状体の中空部の開口部側から、その中空部の断面寸法より、その断面寸法が僅かに大きな前記発泡金属体を、その発泡金属体の表層部のみを塑性変形させながら、圧入させることを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項2記載の発明は、圧入する前の前記発泡金属体の断面の厚み寸法が、前記筒状体の中空部の断面の厚み寸法と比較して、0.1%〜3.0%大きいことを特徴とする請求項1記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項3記載の発明は、圧入する前の前記発泡金属体の厚み寸法と、前記筒状体の中空部の厚み寸法の差は、全周において略同一であることを特徴とする請求項2記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項4記載の発明は、前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入する際に、その発泡金属体の表層部のみを圧縮・せん断変形させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項5記載の発明は、圧入した後の前記発泡金属体の平均密度は、塑性変形した表層部を除き0.1g/cm3〜0.7g/cm3であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項6記載の発明は、前記発泡金属体をその融点以下に加熱後、前記筒状体の中空部に圧入し、その後冷却する焼ばめを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項7記載の発明は、前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、極低温まで冷却する冷やしばめを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項8記載の発明は、前記筒状体の内表面を凹凸状に形成し、その筒状体の内表面と、その筒状体の中空部に圧入した前記発泡金属体の外表面を、接着剤で固着することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項9記載の発明は、前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、その筒状体の外表面側から熱源を照射して、前記筒状体の内表面と前記発泡金属体の外表面を溶接することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項10記載の発明は、前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、前記筒状体の中空部の断面積を減少させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法である。
請求項11記載の発明は、閉断面を有する金属製の筒状体の中空部に、発泡金属体を充填して成る衝撃吸収部材であって、前記発泡金属体は、その表層部の密度が、その表層部より内方の密度より大きいことを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材である。
本発明の請求項1記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、発泡金属体を金属製の筒状体の中空部へ充填するという従来の製造プロセスのままで、金属製の筒状体の中空部内へ発泡金属体を確実に固定することができる。また、発泡金属体を、その軸芯を維持しながら確実に充填できるため、製造される衝撃エネルギー吸収部材が、想定した性能を確実に発揮することができる。
本発明の請求項2記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体への圧入を、大きな負荷を伴うことなく確実に行うことができる。また、金属製の筒状体の中空部内に確実に発泡金属体を充填固定することができる。
本発明の請求項3記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、発泡金属体を、その軸芯を維持しながら確実に圧入できるため、製造される衝撃エネルギー吸収部材が、想定した性能を確実に発揮することができる。
本発明の請求項4記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、圧縮・せん断変形を伴うことにより、金属製の筒状体の内面と発泡金属体の間に大きな摩擦抵抗が付与されるため、不安定な座屈モードを示すことなく、安定したエネルギー吸収特性を発現させることができる。
本発明の請求項5記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、発泡金属体の圧入時に、表層部以外の発泡金属体のセル組織を無傷のまま圧入することができ、製造される衝撃エネルギー吸収部材が、想定した性能を確実に発揮することができる。
本発明の請求項6記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、焼ばめにより、金属製の筒状体がその熱膨張係数に伴い収縮するため、発泡金属体に収縮力を付与でき、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体の充填固定を、より確実とすることができる。
本発明の請求項7記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、冷やしばめにより、金属製の筒状体がその熱膨張係数に伴い収縮するため、発泡金属体に収縮力を付与でき、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体の充填固定を、より確実とすることができる。
本発明の請求項8記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、接着剤により、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体の充填固定を、更に確実とすることができる。
本発明の請求項9記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、溶接により、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体の充填固定を、更に確実とすることができる。
本発明の請求項10記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法によると、筒状体の中空部の断面積の減少により、金属製の筒状体の中空部内への発泡金属体の充填固定を、更に確実とすることができる。
本発明の請求項11記載の衝撃エネルギー吸収部材によると、金属製の筒状体の中空部内へ発泡金属体を確実に固定することができると共に、発泡体の密度は、その表層部のみを大きくすれば固定が確実にできるので、衝撃エネルギー吸収部材自体の想定した性能を確実に発揮することができる。
以下、本発明を実施形態及び図面に基づいて更に詳細に説明する。
図1に示す1は、金属製の筒状体である。この筒状体1は、例えば、アルミニウム合金、鋼材等で形成された断面円形の閉断面部材であって、その内部が中空部2となっている。また、3は均一なセル組織を有する発泡金属体であり、純アルミニウム、或いは、Zn、Mg等を含有するアルミニウム合金等を発泡させて形成した円柱状の部材である。衝撃エネルギー吸収部材Aは、この発泡金属体3を、筒状体1の中空部2に圧入することにより作製される。
上記のように、衝撃エネルギー吸収部材Aは、発泡金属体3を、筒状体1の中空部2に圧入することにより作製されるが、圧入される発泡金属体3は均一なセル組織によって形成されているため、その圧入は、特に大きな力をかけることなく容易に行うことができる。その発泡金属体3の圧入は、以下に説明するようにして行われる。
まず、筒状体1と発泡金属体3を準備する。筒状体1の中空部2に圧入する前の発泡金属体3の外径は、その筒状体1の内径、即ち中空部2の直径よりも、0.1%〜3.0%大きいものとする。勿論、筒状体1の中空部2の断面形状と、発泡金属体3の断面形状は、共に円形であるので、それらの径(厚み寸法)の差は、全周において略同一である。
この発泡金属体3を、筒状体1の中空部3の一方の開口部側から圧入するが、発泡金属体3の表層部4は、圧入の際に塑性変形しながら圧入されることとなる。図2にその詳細を示すが、発泡金属体3の外表面は、筒状体1によって押圧されることになり、その表層部4のみが、圧縮・せん断変形によって潰される。その際、発泡金属体3の表層部4より内方のセル組織は潰されることなく無傷のまま圧入されることとなる。なお、図2に、5として、圧縮・せん断変形領域を示す。
圧入する前の発泡金属体3の平均密度が、0.1g/cm3〜0.7g/cm3であれば、圧入した後の発泡金属体3の表層部4を除く部位の平均密度を、圧入する前と同じ0.1g/cm3〜0.7g/cm3とすることができる。発泡金属体3をこの平均密度とすることで、自動車の衝突時等の衝撃エネルギーを確実に吸収することができる衝撃エネルギー吸収部材Aを作製することができる。なお、発泡金属体3の平均密度が、0.1g/cm3未満であれば、衝撃エネルギー吸収部材Aとして意味をなさないものとなり、0.7g/cm3超であれば、発泡金属体3の筒状体1への圧入が非常に行い難いものとなる。
また前記の説明では、圧入する前の発泡金属体3の外径は、筒状体1の内径より0.1%〜3.0%大きいいと説明したが、その差が0.1%未満であれば、筒状体1に圧入した発泡金属体3の充填固定が不十分となる。また、その差が3.0%超であれば、発泡金属体3の筒状体1への圧入が非常に行い難いもの、或いは圧入不可能なものとなる。
以上、図1及び図2に基づいて、本発明の一実施形態を説明したが、筒状体1及び発泡金属体3の断面形状は、必ずしも円形でなくても良く、例えば矩形等であっても良い。これらの断面形状が、矩形の場合は、筒状体1の内径(中空部2の直径)及び発泡金属体3の外径は、夫々中空部2の厚み寸法、発泡金属体3の厚み寸法と置き換えることで説明することができる。
以下、前記した衝撃エネルギー吸収部材Aの製造方法とは異なる本発明の他の様々な製造方法について説明する。
まず、一つ目の製造方法では、圧入する前の発泡金属体3を、その発泡金属体3の融点以下(発泡金属体3が合金の場合は固相線以下)に加熱する。この加熱した発泡金属体3を筒状体1の中空部2に圧入し、圧入を完了した後に焼ばめを行って冷却する。この焼ばめにより、金属製の筒状体1がその熱膨張係数に伴い収縮するため、発泡金属体3に収縮力を付与でき、金属製の筒状体1の中空部2内への発泡金属体3の充填固定をより確実とすることができる。
また、別の製造方法では、発泡金属体3を筒状体1の中空部2に圧入した後に、液体窒素(−195.8℃)雰囲気下で、極低温(−123℃)まで冷却する冷やしばめを実施する。この冷やしばめにより、金属製の筒状体1がその熱膨張係数に伴い収縮するため、発泡金属体3に収縮力を付与でき、金属製の筒状体1の中空部2内への発泡金属体3の充填固定をより確実とすることができる。
また、更に異なる製造方法では、まず、筒状体1の内表面に細かな凹凸を形成する。その筒状体1の内表面と、その筒状体1の中空部2に圧入した発泡金属体3の外表面を、接着剤で固着することで、筒状体1の中空部2内への発泡金属体3の充填固定をより確実とする。なお、接着剤としては、液状接着剤を、圧入する前の発泡金属体3の外表面に事前塗布しておくものでも良いし、ホットメルト用のシート状構造接着剤を、圧入する前の発泡金属体3の外表面に事前に巻きつけておき、圧入後に熱源を照射する等の手段でその接着剤を溶かすことで、筒状体1の内表面に発泡金属体3の外表面を接着するもの等であっても良い。
更に異なる製造方法では、発泡金属体3を筒状体1の中空部2に圧入した後に、筒状体1の外表面側から熱源を照射することで、アーク溶接、レーザ溶接を行って、筒状体1の内表面に発泡金属体3の外表面を溶着する。この溶着で、筒状体1の中空部2内への発泡金属体3の充填固定をより確実とする。
更にまた異なる製造方法では、発泡金属体3を筒状体1の中空部2に圧入した後、筒状体1の中空部2の断面積を減少させることで、筒状体1の中空部2内への発泡金属体3の充填固定を更に確実とする。
筒状体1の中空部2の断面積を減少させる方法としては、(1)筒状体1の外表面側から圧縮変形を加えたり、押出変形、ロール圧延加工等を行ったりして、筒状体1の中空部2の断面積を減少させる方法、(2)発泡金属体3を圧入した筒状体1に、電磁成形による縮管を施して、周方向から均等な荷重を一瞬にして付与することで、筒状体1の中空部2の断面積を減少させる方法、(3)筒状体1の材質を、発泡金属体3の融点以下で相変態により体積減少する材質、例えば、Ni−Ti系形状記憶合金とし、発泡金属体3の融点以下の加熱で、筒状体1の中空部2の断面積を減少させる方法等がある。
本実施例で用いた筒状体と発泡金属体は、以下に説明する通りである。筒状体は、5502−H34アルミニウム合金で形成された断面円形の閉断面部材で成る。その板厚は1mm、内径は80mm、軸方向の寸法は200mmである。一方、発泡金属体は、純アルミニウムを発泡して形成した円柱状のもので、その密度は0.24g/cm3、外径は80.5mm、軸方向の寸法は200mmである。即ち、発泡金属体の外径は、筒状体の内径よりも0.5mm大きい。
以上の構成の発泡金属体を、筒状体の中空部に圧入する。この圧入は、インストロン社製の型万能試験機(型番:4200、荷重容量:5ton)を用いて、速度:5mm/minで徐々に行った。圧入時の平均荷重は、約20kNであった。
上記の方法で作製した、発泡金属体を筒状体に圧入して形成した供試体(実施例)と、外径が80mmの発泡金属体を内径が同じく80mmの筒状体に挿入して形成した供試体(比較例1)と、外径が80mmの前記発泡金属体単体で成る供試体(比較例2)と、内径が80mmの前記筒状体単体で成る供試体(比較例3)について夫々静的圧縮試験を行い、各供試体の軸方向の寸法が50%(100mm)にまで変形した際の各供試体のエネルギー吸収に及ぼす下記する各因子の影響について調べた。
各供試体のエネルギー吸収量の向上に影響を及ぼす因子は、(a)筒状体自体、(b)発泡金属体自体、(c)筒状体へ発泡金属体を挿入したことによる効果、(d)筒状体へ大径の発泡金属体を圧入したことによる拘束力付与効果の4種があると考えられる。図3に、夫々の供試体のエネルギー吸収量に影響を及ぼした前記各因子の寄与率を示す。
比較例2は発泡金属体単体、比較例3は筒状体単体であるため、夫々の供試体のエネルギー吸収量に影響を及ぼす因子は、(a)筒状体自体、或いは、(b)発泡金属体自体のみである。
これに対し、比較例1、実施例では、複数の因子が、各供試体のエネルギー吸収量の向上に影響を及ぼしている。比較例1では、(a)筒状体自体、(b)発泡金属体自体のほか、(c)筒状体への発泡金属体の挿入効果が、供試体のエネルギー吸収量の向上に影響を及ぼしている。実施例では、更に、(d)筒状体へ大径の発泡金属体を圧入したことによる拘束力付与効果が、供試体のエネルギー吸収量の向上に影響を及ぼしている。
図3によると、実施例では、(c)筒状体への発泡金属体の挿入効果と、(d)筒状体へ大径の発泡金属体を圧入したことによる拘束力付与効果が、夫々供試体のエネルギー吸収量の向上に影響を及ぼした寄与率は略同等であり、実施例のエネルギー吸収量は、比較例1のエネルギー吸収量に比べて、(d)筒状体へ大径の発泡金属体を圧入したことによる拘束力付与効果分、即ち、約1.4倍にまで向上していることがわかる。この実施例では、発泡金属体の外径を、筒状体の内径よりも0.5mm大きくしたが、その差を0.5mmよりも更に大きくすれば(但し、発泡金属体の表層部のみがその変形によって潰され、それより内方のセル組織は潰されることがない範囲で)、エネルギー吸収量は更に向上させることができる。
1…筒状体
2…中空部
3…発泡金属体
4…表層部
A…衝撃エネルギー吸収部材
2…中空部
3…発泡金属体
4…表層部
A…衝撃エネルギー吸収部材
Claims (11)
- 閉断面を有する金属製の筒状体の中空部に、発泡金属体を充填して成る衝撃エネルギー吸収部材の製造方法であって、
前記筒状体の中空部の開口部側から、その中空部の断面寸法より、その断面寸法が僅かに大きな前記発泡金属体を、その発泡金属体の表層部のみを塑性変形させながら、圧入させることを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。 - 圧入する前の前記発泡金属体の断面の厚み寸法が、前記筒状体の中空部の断面の厚み寸法と比較して、0.1%〜3.0%大きいことを特徴とする請求項1記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 圧入する前の前記発泡金属体の厚み寸法と、前記筒状体の中空部の厚み寸法の差は、全周において略同一であることを特徴とする請求項2記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入する際に、その発泡金属体の表層部のみを圧縮・せん断変形させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 圧入した後の前記発泡金属体の平均密度は、塑性変形した表層部を除き0.1g/cm3〜0.7g/cm3であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記発泡金属体をその融点以下に加熱後、前記筒状体の中空部に圧入し、その後冷却する焼ばめを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、極低温まで冷却する冷やしばめを実施することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記筒状体の内表面を凹凸状に形成し、その筒状体の内表面と、その筒状体の中空部に圧入した前記発泡金属体の外表面を、接着剤で固着することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、その筒状体の外表面側から熱源を照射して、前記筒状体の内表面と前記発泡金属体の外表面を溶接することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 前記発泡金属体を前記筒状体の中空部に圧入した後、前記筒状体の中空部の断面積を減少させることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
- 閉断面を有する金属製の筒状体の中空部に、発泡金属体を充填して成る衝撃吸収部材であって、
前記発泡金属体は、その表層部の密度が、その表層部より内方の密度より大きいことを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材。
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