JP2009095099A - 永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 蓄電池40の出力端子に双方向昇降圧コンバータ回路30を接続し、コンバータ回路の出力側にPWM電圧形インバータ回路20を接続し、インバータ回路に可変速永久磁石同期電動機10を接続して可変速駆動するパルス振幅変調(PAM)制御装置であって、永久磁石同期電動機の端子電圧に対応してPWM電圧形インバータ回路のインバータ直流リンク電圧を設定し、双方向昇降圧コンバータ回路の各スイッチのデューティ比を選択することにより蓄電池の出力電圧を昇降圧してインバータ直流リンク電圧を適合する値に調整する。
【選択図】 図1
Description
一つ目は、PMSMの端子電圧はPWM−VSIの直流リンク電圧によって制限されることである。PMSMの端子電圧は運転速度に比例して上昇させる必要があるため、結果として運転速度が制限されることになる。二つ目は、低速度領域においてPMSMの端子電圧に対して直流リンク電圧が過大になると、PWM−VSIの変調率が低くなってしまうことである。これは電機子電流および発生トルク脈動の増加を引き起こし、結果として低速度運転に悪影響を与えることになる。
これら二つの欠点は、停止時から高速度範囲にわたり高精度な駆動が要求される電気自動車等の用途においては重要な問題となる。
ここには、回生制動時の蓄電池充電と近い技術的思想が記載されているが、第2コンバータの直流リンク電圧を適宜昇降圧することにより低速駆動時にも安定した制御を行う技術的思想に関して示唆するものがない。
インバータ直流リンク電圧指令値VDC *は、永久磁石同期電動機端子電圧の指令値Vl *に31/2を掛けた値に設定することが好ましい。ただし、Vl *はd軸電圧指令値vd *とq軸電圧指令値vq *に対して、Vl *2=vd *2+vq *2なる関係を有する。
図1は本実施例に係る可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置の主機側回路図である。
本実施例のパルス振幅変調制御装置の主機は、永久磁石同期電動機(PMSM)10、インバータ回路20、双方向昇降圧DC−DCコンバータ回路30、蓄電池回路40から構成される。
永久磁石同期電動機(PMSM)10は、回転子磁極に永久磁石を用いた同期電動機である。各相端子にインバータ回路20の各相出力を供給して、固定子に回転磁界を発生させて回転子を回転させる。回転速度はインバータ回路20のスイッチ回路のオンオフ制御により決められる。
vab=31/2(Vamp/21/2)∠π/6 (1)
PMSM10の端子電圧Vlは、vabの実効値と等しいので、(2)式で表される。
Vl=(3/2)1/2Vamp (2)
三角波比較法によりPWM−VSI20を駆動する場合、インバータ回路20の直流リンク電圧VDCを用いて、Vamp≦VDC/2となるから、PMSM10の端子電圧Vlは(3)式で表される。
Vl≦(3/8)1/2VDC (3)
変調率を高い値に維持し、また外乱電圧の影響を抑制するためには、直流リンク電圧VDCを最適に設定する必要がある。
VDC *=(8/3)1/2Vl * (4)
こうして求められるインバータ直流リンク電圧指令値VDC *は、PMSM10の運転状況に応じてオンラインで決定され、負荷の変動にも対応することができる。
VDC *=31/2Vl * (5)
v2=D1/(1−D2)*v1
v1=D2/(1−D4)*v2 (6)
ここで、DiはそれぞれスイッチSiのデューティ比である。iは1,2,3,4のいずれかを指す。
(6)式から、エネルギーがv1からv2の方向に流れるときはスイッチS1,S2のみを用い、エネルギーが逆にv2からv1の方向に流れるときはスイッチS3,S4のみを用いることで、双方向の昇降圧を行うことができることが分かる。
d/dtiL=vL/L
d/dtv1=iC1/C1
d/dtv2=iC2/C2 (7)
ここで、インダクタLの両端電圧vL、蓄電池側コンデンサC1に流入する電流iC1、インバータ回路側コンデンサC2に流入する電流iC2の状態は、スイッチ状態とインダクタLを流れる電流iLの初期値により決定される。
(5)式に基づいて、インバータ回路20の直流リンク電圧指令値VDC *を決定する。
D1=Kp(VDC *−VDC)
D2=0
D3=D4=0 (8)
ここで、Kpは比例係数である。
すると、(6)式に従い、viを降圧して運転速度に対応する最適な直流リンク電圧VDCを出力させることができる。
D1=1
D2=1−Vi/VDC *
D3=D4=0 (9)
すると、(6)式に従い、v2=(VDC */Vi)v1となり、蓄電池端子電圧Viを昇圧して直流リンク電圧VDCとして供給するので、運転可能な速度範囲が拡大する。
D1=D2=0
D3=1
D4=1−VDC/Vi * (10)
すると(6)式から、v1=(Vi */VDC)v2となり、直流リンク電圧VDCを昇圧して蓄電池端子電圧Vi以上にするので、蓄電池Ebatに電流が流れて充電が可能になる。
なお、電動機が回生制動するときには、発生する電流を蓄電池Ebatに充電して活用することができる。
PMSM10の制御系は速度制御器51を用いる速度制御ループと電流制御器53を用いる電流制御ループで構成されている。
PMSM10の回転子磁極位置θrはロータリーエンコーダ(RE)11で、また三相電流は電流センサ12,13により正確に検出される。なお、磁極位置θrの情報はdq/abc変換器21や負荷トルク推定オブザーバ55に供給され、また微分器56を通して角周波数ωrに変成した後に速度制御器51やd軸電流生成器54に供給される。
速度制御器51の出力τe *と信号遅延器57で1サンプル時間遅らされたd軸電流指令値idt *を電流設定器52に入力して変成し、q軸電流指令値iqt *として電流制御器53に供給する。
d軸電流生成器54は、q軸電流指令値iqt *と角周波数ωrによりd軸電流指令値idt *を生成して供給する。d軸電流指令値idt *は最大効率制御に基づいて決定されている。
G1=−(γ1+γ2+γ3+D/J)
G2=γ1γ2+γ2γ3+γ3γ1−G1D/J)
G3=γ1γ2γ3J (11)
図3は、シミュレーション対象としたIPMSM、PWM−VSI、DC−DCコンバータの機器仕様を示した表である。
図4の(a)は相電圧指令値va *の変化、(b)は相電流iaの変化、(c)は電磁トルクτeの変化、(d)はロータ回転速度ωrの変化、(e)は直流リンク電圧VDCの変化を表す。いずれも横軸に運転開始からの経時時刻を示している。
(a)から(d)の図面には、比較のため、本実施例の制御装置による場合と、直流リンク電圧が42V一定に保持される場合についてシミュレーション結果を表示してある。
図4(e)は本願発明装置において、直流リンク電圧指令値に対する直流リンク電圧の追従性を示す図面であるが、両者が全く重なっており、速度に応じて最適な直流リンク電圧に制御されていることが確認できる。
直流リンク電圧が変わらない場合には、低速になるにつれて変調率が低くなるのに対して、直流リンク電圧を調整する本発明装置では、印加負荷の大小に関わりなく、全速度範囲にわたって変調率がほぼ1に維持されている。
したがって、本発明装置によって、PWM−VSIのパルス密度を高い状態に維持して、出力電圧を本質的に改善できることが分かる。
総合歪み率THDは(13)式で評価する。
va *について、THD=(va *2−va1 *2)1/2/va1 *
iaについて、 THD=(ia 2−ia1 2)1/2/ia1
τeについて、 THD=(τe 2−τed 2)1/2/τed (13)
ここで、va *,va1 *はa相電圧指令値の実効値およびその基本波成分の実効値、ia,ia1はa相電流の実効値およびその基本波成分の実効値、τe,τedはトルクの実効値およびその直流成分の実効値である。
図から、本発明装置によってTHDが改善することが分かる。また、従来法と比較すると低速度軽負荷時により一層改善される。なお、特に電圧指令値THDの改善が著しい。
また、(c)はIPMSMの端子電圧V1の変化を示し、(d)はDC−DCコンバータの直流リンク電圧VDCの変化を示す。
図7から、直流リンク電圧指令値VDC *に応じて端子電圧vlが昇降圧され,速度に応じて最適な直流リンク電圧VDCが出力されていることが確認できる。
したがって、本発明の装置によれば、運転可能速度範囲が拡大される。
図8の(a)は電磁トルクτe、(b)は回転子速度ωr、(c)は直流リンク電圧VDC、(d)は負荷トルクτLの変化を表す。
(a)から、電磁トルクは良好に制御されることが分かる。(b)により、回転子速度は負荷トルクを補償したため、負荷トルク印加時の急激な変化が抑制されるように良好に制御されていることが分かる。また、(c)を見ると、直流リンク電圧も負荷の急変に対応して望ましい値に制御されることが確認される。
シミュレーションは、IPMSMを0〜5秒の間加速し、その後6秒まで500rpm一定速度で運転し、6秒時点で−0.3puのトルク指令を与え、速度が0rpmになったら0.0puのトルク指令を与えて逆回転を防止する想定の下で実施した。
図9の(a)は、本発明装置と直流リンク電圧VDCを42V一定とした場合について、回転子速度の変化を示す。(b)と(c)は、それぞれ直流リンク電圧VDCが42V一定の場合と可変VDCである本発明装置の場合について、バッテリ電流の変化を示す図面である。また、(d)は、コンバータの入力電圧v1と出力電圧v2の変化を示す図面である。
(b)と(c)を比較すると、本発明装置の方が回生時により多くの電流がバッテリに充電されていることが確認できる。
さらに、負荷の急変に対応して直流リンク電圧を瞬時に要求される値に変化させることもできることが確認できた。
20 インバータ回路
30 双方向昇降圧DC−DCコンバータ回路
40 蓄電池回路
51 速度制御器
53 電流制御器
11 ロータリーエンコーダ(RE)
12,13 電流センサ
21 dq/abc変換器
55 負荷トルク推定オブザーバ
56 微分器56
54 d軸電流生成器
57 信号遅延器
52 電流設定器
31 コンバータ制御器
Claims (6)
- 蓄電池出力端子に双方向昇降圧コンバータ回路を接続し、該双方向昇降圧コンバータ回路の出力側にPWM電圧形インバータ回路(PWM−VSI)を接続し、該PWM電圧形インバータ回路に可変速永久磁石同期電動機(PMSM)を接続して駆動するパルス振幅変調(PAM)制御装置であって、該可変速永久磁石同期電動機の端子電圧に対応して前記PWM電圧形インバータ回路のインバータ直流リンク電圧を設定し、前記双方向昇降圧コンバータ回路の各スイッチのデューティ比を選択することにより前記蓄電池の出力電圧を昇降圧して前記インバータ直流リンク電圧を適合する値に調整することを特徴とする可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調(PAM)制御装置。
- 前記双方向昇降圧コンバータ回路は、インダクタを中心としてその両側にフライホイールダイオードと対になった電力スイッチを4対配設され、その両側にコンデンサが設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置。
- 前記インバータ直流リンク電圧指令値VDC *は、前記可変速永久磁石同期電動機端子電圧の指令値Vl *に31/2を掛けた値に設定することを特徴とする請求項1または2記載の可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置。ただし、Vl *はd軸電圧指令値vd *とq軸電圧指令値vq *に対して、Vl *2=vd *2+vq *2なる関係が成立するものとする。
- 前記可変速永久磁石同期電動機の力行時において、前記インバータ直流リンク電圧VDCを調整するときに、該インバータ直流リンク電圧指令値VDC *が前記蓄電池出力電圧Viより小さい場合に、前記双方向昇降圧コンバータ回路において前記蓄電池端子と前記インダクタの間に介装される電力スイッチS1のデューティ比D1をKp(VDC *−VDC)に、その他の電力スイッチS2,S3,S4のデューティ比を0にして、前記インバータ直流リンク電圧VDCを降圧することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置。ただし、Kpは比例ゲインである。
- 前記可変速永久磁石同期電動機の力行時において、前記インバータ直流リンク電圧VDCを調整するときに、該インバータ直流リンク電圧指令値VDC *が前記蓄電池出力電圧Viより大きい場合に、前記双方向昇降圧コンバータ回路において前記蓄電池端子と前記インダクタの間に介装される電力スイッチS1のデューティ比D1を1に、また前記インダクタと前記インバータ回路の接地側端子の間に介装される電力スイッチS2のデューティ比D2を(1−Vi/VDC *)に、その他の電力スイッチS3,S4のデューティ比を0にして、前記インバータ直流リンク電圧VDCを昇圧することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置。
- 前記可変速永久磁石同期電動機の回生制動時において、前記双方向昇降圧コンバータ回路において、前記インダクタと前記インバータ回路の直流リンク電圧端子の間に介装される電力スイッチS3のデューティ比D3を1に、また蓄電池側接地端子と前記インダクタの間に介装される電力スイッチS4のデューティ比D4を(1−VDC/vi *)に、その他の電力スイッチS1,S2のデューティ比を0にして、前記インバータ直流リンク電圧VDCを前記蓄電池出力電圧Viより昇圧することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の可変速永久磁石同期電動機のパルス振幅変調制御装置。
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