JP2009077719A - ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマス資源から得られる原料を用いて高分子量で着色の少ない実用可能なポリエステルを提供する。
【解決手段】ポリエステルの主たる繰り返し単位を構成するジカルボン酸がバイオマス資源から得られたものであり、ジカルボン酸中の窒素原子含有量が、該ジカルボン酸に対して質量比で0.01ppm以上2000ppm以下である。また、ジカルボン酸の黄色度(YI)は10以下であり、ジカルボン酸はコハク酸であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオマス資源由来の原料から製造されるポリエステルに関する。具体的には、ジオール単位およびジカルボン酸単位を構成成分として含有するバイオマス資源由来のポリエステルならびにその製造方法に関する。
従来ポリエステルは、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、ポリ炭酸エステルのいずれのポリエステルも石油由来の原料を重縮合することにより製造されている。しかし、近年環境問題が重視されてきており、化石燃料枯渇問題、大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境負荷の問題に対する対策が必要となっている。これに対しポリエステルの原料として植物から誘導された原料を用いることにより、これらの原料が毎年再生可能な原料であるため原料供給が化石燃料枯渇とは無関係になり、植物の育成により二酸化炭素が吸収されるため二酸化炭素削減に大きく貢献することができる。
コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸は、グルコースから発酵法を用いて製造する方法が各種知られている(特許文献1、非特許文献1、2参照)。しかしながら、これらの製法によれば、発酵法により得られたジカルボン酸は有機酸塩として得られるため、不純物としてアンモニアや金属カチオンが不純物として混入する。これは、発酵により一旦ジカルボン酸を有機酸塩として得た後に中和、抽出、晶析等の工程を経て目的とするジカルボン酸を製造するプロセスである為、ジカルボン酸中には、バイオマス資源に含まれる窒素元素の他、発酵菌由来の窒素元素やアンモニアならびに金属カチオン等の多くの不純物が混入するからである。
ジオールの1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコールなどは直接植物由来の原料から発酵法により得る方法と、相当するジカルボン酸を発酵法により製造した後、これを還元触媒により水添して得る方法がある(非特許文献3)。
特開2005−27533号公報 Journal of the American Chemical Society No.116 (1994) 399−400頁 Appl.Microbiol Biotechnol No.51 (1999) 545−552頁 Biotechnology and Bioengineering Symp. No.17(1986)355−363頁
従来の技術で製造されるバイオマス資源由来のジカルボン酸やジオールを用いてポリエステルの製造を行おうとすると、通常、原料中に不純物として含有されるアンモニア塩や金属カチオンなどにより重合反応が阻害されて十分な分子量のポリエステルが得られなかったり、得られたポリエステルが着色したりするという問題が生じていることが、本発明者の研究により明らかとなった。
そこで、本発明の目的は、発酵法による原料を用いて高分子量で着色の少ない実用可能なバイオマス資源由来のポリエステルおよびその製造する方法を提供することにある。さらに本発明の特定の窒素原子含有量を有するバイオマス資源から製造されるポリエステルは生分解性に優れるという事実を究明したものである。
バイオマス資源から製造されたジカルボン酸またはジオールを用いて重合されたポリエステルに存在する不純物が示す挙動を解析および検討を行った結果、原料中およびポリエステルに不純物として含まれる窒素原子含有量が重合速度や樹脂の着色および生分解性に大きな影響を与えるという知見が得られ本発明に到達した。
本発明の第1の特徴は、主たる繰り返し単位がジカルボン酸単位及びジオール単位であるポリエステルにおいて、該ポリエステルの原料であるジカルボン酸及びジオールの少なくとも一方がバイオマス資源から得られたものであって、該ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5以上であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステルである。
第2には、ポリエステルの主たる繰り返し単位を構成するジカルボン酸及びジオールの少なくともいずれかがバイオマス資源から得られたものであり、ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が質量比で該ポリエステル質量に対して窒素原子換算として0.01ppm以上1000ppm以下であることを特徴とするポリエステルである。
第3には、バイオマス資源が植物資源であることを特徴とするポリエステルである。
第4には、カルボキシル基末端濃度が50当量/トン以下であることを特徴とするポリエステルである。
第5には、ジカルボン酸がバイオマス資源から誘導されたコハク酸であることを特徴とするポリエステルである。
第6には、ポリエステルが、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸および3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
第7には、3官能以上の多官能化合物単位の含有量が、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、0.0001モル%以上0.5モル%以下であることを特徴とするポリエステルである。
第8には、土壌中の生分解速度が、全ての構成単位が石油資源の原料から得られた同じ化学構造のポリエステルの1.1倍以上であることを特徴とするポリエステルである。
第9には、カルボン酸とジオールとの反応によりポリエステルを製造する方法において、反応に供するジカルボン酸原料及びジオール原料の少なくとも一つがバイオマス資源から誘導されたものであり,該バイオマス資源から誘導されたジカルボン酸原料又はジオール原料中の窒素原子含有量が、窒素原子換算として0.01ppm以上2000ppm以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法というものである。
第10には、本発明のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1〜99.9重量%配合したことを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
第11には、本発明のポリエステルを成形してなる成形体というものである。
本発明は、ポリエステルの主たる繰り返し単位を構成するジカルボン酸及びジオールの少なくともいずれかがバイオマス資源から得られたものであり、ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が全ポリエステル質量に対して窒素原子換算として0.01ppm以上1000ppm以下であることを特徴とするポリエステルを提供する。
本発明は環境問題、化石資源の問題等の解決に貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することが出来、産業上の利用価値は極めて大である。また、バイオマス資源から製造される本発明のポリエステルは、驚くべきことに同一構造の石油由来の原料から製造したポリエステルとくらべ生分解性が良好であるため、特定の窒素原子含有量とすることにより、生分解性に優れ、着色が少なく、機械的物性に優れた様々な用途展開可能な高分子量ポリエステルを提供することができる。
また、現在の大気圏の地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオールまたはジカルボン酸をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。植物原料生産が各地に分散して多様化できるので、原料供給が非常に安定していること、および大気圏の地球環境下において為されるために、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは、材料の物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。これは、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな視点のポリエステル製造プロセスを提供するものであるから、新たな第2ステージのプラスチックという、全く新たな視点から、プラスチック材料の利用および発展に著しく寄与するものである。本発明のポリエステルは、土壌投棄をやめて仮に焼却処分しても、有害物、悪臭を発生することが少ない。
本発明の対象とするポリエステルは、ジカルボン酸単位およびジオール単位を主要の必須成分とする。しかも、本発明においてそのジカルボン酸単位およびジオール単位を構成するジカルボン酸及びジオールは、少なくともいずれかがバイオマス資源から誘導されたものである。
本発明のポリエステルは、バイオマス資源から製造されたジカルボン酸及び/又はジオールを重縮合することによって得られるポリエステルにおいて、ポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が0.01ppm以上1000ppm以下とすることにより、ポリエステルの所定の機能、特性を高くすることができたものである。本発明でいうppmとは質量ppmのことをいう。
・ジカルボン酸
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸或いはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90%モル以上を示す。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。本件明細書に開示の芳香族ジカルボン酸を使用した場合にも、例えばジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールのポリエステルのように任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより所望の芳香族ポリエステルが製造できる。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体が使用される。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常、炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物も使用できる。これらの内、脂肪族ジカルボン酸としては、得られる重合体の物性の面から、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物が好ましい。これらの中では、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、これらのジカルボン酸は、バイオマス資源から誘導されるものが好ましい。
本発明でいうバイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも、より好ましいバイオマス資源としては、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜***物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素原子やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その工程には、例えば、通常、特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルで粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸で酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等生物学的処理が挙げられる。
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、キシロースが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。
これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりジカルボン酸が合成される。これらの中でも微生物変換による発酵法が好ましい。
微生物変換に用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属 (米国特許第5143833号明細書)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(米国特許第5504004号明細書)、Escherichia属(米国特許第5770435号明細書)等の通性嫌気性細菌(E.coli(J.Bacteriol.,57:147−158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333号公報、米国特許第6159738号明細書)など)、Corynebacterium属(特開平11−113588号公報)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593号公報)、Bacteroidesruminicola、Bacteroidesamylophilus等の嫌気性ルーメン細菌を用いることができる。
より具体的には、本発明に使用できる細菌の親株は、コリネ型細菌(coryneform bacterium)、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌が好ましく、コリネ型細菌がより好ましい。これらの菌は、微生物変換により琥珀酸の生産能を有する。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアースロバクター属に属する微生物が挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。
上記細菌の親株の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC31831、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl, W., Ehrmann, M., Ludwig, W. and Schleifer, K. H., International Journal of Systematic Bacteriology, 1991, vol.41, p255−260)、本発明においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、及びその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株及びMJ−233 AB−41株と同一の株であるものとする。
なお、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立法人 産業技術総合研究所 特許寄託センター)(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−1497が付与されている。
微生物変換における反応温度、圧力等の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存することになるが、ジカルボン酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
微生物変換においては、pHが低くなると微生物の代謝活性が低くなったり、或いは微生物が活動を停止するようになり、製造歩留まりが悪化したり、微生物が死滅するため、通常には中和剤を使用する。通常はpHセンサーによって反応系内のpHを計測し、所定のpH範囲となるように中和剤の添加によりpHを調節する。中和剤の添加方法については特に制限はなく、連続添加であっても間欠添加であってもよい。
中和剤としてはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。好ましくはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素である。なお上記アルカリ(土類)金属の水酸化物としてはNaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)等、或いはこれらの混合物などが挙げられ、アルカリ(土類)金属の炭酸塩としては、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaKCO等、或いはこれらの混合物などが挙げられる。
pH値は、用いる菌体、カビ等の微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されるが、一般的には、pH4〜10、好ましくは6〜9程度の範囲である。
発酵法を含む製造方法により得られるジカルボン酸の精製方法は、電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、塩交換法等が知られている。例えばジカルボン酸塩を分離し純粋な酸を生成する電気透析および水分解工程を組み合わせて用いることによって製造し、更なる精製を、一連のイオン交換カラムに生成物ストリームを通すことによって達成しても良いし、ジカルボン酸の過飽和溶液に変換するための水分解電気透析を用いても良い(米国特許第5,034,105号明細書)。また、塩交換法としては、例えばジカルボン酸のアンモニア塩を硫酸水素アンモニウム及び/または硫酸と十分に低いpHで混合して反応させジカルボン酸及び硫酸アンモニウムを生成させても良い(特表2001−514900号公報)。イオン交換樹脂を用いる具体的方法としては、ジカルボン酸の溶液から遠心分離、濾過等により菌体等の固形分を除去した後、イオン交換樹脂で脱塩し、その溶液から結晶化或いはカラムクロマトグラフィーによりジカルボン酸を分離精製する方法が挙げられる。その他の精製方法としては、特開平3−30685号公報に記載のように水酸化カルシウムを中和剤として醗酵し、硫酸により硫酸カルシウムを析出させて除去した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法や特開平2−283289号公報に記載のように発酵法により生成した琥珀酸塩を、電気透析した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法が例示される。更には、USP6284904号明細書ならびに特開2004−196768号公報に記載の方法も好適に使用される。すなわち、本発明においては、精製方法はどのような方法を用いても良く、上記の、電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、硫酸等の酸で処理する方法、水、アルコール、カルボン酸或いはそれらの混合物を用いた晶析ならびに洗浄、ろ過、乾燥などの上記の公知文献や本発明の参考例に記載の任意の単位操作を任意の組み合わせで、必要に応じて繰り返し実施することにより本発明に適した精製されたモノマー原料を製造することができる。これらの中では、特に、コスト、効率の点でイオン交換法又は塩交換法が好ましく、工業的生産性の点で塩交換法が特に好ましい。
精製によりジカルボン酸中に含まれる不純物の窒素化合物や金属カチオンの量を減らすことが、通常、実用的な重合体を得るために必要である。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸には、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素元素が含まれてくる。具体的には、アミノ酸、たんぱく質、アンモニウム塩、尿素、発酵菌由来等の窒素元素が含まれてくる。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量は、カルボン酸中に、窒素原子換算として、該カルボン酸に対して上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は通常、0.01ppm以上、好ましくは、0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
窒素原子含有量は、元素分析法等の公知の方法や、アミノ酸分析計を用い、生体アミノ酸分離条件にて試料中のアミノ酸やアンモニアを分離し、これらをニンヒドリン発色させて検出する方法により測定される値である。
窒素原子含有量が上記の範囲にあるジカルボン酸を用いることで、得られるポリエステルの着色の減少に有利になる。また、ポリエステルの重合反応の遅延化を抑制する効果も併せ持つ。
ジカルボン酸中に含まれる不純物のアンモニアの量を効率的に減らす具体的な方法として、目的とするジカルボン酸よりもpHの高い弱酸性の有機酸を使用した反応晶析方法が挙げられる。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸をポリエステル原料として使用するにあたり、重合系に連結される該ジカルボン酸を貯蔵するタンク内の酸素濃度を一定値以下に制御してもよい。これによりポリエステルの不純物である窒素源の酸化反応による着色を防止することができる。
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限が16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは、12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは、50℃以下であるが、温度管理の必要がない理由から室温で貯蔵する方法が最も好ましい。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、カルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の湿度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは 0.001%以上であり、より好ましくは、0.01%以上、最も好ましくは、0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは、40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化、貯蔵タンクが金属製の場合にはタンクの腐食等が問題になる傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の圧力は、通常、大気圧(常圧)である。
本発明で使用されるジカルボン酸は、通常、着色の少ないものであることが好ましい。本発明で使用されるジカルボン酸の黄色度(YI値)は、その上限が、通常、50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは、−10以上、より好ましくは、−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくはー1以上である。高いYI値を示すジカルボン酸の使用は、製造するポリマーの着色が著しい欠点を有する。一方、低いYI値を示すジカルボン酸は、より好ましい形態ではあるが、その製造に極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
・ジオール
本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。
脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリマーが得られる理由から偶数のジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコ−ル及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ルが好ましく、更には、1,4−ブタンジオ−ルが特に好ましい。本発明においては、1,4−ブタンジオ−ルを主成分として使用する場合のその含有量は、特には限定されないが、全ジオール単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
芳香族ジオールとしては、2個のOH基を有する芳香族化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が6以上であり、上限値が通常15以下の芳香族ジオールが挙げられる。芳香族ジオールの具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン及びビス(p−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン等が挙げられる。本発明において、ジオール全量中、芳香族ジオールの含有量は、通常、30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
また、両末端ヒドロキシポリエーテルを上記の脂肪族ジオールと混合して使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数は下限値が通常4以上、好ましくは10以上であり、上限値が通常1000以下、好ましくは200以下、更に好ましくは100以下である。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、ポリエステル中の含量として、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下に計算される量である。
本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換しても良い。
例えば、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造しても良いし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
コハク酸を水添する触媒の例として、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Co及びその化合物が挙げられ、より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジオール化合物を製造する方法も積極的に用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジオールを製造できる。
バイオマス資源由来から誘導されたジオールには、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素、発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
発酵法により製造したジオール中に含まれる窒素原子含有量は、ジオール中に、原子換算として、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが、通常、0.01ppm以上、好ましくは、0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは、0.1ppm以上である。多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの着色、一部ゲル化、そして安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。
また、別の態様としては、ジカルボン酸原料及びジオール中に含まれる窒素原子含有量が、前述の原料総和に対して質量比で、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが、通常、0.01ppm以上、好ましくは、0.05ppm以上、0.1ppm以上である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリエステルの着色を抑制するため、重合系に連結されるジオールを貯蔵するタンク内の酸素濃度や温度を制御してもよい。この制御により、不純物自身の着色や、不純物により促進されるジオールの酸化反応が抑制され、例えば、1,4−ブタンジオールを使用する場合の2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化生成物によるポリエステルの着色を防止することができる。
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジオールの貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは 0.0001%以上であり、より好ましくは、0.001%以上、最も好ましくは、0.01%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは 5%以下、より好ましくは、1%以下、最も好ましくは、0.1%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ジオールの酸化反応生成物によるポリマーの着色が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃以上、好ましくは 30℃以上であり、より好ましくは、50℃以上、最も好ましくは、100℃以上であり、上限が230 ℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは、180℃以下、最も好ましくは、160℃以下である。温度が低すぎる場合には、ポリエステル製造時の昇温に時間を要し、ポリエステル製造が経済的に不利になる傾向があるばかりかジオールの種類によっては固化してしまう場合がある。一方、高すぎる場合には、ジオールの気化により高圧対応の貯蔵設備が必要となり経済的に不利になるばかりかジオールの劣化が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の圧力は、通常大気圧(常圧)である。圧力が低すぎたり、高すぎる場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
本発明において、色相の良いポリマー製造に用いられるジオールの酸化生成物の含有量の上限は、通常、ジオール中、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppm以上、好ましくは、精製工程の経済性の理由から10ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。
本発明においては、通常、ジオールは蒸留による精製工程を経てポリエステル原料として使用される。
<ポリエステルの製造方法>
本発明のジオール単位及びジカルボン酸単位を主体とするポリエステルの製造は、重合反応液中の窒素の量を制御する他は、ポリエステルを製造する公知技術で行うことができる。このポリエステルを製造する際の重合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。
ポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化中の留出があることから、1〜20モル%過剰に用いられる。後述する脂肪族オキシカルボン酸を使用する際の使用量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し好ましくは0〜60モル、より好ましくは1.0〜40モル、特に好ましくは2〜20モルである。
後述するオキシカルボン酸を使用する際の添加時期・方法は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1) あらかじめ触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で添加する方法、(2) 原料仕込み時触媒を添加すると同時に添加する方法、などが挙げられる。本発明のポリエステルは、好ましくは上記原料を重合触媒の存在下で重合することにより製造される。触媒としては、チタン化合物、ゲルマニウム化合物が好適である。特にゲルマニウム化合物が好ましい。ゲルマニウム化合物としては、特に制限されるものではなく、酸化ゲルマニウム、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物、塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。触媒の使用量は、使用するモノマー量に対して通常には0.001〜3重量%、より好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に乳酸、グリコール酸等のオキシカルボン酸と同時に添加するか、またはオキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加する方法が好ましく、特には、触媒の保存性が良好となる点でオキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加する方法が好ましい。
また、本発明においては、重縮合反応は、ゲルマニウム以外の重合触媒の存在下に行ってもよい。それらの重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
従って、本発明においては、重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの触媒成分は、上記の理由からバイオマス資源から誘導されるポリエステル原料中に含まれる場合がある。その場合は、特に原料の精製を行わず、そのまま金属を含む原料として使用してもよい。しかしながら、製造するポリエステルによってはポリエステル原料中に含まれるナトリウムやカリウム等の1族金属元素の含有量が少ない程、高重合度のポリエステルが製造しやすい場合がある。その様な場合には1族金属元素が実質含まれない程度まで精製された原料が好的に使用される。
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製のチタニア/シリカ複合酸化物(製品名:C−94))も好んで用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。更には、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物も好適に使用される。これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
これらのゲルマニウム以外の重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
本発明のポリエステルを製造する際の温度、時間、圧力などの条件は、温度が150〜260℃、好ましくは180〜230℃の範囲で選ぶのがよく、重合時間は2時間以上、好ましくは4〜15時間の範囲で選ぶのがよい。減圧度は10mmHg以下、より好ましくは2mmHg以下で選ぶのがよい。
より詳細には、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.05×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、同一又は異なる反応装置を用いて、溶融重合のエステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には凝縮器を結合し、該凝縮器にて重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応原料を回収する方法が好んで用いられる。
本発明においては、ポリエステルの製造方法として、従来の、上記の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法が用いられる。後者の場合、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物環状体の除去は、通常、上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物環状体になりやすいため、酸無水物環状体の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸成分とジオール成分の環状単量体を共に留去させる方法は、重合速度が向上するため、好ましい態様である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/またはジオールは、ポリエステル原料として使用するにあたり、ポリエステル製造反応中の酸素濃度を特定値以下に制御された反応槽内でポリエステルを製造してもよい。これにより不純物である窒素化合物の酸化反応によるポリエステルの着色や、例えばジオールとして1,4−ブタンジオールを使用する場合の1,4−ブタンジオールの酸化反応により生成する2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化反応生成物によるポリエステルの着色を抑制することができるため、色相の良いポリエステルを製造することができる。
ここでいう製造反応とは、原料をエステル化反応槽へ仕込み、昇温を開始した時点から重縮合反応槽で減圧下にて所望の粘度のポリマーを製造し、反応槽を減圧から常圧以上に復圧するまでの間と定義する。
製造反応中の反応槽中の酸素濃度は、下限は、特に限定されないが通常1.0×10−9%以上、好ましくは1.0×10−7%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは、0.1%以下、最も好ましくは、0.01%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となる傾向があり、また、高すぎる場合には、上記の理由で得られるポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/またはジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、減圧下での重合反応停止前の攪拌速度を制御してもよい。これにより分解が抑制された粘度の高いバイオマス資源由来のポリエステルを製造することができる。
ここで言う“最終攪拌速度”とは、後述する縮重合反応中において、所望の粘度のポリマーを製造した際の攪拌装置の最低攪拌回転数を示す。但し、製造ポリマー抜き出し操作等に伴う攪拌装置の停止操作は、縮重合反応中の定義の中には含まれない。
減圧下での重合反応時の反応停止前の攪拌速度は、下限が通常0.1rpm以上、好ましくは0.5rpm以上であり、より好ましくは、1rpm以上であり、上限が10rpm以下、好ましくは7rpm以下、より好ましくは、5rpm以下、最も好ましくは、3rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、せん断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。本発明においては、通常、少なくとも10rpm以下の回転数で少なくとも5分以上、好ましくは、10分以上、より好ましくは30分以上攪拌して所望のポリエステルを製造するのが好ましい。
また、減圧下での重合開始時の攪拌速度は、下限が通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上であり、より好ましくは、30rpm以上であり、その上限は、200rpm以下、好ましくは100rpm以下、より好ましくは、50rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、せん断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造時においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。
ここで減圧下での重合反応時の攪拌速度は、ポリエステルの粘度上昇との兼ね合いで、連続的、または多段階で攪拌速度を低減させてもよい。より好ましくは、減圧下での重縮合反応停止前10分間の平均攪拌速度を、減圧下での重縮合反応開始後30分間の平均攪拌速度より低くすることが重要である。この調節を行うことにより不純物が多く熱分解しやすいバイオマス資源由来のポリエステルの製造時の熱分解が抑えられ、安定にポリマーが製造できる。
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応時の攪拌速度を制御することにより、例えば、ジオールとして1,4−ブタンジオールを用いた場合のテトラヒドロフランの副生が低減され、重合速度を向上することができる。
エステル化反応時の攪拌速度は、下限が通常30rpm以上、好ましくは、50rpm以上、より好ましくは、80rpm以上であり、上限は、1000rpm以下、好ましくは500rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、留去効率が悪く、エステル化反応が遅くなる傾向があり、例えばジオールの脱水反応や脱水環化等が引き起こされる傾向がある。それによりジオール/ジカルボン酸の比率が崩れて重合速度が低下したり、より過剰のジオールを仕込む必要が生じる等の欠点を有する、また、速すぎる場合には、余計な動力を消費するため経済的に不利である。
また、バイオマス資源由来のジカルボン酸を、ポリエステル原料として使用するにあたり、ジカルボン酸を貯蔵タンクから反応器へ移送する際の酸素濃度と湿度を制御してもよい。これにより不純物による移送管内の腐食を防止すること事ができ、更には窒素源の酸化反応による着色を抑えることができ、色相の良いポリエステルを製造することができる。
移送管の種類としては、具体的には、通常の公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
移送管内の酸素濃度は、移送管全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限が通常16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは、12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備投資や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
移送管内の湿度は、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは 0.001%以上であり、より好ましくは、0.01 %以上、最も好ましくは、0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは、40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管の腐食が問題になる傾向がある。更に、湿度が高すぎる場合は、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化等の問題が生じ、これらの付着現象により配管の腐食が促進される傾向がある。
移送管内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは、50℃以下である。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、ジカルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
移送管内の圧力は、通常、0.1kPaから1MPaであるが、操作性の観点から0.05MPa以上0.3Mpa以下程度の圧力で使用される。
また、ポリエステルの製造工程の途中、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加してもよい。着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。また、炭酸カルシウムやシリカなどの改質剤も使用することができる。
本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度を制御してもよい。これにより、高粘度のポリエステルの抜き出し時の熱分解を抑制させて取り出すことができる。
重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度は、重合終了後、反応槽の圧力を減圧からから常圧以上に復圧した際の樹脂温度をTeとしたとき、下限は、(Te−50)℃以上、好ましくは(Te−30)℃以上であり、より好ましくは、(Te−20)℃以上、最も好ましくは、(Te−10)℃以上であり、上限が(Te+20)℃以下、好ましくは(Te+10)℃以下、より好ましくは、Te℃以下である。温度が低すぎる場合には、抜き出し時のポリエステルの粘度が上昇し、抜き出し難くなり生産性に問題が生じる傾向があり、また、高すぎる場合には、ポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ここで、抜き出し時のポリエステルの温度は、重合反応層内の温度を測定する目的で取り付けられた熱電対等により測定することができる。
また、本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出されたストランド状のポリエステルを特定温度以下の水性媒体に接触させてもよい。これにより、高粘度のポリエステルの分解を抑制させたまま得ることができる。
ポリエステルを冷却するための媒体としては特に限定されないが、エチレングリコール等のジオール、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン、水が挙げられ、この中では、水が最も好ましい。これらの水性溶媒は、2種以上併用してもよい。
また、溶媒の温度は、下限が通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上であり、より好ましくは、0℃以上、最も好ましくは、4℃以上であり、上限が通常20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは、10℃以下である。温度が低すぎる場合には、媒体の冷却設備運転コストが高くなり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ストランドでの抜き出し時にポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ポリエステルを冷却する時間は、下限が通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上であり、より好ましくは、5秒以上、最も好ましくは、10秒以上であり、上限が通常5分以下、好ましくは2分以下、より好ましくは、1分以下、最も好ましくは、30秒以下である。時間が短すぎる場合には、ストランド同士の融着が著しくなったり、ペレット化が困難になる傾向があり、また、長すぎる場合には、生産性が不利になる傾向がある。
冷却する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合槽からポリエステルをストランド状で抜き出し、冷却媒体中を潜らす方法や、冷却媒体をストランドに例えばシャワー状で降りかける等の方法が挙げられる。
<ポリエステル>
本発明のポリエステルとは、上記に列挙したジカルボン酸単位およびジオール単位の範疇に属する各種化合物を主体とする成分の反応により製造されるポリエステルはすべて本発明のポリエステルに含まれるが、典型的なものとして、以下のポリエステルが具体的に例示できる。
コハク酸を用いたポリエステルとしては、コハク酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,3−プロピレングリコールのポリエステル、コハク酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、コハク酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びコハク酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
シュウ酸を用いたポリエステルとしては、シュウ酸とエチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、シュウ酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、シュウ酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びシュウ酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
アジピン酸を用いたポリエステルとしては、アジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,3−プロピレングリコールのポリエステル、アジピン酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、アジピン酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びアジピン酸1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
その他、上記のジカルボン酸を組み合わせたポリエステルも好ましい組み合わせであり、コハク酸とアジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、テレフタル酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びテレフタル酸とコハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステルなどが例示できる。
本発明は、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルも対象としている。その共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるのでもっとも好ましい方法である。
本発明のポリエステルの構成単位の組成比は、ジオール単位とジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいが、ポリエステルは共重合成分としてオキシカルボン酸単位を含んでもよい。オキシカルボン酸単位の量は、ジカルボン酸単位100モルに対し、通常には、0〜30モルである。オキシカルボン酸単位の上限は好ましくは20モル%、さらに好ましくは10モル%、また下限は好ましくは0.5モル%、より好ましくは1モル%である。
オキシカルボン酸単位は相当するオキシカルボン酸及びその誘導体が原料として用いられる。具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、ラクチド、グリコール酸、グリコリド、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、カプロラクトン、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらのエステル、環状単量体エステル、環状二量体エステル及びこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
具体的にそのポリエステルの態様を示すと、2官能のオキシカルボン酸として乳酸を用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルやコハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルとなる。グリコール酸を用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−グリコール酸の共重合ポリエステルである。オキシカルボン酸単位はそれ以外の相当するオキシカルボン酸及びその誘導体も原料として用いられる。具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、カプロラクトン、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸などの2官能のオキシカルボン酸を任意に変えて、所定の共重合ポリエステルが製造できる。
本発明のポリエステルには3官能以上のアルコール又はカルボン酸が共重合されていても良い。具体的にはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、プロパントリカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等の3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸、多価オキシカルボン酸が共重合されていても良い。上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは、0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、通常、0.0001モル%以上、好ましくは、0.001モル%以上、より好ましくは、0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。
共重合成分の3官能以上の多価アルコールとしてペンタエリスリトールを用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルやコハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルとなる。3官能以上の多価アルコールを任意に変えて、所望の共重合ポリエステルが製造できる。これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルも本発明のポリエステルの範疇に属する。
共重合成分の3官能のオキシカルボン酸としてリンゴ酸を用いる場合、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステルとなる。3官能のオキシカルボン酸を任意に変えて、所望の共重合ポリエステルが製造できる。
勿論、更に2官能のオキシカルボン酸との組み合わせで、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステルとなる。
本発明のポリエステルの物性特性は、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートアジペートのような脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリエステルを例に説明すると、密度が1.2〜1.3g/cm、融点は80〜120℃、引張強度30〜80Mpa、極限伸び300〜600%、引張弾性率400〜700Mpa、引張降伏点強度30〜40Mpa、衝撃試験強度5〜20kJ/m程度、ガラス転移点−45〜−25℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有する。また、特定の用途を対象とした場合には、前記のような範囲の域を超えた、任意の広範囲の特性を保有するポリエステルとすることができる。さらに各種成形手段により成形品を製造することができる程度の融点、メルトインデックス、溶融粘弾性の特性を有することができる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や添加物の種類、重合条件或いは成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
以下に詳細に本発明のポリエステルが有する代表的な物性値の範囲を開示する。
本発明のポリエステルの数平均分子量は、ポリスチレン換算で通常、下限が通常5000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは、1.5万以上であり、上限が通常50万以下、好ましくは30万以下である。
ポリエステル共重合体の組成比は、ジオール単位とジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
本発明で製造されるポリエステルの還元粘度(ηsp/c)値は、実用上十分な力学特性が得られる理由から、0.5以上であり、中でも1.0以上が好ましく、更には1.5以上が好ましく、特に2.0以上が特に好ましい。還元粘度(ηsp/c)値の上限は、ポリエステルの重合反応後の抜き出し易さならびに成形のし易さ等の操作性の観点から、通常、6.0以下、好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下である。
本発明でいう還元粘度は以下の測定条件により測定されたものである。
〔還元粘度(ηsp/c)測定条件〕
粘度管:ウベローデ粘度管
測定温度:30℃
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液
ポリエステル濃度:0.5g/dl
本発明のポリエステルは、ポリエステル(0.5g)をフェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液(容量:1dl)に室温で溶解させた際、均一に溶解するポリエステルが好ましく、ポリエステルの不溶成分が生じる場合、通常、不溶成分量は全ポリエステル中、1重量%以下、より好ましくは、0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルのカルボキシル基末端濃度は、通常、100当量/トン以下であるが、より好ましくは、その濃度は、50当量/トン以下、特に、35当量/トン以下、更には25当量/トン以下であることが好ましく、0.1当量/トン以上、好ましくは0.5当量/トン以上、特に1当量/トン以上が好ましい。この量が多くなると、ポリマーの成形時の熱安定性や比較的長期の使用・保管時の耐加水分解性が低下する傾向があり、カルボキシル基が少なすぎるポリマーは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリマーを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。末端カルボキシル基量は、通常、公知の滴定方法により算出されるが、本発明においては、得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
本発明のポリマーにおいては、特にバイオマス資源から誘導される原料を用いたポリエステルの場合、例えば、テトテヒドロフランやアセトアルデヒド等の揮発性有機成分がポリエステル中に含有されやすい傾向がある。これらのその含有量の上限は、通常、ポリエステル質量に対して、10000ppm以下、好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppb以上、好ましくは、10ppb以上、より好ましくは100ppb以上である。揮発性分量が多いと臭気の原因となり得るほか、溶融成形時の発泡や、保存安定性の悪化を招く場合がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、このようなポリマーを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利である。
本発明においては、ポリエステルの水含有量を調整してもよい。その水含有量は、下限は特に限定されないが、通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは、1ppm以上、最も好ましくは、10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、特に好ましくは、800ppm以下、最も好ましくは、500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するためポリエステルの着色やブツの生成等の劣化が引き起こされる傾向がある。一方、多すぎる場合には、保存時の加水分解によるポリエステルの劣化が顕著になる傾向がある。
水含有量(水分量)の測定方法としては、水分気化装置(三菱化学株式会社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学株式会社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定すればよい。
本発明で製造されるポリエステルは、通常、着色の少ないポリエステルであることが好ましい。本発明のポリエステルの黄色度(YI値)は、その上限が、通常、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、特に好ましくは10以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは、−10以上、より好ましくは、−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。高いYI値を示すポリエステルは、フィルムやシート等の使用用途が制限される欠点を有する。一方、低いYI値を示すポリエステルは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリマーを製造するには製造プロセスが煩雑で極めて高額の設備投資を要するなど経済的に不利な点がある。本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
また、ポリエステルの融点の下限は、通常、50℃以上あり、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、80℃以上である。また上限は、脂肪族ポリエステルの場合、140℃以下であり、好ましくは130℃以下である。
本発明のポリエステルは、土壌中の生分解速度が、全ての構成単位が石油資源の原料から得られた同じ化学構造のポリエステルの生分解速度より、1.01倍以上、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは、1.1倍以上である。
生分解速度とは、生体や微生物の持つ生理活性物質によってポリエステルが分解される速さのことであり、下記の式で示される。
すなわち、同様の条件で行った生分解性試験において石油資源の原料から得られたポリエステルAの土中での1ヶ月後の重量減少率をa(%)、ポリエステルAと同じ化学構造であり原料の一部が植物由来原料である本発明のポリエステルBの土中での1ヶ月後の重量減少量率をb(%)とすると好ましくはb/a≧1.1、より好ましくはb/a≧1.2、さらに好ましくは1.5倍以上である。
a(%)=100×(A−A)/A
:土壌に埋設前のポリエステルAの重量
:土壌に埋設1ヶ月後のポリエステルAの重量
b(%)=100×(B−B)/B
:土壌に埋設前のポリエステルBの重量
:土壌に埋設1ヶ月後のポリエステルBの重量
また、本発明の効果を損なわない限り、本発明のポリエステルに、他の共重合成分を導入することができる。他の共重合成分としては炭酸エステル成分、エーテル成分、アミド成分等を共重合しても良い。またカーボネートやジイソシアネート等で鎖延長剤を用いても良い。また末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止しても良い。
カルボジイミド化合物としては、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)が挙げられ、具体的には、モノカルボジイミド化合物として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが例示される。ポリカルボジイミド化合物としては、その重合度が、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、30以下であるものが使用され、米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619−621等に記載された方法により製造されたものが挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物の製造原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートなどが例示される。
工業的に入手可能な具体的なポリカルボジイミドとしては、カルボジライトHMV−8CA(日清紡製)、カルボジライト LA−1(日清紡製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)などが例示される。
カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
本発明のポリエステルは、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。その使用量は、通常、ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、本発明のポリエステルを生分解性樹脂として使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは、0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が、0.06モル%未満、好ましくは0.01モル%以下、より好ましくは0.001モル%以下である。カーボネート結合量やウレタン結合量は、13C NMR等のNMR測定により算出される。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルの製造は従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオールとジカルボン酸(またはその無水物)とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアナートを用いて更に高分子量化をする場合には、ジオールとジカルボン酸からなる重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーが、ジイソシアナートに由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するポリエステルが製造される。
鎖延長時の圧力は、通常、0.01MPa以上、1MPa以下、好ましくは、0.05MPa以上、0.5MPa以下、より好ましくは、0.07MPa以上、0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは、150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上であり、より好ましくは、5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは、30分以下、最も好ましくは、15分以下である。時間が短すぎる場合には、添加効果が発現しなくなる傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシラン等が例示される。
珪酸エステルは、環境保全ならびに安全性の面の理由からは、特にその使用量に制限はされないが、操作が煩雑になったり、重合速度に影響を与える可能性があるため、その使用量は少ない方が良い場合がある。従って、この含有量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、0.1 モル%以下とするのが好ましく、10 −5 モル%以下とするのが更に好ましい。
本発明においては実質上鎖延長剤を含有しないポリエステルが最も好ましい。但し、溶融テンションを高めるために、毒性の低い化合物を添加する限り、少量のパーオキサイドを添加してもよい。
このように、本発明のポリエステルとは、ポリエステル、共重合ポリエステル、および鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステル、および変性ポリエステルを包含するものをポリエステルと総称している。
本発明のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量はポリエステル質量に対して1000ppm以下である。ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は好ましくは500ppm以下、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下であり、その中でも40ppm以下が好ましく、更には30ppm以下が好ましく、20ppm以下が最も好ましい。重合体中のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は主に原料中の窒素元素に由来するものであるが、ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量が1000ppm以下であると成型時の着色や異物の発生が少なく、成型後製品の熱または光等の劣化や加水分解が起こりにくく好ましい。また、ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量が100ppm以下であるとポリエステルの着色や異物の発生が少なくて用途によってはより好ましい。その含有量がより少ないとその効果は顕著となる。共有結合された官能基以外でポリエステル中に含まれる窒素原子含有量は、0.01ppm以上が好ましい。より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上、特に好ましくは1ppm以上である。窒素原子含有量が0.01ppm未満では原料の精製の際の負荷がかかりエネルギー上不利であり、環境に対しての影響も無視できない。また窒素原子含有量が1ppm以上であると土壌における生分解速度が促進され好ましい。窒素原子含有量が上記の範囲にある原料を用いることで、通常には、重合反応において、ポリエステルの重合速度を低下させず、かつ、得られるポリエステルの生分解性を促進させることができる。
本発明者は、本発明のポリエステルのより実用的な生分解性速度、衝撃強度、引っ張り降伏強度、引っ張り破断強度、引っ張り破断伸び、或いは曲げ弾性率などの物理的強度、着色、黄色度(YI値)というような物理的な特性、大気または土壌中への有害物の発生などの性能に関して、総合的に解析および評価した結果、バイオマス資源由来という特有の事情に起因する、いわゆるポリエステル中に必然的に混入する多くの原因物質の内、窒素元素が特に生分解の促進に影響する原因物質の一つであるということを突き止めたものである。そして、本発明者らは、実用ポリエステルとして、許容できるポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が0.01ppm以上1000ppm以下であるという事実を突き止めたものである。ポリエステル原料が、バイオマス資源由来という事情からすれば、製造段階で、中和や、精製など多くの工程で、若干の窒素元素が混入することが有り得るという、特有の事情によるものである。
実用ポリエステルとして、許容できるポリエステルの分子内に共有結合されている官能基に含まれる窒素を除いたポリエステル中の窒素原子含有量が0.01ppm以上1000ppm以下にする理由をさらに詳細に説明する。このポリエステルに混入する窒素原子は、バイオマス資源由来という事情からすれば、主にバイオマス資源から誘導されるジオール単位、ジカルボン酸単位を含まれていたものがそのまま残るばかりでなく、その製造段階で、中和や、精製など多くの工程で、極微量ではあるが、若干のアンモニア、尿素、アミノ酸、タンパク質、硝酸などの窒素元素が混入することが有り得るということである。この窒素元素は、生分解においては、有利に働き、実施例1および比較例1に見るとおり、生分解特性には、有利に作用することがある。一方で、窒素原子が1000ppm以上、例えば5000ppmになれば、ポリエステルの重合に関する、重合速度、重合度を高めるにおいて支障となり、ポリエステルの材料特性の脆弱の原因となる。
しかし、本発明のポリエステルにおいて重要なことは、安全、安心、無害というような、いわゆるグリーンプラの信頼を確保するということが、重要な課題である。本発明の生分解ポリエステルが信頼を確保する為には、窒素原子の存在が微妙に影響をする。
窒素原子を0.01ppm以下というような、超微量に取り除く為には、非常に高度な技術操作を要するばかりでなく、価格において非常に高くなり、この発明を実施するにおいて、支障となる。ポリエステルに残存する窒素原子の量の影響を解析すれば、ごく微量の窒素原子が、生分解性に支障とはならず、むしろ生分解の促進に関与するようにも解することができる挙動を示す。そすれば、ポリエステルに混在する窒素原子に関して、許容できる範囲を模索することが発明の重要な解決すべき課題となる。この窒素原子を含有するポリエステルが、土壌中で生分解すれば、特に一時に多量の、または持続的に一箇所で生分解をさせると、蓄積により、土壌のpHに微妙に影響をして、蓄積すれば微生物への影響、動植物への影響、水質に対する影響というような環境汚染が進むことになることが懸念される。グリーンプラとしての、安全、安心というような信頼を失墜することにない範囲を解析した結果、通常の本発明のポリエステルの使用状態では、窒素原子が0.01〜1000ppm程度が、窒素原子の影響を受けることが少なく、pHの影響が自然に消滅する、または自然浄化で自然に回復する適量な範囲であること、およびさらに重要なことは土壌の富裕化による植物への影響を防ぐことができる許容の範囲である。
さらに重要なことは、本発明のポリエステルを嗜好品、飲料のような食品のボトル、容器、食品包装材などに使用した場合に、窒素原子を多量に含むポリエステルは、味覚、不快感、毒性などの影響に対する信頼も考慮していなければならない。グリーンプラとしての信頼性を確保することは、環境への影響ばかりでなく、人体、動植物への食品としての影響も高度に配慮したものでなければならない。勿論窒素原子を含む化合物は、微量では、人体への毒性として作用するようなものではないが、味覚、悪臭、不快感、といような感覚に影響することも懸念されるので、消費者に対する信頼を最大限に配慮しなければならない。本発明のポリエステルは、材料学的な挙動の解析ばかりでなく、その製造から、成形、流通および成形品の安全、生分解、回収、焼却というようなあらゆる場合を想定して、消費者にその信頼性を担保するために工夫された材料である。そのような諸事情を考慮すれば、ポリエステルの、重合、成形、成形品の使用、生分解、および焼却などのそのような総合的な事情を勘案すれば、窒素原子含有量の許容できる最高は1000ppm程度といえる。
窒素原子含有量は、後述するような従来公知の方法である化学発光法により測定することができる。
また、本発明においては、ポリエステル中に共有結合された官能基とは、上記のジイソシアネート化合物やカルボジイミド化合物から誘導されたウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基を指す。従って、本発明においては、ポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれる窒素原子含有量は、ポリエステル中に含まれる総窒素原子含有量から上記のウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基に帰属される窒素原子含有量を差し引いた値である。ウレタン官能基、未反応のイソシアネート官能基、尿素官能基、イソ尿素官能基ならびに未反応のカルボジイミド官能基の含有量は、13C NMRやIR等の分光学的測定やポリエステルの製造時の仕込み量から算出される。
本発明のポリエステル中に共有結合された官能基以外で含まれるポリエステル中に含まれる窒素原子含有量と原料中に含まれる窒素含有量の比は0より大きく0.9より小さいことが好ましく、より好ましくは0より大きく0.6より小さい。
反応液中の窒素原子の含有量を制御する方法は、製造されるポリエステルが必要な性質を有する限り制限されないが、例としては、原料の精製により原料に含まれる窒素原子含有物を除く方法、重合中に窒素原子含有物を除去する方法などが挙げられる。
ポリエステルの重合工程で窒素原子含有物が除かれることが、原料中の窒素原子含有物を除くための精製にかかる負荷を減らすために好ましい。反応液中の窒素含有化合物の量が制御されるべき範囲は、目的とするポリエステルの性質や重合の条件などによって異なるが、通常には、窒素原子量として、1000ppm以下、好ましくは900ppm以下、より好ましくは800ppm以下である。
上述の方法で得られたポリエステルは、従来公知の各種の樹脂とブレンド(混練)することにより、ポリエステル組成物が得られる。このような樹脂としては、従来公知の各種の汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂を用いることができ、好ましくは生分解性高分子や汎用の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、2種類以上ブレンドして用いてもよい。各種樹脂はバイオマス資源から得られる樹脂であってもよい。
本発明のポリエステルは公知の各種の樹脂とブレンド(混練)により、任意の広範囲の特性を保有するポリエステル組成物とすることができる。例えば、ブレンド比によりその物性値は大きく変動するため特には限定されないが、後述するポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とをブレンドさせた系では、引張強度30〜60Mpa、極限伸び3〜400%、引張弾性率500〜3000Mpa、引張降伏点強度30〜50Mpa、曲げ強度30〜100Mpa、曲げ弾性率600〜4000Mpa、衝撃試験強度5〜20kJ/m程度というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。同様に、軟質系の芳香族系ポリエステルとのブレンド系では、引張強度30〜70Mpa、極限伸び400〜800%、引張降伏点強度10〜30Mpaというような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。更には、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、PET、ポリスチレン等の汎用樹脂との組み合わせにより密度が1〜1.4g/cm、融点は150〜270℃、引張強度30〜80Mpa、極限伸び100〜600%、ガラス転移点−85〜150℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や各種樹脂の種類、ブレンド量比や成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂としては、後述の石油由来のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドの汎用の熱可塑性樹脂を任意に選択できる。この場合には、バイオマス由来のポリエステルとの相溶性を考慮する必要がある。さらに、本発明のバイオマス由来のポリエステルの性質を適正に維持するためには、配合量も重要になる。通常は、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜20重量%であり、汎用の可塑性樹脂が0.1〜80重量%程度のブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性の特性などを維持することを目的とする場合には、汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50〜1重量%、目的にもよるが、好ましくは30〜3重量%程度とすると生分解性特性を維持しながら所定の物性が得られる。
生分解性を有する高分子としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、多糖類、その他の生分解性樹脂が挙げられる。
これらの生分解性高分子のブレンド量は、単に生分解という目的では、両者がいずれも生分解性樹脂であるという事情からすれば、本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、生分解性高分子が0.1〜99.9重量%程度ブレンドしても適正に生分解性特性が発現するので、最も適正な特性の発現が可能な組成物である。しかし、本発明のバイオマス由来のポリエステルの観点からは、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜40重量%であり、生分解性高分子が0.1〜60重量%程度のブレンドが好ましく、特に、生分解性高分子を5〜50重量%程度のブレンドがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する天然樹脂、多糖類としては、酢酸セルロース、キトサン、セルロース、クロマンインデン、ロジン、リグニン、カゼイン等が列挙できる。この種の天然樹脂、多糖類は、本来自然の状態で水、空気の存在で腐敗して土壌に帰るか、または肥料となる性質を有するものである。本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、天然樹脂、多糖類が0.1〜99.9重量%程度ブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性のみならず、本来のプラスチックに求められる機械的特性、耐水性、耐候性などの諸特性などを維持するためには、天然樹脂、多糖類を5〜50重量%程度ブレンドするのがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂、多糖類との相溶性の問題もある。これらを解決すれば、本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂の組成物からなる材料は、使用済後の材料を投棄すれば、早期生分解消失はないにしても、天然樹脂、多糖類は腐敗して、土壌改良剤、堆肥としても有効である。この種のポリエステル組成物は、積極的に自然に、特に土壌に投棄することが推奨される場合があり、まさに、グリーンプラ製品としての有意性を高めることになる。以下に各樹脂の具体的な組成物を開示するが、特に限定されるものではない。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を必須成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、トリエチレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、ジプロピレングリコール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル単位、1,6−へキサンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、ポリテトラメチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位の具体例としては、例えば、コハク酸単位、シュウ酸単位、マロン酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族オキシカルボン酸系樹脂を構成する脂肪族オキシカルボン酸単位の具体例としては、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、3−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ吉草酸単位、5−ヒドロキシ吉草酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位を挙げることができる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には、乳酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位等のオキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載のオキシカルボン酸単位は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には3官能以上のアルコール又はカルボン酸が共重合されていても良い。具体的にはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、プロパントリカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等の3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸、多価オキシカルボン酸が共重合されていても良い。上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは、0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、通常、0.0001モル%以上、好ましくは、0.001モル%以上、より好ましくは、0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。また、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂には、1,4−ブタンジオール単位、コハク酸単位、アジピン酸単位等の脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位、トリメチロールプロパン単位、グリセリン単位、ペンタエリスリトール単位、プロパントリカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位、酒石酸単位等の3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価オキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載の単位の量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。
また、上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成するジオール(多価アルコール)単位、ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、及びオキシカルボン酸単位は、脂肪族系が主成分であるが、生分解性を損なわない範囲で、少量の他の成分、例えば、芳香族ジオール(多価アルコール)単位、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、芳香族オキシカルボン酸単位等の芳香族系化合物単位を含有してもよい。芳香族ジオール(多価アルコール)単位の具体例としては、ビスフェノールA単位、1,4−ベンゼンジメタノール単位等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位の具体例としては、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、トリメリット酸単位、ピロリメリット酸単位、ベンゾフェノンテトラカルボン酸単位、フェニルコハク酸単位、1,4−フェニレンジ酢酸単位等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸単位の具体例としては、ヒドロキシ安息香酸単位が挙げられる。これらの芳香族系化合物単位の導入量は、全ポリマー中50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂の製造方法は、公知公用の方法を採用することが出来、特に限定されない。また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族ポリエステル系樹脂には、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合、ケトン結合等が導入されていても良い。また脂肪族ポリエステルとしては、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物、過酸化物等を用いて分子量を高めたり、架橋させたものを用いてもよい。さらに末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止していても良い。
多糖類としては、セルロース、酢酸セルロースの様な変性セルロース、キチン、キトサン、澱粉、変性澱粉が挙げられるその他の分解性樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
汎用の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム等のエラストマー、ナイロン6,6、ナイロン6等のポリアミド系樹脂の他、ポリ酢酸ビニル、メタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン等が挙げられる。また各種相溶化剤を併用して、諸特性を調製することもできる。
ポリエステル組成物における本発明のポリエステルに対する上記記載の樹脂の混合比率(重量比)は、上記に詳述しているが、各種樹脂の共通した一般的な配合量を総称として明示すれば、本発明のポリエステル/樹脂が、99.9/0.1以上0.1/99.9以下であることが好ましく、99/1以上 1/99以下であることがより好ましく、最も好ましくは、98/2以上2/98以下である。
また、従来公知の各種添加剤を配合して組成物にすることも出来る。
添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤などの樹脂用添加剤が挙げられる。これらの添加量は、全組成物中、通常0.01〜5重量%である。これ等は一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
また、従来公知の各種フィラーを配合して組成物にすることも出来る。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤なども添加することができる。そのフィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これ等は一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物中、通常1〜80重量%であり、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%である。無機系フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持ちものもあり、これらの無機系フィラーを特に多量に含むバイオマス由来のポリエステル組成物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機系フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能するので、グリーンプラとしての有意性を高める。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加したポリエステルを成形品とすることは、本発明のポリエステルの有用性を非常に高めることになる。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これ等は一種または二種以上の混合物として使用することも出来る。有機系フィラーの添加量は、全組成物中、通常、0.01〜70重量%である。特にこの有機系フィラー系の充填剤は、ポリエステル組成物の生分解後に、その有機系フィラーが、土壌に残り、土壌改良剤、堆肥としての役割も果すので、グリーンプラとしての役割を高くする。
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することも出来る。
本発明に係るポリエステルおよびその組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することが出来る。例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、シート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形[真空成形、圧空成形]、塑性加工)、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法、等)等が挙げられる。
また、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
このような成形法により、単層フィルム、多層フィルム、延伸フィルム、収縮フィルム、ラミネートフィルム、単層シート、多層シート、延伸シート、パイプ、電線/ケーブル、モノフィラメント、マルチフィラメント、各種不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、延伸テープやバンド、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体などの各種成形品が得られる。また得られる成形品は、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム等の各種フィルム、化粧品容器、洗剤容器、食品容器、漂白剤容器等の各種容器類、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、緩衝材、医療材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料などの用途への使用が期待される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例における特性値は、次の方法により測定した。また、本発明おけるppmとは、質量ppmである。
希薄溶液粘度(還元粘度):ポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t)/t・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
窒素原子含有量:試料数10mgを石英ボートへ採取して、全窒素分析計(三菱化学社製TN−10型)を用いて試料を燃焼し、化学発光法により決定した。
末端カルボキシル基量:得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1NNaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
YI値:JIS K7105の方法に基づいて測定した。
参考例1
<遺伝子破壊用ベクターの構築>
(A)枯草菌ゲノムDNAの抽出
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214)を対数増殖期後期まで培養し、菌体を集めた。得られた菌体を10mg/mLの濃度にリゾチームを含む10mM NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)PCRによるSacB遺伝子の増幅およびクローニング
枯草菌SacB遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、既に報告されている該遺伝子の塩基配列(GenBank Database AccessionNo.X02730)を基に設計した合成DNA(配列番号1および配列番号2)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で2分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクター(pBluescriptII:STRATEGENE製)のEcoRV部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、次に50μg/mLアンピシリンおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。SacB遺伝子が大腸菌内で機能的に発現する株は、ショ糖含有培地にて生育不能となるはずである。得られたプラスミドDNAを制限酵素SalIおよびPstIで切断することにより、約2kbの挿入断片が認められ、該プラスミドをpBS/SacBと命名した。
(C)クロラムフェニコール耐性SacBベクターの構築
大腸菌プラスミドベクターpHSG396(宝酒造:クロラムフェニコール耐性マーカー)500ngに制限酵素PshBI10ユニットを37℃で一時間反応させた後、フェノール/クロロフォルム抽出およびエタノール沈殿により回収した。クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝酒造製)により両末端を平滑化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカー(宝酒造)を連結、環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたクローンから常法によりプラスミドDNAを調製し、制限酵素MluIの切断部位を有するクローンを選抜し、pHSG396Mluと命名した。
一方、上記(B)にて構築したpBS/SacBを制限酵素SalIおよびPstIで切断した後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化した。これにライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカーを連結したのち、0.75%アガロースゲル電気泳動によりSacB遺伝子を含む約2.0kbのDNA断片を分離、回収した。このSacB遺伝子断片を、制限酵素MluI切断後、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase Calf intestine:宝酒造)にて末端を脱リン酸化したpHSG396Mlu断片とライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。こうして得られたコロニーを、次に34μg/mLクロラムフェニコールおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法によりプラスミドDNAを精製した。こうして得られたプラスミドDNAをMluI切断により解析した結果、約2.0kbの挿入断片を持つことが確認され、これをpCMB1と命名した。
(D)カナマイシン耐性遺伝子の取得
カナマイシン耐性遺伝子の取得は、大腸菌プラスミドベクターpHSG299(宝酒造:カナマイシン耐性マーカー)のDNAを鋳型とし、配列番号3および配列番号4で示した合成DNAをプライマーとしたPCR法によって行った。
反応液組成:鋳型DNA1ng、PyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造) 0.1μL、1倍濃度添付バッファー、0.5μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、62℃で15秒、72℃で1分20秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.1kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した。
(E)カナマイシン耐性SacBベクターの構築
上記(C)で構築したpCMB1を制限酵素Van91IおよびScaIで切断して得られた約3.5kbのDNA断片を0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。これを上記(D)で調製したカナマイシン耐性遺伝子と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
このカナマイシン含有培地上で生育した株は、ショ糖含有培地にて生育不能であることが確認された。また、同株から調製したプラスミドDNAは、制限酵素HindIII消化により354、473、1807、1997bpの断片を生じたことから、図1に示した構造に間違いがないと判断し、該プラスミドをpKMB1と命名した。
参考例2
<LDH遺伝子破壊株の作製>
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株ゲノムDNAの抽出
A培地[尿素 2g、(NHSO 7g、KHPO 0.5g、KHPO0.5g、MgSO・7HO 0.5g、FeSO・7HO 6mg、MnSO・4−5HO6mg、ビオチン 200μg、チアミン 100μg、イーストエキストラクト 1g、カザミノ酸 1g、グルコース 20g、蒸留水1Lに溶解]10mLに、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体から上記参考例1の(A)に示す方法にてゲノムDNAを調製した。
(B)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
MJ233株ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、特開平11−206385号公報に記載の該遺伝子の塩基配列を基に設計した合成DNA(配列番号5および配列番号6)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA 1μL、TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.2μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.95kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約1.0kbの挿入断片が認められ、これをpGEMT/CgLDHと命名した。
(C)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊用プラスミドの構築
上記(B)で作製したpGEMT/CgLDHを制限酵素EcoRVおよびXbaIで切断することにより約0.25kbからなるラクテートデヒドロゲナーゼのコーディング領域を切り出した。残った約3.7kbのDNA断片の末端をクレノウフラグメントにて平滑化し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたクローンを選抜し、これをpGEMT/ΔLDHと命名した。
次に、上記pGEMT/ΔLDHを制限酵素SacIおよびSphIにて切断して生じる約0.75kbのDNA断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収し、欠損領域を含むラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子断片を調製した。このDNA断片を、制限酵素SacIおよびSphIにて切断した参考例1にて構築したpKMB1と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpKMB1/ΔLDHと命名した(図2)。
(D)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株由来ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株の作製
ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pKMB1/ΔLDHを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した大腸菌JM110株から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株の形質転換は、電気パルス法(Res.Microbiol., Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB1/ΔLDHがブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組み換え株をカナマイシン50μg/mLを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株約10個得た。
この様にして得られた株の中には、そのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子がpKMB1/ΔLDHに由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて液体培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号7および配列番号8)を用いて分析すると、野生型では720bp、欠失領域を持つ変異型では471bpのDNA断片を認めるはずである。
上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、変異型遺伝子のみを有する株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDHと命名した。
(E)ラクテートデヒドロゲナーゼ活性の確認
上記(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株をA培地に植菌し、30℃で15時間好気的に振とう培養した。得られた培養物を遠心分離(3,000×g、4℃、20分間)して菌体を回収後、ナトリウム−リン酸緩衝液[組成:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)]で洗浄した。
次いで、洗浄菌体0.5g(湿重量)を上記ナトリウム−リン酸緩衝液2mLに懸濁し、氷冷下で超音波破砕器(ブランソン社製)にかけ菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000×g,4℃,30分間)し、上清を粗酵素液として得た。対照として、ブレビバクテリウム・フラバム MJ233−ES株の粗酵素液を同様に調製し、以下の活性測定に供した。
ラクテートデヒドロゲナーゼ酵素活性の確認は、両粗酵素液について、ピルビン酸を基質とした乳酸の生成に伴い、補酵素NADHがNADに酸化されるのを、340nmの吸光度変化として測定した[L. Kanarek and R. L. Hill, J.Biol. Chem. 239, 4202 (1964)]。反応は、50mM カリウム−リン酸緩衝液(pH7.2)、10mM ピルビン酸、0.4mMNADH存在下、37℃にて行った。その結果、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性に対し、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性は、10分の1以下であった。
参考例3
<コリネ型細菌発現ベクターの構築>
(A)コリネ型細菌用プロモーター断片の調製
コリネ型細菌で強力なプロモーター活性を有することが報告された特開平7−95891号公報の配列番号4に記載のDNA断片(以降TZ4プロモーターと称する)を利用することとした。本プロモーター断片の取得は、参考例2の(A)で調製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233ゲノムDNAを鋳型とし、特開平7−95891号公報の配列番号4に記載の配列を基に設計した合成DNA(配列番号9および配列番号10)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、2.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.25kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5’末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクターpUC19(宝酒造)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成した6クローンについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定した。これ中でTZ4プロモーターがpUC19のlacプロモーターと逆方向に転写活性を有するように挿入されたクローンを選抜し、これをpUC/TZ4と命名した。
次に、pUC/TZ4を制限酵素BamHIおよびPstIで切断して調製したDNA断片に、5’末端がリン酸化された合成DNA(配列番号11および配列番号12)から成り、両末端にそれぞれBamHIとPstIに対する粘着末端を有するDNAリンカーを混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。本DNAリンカーには、リボソーム結合配列(AGGAGG)およびその下流に配したクローニングサイト(上流から順に、PacI、NotI、ApaI)が含まれている。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、これをpUC/TZ4−SDと命名した。
この様にして構築したpUC/TZ4−SDを制限酵素PstIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することにより生じた約0.3kbのプロモーター断片を、2.0%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
(B)コリネ型細菌発現ベクターの構築
コリネ型細菌にて安定的に自立複製可能なプラスミドとして、特開平12−93183記載のpHSG298par−repを利用する。本プラスミドは、ブレビバクテリウム・スタチオニスIFO12144株が保有する天然型プラスミドpBY503の複製領域および安定化機能を有する領域と大腸菌ベクターpHSG298(宝酒造)に由来するカナマイシン耐性遺伝子および大腸菌の複製領域を備える。pHSG298par−repを制限酵素SseIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することによって調製したDNAを、上記(A)で調製したTZ4プロモーター断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、該プラスミドをpTZ4と命名した(図3に構築手順を示した)。
参考例4
<ピルベートカルボキシラーゼ活性増強株の作製>
(A)ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得は、参考例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号13および配列番号14)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で4分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は10分とした。PCR反応終了後、Takara Ex Taq(宝酒造)を0.1μL加え、さらに72℃で30分保温した。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められ、これをpGEM/MJPCと命名した。
pGEM/MJPCの挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデル377XL)およびビックダイターミネーターサイクルシークエンスキットver3を用いて決定した。その結果得られたDNA塩基配列および推測されるアミノ酸配列を配列番号15に記載する。また、アミノ酸配列のみを配列番号16に記載する。本アミノ酸配列はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株由来のそれと極めて高い相同性(99.4%)を示すことから、pGEM/MJPCの挿入断片がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来のピルベートカルボキシラーゼ遺伝子であると断定した。
(B)ピルベートカルボキシラーゼ活性増強用プラスミドの構築
上記(A)で作製したpGEM/MJPCを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより生じる約3.7kbからなるピルベートカルボキシラーゼ遺伝子断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
このDNA断片を、制限酵素PacIおよびApaIにて切断した、参考例3にて構築したpTZ4と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpMJPC1と命名した(図4)。
(C)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株内で複製可能なpMJPC1による形質転換用のプラスミドDNAは、上記(B)で形質転換した大腸菌(DH5α株)から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換は、電気パルス法(Res. Microbiol., Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株から、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを抽出、制限酵素切断による解析を行った結果、同株がpMJPC1を保持していることを確認し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株と命名した。
(D)ピルベートカルボキシラーゼ酵素活性
上記(C)で得られた形質転換株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株をグルコース2%、カナマイシン25mg/Lを含むA培地100mlで終夜培養を行った。得られた菌体を集菌後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)50mlで洗浄し、同組成の緩衝液20mlに再度懸濁させた。懸濁液をSONIFIER350(BRANSON製)で破砕し、遠心分離した上清を無細胞抽出液とした。得られた無細胞抽出液を用いピルベートカルボキシラーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)、 0.1mg/10mlビオチン、5mM 塩化マグネシウム、50mM 炭酸水素ナトリウム、5mM ピルビン酸ナトリウム 、5mM アデノシン三リン酸ナトリウム、0.32 mM NADH、20units/1.5mlリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(WAKO製、酵母由来)及び酵素を含む反応液中で25℃にて反応させることにより行った。1Uは1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量とした。ピルベートカルボキシラーゼを発現させた無細胞抽出液における比活性は0.2U/mg蛋白質であった。なお親株であるMJ233/△LDH株をA培地を用いて同様に培養した菌体では、本活性測定方法によりピルベートカルボキシラーゼ活性は検出されなかった。
参考例5
<発酵液の調製>
尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、及び蒸留水:1000mLの培地100mLを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL、無菌濾過した5%カナマイシン水溶液を50μL添加し、参考例4(C)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株を接種して24時間30℃にて種培養した。
尿素:12g、硫酸アンモニウム:42g、リン酸1カリウム:1.5g、リン酸2カリウム1.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、酵母エキス3g、カザミノ酸3g、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):1mL及び蒸留水:2500mLの培地を5Lの発酵糟に入れ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した12%グルコース水溶液を500mL添加し、これに前述の種培養液を全量加えて、30℃に保温した。通気は毎分500mL、攪拌は毎分500回転で本培養を行った。12時間後にグルコースがほぼ消費されていた。
硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):5ml及び蒸留水:1.5Lの培地を3Lの三角フラスコに入れ、120℃、20分加熱滅菌した。室温まで冷やした後、上記の本培養により得られた培養液を10000g、5分の遠心分離により集菌した菌体を添加して、O.D.(660nm)が60になるように再懸濁した。この懸濁液1.5Lとあらかじめ滅菌した20%グルコース溶液1.5Lを5Lのジャーファーメンターに入れて混合し、35℃に保温した。pHは2M炭酸アンモニウムを用いて7.6に保ち、毎分500mLで通気、毎分300回転で攪拌しながら反応を行った。反応開始後約50時間でグルコースがほぼ消費されていた。コハク酸が57g/L蓄積されていた。この発酵液を10000g、5分間の遠心分離、限外濾過(日東電工(株)製 NTU−3000−C1R)により菌体と上清に分離した。
以上の操作を30回行うことにより、コハク酸発酵液上清を103L得ることが出来た。
<コハク酸醗酵液からの琥珀酸精製>
上記のようにして得られたコハク酸発酵液上清を103L(琥珀酸含有量5.87kg)を、減圧しながらジャケット付き攪拌槽にて濃縮し、琥珀酸の濃度が32.9%、アンモニア11.9%の濃縮液:17.8kg(計算値)を得た。これに酢酸(ダイセル化学社製)を8.58kg加えて30℃まで冷却し、更にメタノール(キシダ化学社製)を4.0kg加えて15℃まで冷却し1時間攪拌した後、20℃にて4時間攪拌を継続した。
結晶が析出しており、これを遠心ろ過器にてろ過を行い、琥珀酸を74.6%、酢酸3.5%、アンモニア12.2%を含有する結晶4.95kgを得た。
酢酸11.3kgに得られた結晶4.9kgをいれ、85℃にて溶解し、直ちに20℃まで冷却した。既に結晶は析出していたが、そのまま更に3時間攪拌を続けた後、遠心ろ過器にてろ過を行い、琥珀酸87.9%、酢酸8.4%、アンモニア0.6%を含有する結晶2.44kgを得た。
5℃に冷やした脱塩水3.5Lにて得られた結晶を懸洗し、これを遠心ろ過器にてろ過すると、琥珀酸90%、酢酸1.7%、アンモニア0.05%(およそ500ppm)含有する2.08kgの結晶が得られた。
この粗琥珀酸結晶2.0kgを28.5Lの脱塩水に溶解し、1Lのイオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)をつめた塔にSV=2にて通液し、約33Lの処理液を得た。これを減圧したロータリーエバポレータに連続フィードしながら、およそ5.2Lまで濃縮した。この段階で既に結晶が析出していた。更に、5℃に冷却し、2時間攪拌を継続した後、これをろ過すると、琥珀酸96.7%の結晶1.76kgを得た。これを真空乾燥機にて乾燥すると1.68kgの琥珀酸を得る事が出来た。
<1,4−ブタンジオールの製造>
上記のような方法で得られたバイオマス資源由来コハク酸を用いて、公知の方法で1,4−ブタンジオールを得た。そのような1,4−ブタンジオールは、例えば以下の方法で得られた。
バイオマス資源由来コハク酸100重量部、メタノール317重量部ならびに濃硫酸(97%)2重量部の混合液を、還流下で2時間攪拌させた。反応液を冷却後、炭酸水素ナトリウム3.6重量部を添加して60℃で30分間反応液を攪拌させた。常圧下での蒸留ならびにその蒸留残をろ過後、減圧蒸留することによりコハク酸ジメチル(収率93%)を得た。得られたコハク酸ジメチル100重量部をCuO−ZnO触媒(ズードケミー社製、T−8402)15重量部存在下、仕込みコハク酸ジメチルに対して約4倍の体積容量を持つオートクレーブ(ハステロイC)を用いて水素5MPa加圧下で攪拌させながら1時間かけて230℃まで昇温させた。その後、230℃で15MPaの水素加圧下9時間反応液を攪拌させた。反応液を冷却後、脱ガスを行った。反応液からろ過により触媒を除去した。ろ液を減圧蒸留することにより精製1,4−ブタンジオールを得た(収率81%)。製造された精製1,4−ブタンジオール中には窒素原子が0.7ppm含まれたが、硫黄原子は含まれていなかった。また、1,4−ブタンジオール中には酸化生成物である2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフランが1000ppm含有されていた。
本発明においては、還元粘度は以下の測定条件により測定した。
〔還元粘度(ηsp/c)測定条件〕
粘度管:ウベローデ粘度管
測定温度:30℃
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液
ポリエステル濃度:0.5g/dl
<窒素原子含有量 5ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステルの製造>
実施例1
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、窒素原子含有量 5ppmのバイオマス資源由来コハク酸100重量部(YI=2.5)、三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール88.5重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で1.8時間反応を行い重合を終了し、白色のポリエステル(黄色度YIは11)を得た。
得られたポリエステル中の窒素原子含有量は、2ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は26当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
得られたポリエステルを、インフレ成形機を用いて成形温度160℃、ブロー比2.5、厚み20μmとしフィルム成形を行った。成形したフィルムを5cm×18cmの大きさに切り取り、土壌に埋設した。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のフィルムの重量減少率を測定し、生分解試験を行った。結果を表1に示す。
実施例2
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、実施例1の窒素原子含有量 5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、旭化成(株)社製工業グレードのアジピン酸32重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール111.6重量部、リンゴ酸0.48重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液7.2重量部を仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で1.6時間反応を行い重合を終了し、実施例1と同様の白色のポリエステル(黄色度YIは13)を得た。
得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は22当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例3
原料として、実施例1の窒素原子含有量 5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール81.4重量部、エチレングリコール6.3重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を使用した以外は実施例2と同様の重縮合反応条件によって実施例2と同様の白いポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.4。末端カルボキシル基量は21当量/トン。)。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例4
原料として、実施例1の窒素原子含有量 5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール81.4重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール12.3重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を使用した以外は実施例2と同様の重縮合反応条件によって実施例2と同様の白いポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.6。末端カルボキシル基量は17当量/トン。)。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3.8時間かかった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例5
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、実施例1の窒素原子含有量 5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール80.4重量部ならびにリンゴ酸0.37重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、0.11重量部のテトラ−n−ブチルチタネートを0.4重量部のブタノールに希釈した触媒液を反応系へ添加後、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で2時間反応を行い重合を終了し、実施例1と同様の白色のポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.5。末端カルボキシル基量は11当量/トン。)。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例6
実施例1において、リンゴ酸0.37重量部の代わりにリンゴ酸0.74重量部を仕込んだ以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は1.1時間であった。得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は3.2、末端カルボキシル基量は63当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温でほぼ均一に溶解したが、少量の不溶物が観測された。
<窒素原子含有量 12ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例7
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子12ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは7)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは22)中の窒素原子含量は、3.6ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.3、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子含有量 19ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例8
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子19ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2.4時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは18)中の窒素原子含量は、14ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子含有量 115ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例9
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子115ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2.9時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは23)中の窒素原子含量は、19ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子含有量 180ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例10
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子180ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2.6時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは37)中の窒素原子含量は、22ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.6、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子含有量 230ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例11
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子230ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは11)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2.6時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは39)中の窒素原子含量は、27ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子含有量 660ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例12
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子660ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが得られたポリエステルはこげ茶に着色した(黄色度YIは60以上)。
得られたこげ茶のポリエステル中の窒素原子含量は、54ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は0.7、末端カルボキシル基量は139当量/トンあった。得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で溶解させようと試みたが、かなりの量の溶け残りが観測された。
<窒素原子含有量 5ppmのバイオマス資源由来コハク酸と窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源由来1,4−ブタンジオールを用いたポリエステルを用いたポリエステル>
実施例13
原料として、実施例1の三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール88.5重量部の代わりに窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源から誘導した1,4−ブタンジオール88.5重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは−1)中の窒素原子含量は、2.1ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は21当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子を含まない石油由来コハク酸と窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源由来1,4−ブタンジオールを用いたポリエステル>
実施例14
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子を含まない石油由来コハク酸(川崎化成(株)社製工業グレード(黄色度YIは2)100重量部に、三菱化学社製工業グレードの1,4−ブタンジオール88.5重量部の代わりに窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源から誘導した1,4−ブタンジオール88.5重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3.4時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは7)中の窒素原子含量は、0.5ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は28当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<窒素原子を含まない石油由来ジメチルテレフタレートと窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源由来1,4−ブタンジオールを用いたポリエステル>
実施例15
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、ジメチルテレフタレート132重量部、窒素原子0.7ppmを含有するバイオマス資源から誘導した1,4−ブタンジオール74重量部ならびに触媒としてテトラブチルチタネートを予め6重量%溶解させた1,4−ブタンジオール溶液1.7重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら150℃まで加温後、215℃に昇温させながら3時間反応させた。次に、245℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で1.5時間反応を行い重合を終了し、白色のポリエステル(黄色度YIは0.4)を得た。
得られたポリエステル中の窒素原子含有量は、0.4ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.2、末端カルボキシル基量は21当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
本実施例の検討において、ポリエステル中の窒素原子の含有量が高いほど生分解性が高い傾向があることが見出された。一方、窒素原子の含有量が多いほどポリエステルの着色や重合阻害が著しくなる傾向があることが判る。また、窒素原子の含有量が多いほど、一部ゲル化により生成したと考えられる有機溶媒に対する不溶物が多くなる傾向があり、これらが製品中へ混入されると製品の景観を損ねたり、物性の低下が引き起こされる。
比較例1
実施例1において窒素原子含有量5ppmの発酵法で製造したコハク酸に替えて、石油由来の市販品原料を用いてポリエステルの製造を行った。コハク酸は川崎化成(株)社製工業グレード(黄色度YIは2)を使用し、1,4−ブタンジオールは三菱化学(株)社製工業グレードを使用した以外は実施例1と同様の方法で実施例1と同様のポリエステルを製造した。製造されたポリエステル中には窒素原子は検出されなかった。得られたポリエステルを、実施例1と同様な試験を行った。結果を表1に示す。
<土壌中での生分解性試験>
上記の方法で製造したフィルムを5cm×18cmの大きさに切り取り、土壌に埋設した。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のフィルムの重量減少率を測定した。結果を表に示す。
比較例2
原料として、実施例1の窒素原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに窒素原子5000ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが、ポリエステルの粘度の上昇は観測されなかった。ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は0.3であり、窒素原子の含有量は1200ppmであった。得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で溶解させようと試みたが、かなりの量の溶け残りが観測された。
表1より、発酵系コハク酸を用いたポリエステルは、土壌中での生分解速度が速いことが確認された。
参考例6
以下に参考例として、本発明のポリエステルおよび各種組成物の成形例および諸物性例を示す。
<組成物の調製>
表2に示す配合割合(重量%)で組成物1および2を調製した。組成物の調製は、テクノベル社製二軸押し出し機(KZW15)を用い、混練温度190℃で実施した。
(註)タルク:富士タルク工業(株)製「PKP−53S」
エコフレックス:ビーエーエスエフジャパン製
また表3に示す配合割合(重量%)で組成物3〜5を調製した。組成物の調製は、東洋精機社製ラボプラストミルを用い、混練温度190℃で実施した。
<射出成形>
表4に示すサンプルをCSI社製卓上射出成形機、ミニマックス成形機を用いて射出成形を行った。成形温度200℃とした。物性評価結果も併せて表4に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。
<シート成形>
Tダイ成形機を用い、表5に示すサンプルのシート成形を行った。成形温度200℃、ロール温度30℃、シート厚みは500μmとした。物性評価結果も併せて表5に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。
<フィルム成形>
表6に示すサンプルを用いてインフレ成形を行った。成形温度160℃、ブロー比2.5、フィルムの厚みは20μmとした。物性評価結果も併せて表6に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。
<発泡成形>
本発明のポリエステルを190℃、10MPaでプレス成形し、厚み1mmのシートを作製した。得られたシートを固体状態において,バルブ付き圧力容器内に仕込み、圧力容器内の温度を、外部熱源を用いて100℃まで加熱すると同時に圧力容器内に二酸化炭素を仕込んだ。この際ポンプで加圧することにより15MPaまで昇圧した。その後2時間,100℃の一定温度,15MPaの一定圧力を保持し、2時間後、圧力容器のバルブを全開放して,急速に圧力容器内の圧力を解放することで発泡体を得た。得られた発泡体は水中で押しても泡が出てこない、独立気泡率の高いものであった。
本発明のポリエステルの誕生およびその背景を詳述すれば、地上の、大気圏内における、大きなサイクルにおいて、本発明のポリエステルの誕生は、地球環境の保全、省資源、公害防止、美的環境保護、新たな技術開発の指向といった多くの観点からそのポリエステルの存在を評価することができる。
本発明のポリエステルの特徴は、従来の地下の化石燃料依存型、例えば石油資源の依存型のポリエステルに対比して、その地球環境におけるその存在意義において、従来型の認識とは全く異なる理由が成立する。
特に、現在の大気圏という地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオール単位またはジカルボン酸単位をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。また、人為的に植物増産を計画的に任意にできるために、植物原料生産が各地、各国に分散して多様化できるので、原料供給にリスクが少なく安定して供給ができる。さらに、モノマーの入手、ポリエステルの合成および生分解という、ポリエステルの原料の段階から使用済みの廃棄という最終段階に至るサイクルが、専ら大気圏下という地球環境の自然プロセスに準拠したものである故に、本発明のポリエステルは信頼性ならびに安心感を与えるサイクルとなる。これは、ポリエステルの技術開発、産業の発展および消費社会の拡充において、無視することができない、重要な背景であることが明らかである。
しかし、本発明のポリエステルの誕生に貢献する主な理由は、技術進歩に立脚した時代の要請ともいえるその背景にあるといえる。いわゆる炭酸ガスによる温室効果を含む地球環境の悪化への対策、石油資源の浪費や枯渇という危機感への対策、さらには非常に重要な、近年発酵技術のようなバイオテクノロジーの著しい発達というその周辺技術の進歩がそれを可能としたものである。まず、大気圏内の植生に依存する手法は、原料である植物の生産において、多量の二酸化炭素を吸収することであり、この吸収量をAbsとする。植物の加工、発酵、処置などの段階で若干の二酸化炭素、熱エネルギーを放出するが、ジオール単位またはジカルボン酸単位が容易に製造することができる。さらに、重合された本発明のポリエステルが地中に埋め立てた場合、水中に放置した場合、または海水中に放置した場合に、微生物などによる分解で、実質的に水と二酸化炭素を放出することになる。この放出量をRelとすると、このAbsとRelの較差が非常に少ないから、この意味で、大気圏における二酸化炭素の物質収支が比較的僅差になるのではないかということである。このように、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支が均衡するばかりでなく、エネルギー収支においても有利と考えられる。特に植生依存型指向の本発明は、従来指向の化石燃料依存型のように、大気中に新たな炭酸ガスを増加させる問題が極力抑えられる。
しかも副次効果として、本発明のポリエステル材料は、物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、植生原料から消失にいたるプロセスは、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する特徴がある。これは、今後のポリエステルというプラスチックに対して、その製造プロセスにおいて、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな循環型の視点のポリエステル製造プロセスを提供するものである。これは時代の要請および進歩に即応した、いわゆるプラスチック産業に対する認識を本質的に変革させるものである。まさに、近年バイオテクノロジーの著しい発達に呼応した、新たな第2ステージのプラスチック時代の始まりともいえるほどの変革とも評価できるといえる。この本発明のポリエステルは潜在的な評価および価値を非常に高めるものであるから、まさに、全く新たな視点から、プラスチック材料の代表的なポリエステルのさらなる利用の拡大、発展および消費に著しく寄与するものである。
本発明のポリエステルは、優れた生分解性の機能を有するが、積極的に地中などに投棄することだけを目的として開発した材料ではない。環境に支障なく、土壌中に投棄が可能であるということの意味もある。例えば移植用苗ポットのような農林水産材料、仮土嚢止めのような土木建築資材のように、回収が困難又は支障となる場合に、放置すれば土にかえるという意味も含むものである。本発明のポリエステルは生分解性特性を有するとはいえ、現在の消費社会において構築されている、分別回収により廃プラとして回収して、再度成形材料に使用することができるという性質も保有する。勿論、回収ポリエステルを再度成形材料として用いることにより成形した成形品を土壌中に投棄しても、最初の成形品同様に生分解性の機能は発現する。さらに、分別回収のシステムで回収して、焼却する場合に、有害物発生、悪臭を発生することなく、燃料として用いて、熱エネルギー源として使用することもできる。本発明のポリエステルは、さらに消費が増大しても、二酸化炭素の増加、大気汚染が進行することに対する対策もできる。
pKMB1の構築の概略を示す。 pKMB1/ΔLDHの構築の概略を示す。 pTZベクターの構築の概略を示す。 pMJPC1の構築の概略を示す。

Claims (13)

  1. ジカルボン酸中の窒素原子含有量が、該ジカルボン酸に対して質量比で0.01ppm以上2000ppm以下であることを特徴とするジカルボン酸。
  2. バイオマス資源から誘導されたジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のジカルボン酸。
  3. バイオマス資源が植物資源であることを特徴とする請求項2に記載のジカルボン酸。
  4. ジカルボン酸の黄色度(YI)が10以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のジカルボン酸。
  5. ジカルボン酸がポリエステル用原料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のジカルボン酸。
  6. ジカルボン酸がコハク酸であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のジカルボン酸。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載のジカルボン酸から製造されるジオール。
  8. バイオマス資源から誘導されたジカルボン酸を、晶析工程を含む精製方法により精製をすることにより、該ジカルボン酸中の窒素原子含有量が、該ジカルボン酸に対して質量比で0.01ppm以上2000ppm以下にすることを特徴とするジカルボン酸の製造方法。
  9. 精製する際に、目的とするジカルボン酸よりもpHの高い弱酸性の有機酸を使用した反応晶析を含む精製方法により精製をすることを特徴とする請求項8に記載のジカルボン酸の製造方法。
  10. ジカルボン酸がポリエステル用原料である、請求項8又は9に記載のジカルボン酸の製造方法。
  11. ジカルボン酸がコハク酸であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のジカルボン酸の製造方法。
  12. バイオマス資源から誘導されたジカルボン酸であり、該ジカルボン酸の黄色度(YI)が50以下であることを特徴とするジカルボン酸。
  13. ジオール中の窒素原子含有量が、該ジオールに対して質量比で0.01ppm以上2000ppm以下であることを特徴とするジオール。
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