JP2009050919A - 微細構造物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 微細成型技術を用いて、転写された面への投影が、二次元形状を複数の方向へ連続して構成した構造である微細構造物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、パターンの成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、加工対象物に対し押圧することにより、型のパターンを転写する。これにより、転写されたパターンの成型面への投影が、線幅(線202の幅)が1μm以下の二次元形状201を連続して構成した形状となる構造を有する微細構造物を提供できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、パターンの成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、加工対象物に対し押圧することにより、型のパターンを転写する。これにより、転写されたパターンの成型面への投影が、線幅(線202の幅)が1μm以下の二次元形状201を連続して構成した形状となる構造を有する微細構造物を提供できる。
【選択図】 図1
Description
この発明は、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となる構造を有する微細構造物およびその製造方法に関するものである。
LSI(大規模集積回路)に代表される微細回路パターンを半導体基板(以下、単に基板と称する)上に形成するには、フォトリソグラフィーと呼ばれる技術が一般に用いられている。しかしながら、この方法では、形成するパターンの微細化にともない、装置の大型化やコストの増大を招いていた。
また、微細な成型物を得るために、加熱されて溶融した樹脂を、この樹脂のガラス転移温度以下に加熱された型に高速・高圧で流し込み、圧力をコントロールしながら凝固させて成型する射出成型も用いられている。しかしながら、この方法では、供給された樹脂が型に熱を奪われながら凝固するため、型の微細なパターンの中に樹脂が侵入し難く、微細な形状を形成することは困難であった。また、型を加熱し、微細なパターン内に樹脂が侵入するのを待った後、型を冷却し成型することも考えられる。しかしながら、射出成型では、型に樹脂を高圧で流し込む必要があるため、高圧に耐えられる大きな型が必要であり、型の熱容量が大きくなる結果、加熱・冷却に時間がかかるという問題があった。
近年、上記問題を解決するものとして、超微細なパターンを基板上に形成する微細成型技術が注目されている。この技術は、簡単に説明すると以下の手順で行われる。
まず、形成したいパターンが表面に作りこまれた型を準備し、ガラス転移温度以下の温度に保持された樹脂に、加工対象物のガラス転移温度以上に加熱された型を押圧する。すると、樹脂表面が溶融、流動されて、型のパターンが樹脂に転写される。次に、型を冷却して樹脂を凝固させ、型を離型する。これにより、樹脂に所定のパターンが形成される(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、高価な電子ビーム光源や光学系を必要とせず、加熱用ヒータとプレス装置を基本とした簡易な構造を用いることができる。
また、この方法では、樹脂が型に熱を奪われて凝固するという問題もなく、樹脂を型の微細なパターン内に進入させることができる。また、射出成型のような高圧に耐える大型の型は不要であるため、高速に昇降温が可能であり、スループットの問題は生じない。
実際、型に作り込まれた形状をそのまま精度良く転写することが可能となっており、すでにこの方法によって約20nmの線幅をもつ細線が形成されたという報告がある。
しかしながら、転写するパターンが微細になる程、転写面全体への均一な転写は困難であった。この原因の一部としては、型と加工対象物の熱収縮の差や、変位、圧力等の制御が非常に困難になることが考えられる。特に、ラインアンドスペースのように、転写された面への投影が、一次元形状を一方向へ連続して構成した構造のものに比較して、ハニカム構造のように、多角形等の二次元形状を複数の方向へ連続して構成した構造のものは、転写領域において十分均一に転写することができなかった。
この問題は、転写領域の面積が大きくなる程、パターンの幅(加工対象物の平面方向の寸法)が小さくなる程、パターンの深さ(加工対象物の垂直方向の寸法)が大きくなる程、アスペクト比が大きくなる程顕著になる。
そこで本発明は、微細成型技術を用いて、転写された面への投影が、二次元形状を複数の方向へ連続して構成した構造である微細構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の微細構造物は、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となる構造を有することを特徴とする。
また、本発明の微細構造物は、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の多角形を連続して構成した形状となる構造を有することを特徴とする。
この場合、前記二次元形状は、複数の方向に連続して構成される方が好ましい。例えば、転写されたパターンがハニカム構造のものがある。また、前記パターンが転写された領域の面積が、900mm2以上である方が好ましい。また、前記加工対象物は、厚さが1mm以下のフィルムである方が好ましい。また、前記パターンは、前記加工対象物に対し、前記型を4MPa以下の圧力で押圧して転写される方が好ましい。また、前記パターンは、前記型および前記加工対象物の少なくともいずれか一方を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上に加熱して転写したものである方が好ましい。
また、本発明の微細構造物の製造方法は、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、前記パターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、前記加工対象物に対し押圧することにより、前記型のパターンを転写することを特徴とする。
また、本発明の微細構造物の製造方法は、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、前記パターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の多角形を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、前記加工対象物に対し押圧することにより、前記型のパターンを転写することを特徴とする。
この場合、前記二次元形状は、複数の方向に連続して構成される方が好ましい。例えば、前記型のパターンはハニカム構造を反転させた構造のものを用いることができる。また、前記型のパターンが形成されている領域の面積は、900mm2以上である方が好ましい。また、前記加工対象物は、厚さが1mm以下のフィルムである方が好ましい。また、前記加工対象物に対し、前記型を4MPa以下の圧力で押圧する方が好ましい。また、前記パターンは、前記型および前記加工対象物の少なくともいずれか一方を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上に加熱して転写する方が好ましい。また、前記型と加工対象物とを押圧する際の雰囲気を真空にする方が好ましい。また、前記型と加工対象物とを押圧した後、型と加工対象物を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)−5℃以下に冷却した後に前記型と加工対象物とを離型する方が好ましい。
本発明によれば、加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となる構造を有する微細構造物であるため、分光用フィルムや構造色(微細構造によって色を実現したもの)を利用したデバイス、電子ペーパー、細胞培養シート等の種々のアプリケーションに利用することができる。また、この微細構造物は、微細成型技術を用いるため、高スループットで、簡単かつ非常に安価に製造することができるという特徴がある。
以下に、本発明の実施の形態を図1ないし図6に基づいて詳細に説明する。
本発明の微細構造物は、加工対象物200の成型面200a(型のパターンを転写する面)に対して型100を押圧することにより、型100のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの成型面200aへの投影(または、加工対象物に対する型の押圧方向への投影)が、線幅(線202の幅)1μm以下の二次元形状201を複数の方向へ連続して構成した形状となる構造を有するものである。
ここで、加工対象物200としては、どのようなものでも良いが、例えば、シート状又はフィルム状のものや基板状のものを用いることができる。材質は、例えばポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィン系熱可塑性樹脂等の樹脂の他、アルミニウム等の金属、ガラス、石英ガラス、シリコン、ガリウム砒素、サファイア、酸化マグネシウム等の材料などを用いることができる。また、シリコンやガラス等からなる基板本体の表面に、「樹脂」、「フォトレジスト」、「配線パターンを形成するためのアルミニウム、金、銀などの金属」等の被覆層が形成されたものを用いることもできる。
なお、シート又はフィルムの場合には、その厚さが、1mm以下、好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、更に好ましくは、50μm以下、更に好ましくは40μm以下のものが良い。
また、二次元形状201とは、成型面200aへの投影(または、加工対象物200に対する型100の押圧方向への投影)が、0次元の点(すなわち、パターンの構造がピラーやホール状のもの)や、一次元の線(すなわち、パターンの構造がラインアンドスペースのもの)以外の形状を意味する。例えば図1(a)に示すように、四角形や六角形等の多角形、円(楕円等を含む)等の形状を言う。つまり、二次元形状201が正方形の場合には、パターンの構造は穴を有する直方体の箱状のものに該当し、二次元形状201が六角形の場合には、パターンの構造がハニカム構造であるものに該当し、二次元形状201が円の場合には、真ん中に穴を有するドーナツ型の円柱状のものに該当する。もちろん、これらのパターン構造を反転させた構造も含まれる。
なお、二次元形状201の線幅(線202の幅)は1μm以下が良く、好ましくは250nm以下が良く、更に好ましくは100nm以下が良く、更に好ましくは10nm以下が良い。更に、このパターンの深さ(加工対象物200の垂直方向の寸法)は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、このパターンのアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。また、図1(d)に示すように、図1(b)の隣り合う正方形(二次元形状201)同士の間に溝203が形成されているものも含まれる。
また、二次元形状201は、複数の方向へ連続して構成される。例えば、図1(a)、図1(c)では、六角形や円(二次元形状201)が紙面上で左右や斜め方向に連続して構成されており、図1(b)では、正方形(二次元形状201)が上下、左右に連続して構成されている。これにより、分光用フィルムや構造色(微細構造によって色を実現したもの)を利用したデバイス、電子ペーパー、細胞培養シート等の種々のアプリケーションに必要な機能を持たせることができる。
なお、この場合、転写されたパターンが形成されている加工対象物上の領域は、大きい方が好ましく、例えば、900mm2以上、更に好ましくは2500mm2以上の大きさが良い。
次に、このような微細構造物の製造方法について説明する。微細構造物の製造には、図2に示す加工装置1を用いた。
加工装置1は、図2に示すように、所定のパターンを有する型100と加工対象物200とを押圧して、型のパターンを加工対象物200に転写する微細加工装置であって、型100を保持する型保持部2と、加工対象物200を保持する加工対象物保持部12と、加工対象物200に対する型100の相対的な位置およびその位置を変化させる変位速度を調節可能な変位手段5と、加工対象物200に対する型100の相対的な位置を検出する位置検出手段7と、型100と加工対象物200との間の圧力を検出する圧力検出手段8と、型100を加熱する型加熱手段3と、型100を冷却する型冷却手段4と、型100の温度を検出する型温度検出手段31と、加工対象物200を加熱する加工対象物加熱手段13と、加工対象物200を冷却する加工対象物冷却手段14と、加工対象物200の温度を検出する加工対象物温度検出手段131と、位置検出手段7、圧力検出手段8、型温度検出手段31および加工対象物温度検出手段131の検出情報に基づいて、変位手段5、型加熱手段3、型冷却手段4、加工対象物加熱手段13および加工対象物冷却手段14の作動を制御する制御手段300と、で主に構成される。
型100の材料は「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」、「シリコン」などが用いられる。また、型100は、加工対象物200に押圧して加工対象物200を加工し得るものであればどのようなものでもよいが、その一端面(パターン面100a)に、凹凸からなる所定のパターンが形成されている。このパターンは、転写する面への投影(加工対象物に対する型の押圧方向への投影)が、線幅(加工対象物200に転写された線202を反転させた線の幅)1μm以下の二次元形状(加工対象物200に転写された二次元形状201を反転させた形状)を複数の方向へ連続して構成した形状となる構造である。また、このパターンは、そのパターン面100aに精密機械加工を施すことで形成することができる。また、型100の原盤となるシリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって所定の凹凸を形成した後、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して、凹凸からなるパターンを形成することもできる。もちろん型100は、微細パターンが形成できるものであれば材質やその製造法が特に限定されるものではない。このパターンの線幅(加工対象物200の平面方向の寸法)は、用いられる加工対象物200の種類にもよるが、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。更に、このパターンの深さ(加工対象物200の垂直方向の寸法)は、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。また、このパターンのアスペクト比としては、0.2以上、0.5以上、1以上、2以上等種々のものがある。更に、このパターンが占める領域は、900mm2以上、更に好ましくは2500mm2以上の大きさが良い。なお、この型は、成型中に加熱・冷却されるため、できる限り薄型化し、その熱容量を小さくする方が好ましい。
型保持部2は、図2に示すように、型100を保持する型保持面2aに、ねじやクランプ金具等の締結具で型100を面接触するように固定可能に形成される。なお、型保持部2の構造は、型100を型保持面2a上に保持するものであればどのようなものでも良く、例えば、型保持面2aに静電吸着や真空吸着により吸着保持する構造とすることも可能である。
また、型保持部2には、型100を加熱するための型加熱手段3、例えば非常に応答性の良いカーボンヒータを備えている。カーボンヒータは、制御手段300によって図示しない電源からの電流供給を制御されており、型100を所定の一定温度に維持することができる。なお、ヒータとしては、例えば、伝熱ヒータやセラミックヒータ、ハロゲンヒータ、IHヒータ等を用いることも可能である。
また、型保持部2には、型100を冷却する型冷却手段4が設けられている。型冷却手段4としては、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属で形成された型保持部2の内部に水や油等の冷却液、空気や不活性ガス等の冷却気体を流すことで、型100を冷却することができる冷却流路を用いることができる。
また、型保持部2には、型100の温度を検出する型温度検出手段31、例えば熱電対が設けられている。また、型温度検出手段31は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した型100の温度に関する情報を制御手段300に伝達するように形成されている。
加工対象物保持部12は、図2に示すように、加工対象物200を略水平状態に保持するものであり、上面に加工対象物保持面12aを有した保持ステージを備えている。
この保持ステージには、加工対象物保持面12aに多数のバキューム孔(図示せず)が形成されており、このバキューム孔に図示しない負圧源から負圧を作用させることで、加工対象物保持面12a上に、加工対象物200を吸着保持できる構成となっている。なお、加工対象物保持部12の構造は、加工対象物200を加工対象物保持面12aに保持するものであればどのようなものでも良く、例えば、クランプ金具等の締結具で加工対象物保持面12aに固定したり、静電吸着で吸着保持したりする構造とすることも勿論可能である。
また、保持ステージの下部には保持した加工対象物200を加熱するための加工対象物加熱手段13、例えば非常に応答性の良いカーボンヒータを備えている。カーボンヒータは、制御手段300によって図示しない電源からの電流供給を制御されており、保持ステージ上の加工対象物200を所定の一定温度に維持することができる。なお、ヒータとしては、例えば、伝熱ヒータやセラミックヒータ、ハロゲンヒータ、IHヒータ等を用いることも可能である。
また、加工対象物保持部12には、加工対象物200を冷却する加工対象物冷却手段14を設けることも可能である。加工対象物冷却手段14としては、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性の高い金属で形成された加工対象物保持部12の内部に水や油等の冷却液、空気や不活性ガス等の冷却気体を流すことで、加工対象物200を冷却することができる冷却流路を用いることができる。
また、加工対象物保持部12には、加工対象物200の温度を検出する加工対象物温度検出手段131、例えば熱電対が設けられている。また、加工対象物温度検出手段131は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した加工対象物200の温度に関する情報を制御手段300に伝達するように形成されている。
変位手段5は、図2に示すように、例えば、垂直方向に配置されたボールネジ51と、このボールネジ51を回転駆動させる電気モータ52とから構成されている。また、ボールネジ51の下端部と型保持部2の上面は、押圧部53、ベアリング機構54を介して連結されている。そして、ボールネジ51を電気モータ52で回転駆動することで、基台50と上部ベース55との間に設けられた複数例えば4本の支柱56に対し、押圧部53を型100と加工対象物200の接離方向(以下、Z方向と称する)に変位させることができる。なお、電気モータ52としては、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ、サーボモータ等、種々のものを用いることができる。ここで、変位手段5は、加工対象物200に対する型100の位置を、型100のパターンの深さ以下の変位量で調節できる方が好ましい。具体的には、変位量を100μm以下で調節することができるものが良く、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは1nm以下で調節できるものが好ましい。
また、変位手段5は、加工対象物200に対する型100の変位速度を調節できるものが好ましい。具体的には、100μm/秒以下で調節できるものが良く、好ましくは10μm/秒以下、更に好ましくは1μm/秒以下、更に好ましくは100nm/秒以下、更に好ましくは10nm/秒以下、更に好ましくは1nm/秒以下で調節できるものが良い。なぜなら、制御手段300は、圧力検出手段8が検出した情報に基づいて変位手段5の作動を制御し、型100と加工対象物200との間の圧力を調節しているが、圧力検出手段8が検出した情報を変位手段5にフィードバックするには、多少の時間が掛かる。したがって、変位速度が大き過ぎると圧力検出手段8が検出した情報を変位手段5にフィードバックするのが遅れ、型100と加工対象物200との間の実際の圧力を正確に制御することができなくなるからである。
なお、ここでは、変位手段5を型保持部2側に設ける場合について説明したが、加工対象物保持部12側に設けることも勿論可能である。また、変位手段5としては、型100と加工対象物200との相対的な変位量や変位速度を調節できるものであれば、ボールねじと電気モータにより構成されるものに限られず、例えば、電圧を調節して大きさ(寸法)を変化させることができる圧電素子や磁界を調節して大きさ(寸法)を変化させることができる磁歪素子を用いることもできる。また、ボールねじおよび電気モータと圧電素子又は磁歪素子の両方を用いることも勿論可能である。この場合には、型100と加工対象物200を大きく変位させる際に、ボールねじおよび電気モータを適用し、型100と加工対象物200を微小量変位させる際に、圧電素子又は磁歪素子を用いることができる。更に、油圧式のものや空圧式のもの等を用いることも勿論可能である。
変位手段5をこのように構成することによって、型100を保持する型保持部2を上下し、加工対象物保持部12に保持される加工対象物200に対し、型100のパターン面100aを精密に近接・押圧及び離間することができる。
位置検出手段7は、例えば、型保持部2に配置されたリニアスケールにより形成される。このリニアスケールを用いて、加工対象物200と型保持部2との距離を測定し、その値から加工対象物200に対する型100の相対的な位置や変位速度を計算して検出することができる。また、位置検出手段7は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した型100の位置や変位速度に関する情報を伝達するように形成されている。なお、位置検出手段7としては、リニアスケールに限らず種々のものを用いることができ、例えば、型保持部2側に設けられたレーザー測長機を用いて、加工対象物200の位置を測定するか、加工対象物保持部12側に設けられたレーザー測長機を用いて、型100の位置を測定すればよい。また、電気モータに設けられたエンコーダを用いて、変位手段5の変位量から計算により測定するものでもよい。なお、位置検出手段7の分解能は、少なくとも型100のパターンの深さ方向(Z方向)の大きさ以下、あるいは、変位手段5が調節できる変位量以下の値で検出できるものが好ましい。具体的には、100μm以下で検出することができるものが良く、好ましくは10μm以下、更に好ましくは1μm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは1nm以下で検出することができるものが好ましい。
位置検出手段7をこのように構成することによって、パターンの大きさや型100と加工対象物200との間の圧力に応じて、加工対象物200に対する型100のパターン面100aの位置を精密に調節することができるので、パターンの転写性および離型性を向上することができる。
圧力検出手段8は、型100と加工対象物200との間の圧力を検出するもので、例えば、型100と加工対象物200との間の荷重を測定するロードセルを用いることができる。これにより、荷重を測定し、型100のパターン面100aの面積で割れば型100と加工対象物200との間の圧力を検出することができる。また、圧力検出手段8は、制御手段300に電気的に接続されており、検出した圧力に関する情報を伝達するように形成されている。
制御手段300は、位置検出手段7、圧力検出手段8、型温度検出手段31および加工対象物温度検出手段131の検出情報に基づいて、変位手段5、押圧手段6、型加熱手段3、型冷却手段4、加工対象物加熱手段13および加工対象物冷却手段14の作動を制御するもので、例えばコンピュータを用いることができる。
ここで、調節する変位速度は、加工対象物200の材料や温度等にもよるが、例えば、100μm/秒以下で調節するのが良く、好ましくは10μm/秒以下、更に好ましくは1μm/秒以下、更に好ましくは100nm/秒以下、更に好ましくは10nm/秒以下、更に好ましくは1nm/秒以下で調節するのが良い。これにより、型100と加工対象物200の間の実際の圧力を確実に予め設定した所定値以下に調節することができる。なお、圧力検出手段8の情報に基づいて型加熱手段3および加工対象物加熱手段13の少なくともいずれか一方を制御し、加工対象物200の成型面200aの温度を変化させて、型100と加工対象物200との間の圧力を調節することも可能である。
この加工装置1を用いた微細構造物の製造方法は以下の通りである。
まず、型100と加工対象物200は、成型するための所定の温度に加熱される。ここで、加工対象物200が基板等の比較的厚みのあるものの場合には、型100は加工対象物200より高い温度に加熱される方が好ましく、更に好ましくは、型100を加工対象物200が軟化する軟化温度(ガラス転移点や融点の温度)より高い温度に加熱し、加工対象物200はその軟化温度(ガラス転移点や融点の温度)より低い温度に加熱する方が好ましい。これにより、型100と加工対象物200とを押圧した際に、型100から加工対象物200に熱が伝達し、加工対象物200の表面近傍のみを軟化させることができるので、成型時に加工対象物200が潰れる等の問題を回避することができる。一方、加工対象物200がフィルムやシートのように比較的薄いものの場合には、型100と加工対象物200の温度を同じか同程度の温度に加熱する。これは、熱が伝わり易く結局型100と加工対象物200が同じ温度になるためである。加熱する温度は、加工対象物200の材質や型100の材質に寄るが、例えば、加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上、軟化温度(Tg)+25℃以上、軟化温度(Tg)+30℃以上等にすれば良い。勿論、この温度に限定されるものではない。
型100と加工対象物200とを所定温度に加熱した後、型100と加工対象物200とを予め設定した圧力で押圧する。この際、型100と加工対象物200との間の圧力は、型100のパターンを加工対象物200に転写できる大きさの範囲で、できる限り小さい圧力を用いる方が良い。具体的には、4MPa以下、好ましくは2MPa以下、更に好ましくは1.5MPa以下、更に好ましくは1MPa以下、更に好ましくは、0.5MPa以下、更に好ましくは0.25MPa以下にするのが良い。これにより、従来よりも比較的小さい圧力で押圧するため、型100と加工対象物200との間の密着力を増加させることがなく、型崩れ等を防止して離型を容易にすることができる。
この場合、加工対象物200に対する型100の変位速度は、型100と加工対象物200との間の圧力が予め設定した圧力、例えば4MPaを常に超えないように調節できる速度にする方が良い。なお、更に好ましくは、加工対象物200に対する型100の変位量を制御して押圧する方が好ましい。
また、型100と加工対象物200とを押圧し、型100のパターンを加工対象物に転写する際には、型100と加工対象物200の雰囲気を真空にする方が好ましい。この場合、パターンの転写前に真空雰囲気にすれば良いが、加工対象物200の酸化等を考慮すれば、加工対象物200の加熱前に真空雰囲気にする方が好ましい。真空度としては、例えば40Pa以下にすれば良い。
次に、型100と加工対象物200とを接触させたまま、型100と加工対象物200を冷却し、加工対象物200の温度をガラス転移温度(または軟化温度)以下にする。例えば、冷却温度を軟化温度(Tg)−5℃以下、軟化温度(Tg)−45℃以下、軟化温度(Tg)−90℃以下等にすれば良い。勿論、この温度に限定されるものではない。また、型100と加工対象物200との間の圧力を保持したままで冷却しても良いし、ゼロ近傍まで減圧した後に冷却しても良い。
最後に、型100と加工対象物200とを離型して、微細加工方法のプロセスを終了する。
これにより、非常に安価で、大量生産に向く微細構造物、すなわち、転写されたパターンの成型面200aへの投影が、線幅1μm以下の二次元形状201を複数の方向へ連続して構成した形状となる構造を有する微細構造物を製造することができる。
以下に実施例により本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、加工対象物としては、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}が136℃のシクロオレフィンポリマーからなる膜厚40μmおよび100μmの透明なフィルム(日本ゼオン株式会社製:ZF14)を用いた。
なお、微細成型の評価には、SCIVAX社製の微細成型装置(VX-2000N-US)を使用した。金型は、加工対象物に転写した際に、加工対象物にハニカム構造を転写可能なパターン(ハニカム構造を反転させたパターン)を有するニッケル製のもので、転写可能領域が50mm×50mm(金型の外形は55mm×55mm):面積が2500mm2の正方形である金型を用いた。ハニカム構造は、線幅が250nmでこの線の高さが380nm(アスペクト比が約1.5)、一つのセル(六角形)の最大内径が2μm(すなわち、線幅も含めた最大外径が2.5μm)とした。
加工対象物をシリコン基板上に載置した後、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}+25℃(161℃)に加熱し、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}+25℃(161℃)に加熱した金型を5μm/秒の速度で該フィルム表面に押し付け、金型上部に取り付けた荷重センサーが4500N(圧力が約1.5Mpa)に達したところで、その荷重で600秒間保持した。
その後、膜厚40μmのフィルムに対しては、金型の圧力を一定に保持しながら、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}−46℃(90℃)まで冷却し、冷却完了後、金型を10μm/秒の速度でフィルムから離型した。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、転写領域全面に伸びや剥離の無い均一で良好なハニカム構造のパターンが転写されていた。転写後の平面写真(倍率:1万倍)を図3に、斜視方向からの写真(倍率:5千倍)を図4に示す。
また、膜厚が100μmのフィルムに対しては、金型の圧力を一定に保持しながら、ガラス転移温度{軟化温度(Tg)}−5℃(131℃)まで冷却し、冷却完了後、金型を10μm/秒の速度でフィルムから離型した。走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、転写領域全面に伸びや剥離の無い均一で良好なハニカム構造のパターンが転写されていた。転写後の平面写真(倍率:1万倍)を図5に、斜視方向からの写真(倍率:2万倍)を図6に示す。
100 型
200 加工対象物
200a 成型面
201 二次元構造
202 線
203 溝
200 加工対象物
200a 成型面
201 二次元構造
202 線
203 溝
Claims (18)
- 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となる構造を有することを特徴とする微細構造物。
- 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンが転写された微細構造物であって、転写されたパターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の多角形を連続して構成した形状となる構造を有することを特徴とする微細構造物。
- 前記二次元形状は、複数の方向に連続して構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の微細構造物。
- 転写されたパターンはハニカム構造であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の微細構造物。
- 前記パターンが転写された領域の面積が、900mm2以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の微細構造物。
- 前記加工対象物は、厚さが1mm以下のフィルムであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の微細構造物。
- 前記パターンは、前記加工対象物に対し、前記型を4MPa以下の圧力で押圧して転写されたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の微細構造物。
- 前記パターンは、前記型および前記加工対象物の少なくともいずれか一方を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上に加熱して転写したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の微細構造物。
- 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、
前記パターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の二次元形状を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、前記加工対象物に対し押圧することにより、前記型のパターンを転写することを特徴とする微細構造物の製造方法。 - 加工対象物の成型面に対して型を押圧することにより、前記型のパターンを転写する微細構造物の製造方法であって、
前記パターンの前記成型面への投影が、線幅1μm以下の多角形を連続して構成した形状となるパターンを有する型を、前記加工対象物に対し押圧することにより、前記型のパターンを転写することを特徴とする微細構造物の製造方法。 - 前記二次元形状は、複数の方向に連続して構成されることを特徴とする請求項9又は10記載の微細構造物の製造方法。
- 前記型のパターンはハニカム構造を反転させた構造であることを特徴とする請求項9ないし11のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記型のパターンが形成されている領域の面積は、900mm2以上であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記加工対象物は、厚さが1mm以下のフィルムであることを特徴とする請求項9ないし13のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記加工対象物に対し、前記型を4MPa以下の圧力で押圧することを特徴とする請求項9ないし14のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記パターンは、前記型および前記加工対象物の少なくともいずれか一方を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)+20℃以上に加熱して転写することを特徴とする請求項9ないし15のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記型と加工対象物とを押圧する際の雰囲気を真空にすることを特徴とする請求項9ないし16のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
- 前記型と加工対象物とを押圧した後、型と加工対象物を前記加工対象物が軟化する軟化温度(Tg)−5℃以下に冷却した後に前記型と加工対象物とを離型することを特徴とする請求項9ないし17のいずれかに記載の微細構造物の製造方法。
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