JP2009041073A - 溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法 - Google Patents

溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法 Download PDF

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友弥 川畑
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Abstract

【課題】溶接部、なかでも溶接止端部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れ、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に用いて好適な高張力鋼溶接継手の提供。
【解決手段】C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.4〜2%、P≦0.05%、S≦0.003%、Al:0.002〜0.05%、N:0.0030〜0.01%を含有し、残部はFeと不純物からなり、0.05≦(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)≦0.15を満足する鋼材を母材としてアーク溶接した溶接継手であって、溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織において、フェライトおよびベイナイトの分率がそれぞれ、10〜40%および50%以上である溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
【選択図】なし

Description

本発明は、溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法に関する。詳しくは、延性き裂の発生が構造物の終局的な破壊の原因となる鋼構造分野に用いられるのに好適な溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法、特に、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に用いられるのに好適な溶接止端部(以下、単に「止端部」ともいう。)からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法に関する。
1995年初頭に発生した兵庫県南部地震は、鋼構造物にも大きな被害をもたらしたことは良く知られている。地震の震度自体が予期していたレベルを上回るレベルであったという設計上の理由が、大きな原因であるとされているが、多数の破壊現場での観察により、溶接の不具合など人為的な原因もなかったとはいえない。
土木・建築分野では大地震に強い構造形式に関する研究が盛んに行われているが、上記の人為的な不具合なども考慮すれば、鋼材継手部にその安全性確保機能を持たせるという考えも重要である。なお、土木・建築分野で適用されている材料は、主に日本工業規格(JIS)で規定された規格材である。
具体的には、橋梁分野では、JIS G 3106(2004)に規定されている「溶接構造用圧延鋼材」が、また、建築分野では上記のJIS G 3106(2004)に加えて、JIS G 3136(1994)に規定されている「建築構造用圧延鋼材」が、主に用いられている。
しかしながら、上記の鋼材の耐破壊特性は、0℃あるいは−5℃におけるシャルピー特性としての「吸収エネルギー」のみを保証するものであり、地震負荷を受けた際の挙動に関しては極めて平凡なものでしかない。そして、継手部に関してもその耐破壊特性は基本的には上記と同等レベルのものである。
したがって、現下の状況からすれば、鋼材や継手部に対する先進的な機能付与のニーズは強く、こうした高機能鋼材や継手部が適用あるいは規格化される機運は高まっていると考えられる。
なお、兵庫県南部地震で起こった鋼構造の破壊形態に関する特徴の一例が、非特許文献1に報告されている。
すなわち、非特許文献1は、神戸市港湾幹線(ハーバーウェイ)P75橋脚の破壊事故について詳細に調査したものであるが、これによると、前記の橋脚が、隅角部に存在する溶接止端部あるいは母材から延性き裂が発生し、それが進展して、「脆性破壊」に至ったことが示されている。
この例に示されるように、橋脚の地震時の破壊事故は「脆性破壊」という極めて壊滅的な破壊であるが、その破壊の前段階には、「延性き裂」の存在がある。したがって、構造物の地震時の安全性を高めるひとつのポイントとして、延性き裂発生に対する抵抗性(以下、「耐延性き裂発生特性」ともいう。)を向上させるということが挙げられる。なお、上記の延性き裂の多くは溶接の止端部から発生するものであり、溶接止端部での耐延性き裂発生特性が構造物の安全性に対して重要な位置を占めていると考えられる。
延性破壊特性に着目した技術は、特に母材の設計法として、例えば、特許文献1〜6に開示されている。
すなわち、特許文献1に、ミクロ組織が実質的にフェライト組織、パーライト組織及びベイナイト組織より構成されている鋼板であって、板の両表面部及び中心部の三層に分けたとき、両表面部は板厚の各5%以上に亘って、円相当粒径:7μm以下の面積、アスペクト比:2〜4のフェライト粒を有するフェライト組織を50%以上有し、且つ当該部分のベイナイト分率が5〜25%以下である層で構成され、中心部は板厚の50%以上に亘って、円相当平均粒径:4〜10μm、アスペクト比:2以下のフェライト粒を有し、当該部分のベイナイト分率が10%以下である層で構成されている「アレスト特性および延性破壊特性に優れた鋼板」が開示されている。
特許文献2に、ミクロ組織が実質的にフェライト組織及びパーライト組織より構成されている鋼板であって、板の両表面部及び中心部の三層に分けたとき、両表面部は板厚の各5%以上に亘って、円相当粒径:5μm以下の面積、アスペクト比:2〜4のフェライト粒を有するフェライト組織を50%以上有する層で構成され、中心部は板厚の50%以上に亘って、円相当平均粒径:4〜10μm、アスペクト比:2以下のフェライト粒を有する層で構成されている「アレスト特性および延性破壊特性に優れた鋼板」が開示されている。
特許文献3に、公称応力−公称歪み曲線における降伏後の降伏棚が1%以上で、且つ公称応力が最大となる公称歪み(εu)から求めた加工硬化指数(n=ln(1+εu))が0.15以上である「高歪負荷状態での耐延性破壊特性に優れた鋼材」および「その製造方法」が開示されている。
特許文献4に、フェライトと第二相との混合組織からなり、冷間塑性歪のない状態で降伏伸びが0.5%以下で、さらに好ましくは降伏比が75%以上である「延性亀裂発生特性に優れた構造用鋼材」および「その製造方法」が開示されている。
特許文献5に、圧延途中の厚みをtとしたとき、板厚方向に両表面から0.05t以上0.15t以下の表層領域に対して、Ar3変態点以上900℃以下の未再結晶温度域においてε≧0.5となる相当塑性歪εを付与し、その後前記表層領域の残留累積相当塑性歪量εrがεr≧0.5を満足する時間内に、両表面から板厚t/4位置より芯部側の内部領域の温度をAr3変態点以上に維持しつつ、前記表層領域を2〜15℃/sの冷却速度にて450〜650℃の温度範囲となるまで冷却し、次いで、圧延を再開し、この圧延では前記内部領域に対して0.35≦εr<0.55の残留累積相当塑性歪εrを付与する圧延を行ない、Ar3変態点以上にて圧延を完了すると共に、加工発熱および内部顕熱によって前記表層領域をAr3変態点以下まで複熱させ、その後平均冷却速度が1〜10℃/sとなる様に冷却を行なう「アレスト特性および延性破壊特性に優れた厚鋼板の製造方法」が開示されている。
特許文献6に、質量%で、C:0.04〜0.16%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.01%以下を含み、必要に応じてさらに、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.005%以下の一種または二種以上を含有し、残部が実質的にFeからなり、Ceq≦0.40の鋼を、950℃以上、1200℃以下に加熱後、Ar3点以上で累積圧下率50%以上の圧延を行い、その後直ちにAr3点以上から10℃/s以上の冷却速度で加速冷却を開始後、Ar3−30℃〜Ar3−100℃において一旦冷却を停止し、Pcmを「C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B(%)」として、(0.2×t/Pcm)秒から(0.5×t/Pcm)秒保持した後、再び500℃以上まで、10℃/s以上で加速冷却する「延性および疲労亀裂伝播特性に優れた鋼材の製造方法」が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1〜6で提案された技術は、いずれも母材の延性を高めるという観点からなされたものであって、実用面でより重要な溶接止端部からの延性き裂発生については考慮されておらず、しかも、特許文献1、特許文献2および特許文献5における「耐延性破壊特性」の評価は、単に、JIS 1B号試験片である原厚ままの全厚引張試験片を用いた引張試験での伸びの大小に基づくものでしかない。
一方、特許文献7には、鋼製柱・梁接合部を溶接する方法において、溶接する柱および梁の降伏応力および引張強度以上の降伏応力および引張強度を持つ鋼製裏当金を使用し、また溶接材料には溶接により生成される溶接金属の降伏応力および引張強度が鋼製裏当金の降伏応力および引張強度未満となるものを用いて溶接する「鋼製柱・梁接合部の溶接方法」が開示されている。しかしながら、この特許文献7で提案された技術は、単に、溶接接合を行う鉄骨構造物において、裏当金と鉄骨の未溶着によって発生する歪集中部からの延性き裂発生を減少させるというものでしかない。
特開2000−328177号公報 特開2000−309851号公報 特開2002−30379号公報 特開2003−221641号公報 特開2003−221619号公報 特開2005−314811号公報 特開平8−281487号公報 岡下勝彦、大南亮一、道場康二、山本晃久、富松実、丹治康行、三木千壽:土木学会論文集、No.591/Ι−43(1998)p.243
本発明は、溶接部からの延性き裂の発生が構造物の終局的な破壊の原因となる鋼構造分野に用いて好適な、特に、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に用いて好適な、溶接止端部からの延性き裂発生に対する抵抗性(耐延性き裂発生特性)に優れる高張力鋼溶接継手およびその製造方法を提供することである。
延性き裂の発生に関する研究は、古くからなされているが、鋼材内部から発生するものが主体であった。
例えば、材料学的因子の解明事例として、G.LeRoyらは、「A Model of Ductile Fracture Based on the Nucleation and Growth of Voids」(Acta Metall.、29(1981)、p.1509)において、引張試験による破断延性と炭化物体積率との関係を明らかにしている。これによると、硬質第二相の体積割合が大きくなると延性は低下する。
また、力学的な観点から、J.W.Hancockらが、「On the Mechanisms of Ductile Failure in High−Strength Steels Subjected to Multi−Axial Stress−States」(Journal of Mech. Phys. Solids、24(1976)、p.147)において、延性き裂発生の限界歪は応力多軸度の影響を大きく受けることを明らかにしている。つまり、応力多軸度が高くなる部位では、限界歪は急激に低下する。
一方、溶接止端部は、構造物の表面に相当する部位である。このため、前記した課題を達成するためには、延性き裂の発生部位として、鋼材内部ではなく、表面に着目する必要がある。
表面部からの延性き裂発生に関しては、岡本らが、「高張力鋼の延性および延性破壊過程に及ぼすMnS介在物の影響」(鉄と鋼、63(1977)、p.1878)において、不純物元素であるSの含有量が高くなると表面部からの延性き裂が発生しやすくなることを明らかにしている。
さらに、力学的には、表面部からの延性き裂発生は、内部からの延性き裂発生の場合と同様に、応力多軸度と相当塑性歪で整理されている。
しかしながら近年、M.Toyodaらが、「Ductile Fracture Initiation Behavior of Pipe under A Large Scale of Cyclic Bending」(Pipeline Technology、II(2000)、p.87)において、表面部からの延性き裂発生は応力多軸度依存型の限界条件を示すものではなく、相当塑性歪一定型の限界条件で良好な整理がなされることを明らかにしている。
そこで、本発明者らは、先ず、鋼材表面からの延性き裂発生特性を評価する手法を確立することが必要であるとの考えの下に、種々の化学組成を有する低炭素系鋼材の表面から、0.1mmRの鋭い環状切欠きを設けた丸棒引張試験を採取し、単調に引張載荷した後、様々な負荷レベルで途中止めを行うことにより延性き裂が発生した時点での負荷レベルを把握し、また、この試験と並行してFEM解析を実施し、このFEM解析によって延性き裂が発生した負荷レベルでの切欠き先端における相当塑性歪(以下、この延性き裂発生時の相当塑性歪を延性き裂発生の限界歪という。)を求めた。
なお、上記環状切欠きを設けた丸棒引張試験の形状は図1に示すとおりであり、図1の(a)は全体図、(b)は環状切欠き部の詳細図である。
その結果、鋼材表面部の延性き裂発生特性に対して、M.Toyodaらが提唱した上記の「相当塑性歪一定型」の基準が好適であることが明らかになった。
なお、溶接止端部の特異性としては、溶接による熱サイクルを受けていることが挙げられる。
すなわち、溶接によって止端部直下の熱影響部(以下、熱影響部を「HAZ」ともいう。)は、母材の溶融点近傍まで温度上昇した後冷却される、具体的には、母材鋼のAc3変態点をはるかに超えるオーステナイト領域にまで温度上昇した後、溶接入熱や母材の板厚に応じた冷却速度で様々な組織に変態しながら冷却されるので、そのミクロ組織は母材が製造された時の組織とは全く異なったものになってしまう。
そこで次に、本発明者らは、種々の化学組成を有する低炭素系鋼材の小さな試験片に対して、いわゆる「再現熱サイクル」を付与して、つまり、溶接により付与される熱サイクルをプログラムされた高周波加熱パターンによって付与して、止端部直下のHAZのミクロ組織、換言すれば、溶接止端部のHAZ側ミクロ組織を再現させ、前記図1に示す環状切欠きを設けた丸棒試験片を採取することによって、上記の止端部直下のHAZのミクロ組織が延性き裂発生特性に及ぼす影響を定量的に評価した。
その結果、次の知見(a)〜(e)が得られた。
(a)母材が、最も汎用的に用いられている質量%で、0.15〜0.20%程度の比較的高い量のCを含有し、合金元素が意図的に添加されていない化学組成からなる鋼の場合には、再現熱サイクルを付与することで得られる止端部直下のHAZのミクロ組織は、「フェライト」と「パーライト」の複合組織であるいわゆる「フェライト・パーライト」組織になる場合が多い。そして、この「フェライト・パーライト」組織の場合には、組織を極めて細粒にした場合であっても、表面部からの延性き裂発生の限界歪は、100%程度である。
(b)入熱が極端に小さかったり、試験片の板厚が極端に厚かったり、鋼の化学組成から計算される焼入れ性が極端に高い場合には、再現熱サイクルを付与することで得られる止端部直下のHAZのミクロ組織はマルテンサイト組織になる。そして、この「マルテンサイト」組織の場合には、初期転位密度が高いためか、表面部からの延性き裂発生の限界歪はさらに低く、高くても90%程度である。
(c)鋼中に含まれる硬質介在物の量が少ないほど、表面部からの延性き裂発生の限界歪が大きく「耐延性き裂発生特性」が良好である。したがって、母材の化学組成において、硬質介在物を形成するPおよびSの含有量は極力少ない方がよい。
(d)溶接止端部のミクロ組織における「相」の分率が延性破壊特性に大きな影響を与える。すなわち、止端部直下のHAZのミクロ組織が「フェライト」と「ベイナイト」の複合組織で、しかも、硬質相である「ベイナイト」が軟質相である「フェライト」より多く存在する場合に、表面部からの延性き裂発生の限界歪が最も大きく、最良の「耐延性き裂発生特性」を示す。これは硬質相である「ベイナイト」が連結して力を伝達することと関係があると考えられる。一方、止端部直下のHAZのミクロ組織が「フェライト」と「ベイナイト」の複合組織であっても、軟質相である「フェライト」が複合組織の殆どを占める場合には、表面部からの延性き裂発生の限界歪が小さく「耐延性き裂発生特性」が低い。これは、硬質な「ベイナイト」近傍の軟質な「フェライト」において歪集中が顕著化するためと考えられる。
(e)止端部直下のHAZのミクロ組織が、上記の硬質相としての「ベイナイト」と軟質相としての「フェライト」からなる複合組織の場合には、その粒径が小さい方が表面部からの延性き裂発生の限界歪が大きく、「耐延性き裂発生特性」が良好である。
そこで、溶接継手の母材となる鋼材の実生産や溶接施工の実態を念頭に、さらに検討を加えた結果、下記の知見(f)〜(i)を得た。
(f)止端部直下のHAZのミクロ組織において、硬質相としての「ベイナイト」および軟質相としての「フェライト」の各割合が特定の範囲にある場合に、極めて良好な表面部からの「耐延性き裂発生特性」が確保される。この場合には、第3相として含まれる他の「相」が表面部からの延性き裂発生の限界歪に及ぼす影響は小さい。
(g)式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、「PP=(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)」で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足するように鋼の化学成分を調整すれば、母材鋼のC含有量が0.01〜0.12%という低い場合であっても、止端部直下のHAZにおいて、「ベイナイト」の分率が50%以上であるミクロ組織を比較的容易に得ることができる。
(h)止端部直下のHAZのミクロ組織において、軟質相である「フェライト」を特定の量で含ませるためには、初期オーステナイト粒を微細化して、粒界からのフェライト変態を促進するのが有効である。このためには、母材となる鋼材の組織を微細化して、具体的には、旧オーステナイト粒径を150μm以下として、組織の引き継ぎを行うことが好ましい。
(i)母材鋼の化学組成を上記(g)で述べた適正な成分系に調整しても、母材板厚が薄い場合に極端な高入熱溶接を行ったり、母材板厚が厚い場合に極端な低入熱溶接を行えば、止端部直下のHAZのミクロ組織が上記(a)で述べた「フェライト・パーライト」組織や(b)で述べた「マルテンサイト」組織になる。しかしながら、アーク溶接する際の最終パス溶接時の溶接入熱Q(J/mm)を、「t」を母材の板厚(mm)として、「399.73×(299−1522×PP)-0.5×t」の式で表されるQcr-Lの値以上で、かつ「599.60×(35.4−236×PP)-0.5×t」の式で表されるQcr-Uの値以下として溶接すれば、止端部直下のHAZにおいて、10〜40%の分率で「フェライト」を含み、しかも「ベイナイト」の分率が50%以上であるミクロ組織を確実に得ることができる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(8)に示す溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手および(9)〜(16)に示す溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.4〜2%、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Al:0.002〜0.05%およびN:0.0030〜0.01%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足する鋼材を母材としてアーク溶接した溶接継手であって、溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織において、フェライトおよびベイナイトの分率がそれぞれ、10〜40%および50%以上であることを特徴とする溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
PP=(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)・・・(1)。
ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
(2)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(3)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1%以下を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(4)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(5)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(4)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(6)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(5)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(7)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Mg:0.006%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(6)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(8)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、希土類元素:0.004%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(7)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
(9)質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.4〜2%、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Al:0.002〜0.05%およびN:0.0030〜0.01%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足する鋼材を母材としてアーク溶接する溶接継手の製造方法であって、最終パス溶接時の溶接入熱Q(J/mm)を、下記(2)式で表されるQcr-Lの値以上で、かつ下記(3)式で表されるQcr-Uの値以下として溶接することを特徴とする溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
PP=(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)・・・(1)、
Qcr-L=399.73×(299−1522×PP)-0.5×t・・・(2)、
Qcr-U=599.60×(35.4−236×PP)-0.5×t・・・(3)。
ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表し、また、(2)式および(3)式中のtは母材の板厚(mm)を表す。
(10)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有するものである上記(9)に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(11)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1%以下を含有するものである上記(9)または(10)に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(12)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下を含有するものである上記(9)から(11)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(13)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下を含有するものである上記(9)から(12)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(14)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下を含有するものである上記(9)から(13)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(15)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Mg:0.006%以下を含有するものである上記(9)から(14)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
(16)母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、希土類元素:0.004%以下を含有するものである上記(9)から(15)までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
なお、「溶接止端部の熱影響部側」とは、止端から500μmまでの母材の部分を指す。
また、「ベイナイト」とは、ラス状ベイニティックフェライトの界面に、セメンタイト若しくはいわゆる「MA constituent」、またはその両者が存在した組織であり、ベイニティックフェライトの内部にセメンタイトが点列状に配列するいわゆる「下部ベイナイト」を含むものを意味し、上記の組織が焼戻しされた組織も含むものとする。なお、板厚が厚く溶接後の冷却速度が小さい場合には、ベイニティックフェライトの合体によってその見かけ上の形態がラス状から粒状に変化するが、この場合の組織も「ベイナイト」に含むものとする。
上記の「MA constituent」とは、炭素が濃縮した残留オーステナイト若しくはマルテンサイト、または両者の混合した組織である。
希土類元素(以下、「REM」という。)は、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMの中の1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。
以下、上記(1)〜(8)に示す溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手に係る発明および(9)〜(16)に示す溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(16)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手は、耐延性き裂発生特性に優れるので、溶接部からの延性き裂の発生、なかでも止端部からの延性き裂の発生が構造物の終局的な破壊の原因となる鋼構造分野、特に、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に用いることができる。この高張力鋼溶接継手は、本発明の方法によって製造することができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成:
C:0.01〜0.12%
Cは、母材の強度を確保するのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.01%未満では母材に必要な強度が確保できないだけでなく、溶融線でのラス形成が不十分になって、溶接止端部直下のHAZの靱性も低下する。一方、その含有量が0.12%を超えると、HAZ、なかでも溶接止端部直下のHAZの靱性劣化が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.01〜0.12%とした。なお、Cの含有量は0.04〜0.10%とすることが好ましい。
Si:0.01〜0.5%
Siは、脱酸剤として必要な元素であり、0.01%以上含有させる。しかしながら、0.5%を超える過剰なSiの含有は、溶接冷却過程において島状マルテンサイトを増加させて、溶接部の靱性を低下させる。さらに、介在物量の増加を通じた母材靱性の低下も招く。したがって、Siの含有量は0.01〜0.5%とした。なお、溶接部の靱性向上の観点からは、Siの含有量はできるだけ少ない方がよい。好ましいSi含有量の範囲は0.01〜0.4%である。
Mn:0.4〜2%
Mnは、脱酸剤、母材の強度と靱性の確保およびHAZの焼入れ性確保のために有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.4%未満では、これらの効果が得られないだけでなく、HAZにいわゆる「フェライトサイドプレート」が生成してラスの形成が不十分になり、溶接部の靱性が低下する。一方、含有量で2%を超える過剰なMnは、中心偏析による板厚方向での母材特性の不均一をもたらす。したがって、Mnの含有量を0.4〜2%とした。なお、Mnの含有量は0.8〜1.6%とすることが好ましい。
P:0.05%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する元素であり、その含有量が0.05%を超えると、鋼中に硬質介在物が増加し介在物周りで歪集中が顕著化することから耐延性き裂発生特性の劣化を伴う。したがって、Pの含有量を0.05%以下とした。なお、Pの含有量は0.03%以下とすることが好ましい。
S:0.003%以下
Sは、不純物として鋼中に不可避的に存在する元素である。その含有量が高いと中心偏析を助長したり、延伸したMnSが多量に生成して、その周りに歪集中が顕著化することから、耐延性き裂発生特性の低下を招き、特に、その含有量が0.003%を超えると、耐延性き裂発生特性の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.003%以下とした。なお、Sの含有量は0.002%以下とすることが好ましい。
Al:0.002〜0.05%
Alは、脱酸剤として必要な元素であり、0.002%以上含有させる。しかしながら、含有量で0.05%を超える過剰なAlは、AlNなどの析出物の増加を通じて母材部および溶接部の靱性を低下させる。したがって、Alの含有量を0.002〜0.05%とした。なお、Alの含有量は0.002〜0.04%とすることが好ましい。
N:0.0030〜0.01%
Nは、AlNやTiNの形成を通じてHAZ組織を微細化する作用を有するので、0.0030%以上含有させる。しかしながら、Nの含有量が多くなり、特に、0.01%を超えると、析出物の生成を通して耐延性き裂発生特性の低下を招き、また、HAZ靱性を低下させる。したがって、Nの含有量を0.0030〜0.01%とした。なお、Nの含有量は0.003〜0.008%とすることが好ましい。
PPの値:0.05〜0.15
前記(1)式で表されるPPの値は、止端部直下のHAZにおけるベイナイトの分率に影響を及ぼす指標であり、PPの値が0.05以上であれば、止端部直下のHAZ(つまり、先に定義した「溶接止端部の熱影響部側」)のミクロ組織を比較的容易にベイナイトの分率が50%以上という所望のミクロ組織にすることができる。しかしながら、PPの値が大きくなって、特に、0.15を超えると、止端部直下のHAZのミクロ組織にマルテンサイトが多量に含まれるようになって耐延性き裂発生特性の著しい低下を招く。したがって、前記(1)式で表されるPPの値を0.05〜0.15とした。なお、PPの値は0.07〜0.15とすることが好ましい。
上記の「ベイナイト」は、ラス状ベイニティックフェライトの界面に、セメンタイト若しくはいわゆる「MA constituent」、またはその両者が存在した組織であり、ベイニティックフェライトの内部にセメンタイトが点列状に配列するいわゆる「下部ベイナイト」を含むものを意味し、上記の組織が焼戻しされた組織も含むこと、さらに、板厚が厚く冷却速度が小さい場合には、ベイニティックフェライトの合体によってその見かけ上の形態がラス状から粒状に変化するが、この場合の組織も「ベイナイト」に含むことは、既に述べたとおりである。
上記の理由から、本発明(1)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、C、Si、Mn、P、S、AlおよびNを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物からなり、(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足することとした。
同様に、本発明(9)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、C、Si、Mn、P、S、AlおよびNを上述した範囲で含有し、残部はFeおよび不純物からなり、(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足することとした。
なお、本発明(1)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材および本発明(9)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、そのFeの一部に代えて、必要に応じてさらに、
第1群:Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上、
第2群:Cr:1%以下、
第3群:Nb:0.1%以下、
第4群:Ti:0.1%以下、
第5群:Ca:0.004%以下、
第6群:Mg:0.006%以下、
第7群:REM:0.004%以下、
の各グループの元素の1種以上を選択的に含有させることができる。
すなわち、前記第1群〜第7群のグループの元素の1種以上を任意元素として添加し、含有させてもよい。
以下、上記の任意元素に関して説明する。
第1群:Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上
第1群の元素であるCu、Ni、MoおよびVは、母材の強度を高める作用を有するので、この効果を得るために上記の元素を添加し、含有させてもよい。以下、第1群の各元素について詳しく説明する。
Cu:0.8%以下
Cuは、母材の強度を高めるのに有効な元素である。この効果を確実に得るには、Cuの含有量は0.05%以上とすることが望ましい。しかしながら、Cuの含有量が0.8%を超えると、Ac3変態点以下の温度に加熱されたHAZの靱性を劣化させる。したがって、添加する場合のCuの含有量は、0.8%以下とした。なお、添加する場合のCuの含有量は、0.05〜0.8%とすることが好ましく、0.1〜0.5%であればより好ましい。
Ni:1%以下
Niは、母材の強度向上に有効な元素である。この効果を確実に得るには、Niの含有量は0.05%以上とすることが望ましい。しかしながら、Niは高価な元素であり、1%を超えて多量に含有させることは経済性を大きく損なう。したがって、添加する場合のNiの含有量は、1%以下とした。なお、添加する場合のNiの含有量は、0.05〜1%とすることが好ましく、0.2〜0.6%であればより好ましい。
Mo:0.8%以下
Moは、母材の強度を高める作用を有する。Moには、母材の靱性を向上させる作用もある。これらの効果を確実に得るには、Moの含有量は0.05%以上とすることが望ましい。しかしながら、Moの含有量が0.8%を超えると、特にHAZの硬さが高くなって、靱性と耐硫化物応力割れ性を損なう。したがって、添加する場合のMoの含有量は0.8%以下とした。なお、添加する場合のMoの含有量は、0.05〜0.8%とすることが好ましく、0.1〜0.4%であれば一層好ましい。
V:0.1%以下
Vは、主に焼戻し時の炭窒化物析出により、母材の強度を向上させる作用を有する。この効果を確実に得るには、Vの含有量は0.005%以上とすることが望ましい。しかしながら、0.1%を超えてVを含有させても、母材の強度向上効果が飽和するうえに、靱性の低下をきたす。したがって、添加する場合のVの含有量は、0.1%以下とした。なお、添加する場合のVの含有量は、0.005〜0.1%とすることが好ましく、0.02〜0.08%であればより好ましい。
なお、上記のCu、Ni、MoおよびVは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種以上の複合で含有することができる。
第2群:Cr:1%以下
第2群の元素であるCrは、耐炭酸ガス腐食性を高め、また、焼入れ性を高めるのに有用であるので、これらの効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、Crの含有量は0.05%以上とすることが望ましい。しかしながら、Crの含有量が多くなって1%を超えると、他の元素が本発明で規定する条件を満たしていても、HAZの硬化の抑制が難しくなるうえに耐炭酸ガス腐食性向上効果も飽和する。したがって、添加する場合のCrの含有量は1%以下とした。なお、添加する場合のCrの含有量は、0.05〜1%とすることが好ましく、0.3〜0.6%であれば一層好ましい。
第3群:Nb:0.1%以下
第3群の元素であるNbは、組織を微細化して、低温靱性を向上させる作用を有するので、この効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、Nbの含有量は0.003%以上とすることが望ましい。しかしながら、Nbの含有量が多くなって0.1%を超えると、粗大な炭化物、窒化物や炭窒化物を形成して、靱性の低下を招く。したがって、添加する場合のNbの含有量は0.1%以下とした。なお、添加する場合のNbの含有量は、0.003〜0.1%とすることが好ましく、0.009〜0.03%であれば一層好ましい。
第4群:Ti:0.1%以下
第4群の元素であるTiは、脱酸作用を有する元素である。Tiには、AlおよびMnとともに酸化物を形成し、組織を微細化する作用もある。このため、これらの効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、Tiの含有量は0.005%以上とすることが望ましい。しかしながら、Tiの含有量が多くなって0.1%を超えると、形成される酸化物がTi酸化物、あるいはTi−Al酸化物となって分散密度が低下し、特に小入熱溶接した場合のHAZにおける組織微細化効果が失われる。したがって、添加する場合のTiの含有量は0.1%以下とした。なお、添加する場合のTiの含有量は、0.005〜0.1%とすることが好ましく、0.010〜0.020%であればより好ましい。
第5群:Ca:0.004%以下、
第5群の元素であるCaは、溶接割れや水素誘起割れを抑制する作用を有する。すなわち、Caは、鋼中のSおよびOと反応して溶鋼中で酸硫化物(オキシサルファイド)を形成するが、この酸硫化物はMnSなどと異なって圧延加工で圧延方向に延伸することがなく圧延後も球状で存在するため、延伸した介在物の先端などを割れの起点とする溶接割れや水素誘起割れが抑制される。このため、こうした効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、Caの含有量は0.0005%以上とすることが望ましい。しかしながら、Caの含有量が0.004%を超えると、靱性の劣化を招くことがある。したがって、添加する場合のCaの含有量は0.004%以下とした。なお、添加する場合のCaの含有量は、0.0005〜0.004%とすることが好ましく、0.0010〜0.0020%であればより好ましい。
第6群:Mg:0.006%以下、
第6群の元素であるMgは、微細なMg含有酸化物を生成し、オーステナイト粒を微細化する作用を有するので、この効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、Mgの含有量は0.0001%以上とすることが望ましい。しかしながら、Mgの含有量が0.006%を超えると、酸化物が多くなりすぎて延性の低下をきたす。したがって、添加する場合のMgの含有量は0.006%以下とした。なお、添加する場合のMgの含有量は、0.0001〜0.006%とすることが好ましく、0.0004〜0.0010%であれば一層好ましい。
第7群:REM:0.004%以下、
第7群の元素であるREMは、HAZの組織の微細化およびSを固定する作用を有するので、こうした効果を得るために添加し、含有させてもよい。なお、前記の効果を確実に得るには、REMの含有量は0.0005%以上とすることが望ましい。なお、REMは介在物となって清浄度を大きくして清浄性を低下させるが、REMを含有させることによって形成される介在物は、比較的靱性低下への影響が小さいので、0.004%以下のREMを含む場合の前記介在物による母材の靱性低下は許容できる。したがって、添加する場合のREMの含有量は0.004%以下とした。なお、添加する場合のREMの含有量は、0.0005〜0.004%とすることが好ましく、0.0005〜0.0010%であればより好ましい。
既に述べたように、「REM」は、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMの中の1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。
上記の理由から、本発明(2)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)に係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第1群の元素、すなわち、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有することとした。
同様に、本発明(10)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第1群の元素、すなわち、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有することとした。
また、本発明(3)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)または本発明(2)に係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第2群の元素であるCrを1%以下含有することとした。
同様に、本発明(11)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)または本発明(10)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第2群の元素であるCrを1%以下含有することとした。
さらに、本発明(4)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)から本発明(3)までのいずれかに係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第3群の元素であるNb:0.1%以下を含有することとした。
同様に、本発明(12)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)から本発明(11)までのいずれかに係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第3群の元素であるNb:0.1%以下を含有することとした。
さらにまた、本発明(5)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)から本発明(4)までのいずれかに係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第4群の元素であるTiを0.1%以下含有することとした。
同様に、本発明(13)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)から本発明(12)までのいずれかに係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第4群の元素であるTiを0.1%以下含有することとした。
また、本発明(6)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)から本発明(5)までのいずれかに係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第5群の元素であるCaを0.004%以下含有することとした。
同様に、本発明(14)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)から本発明(13)までのいずれかに係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第5群の元素であるCaを0.004%以下含有することとした。
さらに、本発明(7)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)から本発明(6)までのいずれかに係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第6群の元素であるMgを0.006%以下含有することとした。
同様に、本発明(15)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)から本発明(14)までのいずれかに係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第6群の元素であるMgを0.006%以下含有することとした。
そして、本発明(8)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、その化学組成が、本発明(1)から本発明(7)までのいずれかに係る延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材のFeの一部に代えて、上記第7群の元素であるREMを0.004%以下含有することとした。
同様に、本発明(16)に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材は、その化学組成が、本発明(9)から本発明(15)までのいずれかに係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法において母材として用いる鋼材のFeの一部に代えて、上記第7群の元素であるREMを0.004%以下含有することとした。
なお、Bは不純物として混入することがある元素で、オーステナイト粒界に偏析してフェライト変態を遅らせ、特に、その含有量が0.0004%を超えると、フェライト変態の遅れが大きくなって、溶接止端部のHAZ側ミクロ組織において、フェライトの分率が10〜40%という所望の組織が得られない場合がある。したがって、母材である鋼材における不純物としてのBの含有量は0.0004%以下とするのが好ましい。
(B)溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織:
高張力鋼溶接継手を、溶接部からの延性き裂の発生、なかでも止端部からの延性き裂の発生が構造物の終局的な破壊の原因となる鋼構造分野、特に、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に安全に用いるためには、その溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織を、フェライトおよびベイナイトの分率がそれぞれ、10〜40%および50%以上であるものとする必要がある。
溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織において、上記「フェライトの分率」、「ベイナイトの分率」および「旧オーステナイト粒径」のいずれか1つでも上記の範囲から外れる場合には、表面部からの延性き裂発生の限界歪が小さくなって「耐延性き裂発生特性」が低下してしまう。
なお、既に述べたように、「溶接止端部の熱影響部側」とは、止端から500μmまでの母材の部分を指す。
また、「ベイナイト」は、ラス状ベイニティックフェライトの界面に、セメンタイト若しくはいわゆる「MA constituent」、またはその両者が存在した組織であり、ベイニティックフェライトの内部にセメンタイトが点列状に配列するいわゆる「下部ベイナイト」を含むものを意味し、上記の組織が焼戻しされた組織も含むこと、さらに、板厚が厚く冷却速度が小さい場合には、ベイニティックフェライトの合体によってその見かけ上の形態がラス状から粒状に変化するが、この場合の組織も「ベイナイト」に含むことは、既に述べたとおりである。
前記「溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織」における「相」に関しては、フェライトの分率が10〜40%、ベイナイトの分率が50%以上でありさえすれば、第3相として他の相を含んでいても構わない。
なお、上記「溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織」におけるベイナイトの分率の上限は、フェライトの分率が10%である場合の90%である。
(C)高張力鋼溶接継手の母材である鋼材の製造方法:
本発明に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の母材である鋼材は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼を溶製した後、造塊分塊法や連続鋳造法によりスラブを作製し、その後に例えば、次に示す〔1〕〜〔4〕あるいは〔1〕〜〔5〕の工程を順に経ることにより、製造することができる。そして、その鋼材を溶接継手の母材として用いればよい。
〔1〕スラブの加熱:
高張力鋼溶接継手の母材である鋼材の組織の細粒化は、組織の受け継ぎを通じて溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織に影響を及ぼす。スラブの加熱温度を低温化することで顕著な微細化効果が得られるが、加熱温度が低すぎると所望の板厚までの圧延が困難になるとともに、析出物の固溶−析出挙動が滞ることにより強度不足が生じる。
具体的には、900℃未満の低温での加熱では所望の板厚までの圧延が困難になるとともに、母材である鋼材の強度不足が顕著化する。一方、1150℃を超える加熱では、組織の微細化が進まない。したがって、900〜1150℃にスラブを加熱することが好ましい。
〔2〕加熱後のスラブの水冷:
加熱炉から抽出したスラブは熱間圧延を行うために圧延機に送られるが、圧延機に噛み込ませる前に、加熱炉で発生した一次スケールを除去する目的で、「スケールブレーカー」と呼ばれる高圧水によるスケール除去装置を通過させる。
上記の高圧水によるスラブ表面の処理は、スケールを除去するだけではなく、水冷によりスラブ表面のごく一部の部位をフェライト変態させる作用を有する。なお、スラブ表面が水冷中止状態になると、上記のフェライト変態した部位は、内部からの複熱により再度オーステナイトに逆変態する。そして、この変態挙動が複数回繰り返されることにより、圧延前のスラブ表面の組織は微細になる。
したがって、この加熱後のスラブの水冷工程は極めて有用であるので、例えば、図2に示すように、スケールブレーカーのスラブ迎え側でのノズルの傾き角度(θ)を10〜20゜とし、19.6MPa以上(200kgf/cm2以上)の水圧で行えばよい。
なお、上記スケールブレーカーの水圧の上限は、特に設けないが、高温のスラブの局部塑性変形を防止するため40MPaとするのが好ましい。
〔3〕圧延:
オーステナイトの未再結晶域で圧延を行うことにより、オーステナイト中に微細なサブグレインを形成させることができるので、変態後の組織を微細化することができる。
特に、オーステナイトの未再結晶域で圧延を行うことにより、表面部の組織は顕著に微細化する。
この場合、圧延の仕上温度もある程度低い方がよく、900℃以下とすることが望ましい。しかしながら、圧延の仕上温度が低すぎると、圧延荷重制約から圧延不能となるので、圧延の仕上温度は620℃以上に制御するのが望ましい。
〔4〕圧延後の冷却:
圧延終了後の冷却方法は、例えば、空冷や水冷など、冷却設備や製品の厚さなどに応じて適宜決定すればよい。
なお、仕上圧延で導入された格子欠陥(転位)をより多く維持して最終的な組織を微細化するために、少なくとも600℃までを10℃/s以上の冷却速度で冷却することが望ましい。
〔5〕焼戻し:
上記〔4〕の冷却後は、必要に応じて700℃以下の温度で焼戻しを行ってもよい。焼戻しすることにより、強度を調整することができ、また、靱性を改善することができる。なお、700℃を超える温度で焼戻しを行うと強度の低下が大きくなる。
(D)高張力鋼溶接継手の製造方法:
本発明に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手は、前記(C)項に記載したようにして製造した鋼材を母材として、最終パス溶接時の溶接入熱Q(J/mm)を、「t」を母材の板厚(mm)として、下記(2)式で表されるQcr-Lの値以上で、かつ下記(3)式で表されるQcr-Uの値以下としてアーク溶接する本発明(9)〜(16)の方法によって、確実に製造することができる。
Qcr-L=399.73×(299−1522×PP)-0.5×t・・・(2)、
Qcr-U=599.60×(35.4−236×PP)-0.5×t・・・(3)。
なお、上記の(2)式および(3)式は、D.Rosenthalが「Mathematical Theory of Heat Distribution During Welding and Cutting」(Welding Journal、20(1941)、p.220)において提唱した「Rosenthalの式」を基に、本発明者らが前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼材から採取した小さな試験片に種々の「再現熱サイクル」を付与して実験した結果得られたものである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1および表2に示す化学組成を有する鋼1〜21および鋼X1〜X7の厚さ300mmのスラブを準備し、1120℃に加熱してから表3に示す製造条件で厚板圧延を行い、溶接継手の母材となる板厚15〜50mmの厚鋼板を製造した。
表1および表2中の鋼1〜21は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、表2中の鋼X1〜X7は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
表3の「水冷」欄における「−」は、「水冷」せず空冷したことを示す。同様に、表3の「焼戻し温度」欄における「−」は、「焼戻し」を実施していないことを示す。なお、表3に記載した焼戻し温度における保持時間は40minとした。
Figure 2009041073
Figure 2009041073
Figure 2009041073
先ず、溶接継手の母材としての特性を評価するために、上記のようにして得た各鋼板について引張特性および衝撃特性を調査した。
すなわち、引張試験は、平行部の直径が12.5mmのJIS Z 2201(1998)に記載の10号引張試験片を採取して室温で行い、降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)を測定した。なお、上記の引張試験片は、鋼板の板厚方向の1/4の部位から、圧延方向と平行に採取した。ただし、母材製造条件3および母材製造条件12の場合は板厚が15mmと薄く試験片を前記の部位から採取できないので、引張試験片を平行部の直径が8.5mmで標点間距離が25mmの小型試験片に変えて評価した。
溶接継手の母材である鋼板の引張特性の目標は、250MPa以上のYSと350MPa以上のTSを有することとした。
衝撃試験は、JIS Z 2202(1998)に記載の幅10mmのVノッチ試験片を採取してシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面率を測定して破面遷移温度(vTrs)を求めた。なお、上記のシャルピー衝撃試験片は、鋼板の板厚方向の1/4の部位から、圧延方向と平行に採取した。ただし、母材製造条件3および母材製造条件12の場合は板厚が15mmと薄く試験片を前記の部位から採取できないので、鋼板の表面下2mmの部位から、圧延方向と平行に採取した。
なお、溶接継手の母材である鋼板の衝撃特性の目標は、vTrsが0℃以下であることとした。
表4に、上記鋼板について試験した結果を示す。
Figure 2009041073
次いで、実際の溶接継手止端部の特性を簡便に評価するために、「再現熱サイクル法」による調査を行った。
これは、実際の溶接継手における溶接部からの延性き裂の発生、なかでも溶接止端部からの延性き裂の発生に対しては、止端部のミクロ組織だけではなく、角変形量、残留応力や隣接する溶接金属との強度比なども影響するので、条件を統一した実験を遂行するのが難しいが、「再現熱サイクル法」によれば、止端部のミクロ組織の影響だけを効率良く抽出して検討できるからである。
なお、「角変形」とは、疲労荷重が加わった際に止端部に曲げモード負荷による過大な歪が集中するために発生する溶接部の変形をいう。
上記調査は、各鋼板の表面部(表面下1mmの部位)から圧延方向と直角に、11mm角で長さが80mmの試験片を採取し、この試験片に対して「再現熱サイクル」を付与して溶接止端部のHAZ側ミクロ組織を再現させて実施した。
再現熱サイクルは、図3に示す要領で付与した。
すなわち、先ず、前記した試験片を試験装置にセットして35℃/sの加熱速度で室温から1400℃まで昇温させ、次いで、1400℃で2s保持した後、40℃/sの冷却速度で800℃まで冷却した。そして、溶接止端部のHAZ側ミクロ組織(以下、「止端部直下のHAZのミクロ組織」という。)を再現させるために、さらに、800〜500℃間の冷却速度R(℃/s)を種々変化させて500℃まで冷却し、500℃で試験片を試験装置から取り出して大気中で放冷した。
なお、鋼板の初温(アーク溶接時のパス間温度)を150℃、熱効率を0.9と仮定して、前記した「Rosenthalの式」を基に、下記(4)式によって、そのときの入熱Qを算出した。
Q=39973×R-0.5×T・・・(4)。
ここで、(4)式中のQは入熱(kJ/cm)、Rは800〜500℃間の冷却速度(℃/s)、Tは母材の板厚(cm)を表す。
なお、表5〜8に、前記(4)式から算出した入熱Qの単位をJ/mmにして、「相当入熱」と表記して具体的に示した。
Figure 2009041073
Figure 2009041073
Figure 2009041073
Figure 2009041073
上記のようにして「再現熱サイクル」を付与し、止端部直下のHAZのミクロ組織を再現させた11mm角で長さが80mmの試験片を用いて、そのミクロ組織および耐延性き裂発生特性を調査した。
ミクロ組織については、上記試験片の中央部から切り出した断面が被検面になるように樹脂に埋め込み、鏡面研磨した後、ナイタールで腐食して光学顕微鏡にて11角断面の中央の部位を観察し、組織(相)を同定してミクロ組織における「ベイナイト」、「フェライト」の各分率を求め、さらに第3相の分率も算出した。
耐延性き裂発生特性は、上記再現熱サイクルを付与した11mm角で長さが80mmの試験片から、前述の図1に示す0.1mmRの鋭い環状切欠きを設けた丸棒試験片を採取し、室温で単調に引張載荷して調査した。この際、0.05mmの長さに延性き裂が成長した時点を延性き裂の発生と見なし、さらに、それぞれの応力歪曲線を基に実施したFEM解析を重ね合わせて、延性き裂発生時の相当塑性歪、つまり、延性き裂発生の限界歪を算出した。
そして、上記のようにして求めた延性き裂発生の限界歪によって、前記の各鋼板を母材としてアーク溶接した溶接継手の溶接止端部からの延性き裂発生に対する抵抗性を評価した。
なお、一般的な汎用プログラムとして用いられているHKS社のABAQUS(ver.6.4)をFEM解析に使用し、ノッチ先端の要素寸法は最小辺を30μmとすることで統一した。
耐延性き裂発生特性の目標は、上記のようにして算出した延性き裂発生の限界歪が200%以上であることとした。
表5〜8には、上記の各試験結果も併せて示した。
表5〜8から、本発明で規定する条件を満たす試験番号2、試験番号4、試験番号5、試験番号7、試験番号8、試験番号10、試験番号11、試験番号14、試験番号15、試験番号18〜20、試験番号22、試験番号23、試験番号25、試験番号26、試験番号28、試験番号29、試験番号31〜34、試験番号38〜41、試験番号44、試験番号45、試験番号47〜49、試験番号52〜54、試験番号56〜59、試験番号61、試験番号62、試験番号65および試験番号66の場合、溶接止端部からの延性き裂発生の限界歪が200%以上であり、耐延性き裂発生特性に優れており、しかも、表4から、母材の引張特性および衝撃特性も目標を達成していることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する母材の化学組成や止端部直下のHAZのミクロ組織の条件から外れた試験番号の場合、溶接止端部からの延性き裂発生の限界歪が200%を下回っており、耐延性き裂発生特性において劣っている。
すなわち、試験番号1および試験番号3は、試験番号2の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼1からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、試験番号1の場合はフェライト分率が9%と低いため、また、試験番号3の場合はフェライト分率が50%と高くベイナイト分率が43%と低いため、それぞれ、延性き裂発生の限界歪が177%および178%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
同様に、試験番号6および試験番号9は、試験番号4、試験番号5、試験番号7および試験番号8の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼2からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、試験番号6の場合はフェライト分率が51%と高くベイナイト分率が43%と低いため、また、試験番号9の場合はフェライト分率が51%と高くベイナイト分率が43%と低いため、その延性き裂発生の限界歪はいずれも177%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号12は、試験番号10および試験番号11の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼3からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が45%と高いため、その延性き裂発生の限界歪は178%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号13は、試験番号14および試験番号15の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼4からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が2%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は152%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号16および試験番号17は、試験番号18の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼5からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が6%および8%と低いため、それぞれ、延性き裂発生の限界歪が166%および173%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号21は、試験番号19および試験番号20の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼6からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が57%と高くベイナイト分率が36%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は155%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号24は、試験番号22および試験番号23の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼7からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が59%と高くベイナイト分率が34%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は150%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号27は、試験番号25および試験番号26の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼8からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が59%と高いため、その延性き裂発生の限界歪は150%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号30は、試験番号28および試験番号29の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼9からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が60%と高くベイナイト分率が33%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は146%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号35および試験番号36は、試験番号34の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼11からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、試験番号35の場合はフェライト分率が57%と高くベイナイト分率が31%と低いため、また、試験番号36の場合はフェライト分率が84%と高くベイナイト分率が5%と低いため、それぞれ、延性き裂発生の限界歪が154%および61%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号37は、試験番号38および試験番号39の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼12からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、ベイナイト100%の組織でフェライト分率が0%であるため、その延性き裂発生の限界歪は145%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号42は、試験番号40および試験番号41の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼13からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が55%と高くベイナイト分率が38%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は163%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号43は、試験番号44および試験番号45の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼14からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が7%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は170%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号46は、試験番号47および試験番号48の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼15からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が6%と低いため、延性き裂発生の限界歪が166%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号50および51は、試験番号49の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼16からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が56%および74%と高く、また、特に試験番号51についてはベイナイト分率も16%と低いため、それぞれ、延性き裂発生の限界歪が166%および115%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号55は、試験番号56および試験番号57の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼18からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が8%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は173%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号60は、試験番号58および試験番号59の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼19からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が59%と高くベイナイト分率が34%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は150%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号63は、試験番号61および試験番号62の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼20からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が64%と高くベイナイト分率が28%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は132%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号64は、試験番号65および試験番号66の場合と同じ化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼22からなる鋼板を素材として用いたものであるが、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件から外れるため、具体的には、フェライト分率が5%と低いため、その延性き裂発生の限界歪は163%と小さく、耐延性き裂発生特性が劣っている。
試験番号67〜87の場合は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼X1〜X7からなる鋼板を素材として用いたものであるため、止端部直下のHAZのミクロ組織が本発明で規定する条件を満たす場合であっても、その延性き裂発生の限界歪は高々148%と小さく、いずれも耐延性き裂発生特性が劣っている。
なお、表5〜8から、本発明に係る高張力鋼溶接継手が、本発明の方法によって製造することができることが明らかである。
本発明に係る溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手は、耐延性き裂発生特性に優れるので、溶接部からの延性き裂の発生、なかでも止端部からの延性き裂の発生が構造物の終局的な破壊の原因となる鋼構造分野、特に、地震負荷を受ける橋梁や建築などの地上構造物分野に用いることができる。この高張力鋼溶接継手は、本発明の方法によって製造することができる。
耐延性き裂発生特性調査のために用いた環状切欠きを設けた丸棒引張試験の形状を示す図で、(a)は全体図、(b)は環状切欠き部の詳細図である。 スケールブレーカーのスラブ迎え側でのノズルの傾き角度(θ)について説明する図である。 実施例において、11mm角で長さが80mmの試験片に対して止端部直下のHAZのミクロ組織(溶接止端部のHAS側ミクロ組織)を再現させるために付与した再現熱サイクルの要領を説明する図である。

Claims (16)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.4〜2%、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Al:0.002〜0.05%およびN:0.0030〜0.01%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足する鋼材を母材としてアーク溶接した溶接継手であって、溶接止端部の熱影響部側ミクロ組織において、フェライトおよびベイナイトの分率がそれぞれ、10〜40%および50%以上であることを特徴とする溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
    PP=(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)・・・(1)
    ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  3. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  4. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  5. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下を含有することを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  6. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下を含有することを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  7. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Mg:0.006%以下を含有することを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  8. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、希土類元素:0.004%以下を含有することを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手。
  9. 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.4〜2%、P:0.05%以下、S:0.003%以下、Al:0.002〜0.05%およびN:0.0030〜0.01%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、下記(1)式で表されるPPの値が0.05〜0.15を満足する鋼材を母材としてアーク溶接する溶接継手の製造方法であって、最終パス溶接時の溶接入熱Q(J/mm)を、下記(2)式で表されるQcr-Lの値以上で、かつ下記(3)式で表されるQcr-Uの値以下として溶接することを特徴とする溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
    PP=(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)・・・(1)
    Qcr-L=399.73×(299−1522×PP)-0.5×t・・・(2)
    Qcr-U=599.60×(35.4−236×PP)-0.5×t・・・(3)
    ここで、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表し、また、(2)式および(3)式中のtは母材の板厚(mm)を表す。
  10. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.8%以下、Ni:1%以下、Mo:0.8%以下およびV:0.1%以下のうちの1種以上を含有するものである請求項9に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  11. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1%以下を含有するものである請求項9または10に記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  12. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下を含有するものである請求項9から11までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  13. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.1%以下を含有するものである請求項9から12までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  14. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.004%以下を含有するものである請求項9から13までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  15. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、Mg:0.006%以下を含有するものである請求項9から14までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
  16. 母材となる鋼材が、Feの一部に代えて、質量%で、希土類元素:0.004%以下を含有するものである請求項9から15までのいずれかに記載の溶接部からの延性き裂発生に対する抵抗性に優れる高張力鋼溶接継手の製造方法。
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