JP2009040877A - ポリブテン樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリブテン樹脂をメルト状態から成形加工する場合において、成形加工後のひずみの小さいポリブテン樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリブテン樹脂の製造法であって、有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱してポリブテンの安定結晶(I型)を選択的に残し、該安定結晶(I型)を核としてポリブテンの安定結晶(I型)を成長させることを特徴とするポリブテン樹脂の製造方法
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリブテン樹脂の製造方法に関する。
ポリブテン樹脂は、軟化温度が113〜121℃と高く、塩化ビニル等に比べて丈夫であり、さらに、リサイクルが可能であるという利点を有するので、給水・給湯用プラスチックパイプとして使用されている。また、酸素透過性を有するといわれているので、医療機器用材料としても使用され得る。
しかしながら、ポリブテン樹脂は、メルト状態から成形加工すると、まず、正方晶の不安定結晶(II型)(図3参照)が生成し、その後、三方晶の安定結晶(I型)(図1参照)への結晶相転移をするために、成形加工後に樹脂にひずみ(くるい)、変形等を生じ、製品化を行う上で大きな問題となっている。
従来、このような問題点を解決しようとする試みがなされており、例えば、非特許文献1の方法では、ポリブテン樹脂の成形加工時に、周期的に変動する圧力を樹脂に印加しながら樹脂を結晶成長させることにより、成形加工後の結晶相転移によるひずみを軽減する方法が開示されている。
しかしながら、この方法は、結晶相転移に伴うひずみ、変形等を外力によって抑えようとするものであり、結晶相転移に伴うひずみそのものを回避することはできない。これは、給水・給湯用樹脂パイプ等の比較的大きな製品の成形加工においては致命的な欠点である。また、精密加工が可能なポリブテン樹脂の実用化への大きな障壁となっている。
さらに、例えば、非特許文献2には、窒素雰囲気下、高温(約110℃)で5日間程度かけてメルト状態のポリブタン樹脂の超薄膜中で、ポリブテンの安定結晶を生成する方法が開示されている。
しかしながら、この方法は、窒素雰囲気下でポリブテン樹脂を5日以上高温加熱する必要があり、さらに、超薄膜材料にしか適用できないという問題点を有するので、実用化は困難である。
現在、ポリブテン樹脂を用いた製品としては、(1)ポリブテン樹脂に可塑剤を添加することによって柔軟性を高めたもの、(2)ポリブテン樹脂を架橋することによって変形を防ぎ、強度を高めたもの、(3)アタクチックポリブテンを多く含んだポリブテン樹脂、すなわち、結晶成分の少ないポリブテン樹脂を用いたもの等がある。
ところが、現在製品化されているこれらのポリブテン樹脂は、力学的強度、耐久性、耐熱性が低く、また、屋外での使用・設置・保管はできず、特に日光の当たる場所での設置は厳禁であるなど、適用範囲が著しく制限されている。
Journal of Polymer Science: Part B: Polymer Physics, Vol.40, 1828-1834 (2002) Journal of Polymer Science: Part B: Polymer Physics, Vol.40, 2641-2645 (2002)
本発明は、ポリブテン樹脂をメルト状態から成形加工する場合において、成形加工後のひずみの小さいポリブテン樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、次の知見を得た。
(1)有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱することにより、ポリブテンの安定結晶を選択的に得ることができる。
(2)該安定結晶を核(すなわち、種結晶)として、ポリブテンの安定結晶を成長させることにより、ポリブテンの不安定結晶(II型)を経ずに、直接、ポリブテンの安定結晶(I型)が成長したポリブテン樹脂が得られる。
(3)本発明の製造方法によって得られるポリブテン樹脂は、ポリブテンの不安定結晶(II型)を経ずに、直接、ポリブテンの安定結晶(I型)が成長して得られているので、不安定結晶から安定結晶へ結晶相転移する際に生じるひずみの小さいポリブテン樹脂が得られる。
(4)本発明の製造方法で得られたポリブテン樹脂は、成形加工後に生じる、結晶相転移に起因するひずみが非常に小さいため、給水・給湯用樹脂パイプ等の比較的大きな成形加工品、精密加工品等として好適に使用できる。
本発明は、この様な知見に基づき完成されたものであり、下記項1〜項6に示すポリブテン樹脂の製造方法を提供する。
項1. ポリブテン樹脂の製造法であって、有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱して安定結晶(I型)を選択的に残し、該安定結晶(I型)を核としてポリブテンの安定結晶(I型)を成長させることを特徴とするポリブテン樹脂の製造方法。
項2. ポリブテン樹脂の加熱温度が124〜141℃である項1に記載のポリブテン樹脂の製造方法。
項3. ポリブテン樹脂の加熱時間が、0.1秒〜10分間である項1又は2に記載のポリブテン樹脂の製造方法。
項4. ポリブテンの安定結晶(I型)を55〜100℃で成長させる項1〜3のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
項5. 有機溶媒が、炭素数7〜10の芳香族炭化水素、炭素数6〜12の脂肪族炭化水素、炭素数6〜12の脂環式炭化水素、α‐クロロナフタレン、ジブチルマレエート、アミルアセテートからなる群から選ばれた少なくとも1種である項1〜4のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
項6. ポリブブテン樹脂の結晶成分含有率が45〜90重量%である項1〜5のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
従来、ポリブテン樹脂の成形加工後に発生する、正方晶の不安定結晶(II型)から三方晶の安定結晶(I型)への結晶相転移に起因するひずみ、変形等を小さくする手段としては、樹脂に圧力をかけながら成型加工を行う等、結晶相転移によって生じるひずみを外力によって抑えること等に主に焦点が当てられており、結晶相転移そのものを抑えることはできなかった。従って、現在、ポリブテン樹脂を製品化したものとしては、可塑剤を添加したもの、架橋によって強度を向上させたもの、結晶相転移によるひずみの原因となる結晶化成分の少ないアタクチックポリブテンを使用したもの等に限られている。
本発明によれば、有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱することにより、ポリブテンの安定結晶を選択的に得ることができる。さらに、該安定結晶を核として、ポリブテンの安定結晶を成長させることにより、ポリブテンの不安定結晶(II型)を経ずに、直接、ポリブテンの安定結晶(I型)が成長したポリブテン樹脂が得られるという優れた効果を有する。
本発明の製造方法によって得られたポリブテン樹脂は、ポリブテンの不安定結晶(II型)を経ずに、直接、ポリブテンの安定結晶(I型)が成長して得られているので、不安定結晶から安定結晶へ結晶相転移する際に生じるひずみの問題を回避でき、ひずみ、変形が極めて小さいポリブテン樹脂が得られる。
本発明の製造方法によって得られたポリブテン樹脂は、従来のポリブテン樹脂に比べてひずみが小さいので、給水・給湯用樹脂パイプ等の比較的大きな成形加工品、精密加工品等として好適に使用できる。
特に、本発明において、ポリブテン樹脂中の結晶成分含有率が45〜90%と高い樹脂(例えば、アイソタクチックのポリブテン樹脂等の結晶成分の多いポリブテン樹脂)を使用すれば、力学的強度、耐久性、耐熱性が極めて高く、屋外での設置・使用も可能なポリブテン樹脂が得られる。
本発明のポリブテン樹脂の製造方法は、有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱してポリブテンの安定結晶(I型)を選択的に残し、該安定結晶(I型)を核としてポリブテンの安定結晶(I型)を成長させることを特徴とするポリブテン樹脂の製造方法である。
本発明で使用するポリブテン樹脂としては、市販品を使用しても良く、従来公知の方法によって得られたものを使用しても良い。
ポリブテン樹脂の分子量(重量平均)は、通常、2000〜4000000程度、好ましくは、8000〜3000000程度、より好ましくは、100000〜300000程度である。
ポリブテン樹脂は、「木の幹」に相当する主鎖の部分と、「木の枝」に相当する側鎖の部分から構成され、主鎖に対する側鎖の付き方の規則性の違いによって、アイソタクチック(主鎖に対し側鎖が規則正しく同じ方向の立体配置をとっているもの)、シンジオタクチック(主鎖に対し側鎖が交互に規則正しく反対方向の立体配置をとっているもの)、アタクチック(主鎖に対し側鎖が無規則な方向の立体配置を取っているもの)に分けられる。
本発明で使用するポリブテン樹脂としては、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックの何れのポリブテン樹脂であってもよい。また、これらを任意の割合で混合したポリブテン樹脂を使用しても良い。
主鎖に対する側鎖の付き方の規則性が高いポリブテン樹脂ほど、成形加工後の製品に含まれる結晶成分の含有率が高くなるため、製品の強度と耐久性を高めることができる。
ところが、例えば、主鎖に対する側鎖の付き方の規則性が高いアイソタクチックのポリブテン樹脂は、樹脂中の結晶成分が多い(通常、45〜90重量%程度)ため、成形加工後の不安定結晶から安定結晶への結晶相転移に伴うひずみが非常に大きくなってしまう。
一方、規則性が小さいポリブテン樹脂ほど、成形加工後の製品に含まれる結晶成分の含有率が低くなるため、ポリブテン樹脂の成形加工後に生じる不安定結晶から安定結晶への結晶相転移に伴うひずみは小さくなる。
従って、一般的に使用されるポリブテン樹脂は、規則性が小さいアタクチック、すなわち、樹脂中の結晶成分が少ない(通常、1〜30重量%程度)ポリブテン樹脂である。
樹脂中の結晶成分が少ないポリブテン樹脂は、成形加工後のひずみは小さいが、力学的強度、耐久性、耐熱性が低く、屋外での設置・使用ができない(特に、日光の当たる場所での設置・保管は厳禁)等、適用範囲が著しく制限される。
本発明の製造方法によれば、ポリブテン樹脂の成形加工後に生じる不安定結晶から安定結晶への結晶相転移に伴うひずみ、変形を極めて小さくできるので、本発明において、例えば、ポリブテン樹脂中の結晶成分の含有率が45〜90重量%と高い樹脂(例えば、アイソタクチックのポリブテン樹脂等)を使用すれば、力学的強度、耐久性、耐熱性が高く、屋外での設置・使用も可能なポリブテン樹脂が得られる。
本発明で使用する有機溶媒としては、ポリブテン樹脂が溶解し、加熱等によって溶液中から有機溶媒を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば、パラキシレン、メタキシレン、オルトキシレン、トルエン等の炭素数7〜10の芳香族炭化水素;ヘキサン、オクタン等の炭素数6〜12の脂肪族炭化水素;デカリン等の炭素数6〜12の脂環式炭化水素;α‐クロロナフタレン、ジブチルマレエート、アミルアセテート等が挙げられ、これらの中でも、炭素数7〜10の芳香族炭化水素及びジブチルマレエート(dibutyl maleate)が好ましく、パラキシレンが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で使用しても良いし、2種以上混合して使用しても良い。
溶液中のポリブテン樹脂の濃度は、通常、0.001〜1重量%程度、好ましくは、0.01〜0.5重量%程度、より好ましくは0.1〜0.2重量%程度である。
本発明においては、成形加工に使用するポリブテン樹脂を上記有機溶媒で溶解し、得られた溶液から有機溶媒を除去したポリブテン樹脂を加熱することにより、ポリブテン樹脂中の融点の低いポリブテンの不安定結晶(II型)が、融点の高いポリブテンの安定結晶(I型)よりも早く融解し、ポリブテンの安定結晶(I型)を選択的に残すことができる。そのようにして得られたポリブテンの安定結晶(I型)を核(種結晶)とすることによって、ポリブテンの安定結晶を選択的に成長させることができる。
例えば、J Res Natl Bur Stand Sect A (US) 1965, 69, 335(J. Powers, J.D. Hoffman, J.J. Weeks and F.A. Quinn, Jr.)にも記載されており、また、下記の比較例1及び2でも示されているように、成形加工に使用するポリブテン樹脂をあらかじめ有機溶媒に溶解しなくても、ポリブテン樹脂を加熱することにより、融点の低いポリブテンの不安定結晶(II型)が、融点の高いポリブテンの安定結晶(I型)よりも早く融解し、ポリブテンの安定結晶(I型)を溶融体(メルト材料)中に選択的に残すことはできる。しかしながら、そのようにして得られたポリブテンの安定結晶を核としてポリブテンの安定結晶を選択的に成長させようとしても、本発明のようにポリブテンの安定結晶が選択的に成長したポリブテン樹脂を得ることはできない。
上記文献でPowersらは、正方晶(不安定結晶)から三方晶(安定結晶)への転移によって得た三方晶を融点近くまで加熱することにより、三方晶の微結晶を溶融体中に多数生成させた。その後100℃まで冷却して、三方晶の微結晶を核にして三方晶が成長する様子を観察しようと試みたが、三方晶を成長させることはできなかったと報告している。100℃まで冷却した後、成長が観察されたのは新たに生成した正方晶(不安定結晶)のみであった。
ポリブテン樹脂中のポリブテンの不安定結晶(II型)の融点は、成形加工前のポリブテン樹脂が結晶化された温度によっても異なるが、通常、101〜129℃程度である。また、ポリブテン樹脂中のポリブテンの安定結晶(I型)の融点は、成形加工前のポリブテン樹脂が結晶化された温度によっても異なるが、通常、128〜142℃程度である。
加熱によりポリブテンの安定結晶を選択的に得るには、ポリブテン樹脂を加熱する前にあらかじめ上記有機溶媒を溶液中から除去しておくのが好ましい。有機溶媒を除去する方法としては、例えば、ポリブテン樹脂の溶液を適当な温度に加熱して、有機溶媒のみを蒸発除去する方法等が挙げられる。
ポリブテン樹脂を溶媒に溶解する温度は、使用する溶媒の種類によって異なるが、通常、50〜150℃程度、好ましくは60〜130℃程度、より好ましくは70〜120℃程度である。
加熱により溶液中から有機溶媒を蒸発除去する場合、溶液の加熱温度は、使用する有機溶媒の種類によって異なるが、通常、50〜140℃程度、好ましくは55〜130℃程度、より好ましくは60〜120℃程度である。
ポリブテンの安定結晶を選択的に得るために、ポリブテン樹脂を加熱する温度は、通常、124〜141℃程度、好ましくは128〜136℃程度、より好ましくは130〜134℃程度とすればよい。この範囲の温度にポリブテン樹脂を加熱することにより、ポリブテン樹脂中の安定結晶を選択的に残すことができる。
ポリブテン樹脂中の安定結晶を上記加熱温度において選択的に残す際には、ポリブテンの不安定結晶が融解し、安定結晶の微結晶が残っていることを光学顕微鏡で確認しながら加熱することもできる。このようにすることで、より正確にポリブテンの安定結晶を選択的に残すことができる。
ポリブテン樹脂の加熱時間は、ポリブテン樹脂中の不安定結晶が融解し、安定結晶が残る程度に適宜設定すれば良いが、通常、0.1秒〜10分間程度、好ましくは1秒〜3分間程度、より好ましくは10秒〜2分間程度である。
本発明においては、ポリブテン樹脂の加熱により選択的に得られたポリブテンの安定結晶(三方晶)を核とし、冷却することによってポリブテンの安定結晶が選択的に成長し、不安定結晶(正方晶)から安定結晶(三方晶)へ結晶相転移する際に生じるひずみの問題が回避されるので、成形加工後のひずみ、変形等が極めて小さいポリブテン樹脂が得られる。
ポリブテンの安定結晶を成長させる際には、通常、1〜60℃/分程度、好ましくは5〜20℃/分程度、より好ましくは10〜15℃/分程度で冷却すればよい。
ポリブテンの安定結晶を成長させる温度は、通常、55〜100℃程度、好ましくは65〜94℃程度、より好ましくは、70〜94℃程度である。
ポリブテンの安定結晶を成長させる際には、上記の中の一定の温度に保持して安定結晶を成長させても良く、また、上記の温度範囲で温度を変化させながら安定結晶を成長させても良い。
上記のようにして得られた本発明のポリブテン樹脂は、該ポリブテン樹脂を不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に再度加熱することにより、あらかじめ有機溶媒に溶解しなくても、ポリブテン樹脂のメルト中に存在するポリブテンの安定結晶を核としてポリブテンの安定結晶が選択的に成長する。
本発明の製造方法によって得られたポリブテン樹脂は、正方晶(不安定結晶)からの転移によって得られた三方晶(安定結晶)ではなく、一度有機溶媒に溶解されたポリブテン樹脂を加熱することによって得られた三方晶の核から、直接、三方晶を成長させたものなので、本発明の製造方法によって得られたポリブテン樹脂を種結晶としてポリブテン樹脂の溶融体(メルト材料)中で成長させた三方晶は、ポリブテン樹脂のメルト材料中で(その由来を問わず)結晶成長のための核として働く。
従って、ポリブテン樹脂のメルト材料(その由来を問わず)に、上記のようにして得られた本発明のポリブテン樹脂を種結晶として添加することにより、ポリブテンの安定結晶が選択的に成長したポリブテン樹脂を得ることも可能である。
以下に、本発明のポリブテン樹脂の製造方法の実施例及び比較例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、ポリブテン樹脂の結晶成長及び以下に記す熱処理には、加熱器(Mettler社製のFP82)を使用し、ポリブテン樹脂の観察は、光学顕微鏡(ニコン社製のOPTIPHOT2)を使用した。また、結晶の成長速度は、直径又は主軸の時間変化を光学顕微鏡により観測して得た。
比較例1において用いたX線回折実験用高温試料ホルダーは、真鍮製の躯体に雲母板を巻きつけて絶縁した上からニクロム線を50回程度巻きつけて石膏で固めたものを使用した。
また、以下の実施例及び比較例において、アイソタクチックのポリブテン樹脂(以下、it−PB1という)は、分子量185000、メルト・インデックス 20g/10min、結晶化度φ=50%を使用した。
実施例1
it−PB1を約70〜90℃に加熱したパラキシレンに溶解し、0.1重量%のit−PB1のパラキシレン溶液を得た。60〜80℃に保持されたホットプレート上に、カーボンを蒸着した雲母板を設置し、この上に得られた溶液を滴下し、そのまま60〜80℃に保持されたホットプレートで約30秒間加熱してパラキシレンを蒸発させ、it−PB1の薄膜を複数作製した。
空気中で乾燥されたit−PB1の薄膜は、それぞれ厚さ約80nm、金色又は青色・藍色の干渉色をもつ薄膜であった。
このit−PB1の薄膜を加熱器でそれぞれ128〜136℃で2分間加熱した。その後、1分間に15℃の速度で、57〜94℃に冷却し、それぞれ94℃、90.1℃、87.8℃、75℃、68℃、65℃、63℃、62℃、61℃、60℃、59℃、58℃及び57℃の各温度で結晶を成長させたポリブテン樹脂を得た。
加熱器の上で結晶成長させたit−PB1の薄膜は、室温まで冷却したのち、光学顕微鏡で観察した。
75℃及び94℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂の任意の一点についての光学顕微鏡写真をそれぞれ図1及び図2に示す。図1及び図2から分かるように、三方晶(ポリブテンの安定結晶)が多数確認された。
また、上記75℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂に含まれる三方晶の透過電子顕微鏡写真を図4(a)に、電子回折図形を図4(b)にそれぞれ示す。図4(a)及び図4(b)から明らかなように、上記75℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂に含まれる三方晶は(紙面に対して板面が並行な)薄い板状の結晶である。なお、図4(a)において、結晶の中央部に見える白い点状の部分は、安定結晶を成長させる際に核となった部分である。
さらに、上記75℃で結晶成長させた際の、三方晶の成長過程を図5(a)〜(d)に示す。図5(a)は、75℃に冷却した直後のポリブテン樹脂の光学顕微鏡写真である。この段階では、安定結晶(三方晶)は非常に小さい。その後、3分間隔でポリブテン樹脂の光学顕微鏡写真を連続撮影したものが、それぞれ順に図5(b)、(c)及び(d)である。図5(a)〜(d)から、三方晶が成長していく様子が分かる。
比較例1
it−PB1を加熱器で150℃、5分間保持して完全に融解させたのち、15℃/分にて82℃まで冷却し、82℃のまま20分間結晶成長させることにより正方晶(不安定晶)結晶よりなる試料を得た。この段階で試料の形状は厚さ1mm、直径10mmの板状であった。
この結晶化試料を室温で三日間放置し、正方晶(不安定結晶)の一部を三方晶(安定結晶)に固相転移(結晶相転移)させた。得られた試料を1mm×1mm×10mmの角柱状にかみそりで切断し、内径15mmの石英ガラス管でできた内部セルに入れ、高温試料ホルダーとX線発生装置(リガク社製Rigaku-RU200PL)およびイメージングプレートシステム(Rigaku R-AXIS II)を用いてX線広角回折実験を行った。カメラ長は80mmに設定し、X線はニッケル箔でフィルターをかけたものを用いた。試料の温度を徐々に上昇させつつX線回折パターンを観測したところ、100℃では三方晶、正方晶両方の回折パターンが観測されたが、115℃では三方晶の回折パターンのみが観測され、115℃では溶融体中に三方晶の結晶のみが残っていることが確認された。
次に、この試料を1℃/分の速度で115℃から110℃まで冷却し、5日間110℃に保持してX線回折パターンを観測した。その結果、試料中の三方晶の回折強度は上昇せず、むしろ低下することが観測された(三方晶が成長すれば、回折に寄与する結晶成分が増加することになるため、三方晶の回折強度が上昇することになる)。この結果より、正方晶から三方晶への転移によって得られた三方晶を核として、110℃下で三方晶を成長させようとしても、成長させることはできないことがわかった。
比較例2
it−PB1を2枚のカバーガラスの間にはさみ、150℃に加熱したホットプレート上で押し伸ばすことで、厚さ10μm、直径15mmのフィルム状試料を作製した。このit−PB1フィルムを150℃で2分間保持して完全に融解させたのち、15℃/分にて90℃まで冷却し、90℃で3時間結晶成長させることにより正方晶(不安定晶)結晶よりなる試料を得た。この結晶化試料にかみそりの刃の部分を押し当てることで部分的に応力を印加し、正方晶の一部を三方晶に固相転移させた。
得られた試料を115℃まで加熱し、正方晶から三方晶への転移によって得られた三方晶部分のみを溶融体中に残した後、10℃/分にて100℃まで冷却し、2日間100℃に保持して試料中の結晶を観察した。
固相転移によって得られた三方晶が結晶核となって成長すれば、三方晶のサイズが大きくなるのが観察されるはずである。しかしながら、固相転移によって得られた三方晶が成長する様子は観察できず、約2時間後には三方晶の周囲で正方晶の結晶核が生成し、26時間後には溶融体全体が正方晶の結晶で埋め尽くされた。(正方晶と三方晶は、成長速度が大きく異なっているため、成長速度から周囲に生成した結晶が正方晶であることが同定された。)
この結果より、応力転移によって得られた三方晶を核として100℃で成長させようとしても、三方晶を選択的に成長させることはできないことがわかった。
実施例1において、75℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂中の、任意の一点を撮影した光学顕微鏡写真である。やや角の取れた六角形の三方晶が多数確認される。 実施例1において、94℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂中の、任意の一点を撮影した光学顕微鏡写真である。六角形の三方晶が多数確認される。 (a)は、ポリブテン樹脂中に含まれる不安定結晶(正方晶の単結晶)の光学顕微鏡写真である。 (b)は、ポリブテン樹脂中に含まれる不安定結晶(正方晶の単結晶)の電子顕微鏡写真である。図3(b)中に示されている円は、制限視野回折を行った範囲である。 (c)は図3(b)の結晶の制限視野電子線回折図形である。四回対称性をもつ電子線回折スポットが観測され、その全てがポリブテン正方晶によって指数付けすることが出来るため、図3(b)の結晶がポリブテン正方晶であると同定される。 (a)は、実施例1において、75℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂に含まれる三方晶(単結晶)の透過電子顕微鏡写真である。図4(a)上部の円弧は制限視野しぼりである。(b)は、実施例1において、75℃で結晶成長させて得られたポリブテン樹脂に含まれる三方晶(図4(a)の結晶)の制限視野電子線回折図形である。観測された全ての電子線回折スポットがポリブテン三方晶によって指数付けすることが出来るため、図4(a)の結晶がポリブテン三方晶であると同定される。 (a)〜(d)は、実施例1において、75℃に冷却した直後(a)から3分間隔で連続撮影((b)、(c)、(d)の順)したポリブテン樹脂の光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)から、三方晶が成長していく様子が分かる。

Claims (6)

  1. ポリブテン樹脂の製造法であって、有機溶媒に溶解してなるポリブテン樹脂から有機溶媒を除去し、得られたポリブテン樹脂をポリブテンの不安定結晶(II型)の融点を超えて安定結晶(I型)の融点未満の温度に加熱して安定結晶(I型)を選択的に残し、該安定結晶(I型)を核としてポリブテンの安定結晶(I型)を成長させることを特徴とするポリブテン樹脂の製造方法。
  2. ポリブテン樹脂の加熱温度が124〜141℃である請求項1に記載のポリブテン樹脂の製造方法。
  3. ポリブテン樹脂の加熱時間が、0.1秒〜10分間である請求項1又は2に記載のポリブテン樹脂の製造方法。
  4. ポリブテンの安定結晶(I型)を55〜100℃で成長させる請求項1〜3のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
  5. 有機溶媒が、炭素数7〜10の芳香族炭化水素、炭素数6〜12の脂肪族炭化水素、炭素数6〜12の脂環式炭化水素、α‐クロロナフタレン、ジブチルマレエート、アミルアセテートからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
  6. ポリブブテン樹脂の結晶成分含有率が45〜90重量%である請求項1〜5のいずれかに記載のポリブテン樹脂の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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