JP2009033344A - ダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラ - Google Patents

ダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラ Download PDF

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Abstract

【課題】ダブルトーク検出精度及びダブルトーク検出速度の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】本発明のダブルトーク検出器は、エコーキャンセラの残差信号に基づき近端の背景雑音の電力推定値を求める近端背景雑音推定手段と、送信入力信号の平均電力値を求める送信入力平均電力算出手段と、受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出手段と、近端の背景雑音の電力推定値、送信入力信号及び受信入力信号の各平均電力値に基づいて、所定のエコーパス減衰値推定方法により、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値推定手段と、エコーパス減衰推定値、送信入力信号の平均電力値及び受信入力信号の平均電力値に基づいてダブルトーク状態を検出し、適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク判定手段を備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラに関し、例えば、適応フィルタにより構成されるエコーキャンセラにおいて、適応フィルタの係数更新のイネーブル(Enable)/ディセーブル(Disable)制御を行うダブルトーク検出器及びこのダブルトーク検出器を有するエコーキャンセラに適用し得るものである。
図2は、従来の一般的なエコーキャンセラの構成を示す構成図である。まず、図2を用いて、従来のエコーキャンセラ及びダブルトーク検出器の動作について説明する。
図2に示すように、エコーキャンセラ1は、擬似エコー生成部11、減算器12及びダブルトーク検出器13を有して構成される。
擬似エコー生成部11は、学習機能を持つ適応フィルタであって、受信入力端子Rinより入力される受信入力信号x(n)から、擬似エコーyr(n)を生成するものである。また、擬似エコー生成部11は、残差出力端子RESより出力される残差信号e(n)を、適応フィルタ特性とエコーパス伝達特性の差分によって生じた誤差とみなし、適応フィルタ特性がエコーパス伝達特性に収束するように、適応フィルタの係数を更新していくものである。
エコーキャンセラの受信入力端子Rinには、遠端話者から受信する受信入力信号x(n)が入力される。この受信入力信号x(n)は、近端側に向けて受信出力端子Routから出力されるとともに、擬似エコー生成部11(適応フィルタ)に入力される。
受信出力端子Routから出力される信号x(n)は、2線4線変換機能を有するハイブリッド回路2を経由して、近端話者へ送られる。また、ハイブリッド回路(エコーパス)2では、エコーy(n)が発生し、エコーy(n)と近端話者から送出される近端送出信号t(n)とが加算された送信入力信号d(n)が、エコーキャンセラの送信入力端子Sinに入力される。
d(n)=y(n)+t(n)…(1)
減算器12は、送信入力信号d(n)から擬似エコー信号yr(n)を差し引き、残差信号e(n)を出力するものである。
e(n)=d(n)−yr(n)…(2)
減算器12の出力である残差信号e(n)には、フィルタ特性とエコーパス伝達特性の差分によって生じる残留エコーΔy(n)(=y(n)−yr(n))と、近端送出信号t(n)が含まれる。
Δy(n)=y(n)−yr(n)…(3)
式(2)に、式(1)を代入する。
e(n)=d(n)−yr(n)=y(n)+t(n)−yr(n)
=(y(n)−yr(n))+t(n)…(4)
式(3)、式(4)より、
e(n)=Δy(n)+t(n)・・・(5)
受信入力信号x(n)が無信号(x(n)=0)のとき、残差信号e(n)の信号成分は近端送出信号t(n)のみとなるので、適応フィルタの係数更新をディセーブルにすることにより、適応フィルタの係数が発散しないように制御する必要がある。
受信入力信号x(n)に音声信号が存在し、近端送出信号t(n)が無信号(t(n)=0)であるとき、即ち、シングルトーク状態のとき、残差信号e(n)の信号成分は残留エコーΔy(n)のみとなるので、この残差信号e(n)を適応フィルタ特性とエコーパス伝達特性の差分によって生じた誤差とみなして適応フィルタの係数を更新していけば、適応フィルタの特性はエコーパスの特性に収束していく。従って、シングルトーク状態においては、適応フィルタの係数更新をイネーブルにすれば良い。
受信入力信号x(n)と近端送出信号t(n)の両方に音声信号が存在するとき、即ち、ダブルトーク状態のとき、残差信号e(n)には、適応フィルタ特性とエコーパス伝達特性の差分によって生じる残留エコーΔy(n)と、近端送出信号t(n)とが含まれるので、適応フィルタの係数更新をディセーブルにすることにより、適応フィルタの係数が発散しないように制御する必要がある。
そこで、ダブルトーク検出器13は、受信入力信号x(n)、送信入力信号d(n)及び残差信号e(n)を監視して通話状態を判定し、受信入力信号無信号又はダブルトーク状態のときには適応フィルタの係数更新をディセーブルにし、シングルトーク状態のときには適応フィルタの係数更新をイネーブルにする制御を行っている。
従来、ダブルトーク検出方法の一例として、特許文献1に開示される方法がある。
この特許文献1に記載の方法は、まず、受信入力信号x(n)の信号電力のデシベル換算値から、残差信号e(n)の信号電力デシベル換算値を差し引いた値、即ち、エコー減衰量Acoms(n)を算出する。
次に、通話状態に応じて、エコー減衰量Acoms(n)又はエコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値を積分処理することにより、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)を算出する。
そして、エコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値が、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)と比較して小さくなったらダブルトーク状態であることを検出するものである。
つまり、近端話者から送出される近端送出信号t(n)に音声信号が存在するときには、残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))の信号電力が増加し、エコー減衰量Acoms(n)が低下するので、このエコー減衰量Acoms(n)の低下を検出することにより、ダブルトーク状態を検出するのである。
以下に、特許文献1に記載の従来のダブルトーク検出方法の概要を説明する。
受信入力信号x(n)の信号電力が閾値XTH未満(無音)のときは、適応フィルタの係数更新をディセーブルにし、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)を前値保持とする。
受信入力信号x(n)の信号電力が閾値XTH以上(有音)、かつ、送信入力信号d(n)の信号電力が闘値YTH未満(無音)のときは、適応フィルタの係数更新をイネーブルにし、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)を急速に下げる。
受信入力信号x(n)の信号電力が閾値XTH以上(有音)、かつ、送信入力信号d(n)の信号電力が閾値YTH以上(有音)のときは、エコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値を、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)と比較する。
そして、エコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値がダブルトーク検出閾値TRIM(n)よりも大きい場合は、シングルトーク状態と判定して、適応フィルタの係数更新をイネーブルにし、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)の更新を行う。ダブルトーク検出閾値TRIM(n)は、式(6)で更新される。つまり、シングルトーク状態が継続し続ければ、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)はエコー減衰量Acoms(n)を積分処理した値となる。
TRIM(n+1)=Acoms(n)×δ1+TRIM(n)×(1−δ1)…(6)
ここで、TRIM(n)はダブルトーク検出閾値、Acoms(n)はエコー減衰量、δ1は積分処理の過渡応答を決める係数である。
また、エコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値がダブルトーク検出閾値TRIM(n)よりも小さい場合は、ダブルトーク状態と判定して、適応フィルタの係数更新をディセーブルにし、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)の更新を行う。ダブルトーク検出閾値TRIM(n)は、式(7)で更新される。つまり、ダブルトーク状態が継続し続ければ、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)はエコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値を積分処理した値となる。
TRIM(n+1)=TRIM(n)−{TRIM(n)−FLG(n)}×δ2
=TRIM(n)−TRIM(n)×δ2+FLG(n)×δ2
=FLG(n)×δ2+TRIM(n)×(1−δ2)
=(Acoms(n)+γ)×δ2+TRIM(n)×(1−δ2)…(7)
ここで、TRIM(n)はダブルトーク検出閾値、Acoms(n)はエコー減衰量、δ2は積分処理の過渡応答を決める係数、γはマージン、FLG(n)はAcoms(n)+マージンγである。
特開昭63−238727号公報
以上のように、従来のダブルトーク検出技術は、受信入力信号x(n)の信号電力が閾値XTH以上(有音)、かつ、送信入力信号d(n)の信号電力が閾値YTH以上(有音)のときは、受信入力信号x(n)の信号電力のデシベル換算値から残差信号e(n)の信号電力のデシベル換算値を差し引いた値、即ち、エコー減衰量Acoms(n)を処理することによりダブルトーク状態を検出するようになっている。
ところが、上述したエコー減衰量Acoms(n)は、エコーパスの伝達特性が変化しなくても、通話状態、近端背景雑音の信号電力及び適応フィルタの収束度合いによって変動し得るものである。そのため、従来のダブルトーク検出は、通話状態、近端背景雑音の信号電力及び適応フィルタの収束度合いの影響を受けてしまうという問題がある。
以下に、通話状態、近端背景雑音の信号電力及び適応フィルタの収束度合いのダブルトーク検出への影響について説明する。
(1)通話状態のダブルトーク検出への影響
ダブルトーク状態においては、残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))に近端話者の音声信号t(n)が含まれているので、残差信号e(n)の信号電力が大きくなり、上記エコー減衰量Acoms(n)は小さくなる。このとき、式(7)に示した通り、上記エコー減衰量Acoms(n)にマージンγを加算した値を積分処理するので、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)が低下していく。
つまり、ダブルトーク状態の後は、ダブルトーク状態の前に比べてダブルトーク検出閾値TRIM(n)が小さくなってしまう。
(2)近端背景雑音の信号電力のダブルトーク検出への影響
遠端話者のみが発声しているシングルトーク状態であっても、通常、近端から送出される近端送出信号t(n)は全くの無信号ではなく、近端の背景雑音が存在する。従って、送信入力信号d(n)及び残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))にも近端の背景雑音が存在する。
例えば、適応フィルタで十分にエコー消去できている状態(Δy(n)≒0)であったとする。このとき、近端送出信号t(n)の近端背景雑音が無信号に近ければ残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))も無信号に近くなるので、エコー減衰量Acoms(n)は大きくなり、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)も大きくなる。
一方、近端送出信号t(n)の近端背景雑音の信号電力が大きければ、残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))の信号電力も大きくなるので、エコー減衰量Acoms(n)は小さくなり、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)も小さくなる。
つまり、近端送出信号t(n)の近端背景雑音が大きくなると、ダブルトーク検出闘値TRIM(n)は小さくなってしまう。
(3)適応フィルタの収束度合いのダブルトーク検出への影響
適応フィルタの収束度合いによって残差信号e(n)の信号電力は変化し、エコー減衰量Acoms(n)も変化する。
仮に、近端背景雑音が無信号に近く、遠端話者のみが発声している状態において、適応フィルタの係数が収束していたとして、その状態から、近端話者から送出される近端送出信号t(n)にインパルス信号が印加され、一旦収束した適応フィルタの係数が発散したとする。
上記において、インパルス信号の印加前は適応フィルタの係数が収束しているので、残留エコーΔy(n)≒0であり、残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))の信号電力が小さく、エコー減衰量Acoms(n)が大きく、その結果、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)が大きくなっている。
一方、インパルス信号の印加直後は、適応フィルタの係数の発散に伴い残留エコーΔy(n)の信号電力が急増し、残差信号e(n)の信号電力が大きくなり、エコー減衰量Acoms(n)が小さくなるが、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)は、積分処理によって算出しているので、ほとんど変化せず大きいままである。
そうすると、インパルス信号の印加直後はシングルトーク状態であるのに、ダブルトークと誤判定する可能性が生じる。ダブルトークと誤判定すると、ダブルトーク検出閾値TRIM(n)は徐々に小さくなり、時間が経てばシングルトークと判定するが、シングルトーク状態かつ適応フィルタの係数が発散した状態であるのに、係数更新を停止した状態を長時間継続してしまうことになり、この間は残留エコーΔy(n)が大きくなったままとなり、遠端話者にエコーが聞こえてしまう可能性がある。
以上述べたように、従来のダブルトーク検出方法は、通話状態、近端背景雑音の信号電力及び適応フィルタの収束度合いの影響を受けて、ダブルトーク検出精度が低下するという問題がある。
そこで、本発明は、ダブルトーク検出精度及びダブルトーク検出速度の向上を図ることのできる、ダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラを提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、第1の本発明のダブルトーク検出器は、エコーキャンセラの受信入力信号、送信入力信号及びエコー除去後の残差信号に基づいてダブルトーク状態を検出し、エコーキャンセラが有する適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク検出器において、(1)残差信号に基づき、近端の背景雑音の電力推定値を求める近端背景雑音推定手段と、(2)送信入力信号の平均電力値を求める送信入力平均電力算出手段と、(3)受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出手段と、(4)近端の背景雑音の電力推定値、送信入力信号の平均電力値及び受信入力信号の平均電力値に基づいて、所定のエコーパス減衰値推定方法により、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値推定手段と、(5)エコーパス減衰推定値、送信入力信号の平均電力値及び受信入力信号の平均電力値に基づいてダブルトーク状態を検出し、適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク判定手段とを備えることを特徴とする。
第2の本発明のダブルトーク検出方法は、エコーキャンセラの受信入力信号、送信入力信号及びエコー除去後の残差信号に基づいてダブルトーク状態を検出し、エコーキャンセラが有する適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク検出方法において、(1)近端背景雑音推定手段が、残差信号に基づき、近端の背景雑音の電力推定値を求める近端背景雑音推定工程と、(2)送信入力平均電力算出手段が、送信入力信号の平均電力値を求める送信入力平均電力算出工程と、(3)受信入力平均電力算出手段が、受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出工程と、(4)エコーパス減衰値推定手段が、近端の背景雑音の電力推定値、送信入力信号の平均電力値及び受信入力信号の平均電力値に基づいて、所定のエコーパス減衰値推定方法により、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値推定工程と、(5)ダブルトーク判定手段が、エコーパス減衰推定値、送信入力信号の平均電力値及び受信入力信号の平均電力値に基づいてダブルトーク状態を検出し、適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク判定工程とを有することを特徴とする。
第3の本発明のエコーキャンセラは、第1の本発明のダブルトーク検出器を備えることを特徴とする。
本発明によれば、ダブルトーク検出精度及びダブルトーク検出速度の向上を図ることができる。
(A)第1の実施形態
以下では、本発明のダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(A)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態のダブルトーク検出器の内部構成を示す内部構成図である。なお、ダブルトーク検出器を備えるエコーキャンセラの構成は図2に示す構成と同じである。
図1に示すように、第1の実施形態のダブルトーク検出器20は、近端背景雑音推定器21、送信入力信号d(n)の短時間平均電力算出手段23、受信入力信号x(n)の短時間平均電力算出手段22、エコーパス減衰量推定器24、ダブルトーク判定手段25、を有して構成される。
図3は、第1の実施形態の近端背景雑音推定器21の内部構成を示す内部構成図である。
図3に示すように、近端背景雑音推定器21は、絶対値算出手段31と適当な時定数を持つIIR形ローパスフィルタ(LPF)32とを有して構成される。
近端背景雑音推定器21は、残差信号e(n)を取り込み、近端話者から送出される近端送出信号t(n)に含まれる近端の背景雑音電力を推定するものであり、後述する短時間平均電力算出手段22からの受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th未満(遠端話者の音声無)であるときの、残差信号e(n)のサンプル値の絶対値|e(n)|を平均化することにより、近端の背景雑音電力を推定するものである。
ここで、閾値xs_thは、特に限定されるものではないが、例えば、−40dBmを適用する。
また、平均化処理は、例えば、適当な時定数を持つIIR形LPF32を用いることにより実現することができる。このLPFの時定数は、例えば、200msを適用する。
IIR形LPF31の係数は“a”及び“1−a”であり、係数aはa=exp(−T/CR)で定義されるものである。ここで、TはIIRフィルタのサンプリング周期、CRは時定数である。
なお、第1の実施形態では、IIR形LPFを適用するが、平均化処理を実現できるのであれば、これに限定されず広く適用することができる。
式(8)は、近端背景雑音推定器21が、近端背景雑音の推定値b(n)を推定する算出式である。
b(n)=|e(n)|×(1−a)+b(n−1)×a…(8)
近端背景雑音推定器21は、後述する受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th未満(遠端話者の音声無)の場合、上記式(8)に示した数式の演算を実行して、近端の背景雑音電力の推定値b(n)を更新し、それ以外のときには推定値b(n)を前値保持(b(n)=b(n−1))とする。
また、近端背景雑音推定器21は、算出した近端背景雑音電力推定値b(n)を、エコーパス減衰量推定器24に与えるものである。
なお、近端背景雑音の推定に、送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))ではなく、残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))を用いるようにしているが、これは、受信入力信号の短時間電力平均xs(n)が闘値xs_th未満のときであっても、送信入力信号d(n)にエコー成分y(n)が含まれていることがあるので、エコーの影響を極力低減するため、エコーキャンセラ出力である残差信号e(n)(=Δy(n)+t(n))を用いるようにしているのである。
送信入力信号の短時間平均算出手段23は、送信入力信号d(n)を取り込み、所定短時間における送信入力信号の平均信号電力を算出するものであり、算出した短時間平均電力ds(n)を、エコーパス減衰量推定器24及びダブルトーク判定手段25に与えるものである。
受信入力信号の短時間平均算出手段22は、受信入力信号x(n)を取り込み、所定短時間における受信入力信号の平均信号電力を算出するものであり、算出した短時間平均電力xs(n)を、近端背景雑音推定器21、エコーパス減衰量推定器24及びダブルトーク判定手段25に与えるものである。
送信入力信号の短時間平均電力算出手段23及び受信入力信号の短時間平均電力算出手段22は、常時演算を行うようになっており、それぞれの内部構成は、図3に示した近端背景雑音推定器21の内部構成と同様の構成を有する。
但し、IIR形LPFのフィルタ係数は異なる値である。送信入力信号の短時間平均電力算出手段23及び受信入力信号の短時間平均電力算出手段22は、それぞれ送信入力信号d(n)及び受信入力信号x(n)のサンプル値の絶対値|d(n)|及び|x(n)|を、適当な時定数を持つIIR形LPFに入力することにより平均化し、短時間平均電力ds(n)及びxs(n)を算出する。
IIR形LPFの係数は“a_s”及び“1−a_s”であり、係数a_sは、a_s=exp(−T/CR_s)で定義されるものある。ここで、TはIIRフィルタのサンプリング周期、CR_sは短時間平均電力算出手段の時定数である。
式(9)は、送信入力信号の短時間平均電力算出手段23が、短時間平均電力ds(n)を算出する算出式であり、式(10)は、受信入力信号の短時間平均電力算出手段22が、短時間平均電力xs(n)を算出する算出式である。
ds(n)=|d(n)|×(1−a_s)+ds(n−1)×a_s…(9)
xs(n)=|x(n)|×(1−a_s)+xs(n−1)×a_s…(10)
エコーパス減衰量推定器24は、ハイブリッド回路(エコーパス)におけるエコー信号の減衰量(ERL)、即ち、エコーパス入力である受信入力信号x(n)の信号電力に対する、エコーパス出力であるエコーy(n)の信号電力の減衰量を推定するものである。
図4に、エコーパス減衰量推定器24の内部構成を示す内部構成図を示す。図4に示すように、エコーパス減衰量推定器24は、ERL推定演算制御手段41、ERL推定値演算手段42を有して構成される。さらに、ERL推定値演算手段42は、送信入力信号の長時間平均電力算出手段422、受信入力信号の長時間平均電力算出手段421を有して構成される。
送信入力信号の長時間平均電力算出手段422は、送信入力信号d(n)の短時間平均電力ds(n)を取り込み、所定長時間の送信入力信号の長時間平均電力dl(n)を算出するものであり、算出した長時間平均電力dl(n)をダブルトーク判定手段25に与えるものである。
受信入力信号の長時間平均電力算出手段421は、受信入力信号x(n)の短時間平均電力xs(n)を取り込み、所定長時間の受信入力信号の長時間平均電力xl(n)を算出するものであり、算出した長時間平均電力xl(n)をダブルトーク判定手段25に与えるものである。
ここで、送信入力信号の長時間平均電力算出手段422及び受信入力信号の長時間平均電力算出手段421は、後述するERL推定演算制御手段41からの出力が、イネーブルのときにのみ演算を行うものであり、ディセーブルのときは演算結果を前値保持とするものである。
また、長時間平均電力算出手段421及び422のそれぞれの内部構成は、図3に示した近端背景雑音推定器21の構成のうち、絶対値算出手段31を省略し、IIR形LPF32のみを有する構成を適用することができる。勿論、IIR形LPF32のフィルタ係数は、適宜変更したものを用いる。絶対値算出手段を省略した理由は、第1の実施形態では、長時間平均電力算出手段421及び422のそれぞれに入力する入力信号が常に正の値となるためである。
長時間平均電力算出手段421及び422のそれぞれは、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)及び受信入力信号の短時間平均電力xs(n)を、適当な時定数を持つIIR形LPFに入力することにより平均化し、長時間平均電力dl(n)及びxl(n)を算出する。IIR形LPFの係数は、ダブルトーク判定結果に応じて切り替える。
例えば、ダブルトーク判定結果がシングルトークの場合、長時間平均電力算出手段412及び422のIIR形LPFの係数は、“a_st”及び“1−a_st”である。この係数a_stは、a_st=exp(−T/CR_st)で定義されるものであり、TはIIRフィルタのサンプリング周期、CR_stはシングルトーク判定時の長時間平均電力算出手段の時定数である。
式(11)は、送信入力信号の長時間平均電力算出手段422が、シングルトーク判定時に、長時間平均電力dl(n)を算出する算出式であり、式(12)は、受信入力信号の長時間平均電力算出手段421が、シングルトーク判定時に、長時間平均電力xl(n)を算出する算出式である。
dl(n)=ds(n)×(1−a_st)+dl(n−1)×a_st…(11)
xl(n)=xs(n)×(1−a_st)+xl(n−1)×a_st…(12)
また例えば、ダブルトーク判定結果がダブルトークの場合、長時間平均算出手段421及び422のIIR形LPFの係数は“a_dt”及び“1−a_dt”である。この係数a_dtはa_dt=exp(−T/CR_dt)で定義されるものであり、TはIIRフィルタのサンプリング周期、CR_dtはダブルトーク判定時の長時間平均電力算出手段の時定数である。
式(13)は、送信入力信号の長時間平均電力算出手段422が、ダブルトーク判定時に、長時間平均電力dl(n)を算出する算出式であり、式(14)は、受信入力信号の長時間平均電力算出手段421が、ダブルトーク判定時に、長時間平均電力xl(n)を算出する算出式である。
dl(n)=ds(n)×(1−a_dt)+dl(n−1)×a_dt…(13)
xl(n)=xs(n)×(1−a_dt)+xl(n−1)×a_dt…(14)
ここで、ダブルトーク判定時のIIR形LPFの時定数CR_dtは、シングルトーク判定時の時定数CR_stよりも大きくして、ダブルトーク判定時の長時間平均電力算出手段の応答感度を鈍くする。これによって、ダブルトーク判定時にERL推定値が大きく低下するのを防止することができる。
ERL推定演算制御手段41は、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)及び近端背景雑音電力の推定値b(n)を取り込み、ERL推定演算のイネーブル制御を行うものである。
ERL推定演算制御手段41は、以下の3つの条件を全て満足したときのみ、ERL推定演算をイネーブルに制御するものとする。
(条件1)
受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th以上であること。
これは、エコーパスのERL推定値の演算を行うには、受信入力信号x(n)が一定レベル以上の信号電力となっている必要があるためである。
(条件2)
エコーキャンセラが使用されるシステム条件で、エコーパス減衰量の最小値ERL_minが明らかである場合、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)のデシベル換算値から、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)のデシベル換算値を差し引いた値が、ERL_min以上であること。
例えば、以下の式(15)を満たす場合、(条件2)を満たすものとする。
20×log10(xs(n))−20×log10(ds(n))>ERL_min…(15)
第1の実施形態では、演算量を低減するため、式(15)を変形した式(16)を用いる。
xs(n)/ds(n)>10ERL_min/20 より
xs(n)>ds(n)×10ERL_min/20…(16)
例えば、エコーパス減衰量の最小値ERL_min=6dB(10ERL_min/20=2)であることが明らかであるとすると、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)の2倍以上であることがERL推定演算のイネーブル条件である。
この(条件2)を用いることにより、ダブルトーク状態であることが確実であるときのERL推定演算を停止し、近端話者の音声信号の影響で、ERL推定値が実際のエコーパス減衰量よりも低く算出されてしまうことを防止することができる。
(条件3)
送信入力信号の短時間平均電力ds(n)のデジベル換算値から、近端背景雑音の推定値b(n)のデシベル換算値を差し引いた値が、闘値ε以上となること。
例えば、式(17)を満たす場合、(条件3)を満たすものとする。
20×log10(ds(n))−20×log10(b(n))>ε…(17)
第1の実施形態では、演算量を低減するため、式(17)を変形した式(18)を用いる。
ds(n)/b(n)>10ε/20 より
ds(n)>b(n)×10ε/20…(18)
例えば、閾値ε=6dB(10ε/20=2)に設定したとすると、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)が、近端背景雑音の推定値b(n)の2倍よりも大きいことがERL推定演算のイネーブル条件である。
送信入力信号d(n)に含まれるエコー信号成分y(n)の信号電力が、近端背景雑音の信号電力より小さいときにERL推定演算を行っても、エコーパス減衰量の推定精度を高くすることは困難である。そこで、送信入力信号d(n)に含まれるエコー信号成分y(n)の信号電力が、近端の背景雑音電力の推定値b(n)に比べて一定レベル以上大きいときのみERL推定演算を行うことにより、ERLの推定精度を向上させることができる。
以上のように、ERL推定演算制御手段41は、上記3条件を全て満足したときのみ、ERL推定値演算手段42による演算処理をイネーブルとする。そして、ERL推定値演算手段42は、シングルトーク判定時では、式(11)及び式(12)に従って、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)及び受信入力信号の長時間平均電力xl(n)を算出し、また、ダブルトーク判定時では、式(13)及び式(14)に従って、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)及び受信入力信号の長時間平均電力xl(n)を算出する。
ERL推定値は、式(19)に示すように、受信入力信号の長時間平均電力xl(n)のデジベル換算値から、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)のデジベル換算値を差し引くことにより算出できる。
ERL=20×log10(xl(n))−20×log10(dl(n))…(19)
第1の実施形態では、演算量を低減するため、式(19)の演算は実行せず、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)と受信入力信号の長時間平均電力xl(n)を、そのままダブルトーク判定手段25へ受け渡すこととする。
なお、ERL推定演算制御手段41は、ダブルトーク判定結果がダブルトークの場合でも、上記3条件を満足していれば、ERL推定演算をイネーブル制御とする。これは、エコーパスの特性が変動するなどして、エコーパス減衰量が変化した直後に、シングルトーク状態をダブルトーク状態と誤判定する可能性があるからである。これにより、ERL推定演算がイネーブルとなるので、ERL推定値はエコーパス変動後のエコーパス減衰量に追従することができる。
但し、ダブルトーク判定時の長時間平均電力算出手段421及び422の時定数CR_dtは、シングルトーク判定時の時定数CR_stよりも大きくしてあるので、ダブルトーク判定時の長時間平均電力算出手段421及び422の応答感度は鈍くなる。これによって、ダブルトーク判定時の近端話者音声信号の影響によりERL推定値が大きく低下するのを防止することができる。
ダブルトーク判定手段25は、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)及び長時間平均電力dl(n)、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)及び長時間平均電力xl(n)を取り込み、ダブルトーク検出を行い、適応フィルタ係数更新のイネーブル/ディセーブル制御を行うものである。
ダブルトーク判定手段25によるダブルトークの検出方法は、以下の(手順1)〜(手順3)のようにして行う。
(手順1)
まず、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th未満の場合、適応フィルタの係数更新をディセーブルとし、以降の手順は実施しない。
(手順2)
次に、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)のデシベル換算値から、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)のデシベル換算値を差し引き、マージンαを加算した値が、ERL推定値よりも大きい場合に、シングルトーク状態と判定して、適応フィルタの係数更新をイネーブルとする。αはマージンであり、例えばα=3[dB]である。この条件を式(20)に示す。
20×log10(xs(n))−20×log10(ds(n))+α>ERL…(20)
後述するダブルトーク判定閾値の説明のため、式(20)を変形する。
20×log10(xs(n))−ERL+α>20×log10(ds(n))…(21)
(手順3)
手順1及び手順2のどちらの条件にもあてはまらなかった場合は、ダブルトーク状態と判定して、適応フィルタの係数更新をディセーブルとする。
図5は、第1の実施形態のダブルトーク検出閾値の特性を例示する図である。図5において、縦軸は送信入力信号の短時間平均電力ds(n)[dBm]であり、横軸は受信入力信号の短時間平均電力xs(n)[dBm]である。
図5において、ダブルトーク検出閾値を決定するパラメータとして、以下のようにする。
閾値xs_th=−40dBm
ERL推定値=20dB
マージンα=3dB
とする。そうすると、図5に示す2本の直線が、ダブルトーク検出閾値を示す。
図5に示すダブルトーク検出閾値を示す2本の直線の左上側領域では、適応フィルタの係数更新をディセーブルとする。また、ダブルトーク検出閾値を示す2本の直線の右下側領域では、適応フィルタの係数更新をイネーブルとする。
図5において、ダブルトーク検出閾値を示す2本の直線のうち、垂直の直線は上記手順1に示したものであり、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th(ここでは、−40dBm)未満の場合、即ち、垂直の直線の左側の領域の場合、適応フィルタの係数更新をディセーブルとする。
また図5において、ダブルトーク検出閾値を示す2本の直線のうち、もう一方の斜めの直線は上記手順2に示したものであり、式(21)より算出することができる。つまり、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)からERL推定値(ここでは、20dB)を差し引き、マージンα(ここでは、3dB)を加算した値と比較して、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)が小さいとき、即ち、斜めの直線の下側領域では、シングルトーク状態と判定して係数更新をイネーブルとする。
それ以外の領域、即ち、垂直の直線の右側、かつ、斜めの直線の上側は、上記手順3で説明したように、手順1及び手順2のどちらの条件にもあてはまらない場合であり、ダブルトーク状態と判定して、適応フィルタの係数更新をディセーブルとする。
なお、第1の実施形態では、演算量の低減のため、上記手順2で示した、シングルトーク判定の式(20)を変形する。
β=10α/20…(22)
と定義する。
α=20×log10β…(23)
式(20)に、式(19)と式(23)を代入する。
20×log10(xs(n))−20×log10(ds(n))+20×log10β
>20×log10(xl(n))−20×log10(dl(n)) となる。
これを整理して式(24)を得ることができ、第1の実施形態では、式(24)を用いる。
β×xs(n)×dl(n)>xl(n)×ds(n)…(24)
即ち、第1の実施形態では、上記手順2において、式(24)の条件を満足したときにシングルトーク状態と判定し、適応フィルタの係数更新演算をイネーブル制御とする。
(A−2)第1の実施形態の動作
続いて、第1の実施形態のダブルトーク検出器20によるダブルトーク検出処理の動作について説明する。
まず、送信入力信号の長時間平均電力の初期値dl(0)及び受信入力信号の長時間平均電力の初期値x1(0)は、推定ERL=エコーパス減衰量の最小値ERL_minとなる適当な数値で初期化する。
例えば、エコーパス減衰量の最小値ERL_min=6dBであるとすると、受信入力信号の短時間平均電力の初期値xs(0)を、送信入力信号の短時間平均電力の初期値ds(0)の2倍の値で初期化しておく。
次に、エコーキャンセラヘの信号入力例および閾値例を用いて、ダブルトーク検出器20における処理動作を説明する。以下に、この動作例で用いるパラメータを示す。
近端の背景雑音電力=−60dBm
エコーパス減衰量=20dB
閾値xs_th=−40dBm
エコーパス減衰量の最小値ERL_min(ERL初期値)=6dB
閾値ε=6dB
マージンα=3dB
とする。
(a)まず、初期状態として、近端話者及び遠端話者のいずれも発声していない無通話状態であったする。この場合、短時間平均電力算出手段22により算出される受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が闘値xs_th未満となる。
そうすると、近端背景雑音推定器21では、近端背景雑音の推定演算がイネーブルとなり、残差信号e(n)のサンプル値の絶対値|e(n)|を平均化することにより、近端の背景雑音電力を推定する。
また、エコーパス減衰量推定器24では、(条件1)を満たしていないから、ERL推定演算はディセーブルとなり、ERL推定値は初期値(6dB)のままである。
さらに、ダブルトーク判定手段25では、(手順1)より判定結果もディセーブルとなり、適応フィルタの係数更新は行わない。仮に、この無通話状態が継続して、近端の背景雑音電力の推定値b(n)=−60dBmに収束したとする。
(b−1)次に、遠端話者のみが発声している状態、即ち、シングルトーク状態になったとする。通常、音声信号の信号電力は時間とともに変化するが、動作説明のため、仮に、受信入力信号x(n)の信号電力が0dBmを継続したとする。
この場合、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が0dBmとなり、閾値xs_th(例えば−40dBm)以上となる。
そうすると、近端背景雑音推定器21では、近端背景雑音の推定演算がディセーブルとなり、近端の背景雑音電力の推定値b(n)=−60dBmを前値保持する。
また、エコーパス減衰量は20dBであるので、送信入力信号d(n)送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))に含まれているエコー信号成分y(n)の信号電力は−20dBmとなる。ここで、近端の背景雑音電力=−60dBmでありエコー信号成分y(n)よりもはるかに小さいので、送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))の信号電力は−20dBmとなり、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)も−20dBmとなる。
すると、エコーパス減衰量推定器24では、ERL推定演算のイネーブル条件(条件1〜条件3)が成立するので、ERL推定演算制御手段41は、ERL推定値演算手段42をイネーブルとし、受信入力信号の長時間平均電力xl(n)及び送信入力信号の長時間平均電力dl(n)を更新する。
仮に、このシングルトーク状態が継続して、受信入力信号の長時間平均電力xl(n)が0dBmに収束し、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)が−20dBmに収束したとする。そうすると、長時間電力平均手段421及び422のIIR形LPFの収束が進むにつれて、ERL推定値は、初期値の6dBから20dBへ近づいていき、ERL推定値=20dBに収束する。
上記シングルトーク状態の区間において、ERL推定値が6dBから20dBへ変化していくが、この間、ダブルトーク判定手段25では、受信入力信号の短時間平均電力xs(0dBm)からERL推定値(6〜20dB)を差し引き、マージンα(3dB)を加算した値(−3〜−17dBm)よりも、送信入力信号の短時間平均電力ds(−20dBm)が小さくなるので、判定結果はシングルトークとなり、適応フィルタの係数更新はイネーブルとなる。
(b−2)ここで、ERL推定演算について、補足説明をしておく。上記においては、受信入力信号x(n)の信号電力を0dBmとしたが、もし、受信入力信号x(n)の信号電力が−40dBmであったとき、エコーパス減衰量は20dBであるから、送信入力信号d(n)(=t(n)+y(n))に含まれるエコー信号成分y(n)の信号電力は−60dBmとなり、近端送信信号t(n)の信号電力(−60dBm)と同等となる。近端送信信号t(n)とエコー信号成分y(n)は相関性がない信号であるので、このとき、送信入力信号d(n)の信号レベルは、近端の背景雑音電力の推定値b(n)(=−60dBm)に
閾値ε(6dB)を加算した値(−54dBm)よりも小さくなる。従って、ERL推定演算のイネーブル条件を満足しないので、ERL推定値は前値保持のままとなる。
つまり、エコー信号成分y(n)の信号電力が近端送出信号t(n)の信号電力よりも一定レベル以上大きいときのみERL推定演算を行うことにより、ERL推定値の精度を向上させているのである。一旦、ERL推定値=20dBに収束すると、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)からERL推定値(20dB)を差し引き、マージンα(3dB)を加算した値(xs(n)のデシベル換算値−17dB)を閾値として、ダブルトーク判定を行うようになる。
(c)続いて、ERL推定値=20dBに収束した後の動作について説明する。
(c−1)受信入力信号x(n)に音声信号が含まれておらず、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が閾値xs_th(−40dBm)未満のとき、近端の背景雑音電力の推定値b(n)を更新する。この場合、近端送出信号t(n)が背景雑音(−60dBm)のみであれば、近端の背景雑音電力の推定値b(n)は−60dBmのままとなる。近端送出信号t(n)に音声信号が含まれていたときは、近端の背景雑音電力の推定値b(n)は大きくなるが、再び、近端送出信号t(n)が背景雑音(−60dBm)のみとなると、近端の背景雑音電力の推定値b(n)は−60dBmに戻っていく。
(c−2)次に、受信入力信号x(n)に音声信号が含まれていたとする。通常、音声信号の信号電力は時間とともに変化するが、動作説明のため、仮に、受信入力信号の信号電力が0dBmを継続したとする。この場合、エコーパス減衰量は20dBであるので、送信入力信号d(n)に含まれているエコー信号成分y(n)の信号電力は−20dBmである。
ダブルトーク判定手段25は、受信入力信号の短時間平均電力xs(0dBm)からERL推定値(20dB)を差し引き、マージンα(3dB)を加算した値(−17dBm)に比べて、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)が、小さければシングルトークと判定し、大きければダブルトークと判定する。
(c−2−1)まず、近端送出信号t(n)が背景雑音(−60dBm)のみのとき、近端送出信号t(n)の信号電力は、エコー信号成分y(n)の信号電力(−20dBm)よりもはるかに小さいので、送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))の信号電力は−20dBmとなり、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)も−20dBmとなる。
エコーパス減衰量推定器24では、ERL推定演算のイネーブル条件は成立するが、既に、受信入力信号の長時間平均電力xl(n)=0dBm、送信入力信号の長時間平均電力dl(n)=−20dBmに収束しているので、ERL推定値は20dBのままである。
ダブルトーク判定手段25では、受信入力信号の短時間平均電力xs(0dBm)からERL推定値(20dB)を差し引き、マージンα(3dB)を加算した値(−17dBm)よりも、送信入力信号の短時間平均電力ds(−20dBm)が小さくなるので、判定結果はシングルトークとなり、適応フィルタの係数更新はイネーブルとなる。
(c−2−2)一方、近端送出信号t(n)に背景雑音(−60dBm)と音声信号とが含まれている場合は、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)の信号電力に応じて、ふるまいが異なる。以下、順次、説明する。
(1)−20dBm<送信入力信号の短時間平均電力ds(n)<−17dBmの場合
送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))に含まれているエコー信号成分y(n)の信号電力は−20dBmであるので、本条件が成立するとき、おおよそ、エコー信号成分y(n)の信号電力は、近端送出信号t(n)の信号電力以上(y(n)≧t(n))であると想定できる。
近端背景雑音推定器21では、近端の背景雑音の推定値b(n)は更新されないので、−60dBmを前値保持する。
エコーパス減衰量推定器24では、ERL推定演算はイネーブルとなるが、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)が0dBm、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)が−20dBm〜−17dBmの範囲内となるので、ERL推定値は−20dBから大きくは変動しない。
ダブルトーク判定手段25では、ダブルトーク判定結果はシングルトーク判定となり、適応フィルタの係数更新はイネーブルとなる。エコー信号成分y(n)の信号電力が、近端送出信号t(n)の信号電力以上と想定できる状態であるので、シングルトーク判定となるのは期待通りである。
(2)−17dBm≦送信入力信号の短時間平均電力ds(n)<−6dBmの場合
送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))に含まれているエコー信号成分y(n)の信号電力は−20dBmであるので、本条件が成立するとき、おおよそ、エコー信号成分y(n)の信号電力は、近端送出信号t(n)の信号電力未満(y(n)<t(n))であると想定できる。
ダブルトーク判定手段25では、ダブルトーク判定結果はダブルトーク判定となり、適応フィルタの係数更新はディセーブルとなる。エコー信号成分y(n)の信号電力が、近端送出信号t(n)の信号電力未満であると想定できる状態であるので、ダブルトーク判定となるのは期待通りである。
エコーパス減衰量推定器24では、ERL推定演算はイネーブルとなるが、ダブルトーク判定時は長時間平均電力を算出するIIR形LPFの時定数が大きくなる。通常の会話においては、ダブルトーク状態の継続時間は短いので、ERL推定値は−20dBからほとんど変化しない。
(3)−6dBm≦送信入力信号の短時間平均電力ds(n)の場合
送信入力信号d(n)(=y(n)+t(n))に含まれているエコー信号成分y(n)の信号電力は−20dBmであるので、本条件が成立するとき、エコー信号成分y(n)の信号電力は、近端送出信号t(n)の信号電力よりはるかに小さい。
ダブルトーク判定手段25では、ダブルトーク判定結果はダブルトークとなり、適応フィルタの係数更新はディセーブルとなる。エコー信号成分y(n)の信号電力が、近端送出信号t(n)の信号電力よりはるかに小さいので、これは期待通りの判定結果である。
エコーパス減衰量推定器24では、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)のデシベル換算値から、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)のデシベル換算値を差し引いた値が、ERL_min未満となるので、ERL推定演算はディセーブルとなる。これによって、ダブルトーク状態であることが明らかであるときはERL推定値の低下を防止できる。
(A−3)第1の実施形態の効果
以上、詳細に述べたように、第1の実施形態のダブルトーク検出器20は、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)が、近端の背景雑音電力の推定値b(n)よりも一定レベル以上大きく、かつ、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)のデシベル換算値から、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)のデシベル換算値を差し引いた値が、エコーパス減衰量の最小値ERL_min以上であるときのみ、ERL推定演算をイネーブルとするようにしたので、シングルトーク状態以外であることが明らかであるときは、ERL推定値を前値保持することができる。
また、第1の実施形態のダブルトーク検出器20は、上記以外のダブルトーク判定時に、受信入力信号の長時間平均電力算出手段421と、送信入力信号の長時間平均電力算出手段422の平均化フィルタの時定数を大きい値に切り替えて、ダブルトーク状態においてERL推定値が大きく低下しないようにした。
その結果、エコーパス減衰量を高精度で推定することができるので、ダブルトーク検出精度の向上を図ることができる。
(B)第2の実施形態
次に、本発明のダブルトーク検出器、ダブルトーク検出方法及びエコーキャンセラの第2の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
(B−1)第2の実施形態の構成
図6は、第2の実施形態のダブルトーク検出器60の内部構成を示す内部構成図である。図6において、第2の実施形態のダブルトーク検出器60は、近端背景雑音推定器21、受信入力信号の短時間平均電力算出手段22、送信入力信号の短時間平均電力算出手段23、エコーパス減衰量推定器24、近端送出信号電力急増検出手段61、ダブルトーク判定手段62、を有して構成される。
第2の実施形態は、近端送出信号電力急増検出手段61を追加する点と、この近端送出信号電力急増検出手段61の追加に伴うダブルトーク判定手段62の機能が第1の実施形態と異なる。
そこで、以下では、第2の実施形態のダブルトーク検出器60が有する特有の構成を中心に詳細に説明する。
近端送出信号電力急増検出手段61は、受信入力信号x(n)と残差信号e(n)とを監視することにより、近端送出信号t(n)の信号電力が急増したことを速やかに検出し、ダブルトーク判定手段62に与えるものである。
ダブルトーク判定手段62は、第1の実施形態と同様の検出方法により、ダブルトークを判定するものである。また、ダブルトーク判定手段62は、近端送出信号電力急増検出手段6から検出結果を受け取り、近端送出信号t(n)の信号電力が急増したときには、第1の実施形態で示した判定結果に優先してダブルトークであると判定するものである。これにより、適応フィルタの係数更新をディセーブルにして、近端送出信号電力の急増による適応フィルタ係数の発散を防止するのである。
図7は、近端送出信号電力急増検出手段61の内部構成を示す内部構成図である。
図7において、近端送出信号電力急増検出手段61は、残差信号の絶対値算出手段71、残差信号の超短時間平均電力算出手段72、残差信号の短時間平均電力算出手段73、受信入力信号の絶対値算出手段74、受信入力信号の超短時間平均電力算出手段75、受信入力信号の短時間電力算出手段76、近端送出信号電力急増判定手段77、を有して構成される。
絶対値算出手段71は、残差信号e(n)を取り込み、残差信号e(n)の信号電力を絶対値化して、超短時間平均電力算出手段72及び短時間平均電力算出手段73に与えるものである。
絶対値算出手段74は、受信入力信号x(n)を取り込み、受信入力信号x(n)の信号電力を絶対値化して、超短時間平均電力算出手段75及び短時間平均電力算出手段76に与えるものである。
超短時間平均電力算出手段72は、絶対値算出手段71からの出力を取り込み、所定の超短時間における残差信号の平均信号電力evs(n)を算出するものであり、その算出した平均信号電力evs(n)を、近端送出信号電力急増判定手段77及び短時間平均電力算出手段73に与えるものである。
超短時間平均電力算出手段75は、絶対値算出手段74からの出力を取り込み、所定の超短時間における受信入力信号の平均信号電力xvs(n)を算出するものであり、その算出した平均信号電力xvs(n)を、近端送出信号電力急増判定手段77及び短時間平均電力算出手段76に与えるものである。
超短時間平均電力算出手段72及び75はそれぞれ、常時演算を行うものである。また、超短時間平均電力算出手段72及び75のそれぞれは、IIR形LPFを有して構成されており、入力した信号e(n)及びx(n)のサンプル値の絶対値|e(n)|及び|x(n)|を、適当な時定数をもつIIR形LPFに入力することにより平均化し、超短時間平均電力evs(n),xvs(n)を算出する。
ここで、IIR形LPFの係数は“a_vs”及び“1−a_vs”であり、係数“a_vs”はa_vs=exp(−T/CR_vs)で定義されるものである。TはIIRフィルタのサンプリング周期、CR_vsは超短時間平均電力算出手段の時定数である。時定数CR_vsは後述する短時間平均電力算出手段の時定数CR_s2よりも小さい値とする。
式(25)は、超短時間平均電力算出手段75が超短時間平均電力xvs(n)を算出する算出式であり、式(26)は、超短時間平均電力算出手段72が超短時間平均電力evs(n)を算出する算出式である。
xvs(n)=|x(n)|×(1−a_vs)+xvs(n−1)×a_vs…(25)
evs(n)=|e(n)|×(1−a_vs)+evs(n−1)×a_vs…(26)
短時間平均電力算出手段73は、絶対値算出手段71からの出力と超短時間平均電力算出手段72からの出力とを取り込み、所定の短時間における残差信号の平均信号電力es(n)を算出し、算出した平均信号電力es(n)を近端送出信号電力急増判定手段77に与えるものである。
短時間平均電力算出手段76は、絶対値算出手段74からの出力と超短時間平均電力算出手段75からの出力とを取り込み、所定の短時間における受信入力信号の平均信号電力xs2(n)を算出し、算出した平均信号電力xs2(n)を近端送出信号電力急増判定手段77に与えるものである。
短時間平均電力算出手段73及び76はそれぞれ、常時演算を行うものである。また、短時間平均電力算出手段73及び76はそれぞれ、IIR形LPF731及び761、選択手段732及び762、を有して構成されるものである。
短時間平均電力算出手段73及び76はそれぞれ、入力する信号e(n)及びx(n)のサンプル値の絶対値|e(n)|及び|x(n)|を、適当な時定数を持つIIR形LPF731及び761に入力することにより平均化し、短時間平均電力es(n)及びxs2(n)を算出する。
このIIR形LPF731及び761の係数は、“a_s2”及び “1−a_s2”であり、係数“a_s2”はa_s2=exp(−T/CR_s2)で定義されるものである。TはIIR形フィルタのサンプリング周期、CR_s2は短時間平均電力算出手段73及び76の時定数である。このCR_s2は、第1の実施形態で示した時定数CR_sと同じ値としても良いし、又は異なる値としても良い。
選択手段732は、短時間平均電力es(n)と超短時間平均電力evs(n)とを取り込み、これらの入力の小さいほうの値min(es(n),evs(n))を出力するものである。また、選択手段732からの出力は、IIR形LPF731の遅延手段(Z−1)に格納される。
式(27)は、短時間平均電力算出手段73のIIR形LPF731による残差信号の短時間平均電力es(n)の算出式であり、式(28)は、短時間平均電力算出手段73が出力する残差信号の短時間平均電力es(n)の算出式である。
es(n)=|x(n)|×(1−a_s2)+es(n−1)×a_s2…(27)
es(n)=min(es(n),evs(n))…(28)
選択手段762は、短時間平均電力xs2(n)と超短時間平均電力xvs(n)とを取り込み、これらの入力の小さいほうの値min(xs2(n),xvs(n))を出力するものである。また、選択手段762からの出力は、IIR形LPF761の遅延手段(Z−1)に格納される。
xs2(n)=|x(n)|×(1−a_s2)+xs2(n−1)×a_s2…(29)
xs2(n)=min(xs2(n),xvs(n))…(30)
近端送出信号急増判定手段77は、超短時間平均電力xvs(n)、evs(n)及び短時間平均電力xs2(n)、es(n)を入力し、式(31)の条件が成立するか否かを判断し、式(31)の条件が成立する場合、近端送出信号t(n)が急増したと判定し、その判定結果をダブルトーク判定手段62に与えるものである。これにより、ダブルトーク判定手段62は、第1実施形態で示したダブルトーク判定結果に優先して、適応フィルタの係数更新をディセーブル制御する。
evs(n)/es(n)−xvs(n)/xs2(n)>ζ…(31)
閾値ζは正の定数であり、例えば、「1」を適用することができる。
evs(n)/es(n)は、残差信号の超短時間平均電力evs(n)を短時間平均電力es(n)で除した値である。また、式(28)より、es(n)はmin(es(n),evs(n))で更新した後の値であるので、evs(n)/es(n)は1以上の値である。
残差信号e(n)の信号電力が増加するとき、超短時間平均電力evs(n)と短時間平均電力es(n)はともに増加するが、時定数の差分により、超短時間平均電力evs(n)は短時間平均電力es(n)よりも応答感度が高いので、残差信号e(n)の信号電力が増加に転じた初期段階においては、evs(n)/es(n)は1よりも大きい値となる。信号電力の増加度合いが急速であればあるほど、その値は大きくなる。即ち、evs(n)/es(n)は残差信号e(n)の信号電力の増加度合いを示すものである。
同様に、xvs(n)/xs2(n)は、受信入力信号の超短時間平均電力xvs(n)を短時間平均電力xs2(n)で除した値である。式(30)より、xs2(n)はmin(xs2(n),xvs(n))で更新した後の値であるので、xvs(n)/xs2(n)は1以上の値である。
受信入力信号x(n)の信号電力が増加するとき、超短時間平均電力xvs(n)と短時間平均電力xs2(n)はともに増加するが、時定数の差分により、超短時間平均電力xvs(n)は短時間平均電力xs2(n)よりも応答感度が高いので、受信入力信号x(n)の信号電力が増加に転じた初期段階においては、xvs(n)/xs2(n)は1よりも大きい値となる。信号電力の増加度合いが急速であればあるほど、その値は大きくなる。即ち、xvs(n)/xs2(n)は受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合いを示すものである。
式(31)の左辺は、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))から、受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))を差し引くものである。左辺の値が閾値ζよりも大きければ、近端送出信号t(n)の信号電力が急速に増加したと判定し、適応フィルタの係数更新をディセーブルとして、係数発散を防止する。
なお、式(31)の両辺にxs2(n)×es(n)を乗じた式(32)の判定式を用いることにより、除算を排除し演算量を低減しても良い。
evs(n)×xs2(n)−xvs(n)×es(n)
>ζ×xs2(n)×es(n)…(32)
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態のダブルトーク検出器60におけるダブルトーク検出処理の動作について詳細に説明する。
図8は、残差信号の増加度合い(evs(n)/es(n))についてのシミュレーションの信号波形を示す図である。
図8において、パラメータの例として、超短時間平均電力算出手段72の時定数CR_vs=4ms、短時間平均電力算出手段73の時定数CR_s2=16ms、閾値ζ=1とした。
近端送出信号t(n)の信号電力が急速に増加し、受信入力信号x(n)の信号電力がほとんど変化しないとき、送信入力信号d(n)(=t(n)+y(n))の信号電力は急速に増加し、残差信号e(n)(=t(n)+Δy(n))の信号電力も急速に増加する。
この近端送出信号t(n)の信号電力の急増に伴い、図8(a)に示すように残差信号e(n)の信号波形も、100msの時点で信号電力が急増したとする。そうすると、絶対値算出手段71から出力される残差信号|e(n)|は、図8(b)に示すような信号波形となり、超短時間平均電力evs(n)及び短時間平均電力es(n)はそれぞれ、図8(c)及び図8(d)に示す信号波形となる。
図8(c)及び図8(d)において、超短時間平均電力evs(n)及び短時間平均電力es(n)はいずれも100msの時点で増加するが、超短時間平均電力算出手段72及び短時間平均電力算出手段73が有するIIR形LPFの時定数はそれぞれ異なるので、その時定数の差分より、超短時間平均電力evs(n)は短時間平均電力es(n)よりも急速に増加する。
そのため、図8(e)に示すように、100ms前までは、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))が1を少し超える値であるが、100msの時点で、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))は約3程度まで急激に増加する。その後、短時間平均電力es(n)の値も高くなってくるので、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))は1を少し超える値に戻っていく。
その間、受信入力信号x(n)の信号電力はほとんど変化しないから、受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))が1であるとする。
そうすると、xvs(n)/xs2(n)=1及び閾値ζ=1を、式(31)に代入すると、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))について、次の関係が求まる。
(evs(n)/es(n))−1>1
即ち、
(evs(n)/es(n))>2…(33)
となる。
従って、近端送出信号電力急増判定手段77は、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))が式(33)の条件(式(31)を基本とする条件)を満たしたタイミング、即ち、図8(f)の“1”レベルで検出し、これによりダブルトーク判定手段62が適応フィルタの係数更新をディセーブル制御する。
図8(f)に示す通り、100msの時点で、近端送出信号電力急増判定手段77は近端送出信号t(n)の急速な増加を速やかに検出できている。その後、残差信号の信号電力の変化がなくなると、検出結果は“0”(未検出)に戻るが、検出結果が“0”(未検出)に戻った後のダブルトーク検出は、第1の実施形態で示したダブルトーク判定方法を適用する。
その後、350msの時点で、近端送出信号t(n)の信号電力が急減すると、残差信号e(n)の信号電力も急減し(図8(a)参照)、超短時間平均電力evs(n)及び短時間平均電力es(n)はいずれも減少する(図8(c)及び図8(d)参照)。
このとき、超短時間平均電力evs(n)及び短時間平均電力es(n)のいずれか小さいほうの値min(evs(n),es(n))を選択する選択手段732を備えることにより、どちらのフィルタも超短時間平均電力算出手段72の時定数CR_vsでその過渡応答が決まり、速やかに減少し、es(n)≒evs(n)となり、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))≒1となる。
また、近端送出信号電力急増判定手段77は近端送出信号t(n)の信号電力の変化(急減)を検出しない。(図8(e)及び図8(f)参照)。
その結果、残差信号e(n)の信号電力が急激に減少した直後に、再び、急増したとしても、信号が再び急増する直前では、es(n)≒evs(n)となっているので、残差信号e(n)の信号電力急増を検出することができる。
もし、選択手段732が無ければ、残差信号e(n)の信号電力が急激に減少するとき、それらの時定数の差分によって、超短時間平均電力evs(n)が短時間平均電力es(n)よりも急速に減少する。
すると、残差信号e(n)の信号電力が急激に減少した直後に、再び、急増すると、信号が再び急増する直前では、evs(n)<<es(n)となっている可能性があり、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))が小さい値となってしまい、残差信号e(n)の信号電力急増を検出できない可能性が生じてしまう。
つまり、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))は、残差信号の信号電力が急増するときのみ、値が急速に増加し、それ以外のときは1を少し超えた値となる。
その結果、近端送出信号t(n)の信号電力の急増したタイミングのみを抽出することができる。
また、残差信号e(n)の信号電力が急激に減少した直後に、再び、急増したとしても、残差信号e(n)の信号電力急増を検出することができる。
上記の他に、残差信号e(n)(=t(n)+Δy(n))の信号電力が急速に増加する状況として、受信入力信号x(n)の信号電力が急速に増加する場合がある。特に、適応フィルタが未収束であり、残留エコー信号成分Δy(n)の信号電力が大きくなる場合である。
しかし、この場合、近端送出信号t(n)が無信号に近ければ、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))は、受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))と近い値まで上昇する。
例えば、近端送出信号t(n)が無信号のとき、受信入力信号x(n)の信号電力が急速に増加したことにより、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))は、図8(e)のように例えば約「3」程度の値に、急速に増加する。
一方、受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))についても、受信入力信号x(n)の急増に伴い、図8(e)のように例えば約「3」程度の値に、急速に増加する。
そうすると、式(31)において、evs(n)/es(n)=3、xvs(n)/xs2(n)=3となるため、式(31)の左辺は差し引き「0」となる。
その結果、式(31)の左辺は差し引き「0」となるから、閾値ζ=1としても、式(31)の条件を満たすことはないので、近端送出信号電力急増判定手段77は、近端送出信号電力の急増を検出せず、適応フィルタの係数更新制御に影響を与えることはない。
つまり、受信入力信号x(n)の信号電力が急増したとしても、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))の急増と同時に、受信入力信号x(n)の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))も急増するため、式(31)の条件を満たさず、適応フィルタの収束動作を阻害することがない。
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で説明した効果に加えて、近端送出信号急増検出手段が、残差信号の信号電力の増加度合い(evs(n)/es(n))から受信入力信号の信号電力の増加度合い(xvs(n)/xs2(n))を差し引いた値と、閾値ζと比較することにより、近端送出信号t(n)の信号電力が急速に増加したことを速やかに検出することができるので、近端送出信号の信号電力が急増した場合に適応フィルタの係数更新をディセーブル制御することができる。
その結果、シングルトーク状態からダブルトーク状態へ移行するときに、残差信号e(n)(=t(n)+Δy(n))に含まれる近端送出信号t(n)の信号成分が急速に大きくなり、ダブルトーク検出が遅れ、近端送出信号t(n)の信号成分を用いて適応フィルタの係数更新をしてしまい、フィルタ係数が大きく発散することを防止することができる。
第2の実施形態では、速やかにダブルトーク状態を検出できるので、係数発散を防止することができ、エコーキャンセラの安定性を大きく向上させることができるのである。
(C)他の実施形態
(C−1)本発明のダブルトーク検出器は、電話回線において2線4線変換機能をもつハイブリッド回路で生じる回線エコーを除去するエコーキャンセラのほか、スビーカからマイクロホンに回り込んだエコー(音響エコー)を除去するエコーキャンセラにも適用することができる。
さらに、エコーキャンセラから出力される残差信号e(n)を、更に抑圧するノンリニア・プロセッサの制御や、エコー・サブレッサの制御にも適用することができる。
また、第1及び第2の実施形態の説明では、ダブルトーク検出器20及び60がハードウェア的な構成で実現されているイメージで説明したが、ダブルトーク検出器20及び60の機能をソフトウェア的に実現するようにしてもよい。なお、本発明は以下に示す実施形態に変更して実現しても良い。
(C−2)ERL推定のイネーブル制御に関して、3つの条件を全て満足したときのみイネーブル制御する実施形態を示したが、任意の1つ又は2つの条件を満足したときにイネーブル制御をするようにしてもよい。また、3つの条件をその他の任意の条件と組み合わせて適用するようにしても良い。
(C−3)各信号の平均電力の算出方法は、第1及び第2の実施形態で説明した方法に限定されず、他の方法を広く適用することができる。
例えば、第1及び第2の実施形態において、平均電力算出手段のIIR形LPF入力をサンプル値の絶対値としたが、サンプル値を二乗した値を入力するようにしてもよい。また例えば、信号平均電力の算出手段は、IIR形LPFに限らず、FIR形LPF等その他の手段を適用するようにしてもよい。
(C−4)演算処理量の低減のため、除算および対数演算を極力行わない実施形態を示したが、除算および対数演算を行うようにしても良い。対数演算を行うようにする場合、例えば、受信入力信号の短時間平均電力xs(n)のデシベル換算値から、送信入力信号の短時間平均電力ds(n)デシベル換算値を差し引き、短時間平均エコーパス減衰量を算出し、短時間平均エコーパス減衰量をERL推定値の演算手段の入力としてもよい。その場合、ERL推定値の演算手段に含まれる長時間平均処理用のフィルタは1つのみで構成することができ、そのフィルタ出力はERL推定値となる。
(C−5)ERL推定演算のイネーブル条件と、ダブルトーク判定条件で、短時間平均電力xs(n)と比較する閾値xs_thを同一としたが、異なる閾値を用いるようにしても良い。その他、同一記号を付したパラメータについても、必要に応じて、別のパラメータに分離しても良い。
(C−6)第2の実施形態において、近端送出信号が急増したことを検出したときに、その検出結果を用いて、適応フィルタの係数更新をディセーブル制御としたが、ERL推定演算もディセーブル制御とすることにより、近端送出信号の急増に伴うERL推定値の変動を低減するようにしても良い。
第1の実施形態のダブルトーク検出器の内部構成を示す内部構成図である。 従来のエコーキャンセラの構成を示す構成図である。 第1の実施形態の近端背景雑音推定器の内部構成を示す内部構成図である。 第1の実施形態のエコーパス減衰量推定器の内部構成を示す内部構成図である。 第1の実施形態のダブルトーク検出閾値の特性例を示す図である。 第2の実施形態のダブルトーク検出器の内部構成を示す内部構成図である。 第2の実施形態の近端送出信号電力の急増検出手段の内部構成を示す内部構成図である。 第2の実施形態の残差信号の増加度合い(evs(n)/es(n))についてのシミュレーションの信号波形を示す図である。
符号の説明
1…エコーキャンセラ、20及び60…ダブルトーク検出器、21…近端背景雑音推定器、22…受信入力信号の短時間平均電力算出手段、23…送信入力信号の短時間平均電力算出手段、24…エコーパス減衰量推定器、25…ダブルトーク判定手段、31…絶対値算出手段、32…IIR形LPF、41…ERL推定演算制御手段、42…ERL推定値演算手段、421…受信入力信号の長時間平均電力算出手段、422…送信入力信号の長時間平均電力算出手段、61…近端送出信号電力急増検出手段、62…ダブルトーク判定手段、71…絶対値算出手段、72…残差信号の超短時間平均電力算出手段、73…残差信号の短時間平均電力算出手段、74…絶対値算出手段、75…受信入力信号の超短時間平均電力算出手段、76…受信入力信号の短時間平均電力算出段、77…近端送出信号電力急増判定手段。

Claims (19)

  1. エコーキャンセラの受信入力信号、送信入力信号及びエコー除去後の残差信号に基づいてダブルトーク状態を検出し、上記エコーキャンセラが有する適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク検出器において、
    上記残差信号に基づき、近端の背景雑音の電力推定値を求める近端背景雑音推定手段と、
    上記送信入力信号の平均電力値を求める送信入力平均電力算出手段と、
    上記受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出手段と、
    上記近端の背景雑音の電力推定値、上記送信入力信号の平均電力値及び上記受信入力信号の平均電力値に基づいて、所定のエコーパス減衰値推定方法により、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値推定手段と、
    上記エコーパス減衰推定値、上記送信入力信号の平均電力値及び上記受信入力信号の平均電力値に基づいてダブルトーク状態を検出し、上記適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク判定手段と
    を備えることを特徴とするダブルトーク検出器。
  2. 上記近端背景雑音推定手段は、少なくとも上記受信入力信号の平均電力値が所定の閾値未満の場合、上記残差信号に基づく平均信号電力値を求め、この平均信号電力値を、上記近端の背景雑音の電力推定値とするフィルタ部を有することを特徴とする請求項1に記載のダブルトーク検出器。
  3. 上記エコーパス減衰値推定手段は、
    所定のエコーパス減衰値演算制御条件を満たす場合に、エコーパス減衰推定値の演算制御を行うエコーパス減衰値演算制御部と、
    上記エコーパス減衰値演算制御部から演算指示を受けた場合に、上記送信入力信号の平均電力値及び上記受信入力信号の平均電力値に基づいて、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値演算部と
    を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のダブルトーク検出器。
  4. エコーパス減衰値推定演算部が、上記受信入力信号の平均電力値のデシベル換算値から、上記送信入力信号の平均電力値のデシベル換算値を差し引いた短時間平均エコーパス減衰量を入力し、長時間平均処理を行うことによりエコーパス減衰推定値を算出することを特徴とする請求項3に記載のダブルトーク検出器。
  5. 上記エコーパス減衰値演算部は、
    上記送信入力平均電力算出手段の平均算出時間より長い時間で、上記送信入力信号の平均電力値を算出する送信入力長時間平均電力算出部と、
    上記受信入力平均電力算出手段の平均算出時間より長い時間で、上記受信入力信号の平均電力値を算出する受信入力長時間平均電力算出部と
    を有することを特徴とする請求項3又は4に記載のダブルトーク検出器。
  6. 上記送信入力長時間平均電力算出部及び受信入力長時間平均電力算出部は、
    それぞれフィルタにより構成されるものであり、
    上記ダブルトーク判定手段からの判定結果に基づいて、ダブルトーク判定時のフィルタ応答特性がシングルトーク判定時のフィルタ応答特性より鈍くなるように設定されている
    ことを特徴とする請求項5に記載のダブルトーク検出器。
  7. 上記エコーパス減衰値演算制御部は、上記受信入力平均電力算出手段が求めた上記受信入力信号の平均電力値が所定の闘値以上である場合に、エコーパス減衰値の演算処理を指示することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  8. 上記エコーパス減衰値演算制御部は、上記受信入力平均電力算出手段が求めた上記受信入力信号の平均電力値のデシベル換算値から、上記送信入力平均電力算出手段が求めた上記送信入力信号の平均電力値のデシベル換算値を差し引いた値が、所定のエコーパス減衰値の最小値以上である場合に、エコーパス減衰値の演算処理を指示することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  9. 上記エコーパス減衰値演算制御部は、上記送信入力平均電力算出手段が求めた上記送信入力信号の平均電力値のデシベル換算値から、上記近端の背景雑音の電力推定値のデシベル換算値を差し引いた値が、所定の閾値以上である場合に、エコーパス減衰値の演算処理を指示することを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  10. 上記エコーパス減衰値演算制御部が、請求項7、請求項8及び請求項9に記載の条件の全部を満足する場合、又は、任意に組み合わせた条件を満足する場合に、エコーパス減衰値の演算処理を指示することを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  11. 上記ダブルトーク判定手段は、上記受信入力平均電力手段が求めた上記受信入力信号の平均電力値が所定の閾値以上であり、かつ、上記受信入力平均電力算出手段が求めた上記受信入力信号の平均電力値から、上記送信入力平均電力算出手段が求めた上記送信入力信号の短時間平均電力値を差し引いてマージンαを加算した値が上記エコーパス減衰推定値よりも大きい場合に、上記適応フィルタの係数更新処理を指示することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  12. 上記エコーパス減衰値演算部が、上記エコーパス減衰推定値の初期値を、所定のエコーパス減衰値の最小値を用いて初期化することを特徴とする請求項3〜11のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  13. 上記受信入力信号及び上記残差信号に基づいて、近端送出信号の信号電力値の急増を検出する近端送出信号電力急増検出手段を備え、
    上記ダブルトーク判定手段が、上記近端送出信号電力急増検出手段の検出結果に基づいて、上記適応フィルタの係数更新処理を制御することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  14. 上記近端送出信号電力急増検出手段は、
    上記残差信号の平均電力値を求める残差平均電力算出部と、
    上記残差平均電力算出部の平均算出時間より短い時間で、上記残差信号の平均電力値を求める残差超短時間平均電力算出部と、
    上記受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出部と、
    上記受信入力平均電力算出部の平均算出時間より短い時間で、上記受信入力信号の平均電力値を求める受信入力超短時間平均電力算出部と
    を有することを特徴とする請求項13に記載のダブルトーク検出器。
  15. 上記残差平均電力算出部は、当該残差平均電力算出部が求めた平均電力値と上記残差超短時間平均電力算出部が求めた平均電力値とのうち小さい方の値を選択する残差平均電力選択部を有し、
    上記受信入力平均電力算出部は、当該受信入力平均電力算出部が求めた平均電力値と上記受信入力超短時間平均電力算出部が求めた平均電力値とのうち小さい方の値を選択する受信入力平均電力選択部を有する
    ことを特徴とする請求項14に記載のダブルトーク検出器。
  16. 近端送出信号電力の急増検出手段が、
    上記残差信号の超短時間平均電力値を上記残差信号の平均電力値で除した値から、上記受信入力信号の超短時間平均電力値を上記受信入力信号の平均電力値で除した値を差し引き、この差し引いた値が所定の閾値よりも大きい場合に、上記近端送出信号電力が急増したことを検出することを特徴とする請求項15に記載のダブルトーク検出器。
  17. 上記近端送出信号電力急増検出手段が、上記近端送出信号電力が急増したことを検出したときに、上記エコーパス減衰値推定演算部をディセーブル制御することを特徴とする請求項13〜16のいずれかに記載のダブルトーク検出器。
  18. エコーキャンセラの受信入力信号、送信入力信号及びエコー除去後の残差信号に基づいてダブルトーク状態を検出し、上記エコーキャンセラが有する適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク検出方法において、
    近端背景雑音推定手段が、上記残差信号に基づき、近端の背景雑音の電力推定値を求める近端背景雑音推定工程と、
    送信入力平均電力算出手段が、上記送信入力信号の平均電力値を求める送信入力平均電力算出工程と、
    受信入力平均電力算出手段が、上記受信入力信号の平均電力値を求める受信入力平均電力算出工程と、
    エコーパス減衰値推定手段が、上記近端の背景雑音の電力推定値、上記送信入力信号の平均電力値及び上記受信入力信号の平均電力値に基づいて、所定のエコーパス減衰値推定方法により、エコーパス減衰推定値を求めるエコーパス減衰値推定工程と、
    ダブルトーク判定手段が、上記エコーパス減衰推定値、上記送信入力信号の平均電力値及び上記受信入力信号の平均電力値に基づいてダブルトーク状態を検出し、上記適応フィルタの係数更新処理を制御するダブルトーク判定工程と
    を有することを特徴とするダブルトーク検出方法。
  19. 請求項1〜17のいずれかに記載のダブルトーク検出器を備えることを特徴とするエコーキャンセラ。
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