JP2009030663A - セパレータプレート - Google Patents
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Abstract
【課題】セパレータプレートにおいて、係合時における湿式摩擦材の温度上昇を効果的に抑えられるとともに、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばせること。
【解決手段】セパレータプレート1においては、平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2を両面に設け、複数本の溝2の断面形状は、幅w,深さdの略V字形状であり、これらの複数本の溝2はセパレータプレート1の全面に亘って設けられている。溝2の幅wは50μm〜500μmの範囲内で、深さdは10μm〜500μmの範囲内であることから、接触する湿式摩擦材の温度上昇を抑えるための油溝として適切な幅及び深さを有しており、係合時の温度上昇を効果的に抑えることができ、油溝の深さが深過ぎず、幅が広過ぎないことから、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることもなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができる。
【選択図】図1
【解決手段】セパレータプレート1においては、平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2を両面に設け、複数本の溝2の断面形状は、幅w,深さdの略V字形状であり、これらの複数本の溝2はセパレータプレート1の全面に亘って設けられている。溝2の幅wは50μm〜500μmの範囲内で、深さdは10μm〜500μmの範囲内であることから、接触する湿式摩擦材の温度上昇を抑えるための油溝として適切な幅及び深さを有しており、係合時の温度上昇を効果的に抑えることができ、油溝の深さが深過ぎず、幅が広過ぎないことから、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることもなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、油中に浸した状態で対向した湿式摩擦材に高圧力をかけることによってトルクを伝達するセパレータプレートであって、湿式摩擦材の耐熱性を向上させることができるセパレータプレートに関するものである。
従来、自動車等の自動変速機(Automatic Transmission、以下「AT」とも略する。)やオートバイ等の変速機に用いられる、複数または単数の摩擦板を設けた摩擦材係合装置用として用いることができる湿式摩擦材として、材料の歩留まり向上による低コスト化、引き摺りトルク低減による車両での低燃費化を目指して、平板リング状の芯金に平板リング形状に沿ったセグメントピースに切断した摩擦材基材を油溝となる間隔をおいて接着剤で順次並べて全周に亘って接着し、裏面にも同様にセグメントピースに切断した摩擦材基材を接着してなるセグメントタイプ摩擦材が開発されている。
一例として、自動車等のATには湿式油圧クラッチが用いられており、複数枚のセグメントタイプ摩擦材と複数枚のセパレータプレートとを交互に重ね合わせ、油圧で両プレートを圧接してトルク伝達を行うようになっており、非締結状態から締結状態に移行する際に生じる摩擦熱の吸収や摩擦材の摩耗防止等の理由から、両プレートの間に潤滑油(Automatic Transmission Fluid,自動変速機潤滑油、以下「ATF」とも略する。)を供給している。(なお、「ATF」は、出光興産株式会社の登録商標である。)
ここで、近年、より以上の低燃費化を目指したATの小型化・軽量化に伴い、セグメントタイプ摩擦材を始めとする湿式摩擦材の耐熱性の向上が要求されており、これを目的として、湿式摩擦材の相手材であるセパレータプレートに微小幅の油溝を設けることによって、ATFにより係合時に発生する熱をより効率的に下げることによって、耐熱性を向上させることを目的として、特許文献1及び特許文献2に開示された発明がなされている。
特許文献1においては、湿式多板クラッチに用いられるセパレータプレートであって、摩擦面に所定方向に規則性を持って延びた微小な凹凸が設けられ、この凹凸の相手側に突出した角が除去されて先端が平坦にされていることを特徴とするセパレータプレートの発明について開示している。これによって、湿式多板クラッチの摩擦特性を向上させ、かつ冷却効果を高めることができるとともに、湿式摩擦材の摩耗を防止することができるとしている。
また、特許文献2においては、その両面に複数の凹部及び凸部が全周に亘って交互に配置され、凹部及び凸部による円周方向間隔はセパレータプレートと湿式摩擦材との摩擦熱によりセパレータプレートが板厚方向に蛇行して変形する蛇行変形の間隔より短く、凹部及び凸部は半径方向に延び、凹部の深さは摩擦材の厚さより深く形成されたセパレータプレートを備えた湿式多板クラッチ装置の発明について開示している。これによって、摩擦熱によりセパレータプレートにヒートスポットが発生するのを防止して、ATの変速時の不快な衝撃(変速ショック)を防止することができるとしている。
特開2004−211728号公報
特開2006−200585号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、凹凸の高さが0.1μm〜3μmと小さく設定されているため、凹部に潤滑油が流れ込むことによる冷却効果が極めて小さく、係合時に発生する熱を効率的に下げることができない。また、溝を形成するというよりは微小な凹凸を形成しているため、微小な凸部の先端が角張って摩擦材を傷付けることから、この先端をローラで押圧する等して除去するという余分な工程が必要となってしまう。
また、上記特許文献2に記載の技術においては、凹部の深さを摩擦材の厚さ(一般的に約0.5mm)より深く形成しているため、凹凸が大き過ぎて相手材となる湿式摩擦材の摩擦面が摩耗し易くなり、セグメントタイプ摩擦材を始めとする湿式摩擦材の寿命が短くなってしまう。更に、凹部の幅が広過ぎるため、湿式摩擦材との接触面積が小さくなり、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られないという問題点があった。
そこで、本発明は、係合時における湿式摩擦材の温度上昇を効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができるセパレータプレートを提供することを課題とするものである。
請求項1の発明に係るセパレータプレートは、平板リング形状の芯金に摩擦材基材が全周両面若しくは全周片面に接着されてなる湿式摩擦材に潤滑油中で係合することによって回転トルクを伝達する金属製のセパレータプレートであって、少なくとも前記湿式摩擦材に係合する面の少なくとも前記湿式摩擦材に接触する部分の全周に亘って、幅が50μm〜500μmの範囲内で深さが10μm〜500μmの範囲内の複数本の溝を形成したものである。
ここで、「湿式摩擦材」には、平板リング状の芯金にセグメントピースに切断した摩擦材基材を全周両面若しくは片面に接着してなるセグメントタイプ摩擦材、平板リング形状の芯金の両面または片面にリング状摩擦材基材を接着したリング状摩擦材、及びリング状摩擦材の両面若しくは片面をプレス加工若しくは切削加工して半径方向に複数の油溝を形成してなるリングタイプ摩擦材、の全てを含むものである。
請求項2の発明に係るセパレータプレートは、請求項1の構成において、前記複数本の溝はその全てが半径方向に沿って等間隔で設けられ、その本数は片面当たり24本〜168本の範囲内であるものである。
請求項3の発明に係るセパレータプレートは、請求項1または請求項2の構成において、前記複数本の溝は両面の全面に亘って設けられているものである。
請求項4の発明に係るセパレータプレートは、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記複数本の溝はその断面形状が略V字形状であるものである。
請求項1の発明に係るセパレータプレートは、平板リング形状の芯金に摩擦材基材が全周両面若しくは全周片面に接着されてなる湿式摩擦材に潤滑油中で係合することによって回転トルクを伝達する金属製のセパレータプレートであって、少なくとも湿式摩擦材に係合する面の少なくとも湿式摩擦材に接触する部分の全周に亘って、幅が50μm〜500μmの範囲内で深さが10μm〜500μmの範囲内の複数本の溝を形成したものである。
ここで、「湿式摩擦材」には、平板リング状の芯金にセグメントピースに切断した摩擦材基材を全周両面若しくは片面に接着してなるセグメントタイプ摩擦材、平板リング形状の芯金の両面または片面にリング状摩擦材基材を接着したリング状摩擦材、及びリング状摩擦材の両面若しくは片面をプレス加工若しくは切削加工して半径方向に複数の油溝を形成してなるリングタイプ摩擦材、の全てを含むものである。
また、「少なくとも湿式摩擦材に係合する面」とは、両面が湿式摩擦材に係合するセパレータプレートの場合は両面に複数本の溝を形成するが、片面のみが湿式摩擦材に係合するセパレータプレートの場合はその片面のみに複数本の溝を形成しても良いし、両面に複数本の溝を形成しても良いことを意味する。
更に、「少なくとも湿式摩擦材に接触する部分」とは、通常はセパレータプレートの全面が湿式摩擦材に接触するわけではなく、外周側及び内周側には湿式摩擦材に接触しない部分があるため、その部分を除いた湿式摩擦材に接触する部分のみに複数本の溝を形成しても良いし、湿式摩擦材に接触しない内周側を含めた面、若しくは湿式摩擦材に接触しない外周側を含めた面、更には湿式摩擦材に接触しない内周側及び外周側をも含めた全面に複数本の溝を形成しても良いことを意味する。
更に、複数本の溝を形成する方法としては、加圧プレス、切削加工等の方法があり、複数本の溝を形成する工程は、セパレータプレートの打ち抜きの前後のいずれにおいても実施することが可能である。
ここで、複数本の溝の幅は50μm〜500μmの範囲内であり、深さは10μm〜500μmの範囲内である。したがって、接触する湿式摩擦材の温度上昇を抑えるための油溝として適切な幅及び深さを有しており、係合時の温度上昇を効果的に抑えることができる。また、油溝の幅が広過ぎないことから、接触面積を確保することができて良好な摩擦特性が得られ、油溝の深さが深過ぎないことから、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることもなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができる。
このようにして、係合時における湿式摩擦材の温度上昇を効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができるセパレータプレートとなる。
請求項2の発明に係るセパレータプレートにおいては、複数本の溝はその全てが半径方向に沿って等間隔で設けられ、その本数は片面当たり24本〜168本の範囲内、より好ましくは72本〜144本の範囲内である。
半径方向に沿って等間隔で複数本の溝を設けることによって、溝内に均一に潤滑油が流れ込み易くなり、温度上昇の抑止効果が全周に亘って均一により向上し、また複数本の溝を形成するための加工もより容易になる。更に、本発明者らは、鋭意実験研究の結果、半径方向に沿って等間隔で設けた溝の本数が片面当たり24本〜168本の範囲内である場合に、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に抑えることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
更に、半径方向に沿って等間隔で設けた溝の本数が片面当たり72本〜144本の範囲内である場合には、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に、かつ確実に抑えることができるとともに、複数本の溝を形成するための加工もより容易になることから、より好ましい。
このようにして、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができるセパレータプレートとなる。
請求項3の発明に係るセパレータプレートにおいては、複数本の溝は両面の全面に亘って設けられている。
片面のみが湿式摩擦材に係合するセパレータプレートの場合においても、両面に、すなわち湿式摩擦材に係合しない側の面にも複数本の溝を設けても、使用上一向に差支えがなく、両面とも湿式摩擦材に係合するセパレータプレートと区別して製造する必要がなくなるため、生産性が向上する。
また、湿式摩擦材に接触しない部分をも含めた全面に複数本の溝を形成しても、使用上において何らの支障があるわけではなく、全面に亘って複数本の溝を設ける方が一般的に加工が容易であり、生産性が向上する。
このようにして、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができ、しかも生産性が向上するセパレータプレートとなる。
請求項4の発明に係るセパレータプレートにおいては、複数本の溝はその断面形状が略V字形状である。本発明者らは、複数本の溝の断面形状について鋭意実験研究を重ねた結果、断面形状が略V字形状である場合に、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に、かつ確実に抑えることができるとともに、湿式摩擦材表面の摩擦材基材の摩耗をもより効果的に、かつ確実に抑えることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
更に、断面形状が略V字形状である複数本の溝は、一般的に加工も容易であることから、セパレータプレートの生産性が向上するため、より好ましい。
このようにして、係合時における湿式摩擦材の温度上昇をより効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材表面の摩擦材基材を摩耗させることがなく、湿式摩擦材の寿命を延ばすことができ、しかも生産性が向上するセパレータプレートとなる。
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図6を参照して説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態(実施例)に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(b)は(a)のA−A断面を示す部分縦断面図である。図2(a)は本発明の実施の形態の第1変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(b)は第2変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(c)は第3変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(d)は第4変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(e)は第5変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図である。
図3(a)は本発明の実施の形態の第6変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図、(b)は第7変形例に係るセパレータプレートの全体構造を示す平面図である。図4は従来の溝のないセパレータプレート(比較例)の全体構造を示す平面図である。図5は本発明の実施の形態(実施例)に係るセパレータプレートの温度上昇抑制効果を測定するための試験装置の概略を示す模式図である。図6は本発明の実施の形態(実施例)に係るセパレータプレートの温度上昇抑制効果を、従来の溝のないセパレータプレート(比較例)と比較して示すグラフである。
図1(a)に示されるように、本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1は、外周にトルク伝達軸との嵌合部としての24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2を設けたものである。なお、図1(a)においては、複数本の溝2を2本線で表している。図1(b)に示されるように、これらの複数本の溝2はセパレータプレート1の両面に設けられており、また複数本の溝2の断面形状は、幅w,深さdの略V字形状である。
そして、図1(a)に示されるように、これらの複数本の溝2はセパレータプレート1の全面に亘って設けられている。これらの複数本の溝2は、セパレータプレート1の形状を鋼板から打ち抜いた後に、プレス加工によって形成した。したがって、本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1は、請求項1,請求項2,請求項3及び請求項4の発明に係るセパレータプレートに該当する。
ここで、複数本の溝2の幅wは50μm〜500μmの範囲内であり、複数本の溝2の深さdは10μm〜500μmの範囲内である必要がある。本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1においては、複数本の溝2は幅w=100μm,深さd=100μmに形成されている。
次に、本実施の形態の第1変形例乃至第7変形例に係るセパレータプレートについて、図2及び図3を参照して説明する。図2(a)に示されるように、本実施の形態の第1変形例に係るセパレータプレート1Aは、外周にトルク伝達軸との嵌合部としての24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり144本)の溝2Aを設けたものである。なお、図2(a)〜(e)においては、複数本の溝を1本の実線で表している。すなわち、第1変形例に係るセパレータプレート1Aは、セパレータプレート1に対して、溝の本数を倍にしたものである。
そして、セパレータプレート1と同様に、これらの複数本の溝2Aは断面形状が略V字形状であり、セパレータプレート1Aの両面に全面に亘って設けられている。したがって、本実施の形態の第1変形例に係るセパレータプレート1Aは、請求項1,請求項2,請求項3及び請求項4の発明に係るセパレータプレートに該当する。
また、図2(b)に示されるように、本実施の形態の第2変形例に係るセパレータプレート1Bは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に対して斜めの方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2Bを設けたものである。更に、図2(c)に示されるように、本実施の形態の第3変形例に係るセパレータプレート1Cは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿った片面当たり72本の溝2Ca、及び円周に沿った同心円形状の2本の溝2Cbを設けたものである。
また、図2(d)に示されるように、本実施の形態の第4変形例に係るセパレータプレート1Dは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、格子模様の複数本の溝2Da,2Dbを設けたものである。更に、図2(e)に示されるように、本実施の形態の第5変形例に係るセパレータプレート1Eは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿った複数本の綾状の溝2Eを設けたものである。
また、図3(a)に示されるように、本実施の形態の第6変形例に係るセパレータプレート1Fは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2Fを、内周縁から外周側の湿式摩擦材が接触する範囲までに限って設けたものである。なお、図3(a),(b)においては、複数本の溝2を2本線で表している。したがって、複数本の溝2Fの内周側はセパレータプレート1Fの内周縁に開口しているが、複数本の溝2Fの外周側はセパレータプレート1Fの外周縁に開口していない。
更に、図3(b)に示されるように、本実施の形態の第7変形例に係るセパレータプレート1Gは、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板に、半径方向に沿って複数本(片面当たり72本)の溝2Gを、内周側から外周側の湿式摩擦材が接触する範囲に限って設けたものである。したがって、複数本の溝2Gの内周側も外周側もセパレータプレート1Gの周縁に開口していない。
以上説明した本実施の形態に係るセパレータプレート1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gのうち、本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1について、実際に湿式摩擦材と係合させて温度を測定して、本発明による温度上昇抑制の効果を確認する試験を実施した。比較例としては、図4に示されるように、従来から用いられている表面に溝のない、外周に24箇所の凹凸を有する平板リング形状の鋼板からなるセパレータプレート10を使用した。
試験方法について、図5を参照して説明する。図5に示されるように、試験装置3としては、テスターSAE#2を使用し、ディスク(湿式摩擦材4)の枚数を3枚組みとして、湿式摩擦材4としてはセグメントタイプ摩擦材の、セグメントピース枚数片面40枚で溝幅2mm、セグメントピース(摩擦材基材)6の寸法が外径176mm,内径154mmのものを使用した。
また、潤滑油としてはATF(登録商標)を使用し、潤滑油量600ml/min、油温100℃、摩擦回転数3600rpm、面圧0.785MPa、イナーシャは0.343kg・m2 、0.245kg・m2 、0.196kg・m2 の三点について試験し、発熱量qsに対するセパレータプレートの温度(50サイクル時)を三点について測定した。なお、温度測定は、実施例に係るセパレータプレート1についても、比較例に係るセパレータプレート10についても、図5に示される4枚のセパレータプレートのうち、左から二番目のセパレータプレートについて行った。
試験結果について、図6を参照して説明する。図6に示されるように、比較例に係る従来のセパレータプレート10についても、本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1についても、発熱量qsが大きくなるにしたがって次第に温度が上昇しているが、実施例に係るセパレータプレート1の方が温度の上昇が抑制されており、最も発熱量qsが大きくなった時点において、比較例に係るセパレータプレート10には焼けが発生していたのに対して、実施例に係るセパレータプレート1には曇りが生じたのみであった。
このようにして、本実施の形態に係るセパレータプレート1においては、係合時における湿式摩擦材4の温度上昇をより効果的に抑えることができるとともに、良好な摩擦係数とトルク伝達性能が得られ、湿式摩擦材4の表面の摩擦材基材6を摩耗させることがなく、湿式摩擦材4の寿命を延ばすことができ、しかも生産性を向上させることができる。
なお、図6においては、本実施の形態(実施例)に係るセパレータプレート1についての試験結果のみを示したが、本実施の形態に係るその他のセパレータプレート1A,1B,1C,1D,1E,1F,1Gについても、セパレータプレート1と同様に、温度上昇抑制の効果を得ることができる。
本実施の形態においては、セパレータプレートに断面形状が略V字形状の溝を形成した場合について説明したが、溝の断面形状は略V字形状に限られるものではなく、略正方形、略長方形、略台形、半円形等、種々の断面形状とすることができる。また、溝の形成方法としては、プレス(押圧)加工、切削加工(刃具切削、レーザー加工、高水圧切削、アブレッシヴ切削、等)等の加工方法によることができる。
また、本実施の形態においては、セパレータプレートの両面に溝を形成した場合について説明したが、片面のみが湿式摩擦材と接触するセパレータプレートについては、接触面のみに溝を形成しても良い。
本発明を実施するに際しては、セパレータプレートのその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係、製造方法等については、上記各実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G セパレータプレート
2,2A,2B,2Ca,2Cb,2Da,2Db,2E,2F,2G 複数本の溝
4 湿式摩擦材
5 芯金
6 摩擦材基材
2,2A,2B,2Ca,2Cb,2Da,2Db,2E,2F,2G 複数本の溝
4 湿式摩擦材
5 芯金
6 摩擦材基材
Claims (4)
- 平板リング形状の芯金に摩擦材基材が全周両面若しくは全周片面に接着されてなる湿式摩擦材に潤滑油中で係合することによって回転トルクを伝達する金属製のセパレータプレートであって、
少なくとも前記湿式摩擦材に係合する面の少なくとも前記湿式摩擦材に接触する部分の全周に亘って、幅が50μm〜500μmの範囲内で深さが10μm〜500μmの範囲内の複数本の溝を形成したことを特徴とするセパレータプレート。 - 前記複数本の溝はその全てが半径方向に沿って等間隔で設けられ、その本数は片面当たり24本〜168本の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のセパレータプレート。
- 前記複数本の溝は両面の全面に亘って設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセパレータプレート。
- 前記複数本の溝はその断面形状が略V字形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のセパレータプレート。
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