JP2009006375A - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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【解決手段】鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、短辺又は長辺を構成する冷却部材10の裏面側に設けられた導水溝16〜18は、冷却部材10の隣り合う締結手段群の間に形成された空間部20と、この底面に先端面が当接する仕切り部22、23が設けられた支持部材13で形成され、導水溝16〜18のうち、メニスカス直下にある締結手段12の側方部分の内幅W1を、上下方向の締結手段12間の内幅W2よりも狭くし、かつ側方部分の深さD1を、上下方向の締結手段12間の深さD2よりも深くし、側方部分の導水溝16〜18の平断面積を上下方向の締結手段12間の導水溝16〜18の平断面積の−20%〜+20%の範囲内とした。
【選択図】図1
Description
この短辺81、82は、鏡面対称で同じ構成となっており、裏面側の上下方向に多数の導水溝85〜87が設けられ、この短辺81、82の裏面側に、ボルト88によってバックプレート(支持部材、冷却箱、又は水箱ともいう)89、90が固定されている。また、長辺83、84も、裏面側の上下方向に多数の導水溝85〜87が設けられ、この長辺83、84の裏面側に、ボルト88によってバックプレート91、92が固定されている(例えば、特許文献1参照)。
連続鋳造作業時においては、バックプレート89〜92の下部に設けられた給水部(図示しない)から、短辺81、82及び長辺83、84に設けられた多数の導水溝85〜87を介して、バックプレート89〜92の上部に設けられた排水部(図示しない)へ冷却水を流している。これにより、各短辺81、82と各長辺83、84を冷却しながら、鋳型80の上方から溶鋼を注いで溶鋼の初期凝固を行い、凝固シェルが形成された鋳片を鋳型下方よりほぼ一定速度で連続して引き抜き、鋳片を製造する。
このため、熱負荷が大きい湯面(メニスカス)近傍では、各短辺81、82及び各長辺83、84の拘束ひずみが増して、応力状態が悪化、即ち塑性ひずみの発生が増大していた。これにより、メニスカスクラック(メニスカスレベル付近に発生するヒートクラック:以下、単にクラックともいう)が発生して、鋳型寿命を低下させる問題があった。
更に、各短辺81、82及び各長辺83、84の厚みが厚くなるに伴い、溶鋼を電磁撹拌する際に、各短辺81、82及び各長辺83、84内に形成される渦電流が大きくなり、溶鋼の撹拌力を低下させたり、また各短辺81、82及び各長辺83、84を製造するための材料コストがかかる問題もある。
前記短辺又は前記長辺を構成する冷却部材の裏面側に設けられた前記導水溝は、該冷却部材の幅方向に隣り合う前記締結手段群の間に形成された空間部と、前記冷却部材の裏面側に向けて突出して、その先端面が前記冷却部材の前記空間部の底面に当接する仕切り部が設けられた前記支持部材とで形成され、
しかも前記導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記導水溝の内幅を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の内幅よりも狭くし、かつ前記側方部分の前記導水溝の深さを、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の深さよりも深くし、
更に、前記締結手段の側方部分の前記導水溝の平断面積を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の平断面積の−20%以上+20%以下の範囲内とした。
本発明に係る連続鋳造用鋳型において、前記メニスカスは、前記冷却部材の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にあり、しかも前記フィンを、該メニスカスの上方50mmの位置から、該メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に設けることが好ましい。
これにより、冷却部材自体の拘束ひずみを緩和することができるので、冷却部材でのクラックの発生を抑制(発生ひずみを低減)でき、鋳型の長寿命化を図ることができる。
また、冷却部材に導水溝を設けないことで、冷却部材の厚みを従来よりも薄くできるので、冷却部材の冷却効率を高めることができ、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。更に、鋳型内に形成される渦電流を抑制でき、溶鋼の撹拌力を現状よりも向上できると共に、材料コストの低減も図れる。
更に、メニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の導水溝の平断面積を、上下方向の締結手段間の導水溝の平断面積に対して所定範囲内に規定するので、圧力損失の上昇を抑制できる。これにより、冷却部材の下部から上部へかけて冷却水の流れを安定にできるので、冷却部材の均一な冷却を実施でき、クラックの発生を更に抑制できる。
請求項3記載の連続鋳造用鋳型は、フィンを設ける領域を、適切な範囲に設定することで、冷却部材でのクラックの発生を更に抑制できる。
ここで、図1(A)は本発明の一実施の形態に係る連続鋳造用鋳型のメニスカス直下に位置する締結手段近傍の部分平断面図、(B)は同連続鋳造用鋳型の上下方向に隣り合う締結手段間の部分平断面図、図2(A)は同連続鋳造用鋳型の長辺の裏面側の説明図、(B)は(A)のa−a矢視断面図、(C)は(A)のb−b矢視断面図、図3(A)は同連続鋳造用鋳のバックプレートの正面側の説明図、(B)は(A)のc−c部分矢視断面図、(C)は(A)のd−d部分矢視断面図、図4(A)は変形例に係る長辺の裏面側の部分拡大図、(B)は(A)のe−e矢視断面図である。
従って、対向配置される一対の短辺の間隔は、600mm以上3000mm以下程度であり、一対の長片10、11の間隔は、50mm以上300mm以下程度であり、また鋳型の上下方向の長さは、600mm以上1200mm以下程度である。なお、対向配置される短辺は、上記した範囲内でその間隔を変えることができる。
これにより、例えば、幅が600mm以上3000mm以下程度、厚みが50mm以上300mm以下程度のスラブを製造できる。
この空間部20は、長辺10を薄肉平板化して、この部分の長辺10の厚みT1を、3mm以上30mm以下とするようにして形成する。
ここで、薄肉平板化した部分の長辺の厚みが3mm未満の場合、長辺の繰り返し使用時における研削代が減少して鋳型使用回数の低下が生じる。一方、厚みが30mmを超える場合、厚みが厚くなり過ぎ、鋳型温度の上昇と締結の拘束による発生応力の増加により、塑性ひずみの発生量が増大する。
以上のことから、薄肉平板化した長辺の厚みT1を、3mm以上30mm以下としたが、上限を20mm、更には12mmとすることが好ましく、下限を5mm、更には7mmとすることが好ましい。
一方、バックプレート13には、長辺10の裏面側に向けて長辺10の上下方向に渡って突出して、その先端面が長辺10の空間部20の底面に当接する仕切り部22、23が設けられている。このとき、長辺10に設けた固定部21の先端面は、締結手段群の列を横切って隣り合う仕切り部23、22の間に形成される凹面24に当接する。
これにより、隣り合う締結手段群間に、それぞれ複数(ここでは、3本)の導水溝16〜18が形成される。
この導水溝16〜18のうち、締結手段群に隣接する導水溝16、18は、長辺10の上下方向に渡ってその断面形状が、締結手段12の側方に位置する部分と、他の部分(固定部20の側方に位置する部分)とで異なっている。なお、導水溝16、18の間に位置する導水溝17は、長辺10の上下方向に渡ってその断面形状が同一である。
具体的には、W1が3mm以上40mm以下、D1が3mmを超え20mm以下であり、しかもこのとき、D1/W1が、0.075を超え5以下の関係を満足している。また、W2が10mm以上80mm以下、D2が3mm以上10mm以下であり、しかもこのとき、D2/W2が、0.075以上1以下の関係を満足している。これにより、締結手段12近傍の冷却効率を高めることができる。
なお、図1(A)は冷却部材のメニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の導水溝を示しているが、本実施の形態ではメニスカス直下以外に位置する締結手段の側方部分の導水溝も同様の形状となっている。
なお、締結手段12の側方部分の導水溝16(領域A)の平断面積は、上下方向に隣り合う締結手段12間の導水溝16(領域B)の平断面積と同じ、又は−20%以上+20%以下(好ましくは、上限を+5%、下限を−5%)の範囲内である。
これにより、導水溝16を流れる冷却水の流速を、長辺10の下部から上部まで略均一にできるが、締結手段の側方部分の導水溝の平断面積を、上下方向に隣り合う締結手段間の導水溝の平断面積より小さくして、導水溝における冷却効率を高めることもできる。
このフィン34、35は、導水溝31、33が形成される領域の底面に対して、長辺30の幅方向に、例えば、ボールエンドミル(図示しない)を動かすことで形成できる。このフィン34、35は、側断面視して波状に形成されており、長辺30の上下方向のピッチPが1mm以上5mm以下程度、深さD3が、フィン34、35を形成する前の底面に対して、0.5mm以上2mm以下程度である。
なお、フィンは、導水溝31、33の全体に渡って又は部分的に設けてもよく、また、メニスカスの上方50mmの位置から、メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に渡って全体的に、又は部分的に設けてもよい。なお、メニスカスは、長辺30の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にある。
この締結手段12、12aは、長辺10に形成されている雌ねじ部41と、雌ねじ部41に螺合してバックプレート13を締着する雄ねじ(図示しない)を有している。また、雄ねじを取付けるため、バックプレート13に形成された孔42には、予め防水可能なシール座金が配置されており、雄ねじを取付けた部分からの冷却水の漏れを防止している。
この雌ねじ部41は、バックプレート13側へ突出しており、この先端面がバックプレート13の孔42が形成されている凹んだ凹面24に当接している。
コーティング層は、例えば、Co−NiのようなCo合金、Ni−FeのようなNi合金、又はNiのめっきを使用できるが、溶射(例えば、NiベースのCr−Si−B系合金)も使用できる。このコーティング層は、同一種類の成分を、長辺に使用する銅板の表面全面に渡って形成してもよく、また、複数種類の成分を、銅板の上下方向の異なる領域に、各成分の機能に応じてそれぞれ形成してもよい。
以上に示した長辺は、それぞれ銅板表面にコーティング層を形成した後、所定の形状を、従来公知の機械加工を行って製造する。
この長辺の形状は、一対の長辺の間隔を、スラブの引き抜き方向へ向けて同一としてもよいが、スラブの凝固収縮形状に応じて狭くすることが好ましい。
ここで、従来例の長辺は、図6に示した形状であり、長辺を構成する銅板の裏面側一面に導水溝が形成され、銅板の溶鋼冷却面からバックプレートとの接触面までの厚みが厚いもの(25mm)である。なお、銅板に形成した導水溝は、その深さが13mm、幅が5mmである。
一方、実施例の長辺は、図1(A)、(B)、図2(A)〜(C)、図3(A)〜(C)に示した形状であり、長辺を構成する銅板の空間部が形成された部分の厚みT1が従来例の銅板よりも薄いもの(13mm)である。なお、この銅板のメニスカス直下に位置する締結手段の側方部分の導水溝の内幅W1が9mm、深さD1が10mm、また上下方向に隣り合う締結手段間の導水溝の内幅W2が21mm、深さD2が4.5mmである。
このとき、長辺のメニスカス位置での最大変形量は、従来例が0.085mm、実施例が0.058mmとなり、実施例の形状とすることで、長辺の変形量を従来例よりも大幅に低減できることを確認できた。
また、長辺のメニスカス位置での塑性ひずみ幅は、従来例が0.288%、実施例が0.184%であり、疲労寿命(クラックが発生するまでの繰り返し荷重がかかる回数)は、従来例が842回、実施例が1774回であった。
従って、従来例の疲労寿命を1とした場合、実施例では2.11倍程度まで、疲労寿命を伸ばせることを確認できた。
このように、実施例での長辺の上端から2段目(メニスカス直下)の締結手段の反力を、従来例と比較して大幅に低減できるため、長辺をバックプレートに固定するための雄ねじの深さを浅くできることを確認できた。これにより、雄ねじのサイズを現状よりも小さくできるため、長辺の厚みを現状よりも薄くできることを確認できた。
また、メニスカス直下に位置する締結手段の側方部分に、前記したフィンを設けた場合、銅板の冷却効率を更に高めることができることを確認できた。
以上のことから、本願発明の連続鋳造用鋳型を使用することで、熱応力及び導水溝構造によるメニスカスクラックの発生を抑制して、長寿命化を図れることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、長辺及び短辺を冷却部材としたが、短辺のみ、又は長辺のみを冷却部材としてもよい。
そして、前記実施の形態においては、鋳片の一例であるスラブを製造する鋳型の構成について説明したが、形状と寸法の異なる他の鋳片、例えば、ブルームを製造する鋳型に、本願発明を適用することも勿論可能である。
Claims (3)
- 間隔を有して対向配置された一対の短辺と、該短辺を幅方向両側から挟み込んだ状態で対向配置された一対の長辺と、前記短辺及び前記長辺の裏面側にそれぞれ上下方向に並べて配置された複数の締結手段を備えた締結手段群によってそれぞれ固定された支持部材とを有し、該支持部材に設けられた給水部及び排水部を介して、前記短辺及び前記長辺の裏面側に設けられた多数の導水溝に冷却水を流すことで、前記短辺及び前記長辺の冷却を行うと共に溶鋼の冷却を行って鋳片を製造する連続鋳造用鋳型において、
前記短辺又は前記長辺を構成する冷却部材の裏面側に設けられた前記導水溝は、該冷却部材の幅方向に隣り合う前記締結手段群の間に形成された空間部と、前記冷却部材の裏面側に向けて突出して、その先端面が前記冷却部材の前記空間部の底面に当接する仕切り部が設けられた前記支持部材とで形成され、
しかも前記導水溝のうち、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記導水溝の内幅を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の内幅よりも狭くし、かつ前記側方部分の前記導水溝の深さを、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の深さよりも深くし、
更に、前記締結手段の側方部分の前記導水溝の平断面積を、上下方向に隣り合う前記締結手段間の前記導水溝の平断面積の−20%以上+20%以下の範囲内としたことを特徴とする連続鋳造用鋳型。 - 請求項1記載の連続鋳造用鋳型において、少なくとも前記冷却部材のメニスカス直下に位置する前記締結手段の側方部分の前記導水溝の底部に、冷却効率を増大させる水平突起からなるフィンを設けることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
- 請求項2記載の連続鋳造用鋳型において、前記メニスカスは、前記冷却部材の上端から下方へ50mm以上150mm以下の範囲内にあり、しかも前記フィンを、該メニスカスの上方50mmの位置から、該メニスカスの下方150mm位置までの範囲内に設けることを特徴とする連続鋳造用鋳型。
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