JP2009006230A - 高分子多孔質中空糸膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】主として水性流体の処理に利用される多孔質中空糸膜において、外圧に対する中空糸膜の潰れを低減した、耐久性の高い高分子多孔質中空糸膜を提供する。
【解決手段】本発明は、中空糸膜の内径をID(mm)、膜厚をΔd(mm)としたとき、0.1≦Δd/ID≦0.5であり、中空糸膜の偏肉度が0.75以上であり、中空糸膜の真円度が0.75以上であり、中空糸膜の外表面に緻密層を持ち、中空糸膜の外側より30分間0.4MPaの外圧をかけたとき、中空糸膜に生じる潰れの個数が、中空糸膜1kmあたり1個以下であり、中空糸膜の透水性が500L/hr/m2/barであることを特徴とする高分子多孔質中空糸膜である。
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子多孔質中空糸膜に関するものである。さらに詳しくは、主として水性流体の処理に利用される高分子多孔質中空糸膜において、逆洗等の外圧に対する中空糸膜の潰れを低減した、耐圧性、耐久性の高い高分子多孔質中空糸膜に関するものである。
今日、高分子多孔質膜はさまざまな分野において利用されており、中でも中空糸膜はその容積効率の高さから、精密濾過、限外濾過といった工業用途から血液透析、血液透析濾過といった医療用途まで広く利用されている。
一般に、これらの高分子多孔質中空糸膜に要求される特性として、透過性能および機械的強度が高いこと、化学的安定性などが挙げられるが、高い透過性能を発現させるためには、中空糸膜中の空孔率や孔径を上げる必要があるために機械的強度が犠牲になってしまうことが少なくない。この課題を解決するために中空糸膜素材の適正選択や構造の改善など、さまざまな対応がなされ、今日では幾分過酷な条件にでも耐えうる高分子多孔質中空糸膜が提供されるようになってきた。
例えば、特許文献1では、ポリアクリロニトリル系高分子を用いて、透水性と機械的強度の両立を可能にした技術を開示している。また特許文献2では、コストアップやコンパクト性の喪失につながるが、補強用繊維を用いることによって、機械的強度を補う技術を開示している。
特開2006−000810号公報 特開2000−287044号公報
これらの高分子多孔質中空糸膜の中でも主に水性流体処理に用いられるものは、使用の際に、中空糸膜の内側から処理流体を通過させる順ろ過と、一定期間使用後、外側からの加圧を行い、膜内のつまりや汚れを除去する逆洗と呼ばれる処理を繰り返し行っている。しかしながら、この順ろ過と逆洗を繰り返す過程において、外圧に耐えきれず、部分的に潰れが生じ、これに起因した膜の破損が起こることがある。このような現象は、実際のフィールドにて長期使用してみて初めて分かることが多いので、中空糸膜の品質評価時や短期のラボテストにおいては確認が困難であり、現実的には効果的な解決策が見出されておらず、今後の改善が強く期待されていた。
そこで本発明は、こういった従来技術に鑑み、主として水性流体の処理に利用される高分子多孔質中空糸膜において、外圧に対する中空糸膜の潰れを低減した耐久性の高い高分子多孔質中空糸膜を提供することを目的とする。
上記の課題を解決することができる本発明の高分子多孔質中空糸膜は、以下の構成よりなる。
(1)(a)中空糸膜の内径をID(mm)、膜厚をΔd(mm)としたとき、0.25≦Δd/ID≦0.5であり、
(b)中空糸膜の偏肉度が0.75以上であり、
(c)中空糸膜の真円度が0.75以上であり、
(d)中空糸膜の外側より30分間0.4MPaの外圧をかけたとき、中空糸膜に生じる潰れの個数が、中空糸膜1kmあたり1個以下であり、
(e)中空糸膜の透水性が500L/hr/m2/bar以上である
ことを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(2)中空糸膜が非対称構造を有することを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(3)中空糸膜が主として疎水性高分子からなることを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(4)疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(5)中空糸膜の外表面に緻密層を持つことを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(6)中空糸膜の内表面および外表面に緻密層を持ち、内表面から膜内部に向かって当初孔径が次第に増大し、少なくとも一つの極大部を通過後、外表面に向かって孔径が次第に減少することを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
(7)中空糸膜の外径をOD(mm)としたとき、0.4≦ODであることを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
本発明の高分子多孔質中空糸膜は、洗浄プロセスにおける中空糸膜の部分的な潰れを抑制しているので、膜の破損を防ぎ、耐久性の高い長期間使用可能な高分子多孔質中空糸膜を提供することが可能である。
以下に本発明の高分子多孔質中空糸膜について詳細に説明する。
本発明者らは、従来の高分子多孔質中空糸膜に生じる外圧による潰れについて詳細に検討を実施した。従来の評価方法では、20cm程度の中空糸膜10本程度から評価用の小規模のモジュール(以下ミニモジュールと呼ぶ)を作製し、耐圧性を評価することがほとんどであったが、水処理等の実際のフィールドで用いられるモジュールの規模を考え、より精度よく評価できるよう、1m前後の中空糸膜150本程度をモジュール化し、評価できる方法を確立した。その結果、驚くべきことに、ミニモジュールでの評価では外圧による潰れがまったく見られなかった中空糸膜においても同圧力の外圧によって潰れる部分が確認できることが明らかになった。
すなわち、中空糸膜には外圧に対して弱い部分が存在し、その外圧耐性の違いから、中空糸膜全体に同じ圧力がかかっているとき、多くの部分は潰れに至らないが、一部の弱い部分が潰れとなってあらわれることがあるということを発見した。すなわち、従来のミニモジュールでの評価では、長さの短さや糸本数の少なさのために上記の弱い部分をピックアップできる確率が低く、外圧に対する潰れを検出しにくいが、モジュールの規模を大きくすることで検出できるようになったと考えられる。言い換えれば、製膜条件の最適化や製膜技術の向上により、中空糸膜に含まれる欠点は飛躍的に減少しているが、非常に少ないながらも現在でもなお生じているということである。ここで外圧による潰れとは、中空糸膜外側より圧力をかけたとき、中空糸膜の一部または大部分が変形し、外径の最小部が最大部の半分以下になった部分を対象とする。
そこで、該潰れの発生についてさらに検討を進めた。中空糸膜にこのような部分的に弱い部分が生じてしまう原因を突き止めるため、膜原料が均一に混合・溶解されていることは勿論のこととして、ノズルより吐出され製膜されていく過程から最終的に巻き上げられるまで、外圧による潰れの発生状況を詳細に調査した。その結果、なんと中空糸膜を巻き上げる際の糸のまとめ方によって、潰れの発生状況に大きな差異があらわれることを見出した。この結果をもとにさらに深く検討を実施したところ、巻き上げ前に多数の中空糸膜をまとめてしまうと、中空糸膜同士に捩れが生じてしまうことが分かり、これが巻き上げ時のテンションによって固定または増幅され、中空糸膜に局部的なストレスやダメージを与えているのではないかとの推察に至った。従って、巻き上げ直前まで極力捩れを生じさせないように配慮し、テンションが付与される巻き上げ時の中空糸膜の不規則な重なりを防止する一方、中空糸膜へのテンションを低減させることで大幅に外圧による潰れの発生を低減できることを見出した。特に外径の大きい中空糸膜においてはこの傾向が顕著であった。また、巻き上げ機にはテンションを一定に保つために、ダンサローラーと呼ばれる小径のローラーが備えられており、このローラーを通って中空糸膜が巻き上げられるが、このローラー径を大きくすることにより中空糸膜の屈曲を低減することも効果を期待できる。
そこで本発明者らは上記のような外圧による潰れ発生の状況やメカニズムから該方策を鋭意検討し、本発明を完成した。
すなわち、本発明においては、中空糸膜の内径をID(mm)、膜厚をΔd(mm)としたとき、0.25≦Δd/ID≦0.5であり、かつ中空糸膜の偏肉度が0.75以上かつ真円度が0.75以上である中空糸膜において、中空糸膜の透水性が500L/hr/m2/bar以上であり、かつ中空糸膜の外側より30分間0.4MPaの外圧をかけたときに中空糸膜に生じる潰れの個数が中空糸膜1kmあたり1個以下である。
本発明において、中空糸膜の内径IDと膜厚Δdの関係は、0.25≦Δd/ID≦0.5であるが、0.25未満であると内径に比して膜厚の割合が小さくなるため、外圧に対する耐久度が本質的に低くなり、本発明を適用しても透水性と潰れ耐性を両立させることが難しくなる。また、0.5を超えると膜厚が太くなることで中空糸膜が本質的に丈夫なものとなるため、本発明の適用効果が小さい。さらには膜厚を太くするために多くの膜原料が必要となるためコスト的なデメリットが大きい上、内径基準の中空糸膜の有効膜面積に対して外径が大きくなってしまうため中空糸膜モジュールとしたときのコンパクト性が損なわれてしまう。したがって、より好ましくは0.25≦Δd/ID≦0.4であり、さらに好ましくは0.25≦Δd/ID≦0.3である。
上記の関係を満たせば中空糸膜の外径OD(mm)については特段の限定は必要ないが、ODが大きくなるほど屈曲部での変化度合いが大きくなるし、物理的に中空糸膜同士の重なりが増加してしまうために捩れが生じやすく、局部的なストレス・ダメージをより高い確率で受けやすくなる。したがって、ODがあまりに小さい場合には本発明の効果が現れにくくなるため、本発明の効果をより享受しやすいという観点から、好ましくは0.4≦ODである。また、ODがあまりにも大きくなりすぎると、中空糸膜モジュールとしての機能を損なうおそれがあるため、より好ましくは、0.4≦OD≦5である。
本発明における中空糸膜の偏肉度は0.75以上が好ましいが、0.75未満と偏肉度がひどくなると、膜厚の薄い部分と厚い部分との差が大きくなるため、膜厚の薄い部分で外圧に対する耐性がもともと低い状態となってしまうため、本発明を適用しても効果が得られないことがある。よって、より好ましい偏肉度は0.8以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。
また、本発明における中空糸膜の真円度は0.75以上が好ましいが、真円度が0.75未満というような楕円もしくは偏平に近い状態となると、中空糸膜に外圧をかけたときの圧力のかかり方がより偏平に近づけようとする向きに働くため、こちらも本発明を適用しても効果が得られないことがある。よって、より好ましい真円度は0.8以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。
本発明における中空糸膜の透水性は500L/hr/m2/bar以上が好ましいが、透水性が500L/hr/m2/bar未満であると、中空糸膜中の空孔率や孔径が小さいか、または孔数が少ないために本質的に中空糸膜の強度(剛性)が高いことが多く、本発明によっても顕著な効果を得られにくい。また逆に透水性が高すぎる場合には根本的に膜基材が脆弱となってしまっている可能性があるため、より好ましい中空糸膜の透水性は600L/hr/m2/bar以上3000L/hr/m2/bar以下である。
本発明において、中空糸膜の外側より30分間0.4MPaの外圧をかけたときの中空糸膜に生じる潰れの個数は、中空糸膜長さ1kmあたり1個以下であるのが好ましい。用途や運転方法により違いはあるが、中空糸膜が水性流体処理時の逆洗で受ける外圧は最大で0.1〜0.2MPa程度であり、この外圧に対する耐性が中空糸膜に求められる重要な特性の1つである。外圧に対する耐性が低いと、逆洗によって中空糸膜に潰れが発生し、その後の使用で十分な性能が得られなくなるばかりか、膜の破損を引き起こす原因となる。従って本発明では、逆洗による外圧への耐性を規定できる指標を検討し、30分間0.4MPaの外圧をかけたときの中空糸膜に生じる潰れの個数で表記する。すなわち、実使用時には逆洗は繰り返し行われるため、出荷においては最大外圧よりも高い圧力で検査を行い長期使用における耐性を検証する必要があることから、中空糸膜にかける外圧は通常逆洗時の圧力の2〜4倍となる0.4MPaに設定し、また、ある程度の時間をかけて潰れが生じることがあるため、適正な時間を検討した結果、30分間で十分な検出力があることを確認した。潰れの個数が多いと、外圧に対する耐性が弱い点が多く存在することを意味するので、すなわち実使用時の膜破損を引き起こす可能性が高くなる。また、モジュール1本当たりの中空糸膜の総長さは凡そ2〜20kmであるが、言うまでも無く中空糸膜潰れの個数は少ないほど好ましく、より好ましくは0.5個/km以下、さらに好ましくは0.1個/km以下である。
また、中空糸膜の構造について説明する。膜の内表面から外表面にかけて膜基材の粗密度合いが大幅に変化する構造を非対称構造と呼び、逆に変化が少ない構造を均質構造と呼ぶ。本発明における中空糸膜の構造は、均質構造でも構わないが、より本発明の効果が得られやすいという観点から、非対称構造であることが好ましい。つまり、非対称構造を有する膜では、中空糸膜を屈曲させたときの歪みのかかり方が膜厚方向で異なるため、これによって中空糸膜に対して局部的なストレスやダメージが発生しやすく、外圧をかけたときに部分的な潰れが生じやすいと考えられるためである。また非対称構造の中でも、中空糸膜外表面に緻密な層を持ち、膜内部が疎な構造を有する場合には、外圧を受けたときに膜内部に向けて凹みやすい構造であると考えられるため、より本発明の効果を享受しやすいため好ましい。さらに、かかる観点から、内表面および外表面に緻密な層を持ち、内表面と外表面の間の膜内部に比較的孔径の大きな疎な部分が存在するような膜構造を持つ中空糸膜に対して本発明を適用するとより好ましい。
本発明の高分子多孔質中空糸膜は、内表面が緻密であることにより、クロスフロー濾過による内表面でのせん断力の効果も効いて、膜特性が保持されやすい。さらに、密−疎−密構造の内表面が緻密層であるため、逆洗時に被除去物質が外れやすく、膜特性の回復性に優れる。外面緻密層においても被除去物質のトラップは行われていると考えられるが、逆洗時には孔径小→孔径大方向に洗浄液が流れるので、前記トラップされた被除去物質が外れやすい。また、詳細な機構は不明だが、恐らくは密−疎−密の構造のため、膜壁内部での洗浄液の流れが非直線的にランダム化することで、洗浄効果がより高まるものと考えられる。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の径は、使用される用途に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、内径は100〜1500μmが好ましく、より好ましくは200〜1300μm、さらに好ましくは250〜1200μmである。内径が小さすぎると、用途によっては被処理液中の成分により内腔の閉塞などが生じる可能性がある。また、内径が大きすぎると、中空糸膜の潰れ、ゆがみなどが生じやすくなる。
本発明の高分子多孔質中空糸膜においては、膜厚は40〜400μmであるのが好ましい。膜厚が小さすぎると、中空糸膜の潰れ、ゆがみなどが生じやすくなる。膜厚が大きすぎると、処理流体が膜壁を通過する際の抵抗が大きくなり、透過性が低下する可能性がある。したがって、膜厚は60〜400μmがより好ましく、75〜380μmがさらに好ましい。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の内表面における孔径は、0.001〜1μmであることが好ましく、0.01〜0.3μmがより好ましく、0.03〜0.08μmがさらに好ましい。これよりも孔径が小さいと透過性が低くなることがある。また、これよりも大きいと膜の強度が低下することがある。また、内表面における空孔率は5〜30%が好ましく、7〜25%がより好ましく、10〜20%がさらに好ましい。空孔率が小さすぎると透過性が低くなることがある。また、空孔率が大きすぎると膜の強度が低下することがある。
本発明の高分子多孔質中空糸膜は膜壁部分に空孔率が極大となる部位が存在するのが特徴のひとつであるが、この極大部における孔径は、内表面、外表面での孔径よりも大きく、かつ、0.1〜5μmであることが好ましく、0.2〜3μmであることがより好ましく、0.25〜1.5μmであることがさらに好ましい。極大部における孔径が小さすぎると膜構造の傾斜が緩やかとなるため、膜特性、膜特性の保持性、膜特性の回復性が低下することがある。また、極大部における孔径が大きすぎると膜の強度が低下する可能性がある。
また、極大部における空孔率は、内表面、外表面での空孔率よりも大きく、かつ、40〜80%であることが好ましく、45〜70%であることがより好ましく、45〜63%がさらに好ましい。空孔率が小さすぎると膜構造の傾斜が緩やかとなるため、膜特性、膜特性の保持性、膜特性の回復性が低下することがある。極大部における空孔率が大きすぎると膜の強度が低下する可能性がある。
外表面における孔径は特に制限されないが、0.02〜2μmが好ましく、0.04〜1μmがより好ましく、0.06〜0.3μmがさらに好ましい。孔径が小さすぎると透過性が低くなることがあり、大きすぎると膜の強度が低下する可能性がある。
外表面における空孔率は特に制限されないが、5〜30%であることが好ましく、7〜25%であることがより好ましく、10〜20%がさらに好ましい。空孔率が小さすぎると透過性が低く、隣接する中空糸膜同士の固着がおこりやすくなり、大きすぎると膜の強度が低下する可能性がある。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の用途は特に限定されず、精密ろ過(MF)や限外ろ過(UF)、細菌・微粒子の除去フィルターなどが挙げられるが、本発明によって得られる高い耐外圧特性を十分に発揮するため、実使用時に高い外圧が中空糸膜に付加される水処理用高分子多孔質中空糸膜に対して特に好適に使用できる。
以下、本発明の高分子多孔質中空糸膜の製造方法について具体的に説明する。
本発明において、疎水性高分子としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン(以下PSfと略記する)、ポリエーテルスルホン(以下PESと略記する)、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース(トリ)アセテートなどが例示される。中でも、下記の式[1]、[2]で示される繰返し単位を有するPSf、PESなどのポリスルホン系高分子は高い透水性の膜を得るのに有利であり、好ましい。ここで言うポリスルホン系高分子は、官能基やアルキル基などの置換基を含んでいてもよく、炭化水素骨格の水素原子はハロゲンなど他の原子や置換基で置換されていてもよい。また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明において、高分子多孔質中空糸膜は、疎水性高分子と親水性高分子を含んでなることが好ましく、親水性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(以下PVPと略記する)、カルボキシメチルセルロース、デンプンなどの高分子炭水化物などが例示される。中でも、ポリスルホンとの相溶性、水性流体処理膜としての使用実績から、PVPが好ましい。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。PVPの分子量としては重量平均分子量10000〜1500000のものが好ましく用いられ得る。具体的には、BASF社より市販されている分子量9000のもの(K17)、以下同様に45000(K30)、450000(K60)、900000(K80)、1200000(K90)を用いるのが好ましい。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の製造方法はなんら限定されるものではなく、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒を混合溶解し、脱泡したものを製膜溶液として芯液とともに二重管ノズルの環状部、中心部から同時に吐出し、空走部(エアギャップ部)を経て凝固浴中に導いて中空糸膜を形成し(乾湿式紡糸法)、水洗後巻き取り、乾燥する方法が例示される。
製膜溶液に使用される溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記する)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記する)、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略記する)、ジメチルスルホキシド(以下DMSOと略記する)、ε−カプロラクタムなど、使用される疎水性高分子、親水性高分子の良溶媒であれば広く使用することが可能であるが、疎水性高分子としてPSf、PESなどのポリスルホン系高分子を使用する場合には、NMP、DMF、DMAcなどのアミド系アプロティック溶媒が好ましく、NMPが特に好ましい。なお、本発明においてアミド系溶媒とは、構造中にN−C(=O)のアミド結合を含有する溶媒を意味し、アプロティック溶媒とは、構造中において炭素原子以外のヘテロ原子に直接結合した水素原子を含有していない溶媒を意味する。
また、製膜溶液には高分子の非溶媒を添加することも可能である。使用される非溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール(以下DEGと略記する)、トリエチレングリコール(以下TEGと略記する)、ポリエチレングリコール200、400(以下PEG200、PEG400と略記する)、グリセリン、水などが例示されるが、疎水性高分子としてPSf、PESなどのポリスルホン系高分子、親水性高分子としてPVPを使用する場合には、DEG、TEG、PEG200(400)などのエーテルポリオールが好ましく、TEGが特に好ましい。なお、本発明においてエーテルポリオールとは、構造中に少なくともひとつのエーテル結合と、ふたつ以上の水酸基を有する物質を意味する。
詳細な機構は不明であるが、これらの溶媒、非溶媒を使用して調製した製膜原液を使用することで、紡糸工程における相分離(凝固)が制御され、本発明の好ましい膜構造を形成するのに有利になると考えられる。なお、相分離の制御には、後述の芯液組成や凝固浴中の液(外部凝固液)の組成も重要になる。
製膜原液における疎水性高分子の濃度は、該原液からの製膜が可能であれば特に制限されないが、10〜35重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。高い透過性を得るには疎水性高分子の濃度は低いほうが好ましいが、過度に低いと強度の低下や、分画特性の悪化を招く可能性があるので、15重量%以上が好ましい。
親水性高分子の添加量は、中空糸膜に親水性を付与し、水性流体処理時の非特異的吸着を抑制するのに十分な量であれば特に制限されないが、疎水性高分子に対する親水性高分子の比率として10〜30重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。親水性高分子の添加量が少なすぎると、膜への親水性付与が不十分となり、膜特性の保持性が低下する可能性がある。また、親水性高分子の添加量が多すぎると、親水性付与効果が飽和してしまい効率がよくなく、また、製膜原液の相分離(凝固)が過度に進行しやすくなり、本発明の好ましい膜構造を形成するのに不利になることがある。
製膜原液中における溶媒/非溶媒の比は、紡糸工程における相分離(凝固)の制御に重要な要因となる。具体的には、溶媒/非溶媒の含有量が重量比で30/70〜70/30であることが好ましく、35/65〜60/40であることがより好ましく、35/65〜55/45であることがさらに好ましい。溶媒の含有量が少なすぎると、凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、溶媒含有量が多すぎると、相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性が高くなる。
製膜原液は、疎水性高分子、親水性高分子、溶媒、非溶媒を混合、攪拌して溶解することで得られる。この際、適宜温度をかけることで効率的に溶解を行うことができるが、過度の加熱は高分子の分解を招く危険があるので、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜80℃である。また、親水性高分子としてPVPを使用する場合、PVPは空気中の酸素の影響により酸化分解を起こすことから、紡糸溶液の溶解は不活性気体封入下で行うのが好ましい。不活性気体としては、窒素、アルゴンなどが上げられるが、窒素を用いるのが好ましい。このとき、溶解タンク内の残存酸素濃度は3%以下であることが好ましい。窒素封入圧力を高めてやれば溶解時間短縮が望めるが、高圧にするには設備費用が嵩む点と、作業安全性の面から大気圧以上2.0kgf/cm2以下が好ましい。
製膜を行うに際しては、中空糸膜への異物混入による膜構造の欠陥の発生を回避するために、異物を排除した製膜原液を使用することが好ましい。具体的には、異物の少ない原料を用いる、製膜原液を濾過し異物を低減する方法等が有効である。本発明では、中空糸膜の膜厚よりも小さな孔径のフィルターを用いて製膜原液を濾過してからノズルより吐出するのが好ましく、具体的には均一溶解した紡糸溶液を溶解タンクからノズルまで導く間に設けられた孔径10〜50μmの焼結フィルターを通過させる。濾過処理は少なくとも1回行えば良いが、ろ過処理を何段階かにわけて行う場合は後段になるに従いフィルターの孔径を小さくしていくのが濾過効率およびフィルター寿命を延ばす意味で好ましい。フィルターの孔径は10〜45μmがより好ましく、10〜40μmがさらに好ましい。フィルター孔径が小さすぎると背圧が上昇し、生産性が落ちることがある。
また、製膜原液からは予め気泡を排除しておくのが欠陥のない中空糸膜を得るのに有効である。気泡混入を抑える方法としては、製膜原液の脱泡を行うのが有効である。製膜原液の粘度にもよるが、静置脱泡や減圧脱泡を用いることができる。この場合、溶解タンク内を常圧から−100〜−750mmHg減圧した後、タンク内を密閉し30〜180分間静置する。この操作を数回繰り返し脱泡処理を行う。減圧度が低すぎる場合には、脱泡の回数を増やす必要があるため処理に長時間を要することがある。また減圧度が高すぎると、系の密閉度を上げるためのコストが高くなることがある。トータルの処理時間は5分〜5時間とするのが好ましい。処理時間が長すぎると、減圧の影響により製膜原液の構成成分が分解、劣化することがある。処理時間が短すぎると脱泡の効果が不十分になることがある。
中空糸膜の製膜時に使用される芯液の組成は、製膜原液に含まれる溶媒および非溶媒と、水との混合液を使用することが好ましい。この際、芯液中に含まれる該溶媒と該非溶媒の比率は、製膜原液の溶媒/非溶媒比率と同一とすることが好ましい。製膜原液に使用されるのと同一の溶媒および非溶媒を、製膜原液中の比率と同一にして混合し、これに水を添加して希釈したものが好ましく用いられる。芯液中の水の含量は、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。水の含有量が多すぎると凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、水含有量が少なすぎると相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性がある。
外部凝固液の組成は、製膜原液に含まれる溶媒および非溶媒と、水との混合液を使用することが好ましい。この際、芯液中に含まれる該溶媒と該非溶媒との比率は、製膜原液の溶媒/非溶媒比率と同一であることが好ましい。製膜原液に使用されるのと同一の溶媒および非溶媒を、製膜原液中の比率と同一にして混合し、これに水を添加して希釈したものが好ましく用いられる。外部凝固液中の水の含量は、30〜85重量%が好ましく、より好ましくは40〜80重量%である。水の含有量が多すぎると凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、水含有量が少なすぎると相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性がある。また、外部凝固液の温度は、低すぎると凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、高すぎると相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性があるので、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜70℃である。
本発明において、膜構造を制御する因子のひとつには、ノズルの温度が挙げられる。ノズルの温度は、低すぎると凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、高すぎると相分離の進行が過度に抑制され、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性があるので、30〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃である。
本発明の高分子多孔質中空糸膜を得るために好ましい製造方法としては、芯液とともに二重管ノズルから吐出した製膜原液を、エアギャップ部分を経て外部凝固液を満たした凝固浴中に導いて中空糸膜を形成する乾湿式紡糸法が例示されるが、ノズルから吐出された製膜原液の、エアギャップ部分での滞留時間が膜構造を制御する因子のひとつとなり得る。滞留時間が短すぎると、エアギャップ部分での相分離による凝集粒子の成長が抑制された状態で外部凝固液によりクエンチされるので、外表面構造が緻密になりすぎて透過性が低下することがある。また、外表面が緻密になりすぎると、得られた中空糸膜が固着しやすい傾向がある。滞留時間が長すぎると、大孔径の空孔が生じやすくなり、分画特性や強度の低下を招く可能性がある。エアギャップにおける滞留時間の好ましい範囲は0.05〜4秒であり、0.1〜3秒がより好ましい。
上記、比較的滞留時間の短いエアギャップ部分を経て、凝固浴に導かれた中空糸膜は、芯液からの凝固が進行しながら、外部からの凝固はある程度抑制された状態で、比較的凝固性のマイルドな外部凝固液と接触する。すなわち、凝固浴内に突入した直後の中空糸膜は未だ完全に構造が決定しない「生きた」状態にあるが、この「生きた」中空糸膜が凝固浴内で完全に凝固し、構造が決定されて引き上げられる。前述のとおり、外部凝固液の凝固性は比較的マイルドであるので、凝固浴内での滞留時間は完全に凝固が完了するまで十分にとる必要がある。具体的には、5〜20秒が好ましく、10〜20秒がより好ましい。凝固浴内での滞留時間が短すぎると凝固が不十分となる可能性があり、長すぎると製膜速度の低下や凝固浴の大型化が必要となることがある。
本発明の高分子多孔質膜は、内表面および外表面に緻密層を有し、内表面における孔径が外表面における孔径よりも小さく、内表面から外表面に向かって当初空孔率が増大し、少なくともひとつの極大部を通過後、再び外表面側で空孔率が減少する構造を持つのが大きな特徴であるが、このような構造を実現するには、上記の製膜原液を使用し、上記の紡糸条件によって中空糸膜を得る方法を採るのが好適である。内表面から外表面に向かって密−疎−密の非対称構造を構成させるには、中空糸膜の内側からの凝固(主として芯液による相分離・凝固)と外側からの凝固(主としてエアギャップ、外部凝固液での相分離・凝固)のバランスをとり、両者を拮抗させることで内外両表面から膜壁内部に向かっての凝固を制御しなければならない。そのための有効な制御手段が、上記芯液の組成、外部凝固液の組成・温度、エアギャップ部分での滞留時間、凝固浴内での滞留時間である。これらを上記の範囲に設定することによって、本発明の特徴的な膜構造を得ることができる。
本発明の高分子多孔質中空糸膜を得るには、内外両表面からの凝固進行を微妙に制御する必要があるが、その際に注意しなければならない点として、中空糸膜の凝固浴中における屈曲がある。乾湿式紡糸においては、通常、下向きに配列したノズルから製膜原液を重力方向に吐出、エアギャップ部分を経て凝固浴に導き、凝固浴内で進行方向を上向きに変更して凝固浴から引き上げ、水洗浴での洗浄を経て巻き取るのが一般的である。本発明の高分子多孔質中空糸膜は、凝固浴内突入直後には完全に構造が決定しない「生きた」状態にあるので、凝固浴内での方向転換が急激に行われると、膜構造の欠陥や破壊を招く可能性がある。具体的には、方向転換時の曲率半径が20〜300mm、より好ましくは30〜200mm、さらに好ましくは40〜100mm、さらにより好ましくは40〜70mmである。また、多点ガイドを使用し、複数のポイントで徐々に方向を転換する方法も好ましい。
本発明の高分子多孔質中空糸膜の製造において、完全に中空糸膜構造が固定される以前に実質的に延伸をかけないことが好ましい。実質的に延伸を掛けないとは、ノズルから吐出された製膜原液に弛みや過度の緊張が生じないように、紡糸工程中のローラー速度をコントロールすることを意味する。吐出線速度/凝固浴第一ローラー速度比(ドラフト比)は0.7〜1.8が好ましい範囲である。前記比が0.7未満では、走行する中空糸膜に弛みが生じ生産性の低下につながることがあるので、ドラフト比は0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましく、0.95以上がさらにより好ましい。1.8を超える場合には中空糸膜の緻密層が裂けるなど膜構造が破壊されることがある。そのため、ドラフト比は、より好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下、さらにより好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.4以下である。ドラフト比をこの範囲に調整することにより細孔の変形や破壊を防ぐことができ、膜性能の保持性やシャープな分画特性を発現することが可能となる。
製膜速度(紡速)については、欠陥のない中空糸膜が得られ、生産性が確保できれば特に制限されないが、好ましくは、5〜40m/min、より好ましくは7〜30m/min、さらに好ましくは7〜20m/minである。紡速が低すぎると、生産性が低下することがある。紡速が高すぎると、上記の紡糸条件、特にエアギャップ部分での滞留時間や、凝固浴内での滞留時間を確保するのが困難となる可能性がある。
中空糸膜は製膜後、洗浄工程を経て過剰の溶媒、非溶媒を除去する。中空糸膜の洗浄方法は特に制限されないが、洗浄効果、安全性、簡便性から、温水を満たした洗浄浴内に製膜された中空糸膜をそのままオンラインで走行させ、しかる後に巻き取るのが好ましい。この際使用される温水の温度は、20〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。温度が低すぎると洗浄効果が不十分になり、温度が高すぎると洗浄液として水が使用できない。
製膜後、洗浄を経て得られた高分子多孔質中空糸膜は、使用中や洗浄操作による膜特性の変化を抑制し、膜特性の保持性・安定性、膜特性の回復性を確保する目的で、加熱処理を施すのが好ましい。この加熱処理を熱水への浸漬処理とすることで、同時に、中空糸膜に残存する溶媒や非溶媒などを洗浄・除去する効果も期待できる。
本発明の高分子多孔質中空糸膜を得るには、この熱水中への浸漬処理に先立ち、溶媒/非溶媒の水溶液と中空糸膜とを接触させた状態で、しばらくエージングするのが好ましい。このエージングを施すことによって、膜中の親水性高分子の含量、存在状態が最適化される。この工程における溶媒/非溶媒の水溶液の濃度は、有機成分濃度として20〜70重量%、温度は20〜40℃、時間は0.1〜10minが好ましい。
上記エージングを実施するには、完全に有機成分を除去した中空糸膜を再度溶媒/非溶媒の水溶液に浸漬してもよいが、紡糸後のオンラインでの洗浄条件を調整することで、芯液中の有機成分濃度を上記の好ましい範囲とし、そのまま上記好ましい温度、時間でエージングするのが簡便である。具体的には、
S = 中空糸膜の内半径の2乗[mm2]×芯液の有機成分濃度[%]÷100
H = 水洗浴中での中空糸膜の滞留時間[min]×水洗浴の水温[K]
(水洗浴が複数個ある場合は、それぞれについて上記Hを算出し、その合計をもってHとする。)
で規定されるS、Hの値が、下記を満足する条件で水洗を実施するのがよい。
H/S = 500〜50000
ただし、水洗浴中の有機成分濃度は、常に上記有機成分濃度の1/10以下となるよう適宜液更新を実施するのが好ましい。
上記エージングを経た中空糸膜の加熱処理に使用される熱水の温度は、60〜100℃が好ましく、より好ましくは70〜90℃、処理時間は30〜120min、より好ましくは40〜90min、さらに好ましくは50〜80minである。温度がこれよりも低く、処理時間がこれよりも短いと中空糸膜にかかる熱履歴が不十分となり、膜特性の保持性・安定性が低下する可能性があり、また、洗浄効果が不十分となり溶出物が増加する可能性が高くなる。温度がこれよりも高く、処理時間がこれよりも長いと、水が沸騰したり、処理に長時間を要し生産性が低下することがある。熱水に対する中空糸膜の浴比は、中空糸膜が十分に浸る量の熱水を使用すれば、特に制限されないが、あまり多量の熱水を使用するのは、生産性が低下する可能性がある。
製膜、加熱処理を完了した中空糸膜は、乾燥することによって、最終的に完成する。乾燥方法は、風乾、減圧乾燥、熱風乾燥など通常利用される乾燥方法が広く利用できる。最近、血液処理膜の乾燥などで利用されているマイクロ波乾燥なども利用可能であるが、簡便な装置で効率的に大量の中空糸膜を乾燥できる点で、熱風乾燥が好ましく利用され得る。乾燥に先立って、上記の加熱処理を施しておくことで、熱風乾燥による膜特性の変化も抑制することができる。熱風乾燥時の熱風温度は特に制限されないが、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。これよりも温度が低いと乾燥までに長時間を要し、これよりも温度が高いと熱風生成のためのエネルギーコストが高くなることがある。熱風の温度は、上記の熱水加熱処理を超えると膜の劣化を促進してしまい、特性の低下を招く可能性があるので、熱水加熱処理の温度よりも低いことが好ましい。
製膜後の中空糸膜は、巻き上げ機によって巻き取られるが、先述のとおり、この際の条件・態様が本発明の中空糸膜の外圧耐性に大きな影響をも与えることを見出し、巻き取り条件・態様に工夫をすることで本発明を完成した。
中空糸膜の製造において、製膜工程中は単糸で走行させることもあるが、巻き取り時には複数の中空糸膜を合糸して巻き上げられることが多い。特に、外径の大きな中空糸膜では、まとめる本数が多くなるほど、巻き取り時に中空糸膜に捩れが生じやすくなり、加えて巻取り時に受けるテンションの影響によって局部的なストレスを受けやすくなるため、注意が必要である。
巻き取り時のテンションは可能な限り低く設定した上で、合糸本数を少なくすることが好ましい。しかし、巻き取り時のテンションを低くしすぎると、中空糸膜に弛みが生じやすくなり整然と巻き取ることができないことがある。テンションについては、巻き取る中空糸膜の径や糸質、巻き取り速度、合糸本数などによって都度設定する必要があり、巻き取り性に不具合が生じない程度に低く設定することが好ましい。
また、合糸本数については、単糸で巻き取るのが理想だが、そうすると単糸当たりにかかるテンションが大きくなるため中空糸膜にダメージを与える可能性がある。合糸した状態でも径があまり大きくならない場合には複数本まとめてもよい。こちらも中空糸膜の強伸度等によって、外圧耐性に弊害のない合糸本数は変わってくるため試行錯誤により最適値を設定する必要があり、経験的には合糸した状態での全体径が5mm以下であることが好ましい。
また、巻上げ前から巻き上げに至るまでの中空糸膜の走行状態については、走行中に不必要な捩れが生じないよう、極力直線的な糸道とすることが好ましい。したがって、同時に複数本の中空糸膜を巻き上げる場合には、先述の好ましい合糸本数も加味し、紡糸走行中から巻き取りまで、複数の中空糸膜を完全に平行に走行せしめるのが最も好ましい実施態様である。
また、巻き上げ機には、ダンサローラーと呼ばれる小型のローラーが備えられている。巻き取り中の中空糸膜にかかるテンションが一定に保たれるように工夫しており、中空糸膜はこのローラーを通って進路を変更して走行し巻き上げ機に至る。したがって、このダンサローラーもあまりに径が小さすぎると、中空糸膜が走行中に大きく屈曲することになりダメージを与えることがある。逆に径を大きくしすぎると、ローラーが重くなることにより、結果として巻き取り時のテンションが増大してしまうため、巻き取られた中空糸膜にストレスを与える可能性がある。よって、ダンサローラーは軽量性と入手のしやすさ、加工性などからアルミニウム製とするのが好ましく、ローラー径は30〜100mmφとするのが好ましい。
巻き取られた中空糸膜は、巻き取りが進むにつれ捲き太りにより捲き束として径が大きくなっていくが、捲き径が大きくなりすぎると、中空糸膜が捩れたり中空糸膜同士の不規則な重なりが生じたりする可能性が高くなるため、中空糸膜に局部的なストレスがかかることになる。したがって、捲き厚みとしては50mm以下となるように巻き取ることが好ましい。
本願発明においては、上記したような中空糸膜巻き取り時の条件・態様に配慮をしているので、中空糸膜に与えるダメージを極力排除することが可能となり、したがって、該中空糸膜を用いて作製された中空糸膜モジュールは逆洗等による中空糸膜潰れや折れなどの発生を効果的に抑制することが可能となっている。
以下、実施例にて本発明の好ましい実施態様を説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(中空糸膜の電子顕微鏡による構造観察・解析)
乾燥した中空糸膜を切断し、内表面、外表面、断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、倍率10000倍または2000倍で撮影した。SEM写真を466dpiの解像度でコンピュータに取り込み、画像解析ソフトを使用して解析を行い、空孔率と平均細孔面積、細孔分布を求めた。具体的には、まず、取り込んだ画像を二値化処理し、空孔部が黒、構成ポリマー部分が白となった画像を得た。この画像を解析することにより、空孔部分の個数、各空孔部分の面積、空孔部分の面積の総和を得た。読み込んだ画像の総面積と、空孔項部分の面積の総和から、次式[1]により空孔率を算出した。
空孔率[%]=100×(空孔部分の面積の総和/読み込んだ画像の総面積) [1]
空孔部分の面積の総和と、空孔部分の個数から平均空孔面積を算出し、さらに空孔の形状を円と近似して、平均空孔面積から平均孔径を算出した。(次式[2]および[3])
空孔の面積(平均空孔面積)[μm2]=空孔部分の面積の総和/空孔部分の個数 [2]
孔径(平均孔径)[μm]=(平均空孔面積/π)1/2 [3]
さらに、各空孔部分の面積から上記同様、空孔の形状を円と近似した場合の孔径を算出し、その結果を表計算ソフトに取り込んでヒストグラムを作成して、細孔分布としてまとめた。
(中空糸膜の内径、膜厚の測定方法)
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得ることができる。測定には芯液を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察することが好ましい。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。中空糸膜の内径(ID)、外径(OD)および膜厚(Δd)は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられた穴に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
(中空糸膜の偏肉度の測定方法)
中空糸膜の偏肉度とは中空糸膜断面における中空糸膜厚の最薄部/最厚部の比のことであり、例えば膜厚が全部分で同じであれば偏肉度は1である。中空糸膜の内径、膜厚測定と同様に中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-12Aを用いて中空糸膜断面1つにつき膜厚の最薄部と最厚部を測定し、(最薄部膜厚)/(最厚部膜厚)を偏肉度とした。
(中空糸膜の真円度の測定方法)
中空糸膜の偏平度合いを評価するために、中空糸膜の真円度を測定した。真円度とは中空糸膜断面における中空糸内径の短軸/長軸比のことであり、例えば真円であれば真円度は1である。画像解析ソフト「Image-Pro Plus」(Media Cybernetics社)によって、ミニモジュール端面中任意の100個の中空糸膜断面に関して測定を実施し、その平均値を求めた。
(中空糸膜に生じる潰れの個数の測定方法)
まず、50〜200cmの中空糸膜を70〜300本束ね、接着により片側端部のみ開口させたモジュールを作製した。圧力容器内にモジュールを収納し、開口端をチューブに接続してチューブ反対側が圧力容器外に出るようにセットした。その際、作製したモジュールが傷つかないよう注意してセットする。圧力容器内に水を満たした後、容器を密閉して容器内を0.4MPaにて加圧した。チューブより容器内の水が放出された後、30分間0.4MPaをキープし、その後モジュールを容器より取り出し、中空糸膜に生じた潰れの個数を全中空糸膜についてもれなく計測した。その後、中空糸膜の本数と有効長から中空糸膜1kmあたりの潰れの個数を算出した。なお、作製するモジュールの中空糸膜の本数・長さについては、使用する圧力容器の大きさにより適宜設定し、かつ測定精度の観点から(中空糸膜の本数)×(有効長)の値が100mを超えるように決め、モジュール5本以上について測定する。
(中空糸膜の透水性の測定方法)
中空糸膜を3〜100本充填し、接着により両端部を開口させた、有効長10〜30cmの中空糸膜ミニモジュールを作製する。中空糸膜ミニモジュールは、有効膜面積(A)が0.002〜0.02[m2]になるよう、中空糸膜本数と長さを決めて作製する。なお、中空糸膜の有効膜面積(A)は、中空糸内径(ID)基準とし、接着部分を除いた有効長(L)から有効膜面積を計算する。予め純水を中空糸膜内部(中空部)、中空糸膜外部(モジュール内)の順に通水し、空気を除去する。中空糸膜内部(中空部)に通じるモジュール出口を封止し、モジュール入口から22℃の純水によって0.5〜2.0barの所定圧力をかけて、入口圧力(Pin)と出口(封止)部圧力(Pout)を測定しつつ、1分間に膜を通して膜外側に出てくる純水の量(W)を測定した。次に下記式により中空糸膜の透水性[L/hr/m2/bar]を計算した。
(透水性)=W[L/min]×60[min/hr]/A[m2]/((Pin[bar]+Pout[bar])/2)
ここで、A[m2]=ID[m]×π×L[m]×中空糸膜本数
(実施例1)
PES(住友ケムテック社製スミカエクセル(登録商標)4800P)18.9重量%、BASF社製PVP(コリドン(登録商標)K-30)3.1重量%、非溶媒として三菱化学社製TEG42.9重量%、溶媒に三菱化学社製NMP35.1重量%を均一に溶解したものを紡糸原液として用い、TEG42.9重量%、NMP35.1%、水22.0重量%の均一混合溶液を芯液とした。2重管構造の紡糸用口金を用い、外側から紡糸原液を、内側から芯液を、垂直下方に向け吐出し、中空糸膜を形成した。20mmの蒸気雰囲気中を通過させた後、凝固浴に浸漬させ、水洗浴、熱水浴を経た後、ドラム型カセによって巻取り速度8.3m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は巻き取り直前まで捩れが生じないよう、単糸にて走行させた。また、巻き上げ機のダンサローラーは80mmφを用いた。
ノズル温度は75℃、外部凝固液温度は55℃に設定した。凝固浴内では径50mmの円筒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変え、凝固浴から引き出した。(図3参照)。凝固浴内における中空糸膜の浸漬深さは最大で800mm、凝固浴内での中空糸膜の走行距離は2000mmであった。
エージング条件は、S=0.178、H=1515、H/S=8516であった。
巻き取られた中空糸膜の束を、80℃のRO水に60分間浸漬して加熱処理を行った。その後、60℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施した。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行った。中空糸膜のIDは1.193mm、Δdは0.358mmであった(巻き取り時の径:2mm)。
結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1と同様にして中空糸膜を製造し、ドラム型カセによって巻取り速度8.3m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて4本ごとに合糸して走行させた。エージング条件は、S=0.180、H=783、H/S=4347であった。
巻き取られた中空糸膜の束を、60℃のRO水に120分間浸漬して加熱処理を行った。その後、60℃で10時間にわたり熱風乾燥を実施した。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行った。中空糸膜のIDは1.200mm、Δdは0.355mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は4mmであった。
結果を表1に示す。
(実施例3)
PES(住友ケムテック社製スミカエクセル(登録商標)4800P)16.8重量%、BASF社製PVP(コリドン(登録商標)K-90)1.0重量%、非溶媒として三菱化学社製TEG45.2重量%、溶媒に三菱化学社製NMP37.0重量%を均一に溶解したものを紡糸原液として用い、TEG38.5重量%、NMP31.5%、水30.0重量%の均一混合溶液を芯液とした。2重管構造の紡糸用口金を用い、外側から紡糸原液を、内側から芯液を、垂直下方に向け吐出し、中空糸膜を形成した。30mmの蒸気雰囲気中を通過させた後、凝固浴に浸漬させ、水洗浴、熱水浴を経た後、3点カセによって巻取り速度20m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて24本ごとに合糸して走行させた。また、巻き上げ機のダンサローラーは60mmφを用いた。
ノズル温度は70℃、外部凝固液温度は60℃に設定した。凝固浴内では径50mmの円筒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変え、凝固浴から引き出した。凝固浴内における中空糸膜の浸漬深さは最大で300mm、凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1000mmであった。
エージング条件は、S=0.00497、H=149、H/S=29980であった。
巻き取られた中空糸膜の束を、85℃のRO水に40min浸漬して加熱処理を行った。その後、60℃で10hにわたり熱風乾燥を実施した。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行った。中空糸膜のIDは0.282mm、Δdは0.079mmであり、24本まとめても巻き取り時の合糸状態での全体径は4mmと小さめであった。
結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3と同様の紡糸原液を用い、TEG44.0重量%、NMP36.0%、水20.0重量%の均一混合溶液を芯液とした。2重管構造の紡糸用口金を用い、外側から紡糸原液を、内側から芯液を、垂直下方に向け吐出し、中空糸膜を形成した。30mmの蒸気雰囲気中を通過させた後、凝固浴に浸漬させ、水洗浴、熱水浴を経た後、3点カセによって巻取り速度20m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて12本ごとに合糸して走行させた。また、巻き上げ機のダンサローラーは60mmφを用いた。
ノズル温度は70℃、外部凝固液温度は60℃に設定した。凝固浴内では径50mmの円筒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変え、凝固浴から引き出した。凝固浴内における中空糸膜の浸漬深さは最大で300mm、凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1000mmであった。
エージング条件は、S=0.00812、H=303、H/S=37320であった。
巻き取られた中空糸膜の束を、80℃のRO水に60min浸漬して加熱処理を行った。その後、60℃で10hにわたり熱風乾燥を実施した。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行った。中空糸膜のIDは0.285mm、Δdは0.075mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は3mmと小さいものであった。
結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例3と同様の紡糸原液を用い、TEG42.9重量%、NMP35.1%、水22.0重量%の均一混合溶液を芯液とした。2重管構造の紡糸用口金を用い、外側から紡糸原液を、内側から芯液を、垂直下方に向け吐出し、中空糸膜を形成した。20mmの蒸気雰囲気中を通過させた後、凝固浴に浸漬させ、水洗浴、熱水浴を経た後、3点カセによって巻取り速度18m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて12本ごとに合糸して走行させた。また、巻き上げ機のダンサローラーは60mmφを用いた。
ノズル温度は65℃、外部凝固液温度は55℃に設定した。凝固浴内では径50mmの円筒状ガイドを3個使用して中空糸膜の進行方向を徐々に変え、凝固浴から引き出した。凝固浴内における中空糸膜の浸漬深さは最大で300mm、凝固浴内での中空糸膜の走行距離は1000mmであった。
また、エージング条件としてS=0.00644、H=231、H/S=35870であった。
巻き取られた中空糸膜の束を、90℃のRO水に60min浸漬して加熱処理を行った。その後、60℃で10hにわたり熱風乾燥を実施した。得られた中空糸膜を用いて種々の評価を行った。中空糸膜のIDは0.290mm、Δdは0.148mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は4mmと小さめであった。
結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして中空糸膜を形成し、ドラム型カセによって巻取り速度8.3m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて12本ごとに合糸して走行させた。
巻き取られた中空糸膜の束を乾燥処理し、その後前述の評価を行った。中空糸膜のIDは1.198mm、Δdは0.353mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は10mmと非常に太くなった。その結果、外圧潰れ数は14.8個/kmとなった。これは、巻き取り時の合糸本数が多く太かったために、中空糸膜に捩れが生じたことと、巻取り時に受けるテンションの影響によって局部的なストレスを受けたためと推測する。
結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1と同様にして中空糸膜を形成し、ドラム型カセによって巻取り速度8.3m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて10本ごとに合糸して走行させた。
巻き取られた中空糸膜の束を乾燥処理し、その後前述の評価を行った。中空糸膜のIDは1.205mm、Δdは0.353mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は8mmであった。その結果、外圧潰れ数は6.6個/kmとなった。
結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1と同様にして中空糸膜を形成し、ドラム型カセによって巻取り速度8.3m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて3本ごとに合糸して走行させた。
巻き取られた中空糸膜の束を乾燥処理し、その後前述の評価を行った。中空糸膜のIDは1.275mm、Δdは0.308mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は3mmであった。その結果、外圧潰れ数は62.8個/kmと非常に多くなった。これは、径の太い糸であるにもかかわらず、Δd/IDが0.242と小さいために、外圧に対する耐久度が低くなってしまったことが主な要因であると考えられる。
結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例3と同様にして中空糸膜を形成し、3点カセによって巻取り速度20m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて24本ごとに合糸して走行させた。
巻き取られた中空糸膜の束を乾燥処理し、その後前述の評価を行った。中空糸膜のIDは0.280mm、Δdは0.079mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は4mmであった。その結果、外圧潰れ数は1.7個/kmとなった。これは、中空糸膜の偏肉度が0.63と低いために、膜厚の薄い部分で外圧に対する耐性が弱い状態となっていたためと考えられる。
結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例4と同様にして中空糸膜を形成し、3点カセによって巻取り速度20m/minで巻き取った。この際、中空糸膜は熱水浴途中まで単糸にて走行させ、熱水浴出口にて24本ごとに合糸して走行させた。
巻き取られた中空糸膜の束を乾燥処理し、その後前述の評価を行った。中空糸膜のIDは0.280mm、Δdは0.062mmであり、巻き取り時の合糸状態での全体径は4mmであった。その結果、外圧潰れ数は2.3個/kmとなった。これは、Δd/IDが0.221と小さいことと、中空糸膜の真円度が0.71と低いために外圧をかけたときに偏平に近づきやすくなっていたことの双方の要因によるものと推測する。
結果を表1に示す。
実施例、比較例より明らかなように、本発明により、高分子多孔質中空糸膜が外圧による潰れ発生を抑制できるので、膜の破損を防ぎ、耐久性の高い長期間使用可能な高分子多孔質中空糸膜を提供するできることがわかる。
本発明の高分子多孔質中空糸膜によれば、中空糸膜の外圧に対する耐性を向上させることができ、より品質の高い高分子多孔質中空糸膜を得ることができる。また、外圧によって中空糸膜に潰れが発生すると、膜の破損を招き、大きな問題となることがあるが、本発明の高分子多孔質中空糸膜により潰れの発生を抑制できるので、膜の破損を防止することが可能となる。従って、特に水性流体処理プロセスにおける洗浄など、高圧での外圧負荷を中空糸膜にかける必要がある場合などに好適に利用でき、産業界に大きな貢献が可能である。
外圧により生じた中空糸膜の潰れ部位の拡大写真。 外圧により生じた中空糸膜の潰れ部位と正常部位の断面拡大写真。 本願発明における凝固浴中での中空糸膜の走行状態の一例を示す模式図。 従来技術の凝固浴中での中空糸膜の走行状態を示す模式図。
符号の説明
1:中空糸膜
2:外圧により生じた中空糸膜の潰れ部位
3:外圧により生じた中空糸膜の潰れ部位

Claims (7)

  1. (a)中空糸膜の内径をID(mm)、膜厚をΔd(mm)としたとき、0.25≦Δd/ID≦0.5であり、
    (b)中空糸膜の偏肉度が0.75以上であり、
    (c)中空糸膜の真円度が0.75以上であり、
    (d)中空糸膜の外側より30分間0.4MPaの外圧をかけたとき、中空糸膜に生じる潰れの個数が、中空糸膜1kmあたり1個以下であり、
    (e)中空糸膜の透水性が500L/hr/m2/bar以上である
    ことを特徴とする高分子多孔質中空糸膜。
  2. 中空糸膜が非対称構造を有することを特徴とする請求項1記載の高分子多孔質中空糸膜。
  3. 中空糸膜が主として疎水性高分子からなることを特徴とする請求項1または2記載の高分子多孔質中空糸膜。
  4. 疎水性高分子がポリスルホン系高分子であることを特徴とする請求項3記載の高分子多孔質中空糸膜。
  5. 中空糸膜が外表面に緻密層を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の高分子多孔質中空糸膜。
  6. 中空糸膜の内表面および外表面に緻密層を持ち、内表面から膜内部に向かって当初孔径が次第に増大し、少なくとも一つの極大部を通過後、外表面に向かって孔径が次第に減少することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の高分子多孔質中空糸膜。
  7. 中空糸膜の外径をOD(mm)としたとき、0.4≦ODであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の高分子多孔質中空糸膜。
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