JP2008519798A - 不斉移動水素化のための触媒として適したキラル化合物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、4、5または6個の配位基を含み、その少なくとも1つの対が連結し合って二座配位子を形成する遷移金属Mを含むエナンチオマー濃縮キラル化合物に関する。ここでMは、1つのσ単結合によって、任意で置換および/または任意で縮合された前記二座配位子の(ヘテロ)芳香環の炭素原子に直接結合されると共に、Mは前記二座配位子の第1級または第2級アミノ基の窒素原子に直接結合されており、それにより、前記二座配位子と金属Mとの間にメタラサイクルが形成される。前記金属Mは、元素周期表の第8族および第9族の金属、特に、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムから選択される。該キラル化合物は、好ましくは不斉移動水素化方法における触媒として使用することができる。本発明はさらに、水素供与体と、周期表の第8族、第9族および第10族の金属、特に、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金から選択される遷移金属を含む触媒としての本発明のキラル化合物との存在下におけるプロキラル化合物の不斉移動水素化のための方法に関する。
【選択図】 なし

Description

発明の詳細な説明
本発明は、4、5または6個の配位基を含む、遷移金属化合物Mを含むエナンチオマー濃縮キラル化合物に関する。本発明はさらに、前記化合物の触媒としての使用と、本発明に従う触媒を用いて不斉移動水素化(asymmetric transfer hydrogenation)により様々なエナンチオマー濃縮化合物を調製するための方法とに関する。
不斉移動水素化はエナンチオマー濃縮化合物の調製方法であり、エナンチオマー濃縮配位子(「光学活性」配位子とも定義される)を含む遷移金属触媒の存在は、プロキラル化合物の二重結合が、水素供与性有機化合物(本明細書では水素供与体と定義される)を用いた水素移動により不斉還元されることを保証する。このような不斉移動水素化の全般的な利点は、この反応が温度および圧力に関して比較的穏やかな条件下で起こり得るが、収率が比較的高く、副産物の含量が低いので、製造コストを低くできることである。実際には、この不斉移動水素化は、プロキラルケトンからエナンチオマー濃縮アルコールを調製するために使用されることが多い。
「エナンチオマー濃縮(enantiomerically enriched)化合物」という用語は、化合物の一方のエナンチオマーが他方のエナンチオマーと比較して過剰に存在することを意味する。この過剰分は、以下において、「エナンチオマー過剰率」またはe.e.と称される(例えば、キラルGLCまたはHPLC分析により決定される)。エナンチオマー過剰率e.e.は、エナンチオマーの量の差をエナンチオマーの量の合計で割った値に等しく、商は100をかけて百分率で表すことができる。
欧州特許出願公開第0916637A1号明細書は、不斉移動水素化のための触媒として使用されるこのようなキラル化合物を開示している。その他の類似の触媒は、M.J.パーマー(Palmer)およびM.ウィルズ(Wills)、Tetrahedron:Asymmetry、1999年、10巻、2045−2061頁に記載されている。これらの既知の触媒は周期表のVlII族から選択される遷移金属を含み、これは好ましくはルテニウムであり、エナンチオマー濃縮されたジアミン、アミノアルコールまたはアミノホスフィン配位子を二座配位子として有する。既知のキラル化合物/触媒の欠点は、これらが配位子に基づいており、そのかなり困難および/または複雑な合成のために通常高価なことである。欧州特許出願公開第0916637A1号明細書に開示される触媒を調製するためには多くの合成ステップが必要とされることもあり、あるいは既知の触媒は、エナンチオマー純粋な形態では容易に得られない。さらに、従来技術で記載された配位子および触媒はどれも、比較的短い期間で多種多様に調製することができない。
本発明の目的は、簡単に入手可能な配位子または配位基から容易に構成することができ、従って、許容できる数の合成ステップで多種多様に製造することができるキラル化合物を提供することである。本発明のさらなる目的は、特に不斉移動水素化のために、許容できる活性を示すキラルおよびエナンチオマー濃縮触媒を提供することである。
この目的は、本発明に従って、4、5または6個の配位基を含む遷移金属化合物Mを含むキラル化合物を用いることにより達成され、前記配位基のうちの少なくとも1つの対は連結し合って二座配位子を形成し、Mは、1つのσ単結合によって、任意で置換および/または任意で縮合された前記二座配位子の(ヘテロ)芳香環の炭素原子に直接結合されると共に、Mは前記二座配位子の第1級または第2級アミノ基の窒素原子に直接結合されており、前記金属Mは、元素周期表の第8族および第9族の金属、特に、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムから選択される。特に、二座配位子および金属Mはメタラサイクルを形成している。本発明のキラル化合物のこの二座配位子は、以下において、シクロメタル化されたまたはシクロメタル化可能な(cyclometallatable)配位子と称される。
「配位基」という用語により、好ましくは遷移金属原子またはイオンに電子密度を供与することによって、基が遷移金属原子またはイオンと結合できることが意味される。「配位基または原子」および「配位子」という用語は、本出願を通して交換可能に使用される。「二座配位子」という用語により、遷移金属Mに結合する2つの配位原子または基を含む配位子が意味され、前記2つの配位基は、連結し合って二座配位子を形成する。
特に、本発明に従うキラル化合物中のシクロメタル化可能な配位子は、第1の配位基として、任意で置換および/または任意で縮合された(ヘテロ)芳香環の前記炭素原子と、第2の配位基として、第1級または第2級アミノ基の前記窒素原子とを含有する。このシクロメタル化可能な配位子に加えて、本発明に従うキラル化合物はさらに2、3または4つの配位基を含有してもよく、これらは対になって連結し合って1つまたは複数のさらなる二座配位子、すなわち遷移金属Mに結合する2つの配位原子または基を含む配位子を形成することができ、配位原子はP、N、C、OまたはSから選択され得る。また1つまたは複数のさらなる二座配位子は、本発明を通して定義されるようなシクロメタル化可能な配位子でもよい。好ましくは、本発明のキラル化合物は、1つまでのさらなる二座配位子を含む。また、さらなる配位子は、三座または四座配位子、すなわち3つまたは4つの配位原子または基が金属Mに結合された配位子でもよく、前記3つ/4つの配位基(P、N、C、OまたはSから選択される)は、連結し合って三/四座配位子を形成する。三座配位子は、「ピンサー(Pincer)」配位子、すなわち炭素原子によって金属Mにシグマ結合した芳香環を含有し、金属に結合した2つのさらなる配位基を含有する配位子ではあり得ない。好ましくは、本発明のキラル化合物は三座配位子を含有しない。
本発明のキラル化合物の利点は、配位基、特にシクロメタル化可能な配位子を、限られた数の合成ステップで容易に調製できるので、これらの化合物を容易に入手可能なことである。工業用の使用のためには、配位基/配位子の大きい「ライブラリー」(同じ族に属する多様な配位子、すなわちこれらはいくつかの構造特性を共有する)を利用して、所与のトランスフォーメーションのために適切な触媒を見出す機会を増大することが重要である。また、医薬品中間体の製造において使用するためには、新しい薬剤の製造方法が開発される際に製品化に要する時間はできるだけ短くなければならないので、キラル化合物を比較的短い期間にキログラム規模で調製できることが重要である。
意外なことに、本発明のキラル化合物がエナンチオマー濃縮された形態である場合、化合物は、その比較的高い活性のために、特に不斉移動水素化のための触媒として非常に適している。このことは、今までにこれらの化合物は製造されたことがないので特に予想外のことである。さらに高速高処理量のスクリーニングが可能である。
好ましくは、本発明のキラル化合物は、遷移金属が4、5または6個の配位基を含有するかどうかによって、式1a、1bまたは1c
Figure 2008519798

のいずれか1つによって表すことができ、式中、A、B、D、E、S〜S、R、Xおよびnは以下に定義されるとおりであり、Hは水素である。
式(1a)〜(1c)に従うキラル化合物のシクロメタル化可能な二座配位子は、任意で置換および/または任意で縮合された(ヘテロ)芳香環Aと、アミノ基−NRHとを含み、該アミノ基の窒素は、断片D−Eによって環Aに結合される。前記シクロメタル化可能な二座配位子は金属Mに結合されると、特に環Bによって表されるメタラサイクルを形成している。式(1a)〜(1c)において、Xは非配位アニオンであり、nは0、1または2から選択される整数であり、S、S、SおよびSは配位基であり、そしてMは、周期表の第8族および第9族の金属、特に鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムから選択することができる。
環Aは、例えば、任意で置換されたベンゼン、チオフェン、フラン、ピロールなどの任意で置換および/または縮合された(ヘテロ)芳香環である。縮合(ヘテロ)芳香環Aの適切な例は、任意で置換されたナフタレン、テトラリン、フェナントレン、アントラセン、フルオレン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、インドール、シクロヘキセノピロールであり得る。環Aは、例えば、任意で置換されたフェロセン、コバルトセンまたはルテノセンなどの芳香族サンドイッチ構造を有することもある。環Aとして、任意で置換されたベンゼンまたは任意で置換されたナフタレンの使用が好ましい。金属Mは、1つのシグマ単結合によって環Aの炭素原子に結合され得る(これが化学的に実行可能なところで)。
環Bは、任意で置換および/または任意で縮合された(ヘテロ)脂肪族環であり得る。環Bは、さらなる(ヘテロ)芳香族または(ヘテロ)脂肪族環に縮合されてもよい(このさらなる環が金属Mを含有しない限りは)。第3の環が金属Mを含有しない限り、好ましくはどの金属も含有しない限りは、この第3の環は、式1a〜1cの環AおよびBを一緒に縮合してもよい。
断片D−E−NRHは、好ましくは、容易に環Bを形成できるような形で環Aに結合される。好ましくは、環Bは、選択される反応条件下で実質的に安定であり、より好ましくは、環Bは、触媒反応、好ましくは不斉移動水素化反応の反応時間の間中、実質的に安定である。断片D−E−NRHは、例えば、金属に結合する環Aの炭素原子に関してオルト位、あるいは環Aが縮合環であればイプソ位に位置し得る。窒素原子が金属に結合できる限りは環Aが三環式である場合には第3の最も遠い環に位置することもある。他の可能性は当業者に知られている。
DおよびEはそれぞれ、結合、任意で置換されたメチレン基CR、任意で置換されたエチレン基CRCR、任意で置換されたビニル基CR=CR(前記CR=CR−基は任意で芳香環の一部である)、またはヘテロ原子からなる群から独立して選択することができ、後者は、好ましくは、酸素または硫黄、SOまたはSOからなる群から選択される。Eは、好ましくは、炭素原子または基であり、好ましくは、Eはヘテロ原子ではない。Dが結合である場合、Eは、1つのシグマ単結合によって環Aに直接結合される。Eが結合である場合、Dは、シグマ単結合によってアミノ基の窒素原子に直接結合される。そして、DおよびEが両方とも結合を表す場合には、環Aは、シグマ単結合によって窒素原子に直接結合される。後者の場合、窒素原子が環Aの炭素原子に関してオルト位に位置すれば、環Bは4員環である。本発明の好ましい実施形態によると、DおよびEは両方が同時に結合ではない。
DまたはEのうちの1つが置換されたメチレンCRである場合、2つの置換基、RおよびRは異なり、置換メチレン基キラルを作ることができる。RおよびRが異なる場合、およびRおよびRが異なる場合にも同じことが言える。好ましくは、DまたはEのうちの少なくとも1つはキラルであるか、あるいはキラル置換基を含有する。DおよびEが両方ともメチレン、または両方ともエチレン、または両方ともビニル基である場合、これらの置換基R〜Rは、互いに異なり得る。
、R、R、R、R、R、R、RおよびRはそれぞれ、水素、任意で置換された炭素置換基、任意で置換された酸素置換基、または任意で置換された窒素置換基からなる群から独立して選択され得る。任意で置換された炭素置換基の適切な例は、例えば、1〜20個の炭素原子を有する任意で置換されたアルキル基、1〜25個の炭素原子を有する任意で置換された(ヘテロ)芳香族基(縮合されてもよい)、ニトリル、カルバモイルまたはN−メチル−カルバモイルなどのカルバモイル基などであり得る。任意で置換されたアルキル基の適切な例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、tert−ブチル、(S)−および(R)−イソブチル、2−メトキシエチル、2−エトキシ−エチル、ベンジル、シクロヘキシル、(R)−および(S)−1−フェニル−エチル、2−フェニルエチル、(R)−および(S)−1−ナフタ−1−イル−エチル、(R)−および(S)−1−ナフタ−2−イル−エチルなどである。適切な芳香族基は、フェニル、p−クロロフェニル、メタ−メトキシ−フェニル、オルト−トルイル、パラ−トリフルオロメチルフェニル、ナフチル、6−メトキシ−ナフタ−2−イル、2−または3−チオフェニル、1−または2−インデニル、1−または2−フリルなどである。任意で置換された酸素置換基の適切な例は、アセチルまたはベンゾイルなどのアルカノイル、例えばメトキシ、エトキシ、ベンジルオキシなどのアルコキシ基、例えばエトキシカルボニルなどのエステル基であり得る。任意で置換された窒素置換基の適切な例は、例えば、アミノ基、ベンジルアミノなどのアルキルアミノ、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ、例えばアセトアミドなどのアミド基、ニトロ基などであり得る。さらに、Rはボイド(void)でもよく、この場合、シクロメタル化可能な配位子はジアニオンである。
DまたはEがメチレン基CRである場合、2つの置換基RおよびRは一緒に結合して環の形成をもたらすことができ、該環は、環Bに対してスピロの関係を有する。RはR〜Rのうちの1つと一緒に結合され、環を形成することができる。置換基R〜Rはそれぞれ個々に、他の置換基R〜Rのうちの1つと結合して、環を形成することができる。この環は、飽和、不飽和または芳香族でよい。
配位基S、S、SおよびSはそれぞれ独立して、アニオンまたは中性基であるか、あるいは水素化物、ハロゲン化物またはボイドであり得るが、ただし、S、S、SまたはSのうちの1つまたは2つだけがアニオン、水素化物、ハロゲン化物またはボイドであり得ることを条件とする。適切な配位基S、S、SおよびSは、例えば、ハロゲン化物、特に塩化物、臭化物、フッ化物またはヨウ化物と、リン含有配位子などの中性配位子、例えばトリフェニルホスフィンなどのホスフィン配位子、またはトリ−o−トリルホスフィンなどのその置換された変化形と、トリ−フェニルホスファイトなどのホスファイト、またはトリ−o−トリルホスファイトなどのその置換された変化形と、ジフェニルフェニルホスホナイトなどのホスホナイト、またはその置換された変化形と、フェニルジフェニルホスフィナイトなどのホスフィナイト、またはエナンチオマー濃縮された[2−N,N−ジメチルアミノ]ジナフト(dinaptho)[2,1−d:1’,2’−f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどのホスホルアミダイトと、任意で置換されたピリジン、トリアゾールまたはビピリジンなどの窒素含有配位子と、COと、アセトニトリルまたはベンゾニトリルなどのニトリルと、dmso、エーテルまたはTHFなどの溶媒と、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、1−ヒドロキシ、2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエニル、p−トルエンスルホネート、アセテートまたはトリフルオロアセテートなどのアニオン配位子と、エチレン、無水マレイン酸、またはベンゾキノンなどの任意で置換されたオレフィンと、ノルボルナジエンまたはシクロオクタジエンなどの任意で置換されたジエンと、ベンゼン、o−シメン、p−シメン、m−シメン、クメンまたはナフタレン、またはボイドなどの通常イータ−6型で結合され得る芳香族配位子とから独立して選択され得る。SおよびSの一対が二座配位子を形成する場合、2つの配位原子は、異なっていても同じでもよい。S、S、SおよびSのうちの1つまたは複数は、好ましくはエナンチオマー濃縮されたキラルであり得る。好ましくは、S、S、SまたはSのうちの少なくとも1つは芳香族化合物であり、より好ましくは、イータ−6型で金属Mに結合された芳香族化合物であり、さらにより好ましくはベンゼン、シクロペンタジエニル(Cp)、またはペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp)である。さらに好ましくは、S、S、SまたはSのうちの少なくとも1つは溶媒分子であり、好ましくは、例えばアセトニトリル(CHCN)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒分子である。
非配位アニオンXの適切な例は、BF、PF、ClO、スルホネート、トリフレート、BARFなどが可能であり、より好ましくは、XはBFまたはPFである。
本発明の好ましい実施形態によると、特に、好ましくは不斉移動水素化反応を触媒するために触媒として使用される場合、キラル化合物はエナンチオマー濃縮された形態にある。
好ましくは、本発明の触媒は、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、特に好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%のe.e.を有する。約98%よりも高いe.e.の触媒を調製することさえ可能である。
好ましくは、(i)本発明の触媒の前記シクロメタル化可能な配位子の原子の少なくとも1つおよび/または置換基の少なくとも1つはキラルであり、エナンチオマー濃縮されているか、あるいは(ii)本発明の触媒の配位基S、S、SまたはSのうちの少なくとも1つがキラルであり、エナンチオマー濃縮されているか、あるいは(iii)金属Mがキラルであり、エナンチオマー濃縮されており、状況(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1つが適用される。選択肢(i)、(ii)および(iii)の2つ以上の組み合わせが同時に適用されてもよい。
本発明の実施形態(i)において、好ましくは、断片D−E−NRH−はキラルであり、エナンチオマー濃縮されている。これは、D、EまたはNRH−のうちの少なくとも1つがキラルであるか、あるいはキラル置換基を含有することを意味する。Rが炭素、酸素、リンまたは窒素置換基である場合、Rはキラルであり得る。より好ましくは、DまたはEの少なくとも1つはキラルであるか、あるいはキラル置換基を含有する。
本発明の実施形態(ii)によると、式(1a)〜(1c)の配位基S、S、SまたはSのうちの少なくとも1つはキラルであり、エナンチオマー濃縮されている。
本発明はさらに、式1a、1bまたは1cのいずれか1つに従うキラル化合物の調製方法、特にスキーム1
Figure 2008519798

で示される方法に関する。
スキーム1の式1中の点線は、本発明の化合物1a、1bおよび1cのそれぞれを表すために使用される。
前記方法は、好ましくは溶媒と、所望される場合には添加剤との存在下で、周期表の第8族および第9族から選択される遷移金属、特に鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムを含む金属前駆体と、式2に従うシクロメタル化可能な二座配位子とを反応させることを含む。
比較され得る合成方法は、第3級アミン配位基を有するルテニウム金属を含む触媒のために、S.フェルナンデス(Fernandez)、M.プフェッファー(Pfeffer)、V.リトレング(Ritleng)およびC.ジルリン(Sirlin)、Organometallics、1999年、18巻、2390頁(参照によって本明細書中に援用される)に記載されている。
使用される金属前駆体および/または溶媒および/または添加剤のいずれかはS、S、SおよびS基のうちの1つ、複数、または4つ全てを含み得る。好ましい実施形態によると、S〜Sのうちの少なくとも1つは、好ましくは金属前駆体によって導入される金属にη6−型で結合した芳香族基である。
式2のシクロメタル化可能な配位子の例は以下の図1に与えられる。1つの配置だけが示されているが、反対の配置を有するシクロメタル化可能な配位子も使用できることは明らかであろう。第1級および第2級アミンは両方とも、式2のシクロメタル化可能な二座配位子の役割を果たすことができる。さらに、例えば、様々なアルキルハロゲン化物などによるアルキル化によって、様々なアルデヒドまたはケトンによる還元的アミノ化によって、あるいは当業者に知られている他の方法によって、式2に従う第1級アミンを式2に従う多様な第2級アミンに転化することが可能であろう。このようにして、限られた数のキラル第1級アミンを、数多くの第2級アミン(「ライブラリー」)に転化することができ、これは、所与のトランスフォーメーションのために適切な触媒を見出す機会を増大する。アルデヒドまたはケトンによる還元的アミノ化は、従来、好まれている。多くの還元的アミノ化方法があり、化学文献に十分に記載されている。
直接的な還元的アミノ化をもたらすための1つの可能な方法は、NaCNBHの存在下で第1級アミンとアルデヒドとを反応させることによる。還元的アミノ化をもたらすもう1つの可能な方法は、例えばTiClまたはTi(Oi−Pr)などのチタン試薬と、例えばNaBHまたはNaCNBHなどの還元剤との存在下で、第1級アミンとケトンとを反応させることによる。さらなる可能な方法は、第1級アミンとアルデヒドまたはケトンとを反応させることによってイミンを形成し、次のステップで、不均一水素化(触媒としてPd/CまたはRa−Ni)を用いるか、あるいはNaBHまたはNaCNBHを用いてイミンを式2の第2級アミンに還元することである。このような還元的アミノ化反応のために多様なアルデヒドまたはケトンを使用することができ、当業者には知られている。アルデヒドおよびケトンは脂肪族または芳香族のいずれでもよく、またこれらはキラルでもよい。
Figure 2008519798
Figure 2008519798
本発明のキラル化合物/触媒は、式2のシクロメタル化可能な配位子と適切な金属前駆体とを反応させることによって調製することができる。好ましくは、一般式3
(3)
の金属前駆体が使用され、式中、
p、q、rおよびsはそれぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、...を表し、
Mは、周期表の第8族および第9族からの金属、特に、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムからなる群から選択される遷移金属であり、最も好ましくはルテニウムである。
式3に従う金属前駆体は、1、2またはそれより多い配位基Gおよび/またはGを含有することができ、GまたはGはそれぞれ独立して、上記でS〜Sについて記載したものと同一でもよい。配位基GおよびGのいくつかまたは全ては、式1のキラル化合物の形成後に金属上に留まり、この場合これらはS〜Sと同一である。しかしながら、GおよびG基は反応中に錯体から解離してもよく、この場合、式1のキラル化合物中に存在しないであろう。また式1の配位基S〜Sは、その形成中に使用される溶媒、またはその形成中に添加される添加剤からも生じ得る。式1のキラル化合物は、前記配位基S〜Sのいずれか1つを別のS〜S−基によって置換するさらなるステップによって、形成することもできる。これは、特定の配位基S〜Sがキラルである場合には特に好ましい。
Yは非配位アニオンであり、Xについて上記で定義したものと同じでもよいし、あるいはさらにYは、アセテート、トリフルオロアセテートまたはベンゾアートなどのカルボキシラート、ハロゲンなどから選択されてもよい。
式3に従う適切な遷移金属前駆体の例は、RuCl・nHO、[RuCl(η−ベンゼン)]、[RuCl(η−シメン)]、[RuCl(η−メシチレン)]、[RuCl(η−ヘキサメチルベンゼン)]、[RuCl(η−1,2,3,4−テトラメチルベンゼン)]、[RuBr(η−ベンゼン)]、[RuI(η−ベンゼン)]、トランス−[RuCl(DMSO)]、RuCl(PPh、Ru(COD)(COT)、IrCl、[Ir(COD)Cl]、[Ir(CO)Cl]、[IrCl(CO)、[Ir(Cp)Cl、Ir(Acac)(COD)、[Ir(NBD)Cl]、[Ir(COD)(C)]BF 、[(CFC(O)CHC(O)CF)Ir(COE)]、[Ir(CHCN)BF 、[Rh(C10)Cl](ここで、C10=ヘキサ−1,5−ジエンである)、[Rh(COD)Cl]、[Rh(Cp)(CO)]、[Rh(ノルボルナジエン)]BF、[Rh(Cp)Cl(ここで、Cpは、ペンタメチルシクロペンタジエニル)、CoCl、Co(acac)、Co(acac)、Co(CO)、CpCo(CO)、Fe(acac)、FeCl・nHO、FeCl・nHO、[CFe(CO)、Fe(CO)12、Os(CO)12、OsCl・nHOなどである。
好ましくは、式1a〜1cのキラル化合物/触媒を調製するための方法は、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、THF、エーテル、エタノール、メタノール、トルエン、EtOAcなどの適切な溶媒(アセトニトリルが特に好ましい)中で、式3の金属前駆体と、式2のシクロメタル化可能な配位子とを反応させることを含む。いくつかの場合には、溶媒は本発明のキラル化合物の一部になってもよい。これは例えば、アセトニトリルは非常に適切な配位基Sであることが分かっているので、アセトニトリルが使用される場合であり得る。
式2のシクロメタル化可能な二座配位子に対する金属Mのモル比は、好ましくは、2:1と1:10の間、さらに好ましくは1:1と1:6の間であるであるように選択される。
この方法は、0〜120℃の間の温度、好ましくは20〜100℃の間の温度、より好ましくは20〜80℃の間の温度、さらにより好ましくは室温で達成され得る。
該方法は、好ましくは、例えば窒素などの不活性雰囲気下で実施される。
いくつかの場合には、例えばアニオン源として、あるいはスキーム1の方法の反応平衡に影響を与えるために、例えば酢酸または塩化水素などの酸、例えばKOH、NaOHまたはEtNなどの塩基、例えばBuNBrまたはHXの塩(ここで、Xは上記と同じ定義を有する)、例えばNaPFまたはNaBFなどの相間移動触媒のような添加剤を添加することが好ましいこともある。
式1のキラル化合物の例は、図2に示される。
Figure 2008519798
式1のキラル化合物は、さらに、水または高極性溶媒中に容易に可溶性であるように製造することができる。これは、キラル化合物が触媒として使用される場合に特に好ましい。式1に従う本発明のキラル化合物は、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩およびリン酸塩などの水溶性基をシクロメタル化可能な二座配位子に導入することによって、水溶性にすることができる。もう1つの可能性は、シクロメタル化可能な配位子中にトリアルキルアンモニウム塩またはテトラアルキルアンモニウム塩を導入することである。シクロメタル化可能な配位中に導入することができる置換基の第3の群は、オリゴ−エチレングリコールエーテル、アルコール、スルホキシドなどの分子中に様々に存在し得る中性極性基である。式1のキラル化合物を水溶性にするもう1つの方法は、金属のために二官能性の対イオン、例えばビスカルボン酸、ビスホスファートおよびビススルホネートを使用することである。二官能性の対イオンが使用される場合、2つの酸基のうちの一方は金属Mのための対イオンとしての役割を果たし、他方の酸基は、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムの塩として存在し、水溶性を付与することができる。また、S、S、SまたはSのうちの1つまたは複数において水溶性基を導入することも可能である。
式1に従う水溶性キラル化合物の利点は、この化合物が触媒反応、特に移動水素化反応において触媒として使用されている場合に、この反応を2相系で実行できることである。移動水素化の場合、2相系は、例えば、水/有機溶媒などの(より極性の)水相および(極性のより低いまたは無極性の)有機相を含むことができ、触媒および水素供与体は水相中にあり、出発材料および生成物は有機相中にある。結果として、触媒は非常に簡単に生成物から分離され得る。より極性の相として、トリエチルアミンおよびギ酸の混合物を選択することもできる。一例は、2相系におけるケトンの還元であり、より極性の相はトリエチルアミンおよびギ酸の共沸性混合物を含み、極性のより低い相は、任意で水混和性でない溶媒の存在下で、ケトンおよびそれから形成されるアルコールを含む。反応の最後に、生成物は相分離によって簡単に分離することができ、より極性の相は、余分なギ酸を添加した後、新しいバッチのケトンの還元において再使用される。より極性の相のもう1つの例は、イオン性液体である。イオン性液体は、室温で液体であるという事実によって特徴付けられる。イオン性液体の例は、1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム塩またはN−アルキルピリジニウム塩などのイミダゾールの塩である。
さらに本発明は、例えば不斉移動水素化方法、不斉ヒドロホルミル化方法、不斉水素化方法、不斉マイケル付加、不斉アルドール縮合反応、または不斉酸化反応における触媒としての、本発明に従う、好ましくは式1に従うキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物の使用に関し、遷移金属Mは、元素周期表の第8族、第9族および第10族から、特に鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金から選択される。好ましくは、化合物は、不斉移動水素化方法における触媒として使用される。
特に、式1の触媒は、比較的高い反応速度を与えるので、プロキラル基質/化合物の移動水素化反応において有利に使用することができる。これは、還元すべき基質に関して比較的少量の触媒の使用を可能にする。
意外なことに、容易に入手できる配位子に基づく本発明の触媒はかなり強力であり、移動水素化反応において使用されると、高収率および高エナンチオ選択性が得られることが分かった。
金属Mとしてルテニウムに基づく触媒は例えば不斉移動水素化において高い活性を有し、そして比較的高いe.e.の生成物をもたらすので、これらの触媒は特に好ましい。金属Mとして鉄、ニッケルおよびコバルトに基づく触媒は、これらが比較的安価であるという利点を有し、そのうちの鉄は環境に優しいというさらなる利点を有する。ロジウムに基づく触媒は、例えば、不斉移動水素化方法でエノンを転化する場合に非常に適切であり得る。パラジウム、ルテニウム、ロジウムおよびニッケルに基づく触媒は、これらの様々な金属前駆体が市販されているので非常に適切である。
好ましくは、1時間あたりに使用される触媒1モルあたり得られる生成物のモル数として定義することができるターンオーバー頻度(TOF)は、本発明の触媒を用いる場合には、少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約30、さらにより好ましくは少なくとも約50、特に好ましくは少なくとも約100、そして最も好ましくは少なくとも約200である。
触媒反応、好ましくはプロキラル化合物の不斉(移動)水素化において本発明の触媒を使用すると、約20%以上、好ましくは約40%以上、より好ましくは約70%以上、最も好ましくは約85%以上の収率を得ることができ、そして少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、特に好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%のe.e.を有するエナンチオマー濃縮化合物を得ることができる。約98%よりも高いe.e.の生成物を得ることすら可能である。
いくつかの場合には、酸、塩基、もしくは例えば銀塩または還元剤(水素化ホウ素ナトリウムなど)などの添加剤の添加によって、使用する前に触媒を活性化するのが望ましいこともある。
好ましい実施形態によると、触媒は、触媒反応の間、好ましくは不斉移動水素化反応の間にその場で調製することができる。好ましくは、式1の触媒は、1つの特定の溶媒または溶媒混合物中で調製され、溶媒を別の溶媒、例えば水素供与性有機化合物でもある溶媒(例えば、イソプロパノールなど)に変えた後、還元されることを必要とする基質とさらに反応される。これは、触媒を調製後に単離する必要がないという利点を有し、従って、高処理量スクリーニング方法において非常に適している。高処理量スクリーニングの原理は当業者には知られており、例えば、C.ジェンナーリ(Gennari)およびU.ピアルリ(Piarulli)、Chem.Rev.2003年、103巻、3071−3100頁およびJ.G.ド・フリース(de Vries)およびA.H.M.ド・フリース(de Vries)、Eur.J.Org.Chem.2003年、799−713頁に開示されており、これらは参照によって本明細書中に援用される。
式2の多数の第1級および/または第2級アミン化合物は、エナンチオマー濃縮された形態、好ましくはエナンチオピュアな形態で市販されているか、あるいは市販のエナンチオマー濃縮、好ましくはエナンチオピュアな第1級アミン化合物からさらなる官能基化によって容易に調製することができるので、式1に従うキラルおよびエナンチオマー濃縮触媒の大きいライブラリーをロボットにおいて並行して調製して、所望される触媒反応、好ましくは所望される移動水素化反応における活性および選択性について即座に試験することができる。
従って、本発明はさらに、所与の触媒トランスフォーメーション、好ましくは不斉移動水素化反応のための触媒として適したキラル化合物を見出すためのスクリーニング方法に関し、前記方法は、式1に従うキラル化合物のアレイの形成において、式3に従う遷移金属前駆体と、式2に従うシクロメタル化可能な配位子のライブラリーと、任意で少なくとも1つの添加剤および任意で少なくとも1つの溶媒とを接触させることと、前記アレイの前記キラル化合物と、少なくとも1つの基質および少なくとも1つの試薬とを接触させて、所与の触媒トランスフォーメーション、好ましくは不斉移動水素化方法のための触媒活性を有するキラル化合物を同定することとを含む。特に、上記のスクリーニング方法におけるキラル化合物のアレイの調製は、少なくとも1つの反応を用いてスキーム1に従う。
不斉移動水素化反応に適した触媒を見出すためのこのようなスクリーニング方法において、約8よりも多い、好ましくは約10よりも多い、より好ましくは約20よりも多い、さらにより好ましくは約30よりも多い式1に従う様々な触媒のアレイは、ジンサー・リッシー(Zinnser Lissy)などの自動装置で調製することができる。好ましくは、本発明の触媒の調製中に任意で存在する溶媒の除去後に、プロキラル基質と、水素供与体と、任意で溶媒とが添加され、その後溶液は、1時間と24時間の間の特定の時間、23℃と60℃の間の温度で攪拌され得る。従って、このスクリーニング方法は、所与のプロキラル基質の還元のための多種多様な触媒(以下、「触媒のライブラリー」と称する)の非常に迅速な評価を可能にする。式3の触媒前駆体および式2のシクロメタル化可能な配位子と、種々の添加剤、溶媒、水素供与体との、種々の条件における数百〜数千の種々の組み合わせのスクリーニングを可能にするこの方法が、所望のトランスフォーメーションのための高エナンチオ選択性の触媒を見出す機会を非常に増大し得ることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は、精密化学よび薬学の分野において非常に重要である。
本発明はさらに、水素供与体と、周期表の第8族、第9族および第10族から選択、特に鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、または白金から選択される遷移金属Mを含む本発明のキラルおよびエナンチオマー濃縮触媒との存在下におけるプロキラル化合物(または基質)の不斉移動水素化のための方法に関し、ここで、エナンチオマー濃縮化合物(または生成物)は、対応するプロキラル化合物(基質)から形成される。
Mがニッケル、パラジウム、または白金から選択される触媒は、例えば、Pd(OAc)、[Pd(NO]、[PdCl(CHCN)]、Pd(dba)、(COD)PtBr、PtCl、PtCl(CHCN)、NiCl、NiBr、Ni(NO・nHOなどの金属前駆体を用いて上記のようにして都合よく調製することができる。
プロキラル化合物は、ケトン、イミン、オキシム誘導体、ヒドラゾン誘導体、置換エノンおよびオレフィン性不飽和化合物からなる群から選択することができる。該方法は、例えば、プロキラルケトンからのエナンチオマー濃縮アルコールの調製、プロキラルエノンからのケトンまたはアリルアルコールの調製、プロキラルヒドラゾンからのヒドラジンの調製、および対応するプロキラルオキシム誘導体またはイミンからのアミンの調製において非常に適切に使用することができる。触媒がキラル金属Mを含有する場合、触媒は金属においてエナンチオピュアである必要はない。
鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、または白金から選択される遷移金属Mを含む本発明の触媒は、カルボニル化合物(例えば、ケトン、エノンまたはアルデヒドなど)、もしくはイミン、オキシムまたはヒドラゾンの速度論的分割のためにさらに有利に使用することができ、これらは分子中の他の部分に既に少なくとも1つのキラル中心を含有し、両方のエナンチオマーの混合物として、好ましくはラセミ形態(すなわち、両方のエナンチオマーの50/50混合物)で存在する。次に、C=O、またはC=N、またはC=C二重結合の還元(不斉移動水素化方法による)は、好ましくは、カルボニル化合物、イミン、オキシムまたはヒドラゾンの2つのエナンチオマー形態のうちの1つだけにおいて生じる。ケトン、エノン、アルデヒド、イミン、オキシムまたはヒドラゾンは、一方のエナンチオマー形態では実質的に回収され得るが、他方のエナンチオマーは、対応するエナンチオマー濃縮アルコール、アミンまたはヒドラジンに転化されている。
本発明はさらに、2つ以上のキラルおよびエナンチオマー濃縮中心を有するエナンチオマー濃縮化合物の調製方法に関し、該方法において、ケトン、エノン、イミン、オキシムまたはヒドラゾン化合物から選択されるキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物は、金属Mが鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、または白金から選択される本発明に従う触媒の存在下で還元(不斉移動水素化方法による)される。この方法(以下においてジアステレオ選択的方法と称される)では、ケトン、エノン、イミン、オキシムまたはヒドラゾンは、現存するキラルおよびエナンチオマー濃縮中心と新しいキラルおよびエナンチオマー濃縮中心との間に実質的にただ1つの相対配置を有する化合物に完全に還元される。
プロキラル化合物として、例えば、一般式(4):
Figure 2008519798

(式中、R10およびR11は異なり、それぞれ独立して、1〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表すか、あるいはこれらが結合するカルボニルC原子と共に一緒に環Aを形成し、R10およびR11は1つまたは複数のヘテロ原子または官能基を含有することも可能である。プロキラルケトンの適切な例としては、アセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、3−キヌクリジノン、2−メトキシシクロヘキサノン、1−フェニル−2−ブタノン、ベンジル−イソプロピルケトン、ベンジルアセトン、シクロヘキシル−メチルケトン、tert−ブチル−メチルケトン、tert−ブチル−フェニルケトン、イソプロピル−フェニルケトン、エチル−(n−プロピル)ケトン、o、mまたはp−メトキシアセトフェノン、o、mまたはp−(フルオロ−、クロロ−、ブロモ−またはヨード−)アセトフェノン、o、mまたはp−シアノ−アセトフェノン、o、mまたはp−ニトロ−アセトフェノン、2−アセチルフルオレン、アセチルフェロセン、2−アセチルチオフェン、3−アセチルチオフェン、2−アセチルピロール、3−アセチルピロール、2−アセチルフラン、3−アセチルフラン、1−インダノン、2−ヒドロキシ−1−インダノン、1−テトラロン、p−メトキシフェニル−p’−シアノフェニルベンゾフェノン、シクロプロピル−(4−メトキシフェニル)ケトン、2−アセチルピリジン、3−アセチルピリジン、4−アセチルピリジン、アセチルピラジンが挙げられる)のプロキラルケトンと、
一般式(5):
Figure 2008519798

(式中、R12、R13、R14は、例えばそれぞれ独立して、1〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表すか、あるいはこれらが結合する原子と一緒に環を形成し、R12、R13およびR14は1つまたは複数のヘテロ原子および官能基を含有することも可能であり、R14はさらに、アルキルスルホニルまたはジアリールホスフィニル(diarylphoshinyl)基などの分離される基でもよい。適切なプロキラルイミンは、上記のケトンと、アルキルアミン、アラルキルアミンまたはアリールアミンまたはアミノ酸誘導体、例えばアミノ酸アミド、アミノ酸エステル、ペプチドまたはポリペプチドとから調製され得る。適切なアルキルアミン、アラルキルアミンおよびアリールアミンの例は、ベンジルアミン、例えばベンジルアミンまたはo−、m−またはp−置換ベンジルアミン、α−アルキルベンジルアミン、ナフチルアミン、例えばナフチルアミン、1−、2−、3−、4−、6−、7−、8−または9−置換ナフチルアミンおよび1−(1−ナフチル)アルキルアミンまたは1−(2−ナフチル(phthyl))アルキルアミンである。適切なイミンは、例えば、N−(2−エチル−6−メチルフェニル)−1−メトキシ−アセトンイミン、5,6−ジフルオロ−2−メチル−1,4−ベンゾオキサジン、2−シアノ−1−ピロリン、2−エチルオキシカルボニル(ethyoxycarbonyl)−1−ピロリン、2−フェニル−1−ピロリン、2−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンおよび3,4−ジヒドロ−6,7−ジメトキシ−1−メチル−イソキノリンである)のプロキラルイミンと、
一般式(6):
Figure 2008519798

(式中、Zはヘテロ原子を含有し、例えばNH、NRまたはOを表し、Rは1〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表す。R15およびR16は、それぞれ独立して、1〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、アルケニルまたはアルキニル基を表すか、あるいは互いにまたはR17およびそれらが結合する原子と共に環を形成し、該基は1つまたは複数のヘテロ原子および/または官能基を含有することも可能である。オキシムまたはオキシムエーテルの場合には、R17はHもしくは1〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アラルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、ホスホニルまたはスルホニル基であり、該基は1つまたは複数のヘテロ原子および/または官能基を含有してもよく、そしてヒドラゾンの場合には、H、0〜20個のC原子を有するアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル、ホスホニルまたはスルホニル基であり、該基は、1つまたは複数のヘテロ原子および/または官能基を含有してもよい)のオキシムまたはヒドラゾンと、
一般式(7):
Figure 2008519798

(式中、R18〜R21はそれぞれ独立して、水素、任意で置換されたアルキルまたはアリール基、およびアセトアミド基、チオエーテルなどを表す。使用される金属によって、これらのエノンのオレフィン性官能基またはケトンのいずれかを還元することができ、例えばロジウムはオレフィン水素化を好み、ルテニウムはケトン水素化を好む。オレフィン性官能基が還元される場合、R20が水素であればR18およびR19は同じではあり得ない。ケトンが水素化される場合、R21は水素ではない)の置換エノンと、
を使用することができる。プロキラルエノンの適切な例は、
Figure 2008519798

である。
好ましくは、プロキラル化合物の濃度は、0.01Mと1.0Mの間であり、より好ましくは0.05Mと0.7Mの間、最も好ましくは、溶媒および/または水素供与体1リットルあたり0.1モルと0.6モルの間である。これらの条件下で、特に、遷移金属としてルテニウムが使用される場合、本発明に従う触媒は安定であることが分かった。
本発明に従う触媒不斉移動水素化のための方法は、1つまたは複数の水素供与体(本発明の枠組みの中で、例えば熱的または触媒的に、水素を何らかの形で基質に移動することができる化合物を意味すると理解される)の存在下で実行される。使用可能である適切な水素供与体の例は、脂肪族または芳香族アルコール、特に1〜10個の炭素原子を有する第2級アルコール、例えば2−プロパノール(またはイソプロパノール)、2−ブタノールおよびシクロヘキサノールと、酸、例えばギ酸、ギ酸塩、ハイポホスファイト、HPO、HPOおよびこれらの塩と、部分不飽和炭化水素、部分不飽和複素環式化合物、ヒドロキノンまたは還元糖である。好ましくは、2−プロパノール、ギ酸またはギ酸塩が使用され、そのうち、塩の形態のギ酸が使用されるのがより好ましい。トリエチルアミンEtNおよびギ酸の混合物が使用されてもよく、この場合、EtNに対して過剰のギ酸を使用することは好ましくない。水素供与体に対する基質のモル比は、好ましくは1:1と1:200の間である。
不斉移動水素化において、好ましくは、遷移金属化合物中に存在する金属の基質に対するモル比は、1:10と1:1,000,000の間、特に1:100と1:100,000の間で使用される。
不斉移動水素化が実行される温度は、一般に、一方では反応速度と、他方ではラセミ化の度合いとの間で妥協され、そして好ましくは、−20℃と100℃の間、特に0℃と60℃の間である。不斉移動水素化は、好ましくは不活性雰囲気中、例えば窒素中で実行される。
溶媒としては、原則的に、反応混合物中で不活性である溶媒はどれも使用することができる。好ましい実施形態では、水素供与体としての役割も果たす溶媒、例えば2−プロパノールが使用される。不斉移動水素化が、2相系が形成された水中で実行される場合、好ましくは、本発明に従う水溶性触媒が使用される。不斉移動水素化のための触媒は、所望される場合、水素による水素化によって、あるいは塩基、例えばアルカリ(土類)化合物、例えば、アルカリ(土類)水酸化物、アルカリ(土類)カルボキシラートまたは1〜20個の炭素原子を有するアルカリ(土類)アルコキシドによる処理によって活性化することができ、アルカリ金属としては、例えばLi、NaまたはKが使用され、アルカリ(土類)金属としては、例えばMgまたはCaである。適切な塩基の例は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウム−t−ブトキシドおよびマグネシウムメトキシドである。しかしながら一般に、このような処理は必要ないであろう。
本発明は、実施例を参照するが、それに限定されることなく説明されるであろう。
実施例1〜4:式2に従うシクロメタル化可能な二座配位子の調製方法
実施例1:N−イソプロピルフェネチルアミン(化合物2.8であるが、反対の配置を有する)の調製
フラスコ内で、アセトン中の(R)−1−フェネチルアミンの溶液(16mmol/L)を加熱して還流させる。イミンの形成をGCにより追跡する。反応が完了したら、少量のNaSOを添加した後、溶媒を真空除去する。ろ過した後、イミンをエタノール中に希釈(40mmol/L)し、氷浴で0℃まで冷却する。次に、3当量のNaBHを溶液にゆっくり添加する。添加が終了したら、混合物を室温までゆっくり温め、一晩攪拌する。アミンの形成をGCにより追跡する。反応が完了したら、HCl溶液1Mを添加して、pH=1を得る。次に、いくらかのトルエンを溶液に添加し(100mL/8mmolアミン)、溶液を20分間攪拌する。層が分離したら、NaOH溶液1Mによって溶液をpH=9まで塩基性化する。次に、溶液をトルエンで3回抽出し、有機層をNaSOで乾燥する。溶媒を真空除去する。生成物をシリカにおけるろ過によって精製する。収率=95%。生成物は黄色のオイルである。
NMR:CDCl、300MHz:1,17(d,6H)、1,42(d,3H)、2,95(m,1H)、4,32(q,1H)。
実施例2:N−(2,6−ジメトキシベンジル)1−フェネチルアミンの調製
フラスコ内で、エタノール中の2,6−ジメトキシベンズアルデヒド(1当量)およびR−フェネチルアミン(1当量)の溶液を20分間攪拌する。イミンの形成をGCにより追跡する。反応が完了したら、溶液を氷浴で0℃まで冷却する。次に、3当量のNaBHをゆっくり添加する。添加が完了したら、溶液を室温まで温めて、一晩攪拌する。アミンの形成をGCにより追跡する。反応が完了したら、HCl溶液1Mによって溶液をpH=1まで酸性化し、次に、いくらかのトルエンを添加する(100mL/8mmolアミン)。次に、NaOH溶液1Mによって溶液をpH=9まで塩基性化する。溶液をトルエンで3回抽出し、有機層をNaSOで乾燥する。溶媒を真空除去し、生成物をシリカにおけるろ過によって精製する。
生成物は無色のオイルである。収率=94%。
NMR:CDCl、300MHz:1,43(d,3H)、3,65(s,6H)、3,94(s,2H)、4,32(q,1H)。
実施例3:(R,R)N−(1−ナフタ−1−イルエチル)−1−フェネチルアミンの調製
シュレンク(Schlenk)管において、N中、溶媒としてのTi(iPrO)(30mmol)中でアセトナフトン(10mmol)およびR−1−フェネチルアミン(10mmol)の混合物を攪拌する。反応をGCにより追跡し、イミンの形成を制御する。転化が完了したら、2バールのH中で、触媒量のPd/C5%(10mmolのイミンに対して360mg)と共に混合物を反応容器に入れる。還元もGCによって追跡する。反応が終了したら、Ti(iPrOH)が完全に加水分解されるまで、1NのNaOHによる処理によって混合物を塩基性化する。ろ過した後、水層をトルエンで3回抽出する。有機層をNaSOで乾燥し、次に溶媒を真空で蒸発させる。黄色の固体が得られ、これをペンタンで洗浄してろ過した。99%の純度および36%の収率のR、R生成物を白色固体で得た。
NMR:CDCl、300MHz:1,34(d,3H)、1,44(d,3H)、4,52(q,3H)、4,75(q,3H)。
実施例4:(R)N−(2,6−ジメチルベンジル)−1−(1−ナフチル)エチルアミンの調製
N−(2,6−ジメトキシベンジル)フェネチルアミンの調製に関して実施例2の場合と同じ方法を用いる。ここで、出発アミンとして(R)−1−ナフタ−1−イルエチルアミン、そしてアルデヒドとして2,6−ジメチルベンズアルデヒドを使用する。生成物は無色のオイルである。収率=96%。
NMR:CDCl、300MHz:1,51(d,3H)、2,45(s,6H)、3,82(s,2H)、4,52(q,1H)。
5.式1.5に従うキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物(S)−[Ru(η−C){3−(NH−κN)−C1010−κC}(NCMe)(KPF)の調製方法
CHCN(6mL)中の金属前駆体としての[Ru(η−C)Cl(0.200g、0.4mmol)、(S)−1−アミノテトラリン(0.56mmol)、NaOH(0.033g、0.83mmol)およびKPF(0.29g、1.6mmol)の懸濁液を20℃で72時間攪拌した。溶離液としてCHCNを用いて、得られた暗黄色の懸濁液をAlでろ過した。黄色の留分を捕集し、約2mLのCHCl(2mL)まで真空で濃縮した。ジエチルエーテル(10mL)をこの溶液に添加し、これにより、冷蔵庫(0℃)内で数日間放置した後に黄色の錯体の結晶が得られた。ルテニウムのキラリティのため、化合物はジアステレオマーの混合物である。化合物は、シクロメタル化可能な二座配位子においてキラルであり、エナンチオマー濃縮されている。2つのジアステレオマーのHNMR(CDCl,400MHz):
,RRu−[Ru(η−C){3−(NH−κN)−C1010−κC}(NCMe)(KPF):
δ7.5(dd,1H,H10,J=7.2,J=0.7)、7.01(td,1H,H9,J=7.4,J=0.7)、6.78(dd,1H,H8,J=7.5,J=0.5)、5.60(s,6H,C)、5.24(dd,1H,NH,J=10.6)、3.61(m,1H,H3)、2.66(m,3H,H6およびNH)、2.41(m,1H,H4)、2.24(s,3H,CHCN)、1.96(m,1H,H5)、1.66(m,1H,H5)、1.48(m,1H,H4)。
,SRu−[Ru(η−C){3−(NH−κN)−C1010−κC}(NCMe)(KPF):
δ7.85(dd,1H,H10,J=6.6,J=0.8)、7.02(td,1H,H9,J=7.5,J=0.8)、6.79(dd,1H,H8,J=7.5,J=1.0)、5.58(s,6H,C)、4.67(dd,1H,NH,J=10.6)、4.02(t,1H,NH,J=J=10.9)、3.54(m,1H,H3)、2.66(m,2H,H6)、2.41(m,1H,H4)、2.30(s,3H,CHCN)、1.96(m,1H,H5)、1.66(m,1H,H5)、1.48(m,1H,H4)。
実施例6〜16 式1に従う予備形成キラルルテニウム化合物を触媒として用いた、シュレンク管におけるアセトフェノンの触媒移動水素化
まず実施例5に記載される方法と類似の方法によって触媒を調製(予備形成触媒)するが、反応の後、溶媒を真空で除去して触媒を粉末で得るようにすることが異なる。
触媒(10μmol)をアルゴン下で2−プロパノール(10mL)中に溶解し、アセトフェノン(120mg、1mmol)を添加した後、tBuOK(5.6mg、50μmol)を添加した。反応は、一定期間ごとにGCにより監視した。反応が終了したら、溶離液としてEtOを用いて、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィー精製した。キラルキャピラリーカラム(キラルデックス(Chiraldex)β−PM、50m×0.25mm)を用いて、収率およびe.e.値をGCにより決定した。様々な触媒についての結果は、表1に示される。
Figure 2008519798
実施例17〜35 触媒として式1に従うその場で調製したキラルルテニウム化合物を用いる高処理量の触媒移動水素化
アセトニトリル中のルテニウム前駆体としての[Ru(η−アレーン)Cl(10.8mM)、NaOH(11.3mM)、およびKPF(22mM)の原液をアルゴン下で調製した。ジンサー・リッシー(Zinnser Lissy)装置を用い、以下のようにして触媒溶液を調製した。この原液1mLを10mMのアセトニトリル中のアミン(式2のシクロメタル化可能な二座配位子)溶液1mLと混合した後、40℃で5時間攪拌した。次に、40℃で16時間窒素を流すことによって溶媒を除去した。式1に従うルテニウムベースの触媒を含有する残渣を窒素下で2−プロパノール(4mL)中に溶解した。1mLの560mMのアセトフェノン溶液および1mLの15mMの2−プロパノール中のtBuOK溶液を連続して添加した。溶液を室温で4.5時間攪拌し、次に、0.3mLの氷酢酸を添加して、反応を停止させた。0.1mLのアリコートを1mLのEtOAc中に希釈し、GC分析に提出した。キラルキャピラリーカラム(クロムパック(Chrompack)CP−Sil5CB、25m×0.25mm)を用いて、転化率およびe.e.値をGCにより決定した。追随した方法論は以下のスキーム2に示され、様々なシクロメタル化可能な配位子(アミン)および様々なルテニウム前駆体についての結果は表2に示される。
スキーム2.実施例17〜35に従うアセトフェノンの移動水素化におけるシクロメタル化された配位子としてのエナンチオリッチなアミンの高処理量スクリーニングのための方法論
Figure 2008519798
本発明の趣旨の範囲内で、このスキーム2の方法論は一般に、所与の触媒トランスフォーメーションに適切な触媒を見出すための本発明に従う高処理量スクリーニング方法に適用することができ、それにより、本出願を通して記載されるように、任意の金属前駆体、任意のシクロメタル化可能な配位子、任意の塩基、任意の添加剤、任意の溶媒を、様々な比率で、様々な条件下において使用することができる。
Figure 2008519798
実施例36:[(η−CMe)Rh(C−2−CH(Me)NH)(CHCN)]PFの調製
CHCN(6mL)中の[Rh(η−CMe)Cl(0.247g、0.4mmol)、(R)−1−フェニルエチルアミン(51μL、0.4mmol)、NaOH(0.03g、0.75mmol)、およびKPF(0.29g、1.57mmol)の懸濁液を、20℃において光を当てずに72時間攪拌した。得られた濃いオレンジ色の懸濁液を20mLのヘキサンと共に2時間強く攪拌した。CHCN層を真空で濃縮し、溶離液としてCHCNを用いて標準Al(8×3cm)でろ過した。オレンジ色の留分を捕集し、真空で蒸発させた(113mg、58%)。得られた残渣を最小限のCHCN(0.5mL)中に再溶解し、CHCL(0.5mL)およびジエチルエーテル(10mL)をこの溶液に添加し、冷蔵庫(−15℃)内で一晩放置した後、オレンジ色の固体が得られた。溶媒を除去し、固体を真空で乾燥させた。
HNMR(300MHz,CDCN,20℃):δ=1.48(d,3H,HH=4.5Hz,C(H)Me)、1.67(s,15H,η−CMe)、1.96(s,3H,CHCN)、3.27(s,1H,NH)、3.93(s,1H,NH)、4.28(s,1H,CH(Me))、6.84−7.10(m,3H,Harom)、7.45(dd,HH=7.4Hz,HH=1.3Hz,1H,Hortho/Rh)ppm。
実施例37:[(η−CMe)Ir(C−2−(R)−CH(Me)NH)(CHCN)]PFの調製
CHCN(4mL)中の[Ir(η−CMe)Cl(0.120g、0.15mmol)、(R)−1−フェニルエチルアミン(51μL、0.3mmol)、NaOH(0.012g、0.3mmol)、およびKPF(0.11g、0.6mmol)の懸濁液を45℃において光を当てずに50時間攪拌した。得られた濃いオレンジ色の懸濁液を20mLのヘキサンと共に2時間強く攪拌した。CHCN層(3%の遊離アミンが残っただけである)を真空で濃縮し、溶離液としてCHCNを用いて標準Al(8×3cm)でろ過した。オレンジ色の留分を捕集し、真空で蒸発させた(63%)。得られた残渣を最小限のCHCN(2mL)中に再溶解し、ジエチルエーテル(10mL)をこの溶液に添加し、冷蔵庫(−15℃)内で一晩放置した後、オレンジ色の固体が得られた。溶媒を除去し、固体を真空乾燥させた。
実施例38:[(η−CMe)Rh(C−2−CH(Me)NH)(Cl)]の調製
実施例36の触媒をジクロロメタン(1M)中に溶解し、同体積の飽和KCL溶液を添加し、混合物をアルゴン下で18時間強く攪拌した。層の分離後、ジクロロメタン溶液を蒸発させて、表題の化合物であるオレンジ色の固体(100%収率)が得られた。
実施例39
実施例36に従って調製した触媒(10μmol)を、脱気した2−プロパノール(10ml)にアルゴン中で溶解し、アセトフェノン(120mg、1mmol)を添加した後、tBuOK(5.6mg、50μmol)を添加した。反応は、一定期間ごとにGCにより監視した。反応が終了したら、溶離液としてEtOを用いて、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィー精製した。キラルキャピラリーカラム(キラルデックス(Chiraldex)β−PM、50m×0.25mm)を用いて、収率およびe.e.値をGCにより決定した。2時間後の転化率は89%であり、e.e.は34%であった。
実施例40
この実施例は、触媒として[(η−CMe)Rh(C−2−CH(Me)NH)(Cl)]を使用したという事実を除いて、実施例39と同じであった。1時間後の転化率は95%であり、生成物1−フェニルエタノールのe.e.は34%であった。
実施例41
この実施例は、実施例37の触媒を使用した点を除いて実施例39と同じであった。1時間後のアセトフェノンの転化率は10%であった。
実施例42
式1.3の触媒(10μmol)を1mmolのアセトフェノンおよびtBuOK(5.6mg、50μmol)に添加した。ここで、2.5mlの1Mのギ酸ナトリウム(sodium formiate)を添加し、溶液を窒素中40℃で24時間攪拌した。アセトフェノンの転化率は27%であった。
実施例43
式1.3の触媒(10μmol)を1mmolのアセトフェノンおよびtBuOK(5.6mg、50μmol)に添加した。ここで、2.5mlのHCOH/EtN(1.2:1)混合物を添加し、溶液を窒素中40℃で24時間攪拌した。アセトフェノンの転化率は6%であり、e.e.は40%であった。
実施例44
式1.3の触媒(10μmol)をN−ベンジルアセトフェノンイミン(1mmol)に添加し、tBuOK(5.6mg、50μmol)も添加した。ここで、0.5mlのHCOH/EtN(3:2)混合物を添加し、溶液を窒素中40℃で24時間攪拌した。周囲温度で36時間後、23%のN−ベンジル−1−フェニルエチルアミンが形成された。
実施例45
この実施例は、基質として6,7−ジメトキシ−1メチル−3,4−ジヒドロイソキノリンを用い、そして還元剤としてHCOH/EtN(5:2)混合物を用いた点を除いて実施例44と同じであった。周囲温度で3時間後、アミンへの31%の転化率が達成された。

Claims (11)

  1. 4、5または6個の配位基を含み、その少なくとも1つの対が連結し合って二座配位子を形成する遷移金属Mを含むエナンチオマー濃縮キラル化合物であって、前記Mが、1つのσ単結合によって、任意で置換および/または任意で縮合された前記二座配位子の(ヘテロ)芳香環の炭素原子に直接結合されると共に、前記Mが前記二座配位子の第1級または第2級アミノ基の窒素原子に直接結合されており、それにより、前記二座配位子と前記金属Mとの間にメタラサイクルが形成され、そして前記金属Mが、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムから選択されるキラル化合物。
  2. 前記化合物が、式1a、1bまたは1c
    Figure 2008519798

    のいずれか1つによって表され、前記二座配位子が、任意で置換および/または任意で縮合された(ヘテロ)芳香環Aおよびアミノ基−NRHを含み、前記アミノ基の窒素が、断片D−Eによって環Aに結合されており、DおよびEがそれぞれ、結合、任意で置換されたメチレン基CR、任意で置換されたエチレン基CRCR、任意で置換されたビニル基CR=CR(前記CR=CR−基は、任意で、芳香環の一部である)、またはヘテロ原子からなる群から独立して選択され、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRが、水素、任意で置換された炭素−、酸素−、または窒素−置換基からそれぞれ独立して選択され、Xが非配位アニオンであり、nが0、1または2であり、そしてS、S、SおよびSが配位基である請求項1に記載のキラル化合物。
  3. (i)前記二座配位子の原子の少なくとも1つおよび/または置換基の少なくとも1つがキラルであり、エナンチオマー濃縮されているか、あるいは(ii)配位基S、S、SまたはSの少なくとも1つがキラルであり、エナンチオマー濃縮されているか、あるいは(iii)金属Mがキラルであり、エナンチオマー濃縮されており、前記キラル化合物が、(i)、(ii)または(iii)のうちの少なくとも1つを含む請求項2に記載の化合物。
  4. DまたはEの少なくとも1つがキラルであり、エナンチオマー濃縮されているか、あるいはキラルおよびエナンチオマー濃縮置換基を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
  5. 前記遷移金属Mがルテニウムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
  6. 、S、SまたはSの少なくとも1つが、芳香族化合物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
  7. 溶媒ならびに任意で塩基および/または添加剤の存在下で、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、またはイリジウムから選択される遷移金属を含む金属前駆体と、式2
    Figure 2008519798

    に従うシクロメタル化可能な配位子とを反応させることを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキラル化合物の調製方法。
  8. 前記金属Mが、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載のキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物の触媒としての使用。
  9. 不斉移動水素化方法のための触媒としての請求項8に記載の使用。
  10. 対応するプロキラル化合物からエナンチオマー濃縮化合物を調製するための方法であって、前記プロキラル化合物が、水素供与体と、触媒と、任意で塩基との存在下で、不斉移動水素化反応を受け、前記触媒が、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金から選択される金属Mを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物である方法。
  11. ケトン、エノン、アルデヒド、イミン、オキシムまたはヒドラゾンの群から選択されるキラル化合物の速度論的分割のための方法であって、前記キラル化合物のエナンチオマー混合物が、触媒と、水素供与体と、任意で塩基との存在下で、不斉移動水素化処理を受け、前記触媒が、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウムまたは白金から選択される金属Mを含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のキラルおよびエナンチオマー濃縮化合物である方法。
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