本発明は、心肺バイパス処置において患者から静脈血を受け取り、酸素化した血液を患者に戻す変換可能な体外血液灌流システムを提供し、これは、閉ループ心肺バイパスシステム、及び閉ループ心肺バイパスシステムと血液貯留体を含む心肺バイパスシステムとの間における、変換回路を備え、変換回路は、患者からの静脈ラインと流体的に接続でき、第1ポンプの入口と流体的に接続できる静脈貯留体を備え、第1ポンプは閉ループ心肺バイパスシステムの一部であり、閉ループ心肺バイパスシステムは、第1ポンプの入口と流体的に接続した気泡除去装置を備える。本発明の文脈では、明細書と特許請求の範囲で「気泡トラップ」及び「気泡除去装置」という用語が使用され、広義に任意の空気除去技術または装置を意味するものとする。
別の実施形態では、変換可能な体外血液灌流システムは、ガス状気泡が検出された場合に、気泡除去装置及び静脈ラインから空気をパージするために気泡除去装置に流体的に取り付けられた第2ポンプを自動的に始動させる制御装置へと信号を送信するように作動可能である気泡センサを、患者からの静脈ラインに含む。別の実施形態では、変換可能な体外血液灌流システムは、第1ポンプの入口への第1ポンプ入口ライン上に気泡センサを含み、これは第1ポンプ入口ラインで気泡が検出された場合に、患者への血液の逆流を停止するために、患者への動脈ライン上のクランプを自動的に閉鎖する制御装置へと信号を送信するように作動可能である。
1つの実施形態では、変換可能な体外血液灌流システムは、静脈貯留体内で、所定のレベルより下の血液レベルを検出するように作動可能であり、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する制御装置へと信号を送信するように作動可能であるレベルセンサを含む。1つの実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上のクランプを閉鎖することによって、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する。別の実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上の第2ポンプを停止することにより、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する。別の実施形態では、制御装置は、患者への動脈ライン上のクランプを閉鎖することにより、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する。別の実施形態では、変換可能な体外血液灌流システムは、静脈貯留体内で、所定のレベルより下の血液レベルを検出するように作動可能であり、患者への血液の流れを停止するために、患者への動脈ライン上のクランプを自動的に閉鎖する制御装置へと信号を送信するように作動可能であるレベルセンサを含む。
1つの実施形態では、変換可能な体外血液灌流システムは、静脈貯留体内で所定のレベルより上の血液レベルを検出するように作動可能であり、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に開始する制御装置へと信号を送信するように作動可能であるレベルセンサを含む。1つの実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上のクランプ(留め具)を開放することによって、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に開始する。別の実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上の第2ポンプを始動することによって、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に開始する。
1つの実施形態では、静脈貯留体は軟質の静脈貯留袋である。別の実施形態では、軟質の静脈貯留袋は、真空で補助された静脈排液が可能である。別の実施形態では静脈貯留体は硬質外殻静脈貯留体である。別の実施形態では、硬質外殻静脈貯留体は、真空で補助された静脈排液が可能である。
1つの実施形態では、変換可能な体外灌流システムは、動脈ライン及び静脈ラインに直接接続し、AV間架橋部(A/Vブリッジ)を形成する管区画を含む。別の実施形態では、静脈貯留体の出口がAV間架橋部に直接接続し、閉ループモードで動作時に患者から貯留体へ、または貯留体から患者へと体積をシフトすることができる。別の実施形態では、静脈貯留体は、手術部位から戻る心臓切開血液を濾過し、この血液を心肺回路に戻すか、自己血液回収のためにこの血液を隔離することができる。別の実施形態では、管区画が静脈貯留体の濾過された心臓切開口に接続され、同種血液の輸血を可能にする。
1つの実施形態では、別個の心臓切開貯留体を使用して、手術部位から戻った心臓切開血液を濾過し、これは心肺回路に戻すか、自己血液回収のために隔離することができる。
1つの実施形態では、単純に回路をプライムし(満たし)、閉ループモードで作動する場合に体積を患者からプライム袋へ、またはプライム袋から患者へとシフトできるようにするために、1つまたは複数のプライム袋がAV間架橋部に直接接続される。この方法でプライム袋付きで構成された回路は、システムの順行性及び逆行性の自己供給(自己プライミング)という追加の利点を可能にする。別の実施形態では、急速ロックアダプタが提供され、これによってプライム袋の1つを専用の血液保存袋と容易に交換することができ、血液体積を患者から血液保存袋へ、または血液保存袋から患者へとシフトすることができる。この血液保存袋によって提供される1つの利点は、この保存された血液がシリコン/シリカの溶出消泡剤に曝露しないようにし、非内皮性異質表面区域への曝露を最小限に抑え、空区/血液の界面を最小限に抑えることである。
1つの実施形態では、閉ループ心肺バイパスシステムはさらに、酸素発生器及び熱交換器を備える。別の実施形態では、気泡除去装置、第1ポンプ、酸素発生器、及び熱交換器が1つのユニットに統合される。別の実施形態では、閉ループ心肺バイパスシステムはさらに、酸素発生器、熱交換器、及び動脈フィルタを備える。別の実施形態では、気泡除去装置、第1ポンプ、酸素発生器、熱区間器、及び動脈フィルタが1つのユニットに統合される。
本発明は、心肺バイパス処置において患者から静脈血を受け取り、酸素化した血液を患者に戻す変換可能な体外血液灌流システムを提供し、これは閉ループ心肺バイパスシステム、及び閉ループ心肺バイパスシステムを静脈貯留体を含む心肺バイパスシステムへと変換回路を備え、この変換回路は、患者からの静脈ラインと流体的に接続することができ、第1ポンプの入口と流体的に接続することができる静脈貯留体を備え、第1ポンプは、閉ループ心肺バイパスシステムの一部であり、変換可能な体外血液灌流システムは、静脈貯留体内で所定レベルより下の血液レベルを検出するように作動可能であり、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する制御装置へと信号を送信するように作動可能であるレベルセンサを備える。1つの実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上のクランプを閉鎖することにより、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する。別の実施形態では、制御装置は、静脈貯留体出口ライン上の第2ポンプを停止することにより、静脈貯留体からの血液の流れを自動的に停止する。
本発明は、心肺バイパス処置において患者から静脈血を受け取り、酸素化した血液を患者に戻す変換可能な体外血液灌流システムを提供し、これは閉ループ心肺バイパスシステム、及び閉ループ心肺バイパスシステムを静脈貯留体を含む心肺バイパスシステムに変換回路を備え、この変換回路は、患者からの静脈ラインと流体的に接続することができ、第1ポンプの入口と流体的に接続することができる静脈貯留体を備え、第1ポンプは閉ループ心肺バイパスシステムの一部であり、変換可能な体外血液灌流システムは、静脈貯留体内で所定レベルより下の血液レベルを検出するように作動可能であり、患者への血液の流れを停止するために患者への動脈ライン上のクランプを自動的に閉鎖する制御装置へと信号を送信するように作動可能であるレベルセンサを備える。
本発明は、変換可能な体外血液灌流システムを、閉ループ心肺バイパスシステムと静脈貯留体を含む心肺バイパスシステムとの間で、変換する方法も提供し、方法は、静脈貯留体を患者からの静脈ラインと流体的に接続することと、静脈貯留体を第1ポンプの入口に流体的に接続することとを含む。
本発明は、血液が患者に戻る前にシステムを通って流れる血液から気泡を除去することができる形体及び構成要素を組み込んだ様々な体外血液灌流システムを提供する。図1は、主に閉ループ心肺バイパスシステムとして使用するように意図された方法で静脈貯留袋を含む様々な構成要素を組み込むが、使用者の選択で、従来の重力補助または真空補助の静脈排液閉鎖静脈貯留体として使用するために静脈貯留袋をシステムに組み込む措置が施されるシステムを開示している。
図3A及び図3Bに示す体外システムは、図1に示したシステムのような静脈貯留袋の代わりに硬質外殻静脈貯留体を含む。使用者の選択で、図3A及び図3Bのシステムを、閉ループバイパスモードと、従来の重力補助または真空補助の静脈排液硬質外殻貯留体モードとの間で、迅速かつ安全に変換できるようにする変更を含む特定の他の改造及び強化が実行されている。図3Bの灌流システムは図3Aのそれと同様であるが、特定のハードウェアシステムの制御及び安全形体が追加されている。図2は、図1、図3A及び図3Bの灌流システムに使用することができる内蔵式小型バイパス装置を示す。これらの灌流システムの小型バイパス装置及びその使用に関して、以下で詳細に説明する。
[内蔵式小型心肺バイパス装置] 本明細書に開示された新規の体外血液灌流システムに使用することができる小型バイパス装置10が、図2に図示されている。装置10は、1つの一体構造内で血液酸素発生器及び熱交換器90、動脈フィルタ92、静脈気泡トラップ36及び遠心ポンプ40を組み合わせる。このような小型バイパス装置の一例が、2004年3月18日に出願され、「Device and Methods for Processing Blood in Extracorporeal Circulation」と題した同時継続の米国特許出願第10/804,583号で図示され、説明されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。現在使用可能な内蔵式小型バイパス装置は、「COBE SYNERGY Adult Integrated Mini Bypass System」、及び「CARDIOVENTION CORX System」を含む。
この装置10は、CPB処置中に患者の血液の体外循環、酸素発生、濾過、及び温度制御を提供する。この小型バイパス装置10は、体外心肺支援を必要とする外科処置に使用するように示されている。装置10は、図2に示すような複数の構成要素を組み込んだ単一の内蔵式装置でよいが、本発明の新規の灌流システムの利点は、小型バイパス装置が使用された体外血液灌流システムを示す図1に示すように、装置10の構成要素の一部または全部が別個に相互接続された構成要素として提供された場合にも達成される。
[静脈貯留袋を含む変換可能な心肺灌流システム]
変換可能な体外心肺灌流システム136が、図1に図示されている。システム136は静脈ライン137、動脈ライン139、内臓式小型バイパス装置10、1つまたは複数の静脈貯留袋140、1つまたは複数のプライミング袋141、プライミングライン147、逆止弁143付きの気泡トラップパージライン142、動脈フィルタパージライン145、及び様々な相互接続管及びラインクランプ149A〜Gを含む。上記で説明したように、装置10は血液酸素発生器及び熱交換器90、動脈フィルタ92、静脈気泡トラップ36及び遠心ポンプ40を含む。気泡トラップパージライン142は気泡トラップパージ出口132に取り付けられている。ライン39が気泡トラップ出口37を遠心ポンプの入口41に接続する。システム136は血液ガスサンプリングシステム、圧力監視ライン、通気ライン、吸引ライン、心臓切開貯留体、心停止ライン、及びガスラインも含み、これは図示されていないが、当業者には理解される。
体外心肺灌流システム136は、小型バイパス装置10を患者52に接続するAV間ループを提供し、CPB処置中に1次血流路を提供する。静脈ライン137は、患者52からの血流を小型バイパス装置10の入口128へと向ける。動脈ライン139は小型バイパス装置10の出口134からの血流を患者52へと戻す。静脈貯留袋140は静脈ライン137に取り付けられるが、この貯留袋140の入口及び出口は常時閉であり(クランプ149B及び149C)、静脈ラインクランプ149Aは常時開であり、したがって静脈血流は貯留袋140を迂回し、小型バイパス装置10へと直接流れる。体外灌流システム136では、AV間(A/V)ループがAV間架橋部151を含み、これによって患者の心肺系をシステム136から一時的に閉め出した状態で装置10を通して再循環させることができる。このAV間架橋部151及び再循環技術は、小型バイパス装置が非プライム化された場合に装置10及びシステム136の再プライムに使用することができる。流体体積は、クランプ149Cを開放することによって静脈貯留袋140から、またはクランプ149G及び/または149Fを開放して、クランプ149Cを開放することにより、プライム袋141から小型バイパス装置10に追加することができる。ポンプ40を使用して小型バイパス装置10及びAV間導管151を通して流体を循環させる間、システム内の空気が気泡トラップ36及び動脈フィルタ92内に貯まり、静脈貯留袋140にパージすることができる。
静脈貯留袋が図示されているが、静脈貯留体は、静脈貯留袋、硬質外殻静脈貯留体、または組み合わせた静脈心臓切開貯留体など、任意の従来の貯留装置でよい。また、貯留体は、真空補助の静脈排液が可能な静脈貯留体でよい。遠心灌流システム136で図示されているように、静脈貯留袋140は主に、CPB処置中に血液体積を管理する血圧保存貯留体として機能する。静脈貯留袋140は、気泡トラップパージライン142及び/または動脈フィルタパージライン145から除去された全ての血液/空気の貯留体として、及び小型バイパス装置10及びシステム136の自己プライミングを容易にするプライミング貯留体としても働く。
自己プライミング(自己供給、自給)は、小型バイパスシステムで一般的に使用される技術である。患者の動脈血圧は、動脈フィルタパージライン145を通してプライム溶液を静脈貯留袋140に押し込みながら、動脈ライン139を通して動脈フィルタ92へと血液を押す力を提供する。遠心ポンプ40は、プライム溶液を動脈フィルタパージライン145に付勢しながら通しながら、静脈ライン137を通して小型バイパス装置10に血液を引き込む。患者52がバイパスされたら、プライム袋141を貯留袋140の高さより下に下げると、静脈貯留袋140に保存されているプライム溶液をプライム袋141に重力で排液することができる。
使用者の選択で、静脈貯留袋140は、貯留体入口100と出口98の間の静脈ラインクランプ149Aを閉じ、貯留体の入口クランプ149Bと出口クランプ149Cをそれぞれ解除し、重力または真空で補助して静脈貯留袋140へと静脈排液を可能にすることにより、従来通りの閉鎖静脈貯留体として機能することができる。
閉ループモードでは、システム136及び小型バイパス装置10に空気が入ることがあり、これは気泡トラップパージライン142及び動脈フィルタパージライン145を通して除去される。気泡トラップパージライン142は気泡トラップ36の頂部及び静脈貯留袋140の頂部に接続する。気泡トラップ36は通常、負圧がかかりローラ式ポンプ38が通常は気泡トラップパージライン142を通して空気/血液を除去する。動脈フィルタパージライン145は動脈フィルタ92の頂部及び静脈貯留袋140の頂部に接続する。遠心ポンプ40によって発生した正圧が、動脈フィルタパージポート102が開位置にある場合に空気/血液をパージする。気泡トラップパージライン142及び動脈フィルタパージライン145はそれぞれ、逆止弁を含み、逆流を防止する。クランプ149Cを開き、貯留袋140を排液することによって、気泡トラップパージライン142または動脈フィルタパージライン145を通って除去された血液が、体外システム136に戻ることができる。
図示されていないが、通常CPB処置に使用されている血液ガスサンプリングシステムを、システムに組み込むことができる。血液ガスサンプリングシステムの動脈ラインが、動脈フィルタ92の頂部にあるポートまたは動脈ライン139のポートに接続される。このサンプリングシステムの静脈ラインは、静脈ライン137のポートに接続される。システムの動脈側と静脈側との圧力差のせいで、血液はサンプリングシステムを通して動脈側から静脈側へと流れ、これによって当技術分野で知られているように適切な血液ガス監視を実行することができる。
図示されていないが、通常心肺バイパス処置に使用されている圧力監視ラインも、システムに組み込むことができる。静脈圧監視ラインが静脈ライン137のポートに取り付けられる。動脈圧監視ラインが、小型バイパス装置10の動脈ポート134付近のポートに取り付けられる。この方法で接続すると、これらのラインによって当技術分野でよく知られているように静脈及び動脈の圧力を監視することができる。
体外灌流システム136では、プライムライン147が静脈貯留袋140の入口104に接続し、これは心臓切開入口でよい。装置10及び体外システム136をプライミングするために、プライミング流体を最初にプライム袋141から排出し、静脈貯留袋140に入れる。
体外灌流システム136の通気または吸引ラインは、手術部位からの通気または吸引を提供し、別個の心臓切開貯留体(図示せず)に接続することができる。体外灌流システム136の心停止ラインは、心停止溶液を送出して、心臓を停止させ、酸素発生器90の専用血液アクセスポートに接続することができる。ガスラインは通常、CPB処置に使用されるラインである。
[硬質外殻静脈貯留体を含む変換可能な心肺バイパスシステム(図3A及び図3B)] 図3A及び図3Bは、本発明による変換可能な体外血液灌流システム11を示す。図3Aは手動操作モードで接続されたシステム11を示し、図3Bは以下で説明され、システムの特定の機能を自動化する特定のセンサ及び制御装置を含むように接続されたシステム11を示す。図3A及び図3Bのシステムは、装置10を組み込んだものとして説明される。
図3A及び図3Bで示すように、変換可能な体外血液灌流システム11は、システム11を、上述した利点の全てがある閉ループCPBシステムと、静脈貯留体を使用する標準的なシステムとの間で迅速かつ安全に変換することができる方法で相互接続された様々なシステム構成要素を含む。静脈貯留体は、静脈貯留袋、硬質外殻静脈貯留体または組み合わせた静脈心臓切開貯留体のような任意の従来通りの静脈貯留装置でよい。また、貯留体は、真空補助の静脈排液が可能な静脈貯留体でよい。貯留体16は、左心室通気ライン及び使用する場合には心臓切開吸引ラインの出力のために使用することができる。システム11は、重力で排液する静脈貯留体と比較して静脈流量が増加するなど、幾つかの利点を提供する真空補助の静脈排液が可能である密封された硬質外殻静脈貯留体16を使用するように図示されている。静脈排液を真空で補助せずに十分な静脈排液が達成できる場合、血液灌流システム11は、典型的な重力排液静脈貯留体システムとして機能してよい。
変換可能なシステム11の特徴の1つは、既に接続された状態で包装し、使用者へと出荷できることであり、したがって設定は短時間で効率的である。あるいは、変換可能なシステム11は、構成要素及び接続部の一部を含めるが、使用者が所望に応じて追加的な構成要素及び接続部を追加するようにして包装し、出荷してもよい。
変換可能な心肺灌流システム11は、閉ループ心肺バイパスシステムまたはCPB処置の最初に静脈貯留体を使用する標準的なシステム内に設定することができる。変換可能なシステム11は、CPB処置中のいつでも他のタイプのシステムに変形することができる。この変換可能な体外血液灌流システム11では、容易に使用可能な静脈貯留体16の追加の利点とともに、閉ループ心肺バイパスの利点を達成することができる。図3A及び図3Bで示すように変換可能な体外心肺灌流システム11に含まれる構成要素について、以下で説明する。これらのシステムは類似しており、したがって共通の要素を識別するのに共通の参照番号を使用する。
内蔵式小型心肺バイパス装置10は、前述したように静脈気泡トラップ36、遠心ポンプ40、酸素発生器/熱交換器90、及び動脈フィルタ92を含む。静脈ライン12によって、閉ループ心肺バイパスモードでは直接的に、または重力または真空で補助した静脈排液貯留体心肺バイパスモードでは静脈貯留体16を介して、患者52から小型バイパス装置10内への静脈の流れが可能になる。システム11のいずれの心肺バイパスモードでも、動脈ライン14は小型バイパス装置10によって酸素発生、濾過、温度調整などの後に血液を患者52に戻す。
この装置10は、静脈ライン12を通して患者52から静脈血を受け取る入口128を有する静脈気泡トラップ36を含む。気泡トラップ36と酸素発生器/熱交換器90の間に接続した遠心ポンプ40は、気泡トラップ36及び静脈ライン12内に負圧を発生させ、患者52からの血液の引き込みを補助する。遠心ポンプ40は、気泡トラップ36、静脈気泡トラップ出口37、及び管39を通して遠心ポンプ40の入口41に静脈血を引き込む。ポンプ40は、酸素発生器/熱交換器90の入口に静脈血を供給する。酸素発生器/熱交換器90は血液を酸素化し、血液温度を制御する。酸素化し、温度制御した血液は、次に酸素発生器/熱交換器90の出口から動脈フィルタ92の入口に供給される。濾過し、酸素化して、温度制御した血液は、動脈出口134にて小型バイパス装置10を出て、動脈ライン14を介して患者52に戻る。
静脈気泡トラップ36は、逆止弁30を含む気泡トラップパージライン143に接続する気泡トラップパージポート132を有する。気泡トラップ36の頂部に空気が蓄積すると、ライン143に接続されたローラ式ポンプ38が、図3Aのシステムについて示すようにオペレータによって手動で起動されるか、図3Bのシステムについて示すように自動的に起動され、気泡トラップ36から静脈貯留体16へと空気/血液をパージする。
動脈フィルタ92は、動脈フィルタ再循環/パージポート102を有する。動脈フィルタパージライン32は、動脈フィルタ再循環/パージポートと貯留体16上のポート17との間に接続する。遠心ポンプ40によって発生した正圧は、動脈フィルタ再循環/パージポート102が開位置にある場合に、空気/血液をパージする。
静脈気泡トラップ36または動脈フィルタ92から空気を排出した状態で採集された血液は、静脈貯留体16(または図示されていない別個の心臓切開貯留体)へと給送し、患者52に戻すために回収することができる。特定の他の閉ループCPBシステムは、回収された血液を全て廃棄物容器へと移送し、患者52に戻すためにこの血液を回収しない。このようなシステムで失われた体積は全て、晶質プライムで置換しなければならず、その結果、血液希釈量が増加するか、同種血液生成物が生じる。
AV間架橋部18は、バイパス中に患者の血液の再循環及び体積管理を可能にする。AV間架橋部18は、静脈ライン96に接続した動脈ライン94を含む。貯留体の出口ライン26は、静脈貯留体16をAV間架橋部18に接続する。貯留体の入口ライン28は、静脈ライン12を静脈貯留体16に接続する。AV間架橋部18のライン94、96、及び体外血液灌流システム11の他の場所に様々なクランプを配置することにより、本明細書でさらに説明するように、システム11を幾つかの異なる方法で構成することができる。
プライムライン20は、1つまたは複数のプライム溶液袋22から体外血液灌流システム11をプライミングし、体積管理を補助する働きをする。システム11をプライミングした後、1つまたは複数の血液保存袋24をプライム溶液袋22の1つと交換してよい。血液保存袋24は、体積管理を補助するために余分な体積の保持することに使用される。
[閉ループモード接続システム] 図3A及び図3Bは、閉ループモード接続システムと、標準モード(重力排液または真空補助の静脈排液)接続システムとの両方で変換可能なシステム11を示す。閉ループモード接続システムを構成するには、体外循環が静脈貯留体16を迂回するように、クランプ50が貯留体入口ライン28を閉鎖し、クランプ44がAV間架橋部18の動脈ライン94を閉鎖して、クランプ46がAV間架橋部18の静脈96を閉鎖する。また、図3Aで示すようなクランプ48または図3Bで示すようなクランプ86及び急速プライムライン20上のクランプ21は閉鎖している。静脈ラインクランプ51及び動脈ラインクランプ61は開放している。閉ループバイパスモードでは、静脈血が、患者52から静脈ライン12を通って小型バイパス装置10へと直接流れ、動脈血は、小型バイパス装置10から動脈ライン14を通って患者52へと直接戻る。
閉ループ心肺バイパス接続システムでは、貯留体16は体積管理のために、及び場合によっては心臓切開フィールドから通気または吸引された血液を管理するための心臓切開貯留体として使用される。静脈貯留体16は閉ループCPBモードでは休止しているので、静脈貯留体16が心肺バイパスシステム11の一体の機能部品である場合とは異なる方法で、血液体積を管理しなければならない。必要に応じて、血液を患者52から取り出し、静脈貯留体16または血液保存袋24に保存する。遠心ポンプ40によって発生した圧力を使用して、AV間架橋部18の動脈ライン94のクランプ44を開放し、図3Aで示すような貯留体出口ラインのクランプ48または図3Bで示すようなクランプ86を開放することによって、血液体積を静脈貯留体へと移送する。血液体積は、AV間架橋部18の動脈ライン94のクランプ44を開放することによって血液保存袋24へと移送され、クランプ21を開放することによって血液保存袋24へと移送される。必要に応じて、静脈貯留体16、プライム溶液袋22、または血液保存袋24から血液、プライム溶液、または他の血液/血液生成物を追加することにより、体積を患者52に追加することができる。AV間架橋部18の静脈ライン96のクランプ46を開放し、図3Aで示すような貯留体出口ラインクランプ48または図3Bで示すようなクランプ86を開放することにより、血液が貯留体16からAV間架橋部18の静脈ライン96に入り、小型バイパス装置10を通って動脈ライン14を通り、患者52に戻ることができる。同じ方法で、クランプ21を開放し、AV間架橋部18の静脈ライン96のクランプ46を開放することにより、プライム溶液袋22または血液保存袋24から体積を追加することができる。
[標準モード接続システム] システム11は、図3Aで示すような貯留体出口管クランプ48または図3Bで示すようなクランプ86を開放し、静脈クランプ46を開放して、貯留体入口ラインクランプ50を開放し、動脈クランプ44を閉鎖し、クランプ51を閉鎖して、貯留体入口ライン28とAV間架橋部18との間の静脈ライン124を閉鎖する(及び急速プライムライン20の両方のクランプ21を閉鎖する)ことにより、標準モード(重力排液または真空補助の静脈排液)接続システムで構成することができる。この方法でクランプ44、46、48(または86)、50、51を構成すると、静脈血は静脈貯留体16に流入し、貯留体16を出て小型バイパス装置10に入る。貯留体通気ポート(図示せず)は真空源(図示せず)に接続して、必要に応じて真空補助の静脈排液を提供する。閉ループバイパスシステムは通常、患者52の近くに配置され、小径(例えば3/8インチ(0.95cm)直径)の静脈ラインを使用して、必要なシステムプライム体積を減少させるので、この標準接続モードのシステム11で十分な静脈廃液を達成するには、真空補助の静脈廃液を使用することが好ましい。
静脈貯留体16は、クランプ21、44、46、48(または86)、50を以前の段落で説明したように構成することにより、標準モード接続システムの機能要素になる。貯留体16内で十分な体積が使用可能であるか、十分な体積をこれに追加しなければならない。また、別個の心臓切開貯留体(図示せず)が、変換可能な体外心肺バイパスシステム11の一部になってよい。
例えば静脈に空気が残るか、外科チームの裁量など、遭遇する状況のせいで、変換可能な体外血液灌流システム11は、心肺処置中に閉ループバイパスモードから重力または真空補助の硬質外殻静脈排液バイパスモードへと容易に変換することができる。標準モード接続システムへの変換を開始した時に患者52が既にバイパス手術中である場合は、十分な流量及び動脈血圧を維持しながら、遠心ポンプ速度40を減速して、血液流量を減少させる。図3Aで示すような貯留体出口ラインクランプ48または図3Bで示すようなクランプ86、静脈クランプ46、及び貯留体入口ラインクランプ50を開放して、体外流に貯留体16を含める。次に、静脈ラインクランプ51が、貯留体入口ライン28とAV間架橋部18の間の静脈ライン124を閉鎖する。
また、システム11は、処置の開始時に硬質外殻重力排液または真空補助の静脈排液心肺バイパスモードで設定することができる。バイパスを開始する前に標準的なモード接続システムを構成するために、遠心ポンプ40を停止し、静脈クランプ46及び図3Aで示すような貯留体出口ラインクランプ48または図3Bで示すようなクランプ86を開放する。静脈ラインクランプ51は、貯留体入口ライン28とAV間架橋部18の間で静脈ライン124を閉鎖する。真空を使用する場合は、貯留体内の真空レベルを監視して、十分な静脈の戻りを達成する。患者52が標準的なバイパスモードにある間、動脈クランプ44は閉鎖したままである。遠心ポンプ40が血液を引き出し、貯留体16によって濾過して消泡し、小型バイパス装置10を通って循環させて、動脈ライン14を介して患者52に戻す。
[心肺バイパスの終了] 手動モード(図3A)または自動モード(図3B)のシステム11で心肺バイパス処置を終了するには、以下のように進行する。真空補助の静脈排液を使用している場合は、バイパスを終了する前に貯留体16を環境へと開放する。ガス流を停止する。遠心ポンプ40の速度を徐々に落とす。システムが開ループバイパス式である場合は、クランプ50を閉鎖した直後に、クランプ61を閉鎖して動脈ラインをクランプすることによって、患者52と貯留体入口ライン28の間の静脈ライン12を閉塞する。システムが閉ループバイパス式である場合は、クランプ61を閉鎖した後に、クランプ51を閉鎖して静脈ラインをクランプすることによって、動脈ラインを閉塞する。
貯留体出口ライン26を開放する。動脈及び静脈クランプ44、46を開放する。ポンプ速度を落として、必要に応じて再循環を継続する。再循環相の間、熱交換器が動作し続ける。動脈血アクセスポートに接続された心停止システムがある場合は、それを閉塞する。
[手動操作の変換可能な心肺バイパスシステム] 図3Aは、手動操作モードで構成されたシステム11を示す。気泡トラップ36内にたまった空気は、手動で起動するローラ式ポンプ38で除去される。それと同時に、遠心ポンプ40の速度を手動で低下させ、静脈ライン12の負圧を低下させ、空気の飛沫同伴率を低下させる。遠心ポンプ40の速度が低下すると、空気をさらに効果的に除去するために、静脈気泡トラップ36内の空気の滞在時間も長くなる。静脈気泡トラップ36から排出される空気とともに除去された血液は、静脈貯留体16内で採集され、患者52に戻すために回収される。この作業は、貯留体出口ライン26のクランプ48及びAV間架橋部18の静脈ライン96のクランプ46を手動で開放し、流体を貯留体16から排出して、体循環系に戻れるようにすることによって達成することができる。
[変換可能な心肺バイパスシステムのハードウェアシステム] 図3Bは、センサ及び制御装置が変換可能な心肺バイパスシステムの特定の機能を管理するシステム11を示す。
「Stockert ERC Clamp」のような電動クランプを、動脈ライン14のクランプ60として設置できることが望ましい。「Stockert ERC」は、機械的遠隔制御装置、機械的閉塞機構及び個々に位置決め可能で即座にアクセス可能な制御ユニットがあるクランプである。「Stockert ERC Clamp」は、ドイツ、ミュンヘンの「Sorin Group Deutschland GmbH」から入手可能である。
「Stockert Ultrasonic Bubble Detector」のような超音波気泡検出器は、静脈ライン気泡検出器82として適切に設置することができる。「Stockert Ultrasonic Bubble Detector」は、ドイツ、ミュンヘンの「Sorin Group Deutschland GmbH」から入手可能である。超音波気泡検出器の音響及び視覚アラームが、静脈ライン内に気泡が存在することを使用者に警告し、ローラ式ポンプ38が所定の時間、例えば約5秒間自動的に起動して、検出された空気を気泡トラップ36から除去する。遠心ポンプ40が速度を低下させて、静脈ライン12の負圧を低下させ、空気の飛沫同伴率を低下させる。遠心ポンプ40の速度が低下すると、空気をさらに効果的に除去するために、静脈気泡トラップ36内の空気の滞在時間も長くなる。
遠心ポンプ入口ライン気泡検出器106は、気泡トラップ36と遠心ポンプ40の間の管に配置され、動脈ライン14上の電動クランプ60と組み合わせて使用される。気泡検出器106は、超音波気泡検出器でも適切である。気泡検出器106が空気を検出すると、気泡検出器106によって自動的にクランプ60が動脈ライン14を遮断する。この検出器106は、気泡トラップ36を通過し、遠心ポンプ40に近づいているような空気を感知する。このような状況で、遠心ポンプ40が大量に非プライム化され、大量の空気がさらにシステム内へと通ることが防止される。
レベルセンサ84が、硬質外殻静脈貯留体16に配置され、クランプ60に割り当てられる。貯留体16内の流体レベルがレベルセンサ84より低下すると、クランプ60が自動的に閉鎖し、患者への流れを防止する。レベルセンサ84は望ましくは「Stockert」のレベルセンサでよい。レベルセンサ84は、遠心ポンプの制御装置及び電動クランプ60に割り当てて、体外血流を停止し、貯留体16の排液を防止することができる。この状況が発生した場合、使用者は、貯留体出口ライン26がクランプ86でクランプされていることを確認し、心肺バイパスを再確立しなければならない。調節可能なレベルセンサ84は、各処置で正当とされるように、異なる体積レベルを維持できるようにする追加的形体である。
別の実施形態では、レベルセンサ84は硬質外殻静脈貯留体16に配置され、電動クランプ86に割り当てられる。貯留体16内の流体レベルがレベルセンサ84より低下すると、クランプ86が自動的に閉鎖し、貯留体16の完全な排液を防止する。あるいは、レベルセンサとともに使用される電動クランプが、本明細書に記載された小型バイパスシステムの貯留体16内でほぼ一定の流体レベルを維持する働きをすることができる。このシステムは、AV間架橋部18の静脈ライン96のクランプ46が開位置に維持されるように構成される。レベルセンサは、所望の流体レベルで貯留体16に配置される。体積が貯留体16に追加され、レベルセンサの高さを超えると、電動クランプ86が開放して、この体積を、AV間架橋部18の静脈ライン96に接続された貯留体出口ライン26に通して回路に戻す。流体レベルがレベルセンサの高さより低下すると、電動クランプ86は閉鎖する。この構成は、心臓切開貯留体の流体レベルをほぼ一定に維持するために、心臓切開貯留体を含む従来通りのCPBシステムにも追加的に使用することができる。
別の実施形態では、レベルセンサ84は硬質外殻静脈貯留体16に配置され、ローラ式ポンプ87に割り当てられる。レベルセンサ84は、制御装置及びローラ式ポンプ87とともに使用して、静脈貯留体の自動及び連続的排液を制御することができる。貯留体16内の流体レベルがレベルセンサ84より低下すると、ローラ式ポンプ87が自動的に停止して、貯留体16の完全な排液を防止する。
以上の説明及び図面は、本発明の実施形態を説明する目的で提供されており、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な改造及び変形が可能であることが当業者には明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内にある限り、本発明のこの改造及び変形を含むものとする。