JP2008307831A - 環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法 - Google Patents

環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリシングローラ法による残留歪みの発生を抑制し、厚み変動やスジ故障が発生することを防止することで、高い光学特性のフィルムを得る。
【解決手段】環状ポリオレフィン系樹脂を溶融してダイ24からシート状に押し出し、シートを算術平均高さRaが100nm以下の表面性で、少なくとも一方のロールが金属製の弾性ロール26によって構成された一対のローラ26、28で挟むことにより冷却固化して製膜する環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の製造方法であって、ダイ24のリップクリアランスdを、0.2〜1.0mmの範囲に設定するとともに、ダイ押出口24Cでの単位面積当りの樹脂流量を1時間当り0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定する。
【選択図】 図3

Description

本発明は環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法に係り、特に液晶表示装置に好適な品質を有する環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
従来、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを延伸し、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させ、液晶表示素子の位相差膜として使用し、視野角拡大を図ることが実施されている。
このような環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを延伸する方法として、フィルムの縦(長手)方向に延伸する方法(縦延伸)や、フィルムの横(幅)方向に延伸する方法(横延伸)、あるいは縦延伸と横延伸を同時に行う方法(同時延伸)が挙げられる。これらのうち、縦延伸は設備がコンパクトなため、従来から多く用いられてきた。通常、縦延伸は、2対以上のニップロールの間でフィルムをガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、入口側のニップロールの搬送速度より出口側の搬送速度を速くすることで縦方向に延伸する方法である。
特許文献1には、環状ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂を縦延伸する方法が記載されている。この特許文献1は、縦延伸する方向を流延製膜方向と逆にすることで遅相軸の角度むらを改良したものである。また、特許文献2には、縦横比(L/W)が0.3以上、2以下の短スパン間に設置したニップローラを延伸ゾーン中に設置して延伸する方法が記載されている。この特許文献2によれば、厚み方向の配向(Rth)を改良することができる。ここで云う縦横比とは、延伸に用いるニップロールの間隔(L)を延伸する熱可塑性樹脂フィルムの幅(W)で割った値を指す。
特開2002−311240号公報 特開2003−315551号公報
ところで、延伸前(未延伸)の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを溶融製膜法で製膜する場合、環状ポリオレフィン系樹脂は溶融粘度が高いためにレベリングしにくいという問題がある。このため、溶融製膜法で製膜した環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは、スジ故障が発生しやすいという問題や、厚み精度が低くなるという問題が発生する。
本発明の発明者は、これらの問題を解消する方法として、ポリシングローラ法に着目した。このポリシングローラ法は、ダイから押し出された樹脂を一対の研磨ローラで挟み込みながら冷却する方法であり、厚み精度を向上させることができる。
しかし、ポリシングローラ法は、フィルム内に残留歪みが発生しやすいという問題がある。また、ポリシングローラ法で製膜しても、ダイから溶融した環状ポリオレフィン系樹脂を押し出す条件によってはフィルムの厚み変動や面質が悪くなるため、高性能の光学フィルムを得ることができないという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、ポリシングローラ法による残留歪みの発生を抑制し、ダイの条件を最適化することで、高い光学特性のフィルムを得ることのできる環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、環状ポリオレフィン系樹脂を溶融してダイからシート状に押し出し、該シートを、算術平均高さRaが100nm以下の表面性で、少なくとも一方のロールが金属製の弾性ロールによって構成された一対のローラで挟むことにより冷却固化して製膜する環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、前記ダイのリップクリアランスを、0.2〜1.0mmの範囲に設定するとともに、ダイ押出口での単位面積当りの樹脂流量を1時間あたり0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ダイから押し出された溶融状態の環状ポリオレフィン系樹脂を、少なくとも一方のロールが金属性の弾性ロールによって構成された一対のローラで挟んで冷却固化するので、環状ポリオレフィン系樹脂は一対のローラによって押圧される。このように樹脂が面状に押圧されながら冷却されると、内部に残留応力のないフィルムが製膜される。しかしながら、面状に押圧することで、厚みが均一になる反面、シート状に押し出された溶融樹脂に微妙な厚み変動やダイによるスジ故障などの面質の欠陥があると、レターデーションRe,Rthの分布が顕著になってしまうということが分かった。そこで、本発明者は、ダイのリップクリアランスを、0.2〜1.0mmの範囲に設定するとともに、ダイリップでの樹脂流量を1時間あたり0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定することでフィルムの厚み変動や面質が悪くなることを防ぐことができるという知見を得た。ここで、ダイのリップクリアランスを、0.2〜1.0mmの範囲に設定するのは、リップクリアランスが0.2mmよりも小さくなると、ダイリップで溶融樹脂の圧力が急激に変化することによりフィルムに厚み変動やスジ故障が発生してしまい、1.0mmよりも大きくなると、ドロー比が大きくなりすぎて厚み精度が悪くなるからであり、また、ダイリップでの樹脂流量を1時間あたり0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定するのは、流量が0.1kg/mm2 よりも小さくなると、生産量が著しく劣ってしまうからであり、1.5kg/mm2 よりも大きくなると、ダイリップで溶融樹脂の圧力が大きくなりすぎることでフィルムに厚み変動やスジ故障が発生してしまうからである。
従って、請求項1の発明によれば、環状ポリオレフィン系樹脂を少なくとも一方のロールが金属製の弾性ロールによって構成された一対のローラで挟んで冷却固化することで、残留応力のないフィルムが製膜できるとともに、ダイリップのクリアランス及び流量を制御することで、フィルムに厚み変動やスジ故障が発生することを防ぐことができるので、レターデーションRe、Rthの分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記ダイのエッジ部のR面取り、又はC面取りが30μm以下であることを特徴とする。
これは、ダイのエッジ部の面取りが30μmを越えると、スジ故障の原因になるからである。よって、請求項2の発明によれば、ダイのエッジ部のR面取り、又はC面取りが30μm以下であることで、更にスジ故障が発生することがないので、面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ダイのダイリップ表面の中心線平均粗さRaが0.5μm以下であることを特徴とする。
溶融樹脂がダイから吐出圧力を有して大気中に吐出されると、溶融樹脂は僅かに膨潤するので、リップ表面に接触し易くなる。リップ表面の表面粗さが大きいと接触したときに溶融樹脂が付着し易くなり、スジ故障の原因となってしまい、リップ表面の中心線平均粗さRaが0.5μmを超えるとスジ故障の発現が著しく多くなる。よって、請求項3の発明によれば、ダイのダイリップ表面の中心線平均粗さRaが0.5μm以下であることで、請求項2の発明と同様に、更にスジ故障が発生することがないので、面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ダイのダイリップ表面の硬度が、ビッカース硬度で500以上であることを特徴とする。
これは、ダイのリップ表面の硬度が、ビッカース硬度で500未満であると、リップ表面に傷が付き易く、この傷に起因したスジ故障が発生し易くなるからである。よって、請求項4によれば、ダイリップ表面の硬度が、ビッカース硬度で500以上であることで、請求項2と請求項3の発明と同様に、更にスジ故障が発生することがないので、面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記ダイから吐出された時の環状ポリオレフィン系樹脂のゼロせん断粘度が2000Pa・sec以下であることを特徴とする。
請求項5の発明によれば、ダイから吐出された時の環状ポリオレフィン系樹脂のゼロせん断粘度が2000Pa・sec以下であることで更に面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布が顕著になることを防止することができる。尚、ゼロせん断粘度が2000Pa・secを超えてしまうと、ダイから吐出された溶融樹脂が吐出直後に大きく広がってダイの先端部に付着しやすく、これが汚れとなってスジ故障を発生しやすくなる。また、ゼロせん断粘度は、プレートコーン型の溶融粘度測定装置により溶融粘度のせん断速度依存性データを測定し、溶融粘度のせん断速度依存性の無い領域の測定値からゼロせん断速度の時の溶融粘度を外挿することによって得られる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記フィルム厚みが20〜300μm、面内のレターデーションReが20nm以下、厚み方向のレターデーションRthが20nm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、厚み精度が高く、レターデーションRe,Rthの分布が小さい光学フィルムに適した環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを製造することができるので、厚みが20〜300μm、面内のレターデーション(Re)が20nm以下、厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm以下である環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
請求項7は請求項1〜6の何れかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とする環状ポリオレフィン系樹脂フィルムであり、請求項8は請求項7の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを基材に用いたことを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルムであり、請求項9は請求項7の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板である。
請求項1〜6の製造方法で製造した環状ポリオレフィン系樹脂フィルムは高い光学特性を有しているので、液晶表示板用光学補償フィルムあるいは偏光板に適している。
本発明によれば、ダイから押し出された溶融状態の環状ポリオレフィン系樹脂を、少なくとも一方のロールが金属製の弾性ロールによって構成された2本のローラで挟んで冷却固化するので、2本のローラで挟む際に、環状ポリオレフィン系樹脂が金属製のローラで面状に押圧され、残留応力のないフィルムを製膜することができるとともに、ダイリップのクリアランス及び流量を制御することで、シート状に押し出された溶融樹脂に厚み変動やスジ故障の面質の欠陥が発生することを防止することができるので、面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法を提供することができる。
以下添付図面に従って本発明に係る環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造装置の概略構成の一例を示している。図1に示すように製造装置10は主として、延伸前の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造する製膜工程部14と、製膜工程部14で製造された環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を縦延伸する縦延伸工程部16と、横延伸する横延伸工程部18と、延伸された環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を巻き取る巻取工程部20とで構成される。
製膜工程部14では、押出機22で溶融された環状ポリオレフィン系樹脂がダイ24からシート状に吐出され、回転する一対のポリシングローラ26、28間に供給される。そして、ポリシングローラ28上で冷却されて固化した環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12がポリシングローラ28から剥離された後、縦延伸工程部16、横延伸工程部18に順に送られて延伸され、巻取工程部20でロール状に巻き取られる。これにより、延伸環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12が製造される。以下、各工程部の詳細について説明する。
図2に製膜工程部14の単軸スクリューの押出機22を示す。図2に示すように、シリンダ32内にはスクリュー軸34にフライト36を有する単軸スクリュー38が配設され、図示しないホッパーから環状ポリオレフィン系樹脂が供給口40を介してシリンダ32内に供給される。シリンダ32内は供給口40側から順に、供給口40から供給された環状ポリオレフィン系樹脂を定量輸送する供給部(Aで示す領域)と、環状ポリオレフィン系樹脂を混練・圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、混練・圧縮された環状ポリオレフィン系樹脂を計量する計量部(Cで示す領域)とで構成される。押出機22で溶融された環状ポリオレフィン系樹脂は、吐出口42からダイ24に連続的に送られる。
押出機22のスクリュー圧縮比は、2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここで、スクリュー圧縮比とは、供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さ当たりの容積÷計量部Cの単位長さ当たりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸34の外径d1、計量部Cのスクリュー軸34の外径d2、供給部Aの溝部径a1、及び計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとは、図2のシリンダ内径(D)に対するシリンダ長さ(L)の比である。また、押出温度は200〜300℃に設定される。押出機22内での温度が300℃を超える場合には、押出機22とダイ24との間に冷却機(図示せず)を設けるようにするとよい。
尚、押出機22は、1軸押出機でも2軸押出機でもよいが、スクリュー圧縮比が2.5を下回って小さすぎると、十分に混練されず、未溶解部分が発生したり、剪断発熱が小さく結晶の融解が不十分となり、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる。これにより、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を延伸したときに、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる。逆に、スクリュー圧縮比が4.5を上回って大きすぎると、剪断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに黄色みが出易くなる。また、剪断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。従って、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに黄色みが出にくく且つ延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲が良く、より好ましくは2.8〜4.2の範囲、特に好ましくは3.0〜4.0の範囲である。
また、L/Dが20を下回って小さすぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに微細な結晶が残存し易くなる。逆に、L/Dが70を上回って大きすぎると、押出機22内での環状ポリオレフィン系樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を起こし易くなる。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。従って、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに黄色みが出にくく且つ延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が良く、好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
また、押出温度が200℃を下回って低すぎると、結晶の融解が不十分となり、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに微細な結晶が残存し易くなり、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを延伸したときに、延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる。逆に、押出温度が300℃を超えて高すぎると、環状ポリオレフィン系樹脂が劣化し、黄色み(YI値)の程度が悪化してしまう。従って、製造後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムに黄色みが出にくく且つ延伸破断しにくくするためには、押出温度は200〜300℃が良く、好ましくは220〜290℃の範囲、特に好ましくは240〜280℃の範囲である。
上記の如く構成された押出機22を用いて環状ポリオレフィン系樹脂が溶融され、この溶融樹脂が図3−(A)又は図3−(B)に示したダイ24に連続的に供給される。
押出機22からダイ24に連続的に供給される溶融樹脂は、ダイ24内のマニホールド(不図示)で幅方向に拡流され、狭隘なスリット24Aを介してダイリップ24C(ダイ先端のスリット出口)から吐出される。ダイリップ24Cの表面には、スリット24Aを挟んで、リップランド24B、24Bが形成される。そして、スリット24Aのクリアランス幅であるリップクリアランスdを0.2〜1.0mmの範囲に設定するとともに、ダイリップ24Cでの樹脂流量を1時間あたり0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定する。
これは、ダイ24のリップクリアランスdが0.2mm未満のようにスリット24Aが極めて狭い場合には、ダイリップ24C出口に溶融樹脂が付着し、付着物によりスジ故障等の面質欠陥が発生し易くなるからである。また、ダイ24のリップクリアランスdが1000mmを超えると、ドロー比が高くなり過ぎ、製造された環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の厚み精度が悪くなるからである。そして、ダイリップ24Cの樹脂流量を1時間あたり0.1kg/mm2 よりも小さい場合には、生産性が著しく劣ってしまうからであり、ダイリップ24Cの樹脂流量を1時間あたり1.5kg/mm2 よりも大きい場合には、ダイリップ24Cで溶融樹脂の圧力が大きすぎることでフィルムに厚み変動やスジ故障が発生しまうからである。
更に、図3−(A)に示すダイ24のエッジ部24DのR面取り、又は、図3−(B)に示すダイ24のエッジ部24DのC面取りが30μm以下であることが好ましい。
そして、ダイリップ24C表面、即ちリップランド24B、24Bの中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であることが好ましい。
これは、溶融樹脂がダイ24から吐出圧力を有して大気中に吐出されと、溶融樹脂は僅かに膨潤するので、リップランド24B,24Bに接触し易くなるからである。従って、リップランド12a,12bの表面粗さが大きいと接触したときに溶融樹脂が付着し易くなり、スジ故障の原因になる。具体的には、リップランド12a,12bの中心線平均粗さ(Ra)が0.5μmを超えるとスジ故障の発現が多くなる。また、ダイリップ24Cのエッジ部24Dの面取りが、R面取り、C面取りのいずれの場合であっても、30μmを超えると、スジ故障の原因になる。
また、リップランド24B,24Bの硬度も、製造される環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の面質と関係があり、リップランド24B,24Bがビッカース硬度で500以上であることが好ましい。これは、ビッカース硬度で500未満であると、リップランド24B,24Bに傷が付き易く、この傷に起因したスジ故障が発生し易くなるためである。
このように形成されたダイ24の先端(下端)から溶融樹脂がシート状に吐出される。吐出されたときの環状ポリオレフィン系樹脂のゼロせん断粘度が2000Pa・sec以下であることが好ましい。ゼロせん断粘度が2000Pa・secを超えてしまうと、ダイから吐出された溶融樹脂が吐出直後に大きく広がってダイの先端部に付着しやすく、これが汚れとなってスジ故障を発生しやすくなってしまう。吐出された溶融樹脂は、一対のポリシングローラ26、28(図1参照)の間に供給される。
図3は、一対のポリシングローラ26、28の一実施形態を示したものである。一対のポリシングローラ26、28は、一方のロールが金属製の弾性ロール26、他方のロールが冷却ロール28によって構成されている。
各ポリシングローラ26、28は、表面が鏡面、或いは鏡面に近い状態になっており、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下に設定される。また、ポリシングローラ26、28は、その表面温度を制御できるように構成されており、例えばポリシングローラ26、28の内部に水等の液状媒体を循環させることによって、表面温度を制御できるようになっている。さらに、一対のポリシングローラ26、28は、モータ等の回転駆動手段に接続されており、ダイ24から吐出された溶融樹脂が着地する点での速度と略同じ速度で回転するようになっている。
一対のポリシングローラ26、28のうち、ポリシングローラ26は、もう一方のポリシングローラ28よりも小さい径で形成されており、表面が金属材から成り、その表面温度を精度良く制御できるようになっている。ポリシングローラ26は、外層から外筒44、液状媒体層46、弾性体層(内筒)48、金属シャフト50の順で構成されている。シート状の溶融樹脂を介して接触する冷却ロール28の回転により弾性ロール26の外筒44と内筒48は回転する。一対のローラ26、28でシート状の溶融樹脂を挟持すると、弾性ロール26がシート状の溶融樹脂を介して冷却ロール28からの反力を受け、冷却ロール28の面に倣って凹状に弾性変形する。従って、弾性ロール26と冷却ロール28はシートに対して面接触するとともに、弾性変形した弾性ロール26の形状が元に戻る復元力によって、挟持されたシートは面状に押圧されながら、冷却ロール28で冷却される。外筒44は、金属薄膜で作られており、溶接継ぎ部のないシームレス構造であることが好ましい。また、外筒44の肉厚Zは、0.05mm<Z<7.0mmの範囲であることが好ましい。肉厚Zが0.05mm以下であると外筒が圧力に耐え切れず面が出なく、7.0mm以上であると弾性が得られず歪みの解消効果が出ない。尚、外筒肉厚Zは0.05mm<Z<7.0mmを満たせば問題ないが、0.2mm<Z<5.0mmであることがより好ましい。
また、環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度Tg(℃)− 弾性ロール26の温度(℃)をX(℃)、ライン速度をY(m/min)とした時、0.0043X2 +0.12X+1.1<Y<0.019X2 +0.73X+24、を満たすようにライン速度Yとポリシングローラ(弾性ロール)26の温度を設定することが好ましい。ライン速度Yが0.0043X2 +0.12X+1.1以下となると押圧する時間が長すぎてフィルムの歪みが発現してしまい、ライン速度Yが0.019X2 +0.73X+24以上になると冷却する時間が短かすぎてフィルムを除冷することができず弾性ロールへ貼り付いてしまうからである。
更に、一対のポリシングローラ26、28の弾性ロール26と冷却ロール28とが接触している長さをQ(cm)、弾性ロール26と冷却ロール28との線圧をP(kg/cm)とした時、3kg/cm2 <P/Q<50kg/cm2 、を満たすように線圧Pと接触長さQを設定することが好ましい。P/Qが3kg/cm2 以下であると面状に接触することができず、P/Qが50kg/cm2 以上であるとフィルムの歪みが発現してしまうからである。
上記の如く構成された製膜工程部14によれば、ダイ24から環状ポリオレフィン系樹脂を吐出することにより、吐出された環状ポリオレフィン系樹脂が一対のポリシングローラ26、28間で極く僅かな液溜まり(バンク)を形成し、この環状ポリオレフィン系樹脂が一対のポリシングローラ26、28で挟圧されて厚みが調整されながらシート状になる。その際、金属製の弾性ロールであるポリシングローラ26が、環状ポリオレフィン系樹脂の反力を受けて弾性変形し、環状ポリオレフィン系樹脂はポリシングローラ26によって面状に押圧される。したがって、面状に押圧されることで、残留応力のないフィルムを製膜することができるとともに、ダイ24のリップクリアランス及び流量を制御することで、シート状に押し出された溶融樹脂に厚み変動やスジ故障の面質の欠陥が発生することを防止することができるので、面状で押圧してもレターデーションRe,Rthの分布のない光学フィルムに適した環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造することができる。
また、上記の如く構成された製膜工程部14によれば、フィルム厚みが20〜300μm、面内のレターデーションReが20nm以下、厚み方向のレターデーションRthが20nm以下である環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造することができる。
ここで、レターデーションRe、Rthは、以下の式で求められる。
Re(nm)=|n(MD)−n(TD)|×T(nm)
Rth(nm)=|{(n(MD)+n(TD))/2}−n(TH)|×T(nm)
式中のn(MD)、n(TD)、n(TH)は長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率を示し、Tはnm単位で表した厚みを示す。
そして、一対のポリシングローラ26、28で挟圧されたフィルム12は、金属製のポリシングローラ28に巻きかけられて冷却された後、ポリシングローラ28の表面から剥離され、後段の縦延伸工程部16に送られる。
以下に、製膜工程部14で製造した環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を延伸し、延伸環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造するまでの延伸工程について説明する。
環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の延伸は、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12中の分子を配向させ、面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させるために行われる。
図1に示すように、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12は、先ず、縦延伸工程部16で長手方向に縦延伸される。縦延伸工程部16では、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12が予熱された後、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12が加熱された状態で、二つのニップロール30、31に巻き掛けられる。出口側のニップロール31は、入口側のニップロール30よりも早い搬送速度で環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を搬送しており、これによって、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12が縦方向に延伸される。
縦延伸工程部16における予熱温度はTg−40℃以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg−20℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。また、縦延伸工程部16の延伸温度は、Tg以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg+2℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+5℃以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。縦方向の延伸倍率は1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上、2倍以下がさらに好ましい。
縦延伸された環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12は、横延伸工程部18に送られ、幅方向に横延伸される。横延伸工程部18では例えばテンターを好適に用いることができ、このテンターによって環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に延伸する。この横延伸によって、レターデーションRthを一層大きくすることができる。
横延伸は、テンターを用いて実施するのが好ましく、好ましい延伸温度はTg以上、Tg+60℃以下が好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg+4℃以上、Tg+30℃以下である。延伸倍率は1.0倍以上、2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上2.0倍以下がさらに好ましい。横延伸の後に縦、横のいずれか、または両方に緩和させることも好ましい。これにより幅方向の遅相軸の分布を小さくすることができる。
このような延伸により、Reが0nm以上、500nm以下、より好ましくは10nm以上、400nm以下、さらに好ましくは15nm以上、300nm以下、Rthが0nm以上、500nm以下、より好ましくは50nm以上、400nm以下、さらに好ましくは70nm以上、350nm以下である。
このうちRe≦Rthを満足するものがより好ましく、さらに好ましくはRe×2≦Rthを満足するものがさらに好ましい。このような高Rth、低Reを実現するためには、上述のように縦延伸したものを、横(幅)方向に延伸するのが好ましい。即ち、縦方向と横方向の配向の差が面内のレターデーションの差(Re)となるが、縦方向に加えその直交方向である横方向にも延伸することで、縦横の配向の差を小さくし面配向(Re)を小さくできる。一方、縦に加え横にも延伸することで面積倍率は増加するため、厚みの減少に伴い厚み方向の配向は増加し、Rthを増加させることができるためである。
さらに、Re,Rthの幅方向、長手方向の場所による変動をいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることが好ましい。
上述したように本実施の形態によれば、製膜工程部14でスジ故障がなく、厚み精度が高く、且つ、歪みの小さい環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造することができ、この環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を縦方向、横方向に延伸を施すので、延伸分布のない環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12を製造することができる。
延伸後の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12は、図1の巻取工程部20でロール状に巻き取られる。その際、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12の巻取りテンションは、0.02kg/mm2 以下とすることが好ましい。巻取りテンションをこのような範囲に設定することによって、延伸環状ポリオレフィン系樹脂フィルム12にレターデーション分布を発生させることなく巻き取ることができる。
《環状ポリオレフィン系樹脂》
本発明は、本発明における環状ポリオレフィン系樹脂(シクロオレフィン樹脂)として、後述するシクロオレフィン樹脂−A、および、シクロオレフィン樹脂−Bのいずれも好ましく用いることができる。
(シクロオレフィン樹脂−A/開環重合型)
本発明で使用するシクロオレフィン系樹脂(シクロオレフィン樹脂−A)としては、例えば、(1)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を、必要に応じてマレイン酸付加、シクロペンタジエン付加のごときポリマー変性を行なった後に、水素添加した樹脂、(2)ノルボルネン系モノマーを付加型重合させた樹脂、(3)ノルボルネン系モノマーとエチレンやα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーと付加型共重合させた樹脂などが挙げることができる。重合方法および水素添加方法は、常法により行なうことができる。
前記ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンとテトラヒドロインデン等との付加物;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン;等が挙げられる。
(シクロオレフィン系樹脂−B/開環重合型)
また、シクロオレフィン系樹脂として、下記一般式(1)〜(4)で表わされるものを挙げることができ、これらのうち、下記一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
Figure 2008307831
〔一般式(1)〜(4)中、A、B、CおよびDは、水素原子または1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。〕
これらのシクロオレフィン樹脂の重量平均分子量としては、通常5,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは8,000〜200,000である。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報などに記載されている樹脂などを挙げることができる。
これらの樹脂の中でも、ノルボルネン系モノマーを付加重合して得られるものが特に好ましい。
これらのシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は80℃以上230℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは120℃以上180℃以下である。飽和吸水率は1質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.8質量%以下とされる。前記一般式(1)〜(4)で表わされるシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)および飽和吸水率は、置換基A、B、C、Dの種類を選択することにより制御することができる。
本発明におけるシクロオレフィン樹脂としては、下記一般式(5)で表わされる少なくとも1種のテトラシクロドデセン誘導体を単独で、あるいは、当該テトラシクロドデセン誘導体と、これと共重合体可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体を用いてもよい。
Figure 2008307831
(式中、A、B、CおよびDは、水素原子または1価の有機基を示し、これらのうち少なくとも1つは極性基である。)
前記一般式(5)で表わされるテトラシクロドデセン誘導体において、A、B、CおよびDのうち少なくとも1つが極性基であることにより、他の材料との密着性、耐熱性などに優れた偏光フィルムを得ることができる。さらに、この極性基が−(CH2nCOOR(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、nは0〜10の整数を示す。)で表わされる基であることが、最終的に得られる水添重合体(偏光フィルムの基材)が高いガラス転移温度を有するものとなるので好ましい。特に、この−(CH2nCOORで表わされる極性置換基は、一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体の1分子あたりに1個含有されることが吸水率を低下させる点から好ましい。前記極性置換基において、Rで示される炭化水素基の炭素数が多くなるほど得られる水添重合体の吸湿性が小さくなる点では好ましいが、得られる水添重合体のガラス転移温度とのバランスの点から、当該炭化水素基は、炭素数1〜4の鎖状アルキル基または炭素数5以上の(多)環状アルキル基であることが好ましく、特にメチル基、エチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
さらに、−(CH2nCOORで表わされる基が結合した炭素原子に、炭素数1〜10の炭化水素基が置換基として結合されている一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、得られる水添重合体の吸湿性が低いものとなるので好ましい。特に、この置換基がメチル基またはエチル基である一般式(5)のテトラシクロドデセン誘導体は、その合成が容易な点で好ましい。具体的には、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4,4,0,12.5,17.10〕ドデカ−3−エンが好ましい。これらのテトラシクロドデセン誘導体、およびこれと共重合可能な不飽和環状化合物の混合物は、例えば特開平4−77520号公報第4頁右上欄12行〜第6頁右下欄第6行に記載された方法によってメタセシス重合、水素添加することができる。
これらのシクロオレフィン系樹脂は、クロロホルム中、30℃で測定される固有粘度(ηinh)が、0.1〜1.5dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.2dl/gである。また、水添重合体の水素添加率としては、60MHz、1H−NMRで測定した値が50%以上とされ、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上である。水素添加率が高いほど、得られるシクロオレフィンフィルムは、熱や光に対する安定性が優れたものとなる。該水添重合体中に含まれるゲル含有量が5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下である。
さらに下記構造のシクロオレフィン樹脂(付加重合型)を本発明のフィルムに使用することができる。本発明では、シクロオレフィン樹脂として、[A-1]:炭素原子数が2〜20のα-オレフィンと下記式(I)で表される環状オレフィンとのランダム共重合体の水素添加物、[A-2]:下記式(I)で表される環状オレフィンの開環重合体または共重合体の水素添加物などを挙げることができる。
Figure 2008307831
これらのシクロオレフィン樹脂は、DSCで測定したガラス転移温度(Tg)が、70℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは70〜250℃であり、特に120〜180℃が好ましい。
また、これらのシクロオレフィン樹脂は、非晶性または低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下である。
また、本発明のシクロオレフィンは、135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、通常0.01〜20dl/gであり、好ましくは0.03〜10dl/g、さらに好ましくは0.05〜5dl/gであり、ASTM D1238に準じ260℃荷重2.16kgで測定した溶融流れ指数(MFR)は、通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは1〜100g/10分、さらに好ましく5〜50g/10分である。
さらに、シクロオレフィン樹脂の軟化点は、サーマルメカニカルアナライザー(TMA)で測定した軟化点として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80〜260℃である。
上記式(I)で表わされるシクロオレフィン樹脂の構造の詳細について述べる。
上記式(I)中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、R a およびR b は、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
1 〜R 18 ならびにR a およびR b は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。さらに上記式(I)において、R 1 5 〜R 18 がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。
上記式(I)で示される環状オレフィンを、より具体的に次に例示する。一例として、
Figure 2008307831
で示されるビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(=ノルボルネン)(上記一般式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)および該化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5-メチル、5,6-ジメチル、1-メチル、5-エチル、5-n-ブチル、5-イソブチル、7-メチル、5-フェニル、5-メチル-5-フェニル、5-ベンジル、5-トリル、5-(エチルフェニル)、5-(イソプロピルフェニル)、5-(ビフェニル)、5-(β-ナフチル)、5-(α-ナフチル)、5-(アントラセニル)、5,6-ジフェニルなどを例示することができる。
さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン、2-メチルトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン、5-メチルトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセンなどのトリシクロ[4.3.0.1 2,5 ]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセン、10-メチルトリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセンなどのトリシクロ[4.4.0.1 2,5 ]-3-ウンデセン誘導体、
Figure 2008307831
で示されるテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]-3-ドデセン、およびこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その炭化水素基として、8-メチル、8-エチル、8-プロピル、8-ブチル、8-イソブチル、8-ヘキシル、8-シクロヘキシル、8-ステアリル、5,10-ジメチル、2,10-ジメチル、8,9-ジメチル、8-エチル-9-メチル、11,12-ジメチル、2,7,9-トリメチル、2,7-ジメチル-9-エチル、9-イソブチル-2,7-ジメチル、9,11,12-トリメチル、9-エチル-11,12-ジメチル、9-イソブチル-11,12-ジメチル、5,8,9,10-テトラメチル、8-エチリデン、8-エチリデン-9-メチル、8-エチリデン-9-エチル、8-エチリデン-9-イソプロピル、8-エチリデン-9-ブチル、8-n-プロピリデン、8-n-プロピリデン-9-メチル、8-n-プロピリデン-9-エチル、8-n-プロピリデン-9-イソプロピル、8-n-プロピリデン-9-ブチル、8-イソプロピリデン、8-イソプロピリデン-9-メチル、8-イソプロピリデン-9-エチル、8-イソプロピリデン-9-イソプロピル、8-イソプロピリデン-9-ブチル、8-クロロ、8-ブロモ、8-フルオロ、8,9-ジクロロ、8-フェニル、8-メチル-8-フェニル、8-ベンジル、8-トリル、8-(エチルフェニル)、8-(イソプロピルフェニル)、8,9-ジフェニル、8-(ビフェニル)、8-(β-ナフチル)、8-(α-ナフチル)、8-(アントラセニル)、5,6-ジフェニル等を例示することができる。
さらには、(シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などのテトラシクロ[4.4.0.1 2,5 .1 7,10 ]-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1 3,6 .0 2,7 .0 9,13 ]-4-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1 2,5 .1 9,12 .0 8,13 ]-3-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.1 2,5 .1 9,12 .0 8,13 ]-3-ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1 3,6 .0 2,7 .0 9,14 ]-4-ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1 3,6 .1 10,13 .0 2,7 .0 9,14 ]-4-ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,17 .0 3,8 .0 12,16 ]-5-エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1 3,6 .1 10,17 .1 12,15 .0 2,7 .0 11,16 ]-4-エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .0 3,8 .0 12,17 ]-5-ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1 2,9 .1 4,7 .1 11,18 .1 13,16 .0 3,8 .0 12, 17 ]-5-ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1 4,7 .1 13,20 .1 15,18 .0 2, 10 .0 3,8 .0 12,21 .0 14,19 ]-5-ペンタコセンおよびその誘導体などが挙げられる。
これらのシクロオレフィン樹脂の具体例は、上記した通りであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7-145213号公報明細書の段落番号[0032]〜[0054]に示されている。
また、これらのシクロオレフィン樹脂の合成法については、特開2001-114836号公報明細書の段落番号[0039]〜[0068]を参考に実施することができる。
また本発明のシクロオレフィン樹脂(付加重合型)として下記のものも使用可能である。
下式I,II,II’,III,IV,V又はVI
Figure 2008307831
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7及びR8は、同じか又は異なっていて、水素、例えば線状又は枝分れC1〜C8-アルキル基、C6〜C18-アリール基、C7〜C20-アルキレンアリール基、環式又は非環式C2〜C20-アルケニル基のようなC1〜C20-炭化水素基であり、もしくは飽和、不飽和又は芳香族の環を形成し、また同じ基R1〜R8は、異なる式I〜VIにおいて異なっていても良く、またnは、0〜5である)で表される少なくとも一種類の環式オレフィンの重合単位、及び、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0〜99モル%の、下式VII
Figure 2008307831
(式中、R9,R10,R11及びR12は、同じか又は異なっていて、水素、例えばC1〜C8-アルキル基又はC6〜C18-アリール基のような線状又は枝分れ、飽和又は不飽和のC1〜C20-炭化水素基である)で表される一種類以上の非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むポリマーから成る組から選択される少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーであっても良い。
また、シクロオレフィンポリマーは、式I〜VIを有するモノマーの少なくとも一種類を開環重合し、次に得られた生成物を水素化することによって得ることもできる。
また、更に、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として0〜45モル%の、下式VIII
Figure 2008307831
(式中、nは2〜10の数である)で表される一種類以上の単環式オレフィンから誘導される重合単位を含むことができる。
環式、特に多環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは3〜75モル%である。非環式オレフィンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、好ましくは5〜80モル%である。
シクロオレフィンコポリマーは、好ましくは、一種類以上の多環式オレフィン、特に式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び、式VIIで表される一種類以上の非環式オレフィン、特に2〜20個の炭素原子を有するα-オレフィンから誘導される重合単位から成っている。好ましくは、特に、式I又は式IIIで表される多環式オレフィンから誘導される重合単位、及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導される重合単位から成るシクロオレフィンコポリマーである。好ましくは、更に、式I又は式IIIで表される多環式モノオレフィンから誘導される重合単位、式VIIで表される非環式モノオレフィンから誘導される重合単位、及び少なくとも二つの二重結合を含む環式又は非環式オレフィン(ポリエン)、例えばノルボルナジエンのような特に環式、好ましくは多環式のジエン、特に好ましくは例えばC2〜C20-アルケニル基を運ぶビニルノルボルネンのような多環式アルケンから誘導される重合単位から成るターポリマーである。
本発明にしたがうシクロオレフィンポリマーは、好ましくはノルボルネン構造をベースとするオレフィン、特に好ましくはノルボルネン、テトラシクロドデセン、所望ならば、ビニルノルボルネン又はノルボルナジエンを含む。また、好ましくは、例えば2〜20個の炭素原子を有するα-オレフィン、特に好ましくはエチレン又はプロピレンのような末端二重結合を有する非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むシクロオレフィンコポリマーである。特に好ましくは、ノルボルネン・エチレンコポリマー及びテトラシクロドデセン・エチレンコポリマーである。
ターポリマーの中では、特に好ましくは、ノルボルネン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、ノルボルネン・ノルボルナジエン・エチレンターポリマー、テトラシクロドデセン・ビニルノルボルネン・エチレンターポリマー、及びテトラシクロドデセン・ビニルテトラシクロドデセン・エチレンターポリマーである。ポリエン、好ましくはビニルノルボルネン又はノルボルナジエンから誘導される重合単位の割合は、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜50モル%、特に好ましくは0.1〜20モル%であり、式VIIで表される非環式モノオレフィンの割合は、0〜99モル%、好ましくは5〜80モル%である。上記ターポリマーでは、シクロオレフィンコポリマーの全構造を基準として、0.1〜99モル%、好ましくは3〜75モル%である。
好ましくは、本発明にしたがうシクロオレフィンコポリマーは、式Iで表される多環式オレフィンから誘導することができる重合単位及び式VIIで表される非環式オレフィンから誘導することができる重合単位を含む少なくとも一種類のシクロオレフィンコポリマーを含む。
このようなシクロオレフィンコポリマーは特開平10-168201の段落番号[0019]〜[0020]に従い合成することができる。
(添加剤)
(1)酸化防止剤
本発明におけるシクロオレフィン系樹脂には、公知の酸化防止剤、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]、2,4,8,10−テトラオキスピロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト;紫外線吸収剤、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどを添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で滑剤などの添加剤を添加することもできる。
これらの酸化防止剤の添加量は、シクロオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常0.1〜3質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
さらにシクロオレフィン系樹脂には、所望により、フェノール系やリン系などの老化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤などの各種添加剤を添加してもよい。
(2)安定剤
本発明では、安定剤としてホスファイト系化合物、亜リン酸エステル系化合物のいずれか、もしくは両方を用いることが好ましい。これらの安定剤の配合量は、シクロオレフィン樹脂に対して0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.3質量%である。
(i)ホスファイト系安定剤
具体的なホスファイト系安定剤は、特に限定されないが、式(2)〜(4)で示されるホスファイト系安定剤が好ましい。
Figure 2008307831
Figure 2008307831
Figure 2008307831
前記各式中、R1、R2,R3、R4、R5、R6、R’1、R’2、R’3・・・R’p、R’p+1は水素または炭素数4〜23のアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アルコキシアリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ポリアリールオキシアルキル基、ポリアルコキシアルキル基およびポリアルコキシアリール基から成る群から選択された基を示す。但し、一般式(2)(3)(4)の各同一式中で全てが水素になることはない。一般式(3)中で示されるホスファイト系安定剤中のXは脂肪族鎖、芳香核を側鎖に有する脂肪族鎖、芳香核を鎖中に有する脂肪族鎖および前記鎖中に2個以上連続しない酸素原子を包含する鎖から成る群から選択された基を示す。また、k、qは1以上の整数、pは3以上の整数を示す。)
これらのホスファイト系安定剤のk、qの値は好ましくは1〜10である。k、qの値を1以上にすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。また、また、pの値は3〜10が好ましい。pを3以上の値とすることで加熱時の揮発性が小さくなり、10以下にすることでセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性が向上するため好ましい。
下記一般式(2)で表されるホスファイト系安定剤の具体例としては、下記式(5)〜(8)で表されるものが好ましい。
Figure 2008307831
Figure 2008307831
Figure 2008307831
Figure 2008307831
また、下記一般式(3)で表されるホスファイト系安定剤の具体例としては、下記式(9)(10)(11)で表されるものが好ましい。
Figure 2008307831
Figure 2008307831
Figure 2008307831
(ii)亜リン酸エステル系安定剤
前記亜リン酸エステル系安定剤は、例えばサイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
(iii)その他の安定剤
その他、弱有機酸、チオエーテル系化合物、エポキシ化合物等を安定剤として配合してもよい。
弱有機酸とは、pKaが1以上のものであり、本発明の作用を妨害せず、着色防止性、物性劣化防止性を有するものであれば特に限定されない。例えば酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
チオエーテル系化合物としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、パルミチルステアリルチオジプロピオネートが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
エポキシ化合物としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAより誘導されるものが挙げられ、エピクロルヒドリンとグリセリンからの誘導体やビニルシクロヘキセンジオキサイドや3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの如き環状のものも用いることができる。また、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油や長鎖−α−オレフィンオキサイド類なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
(3)マット剤
また、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次、2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
前記微粒子の好ましい添加量はシクロオレフィン樹脂に対し質量比で1ppm〜5000ppmが好ましく、より好ましくは5ppm〜1000ppm、さらに好ましくは10ppm〜500ppmである。
微粒子はケイ素を含むものが濁度を低くできることから好ましく、特に、二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であることから、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
(4)その他の添加剤
その他の添加剤として、赤外吸収染料、光学調整剤、界面活性剤を加えることができる。これらの詳細は、発明協会公開技法公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会),p.17−22に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報のものが使用でき、紫外線吸収剤としては例えば特開平2001−151901号公報に記載のものが使用でき、それぞれセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば特開2001−166144号公報、特開2003−344655号公報、特開2003−248117号公報、特開2003−66230号公報記載のものを使用することができる。これにより面内のレターデーション(Re),厚み方向のレターデーション(Rth)を制御できる。好ましい添加量は、 セルロースアシレートに対して、0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾル系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤などを用いることができ、それらの中でもベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、添加量は、通常10〜100,000ppm、好ましくは100〜10,000ppmである。
《製膜》
(1)ペレット化
前記熱可塑性樹脂と添加物とは溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化を行うにあたり熱可塑性樹脂および添加物は事前に乾燥を行うことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、乾燥を代用することも出来る。乾燥を行う場合、前記乾燥方法としては、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることが出来るが、この限りではない。ペレット化は前記熱可塑性樹脂と添加物を2軸混練押出機を用い150℃〜280℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作製することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。
好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmがこのましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
またペレット化を行う時に、前記添加物は押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することも出来る。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。これより、回転速度が遅くなると滞留時間が長くなり、熱劣化により分子量が低下したり、黄色味が悪化しやすくなる為、好ましくない。また回転速度が速すぎると剪断により分子の切断がおきやすくなり、分子量低下を招いたり、架橋ゲルの発生は増加するなどの問題が生じやすくなる。
ペレット化における押出滞留時間は10秒間以上、30分間以内、より好ましくは、15秒間〜10分間、さらに好ましくは30秒〜3分間である。十分に溶融が出来れば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることが出来る点で好ましい。
(2)乾燥
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。乾燥の方法については、除湿風乾燥機を用いて乾燥する事が多いが、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されない(加熱、送風、減圧、攪拌などの手段を単独または組み合わせで用いることで効率的に行うことが好ましい、さらに好ましくは、乾燥ホッパ−を断熱構造にする事が好ましい)。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは60〜150℃である。乾燥温度が低過ぎると乾燥に時間がかかるだけでなく、含有水分率が目標値以下にならず好ましくない。一方、乾燥温度が高過ぎると樹脂が粘着してブロッキングして好ましくない。乾燥風量として好ましくは20〜400m3/時間で有り、さらに好ましくは50〜300m3/時間、特に好ましくは100〜250m3/時間である。乾燥風量が少ないと乾燥効率が悪く好ましくない。一方、風量を多くしても一定量以上あれば乾燥効果の更なる向上は小さく経済的でない。エアーの露点として、好ましくは0〜−60℃で有り、さらに好ましくは−10〜−50℃、特に好ましくは−20〜−40℃である。乾燥時間は少なくとも15分以上必要で有り、さらに好ましくは、1時間以上、特に好ましくは2時間以上である。一方、50時間を超えて乾燥させても更なる水分率の低減効果は少なく、樹脂の熱劣化の懸念が発生するため乾燥時間を不必要に長くすることは好ましくない。本発明の熱可塑性樹脂は、その含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましい。
(3)溶融押出し
上述したシクロオレフィン樹脂は押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。シリンダー内は供給口側から順に、供給口から供給した熱可塑性樹脂を定量輸送する供給部(領域A)と熱可塑性樹脂を溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮された熱可塑性樹脂を計量する計量部(領域C)とで構成される。樹脂は上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち供給部Aの単位長さあたりの容積÷計量部Cの単位長さあたりの容積で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は200〜300℃に設定される。押出し機内の温度は全部同温度でもよく、温度分布をつけても良い。より好ましいのが供給部の温度を圧縮部の温度より高くするものである。
スクリュー圧縮比が2.5を下回って小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生し、製造後の熱可塑性フィルムに未溶解異物が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる。これにより、熱可塑性フィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に破断し易くなり、配向を十分に上げることが出来なくなる。逆に、スクリュー圧縮比が4.5を上回って大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後の熱可塑性フィルムに黄色味が出易くなる。また、せん断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後の熱可塑性フィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲がよく、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
また、L/Dが20を下回って小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後の熱可塑性フィルムに未溶解異物が発生し易くなる。逆に、L/Dが70を上回って大き過ぎると、押出機内での熱可塑性樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり、分子量が低下して熱可塑性フィルムの機械的強度が低下する。したがって、製造後の熱可塑性フィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
このようにして得られたシクロオレフィンフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、シクロオレフィン樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは高価であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出が出来る二軸押出機を用いることが可能である、二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのシクロオレフィンペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。また、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することも出来る。
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によってことなるが、10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。
(4)濾過
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。この際、上記のように濾材の孔径、溶融樹脂の流速の調整により達成できる。
濾過はさらに精度高く異物濾過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1カ所設けて行うことができ、また複数カ所設けて行う多段濾過でもよい。フィルター濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μmm〜3μmmが好ましくさらに好ましくは10μmm〜3μmmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧,フィルターライフの適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
(5)ギアポンプ
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスとの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースアシレート樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることが出来る。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分間〜60分間であり、より好ましくは3分間〜40分間であり、さらに好ましくは4分間〜30分間である。
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、熱可塑性樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分が熱可塑性樹脂の劣化の原因となるため、滞留の出来るだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等とをつなぐポリマー管やアダプタについても、出来るだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高い熱可塑性樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動を出来るだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに上述のように押出し機内で、押出し機のバレルを3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
(6)ダイ
前記の如く構成された押出機によって熱可塑性樹脂が溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍がよく、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍小さい場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難である。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍を超えて大きい場合にはシートの厚み精度が低下するため好ましくない。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整が厳密にコントロール出来るものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、製膜フィルムの均一性を向上するために、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラの出来るだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
(7)キャスト
上記条件にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。
本発明ではキャスティングドラム上で静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましいが、中でも上述のタッチロール法を用いるのが好ましい。
タッチロール法は、キャストドラム上にタッチロールを置いてフィルム表面を整形するものである。この時、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。しかし、弾性変形可能な部材(ゴムなど)を極めて薄い金属で被覆したものでは面圧を高くできず(タチロールの変形量が大きく、キャストロールとの接触面積が大きくなりすぎ、十分な面圧をだすことが出来ないため)好ましくない。本発明のタッチロールの肉厚は0.5mm以上7mm以下、より好ましくは1.1 〜6mm、さらに好ましくは 1.5〜5mmである。タッチロール、キャスティングロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。タッチロールの好ましい面圧は0.1MPa以上10MPa以下、より好ましく0.2MPa以上7MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以上5MPa以下である。ここで云う面圧とはタッチロールを押し付けている力を熱可塑性フィルムとタッチロールの接触面積で割った値である。
タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。タッチロールの温度はいずれもTg−10℃を超えTg+30℃以下が好ましく、より好ましくはTg−7℃以上Tg+20℃以下、さらに好ましくはTg−5℃以上Tg+10℃以下である。キャスティングロールの温度も同様の温度域が好ましい。
タッチロールは具体的には例えば特開平11−314263号公報、特開平11−235747号公報記載のタッチロールを利用できる。
また、キャスティングドラム(ロール)は複数本用いて徐冷することがより好ましい(このうち前記タッチロールを用いるのは最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する)。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましくより好ましくは、100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。またキャストロールの最上流側のライン速度は20m/分以上70m/分以下とするのが好ましい。
(8)巻取り
キャスティングドラムから剥ぎ取った後、ニップロールを経て巻き取る。
製膜幅は0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mが好ましい。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは20μm〜250μmが好ましく、より好ましくは25μm〜200μm、さらに好ましくは30μm〜180μmである。
また巻取り前に、両端をトリミングすることも好ましい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼何れを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜200μmが好ましく、より好ましくは10μm〜150μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mm、さらに好ましくは5mm〜20mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
このようにして製膜したフィルムは、そのまま延伸しても良く(オンライン延伸)、一旦巻き取った後、再度送り出して延伸(オフライン延伸)しても良い。
巻き取る際は、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜200μmが好ましく10μm〜150μmが好ましく、15μm〜100μmが好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、さらに好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が1kg/m幅より小さい場合には、フィルムを均一に巻き取ることが困難である。逆に、巻き取り張力が50kg/幅を超える場合には、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じるため好ましくない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
《延伸工程》
溶融製膜したシクロオレフィンフィルムは横延伸、縦延伸を行っても良く、さらにこれらと組み合わせて緩和処理をおこなっても良い。これらは例えば以下の組合せで実施できる。
1.横延伸
2.横延伸→緩和処理
3.縦延伸→横延伸
4.縦延伸→横延伸→緩和処理
5.縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
6.横延伸→縦延伸→緩和処理
7.横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
8.縦延伸→横延伸→縦延伸
9.縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
10.縦延伸
11.縦延伸→緩和処理
これらの中でより好ましいのが、1〜4、10〜11であり、さらに好ましいのが2、4、11である。これらの中でより好ましいのが、1〜4であり、さらに好ましいのが2、4である。
以下に述べる本発明の延伸を行うことで本発明の尾びきスジをより効率的に低減でき、かつ破断伸度も向上させることができる。延伸によりフィルムが薄くなる際、尾びき部分の厚みも減少し数が減少するが、通常の延伸法では延伸の応力は弱いところに集中し易く、厚みが少し厚くなった尾びき部は延伸されにくい。これに対し本発明の延伸法では面内に均一に延伸応力を加えられるため、尾びき部も正常部も同様に延伸されるため、より効率的の尾びき故障を減少させることができる。さらにこのような均一な延伸により、フィルム内で丸まっていた分子を効率的に引き延ばすことができ、この結果分子間で絡み合いを形成することができ、破断強度を向上させる効果も有する。
(縦延伸)
本発明では横延伸に縦延伸を組み合わせて行うことも好ましい。この場合、縦延伸後の横延伸を行うのがより好ましい。
縦延伸は2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/W(縦横比と称する)が2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、縦横比が0.01以上0.3以下(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用しても良いが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
(1-1)長スパン延伸
延伸に伴いフィルムは伸張されるが、この時フィルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。このときニップロールとフィルム間の摩擦により幅方向の収縮が制限される。このためニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制できる。厚み減少が大きいとフィルムが厚み方向に圧縮されたことと同じ効果があり、フィルム面内に分子配向が進みRthが大きくなり易い。縦横比が大きく厚み減少が少ないとこの逆でRthは発現し難く低いRthを実現できる。
さらに縦横比が長いと幅方向の均一性を向上することができる。これは以下の理由による。
・縦延伸に伴いフィルムは幅方向に収縮しようとする。幅方向中央部では、その両側も幅方向に収縮しようとするため、綱引き状態となり自由に収縮できない。
・一方フィルム幅方向端部は片側としか綱引き状態とならず、比較的自由に収縮できる。
・この両端と中央部の延伸に伴う収縮挙動の差が幅方向の延伸ムラとなる。
このような両端と中央部の不均一性により、幅方向のレターデーションむら、軸ズレ(遅相軸の配向角分布)が発生する。これに対し、長スパン延伸は長い2本のニップロール間でゆっくり延伸されるため、延伸中にこれらの不均一性の均一化(分子配向が均一になる)が進行する。これに対し、通常の縦延伸(縦横比=0.3を超え2未満)では、このような均一化は発生しない。
縦横比は2を越え50以下が好ましく、より好ましくは3〜40、さらに好ましくは4〜20である。好ましい延伸温度は(Tg-5℃)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は1.05〜3倍であり、より好ましくは1.05〜1.7倍、さらに好ましくは1.05〜1.4倍である。このような長スパン延伸は3対以上ニップロールで多段延伸しても良く、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていれば良い。
このような長スパン延伸は所定の距離離した2対のニップロールの間でフィルムを加熱して延伸すればよく、加熱方法はヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等をフィルム上や下に設置し輻射熱で加熱)でも良く、ゾーン加熱法(熱風等を吹き込み所定の温度に調温したゾーン内で加熱)でも良い。本発明では延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。この時、ニップロールは延伸ゾーン内に設置しても良く、ゾーンの外に出しても良いが、フィルムとニップロールの粘着を防止するためにはゾーンの外に出すのが好ましい。このような延伸の前にフィルムを予熱することも好ましく、予熱温度はTg−80℃以上Tg+100℃以下である。
このような延伸により、Re値が、0〜200nm、より好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは15nm〜100nm、Rth値が30〜500nm、より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは70〜350nmである。この延伸法により、RthとReの比(Rth/Re)を0.4〜0.6、より好ましくは0.45〜0.55とすることができる。このような特性のフィルムはAプレート型位相差板として使用できる。さらに本延伸により、Re値およびRth値のばらつきがいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることができる。
このような延伸に伴い、延伸前後のフィルム幅の比(延伸後のフィルム幅/延伸前のフィルム幅)は0.5〜0.9、より好ましくは0.6〜0.85、さらに好ましくは0.65〜0.83となる。
(1-2)短スパン延伸
縦横比(L/W)を0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で縦延伸(短スパン延伸)を行う。このような範囲の縦横比(L/W)で延伸を行うことで、ネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくすることができる。延伸方向の伸張を補うため幅、厚みが減少するが、このような短スパン延伸では幅収縮が抑制され厚み減少が優先的に進む。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進む。この結果厚み方向の異方性の尺度であるRthが増大し易い。一方、従来は縦横比(L/W)が1前後(0.7〜1.5)で行われるのが一般的であった。これは、通常ニップロール間に加熱用ヒーターを設置して延伸するが、L/Wが大きくなりすぎるとヒーターでフィルムを均一に加熱できず延伸むらが発生し易く、L/Wが小さすぎるとヒーターが設置しにくく加熱が十分に行えないためである。
上述の短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる。これに伴いニップロール間に加熱用ヒーターは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフィルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フィルムを延伸前に加熱することも好ましい。
好ましい延伸温度は(Tg-5℃)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃であり、好ましい予熱温度はTg−80℃以上Tg+100℃以下である。
(横延伸)
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg−5℃以上Tg+45℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であっても良いが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃以上50℃以下、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃以上50℃以下、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以上低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
このように熱固定温度<延伸温度<予熱温度であることが好ましい。
このような予熱、熱固定により配向角やRe,Rthのバラツキを小さくできるのは下記理由による。
・フィルムは幅方向に延伸され、直行方向(長手方向)に細くなろうとする(ネックイン)。このため横延伸前後のフィルムが引っ張られ応力が発生する。しかし幅方向両端はチャックで固定されており応力により変形を受けにくく、幅方向の中央部は変形を受け易い。この結果、ネックインによる応力は弓(bow)状に変形しボーイングが発生する。これにより面内のRe,Rthむらや配向軸の分布が発生する。
・これを抑制するために、予熱側(延伸前)の温度を高くし、熱処理(延伸後)の温度を低くすると、ネックインはより弾性率の低い高温側(予熱)で発生し、熱処理(延伸後)では発生しにくくなる。この結果、延伸後のボーイングを抑制できる。
このような延伸によりさらに、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を90°±5°以下または0°±5°以下とする事ができ、より好ましくは90°±3°以下または0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下または0°±1°以下とすることができる。
本発明ではこのような効果が高速延伸でも達成できることが特徴であり、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分以上、さらに好ましくは30m/分以上でも顕著に効果が現れる。
《緩和処理》
さらにこれらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方で行うことが好ましく、より好ましく横延伸後である。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行っても良く、延伸後巻き取った後、オフラインで行っても良い。
熱緩和はTg−30℃以上Tg+30℃以下、より好ましくTg−30℃以上Tg+20℃以下、さらに好ましくはTg−15℃以上Tg+10℃以下で、1秒以上10分以下、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下、0.1kg/m以上20kg/m以下、より好ましく1kg/m以上16kg/m以下、さらに好ましくは2kg/m以上12kg/m以下の張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
《延伸中の揮発成分》
上記縦延伸、横延伸は揮発成分(溶剤や水分など)が樹脂に対し1wt%以下であることが好ましく、より好ましく0.5wt%以下、さらに好ましくは0.3wt%以下である。これにより延伸中に発生する軸ズレをより軽微にできる。これは延伸中に延伸と直行方向に働く収縮応力に加え、乾燥に伴う収縮応力が働き、ボーイングがより顕著になるためである。
《延伸後の物性》
このようにして縦延伸、横延伸、縦横延伸した熱可塑性フィルムのRe、Rthは下式(R−1)および(R−2)を満足することが好ましい。
式(R−1):0nm≦Re≦200nm
式(R−2):0nm≦Rth≦600nm
(式中、Reは、熱可塑性フィルムの面内のレターデーションを示し、Rthは、熱可塑性フィルムの厚み方向レターデーションを示す。)
より好ましくは
Rth≧Re×1.1
180≧Re≧10
400≧Rth≧50
であり、さらに好ましくは
Rth≧Re×1.2
150≧Re≧20
300≧Rth≧100
である。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
Re,Rthのばらつきは0%から8%が好ましく、より好ましく0%から5%、さらに好ましくは0%〜3%である。
また、Re,Rthの経時保存下の変動(80℃で500時間経時前後のRe,Rthの変化:詳細後述)は0%以上8%以下が好ましく、より好ましくは0%以上6%以下、さらに好ましくは0%以上4%以下である。
延伸後の熱可塑性フィルムの厚みはいずれも15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜120μm、さらに好ましくは30μm〜80μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。薄手フィルムを用いることでより延伸後にフィルム内に残留歪が残りにくく、経時でのレターデーション変化が発生しにくい。これは、延伸後に冷却する際、厚みが厚いと表面に比べ内部の冷却が遅れ、熱収縮量の差に起因する残留歪が発生し易いためである。
熱寸法変化率は0%以上0.5%以下が好ましく、より好ましく0%以上0.3%以下、さらに好ましくは0%以上0.2%以下である。なお、熱寸法変化率とは80℃で5時間熱処理した際の寸法変化をさす(詳細後述)。
《シクロオレフィンフィルムの加工》
このようにして得た本発明のシクロオレフィンフィルム単独で使用してもよく、これらと偏光板と組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
(表面処理)
グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500KGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300KGyの照射エネルギーが用いられる。
これらの中でも特に好ましくは、グロー放電処理、コロナ処理、火炎処理である。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
(機能層の付与)
本発明のシクロオレフィンフィルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(イ)偏光層の付与(偏光板の作製)
(イ−1)使用素材
現在、市販の偏光層は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法、公技番号2001−1745号、58頁(発行日2001年3月15日)に記載の化合物が挙げられる。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。バインダーには、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。この中でも、水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋性の官能基を有するポリマー、モノマーをバインダー中に混合してもよく、バインダーポリマー自身に架橋性官能基を付与してもよい。架橋は、光、熱あるいはpH変化により行うことができ、架橋構造をもったバインダーを形成することができる。架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。バインダーの架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましい。偏光素子の配向性、偏光膜の耐湿熱性が良好となる。
架橋反応が終了後でも、未反応の架橋剤は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このようにすることで、耐候性が向上する。
(イ−2)偏光層の延伸
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向におこなってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
a)平行延伸法
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。延伸倍率は、延伸後/初期状態の長さ比(以下同じ)に基づくが前記作用効果の点より好ましい延伸倍率は1.2〜3.5倍、就中1.5〜3.0倍である。この後、50℃から90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
b)斜め延伸法
これには特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。湿度は相対湿度・50%〜100%が好ましく、より好ましくは相対湿度・70%〜100%、さらに好ましくは相対湿度・80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
延伸の終了後、50℃〜100℃より好ましくは60℃〜90℃で、0.5分〜10分乾燥する。より好ましくは1分間〜5分間である。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°から50°)である。
(イ−3)貼り合せ
前記表面処理後の熱可塑性フィルムフィルムと、延伸して調製した偏光層を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、熱可塑性フィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45°になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
このようにして得た偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にあることが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
さらに、このようにして得た偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とを45度になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/4板を用いることが好ましい。
(ロ)光学補償層の付与(光学補償シートの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、本発明の熱可塑性フィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
(ロ−1)配向膜
前記表面処理した熱可塑性フィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができし、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、前記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
前記架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、前記ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。が発生することがある。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である前記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上または前記下塗層上に設けられる。配向膜は、前記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光層のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましく、45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
(ロ−2)棒状液晶性分子
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
(ロ−3)円盤状液晶性分子
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、前記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
(ロ−4)光学異方性層の他の組成物
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、前記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。前記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、前記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(ロ−5)光学異方性層の形成
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
(ロ−6)液晶性分子の配向状態の固定
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
この光学補償フィルムと偏光層を組み合わせることも好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフイルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光層と光学補償層との傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
(ロ−7)液晶表示装置
このような光学補償フィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモード液晶表示装置は、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモード液晶表示装置は、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
(VAモード液晶表示装置)
VAモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号公報、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報に記載のものなどを使用できる。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードに対しても、前記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
(ハ)反射防止層の付与(反射防止フィルム)
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の熱可塑性フィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(ハ−1)塗布型反射防止フィルムの層構成
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(ハ−2)高屈折率層および中屈折率層
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(ハ−3)低屈折率層
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハ−4)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開WO0/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(ハ−5)前方散乱層
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(ハ−6)その他の層
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハ−7)塗布方法
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(ハ−8)アンチグレア機能
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
表1に記載のゼオノアZF−14(日本ゼオン社製)、TOPAS6031、及び5031(ポリプラスチックス社製)の環状ポリオレフィン系樹脂を用いて実験を行った。
(Tg測定)
DSCの測定パンにサンプルを20mg入れる。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st-run)、30℃まで−10℃/分で冷却する。この後、再度30℃から250℃まで昇温する(2nd-run)。2nd-runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とし表1に記載した。また、全水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%を添加した。
[溶融製膜]
表1に記載の環状ポリオレフィン系樹脂を120℃で3時間送風乾燥し、含水率を0.1質量%にした。これに、可塑剤としてトリフェニルフォスフェート(TPP)3wt%、及び二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%、ホスファイト系安定剤(P−1)0. 20質量%、「紫外線吸収剤a」2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(0. 8質量%)、「紫外線吸収剤b」2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(0.25質量%)を添加し、混合物を2軸混練押出し機を用いて260℃で溶融混練した。なお、この2軸混練押出し機には真空ベントを設け、真空排気(0.3気圧に設定)を行った。水浴中に直径3mmのストランド状に押出し、長さ5mmに裁断した。
上記混練樹脂は90℃の脱湿風を用いて3時間乾燥させ、水分率を0.1wt%にした後、L/D=35、圧縮率3.5、スクリュー径が65mmのフルフライトスクリューを挿入した単軸押し出し機を用いて260℃で溶融させた後、厚み精度をアップさせるために、ギアポンプを用いて一定量送り出した。ギアポンプから送り出された溶融ポリマーは異物除去のために4μmの焼結フィルターを経由した後、スリット状の隙間を有するダイへ送り出され、冷却ロールで冷却固化されて、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムとなった。固化したシートを冷却ロールから剥ぎ取り、ロール状に巻き取った。冷却ロールは直径500mm、肉厚25mmで表面粗度Ra=25nm(但し、実施例5は100nm)の金属ローラであり、設定温度は120℃とした。また、弾性ロールは、直径300mm、肉厚0.3mmで表面粗度Ra=25nmの金属ローラであり、設定温度は120℃とした。ここで、冷却ロールと弾性ロールとの線圧Pは40kg/cmであり、シートの厚みが80μmになるように製膜した。尚、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした。
このようにして製造された未延伸フィルムについてレターデーション値(Re及びRth)の測定、スジ故障の観察、ヘイズの測定を行った。その結果はまとめて表1に示している。また、これらの結果から総合評価を行った。
(i)フィルムの厚みムラ(Rmax)
得られた未延伸フィルム1000mを連続厚み計により測定を行い、最大厚みと最小厚みの差を求めた。Rmaxが±1.5μm未満を○、±1.5μm以上±2.0μm未満を△、±2.0μm以上を×、と評価した。
(ii)レターデーション値(Re及びRth)
未延伸フィルムの幅方向に等間隔で10点サンプリングし、これを25℃、60%rhにて4時間調湿した後に、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃60%RHにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定した。
(iii)スジ故障の観察
得られた未延伸フィルムの外観を目視で検査した。スジの全く見られないものを○、ごくわずかに薄いスジが見られるが実用上に支障の無いものを△、薄いスジが見られ、実用上にも問題のあるものを×、スジが一目で分かるものを××と4段階で評価した。
(iv)ヘイズの測定
得られた未延伸フィルムを日本着色工業(株)製の濁度計 NDH−1001DPを用いて測定した。
尚、表1中のダイエッジ巾は、ダイのエッジ部のレプリカを採取し、顕微鏡観察により求めている。
図5の表1から分かるように、実施例1〜6では、ダイのリップクリアランス(リップギャップ)を0.2〜1.0mmの範囲とし、ダイ押出口での単位面積当りの樹脂流量を1時間当り0.1〜1.5kg/mm2 の範囲にしているので、その範囲に設定していない比較例1及び比較例2に比べフィルムの厚みムラが小さく、良い結果であった。
更に、実施例1〜6において、ダイのエッジ部のR面取り、又はC面取り(表1中のダイエッジ巾)が30μm以下の範囲でない実施例4は、スジ故障が見受けられ、総合評価が△であった。
本発明が適用されるフィルム製造装置の構成を示す模式図 押出機の構成を示す概略図 本発明におけるダイを示す概略図 製膜工程部を示す概略図 本発明の実施例の説明図
符号の説明
10…フィルム製造装置、12…環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、14…製膜工程部、16…縦延伸工程部、18…横延伸工程部、20…巻取工程部、22…押出機、24…ダイ、24A…スリット、24B…リップランド、24C…ダイリップ、24D…ダイのエッジ部、25…バックアップローラ、26…ポリシングローラ(弾性ロール)、27…厚み測定手段、28…ポリシングローラ(冷却ロール)、29…弾性ロール制御手段、44…外筒、46…液状媒体層、48…弾性体層、50…金属シャフト、d…リップクリアランス

Claims (9)

  1. 環状ポリオレフィン系樹脂を溶融してダイからシート状に押し出し、
    該シートを、算術平均高さRaが100nm以下の表面性で、少なくとも一方のロールが金属製の弾性ロールによって構成された一対のローラで挟むことにより冷却固化して製膜する環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、
    前記ダイのリップクリアランスを、0.2〜1.0mmの範囲に設定するとともに、
    ダイ押出口での単位面積当りの樹脂流量を1時間当り0.1〜1.5kg/mm2 の範囲に設定することを特徴とする環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記ダイのエッジ部のR面取り、又はC面取りが30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記ダイのダイリップ表面の中心線平均粗さRaが0.5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記ダイのダイリップ表面の硬度が、ビッカース硬度で500以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記ダイから吐出された時の環状ポリオレフィン系樹脂のゼロせん断粘度が2000Pa・sec以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  6. フィルム厚みが20〜300μm、面内のレターデーションReが20nm以下、厚み方向のレターデーションRthが20nm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れか1に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする環状ポリオレフィン系樹脂フィルム。
  8. 請求項7に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを基材とすることを特徴とする液晶表示板用光学補償フィルム。
  9. 請求項7に記載の環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを偏光膜(層)の保護膜として少なくとも1枚を用いて形成される偏光板。
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WO2022145174A1 (ja) * 2020-12-28 2022-07-07 日本ゼオン株式会社 光学フィルム及びその製造方法

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